説明

走行経路探索方法、経路誘導装置

【課題】 実際に走行する経路に関するユーザの嗜好を推定して、ユーザの嗜好に合致する探索経路を提案する。
【解決手段】 自車両の出発地から目的地までの探索経路を演算する経路探索部11と、自車両が目的地まで走行した実際の走行経路を記録する走行履歴記録部12と、探索経路と、走行履歴とが異なる経路であった場合に、ユーザの嗜好性によって優先され得る走行経路に関するパラメータであるルート特徴量を、探索経路と走行履歴とでそれぞれ求めて、探索経路のルート特徴量と、実際に走行した走行経路のルート特徴量とを比較する探索経路・走行履歴特徴演算部15と、比較した結果から、走行経路に関するユーザの嗜好性を推定する探索経路・走行履歴比較部16とを備え、推定されたユーザの嗜好性に合致する探索経路を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両が走行する探索経路を算出して経路案内を行うに際して、複数の探索経路のうち何れかの探索経路を選択する走行経路探索方法、経路誘導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、下記の特許文献1に記載されているような経路探索装置により、各推奨経路の距離、走行時間、道幅、右左折回数等の複数の走行コストに関するパラメータから、推奨経路を総合的に評価する総合評価関数を使用するものが知られている。
【0003】
この経路探索装置は、経路探索を行ってユーザに選択される度に、ユーザの選択した推奨経路の走行コストに関するパラメータを学習的に書き換えることによって、ユーザが優先する走行コストに関するパラメータを更新する。これにより、次第にユーザの好みを反映した最適な推奨経路を優先して探索できるようにしている。
【特許文献1】特開平5-224601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の経路探索装置では、ユーザは、走行開始前に推奨経路を選択しても、当該推奨経路に従って目的地まで走行するとは限らないため、推奨経路を外れて走行した場合には、走行開始前に選択した経路に関する走行コストのパラメータが必ずしもユーザの好みであるとは言えず、実際に走行する経路に関するユーザの好みを学習できないという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、実際の走行経路に関するユーザの嗜好を推定して、ユーザの嗜好に合致する推奨経路を提案することができる走行経路探索方法、経路誘導装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自車両の経路案内を行うに際して、出発地から目的地までの経路を探索する走行経路演算方法であって、自車両の出発地から目的地までの探索経路を演算すると共に、自車両が目的地まで走行した実際の走行経路を検出し、上述の課題を解決するために、実際の走行経路が、探索経路とは異なる経路であった場合に、ユーザの嗜好性によって優先され得る走行経路に関するパラメータであるルート特徴量を、探索経路と走行履歴とでそれぞれ求めて、探索経路のルート特徴量と、実際に走行した走行経路のルート特徴量とを比較し、比較した結果から、走行経路に関するユーザの嗜好性を推定する。
【0007】
これによって、探索経路を演算する時に、推定したユーザの嗜好性に合致する探索経路を演算することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実際の走行経路が探索経路とは異なる経路であった場合に、ユーザの嗜好性によって優先され得る走行経路に関するパラメータであるルート特徴量を、探索経路と実際の走行経路とでそれぞれ求めて、探索経路のルート特徴量と、実際の走行経路のルート特徴量とを比較し、比較した結果から、走行経路に関するユーザの嗜好性を推定することができる。これによって、探索経路を演算する時に、推定したユーザの嗜好性に合致する探索経路を演算することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0010】
本発明は、自車両に搭載され、自車両の現在地から目的地までの探索経路を提示して、経路案内を行うナビゲーションシステムに適用される。
【0011】
[第1実施形態]
本発明を適用した第1実施形態に係るナビゲーションシステムは、例えば図1に示すように構成される。
【0012】
[ナビゲーションシステムの構成]
このナビゲーションシステムは、図1に示すように、車載コンピュータ1に、ユーザインターフェースである目的地入力部2、GPS端末である自車両位置検出部3及び液晶ディスプレイ等からなる表示部4が接続されて構成されている。
【0013】
目的地入力部2は、例えば表示部4の表示画面に重ねて設置され、ユーザの指の触圧位置を検出して操作入力信号を生成するタッチパネルで構成される。この目的地入力部2は、住所や電話番号等の操作入力信号に従って目的地を設定する。自車両位置検出部3は、例えばGPS(Global Positioning System)受信機等からなり、GPS衛星から送られる情報に基づいて、自車両の現在位置を算出する。
【0014】
このナビゲーションシステムは、自車両にユーザが乗車して、推奨される経路を探索して探索経路を演算する際して、ユーザによって目的地入力部2が操作されることによって目的地情報が入力される。そして、ナビゲーションシステムは、入力された目的地情報及び自車両位置検出部3で検出している現在地情報から車載コンピュータ1によって探索経路を演算し、表示部4に探索経路等を表示させて、経路案内を行う。
【0015】
車載コンピュータ1は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、大容量記憶装置等から構成され、予めROMに記憶しておいたプログラムに従ってCPUが処理を実行することによって、図1の各部11〜17という機能的構成を有する。
【0016】
すなわち、車載コンピュータ1は、目的地入力部2及び自車両位置検出部3と接続された経路探索部11と、自車両位置検出部3と接続された走行履歴記録部12と、地図データベース13と、探索経路・走行履歴一時記憶部14と、探索経路・走行履歴特徴演算部15と、探索経路・走行履歴比較部16と、表示部4と接続された経路嗜好グラフ作成部17とを備える。
【0017】
経路探索部11は、例えばダイクストラ法を用いて最小コスト経路を探索する処理を行う。このとき、経路探索部11は、地図データベース13から地図データを読み出して、予め設定された走行距離や走行時間等の後述のルート特徴量のうち優先する条件である探索条件、自車両位置検出部3からの現在地情報と目的地入力部2からの目的地情報とから、現在地から目的地までの探索経路を演算する。この探索経路は、例えば表示部4に表示されることによってユーザから視認され、自車両が走行して右左折点等で音声案内を行うに際して使用される。また、経路探索部11は、演算して求めた探索経路のルート特徴量を算出して、探索経路・走行履歴一時記憶部14に登録する。
【0018】
走行履歴記録部12は、自車両が走行している時に、自車両位置検出部3で検出した自車両の現在地情報を蓄積することによって走行履歴を作成し、当該走行履歴を探索経路・走行履歴一時記憶部14に記録する。
【0019】
探索経路・走行履歴特徴演算部15は、探索経路・走行履歴一時記憶部14から、探索経路と走行履歴である実際の走行経路とを読出し、それぞれのルート特徴量を演算する。このルート特徴量は、例えば探索経路又は実際の走行経路の右折回数、左折回数、交差点の数、道路幅、探索経路又は実際の走行経路を走行する際に必要とされるハンドル操作量、探索経路又は実際の走行経路を走行する際に必要とされる速度調整量等である。
【0020】
探索経路・走行履歴比較部16は、探索経路・走行履歴特徴演算部15で演算された探索経路のルート特徴量と実際の走行経路のルート特徴量とを比較して、当該比較結果から、各ルート特徴量に対するユーザの嗜好を推定する。
【0021】
ここで、探索経路・走行履歴比較部16は、実際の走行経路が、探索経路から外れている場合に、探索経路から外れて走行した理由がユーザの嗜好によるものではないと推定できる場合には、探索経路のルート特徴量と実際の走行経路のルート特徴量との比較を行わないようにする。例えば、交通規制や渋滞の発生など運転者の嗜好に拘わらずルート変更をする場合や、道を間違って意図せずに探索経路をはずれてしまったような場合には、探索経路のルート特徴量と実際の走行経路のルート特徴量との比較を行わないようにする。
【0022】
このとき、探索経路・走行履歴比較部16では、探索経路・走行履歴一時記憶部14に記憶されている走行履歴情報を参照して、VICS等から渋滞等の交通情報が発せられた探索経路上を走行していたことが推定できる場合には、探索経路のルート特徴量と実際の走行経路のルート特徴量との比較を行わないようにする。また、探索経路・走行履歴比較部16では、一時的に探索経路から外れて、ルート特徴量に影響しないような道路を走行した後に再度探索経路上を走行した場合には、当該探索経路から外れて走行したことが実際の走行経路から推定できる場合には、探索経路のルート特徴量と実際の走行経路のルート特徴量との比較を行わないようにする。
【0023】
経路嗜好グラフ作成部17では、探索経路・走行履歴比較部16で推定したユーザの嗜好から、走行経路に関するユーザの嗜好の傾向を表現する経路嗜好性グラフを作成して表示部4に送り、表示部4で嗜好性グラフを表示する。
【0024】
[車載コンピュータ1の嗜好性推定処理]
つぎに、上述したように構成されたナビゲーションシステムにより、走行経路に関するユーザの嗜好性を推定する嗜好性推定処理について説明する。
【0025】
ナビゲーションシステムは、自車両が起動すると、図2に示すように、ステップS1において、ユーザの現在地を検出する操作がなれて、ステップS2において、自車両位置検出部3によって自車両の現在地情報を判断する。
【0026】
次に車載コンピュータ1は、ステップS3において、ユーザの目的地を入力する操作がなされ、ステップS4において、目的地入力部2により目的地情報を判断する。
【0027】
次のステップS5において、車載コンピュータ1は、経路探索のための探索条件の設定を行う。この経路探索条件としては、最短距離、最短時間、一般道優先、国道優先、有料道路優先等から任意の条件が設定される。
【0028】
次のステップS6において、車載コンピュータ1は、経路探索部11により、ステップS5で設定された探索条件を満たし、ステップS2で判断された現在地からステップS4で判断された目的地までの経路を探索して、探索経路を算出する。
【0029】
次のステップS7において、車載コンピュータ1は、経路探索部11により、ステップS6で算出した探索経路を、探索経路・走行履歴一時記憶部14に登録する。
【0030】
次のステップS8において、車載コンピュータ1は、走行履歴記録部12より、自車両が走行している現在地を自車両位置検出部3から随時入力することにより、現在地情報が時系列に並んだ走行履歴である実際の走行経路を作成して、探索経路・走行履歴一時記憶部14に登録する。
【0031】
そして、ナビゲーションシステムでは、例えば、自車両が目的地に達するまで探索経路・走行履歴一時記憶部14に登録している走行履歴である実際の走行経路を更新する。
【0032】
このように、探索経路・走行履歴一時記憶部14の実際の走行経路を更新している状態で、図3のステップS11において、例えば経路案内を停止するユーザの操作や、目的地付近に到着したことや、嗜好性を学習することを指示するユーザの操作を検出すると、ステップS12において、探索経路・走行履歴特徴演算部15により、探索経路・走行履歴一時記憶部14に記憶しておいた探索経路と実際の走行経路を読み出す。
【0033】
次に車載コンピュータ1は、探索経路・走行履歴特徴演算部15により、ステップS13において、ステップS12で読み出した探索経路からルート特徴量と演算すると共に、ステップS14において、ステップS12で読み出した実際の走行経路からルート特徴量を演算する。この探索経路のルート特徴量及び走行履歴のルート特徴量は、図4に示すような項目からなる。
【0034】
このステップS13及びステップS14では、探索経路・走行履歴特徴演算部15により、探索経路及び走行履歴のそれぞれのルート特徴量である距離、時間、料金コスト、右左折回数、交差点数、道路幅、ハンドル操作量、速度調整量を下記のように算出する。
【0035】
・距離…総走行距離
・時間…(Σ道路リンク距離)/道路リンク平均速度
・コスト…有料道路料金+総走行距離/燃費×燃料単価
・右左折回数…経路中の右折回数+左折回数
・交差点数…通過する交差点の数
・道路幅…平均道路幅
・ハンドル操作量…Σ|道路リンク曲率変化量|
・速度調節量…Σ|道路リンク通過可能速度変化量|
ここで、道路リンクとは、探索経路又は実際の走行経路を構成する複数の微小区間を繋ぐ道路データであり、少なくとも道路リンク距離、道路リンクでの平均速度(法定速度)、有料道路の料金、交差点の有無、道路幅、道路リンク曲率、道路リンクを通過するに際しての速度変化量等が地図データベース13に記憶されている。これにより、探索経路・走行履歴特徴演算部15は、探索経路を構成する複数の道路リンクを参照して距離、コスト、右左折回数、交差点数、道路幅、ハンドル操作量、速度調節量を求めると共に、走行履歴を構成する複数の道路リンクを参照して距離、コスト、右左折回数、交差点数、道路幅、ハンドル操作量、速度調節量を求める。なお、実際の走行経路のルート特徴量は、実際の走行距離、速度、燃費、速度調整量をセンサ値で求めておいて演算しても良い。
【0036】
なお、走行履歴記録部12又は経路探索部11でそれぞれのルート特徴量がすでに求められている場合には、探索経路・走行履歴特徴演算部15でルート特徴量を探索経路・走行履歴比較部16にそのまま出力してもよい。
【0037】
次に車載コンピュータ1は、ステップS15において、探索経路・走行履歴比較部16により、ステップS13及びステップS14で演算したルート特徴量を項目ごとに比較して、図5に示すように、ユーザの嗜好を推定する。ここで、探索経路・走行履歴比較部16は、探索経路に渋滞が発生したような交通情報が走行履歴に含まれている場合には、探索経路のルート特徴量と走行履歴のルート特徴量との比較を行わずに、処理を終了する。
【0038】
次に車載コンピュータ1は、ステップS16において、経路嗜好グラフ作成部17により、ステップS15で推定したユーザの嗜好をグラフ化して、ユーザ嗜好グラフを作成し、ステップS17において、経路嗜好グラフ作成部17から表示部4にユーザ嗜好グラフを出力して表示させる。
【0039】
このとき、経路嗜好グラフ作成部17は、図6に示すように、図5のように探索経路のルート特徴量に対する走行履歴のルート特徴量の割合をユーザ嗜好として推定して、当該ユーザ嗜好の大きさを図6のようなグラフとする。この図6により、走行距離、料金コスト、道路幅のルート特徴量がユーザが嗜好する走行条件に合致していることをユーザに提示することができる。
【0040】
これによって、ユーザは、自身の走行経路に関する嗜好性を認識して、経路探索時に、自身の嗜好性に関するルート特徴量を優先して探索条件に登録することができる。また、ナビゲーションシステムは、走行距離及び料金コストが高くても道路幅が広く、他のルート特徴量を低下させるという嗜好性を推定することができ、この嗜好性を探索条件の最上位として記憶しておき、経路探索部11による経路探索時に、ユーザの嗜好性に合致した探索経路を優先して選択して提示することができる。
【0041】
[第1実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本発明を適用したナビゲーションシステムによれば、ユーザの嗜好性によって優先される走行経路に関するパラメータであるルート特徴量を、探索経路と実際の走行経路とでそれぞれ求めて、探索経路のルート特徴量と、実際の走行経路のルート特徴量とを比較して、走行経路に関するユーザの嗜好性を推定することができるので、ユーザの嗜好に合致する探索経路を提案することができる。
【0042】
すなわち、このナビゲーションシステムによれば、探索経路によって走行経路を案内していても、探索経路から外れて走行した場合に、探索経路と実際の走行経路の相違から、走行経路に関するユーザの嗜好性を推定することができる。そして、ナビゲーションシステムでは、推定したユーザの嗜好性から、次に探索経路を演算するに際して、ユーザに優先されるルート特徴量の項目を、最も優先する探索条件に設定することができる。したがって、このナビゲーションシステムによれば、複数の探索経路が演算できる場合であっても、ユーザの嗜好性に合致したルート特徴量の項目のみならず、ユーザの嗜好性に合致した探索経路を最初に提案することができる。
【0043】
また、このナビゲーションシステムによれば、探索経路を走行した場合に必要とされる右折回数又は左折回数である右左折回数と、実際に走行した時に必要とされた右折回数又は左折回数である右左折回数とを比較することにより、右折、左折に関する嗜好を推定して、当該嗜好を反映した探索経路を演算することができる。
【0044】
更に、このナビゲーションシステムによれば、探索経路に存在する交差点数又は道路幅である道路情報と、実際に走行した時に存在した交差点数又は道路幅である道路情報とを比較することにより、交差点数や、道路幅に関する嗜好を推定して、当該嗜好を反映した探索経路を演算することができる。
【0045】
更にまた、このナビゲーションシステムによれば、探索経路を走行した場合に必要とされるハンドル操作量又は速度調整量である運転操作量と、実際に走行した時に必要とされたハンドル操作量又は速度調整量である運転操作量とを比較することにより、ハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダルの操作量(運転操作量)に関する嗜好を推定して、当該嗜好を反映した探索経路を演算することができる。
【0046】
[第2実施形態]
つぎに、第2実施形態に係るナビゲーションシステムについて説明する。なお、上述の第1実施形態と同様の部分については同一符号を付することによりその詳細な説明を省略する。
【0047】
[ナビゲーションシステムの構成]
第2実施形態に係るナビゲーションシステムは、図7に示すように、車載コンピュータ1に車速検出部21が接続され、当該車速検出部21からの車速信号及び自車両位置検出部3からの現在地情報から仮出発地及び仮目的地を設定する仮出発地・仮目的地設定部31を備える点で、第1実施形態に係るナビゲーションシステムとは異なる。
【0048】
車速検出部21は、例えば車輪速センサであり、車輪の単位時間当たりの回転数から自車両の速度を算出して、車速信号として仮出発地・仮目的地設定部31に出力する。
【0049】
仮出発地・仮目的地設定部31は、車速検出部21からの車速信号を入力して、車速に応じて自車両の走行開始及び走行停止を検出する。また、仮出発地・仮目的地設定部31は、自車両位置検出部3からの現在地情報を入力し、自車両が走行開始した場合の現在地を仮の出発地に設定すると共に、自車両が走行停止した場合の現在地を仮の目的地に設定する。そして、仮出発地・仮目的地設定部31は、設定した仮出発地及び仮目的地を経路探索部11に出力する。
【0050】
これに対し、経路探索部11は、予め設定された探索経路の探索条件に従って、地図データベース13の地図データを参照して、仮出発地から仮目的地までの探索経路を演算する。そして、経路探索部11は、探索経路を探索経路・走行履歴一時記憶部14に記憶させる。
【0051】
これによって、ナビゲーションシステムは、探索経路・走行履歴一時記憶部14に走行履歴及び探索経路が記憶されると、探索経路・走行履歴特徴演算部15によってそれぞれのルート特徴量を求め、探索経路・走行履歴比較部16によってそれぞれのルート特徴量を比較して、経路嗜好グラフ作成部17により経路嗜好性グラフを作成して、表示部4で提示する。
【0052】
[車載コンピュータ1の嗜好性推定処理]
つぎに、上述したように構成された第2実施形態に係るナビゲーションシステムによる嗜好性推定処理について説明する。
【0053】
この嗜好性推定処理は、自車両が起動している時において、所定期間ごとに図8に示す自車両位置検出部3による現在地を検出する処理を行い(ステップS21)、走行履歴記録部12で自車両の現在地情報を判断する処理を行い(ステップS22)、当該現在地情報を探索経路・走行履歴一時記憶部14に蓄積する(ステップS23)。これによって、探索経路・走行履歴一時記憶部14に随時走行履歴を更新しておく。
【0054】
また、この嗜好性推定処理は、自車両位置検出部3による現在地を検出する処理を行い(ステップS31)、仮出発地・仮目的地設定部31により車速検出部21からの車速信号から自車両の車速が0である状態が所定時間継続したか否かを判定する(ステップS32)。そして、車速が0である状態が所定時間継続した場合には、ステップS33に処理を進めて、仮出発地・仮目的地設定部31により、ステップS31で求めた現在地を仮出発地として設定する。一方、車速が0である状態が所定時間経過していない場合には、自車両が一時的に停止している状態であって、何れかの目的地に向かって出発しているわけではないと判定して、ステップS31,ステップS32の処理を繰り返す。
【0055】
次にナビゲーションシステムは、ステップS33において、自車両位置検出部3によって自車両の現在地を検出し、車速検出部21からの車速信号から車速が0である状態が所定時間継続したか否かを判定する。そして、車速が0である状態が所定時間継続した場合には、ステップS36に処理を進めて、仮出発地・仮目的地設定部31により、ステップS34で求めた現在地を仮目的地として設定する。一方、車速が0である状態が所定時間経過していない場合には、自車両が一時的に停止している状態であって、何れかの目的地に到着しているわけではないと判定して、ステップS34,ステップS35の処理を繰り返す。
【0056】
ここで、ナビゲーションシステムは、ステップS33で仮出発地を設定した後から、ステップS36で仮目的地を設定した時までに、図8の処理を繰り返し行うことによって、探索経路・走行履歴一時記憶部14に実際に走行した走行履歴を蓄積しておく。そして、ステップS36で仮目的地が設定されると、図8の処理を終了して、以降の処理に使用する走行履歴として設定する。
【0057】
次にナビゲーションシステムは、経路探索部11により、ステップS37において、予め設定しておいた最短距離、最短時間、一般道優先、国道優先、有料道路優先等から任意の探索条件を設定し、ステップS38において、設定した探索条件で仮出発地から仮目的地までの経路探索を行って、探索経路を作成する。このとき、経路探索部11は、仮出発地・仮目的地設定部31で仮出発地を設定した時刻での現在地を走行履歴記録部12を介して自車両位置検出部3から受信しておき、仮出発地・仮目的地設定部31で仮目的地を設定した時刻での現在地を走行履歴記録部12を介して自車両位置検出部3から受信しておく。
【0058】
次にナビゲーションシステムは、ステップS38で演算した探索経路と、ステップS21〜ステップS23の処理を繰り返すことによって求めた実際の走行経路とを探索経路・走行履歴一時記憶部14に登録して、処理を終了する。
【0059】
その後、ナビゲーションシステムは、図3で説明したようなステップS11〜ステップS17の処理を、仮出発地から仮目的地までの経路探索と、実際の走行経路とを用いて行うことによって、当該探索経路のルート特徴量と実際の走行経路のルート特徴量の演算、比較を行い、ユーザ嗜好性グラフを作成する処理を行うことができる。
【0060】
なお、この嗜好性推定処理においては、車速によって仮出発地及び仮目的地を設定した場合について説明したが、これに限らず、エンジンや駆動モータによる駆動力を使用する車両においては、エンジンや駆動モータの駆動を開始する走行開始時の現在地を仮出発地に設定すると共にエンジンや駆動モータの駆動を停止する走行停止時の現在地を仮目的地に設定してもよい。
【0061】
また、この嗜好性推定処理においては、走行開始時の現在地を仮出発地に設定すると共に、走行停止時の現在地を仮目的地に設定した場合について説明したが、これに限らず、走行中に一時停止した地点又は走行中の任意の地点を仮出発地に設定する共に、走行中に一時停止した地点又は走行を停止する前の任意の地点を仮目的地に設定しても、当該実際の走行経路と探索経路との比較によりユーザの嗜好性を推定することもできる。
【0062】
[第2実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本発明を適用した第2実施形態に係るナビゲーションシステムによれば、走行開始時の現在地を仮出発地に設定すると共に、走行停止時の現在地を仮目的地に設定して、走行経路に関するユーザの嗜好性を推定することができるので、ユーザによって目的地が設定されていない場合であっても、実際の走行履歴を残しておくことによって走行停止後に探索経路と実際の走行経路との比較を行うことで、走行経路に関するユーザの嗜好性を推定することができる。
【0063】
また、このナビゲーションシステムによれば、走行中の任意の地点を仮出発地及び仮目的地に設定して、走行経路に関するユーザの嗜好性を推定することができるので、走行中に随時に、走行経路に関するユーザの嗜好性を推定して更新することができる。
【0064】
したがって、このナビゲーションシステムによれば、ユーザの嗜好性を更に高精度に推定することができ、より確実にユーザが望む探索経路を優先して提示することができる。
【0065】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係るナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用した第1実施形態に係るナビゲーションシステムでの嗜好性推定処理において、探索経路を演算すると共に、実際の走行経路を記憶しておく処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明を適用した第1実施形態に係るナビゲーションシステムでの嗜好性推定処理において、探索経路と実際の走行経路とからユーザの嗜好性を推定する処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】探索経路のルート特徴量と実際の走行経路のルート特徴量とを比較して示す図である。
【図5】探索経路のルート特徴量と実際の走行経路のルート特徴量との比較によって求められるユーザの嗜好性を求める処理を説明する図である。
【図6】ユーザの嗜好性をグラフ化して提示することを説明する図である。
【図7】本発明を適用した第2実施形態に係るナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図8】本発明を適用した第2実施形態に係るナビゲーションシステムにおいて、実際の走行経路を蓄積する処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明を適用した第2実施形態に係るナビゲーションシステムにおいて、仮出発地及び仮目的地を設定して経路を探索する処理について説明するための図である。
【符号の説明】
【0067】
1 車載コンピュータ
2 目的地入力部
3 自車両位置検出部
11 経路探索部
12 走行履歴記録部
13 地図データベース
14 探索経路・走行履歴一時記憶部
15 探索経路・走行履歴特徴演算部
16 探索経路・走行履歴比較部
17 経路嗜好グラフ作成部
21 車速検出部
31 仮出発地・仮目的地設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の経路案内を行うに際して、出発地から目的地までの走行経路を探索する走行経路演算方法であって、
自車両の出発地から目的地までの走行経路である探索経路を演算するステップと、
自車両が目的地まで走行した実際の走行経路を検出するステップと、
前記実際の走行経路が、前記探索経路とは異なる経路であった場合に、ユーザの嗜好性によって優先され得る走行経路に関するパラメータであるルート特徴量を、前記探索経路と前記走行履歴とでそれぞれ求めて、前記探索経路のルート特徴量と、前記実際の走行経路のルート特徴量とを比較するステップと、
前記比較した結果から、走行経路に関するユーザの嗜好性を推定するステップとを有し、
前記探索経路を演算するステップでは、推定したユーザの嗜好性に合致する前記探索経路を演算することを特徴とする走行経路演算方法。
【請求項2】
前記ルート特徴量を比較するステップでは、前記探索経路を走行する場合に必要とされる右折回数又は左折回数である右左折回数と、前記実際の走行経路を走行した時の右折回数又は左折回数である右左折回数とを比較して、走行経路に関するユーザの嗜好性を推定することを特徴とする請求項1に記載の走行経路演算方法。
【請求項3】
前記ルート特徴量を比較するステップでは、前記探索経路に存在する交差点数又は道路幅である道路情報と、前記実際の走行経路を走行した時の交差点数又は道路幅である道路情報とを比較して、走行経路に関するユーザの嗜好性を推定することを特徴とする請求項1に記載の走行経路演算方法。
【請求項4】
前記ルート特徴量を比較するステップでは、前記探索経路を走行する場合に必要とされるハンドル操作量又は速度調整量である運転操作量と、前記実際の走行経路を走行した時のハンドル操作量又は速度調整量である運転操作量とを比較して、走行経路に関するユーザの嗜好を推定することを特徴とする請求項1に記載の走行経路演算方法。
【請求項5】
前記自車両の走行開始時の現在地を仮出発地に設定するステップと、
前記自車両の走行停止時の現在地を仮目的地に設定するステップとを行い、
前記探索経路を演算するステップは、前記仮出発地から前記仮目的地までの走行経路を所定の探索条件に従って探索し、
前記実際の走行経路を検出するステップは、前記仮出発地が設定されてから、前記仮目的地が設定されるまでの実際の走行経路を検出し、
前記ルート特徴量を比較するステップでは、前記仮出発地から前記仮目的地までの前記探索経路のルート特徴量と、前記実際の走行経路のルート特徴量とを比較すること
を特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の走行経路演算方法。
【請求項6】
前記自車両の走行中の任意の地点を仮出発地に設定するステップと、
前記自車両の走行中の任意の地点を仮目的地に設定するステップとを行い、
前記探索経路を演算するステップは、前記仮出発地から前記仮目的地までの経路を所定の探索条件に従って探索し、
前記実際の走行経路を検出するステップは、前記仮出発地が設定されてから、前記仮目的地が設定されるまでの実際の走行経路を検出し、
前記ルート特徴量を比較するステップでは、前記仮出発地から前記仮目的地までの前記探索経路のルート特徴量と、前記実際の走行経路のルート特徴量とを比較すること
を特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の走行経路演算方法。
【請求項7】
自車両の経路案内を行うに際して、出発地から目的地までの経路を探索する経路誘導装置であって、
自車両の出発地から目的地までの探索経路を演算する探索経路演算手段と、
自車両が目的地まで走行した実際の走行経路を記録する走行履歴記録手段と、
前記探索経路演算手段で演算された探索経路と、前記走行履歴記録手段で記録された実際の走行経路とが異なる経路であった場合に、ユーザの嗜好性によって優先され得る走行経路に関するパラメータであるルート特徴量を、前記探索経路と前記実際の走行経路とでそれぞれ求めて、前記探索経路のルート特徴量と、前記実際の走行経路のルート特徴量とを比較するルート特徴量比較手段と、
前記ルート特徴量比較手段で比較した結果から、走行経路に関するユーザの嗜好性を推定するユーザ嗜好性推定手段とを備え、
前記探索経路演算手段は、前記ユーザ嗜好性推定手段で推定されたユーザの嗜好性に合致する前記探索経路を演算することを特徴とする経路誘導装置。
【請求項8】
前記ルート特徴量比較手段は、前記探索経路を走行する場合に必要とされる右折回数又は左折回数である右左折回数と、前記実際の走行経路を走行した時の右折回数又は左折回数である右左折回数とを比較して、走行経路に関するユーザの嗜好性を推定することを特徴とする請求項7に記載の経路誘導装置。
【請求項9】
前記ルート特徴量比較手段は、前記探索経路に存在する交差点数又は道路幅である道路情報と、前記実際の走行経路を走行した時の交差点数又は道路幅である道路情報とを比較して、走行経路に関するユーザの嗜好性を推定することを特徴とする請求項7に記載の経路誘導装置。
【請求項10】
前記ルート特徴量比較手段は、前記探索経路を走行する場合に必要とされるハンドル操作量又は速度調整量である運転操作量と、前記実際の走行経路を走行した時のハンドル操作量又は速度調整量である運転操作量とを比較して、走行経路に関するユーザの嗜好を推定することを特徴とする請求項7に記載の経路誘導装置。
【請求項11】
前記自車両の走行開始時の現在地を仮出発地に設定すると共に、前記自車両の走行停止時の現在地を仮目的地に設定する仮出発地・仮目的地設定手段を更に備え、
前記走行履歴記録手段は、前記仮出発地が設定されてから、前記仮目的地が設定されるまでの実際の走行経路を記憶しておき、
前記経路演算手段は、前記仮出発地から前記仮目的地までの経路を所定の探索条件に従って探索し、
前記ルート特徴量比較手段は、前記仮出発地から前記仮目的地までの前記探索経路のルート特徴量と、前記実際の走行経路のルート特徴量とを比較すること
を特徴とする請求項7乃至請求項10の何れかに記載の経路誘導装置。
【請求項12】
前記自車両の走行中の任意の地点を仮出発地に設定すると共に、前記自車両の走行中の任意の地点を仮目的地に設定する仮出発地・仮目的地設定手段を更に備え、
前記走行履歴記録手段は、前記仮出発地が設定されてから、前記仮目的地が設定されるまでの実際の走行経路を記憶しておき、
前記経路演算手段は、前記仮出発地から前記仮目的地までの経路を所定の探索条件に従って探索し、
前記ルート特徴量比較手段は、前記仮出発地から前記仮目的地までの前記探索経路のルート特徴量と、前記実際の走行経路のルート特徴量とを比較すること
を特徴とする請求項7乃至請求項10の何れかに記載の経路誘導装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−177804(P2006−177804A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372038(P2004−372038)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】