説明

超純水製造システム及び超純水の製造方法

【課題】製造される超純水の水質を維持した上で、より簡素化された超純水製造システム及び超純水の製造方法を提供する。
【解決手段】被処理水が導入される前処理部と、前処理水槽14、該前処理水槽から被処理水が導入される逆浸透膜装置15及び電気脱イオン装置16を有する超純水製造部とを具備し、前記前処理部は活性炭濾過装置13を有し、該活性炭濾過装置は、シート状部材が渦巻状に巻回される濾過体本体と、被処理水が通水され、前記濾過体本体の軸芯が通水方向に沿うように前記濾過体本体が内部に充填される濾過槽とを有し、前記シート状部材は、被処理水が通過する空孔を有するシート状のメッシュシートと、メッシュシートに比べて被処理水が通過し難いシート状のスペーサーのシート面同士が重ねられたものであり、前記メッシュシート及び前記スペーサーの少なくとも一部は活性炭繊維で形成されたものである超純水製造システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子産業、液晶、製薬、食品等の各種産業や研究施設などにおいて利用される超純水製造システム及び超純水の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用水、市水、井水、河川水、湖沼水、工場廃水などの被処理水から超純水を製造する超純水製造システムは、一般的には前処理部、一次純水システム、サブシステム及び端末配管部で構成されている。前処理部では、後段の装置が安定して運転を行えるよう、不溶解性物質の除去を主目的として、凝集、沈殿、濾過、軟化、除鉄、除マンガン、吸着などの処理が行われる。一次純水システムは、前処理部で処理された前処理水を処理して純水を製造するものであり、主にイオン交換装置または電気脱イオン装置、脱気膜装置、逆浸透膜装置で構成されている。また、サブシステムは、一次純水システムで製造される純水をさらに高純度化して超純水に仕上げるものであり、例えばサブタンク、紫外線酸化装置、イオン交換装置、限外濾過膜装置等で構成されている。そして、サブシステムで製造された超純水は、端末配管部でユースポイントに送水され、ユースポイントで使用されなかった余剰の超純水は、サブシステムのサブタンクに戻され、循環処理される。例えば、従来技術の超純水製造システムを示す概略系統図である図10に示すように、原水槽41、熱交換器42、精密濾過(MF)膜装置43、活性炭塔44、保安フィルター45、活性炭塔44及び保安フィルター45の間に設けられ被処理水に硫酸等の薬品を導入する薬品導入手段46を有する前処理部と、前処理水槽47、逆浸透(RO)膜装置48、脱気(MD)膜装置49、電気脱イオン(EDI)装置50を有する一次純水システムと、サブタンク51、熱交換(H/E)器52、紫外線殺菌装置53、端末精密濾過膜装置54を有する端末配管部を有し、ポンプで被処理水が送液されて超純水が製造される超純水製造システム等がある。このような従来の超純水製造システムは、高純度の超純水を安定的にユースポイントに送水する点においては、理想的な装置構成となっているが、ユーザーからの設備投資費及び運転コストの削減要求や、省スペース化の要求から、超純水製造システムの簡素化が強く求められている。
【0003】
これらの要求に対する技術として、前処理部と、該前処理部で処理された前処理水が導入される超純水製造部と、該超純水製造部で製造された超純水をユースポイントに送水し、余剰の超純水を該超純水製造部に戻す端末配管部とを備える超純水製造システムであって、該超純水製造部は、少なくとも、前処理水が導入されるタンクと、タンクからの水を処理する、逆浸透膜装置、脱気装置、電気脱イオン手段、及び濾過膜装置で構成され、かつ、前記端末配管部から戻される余剰の超純水は、該タンクに導入される超純水製造システムがある(特許文献1参照)。しかしながら、さらなる簡素化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−57935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した事情に鑑み、製造される超純水の水質を維持した上で、より簡素化された超純水製造システム及び超純水の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の超純水製造システムは、被処理水が導入される前処理部と、該前処理部で処理された被処理水が貯留される前処理水槽、該前処理水槽から被処理水が導入される逆浸透膜装置及び電気脱イオン装置を有する超純水製造部とを具備し、前記前処理部は活性炭濾過装置を有し、該活性炭濾過装置は、シート状部材が渦巻状に巻回される濾過体本体と、被処理水が通水され、前記濾過体本体の軸芯が通水方向に沿うように前記濾過体本体が内部に充填される濾過槽とを有し、前記シート状部材は、被処理水が通過する空孔を有するシート状のメッシュシートと、メッシュシートに比べて被処理水が通過し難いシート状のスペーサーのシート面同士が重ねられたものであり、前記メッシュシート及び前記スペーサーの少なくとも一部は活性炭繊維で形成されたものであることを特徴とする。
【0007】
前記スペーサーが、直径0.1〜100μmの活性炭繊維で形成されたものであることが好ましい。
また、前記電気脱イオン装置の上流側に、脱炭酸設備を少なくとも一つ以上有していてもよい。
そして、前記電気脱イオン装置は、バイポーラ膜を有することが好ましい。
あるいは、前記電気脱イオン装置の脱塩室の厚さが、2〜5mmであることが好ましい。
また、前記超純水製造部から排出された超純水をユースポイントに送水すると共に余剰の超純水を前記前処理水槽に戻す端末配管部を有することが好ましい。
【0008】
本発明の超純水の製造方法は、活性炭濾過装置により活性炭濾過処理した被処理水を前処理水槽に貯留し、該前処理水槽に貯留した被処理水を逆浸透膜装置で逆浸透膜処理した後、電気脱イオン装置で脱イオン処理をする超純水の製造方法であって、前記活性炭濾過装置が、シート状部材が渦巻状に巻回される濾過体本体と、被処理水が通水され、前記濾過体本体の軸芯が通水方向に沿うように前記濾過体本体が内部に充填される濾過槽とを有し、前記シート状部材は、被処理水が通過する空孔を有するシート状のメッシュシートと、メッシュシートに比べて被処理水が通過し難いシート状のスペーサーのシート面同士が重ねられたものであり、前記メッシュシート及び前記スペーサーの少なくとも一部は活性炭繊維で形成されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製造される超純水の水質が良好で、且つ、簡素化された超純水製造システムを提供することができる。したがって、設備投資費及び運転コストを削減し、省スペース化を図りつつ、水質が良好な超純水を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の超純水製造システムの一例を示す概略系統図である。
【図2】活性炭濾過装置の構成を示す縦断面図である。
【図3】活性炭濾過装置の構成を示す横断面図である。
【図4】活性炭濾過装置の濾過体を示す斜視図である。
【図5】メッシュシートの要部拡大図である。
【図6】電気脱イオン装置の一構成例を示す概略構成図である。
【図7】バイポーラ膜を有する電気脱イオン装置の構成例を示す概略構成図である。
【図8】本発明の超純水製造システムの他の例を示す概略系統図である。
【図9】逆浸透膜の差圧の測定方法を示す図である。
【図10】従来技術の超純水製造システムを示す概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の超純水製造システムは、被処理水が導入される前処理部と、前処理部で処理された被処理水が貯留される前処理水槽と、前処理水槽から被処理水が導入される逆浸透膜装置及び電気脱イオン装置を有する超純水製造部とを具備する。そして、前処理部は活性炭濾過装置を有し、この活性炭濾過装置は、シート状部材が渦巻状に巻回される濾過体本体と、被処理水が通水され、濾過体本体の軸芯が通水方向に沿うように濾過体本体が内部に充填される濾過槽とを有し、シート状部材は、被処理水が通過する空孔を有するシート状のメッシュシートと、メッシュシートに比べて被処理水が通過し難いシート状のスペーサーのシート面同士が重ねられたものであり、メッシュシート及びスペーサーの少なくとも一部は活性炭繊維で形成されたものである。
【0012】
具体的には、本発明の超純水製造システムの一例を示す概略系統図である図1に示すように、超純水製造システム10は、被処理水(原水)が導入される原水槽11と、原水槽11の下流側に設けられ被処理水を加熱する熱交換器12と、熱交換器12で加熱された被処理水を活性炭濾過処理する活性炭濾過装置13とを有する前処理部を具備する。なお、被処理水を加熱する必要が無ければ熱交換器12は有さなくてもよい。また、前処理部で処理された被処理水を貯留する前処理水槽14、前処理水槽14の下流側に順に設けられた逆浸透膜装置15、電気脱イオン装置16及び精密濾過膜装置17を有する超純水製造部を具備する。そして、超純水製造部から排出された超純水、すなわち、精密濾過膜装置17から排出された超純水をユースポイントに送水する配管と、余剰の超純水を前処理水槽14に戻す配管からなる端末配管部を具備する。なお、被処理水を送液する手段として、ポンプPが各装置間に適宜設けられている。また、図1においては、亜硫酸水素ナトリウム等の還元剤を原水槽11に導入する還元剤導入手段18が設けられている。
【0013】
上記活性炭濾過装置13の一例について、図2〜図5を用いて具体的に説明する。図2は、活性炭濾過装置の構成を示す被処理水の通水方向の縦断面図であり、図3は、活性炭濾過装置の構成を示す横断面図であり、図4は、活性炭濾過装置の濾過体を示す斜視図である。
図2及び図3に示すように、活性炭濾過装置13は、被処理水が通水される筒状の濾過槽1と、通水される被処理水中の濁質を捕捉する濾過体2とを有する。該濾過体2は、濾過槽1の通水方向の両端に接続される芯材3と、芯材3に渦巻状に巻回されたシート状部材からなる濾過体本体4を有する。このシート状部材は、被処理水が通過する空孔を有するシート状のメッシュシート5と、メッシュシート5に比べて被処理水が通過し難い活性炭繊維で形成されたシート状のスペーサー6のシート面同士が重ねられたものである。
【0014】
また、濾過槽1の通水方向両端には、濁質(懸濁物質)等を含有する被処理水が自由に通水できる程度の穴が複数設けられた樹脂製等の円形のプレート7が設けられ、各プレート7の中心に芯材3の両端が固定されている。そして、濾過体2は、濾過体本体4の軸芯が被処理水の通水方向に沿うように、濾過体2が濾過槽1内部全体に充填されている。また、濾過槽1の内壁と濾過体本体4の外周との隙間や、芯材3付近の隙間は、接着剤等の被処理水が通過しない水不透過部材8で埋められており被処理水が通過できない構成になっている。なお、濾過体本体4の軸芯とは、渦巻状に巻回された濾過体本体4の渦巻きの中心であり、本実施形態では芯材3が該当する。
【0015】
このような活性炭濾過装置13に、被処理水を通水すると、スペーサー6はメッシュシート5に比べて被処理水が通過し難いため、被処理水の多くは、メッシュシート5の空孔を通りメッシュシート5を略縦断、すなわちメッシュシート5を面方向に通過し、その際被処理水に含まれる濁質がメッシュシート5にトラップされ、濁質が除去された被処理水が濾過槽1から排出される。このように、被処理水が通過する空孔を有し濁質を捕捉することができるメッシュシート5を、厚さ方向に横断するのではなく縦断するように、被処理水が通水される構造の活性炭濾過装置13とすることで、清澄な処理水が得られる。したがって、活性炭濾過装置13は、逆浸透膜装置15の閉塞や劣化、電気脱イオン装置16の劣化を抑制することができる。また、活性炭濾過装置13は、限外濾過膜装置又は精密濾過膜装置のように、膜を用いた濾過ではないので閉塞し難く、また安価である。
【0016】
そして、スペーサー6が活性炭繊維で形成されたものであるため、このスペーサー6に被処理水が接触することにより、被処理水が含有する次亜塩素酸等の酸化剤が活性炭繊維と反応し還元される。したがって、活性炭濾過装置13から排出される被処理水は、酸化剤がほぼ完全に除去されたものとすることができる。
【0017】
ここで、メッシュシート5は、被処理水が通過することができる空孔を有し被処理水が含有する濁質を所望の程度除去できればよく、特に限定はないが、例えば、図5に示すような、縦糸9aと横糸9bで形成された織物が挙げられる。なお、図5は、メッシュシート5の要部拡大平面図(図5(a))及び図5(a)のA−A´断面図(図5(b))である。
【0018】
そして、メッシュシート5の隣り合う縦糸9a同士や隣り合う横糸9b同士の距離、すなわち、オープニング(図5中OPで示す。)は200〜4000μm程度が好ましく、また、空孔(図5中斜線で示す。)の大きさ、すなわち、メッシュシート5の平面視の空間率(オープニングエリア)は40〜98%程度とすることが好ましく、そして、交点部の高さ(図中Tで示す厚さ)は500〜1200μmであることが好ましい。具体的な商品としては、例えば、100目〜8目(NBC社)程度のものを用いればよい。この範囲であれば、特に好適に濁質を除去することができる。また、逆浸透膜装置15、例えば逆浸透膜を巻き回した形状のスパイラル型逆浸透膜装置では、交点部の高さが通常0.65〜1.2mm程度のメッシュシートを原水流路スペーサーとして用いているので、逆浸透膜装置よりも交点部の高さの低いメッシュシートを用いることが好ましいためである。例えば、逆浸透膜装置15よりも交点部の高さが2/3倍以下のメッシュシートを用いることが好ましい。
【0019】
また、縦糸9aや横糸9bとなる繊維の直径Dは、それぞれ直径0.1〜0.6mmが好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.4mm程度である。被処理水の濁度や処理量にもよるが、被処理水を略縦断できるようにするためには、ある程度の太さの繊維で被処理水を通過させる空孔を形成する必要があり、また、太すぎると形成される空孔が大きくなりすぎて、濁質を除去できなくなるためである。
【0020】
メッシュシート5を構成する糸等の材質としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの合成樹脂や、金属繊維、活性炭繊維等が挙げられるが、耐塩素性の観点から、ポレオレフィンが好ましい。なお、図5においては、織物を例示したが、繊維で形成された比較的大きな空孔を有する不織布でもよい。
【0021】
また、スペーサー6は、メッシュシート5に比べて被処理水が通過し難いシート状のものであれば特に限定されず、例えば、空孔を全く有さず被処理水を通過させない水不透過シートや、直径0.1〜100μm、好ましくは0.5〜30μm程度の繊維で形成された不織布等、又は、これらを貼り合わせたり熱融着で一体成型する等により重ねられたものとしてもよい。なお、スペーサー6が被処理水を通過させない水不透過シートであれば、被処理水をメッシュシート5に均一に接触させることができるので、スペーサー6は水不透過シートを有するものであることが好ましい。そして、不織布をスペーサー6として用いると、不織布表面の毛羽立ち部位で被処理水の濁質を捕捉することができ活性炭濾過装置13の濁質捕捉性を向上させることができるため、不織布と水不透過シートとからなるスペーサーとすることが好ましい。
【0022】
なお、メッシュシート5の少なくとも一部が活性炭繊維を用いて形成されている場合は、スペーサー6は活性炭繊維以外の材質で形成されていてもよい。このようなスペーサー6の材質としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、金属繊維等が挙げられる。この中では、耐薬品性や経済性の観点からは、ポレオレフィンが好ましい。
【0023】
そして、メッシュシート5及びスペーサー6を重ね合わせる形態に特に限定はなく、シート面同士を貼り合わせてもよく熱融着で一体成型してもよい。なお、メッシュシート5とスペーサー6の大きさは同一でなくてもよいが、均一に被処理水を処理するためには、ほぼ同一であることが好ましい。メッシュシートやスペーサー6の通水方向の長さは、被処理水の濁度、処理量や求める超純水(処理水)の品質等にもよるが、例えば、200〜1000mm程度とすればよい。
【0024】
このメッシュシート5及びスペーサー6を重ね合わせたシート部材を巻きつける芯材3の材質は特に限定されず、プラスチックや金属などを用いることができるが、経済性の観点からは塩化ビニル配管(CVP配管)とすることが好ましい。また、芯材の形状3も特に限定されず、例えば円柱状でも角柱状でもよい。なお、シート部材を芯材3に巻きつける方法も特に限定は無く、例えばシート部材の端部を接着剤等で芯材3に固定し、該芯材3を中心として、シート部材をのり巻き状に巻き込み、被処理水の処理量や濁度等に応じて、任意の径となるように巻きつければよい。
【0025】
そして、濾過槽1に限定はなく、例えば材質はステンレス製や繊維強化プラスチック(FRP)製とすることができ、また、大きさは中空の円柱状(筒状)であれば、直径100〜1000mm、高さ200〜1000mmとすることができる。また、図2では、筒状の濾過槽1としたが、筒状でなくてもよく、通水できる形状、すなわち、中空であればよく、例えば角柱に空洞を設けた形状でもよい。
【0026】
図2においては、濾過体2として、芯材3に3回巻回された濾過体本体4を有するものを用いたが、巻回す回数に制限はなく、被処理水の処理量及び濁度や求める超純水の品質等により適宜調節すればよい。濾過体本体4が1回のみ巻回された濾過体2としてもよいが、巻回す回数が多いほどスペーサー6によりメッシュシート5の形状が保持しやすくなり、被処理水が均一にメッシュシート5を縦断できるようになって、水処理が安定するため好ましい。
【0027】
また、図2においては、濾過体2として、芯材3に濾過体本体4が巻回された物を用いたが、芯材3はなくてもよく、例えばスペーサー6等でメッシュシート5の通水時の形状を保持し、被処理水がメッシュシート5を面方向に通過(縦断)することができれば、濾過体本体4のみからなる濾過体2としてもよい。
【0028】
また、図2においては、中空の円柱状の濾過槽1に濾過体2を充填した活性炭濾過装置13としたが、濾過体2にFRPなどのシートを巻きつけて被処理水が漏れないように接合したものとしてもよい。また、スペーサー6を水不透過の材質とし、被処理水が漏れないようにすることにより、スペーサー6が濾過槽1を兼ねるようにしてもよい。
【0029】
なお、活性炭濾過装置13は、被処理水の通水方向とは逆方向に、活性炭濾過装置13から排出された被処理水、洗浄液、洗浄液と空気との混合液、又は、被処理水(原水)を通水して系外に排出するいわゆる逆洗を行なうことが好ましい。これにより活性炭濾過装置13が有する濾過体2等の部材に付着した濁質等の汚染物質を除去することができる。図1の超純水処理装置においては、前処理水槽14に貯留された被処理水を、被処理水の通水方向とは逆方向に活性炭濾過装置13に供給して活性炭濾過装置13を逆洗できる構造としている。
【0030】
また、逆浸透膜装置15は、逆浸透膜を有し被処理水を通水して膜分離処理することにより、被処理水中に含まれるHCO等のイオン、全有機炭素(TOC)などを除去することができる装置であれば特に限定はないが、メッシュシート5の被処理水通水方向の断面積よりも被処理水の通水路の断面積が大きい、例えば、スパイラル型のものではメッシュシート5の交点部の高さよりも原水流路の幅が大きいものが好ましい。そして、逆浸透膜装置15の形態に特に限定はないが、例えば、袋とじにした逆浸透膜を側面に通水孔を有する中空の芯材に巻き回した形状のいわゆるスパイラル型のものが、大型化に対応し易いため好ましい。特に、活性炭濾過装置13と同一の直径を有するスパイラル型の逆浸透膜装置とすることが好ましい。なお、スパイラル型の逆浸透膜装置を用いると、逆浸透膜で不純物を膜分離処理された処理水が、中空の芯材から排出され、芯材以外からは逆浸透膜で膜分離処理されていない不純物を多く含んだいわゆる濃縮水が排出される。また、スパイラル型のもの以外に、平膜や中空糸等、いずれの構造でもよい。
【0031】
逆浸透膜としては、芳香族ポリアミド製の膜等が挙げられる。
【0032】
また、電気脱イオン装置16は、被処理水中に含まれ逆浸透膜装置15で除去されなかったイオン、CO、シリカ等を除去する脱イオン処理をすることができるものであれば特に限定はなく、一般的な電気脱イオン装置を用いることができる。一般的な電気脱イオン装置は、例えば電気脱イオン装置の一構成例を示す概略構成図である図6に示すように、陰極(カソード)と陽極(アノード)との間に、複数のアニオン交換膜31とカチオン交換膜32とを交互に配列することにより、濃縮室33と脱塩室34とが形成されている。そして、濃縮室33及び脱塩室34には、それぞれイオン交換樹脂が、混床あるいは単一の層で充填されている。このような電気脱イオン装置では、被処理水が通水されると、脱イオン処理された処理水が脱塩室34から排出され、濃縮室33からはイオン、HCO、CO2−、シリカ等を多く含んだ濃縮水が排出される。
【0033】
このような電気脱イオン装置の中でも、スケール成分が析出し難い電気脱イオン装置を用いることが好ましい。通水する被処理水が例えば高濃度の二酸化炭素COを含有する場合、電気脱イオン装置の濃縮室33内において、アニオン交換膜31側の脱塩室34から濃縮室33へ透過してきた炭酸水素イオンHCO3−等と、カチオン交換膜32側の脱塩室34から濃縮室33へ透過してきたカルシウムイオンCa2+等が反応してスケール成分(炭酸カルシウム等)が析出してしまう場合があるが、例えば特開2001−198577号公報や特開2008−36486号公報に示すようなバイポーラ膜を有する電気脱イオン装置を用いることにより、濃縮室33でスケール成分が析出し難くなる。バイポーラ膜とは、カチオン交換膜とアニオン交換膜とが貼り合わされた構造の複合膜の一種であり、水の電気分解に用いる隔膜として、あるいは、酸とアルカリの中和生成物である塩の水溶液から酸とアルカリを再生する際の分離膜等として従来より広く使用されている公知のイオン交換膜である。
【0034】
このような電気脱イオン装置は、バイポーラ膜を有する電気脱イオン装置の構成例を示す概略構成図である図7に示すように、陰極(カソード)と陽極(アノード)との間に、複数のアニオン交換膜31とカチオン交換膜32とを交互に配列することにより、濃縮室33と脱塩室34とが形成され、濃縮室33及び脱塩室34には、それぞれイオン交換樹脂が、混床あるいは単一の層で充填されている。そして、濃縮室33にバイポーラ膜35を設けることにより、濃縮室33が陰極側と陽極側とに区画されている。なお、バイポーラ膜35は、アニオン交換膜が陽極(アノード)側に、カチオン交換膜が陰極(カソード)側に位置するように設けられている。このような電気脱イオン装置では、被処理水が通水されると、脱イオン処理された処理水が脱塩室34から排出され、濃縮室33からはイオン、HCO、CO2−、シリカ等を多く含んだ濃縮水が排出される。この際、アニオン交換膜31側の脱塩室34から濃縮室33へ炭酸水素イオンHCO3−等が透過し、また、カチオン交換膜32側の脱塩室34から濃縮室33へカルシウムイオンCa2+等が透過してくるが、バイポーラ膜35のカチオン交換膜及びアニオン交換膜でそれぞれ遮断されるため、濃縮室33内でスケールを形成されることを防止できる。
【0035】
また、脱塩室34の厚さが小さい電気脱イオン装置を用いることにより、脱塩室34あたりのイオン量を低減できるため、濃縮室33でスケール成分が析出し難くなる。例えば、脱塩室34の厚さは、2〜5mmとすることが好ましい。2mm未満では脱塩室34を構成する部材が変形しやすく水漏れしやすくなる可能性があり、また、5mmを超えると脱塩室34の負荷が高くスケールが析出しやすくなるためである。ただし、上記バイポーラ膜を有する電気脱イオン装置であれば、厚さが5mmを超えてもイオンが会合しないため、スケールは発生しない。
【0036】
このようなバイポーラ膜を有する、又は、脱塩室34の厚さが小さい電気脱イオン装置を用いることにより、脱気膜を有し炭酸等の気体を除去することができる脱気膜装置を設けなくても、炭酸カルシウム等のスケール成分の析出を防止でき、安定的に超純水製造システム10を運転することができる。
【0037】
また、精密濾過膜装置17は、微粒子を除去できる精密濾過膜、例えば、0.02〜10μmの微粒子を除去できる精密濾過膜を有するものであり、従来の超純水製造システムで使用されている精密濾過膜装置17を用いることができる。勿論、求める超純水の品質によっては、この精密濾過膜装置17はなくてもよく、或いは、更に微粒子の除去性能の高い限外濾過膜を用いてもよい。このような精密濾過膜装置17、または精密濾過膜装置17を設けない場合は電気脱イオン装置16等から排出される被処理水が、目的とする超純水である。
【0038】
端末配管部は、上述したように、得られた超純水をユースポイントに送水する配管と、余剰の超純水を前処理水槽14に戻す配管からなる端末配管部を具備するものである。ここで、ユースポイントに送水された超純水は、ユーザーの洗浄機等で使用されるが、使用する水圧は例えば0.1〜0.3MPa程度であり、端末配管部はその圧力まで昇圧するポンプを有することが好ましい。
【0039】
さらに、本発明の超純水製造システム10は、逆浸透膜装置15、電気脱イオン装置16の酸化剤等による劣化を防止するために、被処理水に還元剤を導入するための還元剤貯留槽及びポンプ等からなる還元剤導入手段を有していてもよい。図1においては、原水槽11に還元剤を導入する還元剤導入手段18を設けた構造とした。
【0040】
また、求める超純水の品質によっては、イオン交換樹脂塔、紫外線照射酸化分解装置、紫外線殺菌装置等の種々の装置を、電気脱イオン装置16の後段に有する超純水製造システムとしてもよい。なお、微粒子除去目的で精密濾過膜装置17などを設置する場合には、イオン交換樹脂塔や紫外線酸化分解装置、紫外線殺菌装置などは、電気脱イオン装置16と精密濾過膜装置17との間に通常は配置される。
【0041】
このような超純水製造システムを用いて、超純水を製造する方法例を以下に説明する。まず、原水槽11に被処理水(原水)を導入する。
【0042】
被処理水としては、例えば、フミン酸・フルボ酸系有機物、藻類等が生産する糖などの生物代謝物、又は、界面活性剤等の合成化学物質などを含む水、具体的には、工業用水、市水、井水、河川水、湖沼水、工場廃水(特に、工場からの廃水を生物処理した生物処理水)や、これらに凝集剤を添加・撹拌等してフロック(凝集物)を形成する凝集処理をした水が挙げられる。また、これらに微生物によるトラブルの発生の抑制等を目的として次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素やオゾン等の酸化剤を添加した水でもよい。なお、フミン質とは、植物などが微生物に分解されることにより生じる腐食物質をいい、フミン酸等を含むものであり、フミン質を含有する水は、フミン質および/またはフミン質に由来する溶解性COD成分、懸濁物質や色度成分を有する。また、凝集処理を行うための凝集剤としては、高分子凝集剤や、無機凝集剤が挙げられる。高分子凝集剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミドの共重合物、及び、それらのアルカリ金属塩等のアニオン系の有機系高分子凝集剤、ポリ(メタ)アクリルアミド等のノニオン系の有機系高分子凝集剤、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートもしくはその4級アンモニウム塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドもしくはその4級アンモニウム塩等のカチオン性モノマーからなるホモポリマー、及び、それらカチオン性モノマーと共重合可能なノニオン性モノマーとの共重合体等のカチオン系の有機系高分子凝集剤、及び上記アニオン性モノマー、カチオン性モノマーやこれらモノマーと共重合可能なノニオン性モノマーとの共重合体である両性の有機系高分子凝集剤が挙げられる。高分子凝集剤の添加量に特に限定はなく、被処理水の性状に応じて調整すればよいが、被処理水に対して概ね固形分で0.01〜10mg/Lである。また、無機凝集剤としては、例えば、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム塩、塩化第二鉄、硫酸第一鉄等の鉄塩などが挙げられる。また、無機凝集剤の添加量にも特に限定はなく、処理する被処理水の性状に応じて調整すればよいが、被処理水に対して概ねアルミニウム又は鉄換算で0.5〜10mg/Lである。また、被処理水の性状にもよるが、無機凝集剤としてポリ塩化アルミニウム(PAC)を用いた場合、高分子凝集剤及び無機凝集剤を添加した被処理水のpHを、pH5.0〜7.0程度とすると、凝集が最適となる。無機凝集剤の添加は、高分子凝集剤を被処理水に添加する前でも後でもよく、また、高分子凝集剤と同時に添加してもよい。
【0043】
次に、必要に応じて、被処理水に還元剤を添加する。還元剤を添加することにより、被処理水が含有する酸化剤が還元剤によって還元されるため、後段の逆浸透膜装置15や電気脱イオン装置16等の酸化剤による劣化を抑制することができる。還元剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムやヒドラジン等が挙げられる。
【0044】
次いで、熱交換器12によって加熱された被処理水を活性炭濾過装置13に導入する。そして、活性炭濾過装置13に導入された被処理水がメッシュシート5を縦断することにより、被処理水中に含まれる濁質が除去される。また、活性炭繊維で形成されたスペーサー6に被処理水が接触することにより、被処理水が含有する酸化剤が活性炭繊維で還元される。したがって、活性炭濾過装置13から排出される被処理水は、酸化剤がほぼ完全に除去されたものであり、且つ、濁質も除去されたものである。活性炭濾過装置13から排出された被処理水は、前処理水槽14に貯留する。
【0045】
そして、前処理水槽14に貯留された被処理水を、逆浸透膜装置15に通水することにより逆浸透膜で膜分離処理する。この逆浸透膜装置15から排出された被処理水(処理水)を電気脱イオン装置16に通水することにより脱イオン処理し、また、逆浸透膜装置15から排出された濃縮水を前処理水槽14に戻す又は不純物が多い場合は系外に除去する。そして、電気脱イオン装置16から排出された被処理水(処理水)を精密濾過膜装置17に通水することにより精密濾過膜で膜分離処理し、また、電気脱イオン装置16から排出された濃縮水を、前処理水槽14に戻す。このように処理されて精密濾過膜装置17から排出された被処理水、すなわち目的とする超純水をユースポイントに送液する。また、余剰の超純水は、端末配管部を経由して前処理水槽14に戻す。なお、前処理水槽14に戻される被処理水が溶存酸素を含む場合は、配管の殺菌洗浄を行なったり、窒素ガスを導入することにより、微生物等の反応を抑制することが好ましい。
【0046】
ここで、上述した図1に示す超純水製造システム10は、被処理水(原水)中の鉄や、アルミニウムの濃度が低く(例えば0.06ppm以下)、且つ、全有機炭素濃度(TOC濃度)が高い場合に適した超純水製造システムであり、中性のpHで運転する。pHが低い場合は、フミン質等の有機物が不溶化してしまい逆浸透膜を閉塞させる可能性があるためである。また、鉄やアルミニウムが高濃度の場合は、水酸化物になり逆浸透膜を閉塞させる可能性があるが、鉄やアルミニウムの濃度が低い場合はこの問題がほとんど生じないため、中性で運転させることができる。
【0047】
一方、被処理水(原水)中の鉄や、アルミニウムの濃度が高く、且つ、全有機炭素濃度(TOC濃度)が低い場合は、図1に示す超純水製造システムに加えて、さらに、電気脱イオン装置16の上流側に、少なくとも一つの脱炭酸設備を有する超純水製造システムとすることが好ましい。このように、脱炭酸設備を有する超純水製造システムを、低いpH(例えばpH4〜5)、すなわち酸性側で運転することにより、鉄やアルミニウムの濃度が高い場合であっても、鉄やアルミニウムがイオン状になり逆浸透膜を閉塞させることを防止することができ、安定して運転することができる。なお、被処理水(原水)中の鉄やアルミニウムの濃度に係らず、全有機炭素濃度(TOC濃度)が高い場合は、前処理部の活性炭濾過装置13よりも前段において凝集処理などの全有機炭素濃度を低減するための処理が必要となる。
【0048】
脱炭酸設備としては、脱炭酸塔や脱気膜を有する装置(脱気膜装置)が挙げられる。脱気膜装置を用いる場合には、脱気膜の汚れを防止できる点で逆浸透膜装置15の後段に設けることが好ましい。また、電気脱イオン装置16を用いた場合には、電気脱イオン装置の負荷を減らすことができ、また、スケール生成を防止できるため、脱気膜装置は電気脱イオン装置の前段に設けることが好ましい。
また、脱炭酸設備として、脱炭酸塔を用いてもよい。このような脱炭酸設備として脱炭酸塔を有する超純水製造システムについて、本発明の超純水製造システムの他の例を示す概略系統図である図8を用いて説明する。なお、図1と同じ装置には同じ番号を付してあり、これらの構成は上記と同様であり、その説明は省略する。
【0049】
図8に示すように、脱炭酸塔を有する超純水製造システム10Aは、被処理水(原水)が導入される原水槽11と、原水槽11の下流側に設けられ被処理水を加熱する熱交換器12と、熱交換器12で加熱された被処理水を活性炭濾過処理する活性炭濾過装置13とを有する前処理部を具備する。なお、被処理水を加熱する必要が無ければ熱交換器12は有さなくてもよい。また、前処理部で処理された被処理水を貯留する前処理水槽14、前処理水槽14の下流側に順に設けられた逆浸透膜装置15、電気脱イオン装置16及び精密濾過膜装置17を有する超純水製造部を具備する。また、前処理水槽14の直上には、脱炭酸塔19が設けられ、前処理部で処理された被処理水が脱炭酸塔19を経由して前処理水槽14に貯留される構造であり、脱炭酸塔19と前処理水槽14は一体的に構成されている。勿論、一体的に構成された装置ではなく、脱炭酸塔19と、前処理水槽14とを別れた装置としてもよい。また、脱炭酸塔19は、電気脱イオン装置16の上流側に一つ以上設けられていればよく、例えば、熱交換器12と活性炭濾過装置13との間や、前処理水槽14と逆浸透膜装置15との間に設けられていてもよい。そして、超純水製造部から排出された超純水、すなわち、精密濾過膜装置17から排出された超純水をユースポイントに送水する配管と、余剰の超純水を前処理水槽14に戻す配管からなる端末配管部を具備する。なお、被処理水を送液する手段として、ポンプPが各装置間に適宜設けられている。また、図8においては、pH調整剤を被処理水に導入するpH調整剤導入手段が、活性炭濾過装置13の直後に設けられている。
【0050】
脱炭酸塔19は、被処理水中に含まれる二酸化炭素を除去することができる装置であれば特に限定はなく、通常の超純水製造システムで使用される脱炭酸塔を使用することができる。例えば、内部に充填材を充填した容器と、この容器の上部から被処理水を通水するスプレーノズルと、容器の下部から空気あるいは窒素ガスを吹き込み容器上部からこのガスを排出するガス導入手段とを有するものである。充填材としては、1/2〜2インチのネットリングや、ラシヒリング等が挙げられる。1/2インチ未満の大きさでは、充填物の材質や形状等にも依るが圧力損失が大きくなりすぎ、また、2インチより大きいと十分な二酸化炭素除去性能が得られない場合がある。また、被処理水の体積流量SVが30〜100になるように、充填材を充填することが好ましい。体積流量が低すぎると被処理水の流れが偏り十分接触せず二酸化炭素除去性能が得られない恐れがあり、また、高すぎると圧力損失が高く空気や窒素等のガスが均一に流れなくなり十分接触せず二酸化炭素除去性能が得られない恐れがあるためである。
【0051】
このような超純水製造システム10Aを用いて、超純水を製造する方法例を以下に説明する。まず、原水槽11に被処理水(原水)を導入する。次に、必要に応じて、被処理水に還元剤を添加する。
【0052】
次いで、熱交換器12によって加熱された被処理水を活性炭濾過装置13に導入する。そして、活性炭濾過装置13に導入された被処理水がメッシュシート5を縦断することにより、被処理水中に含まれる濁質が除去される。また、活性炭繊維で形成されたスペーサー6に被処理水が接触することにより、被処理水が含有する酸化剤が活性炭繊維で還元される。したがって、活性炭濾過装置13から排出される被処理水は、酸化剤がほぼ完全に除去されたものであり、且つ、濁質も除去されたものである。
【0053】
そして、活性炭濾過装置13から排出された被処理水に、pH調整剤導入手段からpH調整剤を導入して、被処理水のpHを酸性の所望の値、例えばpH4〜5に調整する。pH調整剤としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0054】
そして、pHを調整した被処理水を、充填材が充填された容器の下部から空気或いは窒素ガスを吹きこみ容器上部から排出されるようにした脱炭酸塔19の上部から、スプレーノズルで通水することにより、二酸化炭素を除去する。この二酸化炭素が除去された被処理水は、直下に設けられている前処理水槽14へと落下し、貯留される。
【0055】
次に、前処理水槽14に貯留された被処理水を、逆浸透膜装置15に通水することにより逆浸透膜で膜分離処理する。この逆浸透膜装置15から排出された被処理水(処理水)を電気脱イオン装置16に通水することにより脱イオン処理し、また、逆浸透膜装置15から排出された濃縮水を前処理水槽14に戻す又は不純物が多い場合は系外に除去する。そして、電気脱イオン装置16から排出された被処理水(処理水)を精密濾過膜装置17に通水することにより精密濾過膜で膜分離処理する。なお、電気脱イオン装置16から排出された濃縮水には無機炭酸が多量に含有されているが、pHが酸性の条件では逆浸透膜装置15で無機炭酸は除去できない。したがって、電気脱イオン装置16からの濃縮水中に含まれる無機炭酸を除去するために脱炭酸設備よりも前段に濃縮水を返送する必要があり、本実施の形態では原水槽11に戻される構成とした。このように処理されて精密濾過膜装置17から排出された被処理水、すなわち目的とする超純水を、ユースポイントに送液する。また、余剰の超純水は、端末配管部を経由して前処理水槽14に戻す。なお、前処理水槽14や原水槽11に戻される被処理水が溶存酸素を含む場合は、配管の殺菌性状や、窒素ガスを導入することにより、微生物等の反応を抑制することが好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例に基づいてさらに詳述するが、本発明はこの実施例により何ら限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
被処理水(原水)として、市水、具体的には、濁度1.0度以下、残留塩素(as.Cl):0.5ppm、水温:20℃、鉄濃度:0.01ppm、アルミニウム濃度:0.05ppm、TOC濃度:0.5ppmの水を、図1に示す超純水製造システムで処理した。なお、各装置の構成は以下の通りである。また、原水pHは7.1であった。
【0058】
<還元剤導入手段>
タンク:イワキ(株)製EWN−B11−VC1J−WPO
ポンプ:イワキ(株)製CT−U120N
還元剤:亜硫酸水素ナトリウム
【0059】
<活性炭濾過装置>
濾過槽:内径100mmの円筒状容器(ベッセル)
濾過体:メッシュシートをポリエチレン製の直径0.3mmの繊維からなる縦糸及び横糸で形成された図5に示す1m×10mで交点部の高さTが0.5mm、オープニング3000μm、オープニングエリア80%の織物とし、スペーサーを直径15μmの活性炭繊維で形成された1m×10m×厚さ0.3mmの活性炭不織布1枚と、PET(ポリエチレンテレフタラート)製の1m×10m×厚さ0.1mmのフィルム(水不透過フィルム)とからなるものとし、これらを重ね合わせて四隅を熱融着したシート状部材を作製した。そして、このシート部材を水不透過フィルムが外側になるようにして直径20mmの塩化ビニル製のパイプ(芯材)に10m巻きつけて形成した、直径100mmの濾過体
水不透過部材:濾過槽の内壁と濾過体本体の外周との隙間や、芯材付近の隙間を、被処理水を通過させない接着剤で充填したもの
濾過装置の通水量:1.6m/h(LV=200m/h)
【0060】
<逆浸透膜装置>
逆浸透膜:ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製FILMTEC LE−4040(原水流路スペーサーの交点部の高さ:0.85mm)を用いたスパイラル型のもの(直径100mm)を2本連結したもの
処理水量:0.5m/h
濃縮水量:1.1m/h
【0061】
<電気脱イオン装置>
陰極(カソード)と陽極(アノード)との間に、複数の以下のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配列することにより濃縮室と脱塩室を形成すると共に脱塩室および濃縮室に以下のイオン交換樹脂を充填し、更に濃縮室に以下のバイポーラ膜を設けることにより、濃縮室を陰極側と陽極側とに区画したものを用いた。なお、脱塩室および濃縮室の厚さや膜面積は以下の通りである。
アニオン交換膜: 旭化成工業(株)「アシプレックスA501SB」
カチオン交換膜: 旭化成工業(株)「アシプレックスK501SB」
イオン交換樹脂: アニオン交換樹脂(三菱化学(株)製「SA10A」)とカチオン交換樹脂(三菱化学(株)製「SK1B」)とを体積混合比率6:4で混合したもの。
バイポーラ膜:徳山ソーダ製カチオン交換膜(CMB)を塩化第一鉄水溶液に25℃で1時間浸漬した後、イオン交換水で十分に洗浄して、風乾し、その後、ポリマー被膜法によりカチオン交換膜表面に4級塩基化したアミノ基を含むポリマーを塗布して作製したもの
脱塩室:厚さ10mm
濃縮室:厚さ4mm
膜面積:300cm(300mm×100mm)
処理水量:0.4m/時間
濃縮水量:0.1m/時間
【0062】
<精密濾過膜装置>
精密濾過膜:アドバンテック社製 親水性PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルター TCFH−050−S1FEで全量濾過
【0063】
精密濾過膜から排出された被処理水について、25℃での導電率(比抵抗)を測定した。また、処理時における逆浸透膜装置15の差圧を、図9に示すように、逆浸透膜装置15の入口の圧力P1と濃縮水出口の圧力P2の差(P1−P2(MPa))として求めた。
【0064】
(実施例2)
被処理水(原水)として、井水、具体的には、濁度1.0度以下、残留塩素(as.Cl):0.0ppm、水温:10℃、鉄濃度:0.1ppm、アルミニウム濃度:0.03ppm、TOC濃度:0.2ppmの水を、図8に示す超純水製造システムで処理した。なお、各装置の構成は以下の通りである。また、pH調整剤添加後の被処理水のpHは5.0であった。
【0065】
<pH調整剤導入手段>
タンク:イワキ(株)製EWN−B11−VC1J−WPO
ポンプ:イワキ(株)製CT−U120N
pH調整剤:10%硫酸
【0066】
<活性炭濾過装置>
濾過槽:内径100mmの円筒状容器(ベッセル)
濾過体:メッシュシートをポリエチレン製の直径0.3mmの繊維からなる縦糸及び横糸で形成された図5に示す1m×10mで交点部の高さTが0.5mm、オープニング3000μm、オープニングエリア80%の織物とし、スペーサーを直径15μmの活性炭繊維で形成された1m×10m×厚さ0.3mmの活性炭不織布1枚と、PET(ポリエチレンテレフタラート)製の1m×10m×厚さ0.1mmのフィルム(水不透過フィルム)とからなるものとし、これらを重ね合わせて四隅を熱融着したシート状部材を作製した。そして、このシート部材を水不透過フィルムが外側になるようにして直径20mmの塩化ビニル製のパイプ(芯材)に10m巻きつけて形成した、直径100mmの濾過体
水不透過部材:濾過槽の内壁と濾過体本体の外周との隙間や、芯材付近の隙間を、被処理水を通過させない接着剤で充填したもの
濾過装置の通水量:1.6m/h(LV=200m/h)
【0067】
<脱炭酸装置>
内径250mm、高さ1500mmの筒型の容器の内部に、3/4インチのネットリングを1000mmの高さまで充填したものを脱炭酸塔とし、これを前処理水槽の上部に接続した。
【0068】
<逆浸透膜装置>
逆浸透膜:ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製FILMTEC LE−4040(原水流路スペーサーの交点部の高さ:0.85mm)を用いたスパイラル型のもの(直径100mm)を2本連結したもの
処理水量:0.5m/h
濃縮水量:1.1m/h
【0069】
<電気脱イオン装置>
電気脱イオン装置
陰極(カソード)と陽極(アノード)との間に、複数の以下のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配列することにより濃縮室と脱塩室を形成すると共に脱塩室および濃縮室に以下のイオン交換樹脂を充填したものを用いた。なお、脱塩室および濃縮室の厚さや膜面積は以下の通りである。
アニオン交換膜: 旭化成工業(株)「アシプレックスA501SB」
カチオン交換膜: 旭化成工業(株)「アシプレックスK501SB」
イオン交換樹脂:アニオン交換樹脂(三菱化学(株)製「SA10A」)とカチオン交換樹脂(三菱化学(株)製「SK1B」)とを体積混合比率6:4で混合したもの。
脱塩室:厚さ5mm
濃縮室:厚さ4mm
膜面積:300cm(300mm×100mm)
処理水量:0.4m/時間
濃縮水量:0.1m/時間
【0070】
<精密濾過膜装置>
精密濾過膜:アドバンテック社製 親水性PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルター TCFH−050−S1FEで全量濾過
【0071】
(比較例1)
被処理水(原水)として、実施例1と同様の被処理水を、図10に示す超純水製造システムで処理した。なお、各装置の構成は以下の通りである。また、原水のpHは7.1であった。
【0072】
<精密濾過膜装置>
精密濾過膜:旭化成製 UNA−600A
処理水量:2.5m/h
【0073】
<活性炭塔>
栗田工業CF−50を2基連結したもの
処理水量:2.5m/h
【0074】
<保安フィルター>
ロキテクノ製 DIA(II)糸巻きフィルター×5本
処理水量:2.5m/h
【0075】
<薬品導入手段>
タンク:イワキ(株)製 CT−U120N
ポンプ:イワキ(株)製 EWN−B11−VC1J−WPO
薬品:10%硫酸
【0076】
<逆浸透膜装置>
逆浸透膜:ザ・ダウ・ケミカル・カンパニー製FILMTEC LE−4040(原水流路スペーサーの交点部の高さ:0.85mmを用いたスパイラル型のもの、直径100mm)2本連結したもの
処理水量:0.5m/h
濃縮水量:1.1m/h
【0077】
<脱気膜装置>
三菱レイヨン製MHF1704
処理水量:0.5m/h
【0078】
<電気脱イオン装置>
陰極(カソード)と陽極(アノード)との間に、複数の以下のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配列することにより濃縮室と脱塩室を形成すると共に脱塩室および濃縮室に以下のイオン交換樹脂を充填したものを用いた。なお、脱塩室および濃縮室の厚さや膜面積は以下の通りである。
アニオン交換膜: 旭化成工業(株)「アシプレックスA501SB」
カチオン交換膜: 旭化成工業(株)「アシプレックスK501SB」
イオン交換樹脂:アニオン交換樹脂(三菱化学(株)製「SA10A」)とカチオン交換樹脂(三菱化学(株)製「SK1B」)とを体積混合比率6:4で混合したもの。
脱塩室:厚さ15mm
濃縮室:厚さ15mm
膜面積:300cm(300mm×100mm)
処理水量:0.4m/h
濃縮水量:0.1m/h
【0079】
<紫外線殺菌装置>
栗田工業NPX−1/2
処理水量:0.4m/h
【0080】
<端末精密濾過膜装置>
アドバンテック社製TCFH−050−S1FE
処理水量:0.4m/h
【0081】
(比較例2)
被処理水(原水)として、実施例2と同様の被処理水を、図10に示す超純水製造システムで処理した。なお、各装置の構成は比較例1と同じである。また、pH調整剤添加後の被処理水のpHは5.0であった。
【0082】
この結果、実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた処理水の比抵抗は、いずれも16.5MΩ・cmであり、実施例1及び2で得られた処理水は比較例1及び2で得られた処理水と同程度の高品質な水であった。また、実施例1の超純水製造システムは比較例1の超純水製造システムの床面積の60%、及び、製造コストは60%であった。また、実施例2の超純水製造システムは比較例2の超純水製造システムの床面積の70%、及び、製造コストは65%であった。
【符号の説明】
【0083】
1 濾過槽、 2 濾過体、 3 芯材、 4 濾過体本体、 5 メッシュシート、 6 スペーサー、 7 プレート、 8 水不透過部材、 9a 縦糸、 9b 横糸、 10、10A 超純水製造システム、 11 原水槽、 12 熱交換器、 13 活性炭濾過装置、 14 前処理水槽、 15 逆浸透膜装置、 16 電気脱イオン装置、 17 精密濾過膜装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水が導入される前処理部と、該前処理部で処理された被処理水が貯留される前処理水槽、該前処理水槽から被処理水が導入される逆浸透膜装置及び電気脱イオン装置を有する超純水製造部とを具備し、
前記前処理部は活性炭濾過装置を有し、該活性炭濾過装置は、シート状部材が渦巻状に巻回される濾過体本体と、被処理水が通水され、前記濾過体本体の軸芯が通水方向に沿うように前記濾過体本体が内部に充填される濾過槽とを有し、前記シート状部材は、被処理水が通過する空孔を有するシート状のメッシュシートと、メッシュシートに比べて被処理水が通過し難いシート状のスペーサーのシート面同士が重ねられたものであり、前記メッシュシート及び前記スペーサーの少なくとも一部は活性炭繊維で形成されたものであることを特徴とする超純水製造システム。
【請求項2】
前記スペーサーが、直径0.1〜100μmの活性炭繊維で形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載する超純水製造システム。
【請求項3】
前記電気脱イオン装置の上流側に、脱炭酸設備を少なくとも一つ以上有することを特徴とする請求項1または2に記載する超純水製造システム。
【請求項4】
前記電気脱イオン装置は、バイポーラ膜を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載する超純水製造システム。
【請求項5】
前記電気脱イオン装置の脱塩室の厚さが、2〜5mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載する超純水製造システム。
【請求項6】
前記超純水製造部から排出された超純水をユースポイントに送水すると共に余剰の超純水を前記前処理水槽に戻す端末配管部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載する超純水製造システム。
【請求項7】
活性炭濾過装置により活性炭濾過処理した被処理水を前処理水槽に貯留し、該前処理水槽に貯留した被処理水を逆浸透膜装置で逆浸透膜処理した後、電気脱イオン装置で脱イオン処理をする超純水の製造方法であって、
前記活性炭濾過装置が、シート状部材が渦巻状に巻回される濾過体本体と、被処理水が通水され、前記濾過体本体の軸芯が通水方向に沿うように前記濾過体本体が内部に充填される濾過槽とを有し、前記シート状部材は、被処理水が通過する空孔を有するシート状のメッシュシートと、メッシュシートに比べて被処理水が通過し難いシート状のスペーサーのシート面同士が重ねられたものであり、前記メッシュシート及び前記スペーサーの少なくとも一部は活性炭繊維で形成されたものであることを特徴とする超純水の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−210593(P2012−210593A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77837(P2011−77837)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】