説明

超音波洗浄装置

【課題】均一な洗浄性能を得るとともに、洗浄液供給ノズルと被洗浄基板との間に液膜を形成する際の使用液量を低減することが可能な超音波洗浄ヘッドを備える超音波洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】超音波を、供給される洗浄液に照射することで、被洗浄基板30を洗浄する超音波洗浄装置10において、被洗浄基板30を垂直な姿勢で保持する基板保持手段31と、洗浄液を供給する複数の超音波洗浄ヘッド20a、20bを備え、超音波洗浄ヘッド20a、20bは、超音波を発生させる超音波振動子21a、21bと、洗浄液を噴射する洗浄液供給ノズル22a、22bを備え、複数の超音波洗浄ヘッド20a、20bは、被洗浄基板30の洗浄方向に沿って複数設けられており、各洗浄液供給ノズル22a、22bの開口部の中心軸が被洗浄基板30と超音波洗浄ヘッド20a、20bの間で交差することを特徴とする超音波洗浄装置10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置のガラス基板、フォトマスク用のガラス基板、光ディスク用の基板などの洗浄に用いられる超音波洗浄装置、特に、振動子により超音波を洗浄液に照射する際に生じる衝撃力を利用した洗浄に用いられる超音波洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の製造工程においては、ガラス基板を高い洗浄度で洗浄することが要求される工程がある。このような工程では、基板面に付着したパーティクルなどの汚染物を迅速かつ確実に除去するため、複数の高濃度の薬品と超純水リンスによる洗浄を繰返し行っていた。しかしながら、使用する薬品の量が多く、また、洗浄後の付着薬品をリンスするために、多量の超純水が必要であった。
【0003】
このため、近年では、使用する薬品量と超純水量を低減するため、超音波を利用した洗浄方式が採用され始めている。この方式では、超音波を使用し、振動が付与された洗浄液を基板に噴射することで、付着した微粒子の結合力を低下できるため、振動を付与しない場合に比べて洗浄効果を向上させることができる。さらに、洗浄液中のガスを予め脱ガス後、機能性のガスを溶解させることで、洗浄対象に付着している汚染物との反応性を高め、洗浄性能を向上させることができる。
【0004】
図6は、このような従来型の超音波洗浄装置210の一例を摸式的に示した図である。図6に示すように、従来型の超音波洗浄装置210は、洗浄液を基板上に供給する洗浄液供給ライン260と洗浄液原水中に含まれる溶存ガスを除去する為の脱気膜モジュール240と、洗浄液にガスを溶解するガス溶解膜モジュール250と、ガスを含んだ洗浄液に超音波を照射する超音波振動子221を備える洗浄液供給ノズル220とから構成される。被洗浄基板230は水平に保持され、その上部より洗浄液224が供給される。この洗浄液224はガス溶解装置により溶解されたガスを含有しており、この洗浄液に20kHz以上の超音波を照射することを特徴としている。超音波を照射された洗浄液は、溶存ガスとキャビティの生成圧壊効果により洗浄液中に反応性の高い、ラジカルを発生し、このようなラジカルを発生し、このようなラジカルを含有した洗浄液は、洗浄対象の基板上の汚染物と速やかに反応し、汚染を分解除去する。
【0005】
また、このような超音波洗浄を効果的に行い、使用量を削減するため、下記の特許文献1には、超音波を印加する位置における被洗浄物上の洗浄液の厚みLを、超音波の波長λとの関係で所定の範囲にすることが記載されている。
【0006】
また、基材を水平に保持して洗浄を行った場合、コンベアと接する裏面が洗浄できないという欠点があった。そこで、下記の特許文献2には、両面を効果的に洗浄する方法として、薄板ガラス基板を垂下げた状態で洗浄液を吐出する超音波洗浄素子を備える薄板ガラス基板製造装置が記載されている。
【特許文献1】特開2001−205205号公報
【特許文献2】特開平10−286535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されている洗浄方法に用いられていた超音波洗浄ヘッドは、水平に保持され、その上部より洗浄液を供給しているため、問題なく洗浄を行うことができる。しかしながら、特許文献2に記載されているような被洗浄基板を垂直にして保持し、超音波洗浄ヘッドを垂直方向に移動させ、洗浄を行う際には、洗浄液の供給量が不足すると超音波洗浄ヘッドと被洗浄面との間で液膜が形成されず、超音波が伝播しない。このため、超音波洗浄ヘッドから被洗浄面まで、液膜を形成するため、重力の影響が無視できるだけの流速を確保する必要があり、洗浄液の消費量が大きくなるという問題があった。
【0008】
また、超音波洗浄ヘッドは、被洗浄基板の幅方向に複数の振動子を設けて形成されている。そのため、その振動子同士の継ぎ目部分には、洗浄力にムラが生じるため、残存汚れが存在するという問題点があった。そこで、超音波洗浄ヘッドを被洗浄基板の移動方向に複数設け、洗浄液供給ノズルに設けられた振動子の継ぎ目をずらすことで、洗浄ムラを生じさせないようにしていた。しかしながら、複数の超音波洗浄ヘッドを設けると、超音波洗浄ヘッドの数に比例して、より一層洗浄液の消費量が大きくなるという問題があった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、被洗浄基板の均一な洗浄性能を得るとともに、洗浄液供給ノズルと被洗浄基板との間に液膜を形成する際の使用液量を低減することが可能な超音波洗浄ヘッドを備える超音波洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1は、前記目的を達成するために、超音波を、供給される洗浄液に照射することで、被洗浄基板を洗浄する超音波洗浄装置において、前記被洗浄基板を垂直な姿勢で保持する基板保持手段と、前記洗浄液を供給する複数の超音波洗浄ヘッドを備え、前記各超音波洗浄ヘッドは、超音波を発生させる超音波振動子と、前記洗浄液を噴射する洗浄液供給ノズルを備え、前記複数の超音波洗浄ヘッドは、前記被洗浄基板の洗浄方向に沿って設けられており、前記各洗浄液供給ノズルの開口部の中心軸が該被洗浄基板と該超音波洗浄ヘッドの間で交差することを特徴とする超音波洗浄装置を提供する。
【0011】
請求項1によれば、超音波洗浄ヘッドを被洗浄基板の洗浄方向に沿って複数設け、各洗浄液供給ノズルの開口部の中心軸を被洗浄基板と超音波洗浄ヘッドの間で交差させることにより、洗浄力を向上させることができ、かつ、液膜を形成するための液量を単独の従来の超音波洗浄ヘッドと同程度の液量に抑えることができる。
【0012】
請求項2は請求項1において、前記各超音波洗浄ヘッドは、前記被洗浄基板の幅方向に配列された複数の超音波振動子を備え、少なくとも2つの前記超音波洗浄ヘッドにおいて、前記超音波振動子の接続部は、洗浄方向に対して相互に異なる部分に設けられることを特徴とする。
【0013】
請求項2によれば、超音波洗浄ヘッド内に設けられた複数の超音波振動子の接続部を、他の超音波洗浄ヘッド内に設けられた複数の超音波振動子の接続部と洗浄方向において、重なり合わないようにすることで、従来と同程度の液量においても、洗浄ムラを抑えることができる。
【0014】
請求項3は請求項1または2において、前記洗浄基板の洗浄方向に対して、上流側の超音波洗浄ヘッドの吐出量が、下流側の超音波洗浄ヘッドの吐出量より小さいことを特徴とする。
【0015】
請求項3によれば、洗浄方向に対して、上流側の超音波洗浄ヘッドからの吐出量を、下流側の超音波洗浄ヘッドの吐出量より小さくすることにより、使用する洗浄液の量を低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、洗浄力を向上させることができ、被洗浄基板の均一な洗浄能力を得るとともに、洗浄液供給ノズルと被洗浄基板との間に液膜を形成する際の使用量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面に従って、本発明の洗浄装置の好ましい実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の超音波洗浄装置10の構成を模式的に示した図であり、図2(a)は超音波洗浄ヘッド20a、20bの拡大図、図2(b)は側断面図である。なお、図1、2においては、超音波洗浄ヘッドを2個備える形態で説明するが、超音波洗浄ヘッドの数は限定されず、3個以上備える構造とすることができる。
【0019】
本発明の超音波洗浄装置10は、被洗浄基板30を基板保持手段31により、垂直な状態で保持し、超音波洗浄ヘッド20a、20bを被洗浄基板30に沿って垂直に降下させながら洗浄を行う。超音波洗浄装置10は、脱気膜モジュール40、ガス溶解膜モジュール50を備える。洗浄液には、たとえば、超純水が用いられ、図示しない供給源から脱気膜モジュール40、ガス溶解膜モジュール50を介して、超音波洗浄ヘッド20に供給される。
【0020】
基板保持手段31は、搬入された被洗浄基板30の下端部に対して上昇して被洗浄基板30を保持する機能を有する。洗浄作業中の被洗浄基板30を所定の位置に固定させる機能を有する。上記下端部を受ける部分は、平坦面、凹面、溝などの形状を備えた弾性体、あるいは、被洗浄基板30を傷つけないような材料、形状とすることができる。
【0021】
脱気膜モジュール40は、洗浄液中に溶け込んでいる余分なガスを脱気し、この脱気膜モジュール40で脱気した洗浄液にガス溶解膜モジュール50で機能性のガスを溶解させて超音波洗浄ヘッド20に供給する。このように、洗浄液中に溶け込んでいる余分なガスを脱気後、機能性のガスを供給し、水中に溶存させることで、洗浄に寄与するガスの溶存量を増加させることができ、洗浄効果を一層向上させることができる。なお、溶存させるガスについては、オゾン、酸素、水素、窒素、アルゴン、ヘリウムなど特に限定されず用いることができる。ガスを溶存後、必要に応じて、汚染除去、pH調整などの目的で、アンモニア、硫酸などの薬品を添加することができる。また、このように脱気した洗浄液に機能性のガスを溶解させる構成に代えて、洗浄液に空気を飽和させる構成としてもよい。
【0022】
図2は超音波洗浄ヘッド20a、20bの拡大図である。超音波洗浄ヘッド20a、20bは、超音波を発生させる超音波振動子21と、洗浄液を噴射する洗浄液供給ノズル22からなる。
【0023】
洗浄液供給ノズル22から噴射された洗浄液24には、超音波振動子21により超音波が照射される。照射された超音波エネルギーは、洗浄液供給ノズル22開口部から供給された洗浄液中を伝播し、被洗浄基板30へ到達する。
【0024】
本発明においては、超音波洗浄ヘッド20を複数設けることを特徴としている。そして、各超音波洗浄ヘッド20の洗浄液供給ノズルの中心軸が、被洗浄基板30と洗浄液供給ノズルとの間で交差するように超音波洗浄ヘッド20を構成する。このような構成とすることにより、洗浄力を向上させることができ、被洗浄基板30と超音波洗浄ヘッドの間に液膜を形成するための洗浄液量を、超音波洗浄ヘッドを単独で用いた場合と比較して、同程度の液量に抑えることができる。
【0025】
たとえば、図2に示すように、超音波洗浄ヘッド20aとは、別に、超音波洗浄ヘッド20bを設け、洗浄液を下側から上向きに供給している。したがって、上側の超音波洗浄ヘッドのみでは、重力の影響で超音波洗浄ヘッド20aと被洗浄基板30との間で液膜を形成することができなくても、下側の超音波洗浄ヘッド20bとの間で液膜を形成することができるので、超音波振動子21により発生した超音波を確実に被洗浄基板に伝播させることができる。
【0026】
超音波洗浄ヘッド20の数は、図1、2においては、2個の超音波洗浄ヘッドを有する構成で説明したが、図3に示すように、超音波洗浄ヘッドの数が3個でも良く、また、それ以上有していても良い。超音波洗浄ヘッド20を3個以上有する場合は、洗浄液供給ノズルの中心軸が一点で交わることが好ましい。一点で交わるようにすることにより、液膜を形成するための洗浄液の量を維持することができるので、超音波を伝播することができ、洗浄力を向上させることができる。
【0027】
また、超音波洗浄ヘッド20内に設けられた超音波振動子21は、被洗浄基板30が幅方向に長い場合は、複数の超音波振動子をつなげることにより、形成されている。したがって、図4に示すように、超音波振動子の継目部分に残存汚れ331が残り、洗浄力にムラが生じてしまう。そこで、図2(b)に示すように、超音波洗浄ヘッド20の超音波振動子の接続部が、他の超音波洗浄ヘッドの超音波振動子の接続部と異なる部分に設けることにより、洗浄ムラの発生を抑えることができる。このような構成とすることにより、従来と同程度の洗浄液の量で、洗浄ムラの発生を抑制することができる。
【0028】
また、洗浄液の吐出量は、被洗浄基板30の洗浄方向に対して、上流側の超音波洗浄ヘッドから吐出される吐出量を、下流側の超音波洗浄ヘッドから吐出される吐出量より小さくすることが好ましい。下流側の吐出量を大きくすることにより、上流側の超音波洗浄ヘッドから吐出した洗浄液を分散させることができるので、被洗浄基板と超音波洗浄ヘッドとの間で、液膜の形成を容易に行うことができるので、使用する洗浄液の量を従来と同程度としても、洗浄力を向上させることができる。
【0029】
超音波洗浄ヘッドの配置は、各超音波洗浄ヘッドの洗浄液供給ノズルの開口部の中心軸が、被洗浄基板30と超音波洗浄ヘッド20との間で交差させることができれば、特に、限定されず、配置させることができる。好ましい配置としては、複数の洗浄液供給ノズル122の吐出口の角度θの合計が180°以下である。図5に、超音波洗浄ヘッド120、130を3個備える場合の配置を示す。図5(a)に示すように、超音波洗浄ヘッドの吐出口の角度の合計θ+θを180°より小さくすることにより、複数の洗浄液供給ノズル122から吐出された洗浄液中を伝播する超音波エネルギー同士を干渉させることなく、基板に到達させることができる。図5(b)に示すように、超音波洗浄ヘッドの吐出口の角度の合計θ+θを180°を越えるように配置すると、向かい合う洗浄液供給ノズル132a、132cから吐出する洗浄液同士で干渉し合うため、図5(a)の配置と比較し、充分に超音波エネルギーを伝播させることができない。
【0030】
超音波を照射された洗浄液は、溶存ガスとキャビティの生成圧壊効果により洗浄液中に反応性の高い水素ラジカル(H・)やヒドロキシラジカル(OH・)などを発生し、洗浄対象の基板上の汚染物と速やかに反応し汚染物を分解除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の超音波洗浄装置の構成を摸式的に示した図である。
【図2】超音波洗浄ヘッドの拡大図(a)と側断面図(b)である。
【図3】超音波洗浄ヘッドの他の実施形態を示す拡大図である。
【図4】従来の超音波洗浄装置に用いられる超音波洗浄ヘッドの拡大図(a)と側断面図(b)である。
【図5】超音波洗浄ヘッドの好ましい配置を示した図である。
【図6】従来の超音波洗浄装置の一例を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0032】
10…超音波洗浄装置、20、120、130…超音波洗浄ヘッド、21、121、131…超音波振動子、22、122、132…洗浄液供給ノズル、24…洗浄液、30…被洗浄基板、31…基板保持手段、40…脱気膜モジュール、50…ガス溶解膜モジュール、60…洗浄液供給ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を、供給される洗浄液に照射することで、被洗浄基板を洗浄する超音波洗浄装置において、
前記被洗浄基板を垂直な姿勢で保持する基板保持手段と、前記洗浄液を供給する複数の超音波洗浄ヘッドを備え、
前記各超音波洗浄ヘッドは、超音波を発生させる超音波振動子と、前記洗浄液を噴射する洗浄液供給ノズルを備え、
前記複数の超音波洗浄ヘッドは、前記被洗浄基板の洗浄方向に沿って設けられており、前記各洗浄液供給ノズルの開口部の中心軸が該被洗浄基板と該超音波洗浄ヘッドの間で交差することを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項2】
前記各超音波洗浄ヘッドは、前記被洗浄基板の幅方向に配列された複数の超音波振動子を備え、
少なくとも2つの前記超音波洗浄ヘッドにおいて、前記超音波振動子の接続部は、洗浄方向に対して相互に異なる部分に設けられることを特徴とする請求項1に記載の超音波洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄基板の洗浄方向に対して、上流側の超音波洗浄ヘッドの吐出量が、下流側の超音波洗浄ヘッドの吐出量より小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の超音波洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−131520(P2010−131520A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309747(P2008−309747)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】