説明

車両のミラー装置

【課題】防眩制御及び表示制御の実行を担保しつつ、車両のミラー装置としての小型化やそのコストの低減を図ることができる車両のミラー装置を提供する。
【解決手段】この車両のミラー装置は、EC素子12を通じて車両のルームミラーを防眩状態及び非防眩状態に選択的に切り替える防眩制御を実行するとともに、この防眩制御の実行を停止してミラーが非防眩状態であることを条件に液晶表示装置20を通じて車両後方の映像をミラーに表示させる表示制御を実行する。ここでは、EC素子12及び液晶表示装置20のLED22をそれぞれ駆動させる共用の駆動回路40を設けた上で、この駆動回路40を通じてEC素子12及びLED22を駆動させることで防眩制御及び表示制御を選択的に実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のミラー装置に関し、特に防眩機能を有するミラー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、この種の車両のミラー装置としては、例えば車室内に設けられて運転者による車両後方の視認を可能にするルームミラーに搭載されているものが周知である。このミラー装置は、例えば夜間走行時に後続車のヘッドライトの光がルームミラーにより反射されてその反射光が運転者の目に入るような状況下で、ルームミラーの反射率を変更させることにより、運転者の感じる眩しさを緩和するように機能する。また、こうしたミラー装置には、この防眩機能に加え、例えば車両進行方向の方位や車外の気温などを文字でミラーに表示したり、あるいは車両後部に取り付けられたカメラを通じて逐次撮像される車両後方の様子をミラーに映し出すなど、各種情報をミラーに表示する表示機能を有しているものもある。そして従来、こうした車両のミラー装置としては、例えば特許文献1に記載のミラー装置がある。図3は、この特許文献1に記載のミラー装置を含めて、従来一般のミラー装置についてその正面構造を、また、図4は、図3のIV−IV線に沿った断面構造をそれぞれ示したものである。
【0003】
同図3に示されるように、このミラー装置は、開口部1aの形成されたハウジング1と、このハウジング1の開口部1aに嵌合されるミラー2とから構成されている。
ここで、図4に示されるように、ミラー2は、ハウジング1の開口部1aから外部に露出する部分となるガラス基板11の背面に、EC(Electrochromic)素子12、及びガラス基板13が順次積層された構造を有している。ここで、EC素子12は、有機高分子からなるEC膜12bを透明電極膜12a及び反射電極膜12cによって挟持した構造からなる。ちなみに、EC膜12bは、通常は無色であり、透明電極膜12a及び反射電極膜12cの間に所定の電圧が印加されると酸化還元反応が生じて着色される物性を有している。一方、反射電極膜12cは、導電性に加えて、光反射性及び半透過性を有する部材からなり、図中に二点鎖線で示されるように、ガラス基板11から入射した入射光Riを反射する部分としても機能する。そして、このミラー装置にあっては、透明電極膜12a及び反射電極膜12cの間に所定の電圧を印加させてEC膜12bを着色させることにより、EC膜12bの光透過率が低下する。これにより、反射電極膜12cで反射された反射光Rrの光量が減少するようになるため、ミラー2を防眩状態にすることができるようになる。
【0004】
一方、このミラー2の背面には、例えば車両後方の様子を撮像する撮像装置(図示略)を通じて取得された映像を表示する液晶ディスプレイ21と、基板23に実装されて液晶ディスプレイ21のバックライトとして機能する発光ダイオード(LED)22とから構成される液晶表示装置20が配設されている。そして、このミラー装置では、上述のように、反射電極膜12cが半透過性の部材からなるため、図中に2点鎖線で示されるように、LED22から放射された光Lは液晶ディスプレイ21及び反射電極膜12cを通過してミラー2の表面から外部へと放射される。すなわち、LED22が点灯しているとき、先の図3の2点鎖線にて囲んだ領域Aに液晶ディスプレイ21の映像が映し出されるようになる。ちなみに、上記ミラー2が防眩状態であるとき、すなわちEC素子12が有色状態であるときには、LED22から放射された光LがEC素子12を通過し難くなるため、ミラー2に液晶ディスプレイ21の映像が映り難くなる。このため、ミラー2に液晶ディスプレイ21の映像を映し出す際には、上記EC素子12が無色状態であること、すなわち上記ミラー2が非防眩状態であることが望ましい。一方、LED22が消灯しているとき、上記領域Aから液晶ディスプレイ21の表示が消えて、液晶ディスプレイ21が運転者から見えなくなる。
【0005】
車両のミラー装置としてのこうした構成によれば、ミラー2を防眩状態にすることで運転者の感じる眩しさを緩和することができるようになるとともに、文字情報や映像情報などの各種情報をミラー2に表示することができるようになるため、運転者の利便性が大きく向上するようになる。また、ミラー2に各種情報を表示する必要がないときには、LED22を消灯させることで液晶ディスプレイ21を運転者から見えなくさせることができるため、運転者にとって見栄えの良いミラー2を実現することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2006−520718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、こうした車両のミラー装置にあっては、例えば車両周辺の光量、及び車両後方からミラー2に入射される光量をそれぞれ検出しつつ、検出される光量に基づいてEC素子12の印加電圧を変化させることにより、ミラー2を防眩状態及び非防眩状態に選択的に切り替える防眩制御を実行するようにしたものがある。具体的には、図5に示されるように、このミラー装置は、車両周辺の光量を検出するためにハウジング1の背面に設けられた周囲光量センサ31と、車両後方からミラー2に入射される光量を検出するためにハウジング1の前面に設けられた後方光量センサ32とを有している。そして、上記後方光量センサ32により検出された光量が上記周囲光量センサ31により検出された光量よりも大きい旨を判定したとき、上記EC素子12に電圧を印加させてミラー2を防眩状態にさせる。ミラー装置としてこうした防眩制御を実行することにより、例えば夜間走行時に後続車のヘッドライトの光がミラー2に入射したときにミラー2が自動的に防眩状態になるため、運転者の利便性が向上するようになる。
【0008】
一方、上記車両のミラー装置にあっては、例えば車両のシフトポジションが「R(リバース)ポジション」に切り替えられた旨を検出したときに、上記LED22を点灯させてミラー2に液晶ディスプレイ21の映像、すなわち車両後方の様子を映し出す表示制御を実行するようにしたものがある。ちなみに、こうしたミラー装置では、ミラー2に液晶ディスプレイ21の映像を映し出すことができるように、この表示制御の実行に併せて、上記防眩制御を停止して上記ミラー2を非防眩状態に維持する処理も併せて行う。ミラー装置としてこうした表示制御を実行することにより、例えば運転者が車両を後退させようとして車両のシフトポジションを「Rポジション」に切り替えたときに、自動的にミラー2に車両後方の様子が映し出されるようになるため、運転者の車両操作を支援することができるようになる。
【0009】
ただし、こうしたミラー装置にあっては、上記防眩制御及び上記表示制御を実行するために、上記EC素子12の印加電圧を変化させるための駆動回路や、上記LED22の点灯及び消灯の切替を行うための駆動回路を設ける必要があるため、このことがミラー装置全体としての大型化やそのコストの増大を招く一つの要因となっている。
【0010】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、防眩制御及び表示制御の実行を担保しつつ、車両のミラー装置としての小型化やそのコストの低減を図ることができる車両のミラー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両ミラーを防眩状態及び非防眩状態に選択的に切り替える防眩構造と、前記ミラーが非防眩状態であるときに前記ミラーに各種情報を表示することが可能な表示装置とを備え、前記防眩構造を通じて前記ミラーを防眩状態及び非防眩状態に選択的に切り替える防眩制御を実行するとともに、該防眩制御の実行を停止して前記ミラーが非防眩状態に維持されていることを条件に前記表示装置を通じて前記各種情報を前記ミラーに表示させる表示制御を実行する車両のミラー装置において、前記防眩構造及び前記表示装置をそれぞれ駆動させる共用の駆動回路を備え、該共用の駆動回路を通じて前記防眩構造及び前記表示装置をそれぞれ駆動させることで前記防眩制御及び前記表示制御を選択的に実行するようにしたことを要旨としている。
【0012】
同構成によるように、防眩構造及び表示装置をそれぞれ駆動させる駆動回路を共用するようにすれば、例えば表示装置を駆動させるための駆動回路を当該ミラー装置から省略することができるため、装置としての小型化やそのコストの低減を図ることができるようになる。また、共用の駆動回路を通じて防眩構造及び表示装置を駆動させて防眩制御及び表示制御を選択的に実行するといった構成であれば、上述した従来のミラー装置と同様に防眩制御の実行を停止しつつ表示制御を実行することができるため、防眩制御及び表示制御を従来のミラー装置と同程度の態様で実行することができる。すなわちこれにより、防眩制御及び表示制御の実行を担保しつつ、車両のミラー装置としての小型化やそのコストの低減を図ることができるようになる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両のミラー装置において、前記防眩構造は、前記ミラーに内蔵されて印加電圧に応じて光透過率が変化するEC素子により構成され、同素子の光透過率を変化させることにより前記ミラーを防眩状態及び非防眩状態に選択的に切り替えるものであるとともに、前記駆動回路は、前記EC素子への電圧の印加及びその停止を切り替える第1のスイッチング素子、及び前記電圧の印加を通じて前記EC素子に蓄積された電荷の放電及びその停止を切り替える第2のスイッチング素子から構成されるものであって、前記防眩構造による前記ミラーの防眩状態及び非防眩状態の切替が、前記第1及び第2のスイッチング素子のそれぞれのオン/オフの切替を通じて行われるとともに、前記表示装置による前記各種情報の表示及び非表示の切替が、前記第2のスイッチング素子のオン/オフの切替を通じて行われることを要旨としている。
【0014】
防眩構造がEC(Electrochromic)素子により構成されている車両のミラー装置では、一般に、同EC素子を駆動する駆動回路が、以下の(a1)及び(a2)に示される第1及び第2のスイッチング素子を有して構成されている。
【0015】
(a1)オン/オフの切替を通じてEC素子への電圧の印加及びその停止を切り替える第1のスイッチング素子。すなわち、この第1のスイッチング素子がオンされたとき、ミラーは防眩状態となる。
【0016】
(a2)オン/オフの切替を通じてEC素子に蓄積された電荷の放電及びその停止を切り替える第2のスイッチング素子。すなわち、この第2のスイッチング素子がオンされたとき、ミラーは非防眩状態となる。
【0017】
ところで、こうしたミラー装置では、例えばEC素子に電荷が蓄積されていない状態で、換言すれば同素子に電圧が印加されていない状態で第2のスイッチング素子のオン/オフの切替が行われたとしても、EC素子に電圧が印加されることはないため、ミラーは非防眩状態に維持される。このため、上記構成によるように、表示装置による各種情報の表示及び非表示の切り替えを第2のスイッチング素子のオン/オフの切替を通じて行うようにすれば、防眩制御の実行を停止した状態を維持したまま、表示制御を実行することができるようになる。したがって、防眩制御の実行を停止してミラーが非防眩状態に維持されていることを条件に表示制御を実行するといった構成を容易に実現することができるようになる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両のミラー装置において、車両のシフトポジションを検出するシフトポジション検出手段と、車両後方の様子を撮像してその映像データを取得する撮像装置とを更に備え、前記表示装置は、前記撮像装置を通じて取得された映像データに基づく映像を前記ミラーに表示するものであって、前記表示制御が、前記シフトポジション検出手段を通じて車両のシフトポジションがリバースポジションに切り替えられた旨を検出したときに実行されることを要旨としている。
【0019】
前述のように、防眩機能を有している車両のミラー装置には、車両後方の様子を撮像する撮像装置と、この撮像装置を通じて取得される映像データに基づく映像をミラーに映し出す表示装置とを有して、ミラーが非防眩状態であることを条件としてミラーに車両後方の様子を映し出す機能を有したものがある。そして、こうしたミラー装置は、運転者が車両を後退させているときに車両後方の様子をミラーに映し出すことにより、運転者の車両操作を支援するように機能することも前述の通りである。したがって、上記構成によるように、車両のシフトポジションがリバースポジションに切り替えられた旨を検出したときに表示制御を実行することが、運転者の車両操作を支援する上で、特に有効である。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる車両のミラー装置によれば、防眩制御及び表示制御の実行を担保しつつ、車両のミラー装置としての小型化やそのコストの低減を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明にかかる車両のミラー装置の一実施形態についてその概略構成を模式的に示す回路図。
【図2】(a)〜(d)は、同実施形態のミラー装置についてその動作例を示すタイミングチャート。
【図3】従来の車両のミラー装置についてその正面構造を示す正面図。
【図4】図3のIV−IV線に沿った断面構造を示す断面図。
【図5】同従来の車両のミラー装置についてその側面構造を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明にかかる車両のミラー装置を具体化した一実施形態について図1及び図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態にかかる車両のミラー装置の概略構成を示したものであり、はじめに、この図1を参照して、このミラー装置の構成を具体的に説明する。なお、この図1に示されるミラー装置の構成は、基本的には、先の図3〜図5に例示した車両のミラー装置の構成と同様である。なおこの図1において、先の図3〜図5に示した要素と同一の機能を有する要素には各々同一の符号を付して示しており、それらの要素についての重複する説明は割愛する。
【0023】
すなわち、この図1に示される車両のミラー装置も、運転者による車両後方の視認を可能にするルームミラーに搭載されるものであって、ミラーに内蔵されたEC素子12の光透過率を変化させることによりミラーを防眩状態及び非防眩状態に選択的に切り替える防眩制御を実行する。また、このミラー装置も、車両後方の様子を撮像してその映像データを取得する撮像装置34と、この撮像装置34を通じて取得された映像データに基づく映像を表示する液晶表示装置20とを有し、ミラーが非防眩状態であることを条件としてミラーに液晶表示装置20の映像を映し出す表示制御を実行する。そして、このミラー装置も、車両周囲の光量を検出する周囲光量センサ31と、車両後方からミラーに入射される光量を検出する後方光量センサ32とを有して、これら各センサ31,32の出力、並びに車両の変速制御装置33が把握しているシフトポジションの情報に基づいて、上記防眩制御及び表示制御を実行する。ちなみに、この変速制御装置33は、車両のシフトポジションが「P(パーキング)ポジション」、「N(ニュートラル)ポジション」、「D(ドライブポジション)」、及び「R(リバース)ポジション」のいずれかであるかを検出して、検出されたシフトポジションに応じて自動変速機の変速比を制御する変速制御を実行する部分である。
【0024】
図1に示されるように、このミラー装置は、基本的にはEC素子12を駆動させるために設けられた駆動回路40を備えており、この装置では、この駆動回路40を利用して上記液晶表示装置20の発光ダイオード(LED)22を駆動させるようにしている。すなわち、駆動回路40は、EC素子12及びLED22を駆動させる共用の駆動回路として機能する。そして、このミラー装置では、この駆動回路40の駆動制御が制御装置50を通じて統括的に行われている。
【0025】
ここで、駆動回路40は、制御装置50によってオン/オフの切替が行われるPNP型トランジスタ41及びNPN型トランジスタ42をそれぞれ有して構成されている。
これらのうち、PNP型トランジスタ41は、そのエミッタ端子に定電圧「+Va」が印加されるとともに、そのコレクタ端子に第1の出力端子b1を介して上記EC素子12の反射電極膜12cが接続されている。すなわち、このPNP型トランジスタ41は、EC素子12への定電圧「+Va」の印加及びその停止を切り替える第1のスイッチング素子として機能する。具体的には、例えば制御装置50によってPNP型トランジスタ41がオンされると、EC素子12の反射電極膜12cに定電圧「+Va」が印加される。ところで、本実施形態にかかるミラー装置では、EC素子12の反射電極膜12cに対向して配置された透明電極膜12aがグランド電位におかれているため、反射電極膜12cに定電圧「+Va」が印加されると、これらの電極膜12a,12cの間に電荷が蓄積される。これにより、電極膜12a,12cの間に配置されているEC膜12bが無色状態から有色状態へと変化し、ミラーが防眩状態となる。
【0026】
また、この駆動回路40では、PNP型トランジスタ41のコレクタ端子とEC素子12とを接続する経路(配線)に、ダイオード43を介して上記NPN型トランジスタ42のコレクタ端子が接続されている。ちなみに、このNPN型トランジスタ42のエミッタ端子は接地されている。そして、この駆動回路40では、例えばPNP型トランジスタ41がオフ状態であるときに上記制御装置50によってNPN型トランジスタ42がオンされると、EC素子12の反射電極膜12cが接地される。これにより、EC素子12に蓄積されている電荷が短時間で放電されるため、EC膜12bが有色状態から無色状態へと即座に変化する。このように、NPN型トランジスタ42は、EC素子12に蓄積された電荷の放電及びその停止を切り替える第2のスイッチング素子として機能する。
【0027】
そして、本実施形態にかかる車両のミラー装置では、上記ダイオード43とNPN型トランジスタ42のコレクタ端子とを接続する経路に第2の出力端子b2が接続されるとともに、この第2の出力端子b2に、定電圧「+Vb」が印加された上記液晶表示装置20のLED22が接続されている。すなわち、LED22は、NPN型トランジスタ42がオンされたときに定電圧「+Vb」が印加されて点灯するとともに、NPN型トランジスタ42がオフされたときに消灯する。ちなみに、この駆動回路40では、定電圧「+Vb」がLED22を介してEC素子12に印加される給電経路をダイオード43によって遮断することにより、ミラーが常時防眩状態となることを回避するようにしている。
【0028】
一方、上記周囲光量センサ31及び後方光量センサ32のそれぞれの出力信号、シフトポジション検出手段としての変速制御装置33が把握しているシフトポジションの情報、及び上記撮像装置34を通じて取得される映像データの情報は、上記制御装置50に入力されている。
【0029】
この制御装置50は、マイクロコンピュータを中心に構成されて、入力される出力信号等に基づいて上記トランジスタ41,42のオン/オフの切替を行うことによって上記防眩制御及び表示制御を実行する部分である。
【0030】
すなわち、この制御装置50は、例えば後方光量センサ32により検出された光量の値から上記周囲光量センサ31により検出された光量を減算した値(差分値)を算出して、算出された差分値に基づいて上記防眩制御を実行する。具体的には、この制御装置50は、例えば光量の差分値が所定の閾値よりも大きい旨を判定したとき、上記PNP型トランジスタ41を所定時間だけオンさせる。これにより、EC素子12に定電圧「+Va」が印加されて同素子12に電荷が蓄積されるため、ミラーが防眩状態となる。一方、制御装置50は、例えば上記差分の値が所定の閾値よりも小さい旨を判定したとき、上記NPN型トランジスタ42を所定時間だけオンさせる。これにより、EC素子12に蓄積された電荷が放電されるため、ミラーが非防眩状態となる。
【0031】
また、この制御装置50は、上記変速制御装置33が把握している車両のシフトポジションの情報を取得して同シフトポジションが「Rポジション」に切り替えられた旨を検出したとき、防眩制御の実行を停止して上記表示制御を実行する。具体的には、制御装置50は、車両のシフトポジションが「Rポジション」に切り替えられた旨を検出したとき、まずは防眩制御の実行を停止すべく、上記PNP型トランジスタ41をオンさせていたときにはこれをオフさせるとともに、上記NPN型トランジスタ42をオンさせる。これにより、ミラーが非防眩状態となるため、液晶ディスプレイ21の映像をミラーの表面上に映し出すことが可能となる。また、制御装置50は、このようにNPN型トランジスタ42をオンさせることでLED22を点灯させ、上記液晶ディスプレイ21の映像をミラーの表面上に映し出す表示制御を実行する。
【0032】
ちなみに、このミラー装置では、ミラーが非防眩状態であるときに、すなわちEC素子12に電圧が印加されていないときにNPN型トランジスタ42のオン/オフの切替が行われたとしても、EC素子12に電圧が印加されることはないため、ミラーは非防眩状態に維持される。このため、NPN型トランジスタ42を利用してLED22を点灯させるようにすれば、防眩制御の実行を停止した状態を維持したまま、表示制御を実行することができる、換言すれば防眩制御及び表示制御を選択的に実行することができるようになる。このように、本実施形態にかかるミラー装置では、共用の駆動回路40を通じてEC素子12及びLED22をそれぞれ駆動させるといった構成を採用しつつも、上述した従来のミラー装置と同様に防眩制御の実行を停止しつつ表示制御を実行することができるため、各制御を従来のミラー装置と同程度の態様で実行することができる。
【0033】
図2は、制御装置50による防眩制御及び表示制御の実行に基づく当該ミラー装置の動作例をタイミングチャートとして示したものであり、以下、この図2を参照して、ミラー装置としての動作を詳述する。なお、この例は、ミラーが防眩状態であるときに、運転者が車両を後退させようとして車両のシフトポジションを「Dポジション」から「Rポジション」に切り替えた場合の動作例を示している。
【0034】
例えばいま、時刻t1で運転者が車両のシフトポジションを「Rポジション」に切り替えたとすると、その旨が変速制御装置33を通じて検出される。すなわち、図2(a)に示されるように、この時刻t1をもって、車両のシフトポジションが「Rポジション」に切り替えられた旨が検出される。そして、このように車両のシフトポジションが「Rポジション」に切り替えられた旨が検出されると、図2(b)に示されるように、ミラーが防眩状態から非防眩状態へと変化するとともに、図2(c),(d)に示されるように、上記LED22が点灯して上記液晶ディスプレイ21の映像がミラーに映し出される。これにより、運転者はミラーに映し出された車両後方の様子を見ながら車両を後退させることができるため、運転者の車両操作を支援することができるようになる。
【0035】
車両のミラー装置としてのこうした構成によれば、EC素子12の印加電圧を変化させるための駆動回路40を利用して、より詳細にはNPN型トランジスタ42を利用してLED22を点灯させることができるため、LED22を点灯させるための駆動回路を当該ミラー装置から省略することができる。また、上述のように、防眩制御及び表示制御を従来のミラー装置と同程度の態様で実行することもできる。すなわちこれにより、防眩制御及び表示制御の実行を担保しつつ、車両のミラー装置としての小型化やそのコストの低減を図ることができるようになる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態にかかる車両のミラー装置によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)防眩構造としてのEC素子12を駆動させる駆動回路40を利用してLED22を駆動させるようにした上で、この駆動回路40を通じてEC素子12及びLED22を駆動させることで防眩制御及び表示制御を選択的に実行するようにした。これにより、LED22を点灯させるための駆動回路を当該ミラー装置から省略することができるようになるとともに、防眩制御及び表示制御を従来のミラー装置と同程度の態様で実行することもできるようになる。したがって、防眩制御及び表示制御の実行を担保しつつ、車両のミラー装置としての小型化やそのコストの低減を図ることができるようになる。
【0037】
(2)LED22のオン/オフの切替を、EC素子12に蓄積された電荷の放電及びその停止を切り替えるNPN型トランジスタ42のオン/オフの切替を通じて行うようにした。これにより、共用の駆動回路40を通じてEC素子12及びLED22をそれぞれ駆動させるといった構成を採用しながら、防眩制御の実行を停止しつつ表示制御を実行するといった構成を容易に実現することができるようになる。
【0038】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、車両後方の映像をミラーに表示する液晶表示装置20を設けた上で、この液晶表示装置20のLED22を駆動回路40を通じて駆動させるようにしたが、これに代えて、例えば車外の気温などを文字でミラーに表示する表示装置を設けた上で、この表示装置を駆動回路40を通じて駆動させるようにしてもよい。要は、ミラーが非防眩状態であるときにミラーに各種情報を表示することが可能な表示装置であればよい。
【0039】
・例えば車外の気温などをミラーに文字で表示する表示装置を設けるようにした場合には、文字を表示する期間に合わせて、表示制御の実行を開始する時期を変更するようにしてもよい。具体的には、例えば車両のシフトポジションが「Pポジション」に切り替えられた旨が検出されたときに表示制御を実行したり、あるいは車両が停止している旨が検出されたときに表示制御を実行したりしてもよい。
【0040】
・上記実施形態では、車両後方の映像をミラーに表示する表示装置として、液晶表示装置20を用いるようにしたが、これに代えて、例えば電流を流すと発光する性質を有する有機EL(Electro−Luminescence)を利用した表示装置を用いるようにしてもよい。
【0041】
・上記実施形態では、EC素子12への定電圧の印加及びその停止を切り替える第1のスイッチング素子、及びEC素子12に蓄積された電荷の放電及びその停止を切り替える第2のスイッチング素子として、トランジスタ41,42を用いるようにしたが、これに代えて、例えば電界効果トランジスタ(FET)を用いるようにしてもよい。
【0042】
・上記実施形態では、本発明にかかる車両のミラー装置をルームミラーに搭載するようにしたが、これに代えて、例えば車両ドアに装着されるサイドミラーに搭載するようにしてもよい。
(付記)
次に、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
【0043】
(イ)請求項3に記載の車両のミラー装置において、前記表示装置は、バックライトの点灯及び消灯の切替に基づいて液晶ディスプレイによる前記映像の表示及び非表示の切替を行う液晶表示装置であって、前記第2のスイッチング素子は、オン/オフの切替を通じて前記バックライトの点灯及び消灯の切替を行うものであることを特徴とする車両のミラー装置。表示装置が、バックライトの点灯及び消灯の切替に基づいて液晶ディスプレイによる映像の表示及び非表示の切替を行う、いわゆる液晶表示装置である場合には、上記構成を採用することで、共用の駆動回路を通じて防眩制御及び表示制御を選択的に実行するといった構成を容易に実現することができるようになる。
【0044】
(ロ)請求項1〜3、及び付記イのいずれか一項に記載の車両のミラー装置において、前記車両ミラーは、車室内に設けられて運転者による車両後方の視認を可能にするルームミラーであることを特徴とする車両のミラー装置。車両のルームミラーは、一般に、各種機器を搭載することのできるスペースが限られているため、こうしたルームミラーに搭載されるミラー装置に、上記請求項1〜3及び付記イに記載の発明の構成が採用されることの意義は大きい。
【符号の説明】
【0045】
1…ハウジング、1a…開口部、2…ミラー、11…ガラス基板、12…EC素子、12a…透明電極膜、12b…EC膜、12c…反射電極膜、13…ガラス基板、20…液晶表示装置、21…液晶ディスプレイ、22…発光ダイオード(LED)、23…基板、31…周囲光量センサ、32…後方光量センサ、33…変速制御装置、34…撮像装置、40…駆動回路、41…PNP型トランジスタ、42…NPN型トランジスタ、43…ダイオード、50…制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ミラーを防眩状態及び非防眩状態に選択的に切り替える防眩構造と、前記ミラーが非防眩状態であるときに前記ミラーに各種情報を表示することが可能な表示装置とを備え、前記防眩構造を通じて前記ミラーを防眩状態及び非防眩状態に選択的に切り替える防眩制御を実行するとともに、該防眩制御の実行を停止して前記ミラーが非防眩状態に維持されていることを条件に前記表示装置を通じて前記各種情報を前記ミラーに表示させる表示制御を実行する車両のミラー装置において、
前記防眩構造及び前記表示装置をそれぞれ駆動させる共用の駆動回路を備え、該共用の駆動回路を通じて前記防眩構造及び前記表示装置をそれぞれ駆動させることで前記防眩制御及び前記表示制御を選択的に実行するようにした
ことを特徴とする車両のミラー装置。
【請求項2】
前記防眩構造は、前記ミラーに内蔵されて印加電圧に応じて光透過率が変化するEC素子により構成され、同素子の光透過率を変化させることにより前記ミラーを防眩状態及び非防眩状態に選択的に切り替えるものであるとともに、
前記駆動回路は、前記EC素子への電圧の印加及びその停止を切り替える第1のスイッチング素子、及び前記電圧の印加を通じて前記EC素子に蓄積された電荷の放電及びその停止を切り替える第2のスイッチング素子から構成されるものであって、
前記防眩構造による前記ミラーの防眩状態及び非防眩状態の切替が、前記第1及び第2のスイッチング素子のそれぞれのオン/オフの切替を通じて行われるとともに、
前記表示装置による前記各種情報の表示及び非表示の切替が、前記第2のスイッチング素子のオン/オフの切替を通じて行われる
請求項1に記載の車両のミラー装置。
【請求項3】
車両のシフトポジションを検出するシフトポジション検出手段と、車両後方の様子を撮像してその映像データを取得する撮像装置とを更に備え、前記表示装置は、前記撮像装置を通じて取得された映像データに基づく映像を前記ミラーに表示するものであって、前記表示制御が、前記シフトポジション検出手段を通じて車両のシフトポジションがリバースポジションに切り替えられた旨を検出したときに実行される
請求項1又は2に記載の車両のミラー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−173460(P2010−173460A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18028(P2009−18028)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】