説明

赤外放射を検出するためのシステム及び方法

赤外放射を検出するための装置であって、放射を検出するためのボロメーターのアレイと、各ボロメーターを読み取るために、ボロメーターを通して電流を流すためにあらかじめ設定された電圧でボロメーターにバイアスを印加することができる回路構成、共通モード電流を生成することができる回路構成、及びボロメーターを流れる電流と共通モード電流との間の差を積分することができる回路構成を有する信号成形回路構成とを備える装置を提供する。装置は、ボロメーターの抵抗値をボロメーターのオフセットによって決まるあらかじめ設定された量だけ変更するために、各ボロメーターに電流を注入することができる補正回路構成を備え、電流の注入はボロメーターの読み取りバイアス印加の前に実行され、変更はボロメーターの抵抗値が温度の関数として変化する方向に従って実行される。補正回路構成は、ボロメーターの抵抗値を共通の値に向けて変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボロメーターを使用する赤外線の画像処理及び高温測定の分野に関係する。更に特に、本発明は、検出帯域及び使用されるボロメトリック材料のタイプに関係のない、ボロメトリック検出(bolometric detection)のための画像センサの分野に関係する。
【背景技術】
【0002】
赤外線の画像処理のために設計された検出器は、従来、基本の検出器またはボロメーターの1次元または2次元のアレイとして生成され、前記ボロメーターは、高い熱抵抗値を有する支持アームを用いて基板の上に取り付けられた、一般的にはシリコンで作られている膜の形をとる。
【0003】
その基板は、通常、基本の検出器を順次にアドレスする手段と、ボロメーターを電気的に励起させ、これらのボロメーターによって生成された電気信号を前処理する手段とを組み込む。この基板及び統合された手段は、一般的に“読み取り回路”と言われる。
【0004】
この検出器を使用して、場面(scene)の赤外線の画像を獲得するために、その場面は、適当な光学素子によってボロメーターのアレイの上に投影されると共に、前記基本の検出器のそれぞれによって取得された温度の画像を構成する電気信号を獲得するために、クロック化された電気刺激が、読み取り回路によって、各々のボロメーターに、もしくは、そのようなボロメーターの各行に印加される。この信号は、次に、観察された場面の温度の画像を生成するために、読み取り回路によって、そして妥当な場合は、パッケージの外の電子機器によって、より大きいか、またはより小さい大きさに処理される。
【0005】
このタイプの検出器は、製造原価及び実装に関して多数の利点を有するが、しかし、同様に、そのような検出器を使用するシステムの性能を制限する欠点を有する。特に、獲得された画像の均一性に関して問題がある。実際には、一定の場面にさらされたとき、必ずしも全てのボロメーターは、正確に同じ方法で応答するとは限らず、そして、これは、従って獲得された画像における固定された空間雑音になる。
【0006】
この変動性は、いくらかの原因を有している。特に、ボロメーターの抵抗値の技術上の変動性は、他の欠点の間で特に、画像のオフセット変動及び利得変動を引き起こし、すなわち、オフセットの場合は、一定の画像にさらされた(画像の影響を受けた)ボロメーターの出力レベルの空間的変動を引き起こし、利得の場合は、場面の一定の温度変化にさらされた(温度変化の影響を受けた)ボロメーターの出力レベルの絶対値変化の変動性を引き起こす。
【0007】
多数のオフセット補正方法がある。オフセット変動を補正する第1の方法は、工場の較正作業の後で用意されたオフセット補正テーブルを使用することを必要とする。しかしながら、これらの補正の安定性は、焦点面の温度安定度によって変わると共に、従って、温度制御されていない応用例(一般的に“TEC−less”と言われる)においては、全体の操作上のダイナミックレンジにわたる連続的な検出器の焦点面の温度に関するデジタル補正を保証するために、複数のいわゆる較正温度に対する利得及びオフセットテーブルを獲得して格納すると共に、その場合に、その検出器が稼働されるとき、例えば補間によって前記テーブルを使用することに頼ることが必要である。工場の較正試験ベンチを用いて獲得されたこれらのテーブルは、特に較正試験ベンチに組み込まれた装置、及び全ての利得及びオフセットテーブルを取得するために必要な時間に関して、製造業者に有意のコストを負わせる。
【0008】
例えば米国特許出願公開第2002/0022938号明細書(US 2002/0022938)において開示された別の方法は、機械的シャッターを閉じることによって一定の基準場面の画像を獲得することを必要とする。一度、この画像が獲得されたならば、そのシャッターは開かれると共に、基準画像は、格納されて、デジタル処理で、もしくはアナログ処理で、現在の画像から差し引かれる。この方法は、更に広く“シャッター補正(shutter correction)”または“1点補正(one-point correction)”として知られている。それは、基準画像を獲得するために使用されると共に、ほとんどメモリ及び計算資源を必要とせず、検出器の周囲温度の周辺で、非常に効率的な補正を可能にするという利点を有する。
【0009】
一方、この方法は、機械的シャッター、すなわち無視できない(non-negligible)コストを有すると共に、それが含む可動部のために比較的壊れやすく、そしてエネルギーを消費する機械的な装置を使用することを必要とする。その上、もし動作条件が変わるならば、そして、更に特に検出器の熱環境が変わるならば、場面から獲得された画像は、オフセット変動の再発のために悪化し、その場合に、再び機械的シャッターを閉じることによって基準画像を獲得することが必要になる。実際には、少なくとも基準画像を獲得するのにそれが必要とする時間のために、その検出器は使用できない。
【0010】
例えば国際公開第98/47102号において開示された別のオフセット補正方法は、時間窓から連続的な構成要素を抽出するのを可能にするために十分なフレームを含む進行する時間窓に含まれる一連の連続した画像を、デジタル処理で処理することを必要とする。オフセット分布と類似しているこの連続的な構成要素の空間的分布は、その場合に、現在の獲得された画像からデジタル処理で差し引かれる。
【0011】
しかしながら、これは実際のオフセット変動そのものを抑制するばかりでなく、それは場面からの静的な情報の全てを抑制する。明らかに機械的シャッターを使用する必要性はないが、しかし、このようなオフセット補正は、一方では、その場面が本質的に恒久的に変化するもの、もしくは動くものである場合にだけ、実際には受け入れられる。実際には、進行する窓の持続時間と等しいかそれを上回っている持続時間にわたる全ての詳細及び固定された局所的なコントラストは、非均一性として処理され、この効力によって、固定された空間雑音と同じ方法で補正される。
【0012】
概して言えば、従来技術に基づいたオフセット補正方法は、一度画像が獲得されたときにだけ適用され、その結果、画像におけるオフセット変動の影響を補正する。それにもかかわらず、場面から独立している雑音の存在のために、オフセット変動は、それ自体画像の品質に影響を与えるが、それは、更に、これらのタイプの技術が補正しない観察し得る場面のダイナミックレンジに対して影響を与える。
【0013】
この現象を補正するために、図1は、ボロメトリックアレイ検出器(bolometric array detector)において従来使用される種類の基本的な検出及び読み出しレイアウトを示す。
【0014】
この基本的なレイアウトは、
・特に撮像ボロメーター12、そしてそれを実装するために必要とされるコンポーネント14及び16を有する画素またはピクセル10と、
・撮像ボロメーター12を読み取るために使用される積分回路18と、
・撮像ボロメーター12が読み取られるときに撮像ボロメーター12を流れる共通モード電流を補償するための補償回路20と、
を含む。
【0015】
ボロメーター12は、場面が起源である赤外線の放射IRにさらされると共に、第1の端子Aによりグランド(アース)に接続されている。
【0016】
積分回路18は、
−その非反転入力(+)があらかじめ設定された定電圧VBUSに保持される演算増幅器22と、
−あらかじめ設定された電気容量Cintを有すると共に、増幅器22の反転入力(−)と増幅器22の出力との間に接続されたコンデンサ24と、
−コンデンサ24と並列に接続されると共に、“リセット”信号を用いて制御可能なリセットスイッチ26と、
を備える。
【0017】
画素10は、更に、“選択”信号を用いて制御されると共に、演算増幅器22の反転入力(−)と第1のMOS注入トランジスタ(MOS injection transistor)14とに接続された読み取りスイッチ16を備えており、第1のMOS注入トランジスタ14は、ボロメーター12の端子を横断する電圧Vacを印加するためにゲートが電圧VFIDによって制御され、ソースがボロメーター12の第2の端子Bと接続され、ドレインが読み取りスイッチ16のもう一方の端子と接続される。
【0018】
撮像ボロメーター12を流れる共通モード電流を補償するために使用される補償回路20は、撮像ボロメーター12と同じ材料で作られた抵抗性の補償ボロメーター28を備える。補償ボロメーター28は、例えば、それが、基板と比較して低い熱抵抗値を有しており、そして、任意に、もしくは代りに、不透明なシールド30を供給されるので、本質的に場面から発する放射エネルギーに反応しにくい。
【0019】
補償ボロメーター28の端子の内の1つは、あらかじめ設定された電圧VSKに接続されていると共に、他方の端子は、回路20の第2のMOS注入トランジスタ32のソースに接続されている。注入トランジスタ32のドレインは、演算増幅器22の反転入力(−)に接続されており、そして、そのゲートは、あらかじめ設定された電圧GSKに接続されている。
【0020】
ボロメーター12を読み取るために、1度コンデンサ24がゼロリセットスイッチ26を閉じることで放電されると、撮像ボロメーター12、補償ボロメーター28が、バイアストランジスタ(biasing transistor)14、32の制御電圧によってバイアスを印加され、そして、撮像ボロメーター12を流れる電流Iacと補償ボロメーター28を流れる電流Iavとの間の差異が、積分回路18により、あらかじめ設定された積分の持続時間(積分期間)Tintにわたって積分される。それ自体は知られているように、補償回路20の使用は、場面の温度を代表する有益な電流が、撮像ボロメーター12を流れる全電流のわずかな時間部分、一般的に約1[%]のみを占めるという事実、従って積分の前に共通モード電流を消去する必要性によって正当化される。
【0021】
積分器18の出力における電圧Voutは、その場合に次式によって与えられる。
【0022】
【数1】

【0023】
回路18による積分は、従って、操作がより簡単である電圧への有益な電流の変換を保証しながら、電気容量Cintの値を通して、必要とされた信号の読み取り値に利得を与えることを可能にする。このように、特に同じバイアスレベルを与えることによって、アレイ検出器の全ての撮像ボロメーターは、同じ方法で読み取られる。
【0024】
上で示されたコンポーネントのレイアウト及び動作は従来のものであり、簡単にするために、更なる詳細において、全く説明されない。追加の詳細のために、読み手は、例えば“E. Mottin”等による“Infrared Technology and Application XXVIII, SPIE, vol. 4820”の“Uncooled amorphous silicon enhancement for 25 μm pixel pitch achievement”と題名が付けられた論文を閲覧することを勧められる。
【0025】
例えば、検出器の撮像ボロメーターの抵抗値における1[%]に等しい相対的な空間的変動は、低いバイアスレベルに対して、電流Iacにおける1[%]の変動になると仮定し、補償ボロメーターのバイアスは、電流Iavが電流Iacの約90[%]に等しくなるように選択されると仮定し、全てのボロメーターが読み取られた後の電圧Voutにおける空間的変動は、約10[%]であると仮定する。従来の検出器において、この変動は、約300[mV]の検出器の動的な出力応答を表す。出力レベルの値、及び従って検出器の感度を増大させるために、もし撮像ボロメーターのバイアスが同様に、例えば50[%]増やされるならば、出力電圧Voutにおける変動は、同様に、50[%]だけ増加し、そして450[mV]に到達する。利用可能な全体の動的応答が通常は2[V]もしくは3[V]に制限されると考えると、この動的応答の有意の部分は、従って、ボロメーターの自然変動によって単独で使い果たされる。
【0026】
従って、オフセット変動は、単に存在することによって、検出器の動的な出力応答の部分を使い果たす。用語“残存する動的応答”または“動的な場面の応答”は、通常、積分回路が飽和状態になっていないときの出力電圧Voutの最大の振幅と、一定の場面にさらされたとき、すなわち必要とされた信号に対して動的応答が残存するときの出力電圧Voutの最大の振幅との間の差異を表示するために使用される。
【0027】
残存する動的応答は、単にオフセット変動の存在に起因する積分回路の電気的な動的応答より小さいことに加えて、この残存する動的応答は、ユーザによって望まれる感度が増加すると減少する。
【0028】
更に、撮像ボロメーターがバイアスを印加されるとき、それらの温度がジュール効果のために上昇し、結果としてそれらを流れる電流、従って出力電圧の変動における振幅の増加になり、従って、残存する動的応答を減少させる。ボロメーターアレイが配置される焦点面の温度が増加するとき、更に、同様の現象が発生する。通常のボロメトリック材料が熱抵抗値の負の係数を有しているので、これは、急速に増加するボロメーターの出力レベルの変動性になり、それによって、残存する動的応答を著しく減少させる。
【0029】
従来技術によるオフセット変動の補償は、残存する動的応答におけるこのような減少を、どんな方法においても扱わないと共に、前記変動性が既に生成された画像に及ぼす影響を遡及的に補正するように自らを制限することに、注目するべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0022938号明細書
【特許文献2】国際公開第98/47102号
【非特許文献】
【0031】
【非特許文献1】“E. Mottin”等、“Uncooled amorphous silicon enhancement for 25 μm pixel pitch achievement”、Infrared Technology and Application XXVIII, SPIE, vol. 4820
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明の目的は、オフセットの変動性が生成された画像及び残存する動的応答に及ぼす影響を補正する方法及びボロメトリック検出装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明の対象は、赤外放射を検出するための装置であって、
・前記放射を検出するためのボロメーターのアレイと、
・各ボロメーターを読み取るために、
○前記ボロメーターを通して電流を流すためにあらかじめ設定された電圧で前記ボロメーターにバイアスを印加することができる読み取りバイアス印加回路構成、
○共通モード電流を生成することができる共通モード除去回路構成、及び、
○前記ボロメーターを流れる前記電流と前記共通モード電流との間の差を積分することができる積分回路構成、
を有する信号成形回路構成と
を備えることを特徴とする。
【0034】
本発明によれば、前記システムは、前記ボロメーターの抵抗値を前記ボロメーターのオフセットによって決まるあらかじめ設定された量だけ変更するために各ボロメーターに電流を注入することができる、前記ボロメーターの前記抵抗値を補正するための回路構成を備え、電流の注入は、前記ボロメーターの読み取りバイアス印加の前に実行され、前記変更は、前記ボロメーターの前記抵抗値が温度の関数として変化する方向に従って実行される。
【0035】
言い換えれば、本発明によるボロメーターの抵抗値を制御する回路は、温度の関数としてボロメーターの抵抗値が減少するならば、この抵抗値を減少させるか、もしくは、その反対であるならば、この抵抗値を増加させるように、ボロメーターの抵抗値の値を個別に変更する。ボロメーターの抵抗値は、好ましくは、それらを実質的に同じ状態にするように変更される。この補正は、読み取りより上流の段階で、すなわち、それらのボロメーターがバイアスを印加され、そして電流が積分される前に行われる。抵抗値のこの補正は、観察された場面から獲得された熱情報を変更せずに、積分段階の前の段階において電気的手段を使用することによって、ジュール効果により獲得される。
【0036】
本発明の特定の実施例によれば、前記装置は、下記の特徴の1つ以上を含む。
【0037】
前記補正回路構成は、前記ボロメーターの前記抵抗値を共通の値に向けて変更することができる。
【0038】
前記補正回路構成は、前記オフセットによって決まる量の関数として判定される持続時間の後で電流の注入を止めることができるタイミング手段を備える。
【0039】
前記ボロメーターは、基板の上に取り付けられた半導体タイプのボロメトリック膜(bolometric membrane)を備えると共に、前記タイミング手段(142)は次式に従う期間の後で電流の注入を止めることができ、
【0040】
【数2】

【0041】
ここで、t(i,j)はあらかじめ設定された前記持続時間であり、ΔR(i,j)は前記オフセットによって決まる量であり、kはボルツマン定数であり、TPFは前記基板の温度であり、Cthは前記ボロメーターの熱容量であり、Eは前記ボロメーターが作られているボロメトリック材料の熱伝導活性化エネルギーであり、そして、Vacは前記ボロメーターの端子を横断する電圧である。
【0042】
前記補正回路構成は、前記ボロメーターに電流を注入するために、
・定電流源と、
・前記定電流源を前記ボロメーターに接続し、そして前記定電流源を前記ボロメーターから切断することができる第1の制御可能なスイッチと、
・前記ボロメーターの前記端子を横断する前記電圧を、前記オフセットによって決まる第1のあらかじめ設定された電圧と比較する回路と、
を備える。
【0043】
前記比較回路は、
・前記ボロメーターと接続された非反転入力を有する電圧フォロアとして実装された演算増幅器と、
・前記演算増幅器の出力に第1の端子によって接続されたコンデンサと、
・前記第1の制御可能なスイッチの開閉を制御する出力、及び前記第1のあらかじめ設定された電圧を受け取る反転入力を有すると共に、前記コンデンサの前記第2の端子に非反転入力によって接続された比較器と、
・前記コンデンサの前記第2の端子と第2のあらかじめ設定された電圧との間に接続された第2の制御可能なスイッチと、
を備える。
【0044】
前記第1及び第2のあらかじめ設定された電圧は次式を満たし、
【0045】
【数3】

【0046】
ここで、Vref(i,j)は前記第1の電圧であり、Vclampは前記第2の電圧であり、Irefは前記電流源によって出力される定電流であり、ΔR(i,j)は前記ボロメーターのオフセットによって決まるあらかじめ設定された量である。
【0047】
前記補正回路構成は、前記ボロメーターに、前記ボロメーターの前記オフセットによって決まるあらかじめ設定された量によって決まる値を有する電流を注入することができる。
【0048】
前記電流の前記値は次式を満たし、
【0049】
【数4】

【0050】
ここで、Iref(i,j)は前記電流の前記値であり、ΔR(i,j)は前記オフセットによって決まる値であり、kはボルツマン定数であり、TPFは前記基板の温度であり、Cthは前記ボロメーターの熱容量であり、Eは前記ボロメーターが作られているボロメトリック材料の熱伝導活性化エネルギーであり、Rac(i,j)は前記ボロメーターの前記抵抗値であり、そして、Δtはその間に前記電流が印加される時間である。
【0051】
前記ボロメーターの前記抵抗値を制御する前記回路構成は、実質的に同時に前記電流の注入を終了させるために、ボロメーターのあらかじめ設定されたセットの前記ボロメーターに対する電流の注入を一時的に延期することができる。
【0052】
ボロメーターの前記アレイは、一度に1行を読まれ、前記抵抗値制御回路構成は、ボロメーターの前記アレイの各列の終りに配置されると共に、各ボロメーターの抵抗値を制御するために、前記列において各ボロメーターに接続されることができる。
【0053】
本発明は、従って、検出器の残存する動的応答を増加させ、その結果、生成された画像におけるオフセットの変動性の程度を小さくすることによって、検出器の感度を増加させること、及び/または、前記装置をより高い温度で使用することを可能にする。更に一般的には、感度掛ける残存する動的応答の積は、大幅に増大する。
【0054】
本発明の対象は、同様に、ボロメーターのアレイを使用することによって赤外放射を検出する方法であって、この方法は、前記ボロメーターを読み取るために、
・前記ボロメーターを通して電流を流すために、あらかじめ設定された電圧で前記ボロメーターにバイアスを印加するステップと、
・前記ボロメーターを流れる前記電流から共通モード電流を減算するステップと、
・前記ボロメーターを流れる前記電流と前記共通モード電流との間の差を積分するステップと、
で構成されることを特徴とする。
【0055】
本発明によれば、前記方法は、前記ボロメーターの前記抵抗値が温度の関数として変化する方向に従って、前記ボロメーターの前記抵抗値を前記ボロメーターのオフセットによって決まるあらかじめ設定された量だけ変更するために、前記ボロメーターを読み取る前に電流を前記ボロメーターに注入することを必要とする。
【0056】
本発明の1つの特定の実施例において、前記ボロメーターと関連付けられた前記オフセットによって決まる前記あらかじめ設定された値は、
・前記アレイを一定の場面にさらすこと、
・前記ボロメーターの対応する抵抗値を判定すること、そして、
・負の抵抗係数を有するボロメーターの場合は、前記抵抗値から、前記判定された抵抗値の最も小さいものに実質的に等しい量を減算すること、または、負の抵抗係数を有するボロメーターの場合は、前記抵抗値から、前記判定された抵抗値の最も大きいものに実質的に等しい量を減算すること、
によって決定される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】既に上述された、ボロメトリックアレイ検出器において従来使用される種類の基本的な検出及び読み出しレイアウトの概略図である。
【図2】本発明によるボロメトリックアレイ検出装置の第1の実施例の概略図である。
【図3】本発明によるボロメーターのオフセットにおける変動性を補正する方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明を適用したあとの、時間の関数としての抵抗値の変化を説明する図である。
【図5A】スイッチを制御するために使用されると共に、本発明による方法が使用される場合に生成される様々な信号に関するタイミング図である。
【図5B】スイッチを制御するために使用されると共に、本発明による方法が使用される場合に生成される様々な信号に関するタイミング図である。
【図6】本発明によるボロメトリック検出装置の一部を形成する個別の基準電圧Vrefの信号源の第1の実施例の概略図である。
【図7】本発明による個別の基準電圧Vrefの信号源の第2の実施例の概略図である。
【図8】個別の基準電流Irefの信号源を使用する、本発明によるボロメトリックアレイ検出装置の第2の実施例の概略図である。
【図9A】本発明によるボロメトリック検出装置の第3の実施例の一部である時間ベースの制御のための装置の概略図である。
【図9B】本発明によるボロメトリック検出装置の第3の実施例の一部である時間ベースの制御のための装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明は、一例として単に与えられ、そして同じ参照符号が同じもしくは類似の構成要素を表す添付図面に関係する下記の説明によって、更に容易に理解できる状態にされるであろう。
【0059】
本発明によるボロメトリック検出器(bolometric detector)は、図2において概略的に示される。この検出器は、「N」行及び「M」列を有し、単位となる検出要素または“ピクセル”42のアレイ40を備え、ピクセルのそれぞれは、撮像ボロメーター12、MOSトランジスタ14、及び読み取りスイッチ16を備える。
【0060】
アレイ40の各列は、列読み取りバス44によって、演算増幅器22、コンデンサ24、及びゼロリセットスイッチ26によって形成される積分器18と、更に、例えば基板を放熱することにより、及び/または不透明なシールド30を用いることにより、実質的に放射に反応しにくい抵抗性のボロメーター28、及びMOS注入トランジスタ32によって形成される補償回路20とを含む、読み取り回路構成46に関連付けられている。
【0061】
アレイ40の各ピクセル42は、その関連付けられた読み取り回路構成46と共に、図1に関連して説明されたそれと類似した基本的なレイアウトを形成する。全てのボロメトリック要素(bolometric element)12、28は、全ての電子要素が形成される基板10の表面上に形成される。光学活性された(optically active)領域40は、適切な光学の焦点(図示せず)に配置される。
【0062】
それ自体は知られているように、アレイ40のボロメーター12は、現在読まれつつあるピクセルの行が、読み取りスイッチ16を閉じることにより、読み取り回路構成46に接続されることによって、行ごとに読み取られる。この処理において通常のことであるように、行の読み取りの終わりに積分器18の出力において電圧Voutを確立した後で、信号Voutは、次の行をアドレスする前にサンプリングされると共にホールド(hold:保持)され、その後、出力増幅器49に多重送信され、読み取りは、通常、基板10に提供されると共に、読み取りスイッチ16、及びゼロリセットスイッチ26を開閉することによりタスク(task)される(仕事を課せられる)タイマ回路48によって、時間を計られる(clocked)。例えば、読み手は、どのように読み取りが動作するかの更に多くの詳細に関して、上述された論文を参照するべきである。
【0063】
本発明によれば、アレイ40の各列は、更に、列補正バス50を介して、前記列におけるボロメーターの抵抗値を制御するための回路構成52と関連付けられる。回路構成52の機能は、ボロメーター12のオフセット変動性が生成された画像に及ぼす影響、及びこの変動性が検出器の残存する動的応答に及ぼす影響を補正することである。列におけるピクセル42をその制御回路構成52に接続すること、及び制御回路構成52から切断することは、ピクセル42において補正バス50とボロメーター12との間に配置されると共に、以下で詳細に説明される方法でタイマ回路構成48によって駆動される補正スイッチ53によって保証される。
【0064】
制御回路構成52は、下記の、
・一定のあらかじめ設定された電流Irefを出力すると共に、その端子の内の1つが定電圧源VDDAに接続された電流源54と、
・電流源54のもう一方の端子と列補正バス50との間に接続された第1の制御可能なスイッチ56と、
・非反転入力(+)が列補正バス50に関連付けられた演算増幅器58と(増幅器58の反転入力(−)は、増幅器58が従って電圧フォロアとして動作するように、増幅器58の出力と接続されている。)、
・増幅器58に接続された一方の端子を有するコンデンサ60と、
・その正の入力(+)がコンデンサ60の他方の端子に接続されると共に、その出力がORロジックゲート63を通してスイッチ56の開閉を制御する比較器62と、
・タイマ回路構成48による“開始”信号を用いて制御され得る第2のスイッチ64と、
・比較器62の負の入力(−)に接続されると共に、制御回路構成52が接続されたピクセル42の撮像ボロメーター12によってその値が決まる、負の入力(−)における基準電圧Vrefを生成する電圧源66と、
を備える。
【0065】
あとで詳細に説明されたように、電圧源66によって生成された電圧は、制御回路構成52が接続されたピクセルに、適応が適合することを可能にするようにプログラム可能である。例えば、この電圧源は、検出器に格納されるデジタル値のテーブルを供給されたデジタル/アナログ変換器を備える。
【0066】
最終的に、本発明による検出器は、典型的に(しかし必ずではなく)、基板10に配置されていない補正管理ユニット69を含む。特に、管理ユニット69は、撮像ボロメーター12の抵抗値に関する補正パラメータを格納すると共に、以下で更に詳細に説明されるように、前記パラメータの較正を実行する。
【0067】
例えば、ユニット69は、伝統的に従来技術による検出器において供給されたようなデジタル演算処理装置である。それらの検出器は、第一に、増幅器49に隠れた基板10において形成された、あるいは外部の電子部品において遠隔操作された信号Voutに関するデジタル出力(アナログ/デジタル変換(ADC))を実際に提供されると共に、それらの検出器は、第二に、メモリ、及び補正アルゴリズム、例えば検出器の普通の使用の間必要とされる伝統的な“2点補正(2-point correction)”のためのオフセット及び利得アルゴリズムを備えるデジタル演算処理装置に関連付けられる。以下では、前記デジタル演算処理装置は、この分野で習慣的であるように、本発明を実施するために、上述された前記記憶手段及び前記デジタルデータを処理する手段を備えると見なされる。
【0068】
上で示された検出器によって使用されるオフセットの影響を補正する方法は、図3において示されたフローチャートに関連して以下で説明される。この方法は、電流がボロメーターを流れるときの、ボロメーターの抵抗値が示す急速な変動に基づいている(ジュール効果による自己発熱現象)。電流は、従って、積分段階より前に、そして積分段階に可能な限り近く、撮像ボロメーター12の抵抗値を個別に補正するために、撮像ボロメーター12に注入される。
【0069】
更に特に、そして、これは本発明のあらゆる限定的な特徴を暗示せず、下記の方法は、温度制御されたボロメトリック検出器、例えばペルチェ効果モジュール(Peltier effect module)(または熱電冷却機(thermoelectric cooler:TEC))によって冷やされたボロメーター、そして、負の抵抗係数を有する、すなわちそれらの温度が上昇するとそれらの抵抗値が減少する撮像ボロメーター12に適用される。例えば基板の上に取り付けられた膜の形をとるボロメーター12は、温度変化に対して敏感であるそれらの材料がアモルファスシリコン(a−Si)または一般的に“VOx”と称される酸化バナジウムを有する、半導体タイプのボロメーターである。
【0070】
本発明による方法は、例えば工場で遂行される及び/または時間の経過による検出器のドリフトを考慮するために定期的に遂行される較正段階70によって始まる。
【0071】
この較正段階70は、検出器を、一定の場面、所定の一定の焦点面温度TPFにさらすために、第1のステップ72を必要とする。これを達成するために、その検出器は、例えば、基準の黒い物体の前に置かれるか、もしくは、妥当な場合、検出器の機械的なシャッターが閉められる。温度TPFは、その検出器が使用中であるときに調整される温度である。その中の読み取り回路構成46及び制御回路構成52が形成されると共に、ボロメトリック膜がその上に取り付けられた基板が、光学の焦点面に配置されるので、この温度は、同様に”焦点面の”温度、または“基板の”温度と言われることになる、という点にも注意が必要である。
【0072】
その場合に、ボロメーター12のアレイ40は、ステップ74において、各行が、撮像ボロメーター12にバイアスを印加することになる読み取りスイッチ16を閉じることにより、列の終りに位置する読み取り回路構成46に連続的に接続されることによって、行ごとに読み取られる。行を回路構成46に接続することは、ゼロリセットスイッチ26を閉じることによりコンデンサ24を放電し、その後、ゼロリセットスイッチ26を開くことによって、先行される。このステップ74において、補償回路構成20のトランジスタ32は、共通モード電流を無効にするために、オフの状態に強制され、そして、撮像ボロメーター12は、積分器18のコンデンサ24を飽和させないように、低電圧によってバイアスを印加される。
【0073】
撮像ボロメーター12を流れる電流の積分の結果として生じる積分器18の出力における電圧Voutは、その場合に、アレイ40のボロメーター12の対応する抵抗値を、従来技術からそれ自体は知られている方法で判定するために、管理ユニット69によって分析される。
【0074】
読み取りステップ74が完了すると、従って、焦点面温度TPFに関して、下記のテーブル状の表記法を使用すると共に、検出器のアレイ40のボロメーター12に対応する抵抗値Rac(i,j)の値のテーブルRacが獲得される。
【0075】
【数5】

【0076】
その場合に、このテーブルは、管理ユニット69に格納される。
【0077】
そして、較正段階70は、ステップ76において、撮像ボロメーター12の各々に関する抵抗値補正量を、管理ユニット69を用いて決定することによって続く。
【0078】
更に特に、テーブルRacの測定された抵抗値の最小値
【数6】

が判定されると共に、抵抗値
【数7】

と等しいか、または好ましくはそれより僅かに小さい基準抵抗値Rminが判定される。抵抗値Rminは、検出器が較正段階70における熱照明条件(thermal illumination condition)と同じ一定の熱照明条件にもう一度置かれる特別な場合において、撮像ボロメーター12の抵抗値が読み取りバイアス印加(readout biasing)の前に調整される、本発明に基づいた補正の目標抵抗値である。任意の場面を観察することの一般的な場合において、同じ個々の抵抗値補正は、同じ方法を用いて適用されることになる。以下で更に詳細に説明されるように、これは、結果として場面から独立している抵抗値の除去になる。
【0079】
従って、ステップ76において、以下の表にされた(tabulated:一覧にされた)式によるボロメーター12の抵抗値に関する個々の補正量ΔR(i,j)のテーブルΔRが獲得される。
【0080】
【数8】

【0081】
較正段階70は、その場合に、管理ユニット69を用いて、アレイΔRを格納することを完了する。
【0082】
検出器がユーザーによって使用されるとき、方法の以下の段階が実行される。次の説明は、図4、図5A、及び図5Bと共に読まれるべきである。
【0083】
図4は、本発明が実行される場合の時間の経過による単一の行の抵抗値の変化を例証する。簡単にするために、これらの変化は、検出器を一定の場面にさらすことに対応すると共に、抵抗値の分布は、単に技術的な性質の貢献、及び基板の熱的分布、すなわち較正段階70における条件に等しいそれらを含んでいると仮定されている。明らかに、本発明の興味のあるポイントである任意の場面にさらされる場合の普通の使用に関して、抵抗値の集合(population)に対して起こることが論評されることになる。図5Aは、本発明による方法の第1の実施例が図2におけるシステムによって使用される場合に生成される、様々なスイッチの制御信号を示す。
【0084】
その検出器が使用される場合に、アレイ40の行におけるボロメーター12の抵抗値に関する補正段階80が、前記行の読み取り段階82より前に、そしてできるだけ読み取り段階82に近い時間に実行される。
【0085】
更に特に、アレイ40の行の補正段階80が、制御回路構成52の各々の電圧Vrefを調整することによって、ステップ84において始まる。回路構成52の電圧Vrefは、その場合に、以下で更に詳細に説明されるように、回路構成52と関連付けられた列のピクセル12に対する個別の値に調整される。
【0086】
一度電圧Vrefが個別の値に調整されたならば、補正段階80は、ピクセルの行の選択スイッチ16を開かれた状態に維持しながら、ピクセルの行の補正スイッチ53を閉じることによって、ステップ86において継続する。
【0087】
次のステップ88において、電流源54に接続されたスイッチ56は、その場合に、その役割が更に以下で明瞭にされるであろう“検査”命令に基づいて、ORゲートを通してシーケンサ48によって供給される短い“開始”パルスによって閉じられ、従って、値Irefを有する電流がボロメーター12を流れる。以下の本文において、スイッチ56の閉鎖(スイッチ56を閉じること)は、時系列に、“0”の原点の印を付ける。
【0088】
そのような増幅器の性質を与えられて、回路構成52の演算増幅器58が、非常に高いインピーダンスの非反転入力(+)を有しているという事実に留意すると、電流源54によって生成された電流Irefの全ては、その入力に接続されているボロメーター12を流れる。非反転入力(+)における電圧Vinは、その場合に、“0”の時刻において、次式で示される値であると仮定する。
【0089】
【数9】

【0090】
ここで、Rboloは、ボロメーター12の抵抗値である。表記法Racは、較正段階の間の抵抗値の値(Rac)を、使用中の抵抗値の値(Rbolo)と区別するために、この段階では使用されず、それらの抵抗値が各敏感なピクセルによって観察された場面の要素によって変わるので、これらは一般的に異なる。しかしながら、簡単にするために、図4では、その検出器が使用中であるが、しかし抵抗値の分布が較正状況によって生成された抵抗値の分布と同じになるように慎重に選択される、Rbolo=Racと決定されたこの特別な場合において、状況に従って表記法Rboloが使用される。
【0091】
電流源54をボロメーター12に接続するスイッチ56を閉じるのと同時に、コンデンサ60に接続されているスイッチ64は、同様に、“開始”パルスによって閉じられると共に、これの効果は、ほぼすぐに、比較器62の(+)入力と、それに接続されたコンデンサ60の接極子を、電位Vclampの状態にいたらせることである。
【0092】
回路構成52の増幅器58が電圧フォロアとして搭載されるので、増幅器58の出力電圧は、従って非反転入力(+)上の電圧Vinに等しい。従って、コンデンサ60の端子を横断する電圧Vcapは、“0”の時刻において、次の式に従った値Vcapに強要される。
【0093】
【数10】

【0094】
ここで、Voffは、増幅器58の2つの入力の間のいわゆるオフセット電圧である。
【0095】
ステップ88の持続時間は、ステップ88の間、現在補正されつつある行のボロメーター12の抵抗値Rboloが、それらにバイアスを印加することによって引き起こされたジュール効果にもかかわらず、ほとんど変わらないと考えることを可能にするために、補正段階80の全体の持続時間と比較して十分に短い。ステップ88の持続時間は、本質的にコンデンサ60の電気容量の値、及び電流Irefの値によって変わると共に、それは、一例として約500ナノセコンドである。
【0096】
次のステップ90の最初に、“開始”パルスがロウレベルに戻るとき、コンデンサ60に接続されたスイッチ64の状態は、開状態に変えられる。この段階では、コンデンサ60が、放電されず、そしてそれらの端子を横断する電圧差Vcapを一定の状態に維持すると共に、回路構成52の比較器62の正の入力(+)に接続される枝路が非常に高いインピーダンスを有しているので、“開始”信号がそれ以降アクティブにされるまで、これらの電圧差が保存されることになる点に注意が必要である。
【0097】
この枝路は、従って、浮いている(float)と共に、その電圧V+は、次の式に従った値になる。
【0098】
【数11】

【0099】
ここで、tは“0”の時刻の後でカウントダウンされた時間である。
【0100】
ジュール効果のせいで、(負の抵抗係数を有する)ボロメーター12の自己発熱によって、その抵抗値Rboloが低下する点に注意が必要である。実際には、そしてそれ自体は知られているように、そのようなボロメーターの抵抗値Rboloが、次の式に従って、温度の関数として変化するということが証明された。
【0101】
【数12】

【0102】
ここで、
・Rabsはその値が技術上のパラメータによって変わる、ボロメーターの絶対的な抵抗値であり、
・Eはボロメトリック材料の熱伝導活性化エネルギー(thermal conduction activation energy)であり、
・kはボルツマン定数であり、
・Tはケルビン温度(degrees Kelvin)において表されたボロメーターの絶対温度である。
【0103】
従って、ボロメーターの温度Tがジュール効果のせいで増加する限りにおいて、その電気抵抗は減少する。図4は、直線的な一次の近似として、この減少を概略的に示す。更に、図4において示されたように、もし注入された電流Irefが積分の間に使用されるバイアス電流に相当するならば、2つのセグメントの傾きdR/dtは、補正及び積分段階の間同等である点に、注意が必要である。
【0104】
従って、電圧V+は、次の式に従って、時間とともに変化する。
【0105】
【数13】

【0106】
従って、電圧V+は、その自己発熱の影響のせいで、ボロメーター12の抵抗値における変動ΔRbolo(t)に追随し、それ故、時間の関数として減少する。比較器62の正の入力(+)の電圧V+が、ステップ92によって具体化されたその負の入力(−)の電圧Vrefを上回るかぎりは、電流源54に接続されたスイッチ56を制御する“検査”信号は、ORゲート63を通して“ハイ”状態に維持される。スイッチ56は、従って、閉じられた状態を維持し、そして、電流Irefは、対応するボロメーター12を流れ続けると共に、電圧V+は減少し続ける。
【0107】
電圧V+が、比較器62の負の入力(−)に与えられる電圧Vrefに達するとき、ステップ94において、比較器62の出力はゼロに変化すると共に、これは、スイッチ56を開く効果を有し(“開始”信号が“ロー”状態になるので、ORゲート63が“ロー”状態を確立する。)、従ってボロメーター12への電流の注入を停止させる。現在補正されつつある行のピクセル42のスイッチ53は、その場合に、ステップ96において発生する“補正”命令の状態の変化によって開かれる。
【0108】
本発明によれば、補正回路構成52の電圧Vrefは、次の式に従った値に調整される。
【0109】
【数14】

【0110】
ΔR(i,j)は、回路構成52が接続されているピクセル42のボロメーター12に関連するアレイの個別の値ΔRに対応する。
【0111】
従って、スイッチ56がその開状態に変わるとき、そしてこの時刻に条件“V+=Vref”が満たされる限り、ボロメーターの抵抗値は、ΔR0(i,j)に等しい変動ΔRを受ける。
【0112】
図4は、特に、補正される過程にある単一の行iの最高抵抗値(RboloMAX)、最低抵抗値(RboloMIN)、及び任意の中間抵抗値(Rbolo(i,j))における、時間の経過に伴う変化を示す。電流の注入は、提示された原理に従ってそれぞれの値ΔR(i,j)によって定義される時刻の各抵抗値において止まる(その抵抗がもはや減少しない)。好ましくは調整できる方法でシーケンサ48によって制御される“補正”信号は、最も高い抵抗値(“0”の時刻のRboloMAXに等しい)がテーブルΔR(i,j)における最も大きい量ΔRだけ変化する時間を有するのに十分である持続時間の間、“ハイ”状態に維持される。簡単にするために選択された特別な場合において、較正段階の温度条件を再現する図4を説明する場合、ステップ94において、全ての抵抗値は、値Rminで変化することを終える。
【0113】
その方法は、その場合に、その間に、積分器18のコンデンサ48を放電するために、ステップ98(この動作はステップ80と並列に作動するので図5Aにおいては図示されない)において読み取り回路構成46のゼロリセットスイッチ24が閉じられ、そして再度開けられ、次に、行のピクセル12を読み取り回路構成46に接続するために、ステップ100において、“選択”命令を活性化することによって、上記で説明されたように、あらかじめ設定された積分時間Tintを定義する持続時間の間、現在読まれつつある行のピクセル12の読み取りスイッチ16が閉じられる、読み取り段階82によって継続する。
【0114】
問題のボロメーターに応じて変化する、ステップ94とステップ100との間の時間期間の間、ボロメーターの温度は、ボロメーターの熱時定数によって制限されるレートで、その均衡値に戻る傾向があり、これは、問題の非常に短い時間(数マイクロセカンド)を与えられて、結果として、図4において示されたように、あらゆる克服できない副作用を持たずに、典型的に分布の順序の反転を伴う、抵抗値における自然変動のわずかな復元になる。
【0115】
方法のステップ82は、その場合に、抵抗値を補正すると共に、アレイ40の次の行i+1のボロメーターを読み取るために、ステップ84にループする。同時に、行i+1に関するステップ88の開始とステップ100の開始との間に、サンプリングしてホールド(hold:保持)する動作(図5Aには図示されず)が行iの電圧Voutに関して実行される。必要なら、それ自体は知られているように、出力増幅器49に対する信号のストリームの多重化は、行i+1に関する積分段階に及ぶことができる。
【0116】
図4は、値Rminを値Rac(i,j)のセットより下方に設定することの魅力を示す。この手順を採用すると、全ての抵抗値の値は、電流Irefを注入することによる積分ステップの開始前に補正される。もし値Rminがあまりにも高い値に設定されるならば、いくらかのボロメーターは、実際には、抵抗値の調整によって影響を受けないであろうと共に、これは、局所的な補正不良のために、画像の歪みを生み出すであろう。一方、もしこの値が最小の分布値よりも著しく下方に設定されるならば、これは、全ての抵抗値の標準化を獲得するために、無意味な長い持続時間を必要とするであろうと共に、これは欠点以外の何も有していないであろう。他の特別な制限なしで、当業者には習慣的であるように、図4において指定されない時間期間は、基準を決定する名目上の信号に基づいて定義される。
【0117】
それらのボロメーターが読み取られる前に、それらの抵抗値は、従ってあらかじめ設定された量によって補正される。数値例として、抵抗値の補正には、ジュール効果による2%の抵抗値オフセットを適用するために、通常は4〜8マイクロセカンドを要する。更に一般的には、電流Irefが印加される時間は、数マイクロセカンドであり、この時間は、数十マイクロセカンド持続するか、または通常は16msに等しい読み取りフレームの持続時間である、通常の積分時間Tintと比較すると短い。更に、上記で説明された回路または動作を変更する必要なしに、より高い電流Irefを印加することによって、補正の持続時間を短くすることが可能である点に注意が必要である。
【0118】
図示されたように、図4は、温熱条件が較正段階を代表する場合における、補正される前(ヒストグラムA)と補正された後(ヒストグラムB)の、アレイ40の撮像ボロメーター12の抵抗値の集合(population)を示す。本発明による補正によって、それらが読み取られる前に、ボロメーター12の抵抗値の変動性が大幅に減少する点に注意が必要である。従って、オフセットの変動性が形成された画像に及ぼす影響は、大幅に低下し、そして、残存する動的応答は、大幅に増加する。
【0119】
一般的な使用の場合において、任意の場面にさらされるとき、抵抗値の分布は、各ボロメーター12によって吸収された放射フラックス(radiant flux)によって定義される。その結果、補正ステップ80の前のヒストグラム“A”は、通常は異なる形を有しており、そして、とりわけ更に広いであろう。それでもなお、上述のように適用された補正ステップ80は、ステップ94において、これらの抵抗値Rbolo(i,j)の各々が、標準状態の下でその個々のオフセットを代表する量ΔR(i,j)だけ減少したその値を有することになるから、結果として、抵抗値のいわゆる自然の変動の発生率を考慮するように補正されたヒストグラム“B”になる。最終値は、もはや一様にRminではなく、場面を理想的に表現するだけの値になる。
【0120】
その上、ほとんどの場合、積分ステップ100の前のこのヒストグラム“B”の幅は、(補正の振幅の幅によって)補正されていないヒストグラム“A”の幅より小さいと共に、これは、結果として、検出器の動的な場面応答における感知できるほどの利得になる。
【0121】
すなわち、ボロメーター12の抵抗値を更に低い抵抗値へ変更することは、どのような場合でも、ボロメーター12の抵抗値の値に含まれる場面から獲得された熱情報を無効にしないことが注目されるべきである。実際には、ボロメーター12の抵抗値を補正することは、補正が適用された時刻における抵抗値の値に依存していない量に基づいて抵抗値を単に変更することを必要とする。これのために、場面の熱的分布と関連付けられた抵抗値の分布は、較正段階の後で、抵抗値にまだ存在する。
【0122】
上述のように、この補正は、従って、“1点”タイプのオフセット較正と類似しており、すなわち、積分器18の出力における電圧Voutの連続的なレベルにおいて、その後に関連する補正を従えている機械的なシャッターを閉じることに相当する。しかしながら、読み取り回路に配置されない電子機器及び/またはアルゴリズムを使用して実行されるこのタイプの補正と対照的に、本発明による補正は、動的応答に関する制限を、検出器の出力における信号に全く課さない。それどころか、抵抗値の変動性、従ってボロメーター12が読み取られるときのボロメーター12を流れるバイアス電流Iacの変動性を減少させることによって、そのユーザーが選択するように、残存する動的応答を向上させるか、及び/または、ボロメーター12のバイアス電圧を増加させることが可能である。
【0123】
更に、本発明による補正の直接的な結果として、追加の計算または処理を適用するあらゆる必要性なしに、感度の変動の大部分が消去される点に注意が必要である。実際には、感度は、各抵抗値の値に逆比例する。
【0124】
図6及び図7は、プログラム可能な電圧源66の実施例の例を示す。
【0125】
図6において示された第1の例は、アナログの多重通信に基づいている。電圧源66は、制御回路構成52の比較器62の負の電極とグランド(アース)との間に接続されているコンデンサ110と、前記負の入力とアナログ多重化バス114との間に接続されている制御可能なスイッチ112とを備える。このバス114自身は、例えば電圧源66によって生成される必要がある電圧Vrefのnビットのデジタル値をその入力において受け取るデジタル/アナログ変換器116に接続されている。このデジタル電圧値は、関連する管理ユニット69によって、検出器に供給されると共に、下記で詳述されるように、ステップ84の間に、シリアルモードでバス114を介して送信される。
【0126】
特定のアナログ電圧Vrefを生成するために、変換器116を用いて、この電圧に対応するデジタル値が、最初にバス114上のアナログ電圧Vrefに変換される。次に、スイッチ112が閉じられて、コンデンサ110が電圧Vrefまで充電される。一度充電が終わると、スイッチ112が開かれ、バス114と変換器116は、別の制御回路構成52の電圧Vrefを調節するために使用されるように、フリー(free)の状態にされる。一度回路構成52の行の全ての電圧Vrefが充電されたならば、前記電流は、本発明に従って使用される準備が整うと共に、その処理過程は、次の行に関係する電圧Vrefを充電することによって再スタートする。
【0127】
アナログ多重化は、わずかな漏洩電流による前もって充電された電圧Vrefに対する一時的変化にもかかわらず、これらの電圧が維持される有益な時間が、おおよそ1行の時間、すなわち数十マイクロセカンドに対応するので、本発明を実施するために使用され得る。
【0128】
図7において示される電圧源66の実施例の第2の例は、デジタル多重化に基づいている。電圧源66は、その出力が制御回路構成52の比較器62の負の入力に接続されているデジタル/アナログ変換器122と、その出力が変換器122の入力に接続されているnビットのデジタルレジスター124と、レジスタ124の入力とnビットのデジタル多重化バス128との間に接続されている制御可能なスイッチ126とを備える。
【0129】
電圧源66が特定のアナログ電圧Vrefを生成するために、この電圧のためのデジタル値が、最初に検出器と関連付けられた管理ユニット69によりバス128上で生成され、その後、スイッチ126が閉じられる。バス128上のデジタル値は、その場合に、レジスタ124に格納されると共に、変換器122によって電圧Vrefに変換される。一度レジスタ124内への格納が終われば、スイッチ126は開かれ、バス128は、別の制御回路構成52の電圧Vrefを調節するために使用されるように、フリー(free)の状態にされる。一度回路構成52の行の全てのレジスタ124がプログラムされたならば、前記回路は、本発明に従って使用される準備が整うと共に、その処理過程は、電圧Vrefを生成することに関係し、そして、次の行を読み取るために必要とされるデジタルデータをロードすることによって再スタートする。
【0130】
更に、図4において証明されたように、アレイ42の行の全てのボロメーター12の抵抗値の補正を獲得するのに必要とされる時間が、補正量ΔR(i,j)によって変わる点に注意が必要である。値ΔR(i,j)が等しくないので、補正時間は、従って、1つのボロメーターから別のボロメーターまで異なる。更に、一行のボロメーターは、必ず同期して読み取られる。従って、較正段階80の持続時間は、単一の行におけるボロメーターの抵抗値の全ての補正が効果的であるように、そして、この行の読み取り段階82が較正段階80の終りの後で極度に待つことなく始まるように、選択されなければならない。実際には、それは、検出器の熱平衡に特有であるボロメーターの抵抗値の変動性のあらゆる復元(restoral)を回避するために、読み取り段階82にとって、更に特に、読み取り段階82の抵抗値の補正にできる限り近く実行されるべき積分段階にとって都合が良い。実際には、既に説明されて、図4において示されたように、そのような復元は、ボロメーターの熱時定数と関係がある自然の緩和効果によって生成される。
【0131】
概して言えば、従って、その持続時間が補正段階82の持続時間より少ないボロメーター12の特定の補正の終わりと、そのボロメーターに関して実行される積分段階100の始まりとの間には、わずかな時間のずれがあり得る。この時間のずれは、しかしながら、読み取りフレーム(通常16ms)の時間、及び伝統的に5ms〜15msであるボロメーターの熱時定数より、それが小さいままである限り、重要ではない。
【0132】
更に、上述のシステムは、全てのボロメーターに関して等しい補正時間ΔTを獲得するために行われるべき補正に応じて電流Irefを出力する制御回路構成52の電流源に関して、図2に関連して説明された実施例と異なる第2の実施例に従って変更され得る。
【0133】
この場合、電流Iref(i,j)のテーブルは、例えば下記で提案された式に従って、補正量ΔR(i,j)のテーブルに基づいて計算され、モジュール52は、電流Irefのプログラミングの手段と関連付けられると共に、例えば図8において示されたレイアウトを有する定電流源54まで減らされる。図5Aにおいて示された機能的なタイミング図は、要約すると、持続時間ΔTにおいて“ハイ”状態に変更される“補正”信号ということになる。この実施例は、電流Irefが印加される時間ΔTは、シーケンサ48によって制御されるスイッチ53の状態によって、直接的に定義され得るので、スイッチ56を全く必要としない。
【0134】
この場合、アレイ40の行iに関する補正段階80は、回路構成52の定電流源54の各々によって生成されるべきである電流を個々にデジタル的にプログラミングすることで、ステップ84において始まる。補正段階80は、開かれた状態を維持するピクセルの選択スイッチ16と共にピクセルの行のスイッチ53を閉じることに対応するステップ86において継続する。この段階は、あらかじめ設定された持続時間Δtの後で、スイッチ53を開く(“補正”命令が“ロー”の状態に戻る)ことによって、ステップ96において、終了する。処理過程の残りは、以前に説明された処理過程と同じである。
【0135】
電流値をロードすることは、通常は、図7に関連して説明された多重化と類似すると共に、図8に概略的に示される多重化を用いてデジタル的に実現される。この場合、DACは、一度に1行ずつ更新されている各列の定電流源54によって出力された電流の値によって列当たり1つの定電流源を制御する。
【0136】
第3の実施例が下記で説明される。この実施例は、図9Aにおいて例証されたように、ボロメーター12の抵抗値52のための制御回路によって、図2における実施例と異なる。
【0137】
この実施例において、制御回路構成52は、第1の実施例における制御回路構成52のように、固定値Irefを有する電流を出力することが可能であると共に、その1つの入力が“開始”命令によって制御されたOR論理ゲートによって制御されるスイッチ56を介して列バス50に接続された電流源54を備える。もう一方の入力は、インターバルタイマ142の出力の後に続く(出力に接続される)。持続時間t(i,j)の値は、制御回路52が接続されているピクセル12の関数として、タイマ142において、nビットであらかじめプログラムされる。タイマのカウントダウンは、“開始”パルスが“ロー”状態に戻るときに、ORゲートを介して“検査”信号の“ハイ”状態を確立するタイマ142に関する“開始”命令によってトリガ(誘発)される。図5Aにおけるデジタル信号のためのタイミング図は、全てのポイントで適用される。
【0138】
更に特に、ボロメーター12を通して定電圧Vacにおける電流が流れるときのボロメーター12の温度が、次の式に従ってモデル化されることが証明された。
【0139】
【数15】

【0140】
ここで、
・Cthはボロメーターの熱容量であり、
・Rthは基板に対するボロメーターの熱抵抗値であり、
・Pirは、ボロメーターによって吸収された赤外放射のパワーであり、
・TPFは、焦点面の絶対温度であり、そして、
・θはボロメーターを流れる電流によって引き起こされたボロメーターの温度上昇である。
【0141】
更に、非線形の微分方程式の解法に頼らなくても、本発明が、一般的に抵抗値における相対的な変動の係数が温度の関数である、すなわち“TCR=−E/(k.TPF)”か、または“抵抗係数”が同じ次数つまり“−2%/K”の係数であるボロメトリック材料に関して約2%であるテーブルRacの極値の間の非常に小さな相対偏差を補償するように設計されていることは明白である。
【0142】
最も抵抗性の(抵抗力のある)ボロメーターに関して到達されるべき、ΔR(i,j)に対応する温度差θ(i,j)は、従って非常に小さく、そして、およそ1度である。もしそのボロメーターが、通常ボロメーターを読み取るために使用される電流とおおよそ同じ等級(order)の電流に支配されるならば、そのような温度上昇は、数マイクロセカンド以内に成し遂げられる。この持続時間は、通常5ms〜15msであるボロメーターの熱時定数と比較すると、取るに足らない。熱損失の平衡を表す式(10)における項
【数16】

は、従って無視され得る。
【0143】
更に、本発明が、入射する赤外放射にさらされたときに平衡温度に到達する基準点を越えた変動を抵抗値に与える(impose)ことを目標としているので、項Pirは、従ってボロメーターの温度上昇の持続時間には関連していない。
【0144】
最終的に、式(10)における項が絶対温度TPFと比較すると取るに足らないので、温度上昇θは、次式に従った時間tの関数としてモデル化され得る。
【0145】
【数17】

【0146】
従って、式(12)の補助によって、次式に従って抵抗値補正量ΔR(i,j)を獲得するために、ボロメーター12に適用されるべきである温度上昇の持続時間t(i,j)を判定することが可能である。
【0147】
【数18】

【0148】
従って、本発明の第3の実施例によれば、個々の抵抗値補正量のテーブルΔRは、前記量を生成するために適用されるべきである温度上昇の持続時間t(i,j)を含むテーブルΔTと交換される。ピクセル12のアレイ40の行に関する較正段階は、従って、対応する持続時間の値をインターバルタイマ142にロードし(読み込み)、スイッチ56を閉じて(スイッチ16が開いた状態を維持し、そしてスイッチ53が閉じられている)、そして、個々にカスタマイズされた持続時間t(i,j)の後でそれらスイッチ56の各々を開くことを必要とする。行の各々のボロメーター12の抵抗値は、従って、それらの対応する量ΔR(i,j)によって補正される。
【0149】
それでもなお、図2に関連して説明された第1の実施例は、好ましくは時間t(i,j)において、それらが解法によって、もしくは式(13)に従って計算されるか否かに拘らず、値Cthに依存する。全てのボロメーター12に関してCthの1つの値を使用することは、ボロメーターのこのパラメータが自然の技術上の変動性を示す限り、不正確な測定につながり得る近似法(approximation)である。更に、焦点面の温度に関して1つの値TPFを使用することは、その基板が空間的に一定の温度を有していると仮定することに相当し、これは、常にその場合であるとは限らず、そして、従って、基板10に取り付けられたか、または基板10に埋め込まれたいくらかのセンサを用いた焦点面の空間に関する温度分布に対して、時間t(i,j)を計算する場合に、それが補正ユニットによって考慮されない限り、これは、同様に不正確な情報源(source)になる(不正確なものを生み出す)。
【0150】
この第3の実施例は、それによって電流の注入の終わりに対応するステップ94が全ての回路構成52に関して同時に起こる動作と、有利に関連付けられることができる。そのような動作は、テーブルΔTにおいて最初に最も抵抗性であるボロメーターに対応する時間t(i,j)MAXと相対的な追加の時間t(i,j)に対応する待ち時間の後で、各回路構成52のスイッチ56を閉じることによって獲得される。
【0151】
図5Bにおけるタイミング図に関連して、図9Bは、この結果をもたらす制御回路構成52の変形を示す。図5Bでは、“検査(RboloMIN)”信号、“検査(RboloMAX)”信号、及び“検査(Rbolo(i,j))”信号だけが示され、“開始”信号、“補正”信号、及び“選択”信号は、図5Aにおけるそれらの信号と同じである。
【0152】
図9Bにおいて、図9Aで使用されるORゲートはNORゲートと交換され、そして、タイマ142の出力極性は反転される。更に、タイマ142を事前ロード(preload)するために使用されるテーブルΔTは、各要素が[t(i,j)MAX−t(i,j)]に等しい追加のテーブルCΔTと交換される。前と同様に、“開始”信号は、追加の時間Ct(i,j)が経過した場合に関連するスイッチ56を閉じる各タイマ142に関する個々の時刻のカウントダウンを開始する。スイッチ53を閉じること(“補正”信号が“ロー”状態にある)は、同じ時刻における、単一の行の全てのボロメーターに関する電流の注入、及び補正ステップ80の終わりを明らかにする。
【0153】
従って、全てのボロメーターは、段階100の開始前に、熱平衡に戻るのに同じ時間を有すると共に、この時間は、有利に、非常に小さな値に調節可能である。約10MHzの通常のクロック周波数は、容易に効果的にこの第3の実施例に従って本発明を実行するのに十分に正確である、約50〜100ns単位の時間増分を可能にする。
【0154】
従って、この実施例は、もしパラメータCthの技術上の変動性が、場面から独立している他の変動の影響に関して、出力信号Voutのごくわずかな変動性を生成すると考えられ得るならば、概して、その回路が、第1の実施例による実現の例として与えられる図2における回路と比較すると更に簡単であるという点で、単に好ましいであろう。
【0155】
上述のように、積分の前の抵抗値における変動は、先に言及された第2の実施例によれば、一定の持続時間Δtの間印加された電流Irefによって与えられ得る。この場合、式12を導くのと同じ考察事項に留意すると、温度上昇θの一次の表現が次式のようになることを証明することは容易である。
【0156】
【数19】

【0157】
“ΔR=TCR.θ”のように、(一覧にされた関係(3)によって)抵抗値における絶対的な変動量は、次式によって表される。
【0158】
【数20】

【0159】
電流Iref(i,j)は、従って、次式によって表され得る。
【0160】
【数21】

【0161】
この表現は、選択された持続時間Δtの間印加されるべきである、各電流Iref(i,j)の数値的推定を可能にする。本発明のこの実装は、好ましくは非常に積分段階の始まりに近い時刻において現在処理されつつある行のボロメーター12の全ての抵抗値を、積分の前に、場面から独立している変動しない値に、同時に設定するという利点を有する。その場合に、基本的に、平衡に向けての熱緩和と関連付けられた変動が、自らを明示するための十分な時間はない。
【0162】
この実施例の場合、図4における曲線のような図における曲線Rbolo(t)は、持続時間Δtの終りに値Rminを有する1つのポイントに収束する、異なるスロープ(slope)を有する一連のセグメントを示す。持続時間Δtは、第一に、所望の補正の正確度に適しており、そして、第二に、行の時間を拡張しない、例えば各行の積分段階に先行し、そして各行の積分段階に後続する、サンプリングすると共にホールドする段階に必要とされる時間以下である値に対する電流Iref(i,j)の関連する設定のおかげで、調整可能である。
【0163】
上述の実施例は、その温度が上昇するとその抵抗値が減少するボロメトリック材料、すなわちアモルファスシリコン(a−Si)または酸化バナジウム(VOx)から成る半導体材料のような負の抵抗係数を有するボロメトリック材料で作られたボロメーターに適用される。
【0164】
しかし、本発明は、更に、正の抵抗係数を有するボロメトリック材料、すなわち金属、特にチタンのような、それらの温度が上昇するとそれらの抵抗値が増加する材料に適用される。
【0165】
この応用例において、本発明による補正は、較正段階の間に獲得された抵抗値のテーブルRacの抵抗値Rmaxの周辺に実質的に収束する分布を獲得するために、上述のように、各ボロメーターの抵抗値を減少させるより、むしろ各ボロメーターの抵抗値を増加させることを必要とする。
【0166】
温度制御されたボロメトリック検出器に適用される本発明の実施例が、同様に、上で説明される。
【0167】
しかし、本発明は、更に、温度制御されていないと共に、更に一般的に“TEC−less”と言われる検出器に適用される。
【0168】
そのような応用例の第1のバージョンにおいて、補正量ΔR(i,j)は、基板に設置されたセンサ、例えば読み取り回路構成内に直接形成された半導体センサで測定された焦点面の温度の関数として、補正段階の最初に調整される。例えば、検出器の較正段階の間、それぞれの持続時間ΔTを有する複数の補正テーブルΔRが、いくらかの焦点面温度TPFの関数として獲得されると共に、検出器に格納される。その検出器が使用されるとき、これらの格納されたテーブルの内の1つの特定のテーブルが、焦点面の測定された温度TPFmesの関数として、選択されるか、もしくは補間される。しかしながら、この設計は、いくらかの基準テーブルを獲得することを必要にし、そして、これは長いと共に、従って高価な処理になり得る。
【0169】
1つの好ましいバージョンにおいて、単一の基準テーブルRacが、検出器の較正段階の間に獲得される。温度の関数としてボロメーターの抵抗値の変動の既知のモデル、例えば式(7)が存在するので、抵抗値RacTPFmesのテーブルが、焦点面の測定された温度TPFmesの関数、そして基準テーブルRacの関数として、検出器を使用するときに、規則正しく、及び/または、定期的に計算される。式(7)を使用すると、個別の値RacTPFmes(i,j)は、その場合に、次式に従って計算される。
【0170】
【数22】

【0171】
一度テーブルRacTPFmesが計算されると、上述のように、補正テーブルΔRが判定され、その後、対応する基準電圧Vref、または電流Iref(i,j)、または対応する温度上昇の持続時間t(i,j)が判定される。
【0172】
ボロメーターの抵抗値のモデルを温度の関数として用いることは、従って、複数の抵抗値のテーブルを獲得しなければならないことを回避するのを可能にする。
【0173】
更に、補正された抵抗値の変動性を減少させることによって、更にもっと本発明による補正の正確度を向上させるために、焦点面の温度の空間的な変動が、更に、焦点面に設置されるいくらかの温度センサを使用することによって考慮され得る。その場合に、各撮像ボロメーターの位置における基板の温度を判定するために、焦点面温度の空間的なモデル化が、温度測定値の関数として使用される。ボロメーターの抵抗値を補正するのに必要とされる量は、その場合に、基板の対応する温度の関数として計算される。
【符号の説明】
【0174】
10 ピクセル(画素)
12 撮像ボロメーター
14 第1のMOS注入トランジスタ
16 読み取りスイッチ
18 積分回路
20 補償回路
22 演算増幅器
24 コンデンサ
26 ゼロリセットスイッチ
28 補償ボロメーター
30 不透明なシールド
32 第2のMOS注入トランジスタ
40 アレイ
42 ピクセル
44 列読み取りバス
46 読み取り回路構成
48 タイマ回路構成
49 出力増幅器
50 列補正バス
52 制御回路構成
53 補正スイッチ
54 電流源
56 第1の制御可能なスイッチ
58 演算増幅器
60 コンデンサ
62 比較器
63 ORロジックゲート
64 第2のスイッチ
66 電圧源
69 補正管理ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外放射を検出するための装置であって、
・前記放射を検出するためのボロメーター(12)のアレイ(42)と、
・各ボロメーター(12)を読み取るために、
○前記ボロメーターを通して電流を流すためにあらかじめ設定された電圧で前記ボロメーターにバイアスを印加することができる読み取りバイアス印加回路構成(14)、
○共通モード電流を生成することができる共通モード除去回路構成(20)、及び、
○前記ボロメーターを流れる前記電流と前記共通モード電流との間の差を積分することができる積分回路構成(18)、
を有する信号成形回路構成(14、46)とを備え、
前記装置が、
前記ボロメーターの抵抗値を前記ボロメーターのオフセットによって決まるあらかじめ設定された量だけ変更するために各ボロメーターに電流を注入することができる、前記ボロメーターの前記抵抗値を補正するための回路構成(52)を備え、
前記電流の注入が、前記ボロメーターの読み取りバイアス印加の前に実行され、
前記変更が、前記ボロメーターの前記抵抗値が温度の関数として変化する方向に従って実行され、
前記補正回路構成(52)が、前記ボロメーターの前記抵抗値を共通の値に向けて変更することができる
ことを特徴とする赤外放射を検出するための装置。
【請求項2】
前記補正回路構成(52)が、前記オフセットによって決まる量の関数として判定される持続時間の後で電流の注入を止めることができるタイミング手段(142)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の赤外放射を検出するための装置。
【請求項3】
各ボロメーター(12)が、基板の上に取り付けられた半導体タイプのボロメトリック膜を備えると共に、
前記タイミング手段(142)が次式に従う期間の後で電流の注入を止めることができ、
【数1】

ここで、t(i,j)はあらかじめ設定された前記持続時間であり、ΔR(i,j)は前記オフセットによって決まる量であり、kはボルツマン定数であり、TPFは前記基板の温度であり、Cthは前記ボロメーターの熱容量であり、Eは前記ボロメーターが作られているボロメトリック材料の熱伝導活性化エネルギーであり、そして、Vacは前記ボロメーターの端子を横断する電圧である
ことを特徴とする請求項2に記載の赤外放射を検出するための装置。
【請求項4】
前記補正回路構成(52)が、前記ボロメーター(12)に電流を注入するために、
・定電流源(54)と、
・前記電流源を前記ボロメーター(12)に接続し、そして前記電流源を前記ボロメーター(12)から切断することができる第1の制御可能なスイッチ(56)と、
・前記ボロメーター(12)の前記端子を横断する前記電圧を、前記オフセットによって決まる第1のあらかじめ設定された電圧と比較する回路(58,60,62,64,66)と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の赤外放射を検出するための装置。
【請求項5】
前記比較回路(58,60,62,64,66)が、
・前記ボロメーター(12)と接続された非反転入力を有する電圧フォロアとして実装された演算増幅器(58)と、
・前記演算増幅器(58)の出力に第1の端子によって接続されたコンデンサ(60)と、
・前記第1の制御可能なスイッチ(56)の開閉を制御する出力、及び前記第1のあらかじめ設定された電圧を受け取る反転入力を有すると共に、前記コンデンサ(60)の前記第2の端子に非反転入力によって接続された比較器(62)と、
・前記コンデンサ(60)の前記第2の端子と第2のあらかじめ設定された電圧との間に接続された第2の制御可能なスイッチ(64)と、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の赤外放射を検出するための装置。
【請求項6】
前記第1及び第2のあらかじめ設定された電圧が次式を満たし、
【数2】

ここで、Vref(i,j)は前記第1の電圧であり、Vclampは前記第2の電圧であり、Irefは前記電流源によって出力される定電流であり、ΔR(i,j)は前記ボロメーターのオフセットによって決まるあらかじめ設定された量である
ことを特徴とする請求項5に記載の赤外放射を検出するための装置。
【請求項7】
前記補正回路構成が、前記ボロメーターに、前記ボロメーターの前記オフセットによって決まるあらかじめ設定された量によって決まる値を有する電流を注入することができる
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記電流の前記値が次式を満たし、
【数3】

ここで、Iref(i,j)は前記電流の前記値であり、ΔR(i,j)は前記オフセットによって決まる値であり、kはボルツマン定数であり、TPFは前記基板の温度であり、Cthは前記ボロメーターの熱容量であり、Eは前記ボロメーターが作られているボロメトリック材料の熱伝導活性化エネルギーであり、Rac(i,j)は前記ボロメーターの前記抵抗値であり、そして、Δtはその間に前記電流が印加される時間である
ことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記ボロメーターの前記抵抗値を制御する前記回路構成(52)が、実質的に同時に前記電流の注入を終了させるために、ボロメーターのあらかじめ設定されたセットの前記ボロメーターに対する電流の注入を一時的に延期することができる
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
ボロメーターの前記アレイ(42)が、一度に1行を読まれ、抵抗値制御回路構成を含む前記補正回路構成(52)が、ボロメーターの前記アレイ(42)の各列の終りに配置されると共に、各ボロメーターの抵抗値を制御するために、前記列において各ボロメーター(12)に接続されることができる
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の赤外放射を検出するための装置。
【請求項11】
ボロメーターのアレイを使用することによって赤外放射を検出する方法であって、この方法は、前記ボロメーターを読み取るために、
・前記ボロメーターを通して電流を流すために、あらかじめ設定された電圧で前記ボロメーターにバイアスを印加するステップと、
・前記ボロメーターを流れる前記電流から共通モード電流を減算するステップと、
・前記ボロメーターを流れる前記電流と前記共通モード電流との間の差を積分するステップと、で構成され、
前記方法は、前記ボロメーターの前記抵抗値が温度の関数として変化する方向に従って、前記ボロメーターの前記抵抗値を前記ボロメーターのオフセットによって決まるあらかじめ設定された量だけ変更するために、そして、前記ボロメーターの前記抵抗値を共通の値に調整するために、前記ボロメーターを読み取る前に電流を前記ボロメーターに注入することを必要とする
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記ボロメーターと関連付けられた前記オフセットによって決まる前記あらかじめ設定された値が、
・前記アレイを一定の場面にさらすこと、
・前記ボロメーターの対応する前記抵抗値を判定すること、そして、
・負の抵抗係数を有するボロメーターの場合は、前記抵抗値から、前記判定された抵抗値の最も小さいものに実質的に等しい量を減算すること、または、負の抵抗係数を有するボロメーターの場合は、前記抵抗値から、前記判定された抵抗値の最も大きいものに実質的に等しい量を減算すること、
によって決定されることを特徴とする請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【公表番号】特表2012−525573(P2012−525573A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507800(P2012−507800)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050746
【国際公開番号】WO2010/125281
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(505296968)
【Fターム(参考)】