距離指標情報推定装置及びそのプログラム
【課題】本発明は、精度が高い距離情報を生成できる距離情報推定装置を提供する。
【解決手段】距離情報推定装置1は、ステレオ画像の類似度である誤差関数を計算する誤差関数計算部10と、距離の連続性を示すスムーズ関数を計算するスムーズ関数計算部11と、基準画像における隣接画素間の色情報の差分絶対値が色情報閾値Tc以下であるか否かによって、隣接画素間でメッセージを伝搬できるか否かを判定するメッセージ伝搬制限判定部12と、誤差関数とスムーズ関数とを含むメッセージを生成・伝搬するメッセージ生成・伝搬部13と、メッセージの評価関数を計算する評価関数計算部14と、評価関数が最小となる距離を、距離情報として推定する距離推定部15とを備える。
【解決手段】距離情報推定装置1は、ステレオ画像の類似度である誤差関数を計算する誤差関数計算部10と、距離の連続性を示すスムーズ関数を計算するスムーズ関数計算部11と、基準画像における隣接画素間の色情報の差分絶対値が色情報閾値Tc以下であるか否かによって、隣接画素間でメッセージを伝搬できるか否かを判定するメッセージ伝搬制限判定部12と、誤差関数とスムーズ関数とを含むメッセージを生成・伝搬するメッセージ生成・伝搬部13と、メッセージの評価関数を計算する評価関数計算部14と、評価関数が最小となる距離を、距離情報として推定する距離推定部15とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステレオ画像間の誤差関数と奥行き方向への距離又は視差である距離指標の連続性を示すスムーズ関数とで規定される確率に関するエネルギーを最小化する手法により、ステレオ画像の一方である基準画像の画素ごとの距離指標を示す距離指標情報を推定する距離指標情報推定装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、3次元立体モデルを生成する際、ステレオ画像の各画素の視差により距離を推定する距離推定技術が広く用いられている。この距離推定技術では、例えば、ステレオ画像間で類似度を求めるブロックマッチングが用いられている。また、類似度の計算方法としては、例えば、差の二乗和を求めるSSD(Sum of Squared Difference)、差の絶対和を求めるSAD(Sum of Absolute Difference)、および、正規化相互相関を求めるZNCC(Zero-mean Normalized Cross-Correlation)が知られている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
また、距離推定技術としては、マルコフランダムフィールドモデルを仮定し、ステレオ画像間のデータ項とスムーズ項とで構成されるエネルギーを最小化することにより、ノイズが少なく滑らかな距離情報(距離画像)を生成する信頼度伝搬法も知られている(例えば、非特許文献2)。ここで、データ項はステレオ画像間の類似度を表し、スムーズ項は距離の不連続性を表す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ディジタル画像処理、CG−Arts協会、2006年、p202−p204
【非特許文献2】Pedro F.Felzenszwalb,Daniel P.Huttenlocher:Efficient Belief Propagation for Early Vision.CVPR(1)2004:261‐268
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の信頼度伝搬法では、生成した距離画像において、被写体の輪郭が膨張することが多い。この場合、精度が高い距離情報を得るために、この膨張を抑制して、被写体の輪郭を鮮鋭化する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、精度が高い距離指標情報を生成できる距離指標情報推定装置およびそのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題に鑑みて、本願第1発明に係る距離指標情報推定装置は、ステレオ画像間の誤差関数と奥行き方向への距離又は視差である距離指標の連続性を示すスムーズ関数とで規定される確率に関するエネルギーを最小化する手法により、ステレオ画像の一方である基準画像の画素ごとの距離指標を示す距離指標情報を推定する距離指標情報推定装置であって、誤差関数計算部と、スムーズ関数計算部と、エネルギー伝搬判定部と、エネルギー伝搬部と、評価関数計算部と、距離指標推定部とを備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、距離指標情報推定装置は、誤差関数計算部によって、ステレオ画像が入力されると共に、予め設定された距離指標候補ごとに、入力されたステレオ画像の類似度である誤差関数を計算する。そして、距離指標情報推定装置は、スムーズ関数計算部によって、距離指標候補ごとに、マルコフランダムフィールドにおける隣接画素間の距離指標候補の差分絶対値であるスムーズ関数を計算する。
【0009】
また、距離指標情報推定装置は、エネルギー伝搬判定部によって、基準画像における隣接画素間の色情報の差分絶対値が予め設定された色情報閾値以下であるか否かによって、エネルギーを伝搬できるか否かを判定する。例えば、エネルギー伝搬判定部は、被写体と背景との境界のように隣接画素間で色が大きく異なる場合、エネルギーの伝搬を制限すると判定する。
【0010】
また、距離指標情報推定装置は、エネルギー伝搬部によって、誤差関数計算部で計算した誤差関数とスムーズ関数計算部で計算したスムーズ関数とを含むエネルギーが集合したエネルギー集合を生成し、エネルギー集合内でエネルギーを伝搬できると判定された隣接画素間で、所定の漸化式によってエネルギーを生成して伝搬することで、距離指標候補及び画素ごとのエネルギーを更新する。つまり、エネルギー伝搬部は、隣接画素間で色が大きく異なる場合、エネルギーの伝搬を制限する。
【0011】
また、距離指標情報推定装置は、評価関数計算部によって、エネルギー伝搬部で更新されたエネルギーを示す評価関数を計算する。そして、距離指標情報推定装置は、距離指標推定部によって、距離指標候補のうち、評価関数計算部で計算された評価関数が最小となる距離指標を、距離指標情報として推定する。
【0012】
また、本願第2発明に係る距離指標情報推定装置は、エネルギー伝搬判定部が、エネルギー伝搬元の画素と処理対象画素との色情報の差分絶対値が色情報閾値以下であるか否かによって、エネルギー伝搬元の画素と処理対象画素との間でエネルギーを伝搬できるか否かを判定することを特徴とする。
かかる構成によれば、距離指標情報推定装置は、エネルギー伝搬元の画素と処理対象画素との間で色が大きく異なる場合、エネルギーの伝搬を制限する。
【0013】
また、本願第3発明に係る距離指標情報推定装置は、エネルギー伝搬判定部が、エネルギー伝搬先の画素と処理対象画素との色情報の差分絶対値が色情報閾値以下であるか否かによって、エネルギー伝搬先の画素と処理対象画素との間でエネルギーを伝搬できるか否かを判定することを特徴とする。
かかる構成によれば、距離指標情報推定装置は、エネルギー伝搬先の画素と処理対象画素との間で色が大きく異なる場合、エネルギーの伝搬を制限する。
【0014】
また、本願第4発明に係る距離指標情報推定装置は、誤差関数計算部が、基準画像における処理対象画素と、ステレオ画像の他方である参照画像で処理対象画素に対応する対応画素との色情報の差分絶対値を求め、差分絶対値を予め設定した原色数で除算して重み付ける誤差関数を計算することを特徴とする。
かかる構成によれば、距離指標情報推定装置は、被写体の輪郭を鮮鋭化して、精度が高い距離指標情報を推定することができる。
【0015】
また、本願第5発明に係る距離指標情報推定装置は、エネルギー伝搬判定部が、誤差関数の重み付けが小さいほど、色情報閾値が小さな値で予め設定されたことを特徴とする。
ここで、色情報閾値を小さな値に設定してメッセージ伝搬を強く制限した場合、相対的にスムーズ関数よりも誤差関数の影響が大きくなる。従って、距離指標情報推定装置は、誤差関数の重み付けが小さいほど、色情報閾値を小さな値で設定して、スムーズ関数と誤差関数とのバランスを保つ。
【0016】
また、本願第6発明に係る距離指標情報推定装置は、距離指標推定部が、距離指標情報にノイズ除去処理を施すノイズ除去手段をさらに備えることを特徴とする。
かかる構成によれば、距離指標情報推定装置は、ノイズが除去された滑らかな距離指標情報を生成することができる。
【0017】
なお、本願第1発明に係る距離指標情報推定装置は、一般的なコンピュータを、誤差関数計算部、スムーズ関数計算部、エネルギー伝搬判定部、エネルギー伝搬部、評価関数計算部及び距離指標推定部として動作させる距離指標情報推定プログラムによって実現することもできる。このプログラムは、通信回線を介して配布しても良く、CD−ROMやフラッシュメモリ等の記録媒体に書き込んで配布しても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
本願第1発明によれば、例えば、被写体と背景との境界のように隣接画素間で色が大きく異なる場合、エネルギーの伝搬を制限するため、被写体の輪郭の膨張を抑制できる。これによって、本願第1発明によれば、被写体の輪郭を鮮鋭化して、精度が高い距離指標情報を生成することができる。
【0019】
本願第2発明によれば、エネルギー伝搬元の画素と処理対象画素との間で色が大きく異なる場合、エネルギーの伝搬を制限するため、精度が高い距離指標情報を生成することができる。
本願第3発明によれば、エネルギー伝搬先の画素と処理対象画素との間で色が大きく異なる場合、エネルギーの伝搬を制限するため、精度が高い距離指標情報を生成することができる。
【0020】
本願第4発明によれば、被写体の輪郭をより鮮鋭化して、精度が高い距離指標情報を生成することができる。
本願第5発明によれば、誤差関数の重み付けが小さいほど、色情報閾値が小さな値で設定するため、スムーズ関数と誤差関数とのバランスを保って、滑らかな距離指標情報を生成することができる。
本願第6発明によれば、ノイズを除去して、より滑らかな距離指標情報を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明において、信頼度伝搬法による距離推定を説明する説明図である。
【図2】本発明において、信頼度伝搬法による距離推定の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1実施形態に係る距離情報推定装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図3の距離情報推定装置において、距離候補ごとの誤差関数及びスムーズ関数の計算を説明する説明図である。
【図5】図3の距離情報推定装置において、距離候補ごとのメッセージの伝搬を説明する説明図である。
【図6】図3の距離情報推定装置において、距離候補ごとのメッセージの伝搬を説明する説明図である。
【図7】本発明の第1実施形態において、(a)はメッセージ伝搬元の画素から処理対象の画素へのメッセージ伝搬が制限されるときの説明図であり、(b)は処理対象の画素からメッセージ伝搬先の画素へのメッセージ伝搬が制限されるときの説明図である。
【図8】本発明の第1実施形態において、(a)及び(b)はメッセージ伝搬が制限されないときの説明図である。
【図9】図3の距離情報推定装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態に係る距離情報推定装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第2実施形態において、(a)はオクルージョンに起因する推定エラーが生じていない画素のエネルギー分布を示すグラフであり、(b)はオクルージョンに起因する推定エラーが生じた画素のエネルギー分布を示すグラフである。
【図12】本発明の第2実施形態において、(a)はテクスチャに起因する推定エラーが生じていない画素のエネルギー分布を示すグラフであり、(b)はテクスチャに起因する推定エラーが生じた画素のエネルギー分布を示すグラフである。
【図13】図10の距離情報推定装置の動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第3実施形態に係る距離情報推定装置の構成を示すブロック図である。
【図15】図14の距離情報推定装置において、オクルージョンに起因する推定エラーの抑制を説明する説明図である。
【図16】図14の距離情報推定装置において、オクルージョンに起因する推定エラーの抑制を説明する説明図である。
【図17】図14の距離情報推定装置の動作を示すフローチャートである。
【図18】本発明の実施例において、(a)は基準画像であり(b)は従来の信頼度伝搬法で生成した距離画像であり、(c)は距離情報推定装置で生成した距離画像である。
【図19】本発明の実施例において、(a)は基準画像であり(b)は従来の信頼度伝搬法で生成した距離画像であり、(c)は距離情報推定装置で生成した距離画像である。
【図20】本発明の実施例において、(a)は基準画像であり、(b)は、色情報閾値及び重み係数が大きいときの距離画像であり、(c)は色情報閾値及び重み係数が小さいときの距離画像である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(本発明の概略:信頼度伝搬法による距離推定)
本発明の各実施形態では、ステレオ画像間の誤差関数と距離指標の連続性を示すスムーズ関数とで規定されるエネルギーを最小化する手法として、信頼度伝搬法を用いている。そこで、最初に、本発明の実施形態における信頼度伝搬法の概略を説明する。
【0023】
なお、以後の各実施形態では、請求項に記載の距離指標が、奥行き方向への距離(奥行き)であることとして説明する。つまり、請求項に記載の距離指標情報として、画素ごとの距離を示す距離情報を推定することになる。
【0024】
この信頼度伝搬法(BP法:Belief Propagation法)は、距離情報にマルコフランダムフィールド(MRF:Markov Random Field)モデルを仮定し、ステレオ画像間の誤差関数とスムーズ関数とで構成(規定)されるエネルギーを最小化することにより、ノイズが少なく滑らかな距離情報を生成するものである。ここで、信頼度伝搬法は、図1に示すように、処理対象となる画素pの隣接画素sから、メッセージと呼ばれる各画素にどの距離が割り当てられるかという確率に関するエネルギーmを受け取り、それらからメッセージを更新して隣接画素qに伝搬させる。そして、信頼度伝搬法は、この処理を画像内の全ての画素に対して繰り返し行うことで各画素の距離情報を求める。
なお、請求項に記載のエネルギーが、信頼度伝搬法ではメッセージとなる。
【0025】
ここで、図1では、枠(白塗四角形)が基準画像の画素に対応し、矢印mが画素間のメッセージ(エネルギー)の伝搬を示している。また、図1に示すように、このメッセージを伝搬する画素がノードとして縦横に配列されたグラフをエネルギー集合(メッセージ集合)と呼ぶ。さらに、文字「s」が付された画素sは、メッセージの伝搬元となる画素を示し、文字「p」が付された画素pは、処理対象の画素を示し、文字「q」が付された隣接画素qは、メッセージの伝搬先となる隣接画素を示す。なお、図1では、説明を簡易にするために、一部符号のみを図示した。
【0026】
図2を参照し、信頼度伝搬法による距離推定の手順を説明する。
図2に示すように、信頼度伝搬法では、メッセージの生成に必要な画素間の誤差関数Dp(fp)(以後、「誤差関数Dp」)を計算する(ステップS1)。本発明において、誤差関数に、SSD、SAD、ZNCC等の類似度が利用可能であり、ここでは、ステレオ画像の対応画素間で色情報の差分絶対値により類似度を示す式(1)を利用する。この式(1)によれば、画素単位で類似度を計算するため、被写体の輪郭を鮮鋭化することができる。
【0027】
【数1】
【0028】
ここで、pは処理対象の画素、fpは画素pの距離候補、cは色情報、r,g,bはRGB値、dpは距離候補fpに対応する視差、Icはステレオ画像の一方である基準画像での画素値、Ic´はステレオ画像の他方である参照画像での画素値、λdataは重み係数を表わす。
なお、距離候補(距離指標候補)とは、任意の範囲内で予め設定された距離の候補のことである(図4等参照)。
【0029】
すなわち、式(1)は、基準画像Icにおける処理対象の画素pの色情報Ic(p)と、参照画像Ic´における対応画素(p+dp)の色情報Ic´(p+dp)との差分絶対値を予め設定された原色数(例えば、3)で除算して、重み係数λdataで重み付けることを示す。この対応画素(p+dp)とは、参照画像Ic´において、処理対象の画素pに対応する画素のことである。
【0030】
また、式(1)において、視差の逆数にステレオカメラの間隔(ベースライン)を乗算して距離が計算できることを利用して、距離候補fpから視差dpを逆算できる。このベースラインは、例えば、OpenCV等のカメラキャリブレーションで求めることができる(URL「http://opencv.jp/」)。
【0031】
続いて、信頼度伝搬法では、下記の式(2)に示すように、距離候補fpと、画素qの距離候補fqとの差分絶対値|fp−fq|で定義されるスムーズ関数V(fp−fq)(以後、「スムーズ関数V」)の計算を行う(ステップS2)。このスムーズ関数Vは、距離情報の滑らかさ(例えば、ノイズの少なさ)、言い換えるなら、距離の連続性を示す。ここで、qは画素pのメッセージ伝搬先となる隣接画素である。
【0032】
【数2】
【0033】
そして、信頼度伝搬法では、下記の式(3)で規定される生成式によって、メッセージを生成して伝搬する(ステップS3)。
【0034】
【数3】
【0035】
mはメッセージ、tは反復回数、N(p)\qは画素pへメッセージを渡す画素q以外の4近傍の画素集合、sはその画素集合の要素画素、minは最小値を返す関数である。この式(3)は、漸化式になっており、受け取ったメッセージをもとにメッセージを更新する処理を繰り返し行うことを示す。例えば、信頼度伝搬法では、ラスタスキャンを行うように処理対象画素pを移動させながら、その処理対象画素pでメッセージを更新することで、メッセージの伝搬を全画素で行う。
【0036】
全画素についてメッセージの更新処理を、予め設定したT回(例えば、10回)まで反復したとする。この場合、画素qの距離候補fqに関する評価関数bq(fq)(以後、「評価関数bq」)は、下記の式(4)で表すことができる。そして、信頼度伝搬法では、この評価関数bqが最小になる距離候補fqを、各画素の最終的な距離として推定する(ステップS4)。
【0037】
【数4】
【0038】
(第1実施形態)
[距離情報推定装置の構成]
以下、本発明の各実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する手段には同一の符号を付し、説明を省略した。
【0039】
図3を参照し、本発明の第1実施形態に係る距離情報推定装置(距離指標情報推定装置)1の構成について説明する。
距離情報推定装置1は、信頼度伝搬法により距離情報を推定すると共に、前記した信頼度伝搬法において、隣接画素間で色が大きく異なるときにメッセージの伝搬を制限する。
【0040】
図3に示すように、距離情報推定装置1は、誤差関数計算部10と、スムーズ関数計算部11と、メッセージ伝搬制限判定部(エネルギー伝搬判定部)12と、メッセージ生成・伝搬部(エネルギー伝搬部)13と、評価関数計算部14と、距離推定部(距離指標推定部)15とを備える。
【0041】
距離情報推定装置1は、左カメラCL及び右カメラCR(ステレオカメラ)から、被写体(不図示)を撮影したステレオ画像が入力される。
この左カメラCL及び右カメラCRは、静止画や動画を撮影可能な撮影カメラであり、図3に示すように、一定間隔だけ離して配置される。ここでは、左カメラCL及び右カメラCRのうち左カメラCLを基準カメラとし、左カメラCLの撮影画像を基準画像とし、右カメラCRの撮影画像を参照画像とする。
【0042】
誤差関数計算部10は、ステレオ画像が入力されると共に、距離候補ごとに、入力されたステレオ画像の類似度である誤差関数Dpを計算するものである。この誤差関数計算部10は、前記した式(1)を用いて、図4に示すように画素s,p,qについて、距離候補ごとの誤差関数Dpを計算する。そして、誤差関数計算部10は、計算した誤差関数Dpをメッセージ生成・伝搬部13に出力する。
【0043】
本実施形態では、距離候補fs,fp,fqがそれぞれ、図4に示すように、0,1,・・・,K,・・・,N−1の範囲内で予め設定されたこととして説明する(但し、K,Nは、K<N−1を満たす整数)。
なお、図4では、文字s,p,qを付した四辺形が画素s,p,qである。
【0044】
スムーズ関数計算部11は、距離候補ごとに、スムーズ関数Vを計算するものである。このスムーズ関数計算部11は、図4に示すように、画素pの距離候補fp(0〜N−1)と、画素qの距離候補fq(0〜N−1)との全組み合わせについて、前記した式(2)を用いて、スムーズ関数Vを計算する。そして、スムーズ関数計算部11は、計算したスムーズ関数Vをメッセージ生成・伝搬部13に出力する。
【0045】
ここで、マルコフランダムフィールドおよびスムーズ関数Vについて補足する。このマルコフランダムフィールドは、基準画像で互いに隣接する画素の色、輝度や距離が似ていることを示すモデルである。そして、スムーズ関数Vは、このマルコフランダムフィールドを踏まえた距離の連続性に関する関数であり、基準画像の各画素に距離候補を割り当てた際、互いに隣接する画素の距離候補が同じであればエネルギーが小さく、異なればエネルギーが大きくなる。例えば、マルコフランダムフィールドでは、ある画素の距離候補が1で、その隣接画素の距離候補が1である場合、エネルギーは0となる。また、ある画素の距離候補が1で、その画素に隣接する画素の距離候補が2である場合、例えば、エネルギーは1となる。さらに、ある画素の距離候補が1で、その隣接画素の距離候補が10である場合、例えば、エネルギーは9となる。つまり、信頼度伝搬法において、エネルギーが最小となる距離候補が最終的な距離となることを考慮すれば、このマルコフランダムフィールドにより、互いに隣接する画素は、同じような距離になり易くなる。
【0046】
メッセージ伝搬制限判定部(エネルギー伝搬判定部)12は、基準画像における隣接画素間の色情報の差分絶対値が予め設定された色情報閾値Tc以下であるか否かによって、メッセージを伝搬できるか否かを判定するものである。
【0047】
このメッセージ伝搬制限判定部12は、メッセージの伝搬の制限を判定するために、隣接画素間の色情報の差分絶対値に関する色情報閾値Tcが予め設定される。このとき、色情報閾値Tcの値が小さくなってメッセージ伝搬の制限が強くなると、重み係数λdataの値も小さくなってスムーズ関数の影響が大きくなるように、色情報閾値Tc及び重み係数λdataを予め設定することが好ましい。
【0048】
また、メッセージ伝搬制限判定部12は、メッセージ伝搬元の画素sと処理対象の画素pとの色情報の差分絶対値が色情報閾値Tc以下であるか否かによって、メッセージ伝搬元の画素sと処理対象の画素pとの間でメッセージを伝搬できるか否かを判定する。具体的には、メッセージ伝搬制限判定部12は、下記の式(5)に示すように、画素s,pの色情報の差分絶対値と色情報閾値Tcとを比較することにより、メッセージ伝搬元の重み係数λs,pを計算する。
【0049】
【数5】
【0050】
ここで、メッセージ伝搬制限判定部12は、式(5)に示すように、画素s,pの色情報の差分絶対値が色情報閾値Tc以下の場合、画素s,p間でメッセージを伝搬できると判定し、重み係数λs,pを1として計算する。一方、メッセージ伝搬制限判定部12は、画素s,pの色情報の差分絶対値が色情報閾値Tcを超える場合、画素s,p間でメッセージを伝搬できないと判定し、重み係数λs,pを0として計算する。そして、メッセージ伝搬制限判定部12は、計算した重み係数λs,pをメッセージ生成・伝搬部13に出力する。
【0051】
また、メッセージ伝搬制限判定部12は、メッセージ伝搬先の画素qと処理対象の画素pとの色情報の差分絶対値が色情報閾値Tc以下であるか否かによって、メッセージ伝搬先の画素qと処理対象の画素pとの間でメッセージを伝搬できるか否かを判定する。具体的には、メッセージ伝搬制限判定部12は、下記の式(6)に示すように、画素p,qの色情報の差分絶対値と色情報閾値Tcとを比較することにより、メッセージ伝搬先の重み係数λp,qを計算する。
【0052】
【数6】
【0053】
ここで、メッセージ伝搬制限判定部12は、式(6)に示すように、画素p,qの色情報の差分絶対値が色情報閾値Tc以下の場合、画素p,q間でメッセージを伝搬できると判定し、重み係数λp,qを1として計算する。一方、メッセージ伝搬制限判定部12は、画素p,qの色情報の差分絶対値が色情報閾値Tcを超える場合、画素p,q間でメッセージを伝搬できないと判定し、重み係数λp,qを0として計算する。そして、メッセージ伝搬制限判定部12は、計算した重み係数λp,qを評価関数計算部14に出力する。
【0054】
メッセージ生成・伝搬部(エネルギー伝搬部)13は、誤差関数計算部10で計算された誤差関数Dpと、スムーズ関数計算部11で計算されたスムーズ関数Vと、メッセージ伝搬制限判定部12で計算された重み係数λs,pとが入力される。そして、メッセージ生成・伝搬部13は、図1と同様に、これら誤差関数Dpおよびスムーズ関数Vを含むメッセージが集合したエネルギー集合を生成するものである。
【0055】
具体的には、メッセージ生成・伝搬部13は、基準画像の画素位置に対応した位置に画素ごとのメッセージを配置することで、エネルギー集合をモデル化(生成)する。
次に、メッセージ生成・伝搬部13は、下記の式(7)を用いて、エネルギー集合内における隣接画素間で、メッセージを生成して伝搬することで、画素ごとのメッセージを更新する。まず、メッセージ生成・伝搬部13は、図5,図6に示すように、画素sにおいて、距離候補fs(0〜N−1)のメッセージms(0)〜ms(N−1)を生成して、画素sから画素pに伝搬させる。次に、メッセージ生成・伝搬部13は、画素pにおいて、距離候補fp(0〜N−1)のメッセージmp→q(0)〜mp→q(N−1)を生成して、画素pから画素qに伝搬させる。
【0056】
【数7】
【0057】
このとき、メッセージ生成・伝搬部13は、式(7)に示すように、画素p,qの色情報の差分絶対値と色情報閾値Tcとを比較して、メッセージを伝搬するか又は制限するかを判定する。具体的には、メッセージ生成・伝搬部13は、画素p,qの色情報の差分絶対値が色情報閾値Tc以下の場合、画素pから画素qへのメッセージを伝搬させる。一方、メッセージ生成・伝搬部13は、色情報の差分絶対値が色情報閾値Tcを超える場合、画素pから画素qへメッセージを伝搬させない。
【0058】
図7,図8を参照して、メッセージの伝搬の制限について詳細に説明する(適宜図3参照)。この図7,図8では、図1と同様のエネルギー集合において、枠(白塗四角形)が明るい色の画素であり、ハッチングされた枠が暗い色の画素である。ここでは、明るい色の画素と暗い色の画素との色情報の差分絶対値が色情報閾値Tcを超えることとして説明する。
【0059】
例えば、被写体と背景との境界といったように、隣接画素間で色が大きく異なる場合を考える。図7(a)に示すように、画素s,pで色が大きく異なる場合、距離情報推定装置1は、前記した式(5)よりメッセージ伝搬元の重み係数λs,pを0として、これら2画素s、pでのメッセージ伝搬を制限する。また、図7(b)に示すように、画素p,qで色が大きく異なる場合、距離情報推定装置1は、前記した式(6)よりメッセージ伝搬先の重み係数λp,qを0として、これら2画素p、qでのメッセージ伝搬を制限する。
【0060】
一方、図8(a)に示すように画素s,p,qの全てが明るい色、又は、図8(b)に示すように画素s,p,qの全てが暗い色の場合、距離情報推定装置1は、前記した式(5)及び式(6)より重み係数λs,p,λp,qを1として、画素s,p,q間でメッセージを伝搬させる。
【0061】
つまり、距離情報推定装置1では、メッセージ伝搬元の重み係数λs,pの値によって、画素sから画素pへのメッセージ伝搬を制御し、メッセージ伝搬先の重み係数λp,qの値によって、画素pから画素qへのメッセージ伝搬を制御する。
【0062】
評価関数計算部14は、メッセージ伝搬制限判定部12で計算された重み係数λp,qが入力さる。そして、評価関数計算部14は、下記の式(8)を用いて、メッセージ生成・伝搬部13で更新されたメッセージを示す評価関数bqを計算するものである。そして、評価関数計算部14は、計算した評価関数bqを距離推定部15に出力する。
【0063】
【数8】
【0064】
距離推定部(距離指標推定部)15は、評価関数計算部14で計算された評価関数bqが入力される。そして、距離推定部15は、距離候補fqのうち、この評価関数bqが最小となる距離候補fqを、距離情報として推定するものである。すなわち、距離推定部15は、前記した式(8)の評価関数bqが最小となる距離候補fqを、基準画像の画素qの最終的な距離情報として推定する。
【0065】
また、距離推定部15は、ノイズ除去フィルタ(ノイズ除去手段)15aを備える。
このノイズ除去フィルタ15aは、距離推定部15が推定した距離情報(距離画像)にメディアンフィルタ等のノイズ除去処理を施すものである。このようにして、ノイズの影響が少ない滑らかな距離情報を推定することができる。
【0066】
ここでは、距離推定部15は、距離情報として、画素の距離が手前側である程、その画素の輝度が高く、画素の距離が奥側である程、その画素の輝度が低くなる距離画像を生成して出力する。この距離画像は、例えば、被写体の3次元立体モデルの生成に利用できる。
【0067】
[距離情報推定装置の動作]
図9を参照し、距離情報推定装置1の動作について説明する(適宜図3参照)。
距離情報推定装置1は、誤差関数計算部10によって、距離候補ごとに、誤差関数Dpを計算する。つまり、誤差関数計算部10は、前記した式(1)を用いて、距離候補ごとの誤差関数Dpを計算する(ステップS10)。
【0068】
距離情報推定装置1は、スムーズ関数計算部11によって、距離候補ごとに、スムーズ関数Vを計算する。つまり、スムーズ関数計算部11は、前記した式(2)を用いて、スムーズ関数Vを計算する(ステップS11)。
【0069】
距離情報推定装置1は、メッセージ伝搬制限判定部12によって、隣接画素間の色情報の差分絶対値が色情報閾値Tc以下であるか否かによって、隣接画素間でメッセージを伝搬できるか否かを判定する。具体的には、メッセージ伝搬制限判定部12は、前記した式(5)に示すように、画素s,pの色情報の差分絶対値と色情報閾値Tcとを比較することにより、画素s,p間におけるメッセージ伝搬の判定結果として、メッセージ伝搬元の重み係数λs,pを計算する。さらに、メッセージ伝搬制限判定部12は、前記した式(6)に示すように、画素p,qの色情報の差分絶対値と色情報閾値Tcとを比較することにより、画素p,q間におけるメッセージ伝搬の判定結果として、メッセージ伝搬先の重み係数λp,qを計算する(ステップS12)。
【0070】
距離情報推定装置1は、メッセージ生成・伝搬部13によって、図1と同様にエネルギー集合を生成する。そして、メッセージ生成・伝搬部13は、前記した式(7)を用いて、エネルギー集合内における隣接画素間で、メッセージを生成して伝搬する(ステップS13)。
【0071】
距離情報推定装置1は、評価関数計算部14によって、前記した式(4)を用いて、距離候補ごとに評価関数bqを計算する(ステップS14)。そして、距離情報推定装置1は、距離推定部15によって、距離候補のうち、この評価関数bqが最小となる距離を、距離情報として推定する(ステップS15)。
【0072】
以上のように、本発明の第1実施形態に係る距離情報推定装置1は、隣接画素間の色情報の差分絶対値が大きいときにメッセージの伝搬を制限する。これによって、距離情報推定装置1は、被写体の膨張を抑制してその輪郭を鮮鋭化し、精度が高い距離情報を生成することができる。
【0073】
(第2実施形態)
[距離情報推定装置の構成]
図10を参照し、本発明の第2実施形態に係る距離情報推定装置1Bの構成について、第1実施形態と異なる点を説明する。
距離情報推定装置1Bは、この距離情報の信頼度を示す評価値を計算すると共に、この評価値によって、距離情報の推定エラーが生じたか否かを判定する点が、第1実施形態と異なる。
【0074】
本実施形態では、距離情報推定装置1Bは、評価値として、オクルージョンに起因する推定エラーを判定するための評価値Oq(オクルージョン評価値、以後「評価値O」)と、テクスチャに起因する推定エラーを判定するための評価値Kq(テクスチャ評価値、以後「評価値K」)とを計算する。そして、距離情報推定装置1Bは、評価値O及び評価値Kを用いて、距離情報の推定エラーとして、オクルージョンに起因する推定エラーと、テクスチャに起因する推定エラーとを判定することとする。
【0075】
ここで、テクスチャに起因する推定エラーとは、例えば、ステレオ画像でのテクスチャがない領域(テクスチャレス領域)において、マッチング精度が低下して、距離情報の推定エラーが生じることである。
【0076】
図10に示すように、距離情報推定装置1Bは、誤差関数計算部10Bと、スムーズ関数計算部11Bと、メッセージ伝搬制限判定部12と、メッセージ生成・伝搬部13と、評価関数計算部14と、距離推定部15と、評価値計算部16と、オクルージョン領域判定部(オクルージョン推定エラー判定部)18と、無テクスチャ領域判定部(テクスチャ推定エラー判定部)20とを備える。
【0077】
誤差関数計算部10Bは、ステレオ画像が入力されると共に、距離候補ごとに、予め設定された誤差関数閾値Tdata以下となるように、誤差関数Dpを計算するものである。この誤差関数計算部10Bは、下記の式(9)及び式(10)を用いて、画素及び距離候補ごとの誤差関数Dpを計算する。
ここで、ifは、後段の条件式を満たす場合、前段に記述した値を出力する関数である。
【0078】
【数9】
【0079】
【数10】
【0080】
このとき、誤差関数計算部10Bは、式(10)に示すように、誤差関数Dpの値が誤差関数閾値Tdataを超えないように、トランケーションを行っている。具体的には、誤差関数計算部10Bは、誤差関数Dpの値が誤差関数閾値Tdataを超える場合、誤差関数閾値Tdataを誤差関数Dpの値としてメッセージ生成・伝搬部13に出力する。その一方、誤差関数計算部10Bは、誤差関数Dpの値が誤差関数閾値Tdata以下の場合、メッセージ生成・伝搬部13に誤差関数Dpの値をそのまま出力する。
【0081】
スムーズ関数計算部11Bは、距離候補ごとに、予め設定されたスムーズ関数閾値Tsmooth以下となるように、スムーズ関数Vを計算するものである。このスムーズ関数計算部11Bは、下記の式(11)を用いて、画素及び距離候補ごとにスムーズ関数Vを計算する。
【0082】
【数11】
【0083】
このとき、スムーズ関数計算部11Bは、式(11)に示すように、スムーズ関数Vの値がスムーズ関数閾値Tsmoothを超えないように、トランケーションを行っている。具体的には、スムーズ関数計算部11Bは、スムーズ関数Vの値がスムーズ関数閾値Tsmoothを超える場合、スムーズ関数閾値Tsmoothをスムーズ関数Vの値としてメッセージ生成・伝搬部13に出力する。その一方、スムーズ関数計算部11Bは、スムーズ関数Vの値がスムーズ関数閾値Tsmooth以下の場合、メッセージ生成・伝搬部13にスムーズ関数Vの値をそのまま出力する。
【0084】
メッセージ伝搬制限判定部12と、メッセージ生成・伝搬部13と、評価関数計算部14と、距離推定部15とは、図3の各手段と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0085】
評価値計算部16は、評価関数bqにおけるエネルギー分布の形状により、評価値を求めるものであり、評価値O計算部(オクルージョン評価値計算部)17と、評価値K計算部(テクスチャ評価値計算部)19とを備える。
【0086】
評価値O計算部(オクルージョン評価値計算部)17は、評価関数計算部14で計算された評価関数bqが入力される。この評価関数bqは、基準画像の各画素について、距離候補fqごとのメッセージを示す情報、つまり、距離候補fqとメッセージとを対応付けたエネルギー分布(メッセージ分布)と言える。
【0087】
具体的には、評価値O計算部17は、メッセージが最も高くなる最大値とメッセージが最も低くなる最小値との差分をこの最大値で除算することで、評価値Oを計算するものである。具体的には、評価値O計算部17は、下記の式(12)を用いて評価値Oを計算して、オクルージョン領域判定部18に出力する。
【0088】
【数12】
【0089】
ここで、maxは、最大値を返す関数である。従って、max(bq(fq))は、画素qにおけるメッセージの最大値を示す。また、min(bq(fq))は、画素qにおけるメッセージの最小値を示す。
【0090】
オクルージョン領域判定部(オクルージョン推定エラー判定部)18は、評価値O計算部17から評価値Oが入力される。そして、オクルージョン領域判定部18は、この評価値Oが予め設定されたオクルージョン閾値To以下であるか否かを判定し、評価値Oがオクルージョン閾値To以下の場合、オクルージョンに起因する推定エラーが生じたと判定するものである。
【0091】
ここで、オクルージョンに起因する推定エラーが生じていない画素では、図11(a)のエネルギー分布のように、メッセージの最大値maxと最小値minとの差分ΔEOが、大きくなる。一方、オクルージョンに起因する推定エラーが生じた画素では、図11(b)のエネルギー分布のように、差分ΔEOが図11(a)よりも小さくなる。
【0092】
また、図11の差分ΔEOは、式(12)の分子であることから、評価値Oに比例する。つまり、オクルージョン領域判定部18は、評価値Oが、オクルージョンに起因する推定エラーが生じた画素で、オクルージョンに起因する推定エラーが生じていない画素よりも小さくなる性質を利用して、オクルージョンに起因する推定エラーを判定している。そして、オクルージョン領域判定部18は、評価値Oがオクルージョン閾値To以下と判定された画素領域をオクルージョン領域として出力する。このオクルージョン領域は、例えば、被写体の3次元立体モデルを生成する際、オクルージョンに起因する推定エラーが生じた領域を把握するために利用できる。
なお、オクルージョン領域判定部18は、評価値Oが閾値Toを超える場合、オクルージョンに起因する推定エラーが生じていないと判定することは言うまでもない。
【0093】
評価値K計算部(テクスチャ評価値計算部)19は、評価関数計算部14で計算された評価関数bqが入力される。そして、評価値K計算部19は、基準画像の各画素について、この評価関数bqにおけるエネルギー分布の尖度を評価値Kとして計算するものである。
【0094】
具体的には、評価値K計算部19は、下記の式(9)に示すように、距離候補fqの個数nf(例えば、0〜N−1までの合計N個)と、メッセージと、メッセージの平均値bq ̄と,メッセージの標準偏差σ(bq)とに基づいて、評価値Kを計算する。そして、評価値K計算部19は、計算した評価値Kを、無テクスチャ領域判定部20に出力する。
【0095】
【数13】
【0096】
無テクスチャ領域判定部(テクスチャ推定エラー判定部)20は、評価値K計算部19から評価値Kが入力される。そして、無テクスチャ領域判定部20は、この評価値Kが予め設定されたテクスチャ閾値TK以下であるか否かを判定し、評価値Kがテクスチャ閾値TK以下の場合、テクスチャに起因する推定エラーが生じたと判定するものである。
【0097】
ここで、テクスチャに起因する推定エラーが生じていない画素では、図12(a)に示すように、エネルギー分布が尖っており、その尖度を示す評価値Kが大きくなる。一方、テクスチャに起因する推定エラーが生じた画素では、図12(b)に示すように、エネルギー分布が尖っておらず、評価値Kが図12(a)よりも小さくなる。
【0098】
この尖度(Kurtosis)は、エネルギー分布の尖り具合を示すものであり、正規分布と比べて、以下のような特徴がある。すなわち、尖度が大きくなるほど、鋭いピークと長い尾とを有するエネルギー分布になる(図12(a)参照)。その一方、尖度が小さくなるほど、より丸みがかったピークと短い尾とを有するエネルギー分布になる(図12(b)参照)。
なお、尾とは、図12において、トランケーションによって形成される、メッセージの上限となる平坦部である。
【0099】
つまり、無テクスチャ領域判定部20は、評価値Kが、テクスチャに起因する推定エラーが生じた画素で、テクスチャに起因する推定エラーが生じていない画素よりも小さくなる性質を利用して、テクスチャに起因する推定エラーを判定している。そして、無テクスチャ領域判定部20は、評価値Kがテクスチャ閾値TK以下と判定された画素領域を無テクスチャ領域として出力する。このオクルージョン領域は、例えば、被写体の3次元立体モデルを生成する際、テクスチャに起因する推定エラーが生じた領域を把握するために利用できる。
なお、無テクスチャ領域判定部20は、評価値Kがテクスチャ閾値TKを超える場合、テクスチャに起因する推定エラーが生じていないと判定することは言うまでもない。
【0100】
[距離情報推定装置の動作]
図13を参照し、距離情報推定装置1Bの動作について説明する(適宜図10参照)。
距離情報推定装置1Bは、誤差関数計算部10Bによって、距離候補ごとに、誤差関数閾値Tdata以下となるように誤差関数Dpを計算する。つまり、誤差関数計算部10Bは、前記した式(9)及び式(10)を用いて、誤差関数Dpを計算して、トランケーションを行う(ステップS20)。
【0101】
距離情報推定装置1Bは、スムーズ関数計算部11Bによって、距離候補ごとに、スムーズ関数閾値Tsmooth以下となるように、スムーズ関数Vを計算する。つまり、スムーズ関数計算部11Bは、前記した式(11)を用いて、スムーズ関数Vを計算して、トランケーションを行う(ステップS21)。
【0102】
ステップS22〜S25の処理は、図9のステップS12〜S15と同様のため、説明を省略する。
【0103】
距離情報推定装置1Bは、評価値O計算部17によって、評価値Oを計算する。つまり、評価値O計算部17は、前記した式(12)に示すように、メッセージの最大値とメッセージの最小値との差分をこの最大値で除算することで、評価値Oを計算する(ステップS26)。
【0104】
距離情報推定装置1Bは、オクルージョン領域判定部18によって、評価値Oがオクルージョン閾値To以下であるか否かを判定し、評価値Oがオクルージョン閾値To以下の場合、オクルージョンに起因する推定エラーが生じたと判定する。(ステップS27)。
【0105】
距離情報推定装置1Bは、評価値K計算部19によって、エネルギー分布の尖度である評価値Kを計算する。つまり、評価値K計算部19は、前記した式(13)に示すように、距離候補の個数nfと、メッセージと、メッセージの平均値bq ̄と、メッセージの標準偏差σ(bq)とに基づいて、評価値Kを計算する(ステップS28)。
【0106】
距離情報推定装置1Bは、無テクスチャ領域判定部20によって、評価値Kがテクスチャ閾値TK以下であるか否かを判定し、評価値Kがテクスチャ閾値TK以下の場合、テクスチャに起因する推定エラーが生じたと判定する(ステップS29)。
【0107】
以上のように、本発明の第2実施形態に係る距離情報推定装置1Bは、メッセージの最小値だけでなくメッセージの最大値も考慮して評価値Oを計算すると共に、エネルギー分布の尖度である評価値Kを計算する。そして、距離情報推定装置1Bは、オクルージョンやテクスチャに起因する推定エラーが生じた画素で、評価値O及び評価値Kが小さくなる性質を利用して、これら推定エラーを判定する。これによって、距離情報推定装置1Bは、オクルージョン及びテクスチャに起因する推定エラーの判定精度を向上させて、これら推定エラーが生じた領域を正確に提示することができる。
【0108】
さらに、距離情報推定装置1Bは、図11,図12に示すように、トランケーションによって、メッセージに上限が設けられるため、評価関数bqのばらつきが一定範囲に収まって、距離情報の精度を向上させることができる。
【0109】
(第3実施形態)
[距離情報推定装置の構成]
図14を参照し、本発明の第3実施形態に係る距離情報推定装置1Cの構成について、第2実施形態と異なる点を説明する。この距離情報推定装置1Cは、オクルージョン及びテクスチャに起因する推定エラーを抑制する点が、第2実施形態と異なる。このため、距離情報推定装置1Cは、テクスチャ推定エラー抑制部21をさらに備える。
【0110】
図14に示すように、距離情報推定装置1Cは、左カメラCL及び中央カメラCCの撮影画像である左ステレオ画像と、右カメラCR及び中央カメラCCの撮影画像である右ステレオ画像とが入力される。
【0111】
この中央カメラCCは、左カメラCL及び右カメラCRと同様、静止画や動画を撮影可能な撮影カメラである。また、左カメラCL及び右カメラCRは、それぞれ、中央カメラCCから一定間隔離して左右に配置される。ここでは、中央カメラCCを基準カメラとし、中央カメラCCの撮影画像を基準画像とし、左カメラCL及び右カメラCRの撮影画像を参照画像とする。
【0112】
誤差関数計算部10Bと、スムーズ関数計算部11Bと、メッセージ生成・伝搬部13と、評価関数計算部14と、距離推定部15とは、左ステレオ画像及び右ステレオ画像それぞれの処理を行う以外、図10の各手段と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0113】
ここで、後記するオクルージョンに起因する推定エラーの抑制には、左ステレオ画像及び右ステレオ画像の両方(以下、「両ステレオ画像」)から求めた評価関数bqが必要になる。このため、評価関数計算部14は、両ステレオ画像から求めた評価関数bqを評価値O計算部17Cに出力する。さらに、距離推定部15は、両ステレオ画像から求めた距離情報(距離画像)を、評価値O計算部17Cに出力する。
【0114】
一方、後記するテクスチャに起因する推定エラーの抑制には、左ステレオ画像及び右ステレオ画像の何れか一方から求めた評価関数bqがあればよい。従って、評価関数計算部14は、左ステレオ画像から求めた評価関数bqを、評価値K計算部19に出力する。
【0115】
評価値O計算部17Cは、両ステレオ画像から評価値Oを計算して、オクルージョン領域判定部18に出力する。また、評価値O計算部17Cは、両ステレオ画像から計算した評価値Oと、両ステレオ画像の距離情報とを用いて、オクルージョンに起因する推定エラーを抑制する。
なお、評価値Oの計算は、図10の評価値O計算部17と同様のため、説明を省略する。
【0116】
具体的には、評価値O計算部17Cは、基準画像の各画素について、左ステレオ画像から計算した評価値Oと、右ステレオ画像から計算した評価値Oとを比較する。この比較結果に基づいて、評価値O計算部17Cは、両ステレオ画像の距離情報のうち、評価値Oが大きい側の距離情報を、その画素の距離情報として、テクスチャ推定エラー抑制部21に出力する。すなわち、評価値O計算部17Cは、オクルージョンに起因する推定エラーが生じた画素で評価値Oが小さくなることを利用して、距離推定部15で生成された両ステレオ画像の距離情報を、この推定エラーを抑制した1つの距離情報に統合する。
【0117】
オクルージョン領域判定部18は、図3と同様、両ステレオ画像のオクルージョン領域を出力するため、詳細な説明を省略する。
なお、このオクルージョン領域は、オクルージョンに起因する推定エラーの抑制に必要ではなく、参考情報として提示される。
【0118】
評価値K計算部19は、図3と同様、左ステレオ画像についての評価値Kを計算するため、詳細な説明を省略する。
無テクスチャ領域判定部20は、図3と同様、左ステレオ画像についての無テクスチャ領域を生成して、テクスチャ推定エラー抑制部21に出力する。
【0119】
テクスチャ推定エラー抑制部21は、評価値O計算部17Cから距離情報が入力され、無テクスチャ領域判定部20から無テクスチャ領域が入力される。そして、テクスチャ推定エラー抑制部21は、この無テクスチャ領域を用いて、この距離情報から、テクスチャに起因する推定エラーを抑制するものである。
【0120】
図15,図16を参照して、テクスチャに起因する推定エラーの抑制について説明する(適宜図10参照)。
説明を簡易にするため、図15に示すように、土俵Aの上で二人の被写体(力士)O1,O2が取組を行っている例で説明する。この場合、図14の中央カメラCCは、土俵Aの正面中央に位置し、取組を行っている被写体O1,O2の側面方向(図15の矢印方向)から基準画像Pを撮影したこととする。
【0121】
なお、図15では、基準画像Pに含まれない土俵Aと被写体O1,O2との一部を破線で図示した。また、図15では、基準画像Pのうち、土俵Aの奥側地面となる背景Bの領域が無テクスチャ領域TXであり、ハッチングで図示した。この例では、テクスチャ推定エラー抑制部21は、図15のハッチング部分に対して、テクスチャに起因する推定エラーの抑制処理を行うことになる。
【0122】
ここで、中央カメラCCと、土俵Aと、被写体O1,O2とを上側より見ると、これらの位置関係は、図16のようになる。図16では、土俵A及び被写体O1,O2を破線で図示すると共に、後記する距離Dを一転鎖線で図示した。また、図15のハッチング部分(無テクスチャ領域TX)は、球表面の一部を切り取った曲面形状になる(図16の吹き出し)。
【0123】
まず、テクスチャ推定エラー抑制部21は、左カメラCLと、中央カメラCCと、右カメラCRとの光軸LAが交わる光軸交点CEを、カメラキャリブレーションにより計算する。ここで、テクスチャ推定エラー抑制部21は、全てのカメラから光軸交点CEを求める必要がなく、基準画像を撮影する中央カメラCCが含まれていればよい。つまり、テクスチャ推定エラー抑制部21は、中央カメラCCと左カメラCLとの組、又は、中央カメラCCと右カメラCRとの一方の組から、光軸交点CEを求めてもよい。
【0124】
次に、テクスチャ推定エラー抑制部21は、予め設定された半径rの仮想球VCを、光軸交点CEを中心に生成する。ここで、テクスチャ推定エラー抑制部21は、全ての被写体(例えば、土俵A、被写体O1,O2)が仮想球VCに含まれるように、半径rが予め設定されている。そして、テクスチャ推定エラー抑制部21は、中央カメラCCから仮想球VCの奥側表面までの距離Dを計算し、この距離Dを、無テクスチャ領域TX内の各画素の距離情報として割り当てる。
【0125】
すなわち、無テクスチャ領域TX内の各画素の距離情報は、下記の計算式を用いて割り当てることができる。まず、テクスチャ推定エラー抑制部21は、下記の(14)及び式(15)の連立方程式により、仮想球VCと中央カメラCCの光軸LAとの交点(X,Y,Z)を計算する。
【0126】
【数14】
【0127】
【数15】
【0128】
前記した式(14)は、仮想球VCを表した方程式である。ここで、a,b,cが仮想球VCの中心の世界座標(光軸交点CEの世界座標)であり、rが仮想球VCの半径である。
前記した式(15)は、中央カメラCCの光学主点と無テクスチャ領域TX内の各画素とを通過する直線を表した方程式である。ここで、e,g,iが無テクスチャ領域TX内の各画の世界座標と光学主点の世界座標とにより計算される傾き(既知)であり、f,h,jが光学主点の世界座標(既知)である。
【0129】
そして、テクスチャ推定エラー抑制部21は、下記の(16)により、中央カメラCCから仮想球VCの奥側表面までの距離Dを計算する。ここで、zは仮想球VCの奥側表面までの距離Dであり、i,jは基準画像の座標(既知)であり、Aはカメラキャリブレーションにより計算される内部パラメータ(既知)であり、Rはカメラキャリブレーションにより計算される回転行列(既知)であり、Uはカメラキャリブレーションにより計算される並進行列(既知)である。
【0130】
【数16】
【0131】
[距離情報推定装置の動作]
図17を参照し、距離情報推定装置1Cの動作について説明する(適宜図14参照)。
ステップS30〜S35の処理は、図13のステップS20〜S25と同様のため、説明を省略する。
【0132】
距離情報推定装置1Cは、評価値O計算部17Cによって、無テクスチャ領域及び距離情報を用いて、オクルージョンに起因する推定エラーを抑制する。つまり、評価値O計算部17Cは、両ステレオ画像から評価値Oを計算し、これら評価値Oを比較して、評価値Oが大きい側のステレオ画像から生成した距離情報を、基準画像での各画素の距離情報として出力する(ステップS36)。
【0133】
ステップS37〜S39の処理は、図13のステップS27〜S29と同様のため、説明を省略する。
【0134】
距離情報推定装置1Cは、テクスチャ推定エラー抑制部21によって、無テクスチャ領域を用いて、距離情報から、テクスチャに起因する推定エラーを抑制する。つまり、テクスチャ推定エラー抑制部21は、左カメラCLと、中央カメラCCと、右カメラCRとの光軸交点CEをカメラキャリブレーションにより計算する。そして、テクスチャ推定エラー抑制部21は、半径rの仮想球VCを、光軸交点CEを中心に生成する。さらに、テクスチャ推定エラー抑制部21は、中央カメラCCから仮想球VCの奥側表面までの距離Dを計算して、無テクスチャ領域TX内の各画素の距離情報として割り当てる(ステップS40)。
【0135】
以上のように、本発明の第3実施形態に係る距離情報推定装置1Cは、オクルージョン及びテクスチャに起因する推定エラーを抑制して、精度が高い距離情報を生成することができる。この距離情報を用いれば、例えば、奥行き感が高い、インテグラルフォトグラフィ(IP)方式の立体映像を生成することができる。
【0136】
なお、各実施形態では、誤差関数とスムーズ関数とで規定される確率に関するエネルギーを最小化する手法の一例として信頼度伝搬法を説明したが、本発明は、これに限定されない。本発明では、この手法として、例えば、ビタビアルゴリズムを用いることもできる。
【0137】
なお、各実施形態では、距離指標情報として距離情報を推定することとして説明したが、本発明は、これに限定されない。つまり、本発明は、前記した距離候補を視差候補に置き換えれば、視差情報を推定する視差情報推定装置を実現することができる。
【0138】
なお、各実施形態では、評価値として評価値K,Oを計算することとして説明したが、本発明は、これに限定されない。
また、各実施形態では、評価値K,Oの両方を計算することとして説明したが、本発明は、評価値K,Oの何れか一方のみを計算してもよい。この場合、本発明は、テクスチャ又はオクルージョンに起因する推定エラーの何れか一方だけを抑制してもよい。
【実施例】
【0139】
以下、本発明の実施例として、膨張を抑制する実験の結果について説明する。
本実施例では、図3の距離情報推定装置1を用いて実験を行った。図18(a)は、この実験で使用した基準画像である。また、図18(b)は、比較対象として、従来の信頼度伝搬法で生成した距離画像である。そして、図18(c)は、距離情報推定装置1が生成した距離画像である。
【0140】
図18(b)及び図18(c)を対比すると、図18(c)の距離画像は、被写体の輪郭の膨張が抑制されて、被写体が鮮明化されている。特に、丸部分において、被写体の輪郭が著しく鮮明化されている。
【0141】
図19(a)は、この実験で使用した別の基準画像である。また、図19(b)は、本実施例の比較対象として、従来の信頼度伝搬法で生成した距離画像である。そして、図19(c)は、距離情報推定装置1が生成した距離画像である。
【0142】
図19(b)の距離画像では、被写体(力士及び審判)がひとまわり膨張している。一方、図19(c)の距離画像では、被写体の膨張が抑制され、基準画像と同様、正確な被写体の輪郭が表現されている。
【0143】
さらに、色情報閾値Tc及び重み係数λdataの値を変更して実験を行った。図20(a)は、この実験で使用した基準画像である。また、図20(b)は、色情報閾値Tc=32、重み係数λdata=0.07に設定したときの距離画像である。さらに、図20(c)は、色情報閾値Tc=20、重み係数λdata=0.03に設定したときの距離画像である。
【0144】
図20(b)及び図20(c)を対比すると、特に、丸部分において、被写体の輪郭が著しく鮮明化されていることがわかる。以上より、重み係数λdata及び色情報閾値Tcの値をより小さくする、つまり、スムーズ関数の影響を大きくし、メッセージ伝搬を強く制限することで、距離画像をより滑らかにすると共に、被写体の輪郭を鮮鋭化して、距離推定の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0145】
1,1B,1C 距離情報推定装置
10,10B 誤差関数計算部
11,11B スムーズ関数計算部
12 メッセージ伝搬制限判定部(エネルギー伝搬判定部)
13 メッセージ生成・伝搬部(エネルギー伝搬部)
14 評価関数計算部
15 距離推定部(距離指標推定部)
15a ノイズ除去フィルタ(ノイズ除去手段)
16 評価値計算部
17,17C 評価値O計算部(オクルージョン評価値計算部)
18 オクルージョン領域判定部(オクルージョン推定エラー判定部)
19 評価値K計算部(テクスチャ評価値計算部)
20 無テクスチャ領域判定部(テクスチャ推定エラー判定部)
21 テクスチャ推定エラー抑制部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステレオ画像間の誤差関数と奥行き方向への距離又は視差である距離指標の連続性を示すスムーズ関数とで規定される確率に関するエネルギーを最小化する手法により、ステレオ画像の一方である基準画像の画素ごとの距離指標を示す距離指標情報を推定する距離指標情報推定装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、3次元立体モデルを生成する際、ステレオ画像の各画素の視差により距離を推定する距離推定技術が広く用いられている。この距離推定技術では、例えば、ステレオ画像間で類似度を求めるブロックマッチングが用いられている。また、類似度の計算方法としては、例えば、差の二乗和を求めるSSD(Sum of Squared Difference)、差の絶対和を求めるSAD(Sum of Absolute Difference)、および、正規化相互相関を求めるZNCC(Zero-mean Normalized Cross-Correlation)が知られている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
また、距離推定技術としては、マルコフランダムフィールドモデルを仮定し、ステレオ画像間のデータ項とスムーズ項とで構成されるエネルギーを最小化することにより、ノイズが少なく滑らかな距離情報(距離画像)を生成する信頼度伝搬法も知られている(例えば、非特許文献2)。ここで、データ項はステレオ画像間の類似度を表し、スムーズ項は距離の不連続性を表す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ディジタル画像処理、CG−Arts協会、2006年、p202−p204
【非特許文献2】Pedro F.Felzenszwalb,Daniel P.Huttenlocher:Efficient Belief Propagation for Early Vision.CVPR(1)2004:261‐268
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の信頼度伝搬法では、生成した距離画像において、被写体の輪郭が膨張することが多い。この場合、精度が高い距離情報を得るために、この膨張を抑制して、被写体の輪郭を鮮鋭化する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、精度が高い距離指標情報を生成できる距離指標情報推定装置およびそのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題に鑑みて、本願第1発明に係る距離指標情報推定装置は、ステレオ画像間の誤差関数と奥行き方向への距離又は視差である距離指標の連続性を示すスムーズ関数とで規定される確率に関するエネルギーを最小化する手法により、ステレオ画像の一方である基準画像の画素ごとの距離指標を示す距離指標情報を推定する距離指標情報推定装置であって、誤差関数計算部と、スムーズ関数計算部と、エネルギー伝搬判定部と、エネルギー伝搬部と、評価関数計算部と、距離指標推定部とを備えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、距離指標情報推定装置は、誤差関数計算部によって、ステレオ画像が入力されると共に、予め設定された距離指標候補ごとに、入力されたステレオ画像の類似度である誤差関数を計算する。そして、距離指標情報推定装置は、スムーズ関数計算部によって、距離指標候補ごとに、マルコフランダムフィールドにおける隣接画素間の距離指標候補の差分絶対値であるスムーズ関数を計算する。
【0009】
また、距離指標情報推定装置は、エネルギー伝搬判定部によって、基準画像における隣接画素間の色情報の差分絶対値が予め設定された色情報閾値以下であるか否かによって、エネルギーを伝搬できるか否かを判定する。例えば、エネルギー伝搬判定部は、被写体と背景との境界のように隣接画素間で色が大きく異なる場合、エネルギーの伝搬を制限すると判定する。
【0010】
また、距離指標情報推定装置は、エネルギー伝搬部によって、誤差関数計算部で計算した誤差関数とスムーズ関数計算部で計算したスムーズ関数とを含むエネルギーが集合したエネルギー集合を生成し、エネルギー集合内でエネルギーを伝搬できると判定された隣接画素間で、所定の漸化式によってエネルギーを生成して伝搬することで、距離指標候補及び画素ごとのエネルギーを更新する。つまり、エネルギー伝搬部は、隣接画素間で色が大きく異なる場合、エネルギーの伝搬を制限する。
【0011】
また、距離指標情報推定装置は、評価関数計算部によって、エネルギー伝搬部で更新されたエネルギーを示す評価関数を計算する。そして、距離指標情報推定装置は、距離指標推定部によって、距離指標候補のうち、評価関数計算部で計算された評価関数が最小となる距離指標を、距離指標情報として推定する。
【0012】
また、本願第2発明に係る距離指標情報推定装置は、エネルギー伝搬判定部が、エネルギー伝搬元の画素と処理対象画素との色情報の差分絶対値が色情報閾値以下であるか否かによって、エネルギー伝搬元の画素と処理対象画素との間でエネルギーを伝搬できるか否かを判定することを特徴とする。
かかる構成によれば、距離指標情報推定装置は、エネルギー伝搬元の画素と処理対象画素との間で色が大きく異なる場合、エネルギーの伝搬を制限する。
【0013】
また、本願第3発明に係る距離指標情報推定装置は、エネルギー伝搬判定部が、エネルギー伝搬先の画素と処理対象画素との色情報の差分絶対値が色情報閾値以下であるか否かによって、エネルギー伝搬先の画素と処理対象画素との間でエネルギーを伝搬できるか否かを判定することを特徴とする。
かかる構成によれば、距離指標情報推定装置は、エネルギー伝搬先の画素と処理対象画素との間で色が大きく異なる場合、エネルギーの伝搬を制限する。
【0014】
また、本願第4発明に係る距離指標情報推定装置は、誤差関数計算部が、基準画像における処理対象画素と、ステレオ画像の他方である参照画像で処理対象画素に対応する対応画素との色情報の差分絶対値を求め、差分絶対値を予め設定した原色数で除算して重み付ける誤差関数を計算することを特徴とする。
かかる構成によれば、距離指標情報推定装置は、被写体の輪郭を鮮鋭化して、精度が高い距離指標情報を推定することができる。
【0015】
また、本願第5発明に係る距離指標情報推定装置は、エネルギー伝搬判定部が、誤差関数の重み付けが小さいほど、色情報閾値が小さな値で予め設定されたことを特徴とする。
ここで、色情報閾値を小さな値に設定してメッセージ伝搬を強く制限した場合、相対的にスムーズ関数よりも誤差関数の影響が大きくなる。従って、距離指標情報推定装置は、誤差関数の重み付けが小さいほど、色情報閾値を小さな値で設定して、スムーズ関数と誤差関数とのバランスを保つ。
【0016】
また、本願第6発明に係る距離指標情報推定装置は、距離指標推定部が、距離指標情報にノイズ除去処理を施すノイズ除去手段をさらに備えることを特徴とする。
かかる構成によれば、距離指標情報推定装置は、ノイズが除去された滑らかな距離指標情報を生成することができる。
【0017】
なお、本願第1発明に係る距離指標情報推定装置は、一般的なコンピュータを、誤差関数計算部、スムーズ関数計算部、エネルギー伝搬判定部、エネルギー伝搬部、評価関数計算部及び距離指標推定部として動作させる距離指標情報推定プログラムによって実現することもできる。このプログラムは、通信回線を介して配布しても良く、CD−ROMやフラッシュメモリ等の記録媒体に書き込んで配布しても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
本願第1発明によれば、例えば、被写体と背景との境界のように隣接画素間で色が大きく異なる場合、エネルギーの伝搬を制限するため、被写体の輪郭の膨張を抑制できる。これによって、本願第1発明によれば、被写体の輪郭を鮮鋭化して、精度が高い距離指標情報を生成することができる。
【0019】
本願第2発明によれば、エネルギー伝搬元の画素と処理対象画素との間で色が大きく異なる場合、エネルギーの伝搬を制限するため、精度が高い距離指標情報を生成することができる。
本願第3発明によれば、エネルギー伝搬先の画素と処理対象画素との間で色が大きく異なる場合、エネルギーの伝搬を制限するため、精度が高い距離指標情報を生成することができる。
【0020】
本願第4発明によれば、被写体の輪郭をより鮮鋭化して、精度が高い距離指標情報を生成することができる。
本願第5発明によれば、誤差関数の重み付けが小さいほど、色情報閾値が小さな値で設定するため、スムーズ関数と誤差関数とのバランスを保って、滑らかな距離指標情報を生成することができる。
本願第6発明によれば、ノイズを除去して、より滑らかな距離指標情報を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明において、信頼度伝搬法による距離推定を説明する説明図である。
【図2】本発明において、信頼度伝搬法による距離推定の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1実施形態に係る距離情報推定装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図3の距離情報推定装置において、距離候補ごとの誤差関数及びスムーズ関数の計算を説明する説明図である。
【図5】図3の距離情報推定装置において、距離候補ごとのメッセージの伝搬を説明する説明図である。
【図6】図3の距離情報推定装置において、距離候補ごとのメッセージの伝搬を説明する説明図である。
【図7】本発明の第1実施形態において、(a)はメッセージ伝搬元の画素から処理対象の画素へのメッセージ伝搬が制限されるときの説明図であり、(b)は処理対象の画素からメッセージ伝搬先の画素へのメッセージ伝搬が制限されるときの説明図である。
【図8】本発明の第1実施形態において、(a)及び(b)はメッセージ伝搬が制限されないときの説明図である。
【図9】図3の距離情報推定装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態に係る距離情報推定装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第2実施形態において、(a)はオクルージョンに起因する推定エラーが生じていない画素のエネルギー分布を示すグラフであり、(b)はオクルージョンに起因する推定エラーが生じた画素のエネルギー分布を示すグラフである。
【図12】本発明の第2実施形態において、(a)はテクスチャに起因する推定エラーが生じていない画素のエネルギー分布を示すグラフであり、(b)はテクスチャに起因する推定エラーが生じた画素のエネルギー分布を示すグラフである。
【図13】図10の距離情報推定装置の動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第3実施形態に係る距離情報推定装置の構成を示すブロック図である。
【図15】図14の距離情報推定装置において、オクルージョンに起因する推定エラーの抑制を説明する説明図である。
【図16】図14の距離情報推定装置において、オクルージョンに起因する推定エラーの抑制を説明する説明図である。
【図17】図14の距離情報推定装置の動作を示すフローチャートである。
【図18】本発明の実施例において、(a)は基準画像であり(b)は従来の信頼度伝搬法で生成した距離画像であり、(c)は距離情報推定装置で生成した距離画像である。
【図19】本発明の実施例において、(a)は基準画像であり(b)は従来の信頼度伝搬法で生成した距離画像であり、(c)は距離情報推定装置で生成した距離画像である。
【図20】本発明の実施例において、(a)は基準画像であり、(b)は、色情報閾値及び重み係数が大きいときの距離画像であり、(c)は色情報閾値及び重み係数が小さいときの距離画像である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(本発明の概略:信頼度伝搬法による距離推定)
本発明の各実施形態では、ステレオ画像間の誤差関数と距離指標の連続性を示すスムーズ関数とで規定されるエネルギーを最小化する手法として、信頼度伝搬法を用いている。そこで、最初に、本発明の実施形態における信頼度伝搬法の概略を説明する。
【0023】
なお、以後の各実施形態では、請求項に記載の距離指標が、奥行き方向への距離(奥行き)であることとして説明する。つまり、請求項に記載の距離指標情報として、画素ごとの距離を示す距離情報を推定することになる。
【0024】
この信頼度伝搬法(BP法:Belief Propagation法)は、距離情報にマルコフランダムフィールド(MRF:Markov Random Field)モデルを仮定し、ステレオ画像間の誤差関数とスムーズ関数とで構成(規定)されるエネルギーを最小化することにより、ノイズが少なく滑らかな距離情報を生成するものである。ここで、信頼度伝搬法は、図1に示すように、処理対象となる画素pの隣接画素sから、メッセージと呼ばれる各画素にどの距離が割り当てられるかという確率に関するエネルギーmを受け取り、それらからメッセージを更新して隣接画素qに伝搬させる。そして、信頼度伝搬法は、この処理を画像内の全ての画素に対して繰り返し行うことで各画素の距離情報を求める。
なお、請求項に記載のエネルギーが、信頼度伝搬法ではメッセージとなる。
【0025】
ここで、図1では、枠(白塗四角形)が基準画像の画素に対応し、矢印mが画素間のメッセージ(エネルギー)の伝搬を示している。また、図1に示すように、このメッセージを伝搬する画素がノードとして縦横に配列されたグラフをエネルギー集合(メッセージ集合)と呼ぶ。さらに、文字「s」が付された画素sは、メッセージの伝搬元となる画素を示し、文字「p」が付された画素pは、処理対象の画素を示し、文字「q」が付された隣接画素qは、メッセージの伝搬先となる隣接画素を示す。なお、図1では、説明を簡易にするために、一部符号のみを図示した。
【0026】
図2を参照し、信頼度伝搬法による距離推定の手順を説明する。
図2に示すように、信頼度伝搬法では、メッセージの生成に必要な画素間の誤差関数Dp(fp)(以後、「誤差関数Dp」)を計算する(ステップS1)。本発明において、誤差関数に、SSD、SAD、ZNCC等の類似度が利用可能であり、ここでは、ステレオ画像の対応画素間で色情報の差分絶対値により類似度を示す式(1)を利用する。この式(1)によれば、画素単位で類似度を計算するため、被写体の輪郭を鮮鋭化することができる。
【0027】
【数1】
【0028】
ここで、pは処理対象の画素、fpは画素pの距離候補、cは色情報、r,g,bはRGB値、dpは距離候補fpに対応する視差、Icはステレオ画像の一方である基準画像での画素値、Ic´はステレオ画像の他方である参照画像での画素値、λdataは重み係数を表わす。
なお、距離候補(距離指標候補)とは、任意の範囲内で予め設定された距離の候補のことである(図4等参照)。
【0029】
すなわち、式(1)は、基準画像Icにおける処理対象の画素pの色情報Ic(p)と、参照画像Ic´における対応画素(p+dp)の色情報Ic´(p+dp)との差分絶対値を予め設定された原色数(例えば、3)で除算して、重み係数λdataで重み付けることを示す。この対応画素(p+dp)とは、参照画像Ic´において、処理対象の画素pに対応する画素のことである。
【0030】
また、式(1)において、視差の逆数にステレオカメラの間隔(ベースライン)を乗算して距離が計算できることを利用して、距離候補fpから視差dpを逆算できる。このベースラインは、例えば、OpenCV等のカメラキャリブレーションで求めることができる(URL「http://opencv.jp/」)。
【0031】
続いて、信頼度伝搬法では、下記の式(2)に示すように、距離候補fpと、画素qの距離候補fqとの差分絶対値|fp−fq|で定義されるスムーズ関数V(fp−fq)(以後、「スムーズ関数V」)の計算を行う(ステップS2)。このスムーズ関数Vは、距離情報の滑らかさ(例えば、ノイズの少なさ)、言い換えるなら、距離の連続性を示す。ここで、qは画素pのメッセージ伝搬先となる隣接画素である。
【0032】
【数2】
【0033】
そして、信頼度伝搬法では、下記の式(3)で規定される生成式によって、メッセージを生成して伝搬する(ステップS3)。
【0034】
【数3】
【0035】
mはメッセージ、tは反復回数、N(p)\qは画素pへメッセージを渡す画素q以外の4近傍の画素集合、sはその画素集合の要素画素、minは最小値を返す関数である。この式(3)は、漸化式になっており、受け取ったメッセージをもとにメッセージを更新する処理を繰り返し行うことを示す。例えば、信頼度伝搬法では、ラスタスキャンを行うように処理対象画素pを移動させながら、その処理対象画素pでメッセージを更新することで、メッセージの伝搬を全画素で行う。
【0036】
全画素についてメッセージの更新処理を、予め設定したT回(例えば、10回)まで反復したとする。この場合、画素qの距離候補fqに関する評価関数bq(fq)(以後、「評価関数bq」)は、下記の式(4)で表すことができる。そして、信頼度伝搬法では、この評価関数bqが最小になる距離候補fqを、各画素の最終的な距離として推定する(ステップS4)。
【0037】
【数4】
【0038】
(第1実施形態)
[距離情報推定装置の構成]
以下、本発明の各実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する手段には同一の符号を付し、説明を省略した。
【0039】
図3を参照し、本発明の第1実施形態に係る距離情報推定装置(距離指標情報推定装置)1の構成について説明する。
距離情報推定装置1は、信頼度伝搬法により距離情報を推定すると共に、前記した信頼度伝搬法において、隣接画素間で色が大きく異なるときにメッセージの伝搬を制限する。
【0040】
図3に示すように、距離情報推定装置1は、誤差関数計算部10と、スムーズ関数計算部11と、メッセージ伝搬制限判定部(エネルギー伝搬判定部)12と、メッセージ生成・伝搬部(エネルギー伝搬部)13と、評価関数計算部14と、距離推定部(距離指標推定部)15とを備える。
【0041】
距離情報推定装置1は、左カメラCL及び右カメラCR(ステレオカメラ)から、被写体(不図示)を撮影したステレオ画像が入力される。
この左カメラCL及び右カメラCRは、静止画や動画を撮影可能な撮影カメラであり、図3に示すように、一定間隔だけ離して配置される。ここでは、左カメラCL及び右カメラCRのうち左カメラCLを基準カメラとし、左カメラCLの撮影画像を基準画像とし、右カメラCRの撮影画像を参照画像とする。
【0042】
誤差関数計算部10は、ステレオ画像が入力されると共に、距離候補ごとに、入力されたステレオ画像の類似度である誤差関数Dpを計算するものである。この誤差関数計算部10は、前記した式(1)を用いて、図4に示すように画素s,p,qについて、距離候補ごとの誤差関数Dpを計算する。そして、誤差関数計算部10は、計算した誤差関数Dpをメッセージ生成・伝搬部13に出力する。
【0043】
本実施形態では、距離候補fs,fp,fqがそれぞれ、図4に示すように、0,1,・・・,K,・・・,N−1の範囲内で予め設定されたこととして説明する(但し、K,Nは、K<N−1を満たす整数)。
なお、図4では、文字s,p,qを付した四辺形が画素s,p,qである。
【0044】
スムーズ関数計算部11は、距離候補ごとに、スムーズ関数Vを計算するものである。このスムーズ関数計算部11は、図4に示すように、画素pの距離候補fp(0〜N−1)と、画素qの距離候補fq(0〜N−1)との全組み合わせについて、前記した式(2)を用いて、スムーズ関数Vを計算する。そして、スムーズ関数計算部11は、計算したスムーズ関数Vをメッセージ生成・伝搬部13に出力する。
【0045】
ここで、マルコフランダムフィールドおよびスムーズ関数Vについて補足する。このマルコフランダムフィールドは、基準画像で互いに隣接する画素の色、輝度や距離が似ていることを示すモデルである。そして、スムーズ関数Vは、このマルコフランダムフィールドを踏まえた距離の連続性に関する関数であり、基準画像の各画素に距離候補を割り当てた際、互いに隣接する画素の距離候補が同じであればエネルギーが小さく、異なればエネルギーが大きくなる。例えば、マルコフランダムフィールドでは、ある画素の距離候補が1で、その隣接画素の距離候補が1である場合、エネルギーは0となる。また、ある画素の距離候補が1で、その画素に隣接する画素の距離候補が2である場合、例えば、エネルギーは1となる。さらに、ある画素の距離候補が1で、その隣接画素の距離候補が10である場合、例えば、エネルギーは9となる。つまり、信頼度伝搬法において、エネルギーが最小となる距離候補が最終的な距離となることを考慮すれば、このマルコフランダムフィールドにより、互いに隣接する画素は、同じような距離になり易くなる。
【0046】
メッセージ伝搬制限判定部(エネルギー伝搬判定部)12は、基準画像における隣接画素間の色情報の差分絶対値が予め設定された色情報閾値Tc以下であるか否かによって、メッセージを伝搬できるか否かを判定するものである。
【0047】
このメッセージ伝搬制限判定部12は、メッセージの伝搬の制限を判定するために、隣接画素間の色情報の差分絶対値に関する色情報閾値Tcが予め設定される。このとき、色情報閾値Tcの値が小さくなってメッセージ伝搬の制限が強くなると、重み係数λdataの値も小さくなってスムーズ関数の影響が大きくなるように、色情報閾値Tc及び重み係数λdataを予め設定することが好ましい。
【0048】
また、メッセージ伝搬制限判定部12は、メッセージ伝搬元の画素sと処理対象の画素pとの色情報の差分絶対値が色情報閾値Tc以下であるか否かによって、メッセージ伝搬元の画素sと処理対象の画素pとの間でメッセージを伝搬できるか否かを判定する。具体的には、メッセージ伝搬制限判定部12は、下記の式(5)に示すように、画素s,pの色情報の差分絶対値と色情報閾値Tcとを比較することにより、メッセージ伝搬元の重み係数λs,pを計算する。
【0049】
【数5】
【0050】
ここで、メッセージ伝搬制限判定部12は、式(5)に示すように、画素s,pの色情報の差分絶対値が色情報閾値Tc以下の場合、画素s,p間でメッセージを伝搬できると判定し、重み係数λs,pを1として計算する。一方、メッセージ伝搬制限判定部12は、画素s,pの色情報の差分絶対値が色情報閾値Tcを超える場合、画素s,p間でメッセージを伝搬できないと判定し、重み係数λs,pを0として計算する。そして、メッセージ伝搬制限判定部12は、計算した重み係数λs,pをメッセージ生成・伝搬部13に出力する。
【0051】
また、メッセージ伝搬制限判定部12は、メッセージ伝搬先の画素qと処理対象の画素pとの色情報の差分絶対値が色情報閾値Tc以下であるか否かによって、メッセージ伝搬先の画素qと処理対象の画素pとの間でメッセージを伝搬できるか否かを判定する。具体的には、メッセージ伝搬制限判定部12は、下記の式(6)に示すように、画素p,qの色情報の差分絶対値と色情報閾値Tcとを比較することにより、メッセージ伝搬先の重み係数λp,qを計算する。
【0052】
【数6】
【0053】
ここで、メッセージ伝搬制限判定部12は、式(6)に示すように、画素p,qの色情報の差分絶対値が色情報閾値Tc以下の場合、画素p,q間でメッセージを伝搬できると判定し、重み係数λp,qを1として計算する。一方、メッセージ伝搬制限判定部12は、画素p,qの色情報の差分絶対値が色情報閾値Tcを超える場合、画素p,q間でメッセージを伝搬できないと判定し、重み係数λp,qを0として計算する。そして、メッセージ伝搬制限判定部12は、計算した重み係数λp,qを評価関数計算部14に出力する。
【0054】
メッセージ生成・伝搬部(エネルギー伝搬部)13は、誤差関数計算部10で計算された誤差関数Dpと、スムーズ関数計算部11で計算されたスムーズ関数Vと、メッセージ伝搬制限判定部12で計算された重み係数λs,pとが入力される。そして、メッセージ生成・伝搬部13は、図1と同様に、これら誤差関数Dpおよびスムーズ関数Vを含むメッセージが集合したエネルギー集合を生成するものである。
【0055】
具体的には、メッセージ生成・伝搬部13は、基準画像の画素位置に対応した位置に画素ごとのメッセージを配置することで、エネルギー集合をモデル化(生成)する。
次に、メッセージ生成・伝搬部13は、下記の式(7)を用いて、エネルギー集合内における隣接画素間で、メッセージを生成して伝搬することで、画素ごとのメッセージを更新する。まず、メッセージ生成・伝搬部13は、図5,図6に示すように、画素sにおいて、距離候補fs(0〜N−1)のメッセージms(0)〜ms(N−1)を生成して、画素sから画素pに伝搬させる。次に、メッセージ生成・伝搬部13は、画素pにおいて、距離候補fp(0〜N−1)のメッセージmp→q(0)〜mp→q(N−1)を生成して、画素pから画素qに伝搬させる。
【0056】
【数7】
【0057】
このとき、メッセージ生成・伝搬部13は、式(7)に示すように、画素p,qの色情報の差分絶対値と色情報閾値Tcとを比較して、メッセージを伝搬するか又は制限するかを判定する。具体的には、メッセージ生成・伝搬部13は、画素p,qの色情報の差分絶対値が色情報閾値Tc以下の場合、画素pから画素qへのメッセージを伝搬させる。一方、メッセージ生成・伝搬部13は、色情報の差分絶対値が色情報閾値Tcを超える場合、画素pから画素qへメッセージを伝搬させない。
【0058】
図7,図8を参照して、メッセージの伝搬の制限について詳細に説明する(適宜図3参照)。この図7,図8では、図1と同様のエネルギー集合において、枠(白塗四角形)が明るい色の画素であり、ハッチングされた枠が暗い色の画素である。ここでは、明るい色の画素と暗い色の画素との色情報の差分絶対値が色情報閾値Tcを超えることとして説明する。
【0059】
例えば、被写体と背景との境界といったように、隣接画素間で色が大きく異なる場合を考える。図7(a)に示すように、画素s,pで色が大きく異なる場合、距離情報推定装置1は、前記した式(5)よりメッセージ伝搬元の重み係数λs,pを0として、これら2画素s、pでのメッセージ伝搬を制限する。また、図7(b)に示すように、画素p,qで色が大きく異なる場合、距離情報推定装置1は、前記した式(6)よりメッセージ伝搬先の重み係数λp,qを0として、これら2画素p、qでのメッセージ伝搬を制限する。
【0060】
一方、図8(a)に示すように画素s,p,qの全てが明るい色、又は、図8(b)に示すように画素s,p,qの全てが暗い色の場合、距離情報推定装置1は、前記した式(5)及び式(6)より重み係数λs,p,λp,qを1として、画素s,p,q間でメッセージを伝搬させる。
【0061】
つまり、距離情報推定装置1では、メッセージ伝搬元の重み係数λs,pの値によって、画素sから画素pへのメッセージ伝搬を制御し、メッセージ伝搬先の重み係数λp,qの値によって、画素pから画素qへのメッセージ伝搬を制御する。
【0062】
評価関数計算部14は、メッセージ伝搬制限判定部12で計算された重み係数λp,qが入力さる。そして、評価関数計算部14は、下記の式(8)を用いて、メッセージ生成・伝搬部13で更新されたメッセージを示す評価関数bqを計算するものである。そして、評価関数計算部14は、計算した評価関数bqを距離推定部15に出力する。
【0063】
【数8】
【0064】
距離推定部(距離指標推定部)15は、評価関数計算部14で計算された評価関数bqが入力される。そして、距離推定部15は、距離候補fqのうち、この評価関数bqが最小となる距離候補fqを、距離情報として推定するものである。すなわち、距離推定部15は、前記した式(8)の評価関数bqが最小となる距離候補fqを、基準画像の画素qの最終的な距離情報として推定する。
【0065】
また、距離推定部15は、ノイズ除去フィルタ(ノイズ除去手段)15aを備える。
このノイズ除去フィルタ15aは、距離推定部15が推定した距離情報(距離画像)にメディアンフィルタ等のノイズ除去処理を施すものである。このようにして、ノイズの影響が少ない滑らかな距離情報を推定することができる。
【0066】
ここでは、距離推定部15は、距離情報として、画素の距離が手前側である程、その画素の輝度が高く、画素の距離が奥側である程、その画素の輝度が低くなる距離画像を生成して出力する。この距離画像は、例えば、被写体の3次元立体モデルの生成に利用できる。
【0067】
[距離情報推定装置の動作]
図9を参照し、距離情報推定装置1の動作について説明する(適宜図3参照)。
距離情報推定装置1は、誤差関数計算部10によって、距離候補ごとに、誤差関数Dpを計算する。つまり、誤差関数計算部10は、前記した式(1)を用いて、距離候補ごとの誤差関数Dpを計算する(ステップS10)。
【0068】
距離情報推定装置1は、スムーズ関数計算部11によって、距離候補ごとに、スムーズ関数Vを計算する。つまり、スムーズ関数計算部11は、前記した式(2)を用いて、スムーズ関数Vを計算する(ステップS11)。
【0069】
距離情報推定装置1は、メッセージ伝搬制限判定部12によって、隣接画素間の色情報の差分絶対値が色情報閾値Tc以下であるか否かによって、隣接画素間でメッセージを伝搬できるか否かを判定する。具体的には、メッセージ伝搬制限判定部12は、前記した式(5)に示すように、画素s,pの色情報の差分絶対値と色情報閾値Tcとを比較することにより、画素s,p間におけるメッセージ伝搬の判定結果として、メッセージ伝搬元の重み係数λs,pを計算する。さらに、メッセージ伝搬制限判定部12は、前記した式(6)に示すように、画素p,qの色情報の差分絶対値と色情報閾値Tcとを比較することにより、画素p,q間におけるメッセージ伝搬の判定結果として、メッセージ伝搬先の重み係数λp,qを計算する(ステップS12)。
【0070】
距離情報推定装置1は、メッセージ生成・伝搬部13によって、図1と同様にエネルギー集合を生成する。そして、メッセージ生成・伝搬部13は、前記した式(7)を用いて、エネルギー集合内における隣接画素間で、メッセージを生成して伝搬する(ステップS13)。
【0071】
距離情報推定装置1は、評価関数計算部14によって、前記した式(4)を用いて、距離候補ごとに評価関数bqを計算する(ステップS14)。そして、距離情報推定装置1は、距離推定部15によって、距離候補のうち、この評価関数bqが最小となる距離を、距離情報として推定する(ステップS15)。
【0072】
以上のように、本発明の第1実施形態に係る距離情報推定装置1は、隣接画素間の色情報の差分絶対値が大きいときにメッセージの伝搬を制限する。これによって、距離情報推定装置1は、被写体の膨張を抑制してその輪郭を鮮鋭化し、精度が高い距離情報を生成することができる。
【0073】
(第2実施形態)
[距離情報推定装置の構成]
図10を参照し、本発明の第2実施形態に係る距離情報推定装置1Bの構成について、第1実施形態と異なる点を説明する。
距離情報推定装置1Bは、この距離情報の信頼度を示す評価値を計算すると共に、この評価値によって、距離情報の推定エラーが生じたか否かを判定する点が、第1実施形態と異なる。
【0074】
本実施形態では、距離情報推定装置1Bは、評価値として、オクルージョンに起因する推定エラーを判定するための評価値Oq(オクルージョン評価値、以後「評価値O」)と、テクスチャに起因する推定エラーを判定するための評価値Kq(テクスチャ評価値、以後「評価値K」)とを計算する。そして、距離情報推定装置1Bは、評価値O及び評価値Kを用いて、距離情報の推定エラーとして、オクルージョンに起因する推定エラーと、テクスチャに起因する推定エラーとを判定することとする。
【0075】
ここで、テクスチャに起因する推定エラーとは、例えば、ステレオ画像でのテクスチャがない領域(テクスチャレス領域)において、マッチング精度が低下して、距離情報の推定エラーが生じることである。
【0076】
図10に示すように、距離情報推定装置1Bは、誤差関数計算部10Bと、スムーズ関数計算部11Bと、メッセージ伝搬制限判定部12と、メッセージ生成・伝搬部13と、評価関数計算部14と、距離推定部15と、評価値計算部16と、オクルージョン領域判定部(オクルージョン推定エラー判定部)18と、無テクスチャ領域判定部(テクスチャ推定エラー判定部)20とを備える。
【0077】
誤差関数計算部10Bは、ステレオ画像が入力されると共に、距離候補ごとに、予め設定された誤差関数閾値Tdata以下となるように、誤差関数Dpを計算するものである。この誤差関数計算部10Bは、下記の式(9)及び式(10)を用いて、画素及び距離候補ごとの誤差関数Dpを計算する。
ここで、ifは、後段の条件式を満たす場合、前段に記述した値を出力する関数である。
【0078】
【数9】
【0079】
【数10】
【0080】
このとき、誤差関数計算部10Bは、式(10)に示すように、誤差関数Dpの値が誤差関数閾値Tdataを超えないように、トランケーションを行っている。具体的には、誤差関数計算部10Bは、誤差関数Dpの値が誤差関数閾値Tdataを超える場合、誤差関数閾値Tdataを誤差関数Dpの値としてメッセージ生成・伝搬部13に出力する。その一方、誤差関数計算部10Bは、誤差関数Dpの値が誤差関数閾値Tdata以下の場合、メッセージ生成・伝搬部13に誤差関数Dpの値をそのまま出力する。
【0081】
スムーズ関数計算部11Bは、距離候補ごとに、予め設定されたスムーズ関数閾値Tsmooth以下となるように、スムーズ関数Vを計算するものである。このスムーズ関数計算部11Bは、下記の式(11)を用いて、画素及び距離候補ごとにスムーズ関数Vを計算する。
【0082】
【数11】
【0083】
このとき、スムーズ関数計算部11Bは、式(11)に示すように、スムーズ関数Vの値がスムーズ関数閾値Tsmoothを超えないように、トランケーションを行っている。具体的には、スムーズ関数計算部11Bは、スムーズ関数Vの値がスムーズ関数閾値Tsmoothを超える場合、スムーズ関数閾値Tsmoothをスムーズ関数Vの値としてメッセージ生成・伝搬部13に出力する。その一方、スムーズ関数計算部11Bは、スムーズ関数Vの値がスムーズ関数閾値Tsmooth以下の場合、メッセージ生成・伝搬部13にスムーズ関数Vの値をそのまま出力する。
【0084】
メッセージ伝搬制限判定部12と、メッセージ生成・伝搬部13と、評価関数計算部14と、距離推定部15とは、図3の各手段と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0085】
評価値計算部16は、評価関数bqにおけるエネルギー分布の形状により、評価値を求めるものであり、評価値O計算部(オクルージョン評価値計算部)17と、評価値K計算部(テクスチャ評価値計算部)19とを備える。
【0086】
評価値O計算部(オクルージョン評価値計算部)17は、評価関数計算部14で計算された評価関数bqが入力される。この評価関数bqは、基準画像の各画素について、距離候補fqごとのメッセージを示す情報、つまり、距離候補fqとメッセージとを対応付けたエネルギー分布(メッセージ分布)と言える。
【0087】
具体的には、評価値O計算部17は、メッセージが最も高くなる最大値とメッセージが最も低くなる最小値との差分をこの最大値で除算することで、評価値Oを計算するものである。具体的には、評価値O計算部17は、下記の式(12)を用いて評価値Oを計算して、オクルージョン領域判定部18に出力する。
【0088】
【数12】
【0089】
ここで、maxは、最大値を返す関数である。従って、max(bq(fq))は、画素qにおけるメッセージの最大値を示す。また、min(bq(fq))は、画素qにおけるメッセージの最小値を示す。
【0090】
オクルージョン領域判定部(オクルージョン推定エラー判定部)18は、評価値O計算部17から評価値Oが入力される。そして、オクルージョン領域判定部18は、この評価値Oが予め設定されたオクルージョン閾値To以下であるか否かを判定し、評価値Oがオクルージョン閾値To以下の場合、オクルージョンに起因する推定エラーが生じたと判定するものである。
【0091】
ここで、オクルージョンに起因する推定エラーが生じていない画素では、図11(a)のエネルギー分布のように、メッセージの最大値maxと最小値minとの差分ΔEOが、大きくなる。一方、オクルージョンに起因する推定エラーが生じた画素では、図11(b)のエネルギー分布のように、差分ΔEOが図11(a)よりも小さくなる。
【0092】
また、図11の差分ΔEOは、式(12)の分子であることから、評価値Oに比例する。つまり、オクルージョン領域判定部18は、評価値Oが、オクルージョンに起因する推定エラーが生じた画素で、オクルージョンに起因する推定エラーが生じていない画素よりも小さくなる性質を利用して、オクルージョンに起因する推定エラーを判定している。そして、オクルージョン領域判定部18は、評価値Oがオクルージョン閾値To以下と判定された画素領域をオクルージョン領域として出力する。このオクルージョン領域は、例えば、被写体の3次元立体モデルを生成する際、オクルージョンに起因する推定エラーが生じた領域を把握するために利用できる。
なお、オクルージョン領域判定部18は、評価値Oが閾値Toを超える場合、オクルージョンに起因する推定エラーが生じていないと判定することは言うまでもない。
【0093】
評価値K計算部(テクスチャ評価値計算部)19は、評価関数計算部14で計算された評価関数bqが入力される。そして、評価値K計算部19は、基準画像の各画素について、この評価関数bqにおけるエネルギー分布の尖度を評価値Kとして計算するものである。
【0094】
具体的には、評価値K計算部19は、下記の式(9)に示すように、距離候補fqの個数nf(例えば、0〜N−1までの合計N個)と、メッセージと、メッセージの平均値bq ̄と,メッセージの標準偏差σ(bq)とに基づいて、評価値Kを計算する。そして、評価値K計算部19は、計算した評価値Kを、無テクスチャ領域判定部20に出力する。
【0095】
【数13】
【0096】
無テクスチャ領域判定部(テクスチャ推定エラー判定部)20は、評価値K計算部19から評価値Kが入力される。そして、無テクスチャ領域判定部20は、この評価値Kが予め設定されたテクスチャ閾値TK以下であるか否かを判定し、評価値Kがテクスチャ閾値TK以下の場合、テクスチャに起因する推定エラーが生じたと判定するものである。
【0097】
ここで、テクスチャに起因する推定エラーが生じていない画素では、図12(a)に示すように、エネルギー分布が尖っており、その尖度を示す評価値Kが大きくなる。一方、テクスチャに起因する推定エラーが生じた画素では、図12(b)に示すように、エネルギー分布が尖っておらず、評価値Kが図12(a)よりも小さくなる。
【0098】
この尖度(Kurtosis)は、エネルギー分布の尖り具合を示すものであり、正規分布と比べて、以下のような特徴がある。すなわち、尖度が大きくなるほど、鋭いピークと長い尾とを有するエネルギー分布になる(図12(a)参照)。その一方、尖度が小さくなるほど、より丸みがかったピークと短い尾とを有するエネルギー分布になる(図12(b)参照)。
なお、尾とは、図12において、トランケーションによって形成される、メッセージの上限となる平坦部である。
【0099】
つまり、無テクスチャ領域判定部20は、評価値Kが、テクスチャに起因する推定エラーが生じた画素で、テクスチャに起因する推定エラーが生じていない画素よりも小さくなる性質を利用して、テクスチャに起因する推定エラーを判定している。そして、無テクスチャ領域判定部20は、評価値Kがテクスチャ閾値TK以下と判定された画素領域を無テクスチャ領域として出力する。このオクルージョン領域は、例えば、被写体の3次元立体モデルを生成する際、テクスチャに起因する推定エラーが生じた領域を把握するために利用できる。
なお、無テクスチャ領域判定部20は、評価値Kがテクスチャ閾値TKを超える場合、テクスチャに起因する推定エラーが生じていないと判定することは言うまでもない。
【0100】
[距離情報推定装置の動作]
図13を参照し、距離情報推定装置1Bの動作について説明する(適宜図10参照)。
距離情報推定装置1Bは、誤差関数計算部10Bによって、距離候補ごとに、誤差関数閾値Tdata以下となるように誤差関数Dpを計算する。つまり、誤差関数計算部10Bは、前記した式(9)及び式(10)を用いて、誤差関数Dpを計算して、トランケーションを行う(ステップS20)。
【0101】
距離情報推定装置1Bは、スムーズ関数計算部11Bによって、距離候補ごとに、スムーズ関数閾値Tsmooth以下となるように、スムーズ関数Vを計算する。つまり、スムーズ関数計算部11Bは、前記した式(11)を用いて、スムーズ関数Vを計算して、トランケーションを行う(ステップS21)。
【0102】
ステップS22〜S25の処理は、図9のステップS12〜S15と同様のため、説明を省略する。
【0103】
距離情報推定装置1Bは、評価値O計算部17によって、評価値Oを計算する。つまり、評価値O計算部17は、前記した式(12)に示すように、メッセージの最大値とメッセージの最小値との差分をこの最大値で除算することで、評価値Oを計算する(ステップS26)。
【0104】
距離情報推定装置1Bは、オクルージョン領域判定部18によって、評価値Oがオクルージョン閾値To以下であるか否かを判定し、評価値Oがオクルージョン閾値To以下の場合、オクルージョンに起因する推定エラーが生じたと判定する。(ステップS27)。
【0105】
距離情報推定装置1Bは、評価値K計算部19によって、エネルギー分布の尖度である評価値Kを計算する。つまり、評価値K計算部19は、前記した式(13)に示すように、距離候補の個数nfと、メッセージと、メッセージの平均値bq ̄と、メッセージの標準偏差σ(bq)とに基づいて、評価値Kを計算する(ステップS28)。
【0106】
距離情報推定装置1Bは、無テクスチャ領域判定部20によって、評価値Kがテクスチャ閾値TK以下であるか否かを判定し、評価値Kがテクスチャ閾値TK以下の場合、テクスチャに起因する推定エラーが生じたと判定する(ステップS29)。
【0107】
以上のように、本発明の第2実施形態に係る距離情報推定装置1Bは、メッセージの最小値だけでなくメッセージの最大値も考慮して評価値Oを計算すると共に、エネルギー分布の尖度である評価値Kを計算する。そして、距離情報推定装置1Bは、オクルージョンやテクスチャに起因する推定エラーが生じた画素で、評価値O及び評価値Kが小さくなる性質を利用して、これら推定エラーを判定する。これによって、距離情報推定装置1Bは、オクルージョン及びテクスチャに起因する推定エラーの判定精度を向上させて、これら推定エラーが生じた領域を正確に提示することができる。
【0108】
さらに、距離情報推定装置1Bは、図11,図12に示すように、トランケーションによって、メッセージに上限が設けられるため、評価関数bqのばらつきが一定範囲に収まって、距離情報の精度を向上させることができる。
【0109】
(第3実施形態)
[距離情報推定装置の構成]
図14を参照し、本発明の第3実施形態に係る距離情報推定装置1Cの構成について、第2実施形態と異なる点を説明する。この距離情報推定装置1Cは、オクルージョン及びテクスチャに起因する推定エラーを抑制する点が、第2実施形態と異なる。このため、距離情報推定装置1Cは、テクスチャ推定エラー抑制部21をさらに備える。
【0110】
図14に示すように、距離情報推定装置1Cは、左カメラCL及び中央カメラCCの撮影画像である左ステレオ画像と、右カメラCR及び中央カメラCCの撮影画像である右ステレオ画像とが入力される。
【0111】
この中央カメラCCは、左カメラCL及び右カメラCRと同様、静止画や動画を撮影可能な撮影カメラである。また、左カメラCL及び右カメラCRは、それぞれ、中央カメラCCから一定間隔離して左右に配置される。ここでは、中央カメラCCを基準カメラとし、中央カメラCCの撮影画像を基準画像とし、左カメラCL及び右カメラCRの撮影画像を参照画像とする。
【0112】
誤差関数計算部10Bと、スムーズ関数計算部11Bと、メッセージ生成・伝搬部13と、評価関数計算部14と、距離推定部15とは、左ステレオ画像及び右ステレオ画像それぞれの処理を行う以外、図10の各手段と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0113】
ここで、後記するオクルージョンに起因する推定エラーの抑制には、左ステレオ画像及び右ステレオ画像の両方(以下、「両ステレオ画像」)から求めた評価関数bqが必要になる。このため、評価関数計算部14は、両ステレオ画像から求めた評価関数bqを評価値O計算部17Cに出力する。さらに、距離推定部15は、両ステレオ画像から求めた距離情報(距離画像)を、評価値O計算部17Cに出力する。
【0114】
一方、後記するテクスチャに起因する推定エラーの抑制には、左ステレオ画像及び右ステレオ画像の何れか一方から求めた評価関数bqがあればよい。従って、評価関数計算部14は、左ステレオ画像から求めた評価関数bqを、評価値K計算部19に出力する。
【0115】
評価値O計算部17Cは、両ステレオ画像から評価値Oを計算して、オクルージョン領域判定部18に出力する。また、評価値O計算部17Cは、両ステレオ画像から計算した評価値Oと、両ステレオ画像の距離情報とを用いて、オクルージョンに起因する推定エラーを抑制する。
なお、評価値Oの計算は、図10の評価値O計算部17と同様のため、説明を省略する。
【0116】
具体的には、評価値O計算部17Cは、基準画像の各画素について、左ステレオ画像から計算した評価値Oと、右ステレオ画像から計算した評価値Oとを比較する。この比較結果に基づいて、評価値O計算部17Cは、両ステレオ画像の距離情報のうち、評価値Oが大きい側の距離情報を、その画素の距離情報として、テクスチャ推定エラー抑制部21に出力する。すなわち、評価値O計算部17Cは、オクルージョンに起因する推定エラーが生じた画素で評価値Oが小さくなることを利用して、距離推定部15で生成された両ステレオ画像の距離情報を、この推定エラーを抑制した1つの距離情報に統合する。
【0117】
オクルージョン領域判定部18は、図3と同様、両ステレオ画像のオクルージョン領域を出力するため、詳細な説明を省略する。
なお、このオクルージョン領域は、オクルージョンに起因する推定エラーの抑制に必要ではなく、参考情報として提示される。
【0118】
評価値K計算部19は、図3と同様、左ステレオ画像についての評価値Kを計算するため、詳細な説明を省略する。
無テクスチャ領域判定部20は、図3と同様、左ステレオ画像についての無テクスチャ領域を生成して、テクスチャ推定エラー抑制部21に出力する。
【0119】
テクスチャ推定エラー抑制部21は、評価値O計算部17Cから距離情報が入力され、無テクスチャ領域判定部20から無テクスチャ領域が入力される。そして、テクスチャ推定エラー抑制部21は、この無テクスチャ領域を用いて、この距離情報から、テクスチャに起因する推定エラーを抑制するものである。
【0120】
図15,図16を参照して、テクスチャに起因する推定エラーの抑制について説明する(適宜図10参照)。
説明を簡易にするため、図15に示すように、土俵Aの上で二人の被写体(力士)O1,O2が取組を行っている例で説明する。この場合、図14の中央カメラCCは、土俵Aの正面中央に位置し、取組を行っている被写体O1,O2の側面方向(図15の矢印方向)から基準画像Pを撮影したこととする。
【0121】
なお、図15では、基準画像Pに含まれない土俵Aと被写体O1,O2との一部を破線で図示した。また、図15では、基準画像Pのうち、土俵Aの奥側地面となる背景Bの領域が無テクスチャ領域TXであり、ハッチングで図示した。この例では、テクスチャ推定エラー抑制部21は、図15のハッチング部分に対して、テクスチャに起因する推定エラーの抑制処理を行うことになる。
【0122】
ここで、中央カメラCCと、土俵Aと、被写体O1,O2とを上側より見ると、これらの位置関係は、図16のようになる。図16では、土俵A及び被写体O1,O2を破線で図示すると共に、後記する距離Dを一転鎖線で図示した。また、図15のハッチング部分(無テクスチャ領域TX)は、球表面の一部を切り取った曲面形状になる(図16の吹き出し)。
【0123】
まず、テクスチャ推定エラー抑制部21は、左カメラCLと、中央カメラCCと、右カメラCRとの光軸LAが交わる光軸交点CEを、カメラキャリブレーションにより計算する。ここで、テクスチャ推定エラー抑制部21は、全てのカメラから光軸交点CEを求める必要がなく、基準画像を撮影する中央カメラCCが含まれていればよい。つまり、テクスチャ推定エラー抑制部21は、中央カメラCCと左カメラCLとの組、又は、中央カメラCCと右カメラCRとの一方の組から、光軸交点CEを求めてもよい。
【0124】
次に、テクスチャ推定エラー抑制部21は、予め設定された半径rの仮想球VCを、光軸交点CEを中心に生成する。ここで、テクスチャ推定エラー抑制部21は、全ての被写体(例えば、土俵A、被写体O1,O2)が仮想球VCに含まれるように、半径rが予め設定されている。そして、テクスチャ推定エラー抑制部21は、中央カメラCCから仮想球VCの奥側表面までの距離Dを計算し、この距離Dを、無テクスチャ領域TX内の各画素の距離情報として割り当てる。
【0125】
すなわち、無テクスチャ領域TX内の各画素の距離情報は、下記の計算式を用いて割り当てることができる。まず、テクスチャ推定エラー抑制部21は、下記の(14)及び式(15)の連立方程式により、仮想球VCと中央カメラCCの光軸LAとの交点(X,Y,Z)を計算する。
【0126】
【数14】
【0127】
【数15】
【0128】
前記した式(14)は、仮想球VCを表した方程式である。ここで、a,b,cが仮想球VCの中心の世界座標(光軸交点CEの世界座標)であり、rが仮想球VCの半径である。
前記した式(15)は、中央カメラCCの光学主点と無テクスチャ領域TX内の各画素とを通過する直線を表した方程式である。ここで、e,g,iが無テクスチャ領域TX内の各画の世界座標と光学主点の世界座標とにより計算される傾き(既知)であり、f,h,jが光学主点の世界座標(既知)である。
【0129】
そして、テクスチャ推定エラー抑制部21は、下記の(16)により、中央カメラCCから仮想球VCの奥側表面までの距離Dを計算する。ここで、zは仮想球VCの奥側表面までの距離Dであり、i,jは基準画像の座標(既知)であり、Aはカメラキャリブレーションにより計算される内部パラメータ(既知)であり、Rはカメラキャリブレーションにより計算される回転行列(既知)であり、Uはカメラキャリブレーションにより計算される並進行列(既知)である。
【0130】
【数16】
【0131】
[距離情報推定装置の動作]
図17を参照し、距離情報推定装置1Cの動作について説明する(適宜図14参照)。
ステップS30〜S35の処理は、図13のステップS20〜S25と同様のため、説明を省略する。
【0132】
距離情報推定装置1Cは、評価値O計算部17Cによって、無テクスチャ領域及び距離情報を用いて、オクルージョンに起因する推定エラーを抑制する。つまり、評価値O計算部17Cは、両ステレオ画像から評価値Oを計算し、これら評価値Oを比較して、評価値Oが大きい側のステレオ画像から生成した距離情報を、基準画像での各画素の距離情報として出力する(ステップS36)。
【0133】
ステップS37〜S39の処理は、図13のステップS27〜S29と同様のため、説明を省略する。
【0134】
距離情報推定装置1Cは、テクスチャ推定エラー抑制部21によって、無テクスチャ領域を用いて、距離情報から、テクスチャに起因する推定エラーを抑制する。つまり、テクスチャ推定エラー抑制部21は、左カメラCLと、中央カメラCCと、右カメラCRとの光軸交点CEをカメラキャリブレーションにより計算する。そして、テクスチャ推定エラー抑制部21は、半径rの仮想球VCを、光軸交点CEを中心に生成する。さらに、テクスチャ推定エラー抑制部21は、中央カメラCCから仮想球VCの奥側表面までの距離Dを計算して、無テクスチャ領域TX内の各画素の距離情報として割り当てる(ステップS40)。
【0135】
以上のように、本発明の第3実施形態に係る距離情報推定装置1Cは、オクルージョン及びテクスチャに起因する推定エラーを抑制して、精度が高い距離情報を生成することができる。この距離情報を用いれば、例えば、奥行き感が高い、インテグラルフォトグラフィ(IP)方式の立体映像を生成することができる。
【0136】
なお、各実施形態では、誤差関数とスムーズ関数とで規定される確率に関するエネルギーを最小化する手法の一例として信頼度伝搬法を説明したが、本発明は、これに限定されない。本発明では、この手法として、例えば、ビタビアルゴリズムを用いることもできる。
【0137】
なお、各実施形態では、距離指標情報として距離情報を推定することとして説明したが、本発明は、これに限定されない。つまり、本発明は、前記した距離候補を視差候補に置き換えれば、視差情報を推定する視差情報推定装置を実現することができる。
【0138】
なお、各実施形態では、評価値として評価値K,Oを計算することとして説明したが、本発明は、これに限定されない。
また、各実施形態では、評価値K,Oの両方を計算することとして説明したが、本発明は、評価値K,Oの何れか一方のみを計算してもよい。この場合、本発明は、テクスチャ又はオクルージョンに起因する推定エラーの何れか一方だけを抑制してもよい。
【実施例】
【0139】
以下、本発明の実施例として、膨張を抑制する実験の結果について説明する。
本実施例では、図3の距離情報推定装置1を用いて実験を行った。図18(a)は、この実験で使用した基準画像である。また、図18(b)は、比較対象として、従来の信頼度伝搬法で生成した距離画像である。そして、図18(c)は、距離情報推定装置1が生成した距離画像である。
【0140】
図18(b)及び図18(c)を対比すると、図18(c)の距離画像は、被写体の輪郭の膨張が抑制されて、被写体が鮮明化されている。特に、丸部分において、被写体の輪郭が著しく鮮明化されている。
【0141】
図19(a)は、この実験で使用した別の基準画像である。また、図19(b)は、本実施例の比較対象として、従来の信頼度伝搬法で生成した距離画像である。そして、図19(c)は、距離情報推定装置1が生成した距離画像である。
【0142】
図19(b)の距離画像では、被写体(力士及び審判)がひとまわり膨張している。一方、図19(c)の距離画像では、被写体の膨張が抑制され、基準画像と同様、正確な被写体の輪郭が表現されている。
【0143】
さらに、色情報閾値Tc及び重み係数λdataの値を変更して実験を行った。図20(a)は、この実験で使用した基準画像である。また、図20(b)は、色情報閾値Tc=32、重み係数λdata=0.07に設定したときの距離画像である。さらに、図20(c)は、色情報閾値Tc=20、重み係数λdata=0.03に設定したときの距離画像である。
【0144】
図20(b)及び図20(c)を対比すると、特に、丸部分において、被写体の輪郭が著しく鮮明化されていることがわかる。以上より、重み係数λdata及び色情報閾値Tcの値をより小さくする、つまり、スムーズ関数の影響を大きくし、メッセージ伝搬を強く制限することで、距離画像をより滑らかにすると共に、被写体の輪郭を鮮鋭化して、距離推定の精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0145】
1,1B,1C 距離情報推定装置
10,10B 誤差関数計算部
11,11B スムーズ関数計算部
12 メッセージ伝搬制限判定部(エネルギー伝搬判定部)
13 メッセージ生成・伝搬部(エネルギー伝搬部)
14 評価関数計算部
15 距離推定部(距離指標推定部)
15a ノイズ除去フィルタ(ノイズ除去手段)
16 評価値計算部
17,17C 評価値O計算部(オクルージョン評価値計算部)
18 オクルージョン領域判定部(オクルージョン推定エラー判定部)
19 評価値K計算部(テクスチャ評価値計算部)
20 無テクスチャ領域判定部(テクスチャ推定エラー判定部)
21 テクスチャ推定エラー抑制部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステレオ画像間の誤差関数と奥行き方向への距離又は視差である距離指標の連続性を示すスムーズ関数とで規定される確率に関するエネルギーを最小化する手法により、前記ステレオ画像の一方である基準画像の画素ごとの前記距離指標を示す距離指標情報を推定する距離指標情報推定装置であって、
前記ステレオ画像が入力されると共に、予め設定された距離指標候補ごとに、入力された前記ステレオ画像の類似度である前記誤差関数を計算する誤差関数計算部と、
前記距離指標候補ごとに、マルコフランダムフィールドにおける隣接画素間の前記距離指標候補の差分絶対値である前記スムーズ関数を計算するスムーズ関数計算部と、
前記基準画像における隣接画素間の色情報の差分絶対値が予め設定された色情報閾値以下であるか否かによって、前記エネルギーを伝搬できるか否かを判定するエネルギー伝搬判定部と、
前記誤差関数計算部で計算した誤差関数と前記スムーズ関数計算部で計算したスムーズ関数とを含む前記エネルギーが集合したエネルギー集合を生成し、当該エネルギー集合内で前記エネルギーを伝搬できると判定された隣接画素間で、所定の漸化式によって前記エネルギーを生成して伝搬することで、前記距離指標候補及び前記画素ごとのエネルギーを更新するエネルギー伝搬部と、
前記エネルギー伝搬部で更新されたエネルギーを示す評価関数を計算する評価関数計算部と、
前記距離指標候補のうち、前記評価関数計算部で計算された評価関数が最小となる距離指標を、前記距離指標情報として推定する距離指標推定部と、
を備えることを特徴とする距離指標情報推定装置。
【請求項2】
前記エネルギー伝搬判定部は、エネルギー伝搬元の画素と処理対象画素との色情報の差分絶対値が前記色情報閾値以下であるか否かによって、前記エネルギー伝搬元の画素と当該処理対象画素との間で前記エネルギーを伝搬できるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の距離指標情報推定装置。
【請求項3】
前記エネルギー伝搬判定部は、エネルギー伝搬先の画素と処理対象画素との色情報の差分絶対値が前記色情報閾値以下であるか否かによって、前記エネルギー伝搬先の画素と当該処理対象画素との間で前記エネルギーを伝搬できるか否かを判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の距離指標情報推定装置。
【請求項4】
前記誤差関数計算部は、前記基準画像における処理対象画素と、前記ステレオ画像の他方である参照画像で前記処理対象画素に対応する対応画素との色情報の差分絶対値を求め、当該差分絶対値を予め設定した原色数で除算して重み付ける前記誤差関数を計算することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の距離指標情報推定装置。
【請求項5】
前記エネルギー伝搬判定部は、前記誤差関数の重み付けが小さいほど、前記色情報閾値が小さな値で予め設定されたことを特徴とする請求項4に記載の距離指標情報推定装置。
【請求項6】
前記距離指標推定部は、前記距離指標情報にノイズ除去処理を施すノイズ除去手段、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の距離指標情報推定装置。
【請求項7】
ステレオ画像間の誤差関数と奥行き方向への距離又は視差である距離指標の連続性を示すスムーズ関数とで規定される確率に関するエネルギーを最小化する手法により、前記ステレオ画像の一方である基準画像の画素ごとの前記距離指標を示す距離指標情報を推定するために、コンピュータを、
前記ステレオ画像が入力されると共に、予め設定された距離指標候補ごとに、入力された前記ステレオ画像の類似度である前記誤差関数を計算する誤差関数計算部、
前記距離指標候補ごとに、マルコフランダムフィールドにおける隣接画素間での前記距離指標候補の差分絶対値である前記スムーズ関数を計算するスムーズ関数計算部、
前記基準画像における隣接画素間の色情報の差分絶対値が予め設定された色情報閾値以下であるか否かによって、前記エネルギーを伝搬できるか否かを判定するエネルギー伝搬判定部、
前記誤差関数計算部で計算した誤差関数と前記スムーズ関数計算部で計算したスムーズ関数とを含む前記エネルギーが集合したエネルギー集合を生成し、当該エネルギー集合内で前記エネルギーを伝搬できると判定された隣接画素間で、所定の漸化式によって前記エネルギーを生成して伝搬することで、前記距離指標候補及び前記画素ごとのエネルギーを更新するエネルギー伝搬部、
前記エネルギー伝搬部で更新されたエネルギーを示す評価関数を計算する評価関数計算部、
前記距離指標候補のうち、前記評価関数計算部で計算された評価関数が最小となる距離指標を、前記距離指標情報として推定する距離指標推定部、
として機能させるための距離指標情報推定プログラム。
【請求項1】
ステレオ画像間の誤差関数と奥行き方向への距離又は視差である距離指標の連続性を示すスムーズ関数とで規定される確率に関するエネルギーを最小化する手法により、前記ステレオ画像の一方である基準画像の画素ごとの前記距離指標を示す距離指標情報を推定する距離指標情報推定装置であって、
前記ステレオ画像が入力されると共に、予め設定された距離指標候補ごとに、入力された前記ステレオ画像の類似度である前記誤差関数を計算する誤差関数計算部と、
前記距離指標候補ごとに、マルコフランダムフィールドにおける隣接画素間の前記距離指標候補の差分絶対値である前記スムーズ関数を計算するスムーズ関数計算部と、
前記基準画像における隣接画素間の色情報の差分絶対値が予め設定された色情報閾値以下であるか否かによって、前記エネルギーを伝搬できるか否かを判定するエネルギー伝搬判定部と、
前記誤差関数計算部で計算した誤差関数と前記スムーズ関数計算部で計算したスムーズ関数とを含む前記エネルギーが集合したエネルギー集合を生成し、当該エネルギー集合内で前記エネルギーを伝搬できると判定された隣接画素間で、所定の漸化式によって前記エネルギーを生成して伝搬することで、前記距離指標候補及び前記画素ごとのエネルギーを更新するエネルギー伝搬部と、
前記エネルギー伝搬部で更新されたエネルギーを示す評価関数を計算する評価関数計算部と、
前記距離指標候補のうち、前記評価関数計算部で計算された評価関数が最小となる距離指標を、前記距離指標情報として推定する距離指標推定部と、
を備えることを特徴とする距離指標情報推定装置。
【請求項2】
前記エネルギー伝搬判定部は、エネルギー伝搬元の画素と処理対象画素との色情報の差分絶対値が前記色情報閾値以下であるか否かによって、前記エネルギー伝搬元の画素と当該処理対象画素との間で前記エネルギーを伝搬できるか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の距離指標情報推定装置。
【請求項3】
前記エネルギー伝搬判定部は、エネルギー伝搬先の画素と処理対象画素との色情報の差分絶対値が前記色情報閾値以下であるか否かによって、前記エネルギー伝搬先の画素と当該処理対象画素との間で前記エネルギーを伝搬できるか否かを判定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の距離指標情報推定装置。
【請求項4】
前記誤差関数計算部は、前記基準画像における処理対象画素と、前記ステレオ画像の他方である参照画像で前記処理対象画素に対応する対応画素との色情報の差分絶対値を求め、当該差分絶対値を予め設定した原色数で除算して重み付ける前記誤差関数を計算することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の距離指標情報推定装置。
【請求項5】
前記エネルギー伝搬判定部は、前記誤差関数の重み付けが小さいほど、前記色情報閾値が小さな値で予め設定されたことを特徴とする請求項4に記載の距離指標情報推定装置。
【請求項6】
前記距離指標推定部は、前記距離指標情報にノイズ除去処理を施すノイズ除去手段、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の距離指標情報推定装置。
【請求項7】
ステレオ画像間の誤差関数と奥行き方向への距離又は視差である距離指標の連続性を示すスムーズ関数とで規定される確率に関するエネルギーを最小化する手法により、前記ステレオ画像の一方である基準画像の画素ごとの前記距離指標を示す距離指標情報を推定するために、コンピュータを、
前記ステレオ画像が入力されると共に、予め設定された距離指標候補ごとに、入力された前記ステレオ画像の類似度である前記誤差関数を計算する誤差関数計算部、
前記距離指標候補ごとに、マルコフランダムフィールドにおける隣接画素間での前記距離指標候補の差分絶対値である前記スムーズ関数を計算するスムーズ関数計算部、
前記基準画像における隣接画素間の色情報の差分絶対値が予め設定された色情報閾値以下であるか否かによって、前記エネルギーを伝搬できるか否かを判定するエネルギー伝搬判定部、
前記誤差関数計算部で計算した誤差関数と前記スムーズ関数計算部で計算したスムーズ関数とを含む前記エネルギーが集合したエネルギー集合を生成し、当該エネルギー集合内で前記エネルギーを伝搬できると判定された隣接画素間で、所定の漸化式によって前記エネルギーを生成して伝搬することで、前記距離指標候補及び前記画素ごとのエネルギーを更新するエネルギー伝搬部、
前記エネルギー伝搬部で更新されたエネルギーを示す評価関数を計算する評価関数計算部、
前記距離指標候補のうち、前記評価関数計算部で計算された評価関数が最小となる距離指標を、前記距離指標情報として推定する距離指標推定部、
として機能させるための距離指標情報推定プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−76621(P2013−76621A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216239(P2011−216239)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)社団法人映像情報メディア学会から2011年8月1日に発行された刊行物「映像情報メディア学会2011年年次大会講演予稿集」において発表 (2)社団法人映像情報メディア学会が2011年8月24日〜26日に開催した「2011年映像情報メディア学会年次大会」において2011年8月24日に文書をもって発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、総務省、情報通信研究機構「革新的な三次元映像技術による超臨場感コミュニケーション技術の研究開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り (1)社団法人映像情報メディア学会から2011年8月1日に発行された刊行物「映像情報メディア学会2011年年次大会講演予稿集」において発表 (2)社団法人映像情報メディア学会が2011年8月24日〜26日に開催した「2011年映像情報メディア学会年次大会」において2011年8月24日に文書をもって発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、総務省、情報通信研究機構「革新的な三次元映像技術による超臨場感コミュニケーション技術の研究開発」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】
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