説明

身長測定装置

【課題】屋外で使用でき正確に測定可能な携帯型の身長測定装置を実現する。
【解決手段】携帯型の身長測定装置であって、装置から床面までの距離を測る第1の超音波センサと、被測定者の胴体までの距離を測る第2の超音波センサと、被測定者の頭部のほぼ先端までの距離を測る第3の超音波センサと、3つの測距情報を用いて被測定者の身長情報を出力する演算処理手段と、超音波センサからの信号を取り込むタイミングを規定するタイミング手段を具える。被測定者は、装置を手に持ち、測定中に鉛直方向に移動させ、第3の超音波センサが被測定者の頭部のほぼ先端を検出した時点において各超音波センサからの出力信号を取り込み、演算処理手段は取り込まれた3つの測距情報に基づいて被測定者の身長情報を得る。頭部のほぼ先端から頭頂までの距離の平均値が性別等に応じて装置に入力されており、この平均値が加算されてより正確な身長を測定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波センサを用いて被測定者の身長を測定する携帯型の身長測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭内において子供の身長を測定することは、子供の成長過程を把握する観点より重要である。従来から使用されている身長計は、柱状の物差しを利用した測定器であり、物差しの目盛りを読むことにより身長が計測されていた。しかし、身長計は、高さが約2m程度の目盛りを必要とし大型であるため、各家庭ごとに設置するには不向きである。この問題を解決する方法として、超音波センサを利用した身長計が既知である(例えば、特許文献1参照)。この既知の身長計では、床面から天井に向けて超音波を投射して床面から天井までの距離を測定し、その結果をメモリに記憶する。次に、身長計を被測定者の頭部上に載せ、その状態で天井に向けて超音波を投射して天井までの距離を測定する。そして、床面から天井までの距離から被測定者の頭部に載せた状態で測定した距離を減算して身長が測定されている。
【特許文献1】特開2004−101343公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の超音波センサを利用した身長計は、室内の天井を高さ方向の基準位置として測定するため、室内でしか測定できず、屋外では測定できない欠点があった。また、室内の天井が複雑な構造をしている場合、基準点が正確に測定できないため、測定誤差を生じやすい欠点もあった。特に、天井には梁等が設置されているため、基準となる高さ位置が不正確になり易く、正確性の点においても問題があった。
【0004】
本発明の目的は、室内だけでなく屋外でも測定できると共により正確に身長測定可能な携帯型の身長測定装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による身長測定装置は、超音波センサを用いて被測定者の身長を測定する携帯型の身長測定装置であって、当該測定装置から床面までの鉛直方向の距離を計測する第1の超音波センサと、当該測定装置から被測定者の胴体までの水平方向距離を計測する第2の超音波センサと、当該測定装置から被測定者の頭部のほぼ先端までの距離を計測する第3の超音波センサと、前記第1〜第3の超音波センサから出力される測距情報を用いて被測定者の身長情報を出力する演算処理手段と、前記第1〜第3の超音波センサからの出力信号を取り込むタイミングを規定するタイミング手段とを具え、被測定者は、当該測定装置を手により保持し、手を延ばした状態で測定を開始し、測定中に当該測定装置を鉛直方向に移動させ、前記タイミング手段は、前記第3の超音波センサが被測定者の頭部のほぼ先端を検出した時点において計測された第1〜第3の超音波センサからの出力信号を取り込み、前記演算処理手段は、取り込まれた3つの測距情報に基づいて被測定者の身長情報を出力することを特徴とする身長測定装置である。
【0006】
本発明による身長測定装置は3個の超音波センサを有し、測定装置から床面までの距離、被測定者の胴体までの距離、及び頭部のほぼ先端までの距離を同時に計測しているので、手で保持した状態で測定装置を上方から下方にゆっくり移動するだけで簡単な操作で身長測定を行うことができる。しかも、計測される距離情報は正確であり、一層高精度な身長測定を行うことができる。
【0007】
本発明による身長測定装置の好適実施例は、被測定者は、測定中に当該測定装置を手に保持して上方から下方に向けて移動させ、前記タイミング手段は、第3の超音波センサからの出力信号の電圧レベルと、前記第2の超音波センサからの出力信号の電圧レベルの差が所定の値になった時点において第1〜第3の超音波センサからの出力信号を取り込むことを特徴とする。
【0008】
本発明による身長測定装置の別の好適実施例は、第3の超音波センサは、第1及び第2の超音波センサから放出される超音波の指向角よりも狭い指向角の超音波を放出して、被測定者の頭部のほぼ先端の位置を検出すると共に当該測定装置から頭部のほぼ先端までの距離を計測することを特徴とする。頭部のほぼ先端までの距離を計測する超音波センサから指向角の狭い超音波を投射することにより、頭部のほぼ先端が検出される。
【0009】
本発明による身長測定装置の別の好適実施例では、計測された頭部のほぼ先端までの距離に補正を施し、頭頂部までの正確な距離を得る。補正値は、上記計測方法により検出される頭部のほぼ先端の部位から頭頂部までの、鉛直方向の距離に関する平均値(以下「頭頂補正値」という)である。頭頂補正値は、多数の者について測定を行い、その測定結果に基づいて設定することができる。頭頂補正値は、性別による区別あるいは子供であるか大人であるかによる区別等により、数通りの値を予め身長測定装置に記憶させておく。身長測定装置には上記区別を入力する手段が設けてあり、被測定者は測定を開始する際にそのような入力を行う。
【0010】
本発明による身長測定装置の別の好適実施例は、第1及び第2の超音波センサは、指向角の比較的広い40kHzの超音波を放出し、前記第3の超音波センサは指向角の比較的狭い200kHzの超音波を放出することを特徴とする。
【0011】
本発明による身長測定装置の別の好適実施例は、当該身長測定装置は、さらに温度センサを有し、温度センサにより測定された温度情報を用いて第1〜第3の超音波センサからの測距情報を補正することを特徴とする。超音波は温度により音速が変化するため、温度補正することにより、温度による影響を受けない身長測定が可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による身長測定装置は、床面から被測定者の頭部の先端までの距離を計測するので、室内だけでなく屋外等のいずれの場所においても身長測定することが可能になる。また、身長測定装置を手に持ち、上方から下方に移動させるだけで測定でき、コンパクトな携帯型の測定装置として構成されると共に簡単な操作で身長測定が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明による身長測定装置により被測定者の身長を測定する原理を説明するための図である。本発明による身長測定装置は携帯型であり、被測定者が片手で保持できる程度の小型な測定器である。被測定者1は、床面2上に立ち、身長測定装置3を手で保持し、手を延ばした状態で身長測定を行う。図2に示すように、身長測定装置3は、同一面内に配置した第1〜第3の超音波センサ4〜6を有し、第1の超音波センサ4は、超音波を鉛直方向に投射して測定装置3から床面2までの鉛直方向の距離aを計測する。第2の超音波センサ5は、超音波を水平方向に投射して測定装置3から被測定者の胴体までの水平方向距離bを測定する。第3の超音波センサ6は、斜め上方に超音波を投射して測定装置から被測定者の頭部までの距離cを測定する。これら3個の超音波センサから投射される超音波は同一面内を進行するように設定する。尚、第3の超音波センサ6から出射する超音波の投射角度θは、多数の者について測定を行い、その測定結果に基づいて設定することができる。
【0014】
身長測定装置3から被測定者1の頭部のほぼ先端までの距離cの計測方法について図1Cを参照しながら説明する。被測定者は、測定装置3を手で保持して測定装置を少し上方に位置させて測定を開始する。第3の超音波センサから出射する超音波は被測定者の頭部の上方を伝搬し、測定装置3には被測定者からの反射波は検出されない。この状態において、第3の超音波センサの出力信号の電圧レベルは、被測定者からの反射波を受波する第1及び第2の相当低いレベルである。被測定者は、ゆっくりと測定装置を下方に下げると、第3の超音波センサから投射された超音波が被測定者の頭部のほぼ先端で反射し、反射波は測定装置に戻り、受波される。この際、第3の超音波センサの出力信号の電圧レベルは、急激に上昇し、第1及び第2の超音波センサからの出力信号の電圧レベルにほぼ等しいレベルまで上昇する。従って、第3の超音波センサからの出力信号の電圧レベルを監視し、第1又は第2の超音波センサからの出力信号の電圧レベルにほぼ等しいレベルになったとき、第3の超音波センサが被測定者の頭部のほぼ先端を検出したことになる。この時の第1〜第3の超音波センサからの出力信号を取り込み、距離計測すれば、3つの距離情報a〜cが計測される。
【0015】
被測定者1の身長Lは、床面2から測定装置までの鉛直方向の距離aと、測定装置から被測定者1の頭部のほぼ先端までの距離dと、頭部のほぼ先端から頭頂部までの鉛直方向の距離(頭頂補正値)eを加算した値である。また、距離dとb及びcとの間に以下の式が成立する。
d=(c−b1/2 (1)
距離dは、上記式より距離b及びcを計測することにより求まる。被測定者の身長Lは、距離a、b及びcを計測することにより、以下の式により求まる。
L=a+(c−b1/2+e
すなわち、第1〜第3の超音波センサにより計測された3つの距離情報a〜cに基づいて演算処理することにより被測定者の身長が測定される。
【0016】
図2は、信号処理の一例を示す回路図である。測定中に、第1〜第3の超音波センサから出力された出力信号はタイミング手段7に順次供給する。タイミング手段7は、各出力信号の電圧レベルを監視する。第1及び第2の超音波センサは、被測定者からの反射波を常時受波するので、第1及び第2の超音波センサからほぼ一定の電圧レベルの出力信号を受信する。一方、被測定者の頭部のほぼ先端の位置を検出する第3の超音波センサは、測定の開始時には、被測定者からの反射波を受波しないので、相当低い電圧レベルの信号を出力する。測定装置がさらに下方に移動して、被測定者の頭部からの反射波を受波し始めると、出力信号の電圧レベルは急激に上昇し、第1又は第2の超音波センサからの出力信号の電圧レベルにほぼ等しくなる。第3超音波センサと第2の超音波センサの電圧レベルとの差が所定の値になった時点において、タイミング手段7は、第1〜第3の超音波センサ4〜6からの出力信号を取り込み、距離演算回路8に出力する。なお、所定の値は、距離bと距離cの差の平均値を得ることにより求められる。距離演算回路8は、入力信号について演算処理を行って、距離情報a〜cを生成し、温度補正回路9に供給する。
【0017】
温度補正回路9には温度センサ10が接続され、周囲の温度が検出され、温度情報が温度補正回路9に供給される。温度補正回路9では、検出された温度情報に基づいて超音波センサ4〜6により計測された距離情報について温度補正を行い、補正された距離情報a〜cを演算処理回路11に出力する。
【0018】
演算処理回路11では、前述した演算処理を実行する。図3は、演算処理回路の一例を示す図である。演算処理回路11は、第1の演算回路12、第2の演算回路13及び第3の演算回路14とを有する。第1の演算回路12には、距離情報cとbが供給され、式(1)に基づいて演算を実行して距離dを算出する。算出された距離d及び第1の超音波センサからの距離情報aは第2の演算回路13に供給され、aとdの加算処理が実行される。
【0019】
演算回路14では、演算回路13で得た値と、頭頂補正値eの加算処理が実行される。被測定者は装置に設けられた入力手段15より、性別や大人であるか子供であるか等の情報を入力する。入力された情報は記憶手段16に記憶された区別に応じた平均値に変換され、頭頂補正値eとして演算回路14に供給される。演算回路13により算出された値は、演算回路14に供給され、身長L=a+d+eが求められ、身長情報として出力する。出力された身長情報は、モニタ17に供給され、デジタル又はアナログ表示より被測定者の身長が身長される。
【0020】
側距離の手段として、超音波センサに替えて、赤外線センサ等、超音波センサと同様の方法で側距離を行うあらゆる手段を用いることができる。赤外線センサを用いた場合、頭頂部の「ほぼ先端」ではなく頭頂部の「先端」を検出することができ、頭頂補正値に関する演算回路が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による身長測定の原理を説明するための図である。
【図2】本発明による測定装置の一例の回路構成を示す回路図である。
【図3】演算処理回路の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1 被測定者
2 床面
3 身長測定装置
4 第1の超音波センサ
5 第2の超音波センサ
6 第3の超音波センサ
7 タイミング手段
8 距離演算回路
9 温度補正回路
10 温度センサ
12 第1の演算回路
13 第2の演算回路
14 第3の演算回路
15 入力手段
16 記憶装置
17 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波センサを用いて被測定者の身長を測定する携帯型の身長測定装置であって、
当該測定装置から床面までの鉛直方向の距離を計測する第1の超音波センサと、
当該測定装置から被測定者の胴体までの水平方向距離を計測する第2の超音波センサと、
当該測定装置から被測定者の頭部のほぼ先端までの距離を計測する第3の超音波センサと、
前記第1〜第3の超音波センサから出力される測距情報を用いて被測定者の身長情報を出力する演算処理手段と、
前記第1〜第3の超音波センサからの出力信号を取り込むタイミングを規定するタイミング手段とを具え、
被測定者は、当該測定装置を手により保持し、手を延ばした状態で測定を開始し、測定中に当該測定装置を鉛直方向に移動させ、前記タイミング手段は、前記第3の超音波センサが被測定者の頭部のほぼ先端を検出した時点において計測された第1〜第3の超音波センサからの出力信号を取り込み、前記演算処理手段は、取り込まれた3つの測距情報に基づいて被測定者の身長情報を出力することを特徴とする身長測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の身長測定装置において、被測定者は、測定中に当該測定装置を手に保持して上方から下方に向けて移動させ、前記タイミング手段は、第3の超音波センサからの出力信号の電圧レベルと前記第2の超音波センサからの出力信号の電圧レベルとの差が所定の値になった時点において第1〜第3の超音波センサからの出力信号を取り込むことを特徴とする身長測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の身長測定装置において、前記第3の超音波センサは、第1及び第2の超音波センサから放出される超音波の指向角よりも狭い指向角の超音波を放出して、被測定者の頭部のほぼ先端の位置を検出すると共に当該測定装置から頭部のほぼ先端までの距離を計測することを特徴とする身長測定装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の身長測定装置において、頭部のほぼ先端から頭頂までの鉛直方向の距離情報に基づく補正が行われることを特徴とする身長測定装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の身長測定装置において、前記第1及び第2の超音波センサは、指向角の比較的広い40kHzの超音波を放出し、前記第3の超音波センサは指向角の比較的狭い200kHzの超音波を放出することを特徴とする身長測定装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の身長測定装置において、当該身長測定装置は、さらに温度センサを有し、温度センサにより測定された温度情報を用いて第1〜第3の超音波センサからの測距情報を補正することを特徴とする身長測定装置。
【請求項7】
赤外線センサを用いて被測定者の身長を測定する携帯型の身長測定装置であって、
当該測定装置から床面までの鉛直方向の距離を計測する第1の赤外線センサと、
当該測定装置から被測定者の胴体までの水平方向距離を計測する第2の赤外線センサと、
当該測定装置から被測定者の頭部のほぼ先端までの距離を計測する第3の赤外線センサと、
前記第1〜第3の赤外線センサから出力される測距情報を用いて被測定者の身長情報を出力する演算処理手段と、
前記第1〜第3の赤外線センサらの出力信号を取り込むタイミングを規定するタイミング手段とを具え、
被測定者は、当該測定装置を手により保持し、手を延ばした状態で測定を開始し、測定中に当該測定装置を鉛直方向に移動させ、前記タイミング手段は、前記第3の赤外線センサが被測定者の頭部のほぼ先端を検出した時点において計測された第1〜第3の赤外線センサからの出力信号を取り込み、前記演算処理手段は、取り込まれた3つの測距情報に基づいて被測定者の身長情報を出力することを特徴とする身長測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−213574(P2009−213574A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58500(P2008−58500)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(500133473)新東ホールディングス株式会社 (15)
【出願人】(307016180)地方独立行政法人鳥取県産業技術センター (32)
【Fターム(参考)】