説明

車両のエアサスペンション用ドライヤ

【課題】安価で小型のエアサスペンション用ドライヤを提供する。
【解決手段】筒状のハウジング10の軸方向の両端に流入口11と流出口12を有し、一対のフィルタ21,22間に乾燥剤30を挟持する。フィルタ21と流入口11との間に案内部材40を介装し、フィルタ21を介して乾燥剤内に流体を案内する。この案内部材は、流入口の開口面積以上の開口を有し、流体を流入口11からフィルタ21に案内する流路Pを形成するように流入口を囲繞すると共に、内面を遮蔽面とする遮蔽筒部41と、その開口部から径方向外側に延出し複数の連通孔Hが形成された環状プレート部42を有する。而して、流体は流入口から遮蔽筒部内に導入され、その遮蔽面に慣性衝突して流体内の水分が分離され、流路を介して環状プレート部の連通孔に案内され、乾燥剤によって効率的に乾燥される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエアサスペンション用ドライヤに関し、特に、ハウジング内に導入した流体を乾燥剤を介して乾燥させ、乾燥空気を車両のエアサスペンションに供給するエアサスペンション用ドライヤに係る。
【背景技術】
【0002】
エアサスペンション用ドライヤとして、例えば下記の特許文献1には「外部のコンプレッサにより圧縮された圧縮空気を乾燥させてから外部のエア制御システム側に送り込むためのエアドライヤ」に関し、従来は「略円筒状のハウジングにおいて軸方向両端面中央部の一方に、外部のコンプレッサに接続されたコンプレッサ側ポートを有し、他方に外部のエア制御システム側に接続されたシステム側ポートを有し、ハウジング内部には乾燥剤が充填されている。」と説明され、更に「充填されている乾燥剤は、コンプレッサ側からエア制御システム側へ向けてハウジング内を通過する空気を除湿する機能を有するものであり、その際に、乾燥剤内部には除湿された空気中の水分が吸着される。この水分の吸着量が増加すると、乾燥剤の除湿機能が徐々に低下する傾向にあるので、エアドライヤを継続的に使用する際には、適宜、外部エア制御システム内に充填されている除湿済の空気を外部エア制御システム側からエアドライヤを介してコンプレッサ側に戻すことにより、乾燥剤中に吸着した水分を乾燥空気に戻し、乾燥剤内の水分の吸着量を減少させ乾燥剤を再生させることにより、エアドライヤの除湿機能の回復を図っている。」と説明されている。そして、特許文献1では「横置きにして車両等へ配置した場合であっても、ハウジング内に結露した水分の排出性を確保可能なエアドライヤ」が提案されている。
【0003】
また、下記の特許文献2には「気相および液相の水分を含んだ気体が流入する接線流入式のサイクロンが設けられるとともに、通路拡大室を形成する水回収用ハウジングが設けられ、開口部分において開口側ほど通路を拡大させたサイクロンの内筒が前記通路拡大室に突出し、その通路拡大室に突出した内筒の周りに液状水分を回収するための環状溝を形成した液体用セパレータと、前記液体用セパレータの下流側に設けられ、固体の乾燥剤を充填した乾燥器とを備えた水分除去装置」が提案されている。
【0004】
更に、下記の特許文献3には「エア・コンプレッサで圧縮された圧縮空気をエア・タンクに貯蔵し、ブレーキ・ペダルの作動に基づく圧縮空気により制動を掛ける自動車の空気・油圧複合ブレーキ・システム」が開示されており、「圧縮空気中に含まれる水分を乾燥剤で除去するエア・ドライヤを設けると共に、当該エア・ドライヤの前に圧縮空気中に含まれるオイル・ミストを除去する静電式浄化器を設け、エア・コンプレッサで圧縮された圧縮空気中のオイル・ミスト及び水分を除去した上でエア・タンクに圧縮空気を貯蔵する構成」が提案されている。そのほか、種々の気液分離装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−119824号公報
【特許文献2】特開平7−328373号公報
【特許文献3】特開平5−201329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1等に記載のドライヤは総じて大型であり、車両に搭載するためには大きなスペースが必要であった。更に、サイクロン式や静電式の装置は構成が複雑で高価な装置となる。
【0007】
そこで、本発明は、ハウジング内に導入する流体を効率的に乾燥させて、車両のエアサスペンションに乾燥空気を供給する安価で小型のエアサスペンション用ドライヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を達成するため、本発明は、筒状のハウジングの軸方向の両端に流入口と流出口を有し、前記ハウジング内に収容した一対のフィルタ間に乾燥剤を挟持して成り、前記流入口から導入した流体を前記乾燥剤を介して乾燥させ、前記流出口から乾燥空気を吐出して車両のエアサスペンションに供給する車両のエアサスペンション用ドライヤにおいて、前記流入口側のフィルタと前記流入口との間に介装し、前記流入口側のフィルタ及び乾燥剤を支持すると共に前記流入口側のフィルタを介して前記乾燥剤内に前記流体を案内する案内部材であって、前記流入口の開口面積以上の開口を有し、前記流入口から前記流入口側のフィルタに案内する流路を形成するように前記流入口を囲繞すると共に、内面を遮蔽面とする遮蔽筒部と、該遮蔽筒部の開口部から径方向外側に延出し複数の連通孔を形成した環状プレート部を有する案内部材を備え、前記流体を前記流入口から前記案内部材の前記遮蔽筒部内に導入し、前記流路を介して前記環状プレート部の連通孔に案内するように構成したものである。
【0009】
上記のエアサスペンション用ドライヤにおいて、前記ハウジングは、前記流入口から前記案内部材の前記遮蔽筒部内に導入する流体を増速するオリフィスを備えたものとするとよい。また、前記案内部材は、前記遮蔽筒部と前記環状プレート部とを一体で形成することができるが、前記遮蔽筒部と前記環状プレート部とを別体で形成し、前記環状プレート部に前記遮蔽筒部を固着して一体とすることとしてもよい。
【0010】
特に、前記ハウジングは、前記流入口側の軸方向端面が、前記ハウジングの内側面から前記流入口に向かって断面積が漸減する傾斜面であって、該傾斜面に複数のリブが立設されて成り、該複数のリブの端面に前記環状プレートの端面が当接するように前記案内部材を配置し、前記複数のリブ相互の空間と前記環状プレートの端面との間及び前記遮蔽筒部の内側空間に前記流路を形成する構成とするとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、上記の構成になる案内部材を備えており、流体は流入口から遮蔽筒部内に導入され、その遮蔽面に慣性衝突して水分が分離され、流路を介して環状プレート部の連通孔に適切に案内されるので、流体が乾燥剤によって効率的に乾燥され、乾燥空気となって流出口から吐出される。換言すれば、ハウジング内の乾燥剤を従来装置より大幅に少なくしても所望の乾燥機能を発揮することができる。この結果、特にハウジングの乾燥剤収容部分の軸方向寸法を従来装置に比し大幅に短縮することができる。
【0012】
更に、上記のようにオリフィスを備えたものとすれば、オリフィスにて増速されて遮蔽筒部内に導入され、流体内の水分が更に効率的に分離されるので、乾燥効率が一層良好となる。この結果、ハウジングの乾燥剤収容部分の軸方向寸法を更に短く形成することができ、車両への搭載性が一層向上する。特に、傾斜面に複数のリブが立設されたハウジングを用い、複数のリブ相互の空間と環状プレートの端面との間及び遮蔽筒部の内側空間に流路を形成することとすれば、別途案内流路を形成することなく、簡単な構成で流体を適切に案内することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態のエアサスペンション用ドライヤの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に供する案内部材の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるハウジング内の底部を示す平面図である。
【図4】本発明の他の実施形態のエアサスペンション用ドライヤの断面図である。
【図5】本発明の各実施形態に供する案内部材の他の実施例を示す断面図である。
【図6】本発明の各実施形態に供する案内部材の更に他の実施例を示す断面図である。
【図7】本発明の各実施形態に供する案内部材の別の実施例を示す断面図である。
【図8】本発明の各実施形態に供する案内部材の別の実施例を示す平面図である。
【図9】本発明に供される一般的なエアサスペンション用ドライヤを備えた空気供給源を示すブロック図である。
【図10】一般的なエアサスペンション用ドライヤにおけるハウジング内の底部構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の望ましい実施形態を図面を参照して説明する。先ず、本発明の一実施形態に係るエアサスペンション用ドライヤ(以下、単にドライヤという)を備えた空気供給源の概要について、図9を参照して説明する。空気供給源PSは、エアサスペンション用の空気ばね手段ASに対し加圧空気を供給するもので、バッテリBTに接続されたモータMによってコンプレッサCが駆動されると、ドライヤD及び逆止弁Gを介して、乾燥した加圧(圧縮)空気が制御弁VAを介して空気ばね手段ASの空気室ARに供給されるように構成されている。また、コンプレッサCの非駆動時に、常閉の排気弁VE及び制御弁VAが開位置とされると、オリフィスO及びドライヤDを介して空気が排出されるように構成されており、この空気の排出時にドライヤDが再生される。尚、オリフィスO及びチェックバルブGはドライヤD内に収容もしくは一体的に形成することとしてもよい。
【0015】
上記ドライヤDは、図1に示すように、軸方向の両端に流入口11と流出口12を有する筒状のハウジング10内に、一対のフィルタ21及び22とこれらの間に挟持されるように乾燥剤30が収容されており、流入口11から後述の案内部材40を介して導入された流体(上記のモータMから出力される水分を含んだ圧縮空気であり、Awで示す)が乾燥剤30を介して乾燥され、流出口12から乾燥空気Adが吐出され、上記空気ばね手段ASに供給される。尚、本実施形態の乾燥剤30は粒体のシリカゲルで構成されており、フィルタ21及び22は不織布で円板状に形成されている。
【0016】
本実施形態のハウジング10は有底円筒体で、その開口部に蓋部13が環状シールSを介して装着されており、流出口12は蓋部13に形成されている。そして、複数の連通孔Hが形成された支持プレート14がフィルタ22に密着するように配置され、蓋部13と支持プレート14との間に圧縮スプリング15が介装され、支持プレート14及びフィルタ22を介して乾燥剤30が図1の下方に押圧されている。而して、乾燥剤30は粒体間の流路を確保した状態で、圧縮スプリング15の付勢力によってフィルタ21及び22間に保持されている。ハウジング10の下部は、通常は、例えば図10に断面を示すように形成されるのに対し、本実施形態では以下に説明するように構成されている。尚、図10に示す支持プレート50は、支持プレート14と同様、円板状で複数の連通孔Hが形成されている。
【0017】
即ち、図1において、流入口11側(図1の下方)のフィルタ21と流入口11との間に、案内部材40が介装されており、これにフィルタ21及び乾燥剤30が支持されると共に、フィルタ21を介して乾燥剤30内に流体Awが案内される。この案内部材40は、図1及び図2に示すように、遮蔽筒部41を有すると共に、その開口部から径方向外側に延出し複数の連通孔Hが形成された環状プレート部42を有し、断面ハット形状に形成されている。本実施形態の遮蔽筒部41は流入口11の開口面積以上の開口を有する有底円筒体で、その内面が遮蔽面とされている。特に、遮蔽筒部41の内径Daは、流入口11の内径Dbの2倍以上、且つ、ハウジング10の内径Dcの1/2以下に設定されている。この遮蔽筒部41が流入口11を囲繞するように配置されると、流入口11からフィルタ21に流体Awを案内する流路Pが形成される。
【0018】
即ち、図1及び図3に示すように、ハウジング10の流入口11側(図1の下方)の軸方向端面は、ハウジング10の内側面から流入口に向かって断面積が漸減する傾斜面10aに形成されており、この傾斜面10aに複数のリブ(代表して16で示す)が立設されている。そして、図1に示すように複数のリブ16の端面に環状プレート部42の端面が当接するように案内部材40が配置されると、複数のリブ16相互の空間と環状プレート部42の端面との間及び遮蔽筒部41の内側空間に流路Pが形成される。
【0019】
尚、本実施形態の案内部材40は、樹脂によって遮蔽筒部41と環状プレート部42が一体に形成されているが、遮蔽筒部41と環状プレート部42とを別体で形成し、環状プレート部42に遮蔽筒部41を固着して一体とすることとしてもよい。この場合は、遮蔽筒部41を樹脂製とし、環状プレート部42を金属製とすることもできる。
【0020】
而して、流体Awは図1に黒矢印で示すように、流入口11から案内部材40の遮蔽筒部41内に導入され、遮蔽筒部41内の遮蔽面に慣性衝突して流体Aw内の水分が分離される。尚、図示は省略するが、ここで分離された水分は下流側で捕集され適宜排出される。更に、流体Awは流路Pを介して環状プレート部42の連通孔Hに案内され、乾燥剤30によって効率的に乾燥され、白抜矢印で示す乾燥空気Adとなって流出口12から吐出され、図9の空気ばね手段ASに供給される。
【0021】
この結果、乾燥剤30を従来装置より大幅に少なくしても所望の乾燥機能を発揮することができるので、図1に示すフィルタ21及び22間の軸方向寸法(L1)は、従来装置における同部分の軸方向寸法(図10にL0で示す)に比し約半減することができ、大幅な小型化が可能となる。尚、前述のように、コンプレッサCの非駆動時に、常閉の電磁開閉弁で構成された排気弁Vが開位置とされると、オリフィスO及びドライヤDを介して空気が排出され、乾燥剤30は再生されるので、交換することなく連続して使用することができる。
【0022】
図4は本発明の他の実施形態を示すもので、ハウジング10にはオリフィス17が形成されており、流入口11から導入される流体Awがオリフィス17で増速されて遮蔽筒部41内に導入される。その他の構成は、図1に示す実施形態と実質的に同じであるので、実質的に同じ部品については同じ符号を付して説明を省略する。而して、本実施形態においては、流体Awは図4に黒矢印で示すように、流入口11から導入され、オリフィス17にて増速されて案内部材40の遮蔽筒部41内に導入され、流体Aw内の水分が効率的に分離されるので、乾燥効率が一層良好となる。
【0023】
この結果、本実施形態においては、図4に示すように、ハウジング10のフィルタ21及び22間の軸方向寸法をL2とし、図1の実施形態における同部分の軸方向寸法(L1)に比し、更に短く形成することができ、車両への搭載性が一層向上する。
【0024】
上記案内部材40は種々の形状に形成することができ、図5乃至図8にその実施例を示す。図5の案内部材40xは、遮蔽筒部41xの断面が円錐形状に形成されたもので、図6の案内部材40yは、遮蔽筒部41yの断面が略半球の椀形状に形成されたものである。そして、図7及び図8の案内部材40zは、その遮蔽筒部41zが図1の遮蔽筒部41と同一の外形を有し、その底面に複数の環状凸部43zが形成されたものである。尚、環状プレート部42x,42y,42zは何れも図1の環状プレート部42と実質的に同じ形状であり、複数の連通孔Hが形成されている。
【符号の説明】
【0025】
D ドライヤ
P 流路
H 連通孔
10 ハウジング
11 流入口
12 流出口
16 リブ
17 オリフィス
21,22 フィルタ
40,40x,40y,40z 案内部材
41,41x,41y,41z 遮蔽筒部
42,42x,42y,42z 環状プレート部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジングの軸方向の両端に流入口と流出口を有し、前記ハウジング内に収容した一対のフィルタ間に乾燥剤を挟持して成り、前記流入口から導入した流体を前記乾燥剤を介して乾燥させ、前記流出口から乾燥空気を吐出して車両のエアサスペンションに供給する車両のエアサスペンション用ドライヤにおいて、前記流入口側のフィルタと前記流入口との間に介装し、前記流入口側のフィルタ及び乾燥剤を支持すると共に前記流入口側のフィルタを介して前記乾燥剤内に前記流体を案内する案内部材であって、前記流入口の開口面積以上の開口を有し、前記流入口から前記流入口側のフィルタに案内する流路を形成するように前記流入口を囲繞すると共に、内面を遮蔽面とする遮蔽筒部と、該遮蔽筒部の開口部から径方向外側に延出し複数の連通孔を形成した環状プレート部を有する案内部材を備え、前記流体を前記流入口から前記案内部材の前記遮蔽筒部内に導入し、前記流路を介して前記環状プレート部の連通孔に案内するように構成したことを特徴とする車両のエアサスペンション用ドライヤ。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記流入口から前記案内部材の前記遮蔽筒部内に導入する流体を増速するオリフィスを備えたことを特徴とする請求項1記載の車両のエアサスペンション用ドライヤ。
【請求項3】
前記案内部材は、前記遮蔽筒部と前記環状プレート部とを別体で形成し、前記環状プレート部に前記遮蔽筒部を固着して一体とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両のエアサスペンション用ドライヤ。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記流入口側の軸方向端面が、前記ハウジングの内側面から前記流入口に向かって断面積が漸減する傾斜面であって、該傾斜面に複数のリブが立設されて成り、該複数のリブの端面に前記環状プレート部の端面が当接するように前記案内部材を配置し、前記複数のリブ相互の空間と前記環状プレート部の端面との間及び前記遮蔽筒部の内側空間に前記流路を形成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の車両のエアサスペンション用ドライヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−16669(P2012−16669A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156290(P2010−156290)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】