説明

車両に搭載された電気機器の冷却装置

【課題】 ハイブリッド車両等の冷却が必要な複数の電気機器を搭載した車両において、効率的に必要な冷却性能を発現させる。
【解決手段】 冷却装置は、放熱器であるラジエータ500と、第1の電気機器であるMG(1)の冷却水路810と、第2の電気機器であるMG(2)の冷却水路820と、開状態にすることによりMG(2)の冷却水路820に冷却水を流し、閉状態にすることによりMG(2)の冷却水路820に冷却水を流さないようにする制御弁900,910と、MG(2)140のコイル温度が高いと制御弁900,910を開状態にするように制御するHV_ECU320とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された電気機器の冷却に関し、特に、効率的に電気機器を冷却することが可能な冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン(たとえば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの公知の機関を用いることが考えられる。)と電気モータとを組合せたハイブリッドシステムと呼ばれるパワートレインを搭載した車両が開発され、実用化されている。このような車両においては、運転者のアクセル操作量に関係なく、エンジンによる運転と電気モータとによる運転とが自動的に切換えられて、最も効率が良くなるように制御される。たとえば、エンジンが、定常状態で運転されて二次電池(バッテリ)を充電する発電機を回すために運転される場合、あるいは二次電池の充電量などに応じて走行中に間欠的に運転される場合などは、運転者によるアクセルの操作量とは無関係にエンジンの運転および停止を繰返す。つまりエンジンと電気モータとをそれぞれ単独、または協同して動作させることにより、燃料消費向上や排気ガスを大幅に抑制することが可能になる。
【0003】
特開2002−227644号公報(特許文献1)は、このようなハイブリッド車両に適した電動冷媒ポンプにおける冷媒流の制御システムを開示する。この冷媒流の制御システムは、吐出部と吸入部とを持つ電動冷媒ポンプと、この電動冷媒ポンプの吐出部に結合してハイブリッド電気自動車の冷却されるべき構成部品を通って電動冷媒ポンプの吸入部で終端となる閉鎖冷媒流路と、車両構成部品の温度の関数として、電動冷媒ポンプの制御デューティを決定してそのデューティ電動冷媒ポンプを制御するデューティ制御部と、これらの構成部品に設けられ、温度信号を電動冷媒ポンプのデューティー制御部へ送る温度センサーとを含む。
【0004】
この冷媒流の制御システムによると、エンジンや電気モータの温度を検知して、その温度に基づいて電動冷媒ポンプの制御デューティを決定される。すなわち、これらの温度が高いと冷却性能が必要となるため制御デューティが大きくなるように、これらの温度が低いと冷却性能が必要でないため制御デューティが小さくなるように制御される。これにより、単一のループ・システム(閉鎖冷媒流路)内で、車両構成部品の全てに要求される冷却性能を実現することができる。
【特許文献1】特開2002−227644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された制御システムにおいては、エンジンおよび電気モータを含む冷却が必要な車両構成部品の全てに冷媒が供給されるような単一のループシステムが構成されている。このようなループシステムは、その管路長が長くなり、管路抵抗が大きく、電動冷媒ポンプの制御デューティを小さめに設定しても、電動冷媒ポンプの消費電力が大きくなり、究極的には燃費が悪化することになる。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ハイブリッド車両を含め、冷却が必要な複数の電気機器を搭載した車両において、効率的に必要な冷却性能を発現させる、車両に搭載された電気機器の冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る冷却装置は、車両に搭載され、冷却媒体により冷却される、少なくとも2つの電気機器と、冷却媒体が流通される媒体通路と、媒体通路を通して電気機器に冷却媒体を供給するための供給手段と、媒体通路の状態を切換えて、冷却媒体による電気機器を冷却する能力を変更するための変更手段と、電気機器の少なくとも一方の冷却要求を検知するための検知手段と、変更手段を制御するための制御手段とを含む。制御手段は、冷却要求に応じて、変更手段を制御するための手段を含む。
【0008】
第1の発明によると、車両に搭載されたモータジェネレータ、インバータ等の2つ以上の電気機器を冷却するにあたり、媒体通路の状態を切換えて、冷却が要求される電気機器にのみ冷却媒体が流れるようにして、冷却媒体による冷却能力を変更する。冷却能力が小さくてよいとき(たとえば2つ以上の電気機器の中で1つの電気機器のみが冷却を要求している場合)、媒体通路を通して電気機器に冷却媒体を供給するための供給手段の能力も小さくてよい。これは、たとえば、供給手段が冷却媒体の一例である冷却水を圧送するポンプであるとすると、冷却水を圧送する対象が少なくなり流路抵抗も小さくなるので、ポンプの消費電力が低減できることを意味する。その結果、ハイブリッド車両を含め、冷却が必要な複数の電気機器を搭載した車両において、効率的に必要な冷却性能を発現させる、車両に搭載された電気機器の冷却装置を提供することができる。
【0009】
第2の発明に係る冷却装置においては、第1の発明の構成に加えて、変更手段は、冷却媒体が供給される電気機器の数を変更することにより、媒体通路における冷却媒体の流れの状態を切換えて、能力を変更するための手段を含む。
【0010】
第2の発明によると、少なくとも2つの電気機器の中で冷却を要求している電気機器にのみ冷却媒体を供給するように、冷却媒体が供給される電気機器の数を変更する。これにより、冷却水を圧送する対象が少なくなり流路抵抗も小さくなるので、供給手段の一例であるポンプの消費電力が低減できる。
【0011】
第3の発明に係る冷却装置は、車両に搭載され、冷却媒体により冷却される、少なくとも2つの電気機器と、冷却媒体が流通される媒体通路と、媒体通路を通して電気機器に冷却媒体を供給するための供給手段と、電気機器の少なくとも一方に、冷却媒体が供給されるように、媒体通路を切換えるための切換手段と、電気機器の少なくとも一方の冷却要求を検知するための検知手段と、切換手段を制御するための制御手段とを含む。制御手段は、冷却要求に応じて、切換手段を制御するための手段を含む。
【0012】
第3の発明によると、車両に搭載されたモータジェネレータ、インバータ、バッテリ等の2つ以上の電気機器を冷却するにあたり、切換手段であるバルブにより媒体通路を切換えて、冷却要求がある電気機器にのみ冷却媒体が流れるようにする。たとえば2つ以上の電気機器の中で1つの電気機器のみが冷却を要求している場合には、媒体通路を通して電気機器に冷却媒体を供給するための供給手段の能力も小さくてよい。これは、たとえば、供給手段が冷却媒体の一例である冷却水を圧送するポンプであるとすると、冷却水を圧送する対象が少なくなり流路抵抗も小さくなるので、ポンプの消費電力が低減できることを意味する。その結果、ハイブリッド車両を含め、冷却が必要な複数の電気機器を搭載した車両において、効率的に必要な冷却性能を発現させる、車両に搭載された電気機器の冷却装置を提供することができる。
【0013】
第4の発明に係る冷却装置は、車両に搭載され、冷却媒体により冷却される、第1の電気機器および第2の電気機器と、第1の電気機器の冷却通路および第2の電気機器の冷却通路に接続され、冷却媒体が流通される媒体通路と、媒体通路を通して電気機器に冷却媒体を供給するための供給手段と、冷却媒体が供給される電気機器が変更されるように、媒体通路を切換えるための切換手段と、電気機器の少なくとも一方の冷却要求を検知するための検知手段と、切換手段を制御するための制御手段とを含む。制御手段は、冷却要求に応じて、切換手段を制御するための手段を含む。
【0014】
第4の発明によると、車両に搭載された電気機器の一例である、第1のモータジェネレータおよび第2のモータジェネレータを冷却するにあたり、切換手段であるバルブにより媒体通路を切換えて、冷却要求があるモータジェネレータにのみ冷却媒体が流れるようにする。すなわち2つのモータジェネレータの中で片方のモータジェネレータのみが冷却を要求している場合には、媒体通路を通して電気機器に冷却媒体を供給するための供給手段の能力も小さくてよい。これは、たとえば、供給手段が冷却媒体の一例である冷却水を圧送するポンプであるとすると、冷却水を圧送するモータジェネレータが1台でよいことになり流路抵抗も小さくなるので、ポンプの消費電力が低減できることを意味する。その結果、ハイブリッド車両を含め、冷却が必要な複数の電気機器を搭載した車両において、効率的に必要な冷却性能を発現させる、車両に搭載された電気機器の冷却装置を提供することができる。
【0015】
第5の発明に係る冷却装置においては、第4の発明の構成に加えて、冷却媒体は、液媒体であって、供給手段は、液媒体を圧送するポンプである。媒体通路は、ポンプの吐出口から第1の電気機器の冷却通路を通ってポンプの吸入口に接続される第1の通路と、吐出口と第1の電気機器の冷却通路との間の分岐部から第2の電気機器の冷却通路を通って第1の電気機器の冷却通路と吸入口との間の結合部に接続される第2の通路とを含む。切換手段は、分岐部と第2の電気機器の冷却通路との間に設けられた開閉弁を含む。制御手段は、第2の電気機器の冷却要求に応じて、開閉弁が開状態になるように制御するための手段を含む。
【0016】
第5の発明によると、第1のモータジェネレータのみから冷却要求がある場合には、開閉弁を閉じて、ポンプの吐出口から第1の電気機器の冷却通路を通ってポンプの吸入口に接続される第1の通路のみに液媒体の一例である冷却水が循環されて第1のモータジェネレータのみが冷却される。第1のモータジェネレータおよび第2のモータジェネレータから冷却要求がある場合には、開閉弁を開いて、ポンプの吐出口から第1の電気機器の冷却通路を通ってポンプの吸入口に接続される第1の通路と、分岐部から第2の電気機器の冷却通路を通って結合部に接続される第2の通路とに、冷却水が循環されて第1のモータジェネレータおよび第2のモータジェネレータが冷却される。第1のモータジェネレータしか冷却しなくてよい場合には、第2の通路には冷却水が流れることがないように開閉弁が閉じられているので、ポンプの負荷が小さくなり、ポンプの消費電力が低減できる。
【0017】
第6の発明に係る冷却装置においては、第5の発明の構成に加えて、切換手段は、分岐部と第2の電気機器の冷却通路との間に設けられた開閉弁に加えて、結合部と第2の電気機器の冷却通路との間に設けられた開閉弁をさらに含む。制御手段は、第2の電気機器の冷却要求に応じて、2つの開閉弁を開状態になるように制御するための手段を含む。
【0018】
第6の発明によると、第1のモータジェネレータのみから冷却要求がある場合には、2つの開閉弁を閉じて、第1の通路のみに冷却水が循環されて第1のモータジェネレータのみが冷却される。第1のモータジェネレータおよび第2のモータジェネレータから冷却要求がある場合には、2つの開閉弁を開いて、第1の通路と第2の通路とに冷却水が循環されて第1のモータジェネレータおよび第2のモータジェネレータが冷却される。第1のモータジェネレータしか冷却しなくてよい場合には、第2の通路には冷却水が流れることがないように2つの開閉弁が閉じられているので、ポンプの負荷が小さくなり、ポンプの消費電力が低減できる。
【0019】
第7の発明に係る冷却装置においては、第5の発明の構成に加えて、切換手段は、分岐部と第2の電気機器の冷却通路との間に設けられた開閉弁に加えて、結合部と第2の電気機器の冷却通路との間に設けられた逆止弁をさらに含む。
【0020】
第7の発明によると、開閉弁が1つであっても、結合部と第2の電気機器の冷却通路との間に設けられた逆止弁により開閉弁が閉じられているときにも第2の通路に冷却水が流入することがないので、ポンプの負荷が小さくなり、ポンプの消費電力が低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0022】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る冷却装置が適用されるハイブリッド車両の制御ブロック図を説明する。なお、本発明は図1に示すハイブリッド車両に限定されない。他の態様を有するハイブリッド車両であってもよい。また、電気自動車であっても、燃料電池車であってもよい。また、走行用バッテリではなくキャパシタ等の蓄電機構であってもよい。
【0023】
ハイブリッド車両は、駆動源としての、たとえばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関(以下、単にエンジンという)120と、モータジェネレータ(MG)140を含む。なお、図1においては、説明の便宜上、モータジェネレータ140を、モータ140Aとジェネレータ140B(あるいはモータジェネレータ140B)と表現するが、ハイブリッド車両の走行状態に応じて、モータ140Aがジェネレータとして機能したり、ジェネレータ140Bがモータとして機能したりする。
【0024】
ハイブリッド車両には、この他に、エンジン120やモータジェネレータ140で発生した動力を駆動輪160に伝達したり、駆動輪160の駆動をエンジン120やモータジェネレータ140に伝達する減速機180と、エンジン120の発生する動力を駆動輪160とジェネレータ140Bとの2経路に分配する動力分割機構(たとえば、遊星歯車機構)200と、モータジェネレータ140を駆動するための電力を充電する走行用バッテリ220と、走行用バッテリ220の直流とモータ140Aおよびジェネレータ140Bの交流とを変換しながら電流制御を行なうインバータ240と、走行用バッテリ220の充放電状態を管理制御するバッテリ制御ユニット(以下、バッテリECU(Electronic Control Unit)という)260と、エンジン120の動作状態を制御するエンジンECU
280と、ハイブリッド車両の状態に応じてモータジェネレータ140およびバッテリECU260、インバータ240等を制御するMG_ECU300と、バッテリECU260、エンジンECU280およびMG_ECU300等を相互に管理制御して、ハイブリッド車両が最も効率よく運行できるようにハイブリッドシステム全体を制御するHV_ECU320等を含む。
【0025】
本実施の形態においては、走行用バッテリ220とインバータ240との間にはコンバータ242が設けられている。これは、走行用バッテリ220の定格電圧が、モータ140Aやモータジェネレータ140Bの定格電圧よりも低いので、走行用バッテリ220からモータ140Aやモータジェネレータ140Bに電力を供給するときには、コンバータ242で電力を昇圧する。このコンバータ242には平滑コンデンサが内蔵されており、コンバータ242が昇圧動作を行なう際には、この平滑コンデンサに電荷が蓄えられる。
【0026】
なお、図1においては、各ECUを別構成しているが、2個以上のECUを統合したECUとして構成してもよい(たとえば、図1に、点線で示すように、MG_ECU300とHV_ECU320とを統合したECUとすることがその一例である)。
【0027】
動力分割機構200は、エンジン120の動力を、駆動輪160とモータジェネレータ140Bとの両方に振り分けるために、遊星歯車機構(プラネタリーギヤ)が使用される。モータジェネレータ140Bの回転数を制御することにより、動力分割機構200は無段変速機としても機能する。エンジン120の回転力はプラネタリーキャリア(C)に入力され、それがサンギヤ(S)によってモータジェネレータ140Bに、リングギヤ(R)によってモータおよび出力軸(駆動輪160側)に伝えられる。回転中のエンジン120を停止させる時には、エンジン120が回転しているので、この回転の運動エネルギをモータジェネレータ140Bで電気エネルギに変換して、エンジン120の回転数を低下させる。
【0028】
図1に示すようなハイブリッドシステムを搭載するハイブリッド車両においては、発進時や低速走行時等であってエンジン120の効率が悪い場合には、モータジェネレータ140のモータ140Aのみによりハイブリッド車両の走行を行ない、通常走行時には、たとえば動力分割機構200によりエンジン120の動力を2経路に分け、一方で駆動輪160の直接駆動を行ない、他方でジェネレータ140Bを駆動して発電を行なう。この時、発生する電力でモータ140Aを駆動して駆動輪160の駆動補助を行なう。また、高速走行時には、さらに走行用バッテリ220からの電力をモータ140Aに供給してモータ140Aの出力を増大させて駆動輪160に対して駆動力の追加を行なう。一方、減速時には、駆動輪160により従動するモータ140Aがジェネレータとして機能して回生発電を行ない、回収した電力を走行用バッテリ220に蓄える。なお、走行用バッテリ220の充電量が低下し、充電が特に必要な場合には、エンジン120の出力を増加してジェネレータ140Bによる発電量を増やして走行用バッテリ220に対する充電量を増加する。もちろん、低速走行時でも必要に応じてエンジン120の駆動量を増加する制御を行なう場合もある。たとえば、上述のように走行用バッテリ220の充電が必要な場合や、エアコン等の補機を駆動する場合や、エンジン120の冷却水の温度を所定温度まで上げる場合等である。
【0029】
図2を参照して、図1のモータジェネレータ(1)140(140B)およびモータジェネレータ(2)140(140A)の冷却装置の構成について説明する。なお、冷却対象はモータジェネレータ140に限定されるものではなく、インバータ240やPCU(Power Control Unit)や走行用バッテリ220などであってもよい。また、冷却対象の電気機器は2つに限定されるものではない。さらに、以下において、冷却媒体は液体(冷却水)であるとして説明するが、気体でもよい。
【0030】
図2に示すように、この冷却装置は、モータジェネレータ140で吸熱した熱量を放熱するラジエータ500と、MG(1)冷却水路810と、MG(2)冷却水路820と、冷却水をラジエータ500とMG(1)冷却水路810およびMG(2)冷却水路820との間で循環させるためのウォータポンプ600と、冷却水路を切換えるための制御弁900および制御弁910とを含む。なお、制御弁910は逆止弁であってもよい。
【0031】
ラジエータ500とウォータポンプ600とは、ウォータポンプ吸入口側管路700により接続され、ウォータポンプ600とMG冷却水路(MG(1)冷却水路810またはMG(2)冷却水路820)側とは、ウォータポンプ吐出口側管路710により接続されている。さらに、ウォータポンプ吐出口側管路710は、分岐点720において、MG(1)冷却水路810の入口側へ連通されるMG(1)入口側管路812と制御弁900側へのMG(2)側管路730とに分岐される。
【0032】
MG(1)冷却水路810は、入口側がMG(1)入口側管路812に、出口側がMG(1)出口側管路814に、それぞれ接続される。MG(1)出口側管路814は、結合点750においてラジエータ入口側管路760に接続される。
【0033】
制御弁900とMG(2)冷却水路820とは、MG(2)入口側管路822により接続され、MG(2)冷却水路820と制御弁910とは、MG(2)出口側管路824により、それぞれ接続される。制御弁910と結合点750とは、MG(2)側管路740により接続される。
【0034】
この制御弁900および制御弁910は、HV_ECU320により、その開閉状態が制御可能である。また、HV_ECU320には、モータジェネレータ(2)140(モータ140A)に設けられた温度センサ142からコイル温度が入力される。
【0035】
本実施の形態における冷却装置の技術的特徴は、たとえば、上述した通常走行時におけるモータ140Aを駆動して駆動輪160の駆動補助を行なっている場合にモータ140Aのコイル温度が上昇して冷却要求があると、制御弁900および制御弁910を開状態にして、MG(2)冷却水路820に冷却水を流してモータ140Aを冷却する。一方、このような冷却要求がない場合(常時モータ140Aが作動している状態ではないので冷却要求がないことも発生し得る)、制御弁900および制御弁910を閉状態にして、MG(2)冷却水路820に冷却水を流さない。このようにすると、冷却管路の管路抵抗を低減させることができ、ウォータポンプ600の負荷を下げて消費電力を低下させることができる。
【0036】
図3のフローチャートを参照して、図1のHV_ECU320で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0037】
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、HV_ECU320は、MG(2)(モータ140A)のコイル温度TCを検知する。このとき、モータ140Aに設けられた、モータのコイル温度を検知する温度センサ142からHV_ECU320に入力された信号に基づいて、コイル温度TCが検知される。
【0038】
S200にて、HV_ECU320は、モータ140Aのコイル温度TCがTCしきい値TC(1)よりも高いか否かを判断する。コイル温度TCがTCしきい値TC(1)よりも高いと(S200にてYES)、処理はS300へ移される。もしそうでないと(S200にてNO)、処理はS400へ移される。
【0039】
S300にて、HV_ECU320は、閉状態の制御弁900および制御弁910を開状態にするように、制御弁に制御信号を出力する。これにより、制御弁900および制御弁910が開いて図2の順路Bのように冷却水が流れる。その後、処理はS600へ移される。
【0040】
S400にて、HV_ECU320は、モータ140Aのコイル温度TCがTCしきい値TC(2)よりも低いか否かを判断する。ここで、TCしきい値TC(1)>TCしきい値TC(2)である。このように2種類のしきい値を設定するのは、1種類のしきい値を制御弁の開閉を制御すると、制御弁の開閉ハンチングが発生するので、それを防止するためである。コイル温度TCがTCしきい値TC(2)よりも低いと(S400にてYES)、処理はS500へ移される。もしそうでないと(S400にてNO)、処理はS600へ移される。
【0041】
S500にて、HV_ECU320は、開状態の制御弁900および制御弁910を閉状態にするように、制御弁に制御信号を出力する。これにより、制御弁900および制御弁910が閉じて図2の順路Aのように冷却水が流れる。
【0042】
S600にて、HV_ECU320は、イグニッションスイッチがオフにされたか否かを判断する。イグニッションスイッチがオフにされると(S600にてYES)、この処理は終了する。もしそうでないと(S600にてNO)、処理はS100へ戻される。
【0043】
なお、処理を終了させる判断は、イグニッションスイッチ以外の状態に基づく判断であってもよい。
【0044】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置を搭載した車両の動作について説明する。以下の説明において、初期状態は、モータ140Aのコイル温度TCが低い状態で、制御弁900および制御弁910が閉状態にされて図2の順路Aで冷却水が循環されていると想定する。
【0045】
車両が走行中に、モータ140Aのコイル温度TCが検知される(S100)。モータ140Aの作動負荷が上昇してコイル温度TCがTCしきい値(1)よりも高くなると(S200にてYES)、閉状態の制御弁900および制御弁910が開状態にされて図2の順路Bで冷却水が循環される。この状態が図4の時刻t(1)である。
【0046】
図2の順路Bで冷却水が循環されることによりモータ140Aの冷却水路であるMG(2)冷却水路820に冷却水が流れてモータ140Aを冷却して、次第に温度が低下する。この状態が図4の時刻t(1)〜t(2)である。
【0047】
コイル温度TCがTCしきい値(2)よりも低くなると(S200にてNOかつS400にてYES)、開状態の制御弁900および制御弁910が閉状態にされて図2の順路Aで冷却水が循環される。この状態が図4の時刻t(2)である。
【0048】
図2の順路Aで冷却水が循環されることによりウォータポンプ600の負荷が低下して消費電力が削減できる。モータ140Aの冷却水路であるMG(2)冷却水路820に冷却水が流れてないので次第にモータ140Aのコイル温度が上昇する。この状態が図4の時刻t(2)〜t(3)である。時刻t(3)で、再度、モータ140Aの作動負荷が上昇してコイル温度TCがTCしきい値(1)よりも高くなると(S200にてYES)、閉状態の制御弁900および制御弁910が開状態にされて図2の順路Bで冷却水が循環されて、モータ140Aが冷却される。
【0049】
以上のようにして、本実施の形態に係る制御装置によると、電気機器の負荷に応じて冷却通路における冷却水の流れ方を変更する。このときに、冷却が必要な部分にのみ冷却水を流すようにしてウォータポンプの負荷を下げて消費電力を低減させることができ、究極的には燃費を向上させることができる。
【0050】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態に係るハイブリッド車両の制御ブロック図である。
【図2】図1のMG(1)およびMG(2)の冷却通路の構成を示す図である。
【図3】HV_ECUで実行される冷却通路切換処理の制御構造を示すフローチャートである。
【図4】MG(2)のコイル温度の時間変化と制御弁の開閉状態とを示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0052】
120 エンジン、140 モータジェネレータ、140A モータ、140B ジェネレータ、142 温度センサ、160 駆動輪、180 減速機、200 動力分割機構、220 走行用バッテリ、240 インバータ、242 コンバータ、260 バッテリECU、280 エンジンECU、300 MG_ECU、320 HV_ECU、500 ラジエータ、600 ウォータポンプ、700 ウォータポンプ吸入口側管路、710 ウォータポンプ吐出口側管路、720 分岐点、730,740 MG(2)側管路、750 結合点、760 ラジエータ入口側管路、810 MG(1)冷却水路、812 MG(1)入口側管路、814 MG(1)出口側管路、820 MG(2)冷却水路、822 MG(2)入口側管路、824 MG(2)出口側管路、900,910 制御弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、冷却媒体により冷却される、少なくとも2つの電気機器と、
前記冷却媒体が流通される媒体通路と、
前記媒体通路を通して前記電気機器に前記冷却媒体を供給するための供給手段と、
前記媒体通路の状態を切換えて、前記冷却媒体による前記電気機器を冷却する能力を変更するための変更手段と、
前記電気機器の少なくとも一方の冷却要求を検知するための検知手段と、
前記変更手段を制御するための制御手段とを含み、
前記制御手段は、前記冷却要求に応じて、前記変更手段を制御するための手段を含む、車両に搭載された電気機器の冷却装置。
【請求項2】
前記変更手段は、前記冷却媒体が供給される電気機器の数を変更することにより、前記媒体通路における前記冷却媒体の流れの状態を切換えて、前記能力を変更するための手段を含む、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
車両に搭載され、冷却媒体により冷却される、少なくとも2つの電気機器と、
前記冷却媒体が流通される媒体通路と、
前記媒体通路を通して前記電気機器に前記冷却媒体を供給するための供給手段と、
前記電気機器の少なくとも一方に、前記冷却媒体が供給されるように、前記媒体通路を切換えるための切換手段と、
前記電気機器の少なくとも一方の冷却要求を検知するための検知手段と、
前記切換手段を制御するための制御手段とを含み、
前記制御手段は、前記冷却要求に応じて、前記切換手段を制御するための手段を含む、車両に搭載された電気機器の冷却装置。
【請求項4】
車両に搭載され、冷却媒体により冷却される、第1の電気機器および第2の電気機器と、
前記第1の電気機器の冷却通路および前記第2の電気機器の冷却通路に接続され、前記冷却媒体が流通される媒体通路と、
前記媒体通路を通して前記電気機器に前記冷却媒体を供給するための供給手段と、
前記冷却媒体が供給される電気機器が変更されるように、前記媒体通路を切換えるための切換手段と、
前記電気機器の少なくとも一方の冷却要求を検知するための検知手段と、
前記切換手段を制御するための制御手段とを含み、
前記制御手段は、前記冷却要求に応じて、前記切換手段を制御するための手段を含む、車両に搭載された電気機器の冷却装置。
【請求項5】
前記冷却媒体は、液媒体であって、
前記供給手段は、前記液媒体を圧送するポンプであって、
前記媒体通路は、前記ポンプの吐出口から前記第1の電気機器の冷却通路を通って前記ポンプの吸入口に接続される第1の通路と、前記吐出口と前記第1の電気機器の冷却通路との間の分岐部から前記第2の電気機器の冷却通路を通って前記第1の電気機器の冷却通路と前記吸入口との間の結合部に接続される第2の通路とを含み、
前記切換手段は、前記分岐部と前記第2の電気機器の冷却通路との間に設けられた開閉弁を含み、
前記制御手段は、前記第2の電気機器の冷却要求に応じて、前記開閉弁が開状態になるように制御するための手段を含む、請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記切換手段は、前記分岐部と前記第2の電気機器の冷却通路との間に設けられた開閉弁に加えて、前記結合部と前記第2の電気機器の冷却通路との間に設けられた開閉弁をさらに含み、
前記制御手段は、前記第2の電気機器の冷却要求に応じて、2つの前記開閉弁を開状態になるように制御するための手段を含む、請求項5に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記切換手段は、前記分岐部と前記第2の電気機器の冷却通路との間に設けられた開閉弁に加えて、前記結合部と前記第2の電気機器の冷却通路との間に設けられた逆止弁をさらに含む、請求項5に記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−219083(P2006−219083A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36407(P2005−36407)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】