説明

車両の警報装置

【課題】少なくとも、障害物に対する自車両の衝突予測時間が所定時間よりも短くかつドライバの視線方向が当該障害物の方向でないときに、上記ドライバに対し警報を行うようにする場合に、警報のタイミングを適切に設定して、安全性を出来る限り向上させる。
【解決手段】自車両が走行している走行環境(自車両周辺の天候状態、自車両が走行している走行路の路面状態、自車両周辺の照度)を検知して、その検知された走行環境に応じて、上記所定時間を変更する(ステップS5〜S9)。例えば、天候状態が悪い場合には、天候状態が良い場合に比べて上記所定時間を長くする(ステップS5、S8及びS9)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両前方の障害物を検知するとともに、自車両のドライバの視線方向を検出して、その障害物の検知及び視線方向の検出結果に応じて、上記ドライバに対し警報を行うようにした車両の警報装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に示されているように、車室内に設けたカメラによりドライバの頭顔部を撮像して、その撮像された画像からドライバの視線方向を検出し、その検出結果に応じてドライバに対し警報を行う装置が知られている。この装置においては、上記検出される視線方向が正面方向にあるときには、前方障害物との衝突可能性が所定レベルに達したとき(具体的には、障害物に対する自車両の衝突予測時間が所定時間よりも短いとき)にドライバに対し警報を行う一方、上記視線方向が正面方向にないときには、障害物との衝突可能性が上記所定レベルに達する前から(つまり、上記所定時間を長くする)ドライバに向けて警報を行うようにしている。また、ドライバの視線方向の検出が適切に行われ得る状況にないと判定される場合には、その検出結果を無効にして、前方障害物との衝突可能性が上記所定レベルに達してからドライバに対し警報を行うようにしている。
【特許文献1】特開2007−72629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記従来の装置では、衝突予測時間に関して警報を行うための基準となる所定時間を、ドライバの視線方向が正面方向(障害物の方向)であるか否かに応じて変更するだけであり、これだけでは警報のタイミングが遅くなる場合がある。すなわち、例えば天候状態が悪い場合(雨等の場合)には、天候状態が良い場合(晴れの場合)に比べて、ドライバが障害物を認識するまでの時間が長くなるとともに、制動距離が長くなるので、そのことを考慮して警報を行う必要がある。
【0004】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、少なくとも、障害物に対する自車両の衝突予測時間が所定時間よりも短くかつドライバの視線方向が当該障害物の方向でないときに、上記ドライバに対し警報を行うようにする場合に、警報のタイミングを適切に設定して、安全性を出来る限り向上させようとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、この発明では、自車両が走行している走行環境を検知して、その検知された走行環境に応じて、上記所定時間を変更するようにした。
【0006】
具体的には、請求項1の発明では、自車両前方の障害物を検知する障害物検知手段と、自車両のドライバの視線方向を検出する視線方向検出手段と、上記障害物検知手段により検知された障害物に対して自車両が衝突するまでの時間である衝突予測時間を算出する衝突予測時間算出手段と、少なくとも、上記衝突予測時間算出手段により算出された上記障害物に対する自車両の衝突予測時間が所定時間よりも短くかつ上記視線方向検出手段により検出された上記ドライバの視線方向が当該障害物の方向でないときに、上記ドライバに対し警報を行う警報手段とを備えた車両の警報装置を対象とする。
【0007】
そして、自車両が走行している走行環境を検知する走行環境検知手段と、上記走行環境検知手段により検知された走行環境に応じて、上記所定時間を変更する変更手段とを備えているものとする。
【0008】
上記の構成により、走行環境検知手段によって、自車両が走行している走行環境(例えば天候状態や路面状態、自車両周辺の照度等)が検知され、変更手段によって、その検知された走行環境に応じて所定時間が変更される。例えば、天候状態が悪い場合には、天候状態が良い場合に比べて上記所定時間を長くすれば、ドライバに対し警報を早く行うことができ、安全性を向上させることができる。このように、ドライバが障害物を認識し難い環境や制動距離が長くなる環境を自車両が走行している際の安全性を向上させることができる。
【0009】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、上記走行環境検知手段は、自車両周辺の天候状態を検知する天候状態検知手段を含み、上記変更手段は、上記天候状態検知手段により検知された天候状態が悪い場合には、該天候状態が良い場合に比べて上記所定時間を長くするように構成されているものとする。
【0010】
このことにより、天候状態が悪い場合(雨、雪、霧等の場合)に、天候状態が良い場合(晴れ(曇りを含めてもよい)の場合)に比べて、ドライバに対し警報を早く行うことができ、安全性を向上させることができる。
【0011】
請求項3の発明では、請求項2の発明において、上記天候状態検知手段は、自車両周辺を撮像する撮像カメラ、自車両のウインドガラスを払拭するワイパの作動を検知するワイパ作動検知手段、及び、フォグランプの点灯を検知するフォグランプ点灯検知手段のうちの少なくとも1つで構成されているものとする。
【0012】
このことで、簡単な構成で、天候状態を容易に検知することができる。
【0013】
請求項4の発明では、請求項1の発明において、上記走行環境検知手段は、自車両が走行している走行路の路面状態を検知する路面状態検知手段を含み、上記変更手段は、上記路面状態検知手段により検知された路面状態がウェット状態である場合には、該路面状態がドライ状態である場合に比べて上記所定時間を長くするように構成されているものとする。
【0014】
こうすることで、路面状態が、制動距離が長くなるようなウェット状態である場合に、路面状態がドライ状態である場合に比べて所定時間が長くされ、この結果、ウェット状態である場合に、ドライ状態である場合に比べて、ドライバに対し警報を早く行うことができ、安全性を向上させることができる。
【0015】
請求項5の発明では、請求項1の発明において、上記走行環境検知手段は、自車両周辺の照度を検知する照度検知手段を含み、上記照度検知手段により検知された照度が所定値以下である場合には、該照度が該所定値よりも大きい場合に比べて上記所定時間を長くするように構成されているものとする。
【0016】
このことにより、夜間やトンネル内等のように自車両周辺の照度が所定値以下である場合に、該照度が該所定値よりも大きい場合に比べて所定時間が長くされ、この結果、上記照度が所定値以下である場合に、該所定値よりも大きい場合に比べて、ドライバに対し警報を早く行うことができ、安全性を向上させることができる。
【0017】
請求項6の発明では、請求項1の発明において、自車両の走行速度を検知する走行速度検知手段と、上記走行速度検知手段により検知された走行速度が所定速度以下であるときに、上記警報手段の作動を停止させる警報停止手段とを更に備えているものとする。
【0018】
すなわち、自車両の走行速度が所定速度(例えば20km/h)以下であるときには、自車両が右折や左折をするようなときであって、ドライバの視線方向が、自車両が曲がる方向である場合が多く、このような状況で警報を行うと、ドライバに煩わしさ感を与えてしまう。しかし、本発明では、自車両の走行速度が所定速度以下であるときに、警報手段の作動を停止させるので、ドライバに煩わしさ感を与えるようなことはない。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によると、少なくとも、障害物に対する自車両の衝突予測時間が所定時間よりも短くかつドライバの視線方向が上記障害物の方向でないときに、上記ドライバに対し警報を行う警報手段を備えた車両の警報装置として、自車両が走行している走行環境を検知して、その検知された走行環境に応じて、上記所定時間を変更するように構成したことにより、ドライバが障害物を認識し難い環境や制動距離が長くなる環境を自車両が走行している際の安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る警報装置を搭載した車両C(自車両に相当)を示し、この車両Cの前端部に、車両Cの前方に存在する障害物を検知する障害物検知手段としてのレーダ装置1が設けられている。このレーダ装置1は、ミリ波レーダ装置であって、ミリ波を前方に向けて略水平方向に所定角度範囲を走査しながら発信する発信部と、車両Cの前方の障害物に当たって反射してくる反射波を受信する受信部とを有している。そして、レーダ装置1は、その受信部で受信(検知)した障害物と車両Cとの間の距離、車両Cに対する障害物の方向及び障害物と車両Cとの相対速度を検知して、その検知データを障害物検知情報として制御ユニット15(図2参照)に送信するようになっている。尚、レーダ装置1は、ミリ波レーダ装置に限らず、どのような種類のレーダ装置(例えばレーザレーダ装置)であってもよい。また、レーダ装置1に代えて、或いはレーダ装置1と共に、後述の前方撮像カメラ2により車両C前方の障害物を検知するようにすることもできる。
【0022】
上記車両Cの車室内前端部における天井近傍(フロントガラス25上端近傍)の車幅方向中央部には、車両C前方を撮像する前方撮像カメラ2(例えばCCDカメラ)が設けられており、この前方撮像カメラ2により撮像された画像データが、制御ユニット15に入力されるようになっている。本実施形態では、この前方撮像カメラ2は、後述の如く車両C周辺の天候状態を検知する天候状態検知手段としての役割を有している。
【0023】
上記制御ユニット15は、衝突予測時間算出部15aにて、現時点から、上記レーダ装置1により検知された障害物に対して車両Cが衝突するまでの時間である衝突予測時間を算出する。すなわち、レーダ装置1より入力された車両Cと障害物との間の距離を、車両Cと障害物との相対速度(車両Cが障害物に対して近付く場合を正とする)で割ることで衝突予測時間を求める。このことで、制御ユニット15の衝突予測時間算出部15aは、上記障害物に対する車両Cの衝突予測時間を算出する衝突予測時間算出手段を構成する。尚、上記相対速度が負である場合には、衝突予測時間を算出しないか、或いは極端に大きな値とする。
【0024】
そして、上記制御ユニット15は、後述の如く、警報制御部15bにて、上記衝突予測時間算出部15aにて算出された衝突予測時間及び後述の視線方向に基づいて、当該車両Cのドライバ40に対し警報を行うための警報装置20の作動を制御するとともに、ブレーキ制御部15fにて、上記衝突予測時間に基づいて、車両Cの各車輪31にブレーキ力を付与するための油圧ポンプ等を含む車輪ブレーキ作動手段21の作動を制御するようになっている。したがって、制御ユニット15の警報制御部15b及び警報装置20は、ドライバ40に対し警報を行う警報手段を構成する。尚、上記警報装置20は、ディスプレイやスピーカ、ブザー、LED等で構成される。
【0025】
上記車両Cにおけるステアリングホイール23のコラムカバー22の下側(上側であってもよい)には、当該車両Cのドライバ40の頭顔部を撮像するドライバ撮像カメラ3が配設されている。このドライバ撮像カメラ3は赤外線カメラであって、赤外線をドライバ40の頭顔部に向けて投光するとともに、その赤外光の頭顔部での反射光を撮影する。そして、このドライバ撮像カメラ3により撮像された画像データが制御ユニット15に入力されるようになっている。
【0026】
上記制御ユニット15は、視線方向検出部15cにて、上記ドライバ撮像カメラ3からの画像データに基づいて、ドライバ40の視線方向を検出するようになっている。具体的には、上記画像データに対して一般的な2値化処理を施すことにより、ピクセル毎のデジタル多値画像データに変換し、この多値画像データから、一般的な画像処理手法を用いてドライバ40の顔画像部分を抽出し、その抽出した顔画像部分に含まれる複数の特徴点(例えば目頭、目尻、鼻孔等)の位置を検出する。
【0027】
続いて、上記抽出した顔画像部分の画像データから、赤外光の投光によってドライバ40の眼球の角膜に発生している反射点の位置と瞳孔の位置とを、一般的な画像処理手法を用いて検出し、該検出した瞳孔の位置に対応する画像データの水平方向のピクセル数のうちの最大値を、瞳孔径として検出する。ここで、水平方向に注目するのは、垂直方向に注目した場合には瞬きにより正確な瞳孔径が検出できないからである。
【0028】
次いで、上記特徴点の位置に基づいて、所定の3次元座標空間におけるドライバ40の頭顔面の傾きを算出し、このことにより、ドライバ40の頭顔部が向けられている方向(頭顔方向)を計測する。
【0029】
続いて、上記角膜反射点と上記頭顔方向とに基づいて、ドライバ40の視線方向(注視方向)を検出し、その検出した注視方向と、予め記憶している車両C内外の所定位置(フロントガラス25の複数箇所に設定した所定位置、ルームミラーの取付位置、左右のドアミラーの取付位置、インストルメントパネルに設けたディスプレイの配設位置、メータユニットのスピードメータの配設位置等)とに基づいて、ドライバ40の注視点を検出する。
【0030】
そして、上記検出したドライバ40の注視点とドライバ40の左右両眼の中央とを結んだ線をドライバの視線方向の軸として求める。このことで、ドライバ撮像カメラ3及び制御ユニット15の視線方向検出部15cは、ドライバ40の視線方向を検出する視線方向検出手段を構成することになる。
【0031】
また、上記車両Cには、車両Cの走行速度を検知する走行速度検知手段としての車速センサ5と、車両Cに生じるヨーレートを検知するヨーレートセンサ6と、車両C周辺の照度を検知する照度検知手段としての照度センサ7と、車両Cのフロントガラス25を払拭するワイパを作動させるための、ドライバ40が操作可能なワイパスイッチ8と、車両Cのフォグランプを点灯させるための、ドライバ40が操作可能なフォグランプスイッチ9と、車両Cのヘッドライトを点灯させるための、ドライバ40が操作可能なヘッドライトスイッチ10と、車両Cが走行している走行路の路面状態を検知する路面状態検知手段としての路面状態検知装置11とが設けられ、これらからの情報が上記制御ユニット15に入力される。上記ワイパスイッチ8は、ワイパの作動を検知するワイパ作動検知手段を兼ねており、上記フォグランプスイッチ9は、フォグランプの点灯を検知するフォグランプ点灯検知手段を兼ねている。
【0032】
上記路面状態検知装置11は、波長が異なる光を路面に向けて投光して、その路面からの反射光を受光し、その受光した各波長の反射光のレベルを比較することで路面状態(ドライ状態、ウエット状態、アイスバーン状態)を判定するものである。すなわち、路面の状態によって反射光のスペクトラムが異なるので、各種の路面状態における反射光のスペクトラムを予め登録しておき、受光した反射光のスペクトラムと、予め登録しておいた反射光のスペクトラムとを比較することで、路面状態を判定する(例えば特開平8−247940号公報参照)。
【0033】
上記制御ユニット15は、警報制御部15bにおいて、上記衝突予測時間算出部15aにて算出された上記障害物に対する車両Cの衝突予測時間が所定時間よりも短くかつ上記視線方向検出部15bにて検出されたドライバ40の視線方向が当該障害物の方向でないとき(ドライバ40の視線方向の軸の延長線が、当該障害物を通らないとき)には、警報装置20を作動させて、ドライバ40に対し警報を行うようになっている。尚、衝突予測時間が所定時間よりも短いときであってドライバ40の視線方向が障害物の方向であるときにも、ドライバ40に対し警報を行うようにしてもよいが、このときの所定時間は、ドライバ40の視線方向が障害物の方向でないときよりも短くする。
【0034】
また、制御ユニット15は、ブレーキ制御部15fにおいて、上記衝突予測時間が、予め上記所定時間よりも短い時間に設定された設定時間よりも短くなったときには、ドライバ40の視線方向に関係なく、車輪ブレーキ作動手段21を作動させる。
【0035】
そして、上記制御ユニット15は、所定時間変更部15dにて、衝突予測時間に関して警報を行う際の基準となる上記所定時間を、車両Cが走行している走行環境(本実施形態では、車両C周辺の天候状態、車両Cが走行している走行路の路面状態、及び車両C周辺の照度)に応じて変更するようになっている。このことで、制御ユニット15の所定時間変更部15dは、車両Cが走行している走行環境に応じて上記所定時間を変更する変更手段を構成することになる。
【0036】
具体的には、制御ユニット15は、所定時間変更部15dにて、前方撮像カメラ2による撮像情報、ワイパスイッチ8及びフォグランプスイッチ9からの情報に基づいて、車両C周辺の天候状態が悪いか否かを判定して、天候状態が悪くない場合、つまり天候状態が良い場合(晴れ(曇りを含む)の場合)には、上記所定時間をt1とし、天候状態が悪い場合(雨、雪、霧等の場合)には、上記所定時間をt1よりも大きいt2とする。すなわち、前方撮像カメラ2により雨や雪が撮像されている場合や、ワイパスイッチ8がオンであってワイパが作動している場合や、フォグランプスイッチ9がオンであってフォグランプが点灯している場合には、天候状態が悪いと判定して、天候状態が良い場合に比べて上記所定時間を長くする。したがって、前方撮像カメラ2、ワイパスイッチ8及びフォグランプスイッチ9は、車両C周辺の天候状態を検知する天候状態検知手段を構成するとともに、車両Cが走行している走行環境を検知する走行環境検知手段を構成することになる。尚、天候状態検知手段としては、前方撮像カメラ2、ワイパスイッチ8及びフォグランプスイッチ9のうちの1つ又は2つであってもよく、これら以外に、例えば、車両C外部との通信により気象情報を入手可能なナビゲーション装置等であってもよい。
【0037】
また、制御ユニット15は、所定時間変更部15dにて、路面状態検知装置11からの情報に基づいて、車両Cが走行している走行路の路面状態がウェット状態又はアイスバーン状態であるか否かを判定して、路面状態がウェット状態又はアイスバーン状態でない、つまりドライ状態である場合には、上記所定時間をt1とし、路面状態がウェット状態又はアイスバーン状態である場合には、上記所定時間をt2とする。このことで、路面状態検知装置11も、上記走行環境検知手段を構成することになる。
【0038】
さらに、制御ユニット15は、所定時間変更部15dにて、照度センサ7からの情報に基づいて、車両C周辺の照度が所定値以下であるか否かを判定して、該照度が該所定値以下でない場合には、上記所定時間をt1とし、照度が所定値以下である場合(車両Cが夜間に走行している場合やトンネル内を走行している場合)には、上記所定時間をt2とする。このことで、照度センサ7も、上記走行環境検知手段を構成することになる。尚、照度センサ7の代わりに、ヘッドライトスイッチ10を用いてもよく、ヘッドライトスイッチ10がオンであってヘッドライトが点灯している場合には、車両C周辺の照度が所定値以下であるとしてもよい。或いは、前方撮像カメラ2による撮像画像の輝度により、車両C周辺の照度が所定値以下であるか否かを判定してもよい。
【0039】
尚、上記のように車両Cが走行している走行環境に応じて上記所定時間を変更した場合には、この所定時間の変更に対応して、衝突予測時間に関して車輪ブレーキ作動手段21を作動させる際の基準となる上記設定時間をも変更することが好ましい。例えば、天候状態が悪い場合には、天候状態が良い場合に比べて上記設定時間を長くすればよい。
【0040】
本実施形態では、制御ユニット15は、警報停止部15eにて、車速センサ5により検知された車両Cの走行速度が所定速度(例えば20km/h)以下であるとき、又は、ヨーレートセンサ6により検知された車両Cのヨーレートが、予め設定した設定値以上であるときには、上記警報制御部15bの作動を停止させる。この警報制御部15bの作動停止により、警報を行うための条件が満たされても警報は行われないことになる。すなわち、車両Cの走行速度が所定速度以下であるとき、又は、車両Cのヨーレートが設定値以上であるときには、車両Cが右折や左折をするとき、又は、急カーブを走行しているときであって、ドライバ40の視線方向が、車両Cが曲がる方向である場合が多く、このような状況で警報を行うと、ドライバ40に煩わしさ感を与えてしまうので、本実施形態では、警報制御部15bの作動を停止させるようにしている。このことで、制御ユニット15の警報停止部15eは、警報制御部15b(警報手段)の作動を停止させる警報停止手段を構成することになる。尚、車両Cの走行速度やヨーレートに関係なく警報制御部15bを作動させるようにしてもよい。
【0041】
ここで、上記制御ユニット15における警報処理動作を、図3のフローチャートに基づいて説明する。尚、この警報処理動作は、車両Cの走行速度が所定速度よりも大きくかつ車両Cのヨーレートが設定値よりも小さいときに行われる。
【0042】
最初のステップS1で、レーダ装置1より障害物検知情報を入力し、次のステップS2で、衝突予測時間算出部15aにて、レーダ装置1により検知された障害物に対する車両Cの衝突予測時間を算出する。
【0043】
そして、次のステップS3で、視線方向検出部15cにてドライバ40の視線方向を検出し、次のステップS4で、前方撮像カメラ2、照度センサ7、ワイパスイッチ8、フォグランプスイッチ9及び路面状態検知装置11から、天候状態等の走行環境情報を入力する。
【0044】
続いて、次のステップS5で、所定時間変更部15dにて、車両C周辺の天候状態が悪いか否かを判定し、このステップS5の判定がNOであるときには、ステップS6に進む一方、ステップS5の判定がYESであるときには、ステップS9に進む。
【0045】
上記ステップS6では、所定時間変更部15dにて、車両Cが走行している走行路の路面状態がウェット状態又はアイスバーン状態であるか否かを判定し、このステップS6の判定がNOであるときには、ステップS7に進む一方、ステップS6の判定がYESであるときには、ステップS9に進む。
【0046】
上記ステップS7では、所定時間変更部15dにて、車両C周辺の照度が所定値以下であるか否かを判定し、このステップS7の判定がNOであるときには、ステップS8に進む一方、ステップS7の判定がYESであるときには、ステップS9に進む。
【0047】
上記ステップS8では、所定時間変更部15dにて、所定時間をt1とし、しかる後にステップS10に進み、上記ステップS9では、所定時間変更部15dにて、所定時間をt2とし、しかる後にステップS10に進む。
【0048】
上記ステップS10では、警報制御部15bにて、ステップS2で算出した、障害物に対する車両Cの衝突予測時間が所定時間(t1又はt2)よりも短くかつ上記ステップS3で検出したドライバ40の視線方向が当該障害物の方向でないか否かを判定する。
【0049】
上記ステップS10の判定がNOであるときには、そのままリターンする一方、ステップS10の判定がYESであるときには、ステップS11に進んで、警報制御部15bにて、警報装置20を作動させてドライバ40に対し警報を行い、しかる後にリターンする。
【0050】
上記制御ユニット15における処理動作により、レーダ装置1により検知された障害物に対する車両Cの衝突予測時間が所定時間よりも短くかつドライバ40の視線方向が当該障害物の方向でないときには、ドライバ40に対し警報がなされ、これにより、ドライバ40は障害物の方向を向くようになり、その障害物を認識して該障害物に対する衝突を回避することになる。尚、ドライバ40が衝突回避を行わずに、衝突予測時間が上記設定時間よりも短くなると、車輪ブレーキ作動手段21が作動して、車両Cが障害物に衝突しないように停止する。
【0051】
そして、車両C周辺の天候状態が悪い場合には、天候状態が良い場合に比べて上記所定時間が長くなり、車両Cが走行している走行路の路面状態がウェット状態若しくはアイスバーン状態である場合には、路面状態がドライ状態である場合に比べて上記所定時間が長くなり、車両C周辺の照度が所定値以下である場合には、照度が該所定値よりも大きい場合に比べて上記所定時間が長くなる。このようにドライバ40が障害物を認識し難い環境や制動距離が長くなる環境を車両Cが走行している場合に上記所定時間を長くすることで、ドライバ40に対し警報を早く行うことができる。この結果、ドライバ40は、障害物に対する衝突回避を余裕をもって行うことができるようになり、よって、安全性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、少なくとも、障害物に対する自車両の衝突予測時間が所定時間よりも短くかつドライバの視線方向が当該障害物の方向でないときに、上記ドライバに対し警報を行うようにした車両の警報装置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係る警報装置を搭載した車両の前側部分を示す、車両左側側方から見た概略図である。
【図2】上記警報装置の構成を示すブロック図である。
【図3】制御ユニットにおける警報処理動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
C 車両(自車両)
1 レーダ装置(障害物検知手段)
2 前方撮像カメラ(天候状態検知手段)(走行環境検知手段)
3 ドライバ撮像カメラ(視線方向検出手段)
5 車速センサ(走行速度検知手段)
7 照度センサ(照度検知手段)(走行環境検知手段)
8 ワイパスイッチ(ワイパ作動検知手段)(天候状態検知手段)
(走行環境検知手段)
9 フォグランプスイッチ(フォグランプ点灯検知手段)
(天候状態検知手段)(走行環境検知手段)
11 路面状態検知装置(路面状態検知手段)(走行環境検知手段)
15 制御ユニット
15a 衝突予測時間算出部(衝突予測時間算出手段)
15b 警報制御部(警報手段)
15c 視線方向検出部(視線方向検出手段)
15d 所定時間変更部(変更手段)
15e 警報停止部(警報停止手段)
20 警報装置(警報手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方の障害物を検知する障害物検知手段と、
自車両のドライバの視線方向を検出する視線方向検出手段と、
上記障害物検知手段により検知された障害物に対して自車両が衝突するまでの時間である衝突予測時間を算出する衝突予測時間算出手段と、
少なくとも、上記衝突予測時間算出手段により算出された上記障害物に対する自車両の衝突予測時間が所定時間よりも短くかつ上記視線方向検出手段により検出された上記ドライバの視線方向が当該障害物の方向でないときに、上記ドライバに対し警報を行う警報手段とを備えた車両の警報装置であって、
自車両が走行している走行環境を検知する走行環境検知手段と、
上記走行環境検知手段により検知された走行環境に応じて、上記所定時間を変更する変更手段とを備えていることを特徴とする車両の警報装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両の警報装置において、
上記走行環境検知手段は、自車両周辺の天候状態を検知する天候状態検知手段を含み、
上記変更手段は、上記天候状態検知手段により検知された天候状態が悪い場合には、該天候状態が良い場合に比べて上記所定時間を長くするように構成されていることを特徴とする車両の警報装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両の警報装置において、
上記天候状態検知手段は、自車両周辺を撮像する撮像カメラ、自車両のウインドガラスを払拭するワイパの作動を検知するワイパ作動検知手段、及び、フォグランプの点灯を検知するフォグランプ点灯検知手段のうちの少なくとも1つで構成されていることを特徴とする車両の警報装置。
【請求項4】
請求項1記載の車両の警報装置において、
上記走行環境検知手段は、自車両が走行している走行路の路面状態を検知する路面状態検知手段を含み、
上記変更手段は、上記路面状態検知手段により検知された路面状態がウェット状態である場合には、該路面状態がドライ状態である場合に比べて上記所定時間を長くするように構成されていることを特徴とする車両の警報装置。
【請求項5】
請求項1記載の車両の警報装置において、
上記走行環境検知手段は、自車両周辺の照度を検知する照度検知手段を含み、
上記照度検知手段により検知された照度が所定値以下である場合には、該照度が該所定値よりも大きい場合に比べて上記所定時間を長くするように構成されていることを特徴とする車両の警報装置。
【請求項6】
請求項1記載の車両の警報装置において、
自車両の走行速度を検知する走行速度検知手段と、
上記走行速度検知手段により検知された走行速度が所定速度以下であるときに、上記警報手段の作動を停止させる警報停止手段とを更に備えていることを特徴とする車両の警報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−116394(P2009−116394A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285339(P2007−285339)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】