説明

車両のフロア構造

【課題】 車両のフロア構造において、車体が前方から衝突してダッシュパネルが後方に移動し、前方に寝たような傾斜を持つダッシュパネルが上方に大きく起立するような状態となっても、乗員の足が傷められないようにする。
【解決手段】 ダッシュパネル2及びフロアパネル1に亘って硬質のフロアパッド4を載置し、車体が前方から衝突してダッシュパネル2が後方に移動すると、フロアパッド4におけるダッシュパネル2とフロアパネル1とに亘る部分5が、車体後方に移動するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車や商用車、ミニバンやトラック等の車両において、運転席及び助手席の付近のフロア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両における運転席及び助手席の付近のフロア構造については、例えば特許文献1に開示されているように、フロアパネル(特許文献1の図1の13)、フロアパネルの前部から前方上方に延出されるダッシュパネル(特許文献1の図1の7)を備えており、運転席及び助手席に着座する乗員は、ダッシュパネルの付近に足を置くことが多い。このような状態において車体が前方から衝突してダッシュパネルが後方に移動すると、前方に寝たような傾斜を持つダッシュパネルが、上方に大きく起立するような状態となることがあり、上方に大きく起立したダッシュパネルによって乗員の足が傷められる可能性がある。
【0003】
前述のような状態に対処する為に特許文献1では、フロントフレーム(特許文献1の図1の4)の後部と、サイドシル(特許文献1の図1の8)の前部とを、タイヤハウス(特許文献1の図1の10)に沿った三次元クロスメンバー(特許文献1の図1の14)によって連結している。これにより、フロントフレームとダッシュパネルとの連結部の剛性を高めており、車体が前方から衝突して場合にダッシュパネルが変形し難いようにしている(前方に寝たような傾斜を持つダッシュパネルが、上方に大きく起立するような状態とならないようにしている)。
【0004】
【特許文献1】特開平5−262263号公報(図1,8,9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、フロントフレームや、ダッシュパネル及びフロアパネルの各部に補強を施して、車体が前方から衝突してもダッシュパネルが変形し難いように構成する場合、補強を多くするほど重量の増加を招くことになるので、補強を施すことにも限界がある。
【0006】
本発明は車両のフロア構造において、車体が前方から衝突してダッシュパネルが後方に移動し、前方に寝たような傾斜を持つダッシュパネルが上方に大きく起立するような状態となった場合、上方に大きく起立したダッシュパネルによって乗員の足が傷められる状態を、特許文献1のような補強とは別の手段によって適切に避けることができるように構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、車両のフロア構造において次のように構成することにある。
フロアパネルと、フロアパネルの前部から前方上方に延出されるダッシュパネルとを備えて、ダッシュパネル及びフロアパネルに亘って硬質のフロアパッドを載置し、フロアパッドの後部に接当してフロアパッドの車体前後方向での位置を決める位置決め部材を備える。車体が前方から衝突してダッシュパネルが後方に移動すると、フロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分が車体後方に移動することを許容する許容手段を備える。
【0008】
(作用)
本発明の第1特徴によると、フロアパッドがダッシュパネル及びフロアパネルに亘って載置されており、フロアパッドの後部が位置決め部材に接当して、フロアパッドの車体前後方向での位置が決められている。
この状態において本発明の第1特徴によれば、車体が前方から衝突してダッシュパネルが後方に移動すると、フロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分が、起立するダッシュパネルにより車体後方に押される。この場合、フロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分は、車体前後方向に比較的長く且つ硬質なものなので、前方に寝たような傾斜を持つダッシュパネルが上方に大きく起立するような状態となっても、フロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分が、ダッシュパネル及びフロアパネルに載置された状態での姿勢を略維持しながら車体後方に移動するような状態が期待できる。
【0009】
これにより、本発明の第1特徴によると、フロアパッドにおけるダッシュパネルの部分が上方に大きく起立することなく、フロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分が車体後方に移動し、フロアパッドによって乗員の足が車体後方に押されるような状態が期待できる。
前述のように、フロアパッドによって乗員の足が車体後方に押されるような状態が期待できれば、ダッシュパネル及びフロアパネルの各部に補強を施して、車体が前方から衝突してもダッシュパネルが変形し難いように構成することを、必要以上に行わなくてもよくなる。
【0010】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、車両のフロア構造において、車体が前方から衝突してダッシュパネルが後方に移動し、前方に寝たような傾斜を持つダッシュパネルが上方に大きく起立するような状態となっても、フロアパッドを有効に利用することにより、ダッシュパネルの影響を受けることなく、フロアパッドによって乗員の足が車体後方に押されるような状態が期待できるようになって、上方に大きく起立したダッシュパネルによって乗員の足が傷められる可能性を低減させることことができた。
本発明の第1特徴によると、ダッシュパネル及びフロアパネルの各部に補強を施して、車体が前方から衝突してもダッシュパネルが変形し難いように構成することを、必要以上に行わなくてもよいので、重量の増加を抑えると言う面でも有利なものとなる。
【0011】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の車両のフロア構造において次のように構成することにある。
位置決め部材が車体左右方向に沿って配置されるクロスメンバーであり、フロアパッドの後部がクロスメンバーに接当することにより、フロアパッドの車体前後方向での位置が決められるように構成する。
【0012】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
車両では一般に、クロスメンバーが車体左右方向に沿ってフロアパネルに配置されている。
本発明の第2特徴によると、フロアパッドの後部がクロスメンバーに接当することにより、フロアパッドの車体前後方向での位置が決められており、クロスメンバーが位置決め部材に兼用されているので、フロアパッドの車体前後方向での位置を決める為の専用の位置決め部材が不要になる(専用の位置決め部材を備えたとしても、小規模の位置決め部材でよくなる)。
【0013】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、既存の部材であるクロスメンバーを有効に利用することにより、フロアパッドの車体前後方向での位置を決める為の専用の位置決め部材が不要になって(専用の位置決め部材を備えたとしても、小規模の位置決め部材でよくなって)、構造の簡素化の面で有利なものとなった。
【0014】
[III]
(構成)
本発明の第3特徴は、本発明の第1又は第2特徴の車両のフロア構造において次のように構成することにある。
フロアパッドのフロアパネルの部分に、車体の側面視で前方下方及び後方上方に亘る切断部を備えることにより、許容手段を構成する。
【0015】
(作用)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第3特徴によると、車体が前方から衝突してダッシュパネルが後方に移動し、フロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分が、起立するダッシュパネルにより車体後方に押されると、位置決めされているフロアパッドの切断部から車体後方の部分に対して、フロアパッドの切断部から車体前方の部分(フロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分)が、車体後方に移動してフロアパッドの切断部から車体後方の部分に乗り上げるような状態となる。
【0016】
前述のような状態になると、フロアパッドの切断部から車体前方の部分(フロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分)が、ダッシュパネル及びフロアパネルに載置された状態での姿勢を略維持しながら車体後方に移動する状態が期待できるのであり、フロアパッドの切断部から車体前方の部分(フロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分)の後部が、持ち上げられるような状態となるので、フロアパッドのダッシュパネルの部分が車体後方に移動しながら車体前方に寝るような状態が期待できる。
【0017】
(発明の効果)
本発明の第3特徴によると、本発明の第1又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第3特徴によると、車両のフロア構造において、車体が前方から衝突してダッシュパネルが後方に移動し、前方に寝たような傾斜を持つダッシュパネルが上方に大きく起立するような状態となっても、フロアパッドのダッシュパネルの部分が車体後方に移動しながら車体前方に寝るような状態が期待できるようになって、上方に大きく起立したダッシュパネルによって乗員の足が傷められる可能性を低減させることことができた。
【0018】
[IV]
(構成)
本発明の第4特徴は、本発明の第1又は第2特徴の車両のフロア構造において次のように構成することにある。
フロアパッドのフロアパネルの部分に、車体の側面視で前方上方及び後方下方に亘る切断部を備えることにより、許容手段を構成する。
【0019】
(作用)
本発明の第4特徴によると、本発明の第1又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第4特徴によると、車体が前方から衝突してダッシュパネルが後方に移動し、フロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分が、起立するダッシュパネルにより車体後方に押されると、位置決めされているフロアパッドの切断部から車体後方の部分に対して、フロアパッドの切断部から車体前方の部分(フロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分)が、車体後方に移動してフロアパッドの切断部から車体後方の部分の下側に入り込むような状態となる。
【0020】
前述のような状態になると、フロアパッドの切断部から車体前方の部分(フロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分)の後部が、フロアパッドの切断部から車体後方の部分とフロアパネルとによって上下から挟み込まれるような状態となり、フロアパッドの切断部から車体前方の部分(フロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分)の姿勢が、挟み込みによって保持される状態が期待できるので、フロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分が、ダッシュパネル及びフロアパネルに載置された状態での姿勢を略維持しながら車体後方に移動する状態がさらに期待できる。
【0021】
(発明の効果)
本発明の第4特徴によると、本発明の第1又は第2特徴と同様に前項[I][II]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第4特徴によると、車両のフロア構造において、車体が前方から衝突してダッシュパネルが後方に移動し、前方に寝たような傾斜を持つダッシュパネルが上方に大きく起立するような状態となっても、ダッシュパネル及びフロアパネルに載置された状態での姿勢を略維持しながら車体後方に移動する状態がさらに期待できるようになって、上方に大きく起立したダッシュパネルによって乗員の足が傷められる可能性を低減させることことができた。
【0022】
[V]
(構成)
本発明の第5特徴は、本発明の第1〜第4特徴の車両のフロア構造のうちのいずれか一つにおいて次のように構成することにある。
フロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分の上方に、ブレーキペダルが配置されている。
【0023】
(作用)
本発明の第5特徴によると、本発明の第1〜第4特徴のうちのいずれか一つと同様に前項[I]〜[IV]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第5特徴によると、運転席の前方下方のフロアパッドとなる。この場合、本発明の第5特徴によると、ブレーキペダルを踏む為に、運転席に着座する乗員はフロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分に足を置くことが多くなる。従って、この状態において車体が前方から衝突してダッシュパネルが後方に移動して、フロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分が車体後方に移動した場合、フロアパッドによって乗員の足が車体後方に押されるような状態がさらに期待できる。
【0024】
(発明の効果)
本発明の第5特徴によると、本発明の第1〜第4特徴のうちのいずれか一つと同様に前項[I]〜[IV]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第5特徴によると、車両のフロア構造において、車体が前方から衝突してダッシュパネルが後方に移動し、前方に寝たような傾斜を持つダッシュパネルが上方に大きく起立するような状態となっても、フロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分が車体後方に移動した場合、フロアパッドによって乗員の足が車体後方に押されるような状態がさらに期待できるようになって、上方に大きく起立したダッシュパネルによって乗員の足が傷められる可能性を低減させることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は乗用車における右側の運転席(図示せず)の前方下方において、フロアの付近を示しており、フロアパネル1、フロアパネル1の前部から前方上方に延出されるダッシュパネル2が備えられており、フロアパネル1の後部にクロスメンバー3(位置決め部材に相当)が車体左右方向に沿って配置されている。ダッシュパネル2(後述するフロアパッド4の前側部5)の上方に、吊り下げ式のブレーキペダル9が配置されている。
【0026】
図2及び図3(イ)に示すように、ダッシュパネル2及びフロアパネル1に亘って、硬質のフロアパッド4(例えば硬質の発砲スチロール等)が載置されており、フロアパッド4は前側部5及び後側部6の前後二分割構造となっている。フロアパッド4の前側部5はダッシュパネル2及びフロアパネル1に亘って載置されるもので、所定の厚み(クロスメンバー3と略同じ高さ、又はクロスメンバー3よりも少し低い程度の高さ)を備えた平板状に形成されている。
【0027】
図2及び図3(イ)に示すように、フロアパッド4の前側部5の左端部に、フットレスト部5aが形成されて車体前方に延出され、フロアパッド4の前側部5の右前部に、車体前方に延びる延出部5bが備えられている。フロアパッド4の前側部5の後部の車体左右方向の全幅に亘って傾斜面5cが形成されており、フロアパッド4の前側部5がダッシュパネル2及びフロアパネル1に亘って載置された状態で、フロアパッド4の前側部5の傾斜面5cが車体の側面視で前方下方及び後方上方に沿った状態となっている(フロアパッド4の前側部5の傾斜面5cが車体の側面視で後方下方に向いた状態となっている)。
【0028】
図2及び図3(イ)に示すように、フロアパッド4の後側部6はフロアパネル1に載置されるもので、所定の厚み(クロスメンバー3と略同じ高さ、又はクロスメンバー3よりも少し低い程度の高さ)を備えた平板状に形成されており、フロアパッド4の後側部6の底部に空調用のダクト7を通す為の凹部6aが備えられている。フロアパッド4の後側部6の前部の車体左右方向の全幅に亘って傾斜面6bが形成されており、フロアパッド4の後側部6がフロアパネル2に載置された状態で、フロアパッド4の後側部6の傾斜面6bが車体の側面視で前方下方及び後方上方に沿った状態となっている(フロアパッド4の後側部6の傾斜面6bが車体の側面視で前方上方に向いた状態となっている)。
【0029】
図2及び図3(イ)に示すように、フロアパッド4の前及び後側部5,6をダッシュパネル2及びフロアパネル1に亘って載置した状態において、フロアパッド4の前側部5がダッシュパネル2及びフロアパネル1に亘って載置され、フロアパッド4の前及び後側部5,6の傾斜面5c,6bが重ね合わされており、フロアパッド4の後側部6の後部がクロスメンバー3の前壁部に接当している。フロアパッド4の前及び後側部5,6が略同じ高さとなっており、フロアパッド4の前及び後側部5,6にカーペット8が載置されている。この場合、運転座席(図示せず)に着座する乗員はフロアパッド4の前側部5に足Aを置くことが多いと予想される。
【0030】
図3(イ)に示す状態おいて、フロアパッド4の前側部5がダッシュパネル2に載置されている点、フロアパッド4の前及び後側部5,6の傾斜面5c,6bが重ね合わされる点、及びフロアパッド4の後側部6の後部がクロスメンバー3の前壁部に接当している点により、フロアパッド4(前及び後壁部5,6)の車体前後方向での位置が決められる。フロアパッド4の前及び後側部5,6の傾斜面5c,6bによって切断部Sが形成されるのであり、切断部Sが車体の側面視で前方下方及び後方上方に亘る状態となる(許容手段に相当)。
【0031】
図3(イ)に示す状態において、車体が前方から衝突してダッシュパネル2が後方に移動すると、図3(ロ)に示すように、フロアパッド4の前側部5が、起立するダッシュパネル2により車体後方に押される状態となる。この場合、フロアパッド4の後側部6がクロスメンバー3により位置決めされているので、位置決めされているフロアパッド4の後側部6に対して、フロアパッド4の前側部5が車体後方に移動しながら、フロアパッド4の前側部5の傾斜面5cがフロアパッド4の後側部6の傾斜面6bに乗り上げるような状態となる。図3(ロ)に示すような状態になると、フロアパッド4の前側部5がダッシュパネル2及びフロアパネル1に載置された状態での姿勢(図3(イ)参照)を略維持しながら車体後方に移動する状態が期待できるのであり、フロアパッド4の前側部5の後部が持ち上げられるような状態となるので、フロアパッド4の前側部5が車体後方に移動しながら車体前方に寝るような状態が期待できる。
【0032】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]に代えて、図4(イ)(ロ)に示すように構成してもよい。
図4(イ)に示すように、フロアパッド4が前側部5及び後側部6の前後二分割構造に構成されており、フロアパッド4の前側部5の後部の車体左右方向の全幅に亘って傾斜面5cが形成されて、フロアパッド4の前側部5がダッシュパネル2及びフロアパネル1に亘って載置された状態で、フロアパッド4の前側部5の傾斜面5cが車体の側面視で前方上方及び後方下方に沿った状態となっている(フロアパッド4の前側部5の傾斜面5cが車体の側面視で後方上方に向いた状態となっている)。
【0033】
図4(イ)に示すように、フロアパッド4の後側部6の前端部の車体左右方向の全幅に亘って傾斜面6bが形成されており、フロアパッド4の後側部6がフロアパネル1に載置された状態で、フロアパッド4の後側部6の傾斜面6bが車体の側面視で前方上方及び後方下方に沿った状態となっている(フロアパッド4の後側部6の傾斜面6bが車体の側面視で前方下方に向いた状態となっている)。フロアパッド4の前側部5がダッシュパネル2に載置されている点、フロアパッド4の前及び後側部5,6の傾斜面5c,6bが重ね合わされる点、及び、フロアパッド4の後側部6の後部がクロスメンバー3の前壁部に接当している点により、フロアパッド4(前及び後壁部5,6)の車体前後方向での位置が決められる。フロアパッド4の前及び後側部5,6の傾斜面5c,6bによって切断部Sが形成されるのであり、切断部Sが車体の側面視で前方上方及び後方下方に亘る状態となる(許容手段に相当)。
【0034】
図4(イ)に示す状態において、車体が前方から衝突してダッシュパネル2が後方に移動すると、図4(ロ)に示すように、フロアパッド4の前側部5が、起立するダッシュパネル2により車体後方に押される状態となる。この場合、フロアパッド4の後側部6がクロスメンバー3により位置決めされているので、位置決めされているフロアパッド4の後側部6に対して、フロアパッド4の前側部5が車体後方に移動してフロアパッド4の後側部6の下側に入り込むような状態となる。図4(ロ)に示すような状態になると、フロアパッド4の前側部5の後部がフロアパッド4の後側部6とフロアパネル1とによって上下から挟み込まれるような状態となり、フロアパッド4の前側部5の姿勢が挟み込みによって保持される状態が期待できるので、フロアパッド4の前側部5がダッシュパネル2及びフロアパネル1に載置された状態での姿勢(図4(イ)参照)を略維持しながら車体後方に移動する状態が期待できる。
【0035】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態]に代えて、図5(イ)(ロ)に示すように構成してもよい。
図5(イ)に示すように、フロアパッド4が前後二分割構造に構成されずに一体的に構成されており、フロアパッド4の後部の車体左右方向の全幅に亘って傾斜面4aが形成されている。
【0036】
図5(イ)に示すように、フロアパッド4がダッシュパネル2及びフロアパネル1に亘って載置された状態で、フロアパッド4の傾斜面4aが車体の側面視で前方下方及び後方上方に沿った状態となっており(フロアパッド4の傾斜面4aが車体の側面視で後方下方に向いた状態となっており)、フロアパッド4の傾斜面4aがクロスメンバー3の前壁部に接当し、且つクロスメンバー3の前壁部よりも少し上側に位置している(許容手段に相当)。フロアパッド4がダッシュパネル2に載置されている点、及び、フロアパッド4の傾斜面4aがクロスメンバー3の前壁部に接当している点により、フロアパッド4の車体前後方向での位置が決められる。
【0037】
図5(イ)に示す状態において、車体が前方から衝突してダッシュパネル2が後方に移動すると、図5(ロ)に示すように、フロアパッド4が起立するダッシュパネル2によって車体後方に押される状態となる。この場合に、フロアパッド4が車体後方に移動しながら、フロアパッド4の傾斜面4aがクロスメンバー3に乗り上げるような状態となる。図5(ロ)に示すような状態になると、フロアパッド4がダッシュパネル2及びフロアパネル1に載置された状態での姿勢(図5(イ)参照)を略維持しながら車体後方に移動する状態が期待できるのであり、フロアパッド4の後部が持ち上げられるような状態となるので、フロアパッド4の前部が車体後方に移動しながら車体前方に寝るような状態が期待できる。
【0038】
図5(イ)に示す構造において、フロアパッド4の傾斜面4aを廃止し、車体の側面視で前方下方及び後方上方に沿った傾斜面(図示せず)(図3(イ)のフロアパッド4の後側部6の傾斜面6b参照)を、クロスメンバー3の前壁部に備えてもよい(許容手段に相当)。このように構成しても、車体が前方から衝突してダッシュパネル2が後方に移動した場合、図5(ロ)に示すような状態が得られる。
【0039】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態][発明の実施の第2別形態]に代えて、図6(イ)(ロ)に示すように構成してもよい。
図6(イ)に示すように、フロアパッド4が前後二分割構造に構成されずに一体的に構成されており、フロアパッド4のフロアパネル1の部分の底面に車体左右方向の全幅に亘る溝状の複数の凹部4bが、車体前後方向に沿って所定間隔を置いて形成されている(許容手段に相当)。フロアパッド4がダッシュパネル2に載置されている点、及び、フロアパッド4の後部がクロスメンバー3の前壁部に接当している点により、フロアパッド4の車体前後方向での位置が決められる。
【0040】
図6(イ)に示す状態において、車体が前方から衝突してダッシュパネル2が後方に移動すると、図6(ロ)に示すように、フロアパッド4の前側部5が、起立するダッシュパネル2により車体後方に押される状態となる。この場合、フロアパッド4の凹部4bが消えるように、フロアパッド4の凹部4bの付近が圧縮破壊されていくような状態となり、フロアパッド4の前部がダッシュパネル2及びフロアパネル1に載置された状態での姿勢(図6(イ)参照)を略維持しながら車体後方に移動する状態が期待できる。
【0041】
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態][発明の実施の第2別形態][発明の実施の第3別形態]において、上方に向く凸部(図示せず)をフロアパネル1に備え、フロアパネル1の凸部をフロアパッド4の後部(フロアパッド4の後側部6)の底面に係合させることにより、フロアパッド4(前及び後壁部5,6)の車体前後方向での位置が決められるように構成してもよい。この場合に、フロアパッド4の後部(フロアパッド4の後側部6の後部)をクロスメンバー3の前壁部に接当させてもよく、クロスメンバー3の前壁部から少し前方に離してもよい。
【0042】
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態][発明の実施の第2別形態][発明の実施の第3別形態]において、ダッシュパネル2及びフロアパネル1を一枚のパネルで一体的に形成したり、ダッシュパネル2とフロアパネル1とを溶接によって接続するように構成してもよい。この場合、溶接による接続部分は、フロアパネル1の中間部分や(ダッシュパネル2の一部がフロアパネル1に入り込んだ状態)、図3(イ)に示すフロアパネル1の前部の立ち上がり部分(角部)、ダッシュパネル2の中間部分(フロアパネル1の一部がダッシュパネル2に入り込んだ状態)であってもよい。
前述のように構成された場合において、フロアパネル1の前部の立ち上がり部分(角部)から前方上方の部分がダッシュパネル2となるのであり、フロアパネル1の前部の立ち上がり部分(角部)から後方の部分がフロアパネル1となる。
尚、本発明は、助手席の前方下方のフロアパッド4に対しても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】乗用車における右側の運転座席のフロアの付近の側面図
【図2】フロアパッドの前側部及び後側部の全体斜視図
【図3】(イ)ダッシュパネル及びフロアパネルに亘って載置された状態でのフロアパッドの前側部及び後側部の縦断側面図、(ロ)車体が前方から衝突してダッシュパネルが後方に移動した状態でのフロアパッドの前側部及び後側部の縦断側面図
【図4】発明の実施の第1別形態において、(イ)ダッシュパネル及びフロアパネルに亘って載置された状態でのフロアパッドの前側部及び後側部の縦断側面図、(ロ)車体が前方から衝突してダッシュパネルが後方に移動した状態でのフロアパッドの前側部及び後側部の縦断側面図
【図5】発明の実施の第2別形態において、(イ)ダッシュパネル及びフロアパネルに亘って載置された状態でのフロアパッドの縦断側面図、(ロ)車体が前方から衝突してダッシュパネルが後方に移動した状態でのフロアパッドの縦断側面図
【図6】発明の実施の第3別形態において、(イ)ダッシュパネル及びフロアパネルに亘って載置された状態でのフロアパッドの縦断側面図、(ロ)車体が前方から衝突してダッシュパネルが後方に移動した状態でのフロアパッドの縦断側面図
【符号の説明】
【0044】
1 フロアパネル
2 ダッシュパネル
3 位置決め部材、クロスメンバー
4 フロアパッド
9 ブレーキペダル
S 切断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルと、前記フロアパネルの前部から前方上方に延出されるダッシュパネルとを備えて、
前記ダッシュパネル及びフロアパネルに亘って硬質のフロアパッドを載置し、前記フロアパッドの後部に接当してフロアパッドの車体前後方向での位置を決める位置決め部材を備えると共に、
車体が前方から衝突して前記ダッシュパネルが後方に移動すると、前記フロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分が車体後方に移動することを許容する許容手段を備えてある車両のフロア構造。
【請求項2】
前記位置決め部材が車体左右方向に沿って配置されるクロスメンバーであり、前記フロアパッドの後部がクロスメンバーに接当することにより、前記フロアパッドの車体前後方向での位置が決められるように構成してある請求項1に記載の車両のフロア構造。
【請求項3】
前記フロアパッドのフロアパネルの部分に、車体の側面視で前方下方及び後方上方に亘る切断部を備えることにより、前記許容手段を構成してある請求項1又は2に記載の車両のフロア構造。
【請求項4】
前記フロアパッドのフロアパネルの部分に、車体の側面視で前方上方及び後方下方に亘る切断部を備えることにより、前記許容手段を構成してある請求項1又は2に記載の車両のフロア構造。
【請求項5】
前記フロアパッドにおけるダッシュパネルとフロアパネルとに亘る部分の上方に、ブレーキペダルが配置されている請求項1〜4のうちのいずれか一つに記載の車両のフロア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−82671(P2006−82671A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−268958(P2004−268958)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】