説明

車両の制御装置

【課題】運転者の嗜好に合致した車両の走行性能を実現する。
【解決手段】ECUは、運転者により入力されたモードを検知するステップ(S100)と、アクセル開度TAを検知して、アクセル開度TAおよびアクセル操作速度dTAから操作ポテンシャルPtaを算出するステップ(S200)と、Ptaがモードに応じて設定されたしきい値を超えた回数をCOUNT値として計数するステップ(S300)と、COUNT値がモードに応じて設定されたしきい値以上になると(S400にてYES)、スポーツ方向に運転者意思レベルを学習するステップ(S500)とを含む、プログラムを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源と変速機とを有するパワートレーンが搭載された車両の制御装置に関し、特に、運転者の嗜好に合致するような車両の挙動を実現できる車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンに接続される自動変速機は、一般に、運転者のアクセル操作量と、車速とによって変速比を決定して自動制御するようになっており、通常の走行時は、アクセル操作量が小さいほど、また、車速が大きいほど、それぞれ変速比は高速側に設定されている。
【0003】
このような自動変速機の制御に関して、特表平9−501482号公報(特許文献1)は、自動変速機の変速挙動を特定の運転者タイプの挙動に近づけることを目的とした自動変速機の制御装置を開示する。この制御装置は、運転者−車両系から導き出された入力変数の検出のための手段、入力変数の従属関数(ファジイ集合)の生成のための手段および変速比の変更のための手段を有し、入力変数の検出のための手段と従属関数の生成のための手段が、変速比を決定する出力変数がファジイ生成規則により確定されるように相互作用する、自動変速機の変速比の変更のための制御装置であって、少なくとも入力変数、スロットル弁位置(絶対アクセルペダル位置)および変位運動(アクセルペダル位置の時間的変化の大きさおよび方向)がファジイ生成規則により互いに組み合わせられ、この組合わせの結果生じる運転者の出力要求を表す量がファジイ生成規則の基本規則群および補助規則群のための入力変数をなすことを特徴とする。
【特許文献1】特表平9−501482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された制御装置を用いれば、運転者の運転操作に基づいて運転者の運転態様(コンフォート(快適性)、エコノミー(経済性)、スポーツ(運動性)等々)を識別して、変速制御に反映させることもできる。たとえば、このような運転態様に応じて変速線図を変更して、自動変速機は、アップシフトし難くダウンシフトし易いように制御されたり、ダウンシフトし難くアップシフトし易いように制御されたりする。ところで、このような運転態様を検知するための走行モードスイッチ(コンフォート、スポーツ、エコノミー等を手動で切換える)が設けられ、運転者が手動で運転態様を選択できる車両も存在する。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された制御装置のように、選択された走行モードに関わらず一律に学習制御を実行すると、運転者の運転態様の要求を適切に反映できないおそれがある。その結果、車両の走行時において、運転者の嗜好が反映されず、運転者の期待や予測しない車両の挙動により運転者が違和感を覚えることもある。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、運転者の嗜好に合致した車両の走行性能を実現できる、車両の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る車両の制御装置は、車両の運転者により入力された制御嗜好を検知するための検知手段と、運転者の運転操作に基づいて運転者の運転嗜好を推定するための推定手段と、嗜好を満足するように、車両を制御するための制御手段とを含む。推定手段は、検知された制御嗜好に応じて推定手段による推定態様を変更させて、運転嗜好を推定するための手段を含む。
【0008】
第1の発明によると、運転者は自身の制御嗜好を入力して、入力された制御嗜好は検知手段により検知される。この制御嗜好として、たとえば、車両の運動性を重視するスポーツ嗜好、車両の快適性を重視するコンフォート嗜好、車両の経済性を重視するエコノミー嗜好等がある。検知手段は、たとえば、モード選択スイッチにより選択されたスポーツ、コンフォートおよびエコノミーから1つのモードを検知する。推定手段は、たとえば、運転者がアクセルペダルを大きく速く踏み込むような操作を検知すると運転者の運転嗜好が運動性を重視するスポーツ性が高いと推定する。このような操作が繰り返し検知されると、運転嗜好はスポーツ性が高いと学習する。このとき、推定手段は、選択された制御嗜好(スポーツ、コンフォートおよびエコノミー)により、たとえばスポーツ性を学習する度合いを変化させる。すなわち、スポーツモードでないときにはあまり積極的にスポーツ性を高めるように学習しないで、スポーツモードであるときには積極的にスポーツ性を高めるように学習する。このようにすると、制御嗜好としてスポーツ嗜好が選択されていない場合において、運転者がアクセルペダルを大きく強く踏み込んでもさほどスポーツ性が高い運転嗜好であるとは学習されないので、運転嗜好を的確に学習することができる。その結果、運転者の嗜好に合致した車両の走行性能を実現できる、車両の制御装置を提供することができる。
【0009】
第2の発明に係る制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、推定手段は、運転者により操作される部材の操作量および操作量の変化率の少なくともいずれかが予め定められたしきい値を超えたことに基づいて、運転嗜好を推定するための手段を含む。制御嗜好は、車両走行性重視の第1の制御嗜好、経済性重視の第2の制御嗜好および快適性重視の第3の制御嗜好の中の2つ以上の制御嗜好を含む。制御装置は、第1の制御嗜好が選択されている場合には、第2の制御嗜好および第3の制御嗜好のいずれかが選択されている場合に比べて、しきい値を低く設定するための設定手段をさらに含む。
【0010】
第2の発明によると、推定手段により、運転者により操作される部材の操作量(アクセル開度)や操作量の変化率(アクセル操作速度)が予め定められたしきい値を超えると、運転嗜好をスポーツ性が高いと推定する。この場合において、車両走行性重視の第1の制御嗜好が選択されている場合には、選択されていない場合に比べて、しきい値が低く設定されているので、運転嗜好をスポーツ性が高いとより推定され易くなる。逆に、車両走行性重視の第1の制御嗜好が選択されていない場合には、選択されている場合に比べて、しきい値が高く設定されているので、運転嗜好をスポーツ性が高いとより推定されにくくなる。このようにすると、制御嗜好としてスポーツ嗜好が選択されていない場合において、運転者がアクセルペダルを大きく強く踏み込んでもさほどスポーツ性が高い運転嗜好であるとは学習されないので、運転嗜好を的確に学習することができる。
【0011】
第3の発明に係る制御装置においては、第2の発明の構成に加えて、推定手段は、しきい値を超えた回数が予め定められた回数を超えたことに基づいて、運転嗜好を推定するための手段を含む。設定手段は、第1の制御嗜好が選択されている場合には、第2の制御嗜好および第3の制御嗜好のいずれかが選択されている場合に比べて、しきい値および予め定められた回数を低く設定するための手段を含む。
【0012】
第3の発明によると、推定手段により、運転者により操作される部材の操作量(アクセル開度)や操作量の変化率(アクセル操作速度)が予め定められたしきい値を超えた回数が予め定められた回数を超えると、運転嗜好をスポーツ性が高いと推定する。この場合において、車両走行性重視の第1の制御嗜好が選択されている場合には、選択されていない場合に比べて、しきい値が低く回数が低く設定されているので、運転嗜好をスポーツ性が高いとより推定され易くなる。逆に、車両走行性重視の第1の制御嗜好が選択されていない場合には、選択されている場合に比べて、しきい値が高く回数も高く設定されているので、運転嗜好をスポーツ性が高いとより推定されにくくなる。このようにすると、制御嗜好としてスポーツ嗜好が選択されていない場合において、短い時間の間に、運転者がアクセルペダルを大きく強く踏み込んでもさほどスポーツ性が高い運転嗜好であるとは学習されないので、短い時間でも運転嗜好を的確に学習することができる。
【0013】
第4の発明に係る制御装置においては、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、制御手段は、車両に搭載された動力源と動力源に接続された自動変速機とを制御するための手段を含む。
【0014】
第4の発明によると、車両に搭載された動力源であるエンジンとそのエンジンに接続された自動変速機とを制御して、制御嗜好および的確に学習された運転嗜好に応じた出力になるように、制御することができる。
【0015】
第5の発明に係る制御装置は、第4の発明の構成に加えて、運転者の操作および嗜好に基づいて、車両が発生すべき駆動力を算出するための算出手段をさらに含む。制御手段は、要求駆動力を実現するように、動力源および自動変速機の少なくともいずれかを制御するための手段を含む。
【0016】
第5の発明によると、駆動力要求型といわれる制御システムにおいて、運転者の操作および的確に学習された嗜好に基づいて、車両が発生すべき駆動力を算出して、その要求駆動力に基づいてエンジンや自動変速機を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
【0018】
図1に、本発明の実施の形態に係る制御装置であるECUを含む車両のパワートレーンについて説明する。
【0019】
図1に示すように、この車両には、エンジン100と、トルクコンバータ200と、自動変速機300と、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)500と、ECU500にアクセルペダルの開度を示す信号を入力するアクセルペダル開度センサ600とを含む。なお、本実施の形態に係る制御装置は、このようなパワートレーンを有する車両に限定されて適用されるものではない。このパワートレーンの構成要素に加えて、エンジンをアシストするモータ(モータジェネレータ)を有していてもかまわない。さらに、エンジンを有さないで、駆動源としてモータ(モータジェネレータ)のみを有するパワートレーンであってもよい。なお、以下の説明においては、図1に示すようにエンジン100、トルクコンバータ200および自動変速機300を有するパワートレーンについて適用される車両制御について説明する。
【0020】
ECU500は、エンジン100に対して、スロットル開度指令信号などの制御信号を出力し、エンジン回転数信号などの検知信号を受信する。
【0021】
また、ECU500は、トルクコンバータ200のロックアップクラッチに係合または開放(スリップを含む)を指令する制御信号を出力する。また、ECU500は、自動変速機300に対して油圧指令信号である制御信号を出力したり、自動変速機300から出力軸回転数信号などの検知信号が入力されたりする。
【0022】
自動変速機300は、流体継手と歯車式の有段変速機構またはベルト式やトラクション式の無段変速機構とから構成されるものが多い。この流体継手としては、トルクコンバータ200があり、このトルクコンバータ200は、ロックアップクラッチを備える。ロックアップクラッチはトルクコンバータ200の駆動側の部材(エンジン100側のポンプインペラー)と従動側の部材(自動変速機300側のタービンライナ)とを機械的に直接連結するものである。そのため、燃費の向上と乗心地とを両立させることができる。このようなロックアップクラッチを係合させるロックアップ領域を、通常、たとえば車速とスロットル開度とに基づいて設定している。
【0023】
アクセルペダル開度センサ600は、運転者により操作されるアクセルペダルの開度を検知するものである。このアクセルペダル開度センサ600の代わりに、スロットルバルブ開度センサであってもよい。
【0024】
この車両には、運転者によって操作される、運転者自身の運転についての嗜好(制御嗜好)を入力するために、走行モードを入力するためのスイッチが設けられている。たとえば、このモードには、運転性の向上をより強く望むスポーツモード、快適性の向上をより強く望むコンフォートモード、経済性の向上をより強く望むエコノミーモード等がある。モード入力スイッチは、たとえば、3種類(スポーツ、コンフォート、エコノミー)のいずれかを選択できるスイッチである。ECU500は、このモード選択スイッチにより選択されているモードで表わされる運転嗜好に基づいて、運転者の嗜好を的確に学習することになる。
【0025】
ここで、コンフォートとは、NV(Noise & Vibration)特性を向上させることを優先させる運転モードであるとする。また、エコノミーとは、燃費特性を向上させることを優先させる運転モードであるとする。
【0026】
なお、エンジン100の回転数をNe(エンジン回転数)、トルクコンバータ200の出力軸回転数をNt(タービン回転数)、自動変速機300の出力軸回転数をNo(出力回転数)とする。
【0027】
図2を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU500で実行されるプログラムの制御構造について説明する。
【0028】
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ECU500は、運転者により入力されたモードを検知する。ここでは、スポーツ(以下、記号「S」で表わすことがある)、コンフォート(以下、記号「C」で表わすことがある)、エコノミー(以下、記号「E」で表わすことがある)の3つのいずれが詮索される。
【0029】
S200にて、ECU500は、アクセル開度TAを検知する。ECU500は、このアクセル開度TAを時間微分してアクセル操作速度dTAを算出する。ECU500は、これらのアクセル開度TAとアクセル操作速度dTAとをパラメータとした関数Fにより表わされる操作ポテンシャルPtaを算出する。操作ポテンシャルPtaは、F(dTA、TA)で表わされる。たとえば、この関数Fは、アクセル開度TAが大きいほど、アクセル操作速度dTAが速いほど、大きな値(=Pta)になる関数である。
【0030】
S300にて、ECU500は、予め定められた時間間隔dTの間において、操作ポテンシャルPtaが操作ポテンシャルしきい値Pth(X)(X=S,C,E)を超えた回数をカウントした回数値COUNTを算出する。このとき、モード選択スイッチで選択されたスポーツ(S)、コンフォート(C)、エコノミー(E)に対応して、それぞれ、Pth(S)、Pth(C)、Pth(E)が設定されている。なお、Pth(S)が最も小さい。すなわち、スポーツモードの時が、回数値COUNTが大きくなり易い。
【0031】
S400にて、ECU500は、回数値COUNTがカウントしきい値Cth(X)以上であるか否かを判断する。すなわち、予め定められた時間間隔dTの中で、操作ポテンシャルが操作ポテンシャルしきい値を超えた回数がカウントしきい値Cth(X)(X=S,C,E)以上であるか否かが判断される。なお、この操作ポテンシャル値も、モード選択スイッチで選択されたスポーツ(S)、コンフォート(C)、エコノミー(E)に対応して、それぞれ、Cth(S)、Cth(C)、Cth(E)が設定されている。なお、Cth(S)が最も小さい。すなわち、スポーツモードの時が、回数値COUNTがカウントしきい値以上になり易い。回数値COUNTがカウントしきい値Cth(X)以上であると(S400にてYES)、処理はS500へ移される。もしそうでないと(S400にてNO)、処理はS600へ移される。
【0032】
S500にて、ECU500は、スポーツ方向に運転者意思レベルを移動させることにより、運転者意思レベル(運転嗜好)を学習する。
【0033】
S600にて、ECU500は、学習完了であるか否かを判断する。学習完了であると判断されると(S600にてYES)、この処理は終了する。もしそうでないと(S600にてNO)、この処理はS100へ戻される。
【0034】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置であるECU500の動作について説明する。
【0035】
車両の走行中において、運転者により入力されたモードが検知される(S100)。運転者がアクセルペダルを踏む毎に、アクセル開度TAが検知され、アクセル操作速度dTAが算出され、アクセル開度TAおよびアクセル操作速度dTAとを変数とした関数Fを用いて、操作ポテンシャルPtaが算出される(S200)。この操作ポテンシャルPtaはスポーツ嗜好が強いほど大きくなる。
【0036】
予め定められた時間間隔をdTとして、操作ポテンシャルPtaが操作ポテンシャルしきい値Pth(X)以上になった回数をカウントした回数値COUNTを算出して、その回数値COUNTがカウントしきい値Cth(X)以上であると(S400にてYES)、スポーツ方向に運転者意思レベルを移動させて学習する(S500)。図2に示すように(ここでは、コンフォートモードとスポーツモードの2種類のモードしか示さないが)、コンフォートモードとスポーツモードとでは、初期値がini(C)とini(S)とで異なり、最大値がmax(C)とmax(S)とで異なる。さらに、学習速度も異なり、スポーツモードの方が速くなるように設定されている。なお、この学習速度は、たとえば、S300のdTを変更することにより実現できる。
【0037】
運転者がアクセルペダルを大きくかつ速く踏み込むと、操作ポテンシャルPtaが大きく算出される(S200)。このとき、コンフォートモードが選択されていると想定すると、操作ポテンシャルしきい値Pth(C)が操作ポテンシャルしきい値Pth(S)よりも大きいので、スポーツモードが選択されているときに比べて、操作ポテンシャルPが操作ポテンシャルしきい値Pth(C)を越え難くなり、回数値COUNTが大きくなりにくくなる。
【0038】
これに加えて、カウントしきい値Cth(C)がカウントしきい値Cth(S)よりも大きいので、スポーツモードが選択されているときに比べて、回数値COUNTがカウントしきい値Cth(C)以上になりにくくなり、スポーツ方向への学習が進まない。
【0039】
逆に、スポーツモードが選択されていると想定すると、操作ポテンシャルしきい値Pth(S)が操作ポテンシャルしきい値Pth(C)よりも小さいので、コンフォートモードが選択されているときに比べて、操作ポテンシャルPが操作ポテンシャルしきい値Pth(S)を越え易くなり、回数値COUNTが大きくなりやすくなる。
【0040】
これに加えて、カウントしきい値Cth(S)がカウントしきい値Cth(C)よりも小さいので、コンフォートモードが選択されているときに比べて、回数値COUNTがカウントしきい値Cth(C)以上になりにすく、スポーツ方向への学習が進みやすい。
【0041】
以上のようにして、本実施の形態に係る車両の制御装置によると、運転者の運転嗜好に基づいて学習する際に、設定されている運転モードの状態に応じてその学習の内容を変更させた。スポーツモードが選択されているときには、よりスポーツ的になるように、コンフォートモードが選択されているときには、あまりスポーツ的にならないように、学習する。これにより、選択された運転モードとは相反するような操作を運転者が行っても、その相反する影響を大きく受けないように運転者の嗜好を学習することができる。
【0042】
なお、このS500において学習された運転者意思レベルに基づいて、車両が制御される。すなわち、運転者意思レベルのスポーツ方向への学習値が大きくなると、運転者の操作に対して応答性よく(運動特性を優先させて)、駆動力を発生させたり制動力を発生させたり旋回力を発生させたりする。このような駆動力や制動力は、トルクディマンド制御により実現される。これは、運転者のアクセルペダル操作とは独立にエンジン出力トルクを制御することが可能なエンジンと自動変速機とを備えた車両において、運転者のアクセルペダル操作量や車両の運転条件等(ここでは運転者レベルのスポーツ方向への学習値になる)に基づいて算出された正負の目標駆動トルクを、エンジントルクと自動変速機の変速ギヤ比および制動装置の制動力で実現する制御である。この制御においては、目標駆動トルクの作成によって車両の動特性を容易に変えることが可能である。
【0043】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施の形態に係る車両の制御装置であるECUを含む制御ブロック図である。
【図2】ECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
100 エンジン、200 トルクコンバータ、300 自動変速機、500 ECU、600 アクセルペダル開度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者により入力された制御嗜好を検知するための検知手段と、
前記運転者の運転操作に基づいて前記運転者の運転嗜好を推定するための推定手段と、
前記嗜好を満足するように、前記車両を制御するための制御手段とを含み、
前記推定手段は、前記検知された制御嗜好に応じて前記推定手段による推定態様を変更させて、前記運転嗜好を推定するための手段を含む、車両の制御装置。
【請求項2】
前記推定手段は、運転者により操作される部材の操作量および前記操作量の変化率の少なくともいずれかが予め定められたしきい値を超えたことに基づいて、前記運転嗜好を推定するための手段を含み、
前記制御嗜好は、車両走行性重視の第1の制御嗜好、経済性重視の第2の制御嗜好および快適性重視の第3の制御嗜好の中の2つ以上の制御嗜好を含み、
前記制御装置は、前記第1の制御嗜好が選択されている場合には、前記第2の制御嗜好および第3の制御嗜好のいずれかが選択されている場合に比べて、前記しきい値を低く設定するための設定手段をさらに含む、請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記推定手段は、前記しきい値を超えた回数が予め定められた回数を超えたことに基づいて、前記運転嗜好を推定するための手段を含み、
前記設定手段は、前記第1の制御嗜好が選択されている場合には、前記第2の制御嗜好および第3の制御嗜好のいずれかが選択されている場合に比べて、前記しきい値および前記予め定められた回数を低く設定するための手段を含む、請求項2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、車両に搭載された動力源と前記動力源に接続された自動変速機とを制御するための手段を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記運転者の操作および前記嗜好に基づいて、車両が発生すべき駆動力を算出するための算出手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記要求駆動力を実現するように、前記動力源および自動変速機の少なくともいずれかを制御するための手段を含む、請求項4に記載の車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−132465(P2007−132465A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327767(P2005−327767)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】