説明

赤外線固体撮像素子

【課題】信号の読み出し時のノイズを可及的に少なくすることを可能にする。
【解決手段】半導体基板上に形成され、入射赤外線を検出する赤外線検出画素1211であって、赤外線検出画素は入射赤外線を吸収して熱に変換する赤外線吸収膜と、この赤外線吸収膜によって変換された熱を電気信号に変換する第1熱電変換素子14と、を有する熱電変換部を備えている赤外線検出画素1211と、第1熱電変換素子の一端が接続され赤外線検出画素からの電気信号を読み出すための信号線18と、信号線から読み出された電気信号を増幅する増幅器31と、第2熱電変換素子14を有し、第2熱電変換素子の一端が信号線に接続されて第1熱電変換素子と直列に接続される参照画素11と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線は、可視光よりも煙、霧に対して透過性が高いという特長を有するので、赤外線撮像は、昼夜にかかわらず可能である。また、赤外線撮像は、被写体の温度情報をも得ることができるので、防衛分野をはじめ監視カメラや火災検知カメラのように広い応用範囲を有する。
【0003】
近年、冷却機構を必要としない「非冷却型赤外線固体撮像素子」の開発が盛んになってきている。非冷却型すなわち熱型の赤外線固体撮像素子は、入射された波長10μ程度の赤外線を赤外線吸収膜により熱に変換し、この変換された微弱な熱により生じる感熱部の温度変化をなんらかの熱電変換素子により電気信号に変換する。非冷却型の赤外線固体撮像素子は、この電気信号を読み出すことで赤外線画像情報を得る。
【0004】
例えば、一定の順方向電流を与えることにより温度変化を電圧変化に変換するシリコンpn接合を用いた赤外線固体撮像素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。この赤外線固体撮像素子は、半導体基板としてSOI(Silicon on Insulator)基板を用いることによって、シリコンLSI製造プロセスを用いて量産することができるという特長がある。また、熱電変換手素子であるシリコンpn接合の整流特性を利用して、行選択の機能を実現しているので画素構造が極めてシンプルに構成できるという特長もある。
【0005】
赤外線固体撮像素子の性能を表す指標の一つは、赤外線固体撮像素子の温度分解能を表現するNETD(Noise Equivalent Temperature Difference(等価雑音温度差))である。NETDを小さくすること、すなわち、雑音に相当する検出温度差を小さくすることが重要である。そのためには信号の感度を高くすること、および雑音を低減することが必要である。
【特許文献1】特開2002−300475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、増幅トランジスタの閾値ばらつきの影響を低減するための閾値電圧クランプ処理が記載されている。この閾値電圧クランプ処理は、サンプリングトランジスタがオンになると、信号線と容量結合された増幅トランジスタのゲートに負電荷が蓄積される。このとき、信号線と増幅トランジスタとの間の結合容量の電圧は、(Vdd−Vref)−Vthに収束させることが好ましい。ここで、Vddは行選択回路が画素に与えるバイアス電圧であり、Vrefは定電流源から信号線に与えられる電圧であり、Vthは画素の閾値電圧である。この閾値電圧クランプ処理では、信号の読み出し時に、各列の増幅トランジスタの閾値電圧のばらつきを補償することができるが、閾値電圧のクランプを行った瞬間に信号線に存在するノイズ成分がホールドされてしまい、以降、行選択時に常にその情報を参照するため、縦スジ状のノイズが現れるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、信号の読み出し時のノイズを可及的に少なくすることのできる赤外線撮像素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様による赤外線撮像素子は、半導体基板と、前記半導体基板上に、入射赤外線を検出する複数の赤外線検出画素がマトリクス状に配列された撮像領域であって、各赤外線検出画素は前記入射赤外線を吸収して熱に変換する赤外線吸収膜と、この赤外線吸収膜によって変換された熱を電気信号に変換する第1熱電変換素子と、を有する熱電変換部を備えている、撮像領域と、前記撮像領域内に、前記赤外線検出画素の各行に対応して設けられ、それぞれが対応する行の赤外線検出画素の前記第1熱電変換素子の一端に接続されて前記対応する行の赤外線検出画素を選択する、複数の行選択線と、前記撮像領域内に、前記赤外線検出画素の各列に対応して設けられ、それぞれが対応する列の赤外線検出画素の前記第1熱電変換素子の他端に接続されて前記対応する列の赤外線検出画素からの電気信号を読み出すための複数の信号線と、各信号線に対応して設けられた複数の増幅器であって、各増幅器は対応する信号線から読み出された電気信号を増幅する、複数の増幅器と、各信号線に対応して設けられ、それぞれが第2熱電変換素子を有する複数の参照画素であって、各参照画素の第2熱電変換素子の一端が対応する信号線に接続される、複数の参照画素と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の第2の態様による赤外線撮像素子は、半導体基板と、前記半導体基板上に形成され、入射赤外線を検出する赤外線検出画素であって、前記赤外線検出画素は前記入射赤外線を吸収して熱に変換する赤外線吸収膜と、この赤外線吸収膜によって変換された熱を電気信号に変換する第1熱電変換素子と、を有する熱電変換部を備えている赤外線検出画素と、前記第1熱電変換素子の一端が接続され前記赤外線検出画素からの電気信号を読み出すための信号線と、前記信号線から読み出された電気信号を増幅する増幅器と、 第2熱電変換素子を有し、前記第2熱電変換素子の一端が前記信号線に接続されて前記第1熱電変換素子と直列に接続される参照画素と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、信号の読み出し時のノイズを可及的に少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態による赤外線撮像素子の構成を示す回路図。
【図2】第1実施形態に用いられる有感度画素の平面図。
【図3】第1実施形態に用いられる有感度画素の断面図。
【図4】第1実施形態に用いられる無感度画素の一具体例の平面図。
【図5】第1実施形態に用いられる無感度画素の一具体例の断面図。
【図6】第1実施形態に用いられる無感度画素の他の具体例の断面図。
【図7】第2実施形態による赤外線撮像素子の構成を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0013】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による赤外線撮像素子の構成を図1に示す。本実施形態の赤外線撮像素子1は半導体基板(図示せず)上に形成され、マトリクス状に配列された画素を含む撮像領域10と、読み出し回路30と、行選択回路40と、列選択回路42と、を備えている。
【0014】
撮像領域10は、3行2列に配列された6個の画素11、11、1211、1212、1221、1222を有している。一般に撮像領域は、通常、より多くの画素を備えているが、本実施形態では、便宜的に6画素とする。第1行に配列された画素11、11は赤外線に対する感度を有しない無感度画素(参照画素ともいう)であり、第2行および第3行に配列された画素1211、1212、1221、1222は赤外線を検出することの可能な有感度画素(赤外線検出画素ともいう)である。無感度画素11、11は、熱的無感度画素または光学的無感度画素のいずれかでよい。熱的無感度画素または光学的無感度画素の構造は後述する。各画素11、11、1211、1212、1221、1222は、熱電変換素子、例えばpn接合からなるダイオード14を少なくとも1個備えている。
【0015】
第2行の有感度画素1211、1212のそれぞれのダイオード14のアノードは、行選択線16に接続され、第3行の有感度画素1221、1222のそれぞれのダイオード14のアノードは、行選択線16に接続されている。行選択線16、16のそれぞれは、行選択回路40によって順次選択され、選択された行選択線にはバイアス電圧Vdが印加される。
【0016】
第1列の有感画素1211、1221のそれぞれのダイオード14のカソードは、第1列の垂直信号線(以下、単に信号線ともいう)18に接続され、第2列の有感画素1212、1222のそれぞれのダイオード14のカソードは、第2列の垂直信号線18に接続されている。
【0017】
また、読み出し回路30は、オペアンプ31、31と、帰還抵抗32、32と、列選択トランジスタ34、34と、を備えている。
【0018】
第1列の信号線18の一端は第1列の無感度画素11のダイオード14のアノードに接続され、この第1列の無感度画素11のダイオード14のカソードは一定の電位Vsに保持される。また、第2列の信号線18の一端は第2列の無感度画素11のダイオード14のアノードに接続され、この第2列の無感度画素11のダイオード14のカソードは一定の電位Vsに保持される。第1列の信号線18の他端はオペアンプ31の負側入力端子に接続され、第2列の信号線18の他端はオペアンプ31の負側入力端子に接続される。各オペアンプ31、31の正側入力端子は、共通のノード33に接続される。帰還抵抗32はオペアンプ31の負側入力端子と出力端子との間に設けられ、帰還抵抗32はオペアンプ31の負側入力端子と出力端子との間に設けられる。また、オペアンプ32の出力端子は列選択トランジスタ34を通して水平信号線38に接続され、オペアンプ32の出力端子は列選択トランジスタ34を通して水平信号線38に接続される。列選択トランジスタ34、34のゲートは列選択回路42によって接続され、この列選択回路42によって選択されることにより、列選択トランジスタ34、34がオンする。
【0019】
行選択回路40が選択した行選択線、例えば、行選択線16にバイアス電圧Vdを印加すると、選択された行選択線16の有感度画素1211、1212のダイオード14と、無感度画素11、11のダイオード14からなるそれぞれの直列回路に、直列電圧Vd―Vsが印加されることになる。例えば、Vd=0.7V、Vs=−0.7Vとすると、0.7Vの電圧が上記直列回路のそれぞれに印加される。
【0020】
一方、非選択の行選択線16に接続されている有感画素1221、1222のダイオード14は、すべて逆バイアスされているので、非選択の行選択線16と、信号線18、18とは分離されている。即ち、ダイオード14は、画素選択機能を担っているといってもよい。
【0021】
有感度画素1211、1212、1221、1222のそれぞれは、赤外線を受光すると、画素温度が上昇する。それにより、信号線18、18の電位Vslは高くなる。例えば、被写体温度が1K(ケルビン)変化すると、有感度画素の温度は約5mK変化する。ダイオード14の電流値は、Vd=0.7Vを印加する条件の下では、1℃の温度上昇に対して、およそ1μAから20%増加する。このため、有感度画素の温度が5mK変化すると、電流は0.1%(1nA)増加する。
【0022】
図1に示す本実施形態の赤外線撮像素子では、有感度画素のダイオード(熱電変換素子)と、無感度画素のダイオード(熱電変換素子)とを直列接続し、ノード33を接地すると、有感度画素での電流増加分だけがオペアンプ31、31にて増幅される。例えば、帰還抵抗32、32の抵抗値を1MΩとすれば、出力電圧は、1nA×1MΩ=1mVとなる。すなわち、被写体温度1Kの変化が1mVの応答として出力されることになり、これは熱型の赤外線撮像素子としては十分な値である。
【0023】
各列のオペアンプ31、31の出力は、列選択トランジスタ34、34によって順番に読み出される。列選択トランジスタ34、34のゲート電圧は、水平選択回路42から順番に供給され、オペアンプ31、31の出力電圧が順番に水平信号線38を通して出力される。
【0024】
以上説明したように、行選択回路40に行選択線を交互に選択し、選択された行選択線に接続されている有感度画素によって被写体の温度変化が電気信号として取り出されて、この電気信号がオペアンプによって増幅され、この増幅された電気信号は、列選択トランジスタ34、34によって順番に水平信号線38に読み出される。
【0025】
解決しようとする課題の項に述べたように、従来の閾値電圧クランプ処理では、閾値電圧クランプを行った瞬間に信号線に存在するノイズ成分がホールドされてしまい、以降、行選択線の選択時に常にその情報を参照するため、縦スジノイズが現れるという問題があった。
【0026】
これに対して、本実施形態の赤外線撮像素子においては、全ての有感度画素に対して、無感度画素との差分信号が常に比較出力されるため、原理的にノイズがホールドされず、縦スジノイズを発生しない。
【0027】
次に、本実施形態による赤外線撮像素子の有感度画素の構造を図2および図3を参照して説明する。図2は本実施形態による赤外線撮像素子の有感度画素12の平面図であり、図3は図2示す切断線A−Aで切断した場合の断面図である。有感度画素12は、SOI基板上に形成される。このSOI基板は、支持基板101と、埋め込み絶縁層(BOX層)102と、シリコン単結晶からなるSOI(Silicon-On-Insulator)層と、を有し、表面部分に凹部110が形成されている。そして有感度画素12は、上記SOI層に形成された熱電変換部13と、熱電変換部13を凹部110の上方に支持する支持構造部130a、130bと、を備えている。熱電変換部13は、直列に接続された複数(図2および図3では2個)のダイオード14と、これらのダイオード14を接続する配線120と、これらのダイオード14および配線120を覆うように形成された赤外線吸収膜124とを備えている。支持構造部130aは、一端が対応する行選択線に接続され他端が直列に接続されたダイオードからなる直列回路の一端に接続される接続配線132aと、この接続配線132aを覆う絶縁膜134aとを備えている。他方の支持構造部130bは、一端が対応する垂直信号線に接続され他端が直列に接続されたダイオードからなる直列回路の他端に接続される接続配線132bと、この接続配線132bを覆う絶縁膜134bとを備えている。
【0028】
赤外線吸収膜124は入射された赤外線によって発熱する。ダイオード14は、赤外線吸収膜124で発生した熱を電気信号に変換する。支持構造部130a、130bは、熱電変換部13の周囲を取り巻くように細長く形成されている。これにより、熱電変換部13は、SOI基板からほぼ断熱された状態でSOI基板上に支持される。
【0029】
このような構造を有することにより、有感度画素12は、入射された赤外線に応じて発生した熱を蓄熱し、この熱に基づいた電圧を信号線に出力することができる。
【0030】
行選択線からのバイアス電圧Vdは、配線132aを介してダイオード14へ伝達される。ダイオード14を通過した信号は、配線132bを介して垂直信号線に伝達される。
【0031】
次に、本実施形態による赤外線撮像素子の無感度画素の一具体例の構成を図4乃至図5を参照して説明する。図4はこの具体例の無感度画素11の平面図であり、図5は図4に示す切断線B−Bで切断した場合の断面図である。この無感度画素11は、有感度画素12と同様に、SOI基板上に形成される。しかし、無感度画素11が形成されるSOI基板の領域には、有感度画素12の場合と異なり、凹部110は形成されていない。そして無感度画素11は、上記SOI基板のSOI層に形成され直列に接続された複数(図2および図3では2個)のダイオード14と、これらのダイオード14を接続する配線120と、一端が一定の電位Vsの電源線に接続され他端が直列に接続されたダイオードからなる直列回路の一端に接続される接続配線142aと、一端が対応する垂直信号線に接続され他端が直列に接続されたダイオードからなる直列回路の他端に接続される接続配線142bと、これらのダイオード14、配線120、接続配線142a、142bを覆うように形成された絶縁膜125と、を備えている。
【0032】
このように構成された無感度画素(熱的無感度画素ともいう)11においては、ダイオード14で発生した熱は、その周囲の絶縁膜125、埋め込み絶縁層102およびバルク基板(図示せず)へ拡散する。即ち、ダイオード14とその周囲の構造との熱コンダクタンスは、有感度画素12のそれよりも高い。この具体例の無感度画素11は、凹部110を有しないため、蓄熱機能を有しない。したがって、この具体例の無感度画素11は、SOI基板の温度を反映する。このような無感度画素は基板温度測定画素とも呼ばれる。
【0033】
次に、本実施形態による赤外線撮像素子の無感度画素の他の具体例の構成を、図6を参照して説明する。図6はこの具体例の無感度画素11Aの断面図である。この具体例の無感度画素11Aは、有感度画素12と同様に、表面部分に凹部110が形成されたSOI基板に形成される。そして無感度画素11Aは、上記SOI層に形成された反射部13Aと、反射部13Aを凹部110の上方に支持する支持構造部140a、140bと、を備えている。反射部13Aは、直列に接続された複数(図6では2個)のダイオード14と、これらのダイオード14を接続する配線120と、これらのダイオード14および配線120を覆うように形成された赤外線反射膜150と、これらのダイオード14、配線120、および赤外線反射膜150を覆うように形成された赤外線吸収膜124とを備えている。支持構造部140aは、一端が一定の電位Vsの電源線に接続され他端が直列に接続されたダイオードからなる直列回路の一端に接続される接続配線142aと、この接続配線142aを覆う絶縁膜144aとを備えている。他方の支持構造部140bは、一端が対応する垂直信号線に接続され他端が直列に接続されたダイオードからなる直列回路の他端に接続される接続配線142bと、この接続配線142bを覆う絶縁膜144bとを備えている。
【0034】
このような構成の無感度画素11Aは、光学的無感度画素とも呼ばれ、赤外線吸収膜124内に赤外線反射膜150を有している点で、有感度画素12と異なっている。この光学的無感度画素11Aは、赤外線を反射するため、赤外線に対し不感である。それ以外の点は、有感度画素12と構造が同じであるため、参照画素としては基板温度測定画素(熱的無感度画素)11よりも適している。例えば、ダイオード14に通電を行った際に生じるジュール熱成分は、熱的無感度画素11には存在せず、この点で有感度画素12と差異があったが、光学的無感度画素11Aでは赤外線による温度変化以外は同じ温度成分を持つ。赤外線反射膜124は、オペアンプ201、202等を構成する配線層と同層に構成してもよい。この場合、製造プロセスを短縮することができ、コスト低減が可能である。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態による赤外線撮像素子を、図7を参照して説明する。図7は、本実施形態の赤外線撮像素子の構成を示す回路図である。本実施形態の赤外線撮像素子は、図1に示す第1実施形態の赤外線撮像素子において、無感度画素および有感度画素をそれぞれ1個とした構成となっている。すなわち、カソードが一定の電位Vsの電源に接続されアノードが垂直信号線18に接続されるダイオード14を有する無感度画素11と、一端が垂直信号線18に接続され他端がノード38に接続されるダイオード14を有する有感度画素12と、正側入力端子がノード33に接続され、負側入力端子が垂直信号線18に接続されるオペアンプ31と、オペアンプ311の出力端子と負側入力端子との間に設けられる帰還抵抗32と、を備えている。
【0036】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、有感度画素12と無感度画素11を直列に配線し、ノード38の電圧をVdとする。有感度画素12と無感度画素11との間のノードの中間電圧Vslは、オペアンプ31の正側入力端子に接続するノード33を接地することによって仮想接地となる。このとき、第1実施形態と同様に、赤外線検出による電流増加分だけがオペアンプ31で増幅される。すなわち本実施形態は、常にセンサ自体の温度に影響されず、赤外線信号のみを出力することのできる単画素の赤外線検出器となる。
【0037】
本実施形態も第1実施形態と同様に、原理的にノイズがホールドされず、縦スジノイズを発生しない。
【0038】
以上説明したように、本発明の各実施形態によれば、無感度画素と有感度効画素の差分を出力するにあたって原理的に発生するノイズを低減することが可能となり、高S/N化を達成することができる。
【0039】
また、上記各実施形態においては、画素は、熱を電気信号に換える熱電変換素子とし、ダイオードを用いたが、抵抗体であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 赤外線撮像素子
11 無感度画素(熱的無感度画素)
11A 無感度画素(光学的無感度画素)
11、11 無感度画素
12 有感度画素
1211、1212、1221、1222 有感度画素
13 熱電変換部
13A 反射部
14 ダイオード
16、16 行選択線
18、18 垂直信号線(信号線)
30 読み出し回路
31、31 オペアンプ
32、32 帰還抵抗
33 ノード
34、34 列選択トランジスタ
38 ノード
40 行選択回路
42 列選択回路
101 支持基板
102 埋め込み絶縁層
110 凹部
120 配線
124 赤外線吸収膜
130a、130b 支持構造部
132a、132b 接続配線
134a、134b 絶縁膜
140a、140b 支持構造部
142a、142b 接続配線
144a、144b 絶縁膜
150 赤外線反射膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に、入射赤外線を検出する複数の赤外線検出画素がマトリクス状に配列された撮像領域であって、各赤外線検出画素は前記入射赤外線を吸収して熱に変換する赤外線吸収膜と、この赤外線吸収膜によって変換された熱を電気信号に変換する第1熱電変換素子と、を有する熱電変換部を備えている、撮像領域と、
前記撮像領域内に、前記赤外線検出画素の各行に対応して設けられ、それぞれが対応する行の赤外線検出画素の前記第1熱電変換素子の一端に接続されて前記対応する行の赤外線検出画素を選択する、複数の行選択線と、
前記撮像領域内に、前記赤外線検出画素の各列に対応して設けられ、それぞれが対応する列の赤外線検出画素の前記第1熱電変換素子の他端に接続されて前記対応する列の赤外線検出画素からの電気信号を読み出すための複数の信号線と、
各信号線に対応して設けられた複数の増幅器であって、各増幅器は対応する信号線から読み出された電気信号を増幅する、複数の増幅器と、
各信号線に対応して設けられ、それぞれが第2熱電変換素子を有する複数の参照画素であって、各参照画素の第2熱電変換素子の一端が対応する信号線に接続される、複数の参照画素と、
を備えていることを特徴とする赤外線撮像素子。
【請求項2】
前記半導体基板の表面部分には、前記複数の赤外線検出画素に対応してマトリクス状に配列された複数の凹部が形成され、前記赤外線検出画素のぞれぞれは、前記熱電変換部を対応する凹部の上方に支持する第1および第2支持構造部を更に有し、前記第1支持構造部は一端が対応する赤外線検出画素の熱電変換素子の一端に接続され、他端が対応する赤外線検出画素が接続する行選択線に接続される第1接続配線を有し、前記第2支持構造部は一端が対応する赤外線検出画素の熱電変換素子の他端に接続され、他端が対応する赤外線検出画素が接続する信号線に接続される第2接続配線を有することを特徴とする請求項1記載の赤外線撮像素子。
【請求項3】
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成され、入射赤外線を検出する赤外線検出画素であって、前記赤外線検出画素は前記入射赤外線を吸収して熱に変換する赤外線吸収膜と、この赤外線吸収膜によって変換された熱を電気信号に変換する第1熱電変換素子と、を有する熱電変換部を備えている赤外線検出画素と、
前記第1熱電変換素子の一端が接続され前記赤外線検出画素からの電気信号を読み出すための信号線と、
前記信号線から読み出された電気信号を増幅する増幅器と、
第2熱電変換素子を有し、前記第2熱電変換素子の一端が前記信号線に接続されて前記第1熱電変換素子と直列に接続される参照画素と、
を備えていることを特徴とする赤外線撮像素子。
【請求項4】
前記半導体基板の表面部分には、前記赤外線検出画素に対応して凹部が形成され、前記赤外線検出画素は、前記熱電変換部を前記凹部の上方に支持する第1および第2支持構造部を更に有し、前記第1支持構造部は一端が前記赤外線検出画素の熱電変換素子の一端に接続され、他端が一定の電位を供給する電源に接続される第1接続配線と、前記第2支持構造部は一端が対応する赤外線検出画素の熱電変換素子の他端に接続され、他端が前記信号線に接続される第2接続配線とを備えていることを特徴とする請求項3記載の赤外線撮像素子。
【請求項5】
前記参照画素は、前記入射赤外線の熱に感度を有しない熱的無感度画素であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の赤外線撮像素子。
【請求項6】
前記参照画素は、前記第1熱電変換素子を覆うように形成され前記入射赤外線を反射する赤外線反射膜を有している光学的無感度画素であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の赤外線撮像素子。
【請求項7】
前記第1および第2熱電変換素子は直列に接続されたダイオードであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の赤外線撮像素子。
【請求項8】
前記第1および第2熱電変換素子は直列に接続された抵抗体であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の赤外線撮像素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−223700(P2010−223700A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70049(P2009−70049)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】