説明

車両の走行安全装置

【課題】自車両と他車両との衝突可能性の有無を精度良く判定する。
【解決手段】車両の走行安全装置10は、自車両が走行中の道路に交差する交差道路の情報取得する交差道路取得部32と、交差道路を走行中の他車両の存在を検出する外界センサ11と、交差道路に対する自車両からの見通しの良否を判定する見通し判定部33と、見通しの良否と自車両から他車両の進路までの距離とを対応付けて交差距離dlとして記憶する交差距離記憶部38と、自車両の速度が最低速度となった時点での自車位置と、
交差距離記憶部38に記憶された交差距離dlとに基づき、自車両と他車両との衝突可能性の有無を判定する衝突判定部39とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の走行安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばGPS(Global Positioning System)信号などの測位信号に基づき自車両の位置を検出するナビゲーション装置を備え、ナビゲーション装置から出力される自車両の位置および道路情報と、自車両の走行状態の検出結果(例えば、速度および加速度など)とに基づき、交差点への自車両の進入時刻を推定することに加えて、自車両と他車両との間の車車間通信などにより取得した他車両の走行状態の情報に基づき、交差点での自車両と他車両との衝突可能性の有無を判定する衝突防止装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−227690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る衝突防止装置によれば、交差点での自車両と他車両との衝突可能性の有無は、自車両のナビゲーション装置から出力される情報に基づいて判定される。しかしながら、ナビゲーション装置から出力される情報のうち自車両などの位置の情報は、たとえGPS信号などの測位信号に基づいて検出されたとしても、車両同士の衝突可能性の有無を所望の信頼性を確保しつつ判定するためには、誤差が大きい場合があるという問題が生じる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、自車両と他車両との衝突可能性の有無を精度良く判定することが可能な車両の走行安全装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る車両の走行安全装置は、自車両の速度を検出する速度検出手段(例えば、実施の形態での車両状態センサ12、車輪速センサ)と、自車両の位置を検出する位置検出手段(例えば、実施の形態での車両状態センサ12、測位信号受信機)と、前記自車両の位置から自車両が走行中の道路に交差する交差道路までの距離を検出する距離検出手段(例えば、実施の形態での交差道路取得部32)と、前記交差道路を走行中の他車両の存在を検出する他車両検出手段(例えば、実施の形態での外界センサ11)と、前記交差道路に対する自車両からの見通しの良否を判定する見通し判定手段(例えば、実施の形態での見通し判定部33)と、前記見通しの良否と自車両から前記他車両の進路までの距離とを対応付けて交差距離情報として記憶する記憶手段(例えば、実施の形態での交差距離記憶部38)と、前記距離検出手段により検出された前記距離が所定距離以内かつ前記速度検出手段により検出された前記速度が最低速度となった時点での前記自車両の位置と、前記記憶手段に記憶された前記交差距離情報とに基づき、自車両と前記他車両との衝突可能性の有無を判定する衝突可能性判定手段(例えば、実施の形態での衝突判定部39)とを備える。
【0006】
さらに、本発明の第2態様に係る車両の走行安全装置では、前記記憶手段は、前記交差距離情報を交差点毎に記憶し、自車両が前記交差点を右折または左折する際に検知した前記見通しの良否および自車両から前記他車両の進路までの距離により前記記憶手段の前記交差距離情報を更新する。
【0007】
さらに、本発明の第3態様に係る車両の走行安全装置は、前記交差距離情報を自車両外部の外部記憶手段に記憶させる記憶制御手段(例えば、実施の形態での更新制御部41)を備え、前記記憶制御手段は、前記交差距離情報を交差点毎に前記外部記憶手段に格納し、前記記憶手段に記憶されている前記交差距離情報、あるいは、自車両が前記交差点を右折または左折する際に検知した前記見通しの良否および自車両から前記他車両の進路までの距離により、前記外部記憶手段の前記交差距離情報を更新する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1態様に係る車両の走行安全装置によれば、交差道路に対する自車両からの見通しの良否と交差道路を走行する他車両の進路までの距離とを対応付けた交差距離情報と、最低速度での自車両の位置とに基づき、自車両と他車両との衝突可能性の有無を精度良く、かつ、信頼性高く判定することができる。これにより、例えばナビゲーション装置の地図データと他車両の位置および走行状態の検出結果などに基づき、他車両の走行軌跡を推定し、この推定走行軌跡に基づいて衝突可能性の有無を判定する場合に比べて、位置および走行状態の検出精度が低下した場合あるいは検出が困難な場合であっても、衝突可能性の有無を適切に判定することができる。
【0009】
さらに、本発明の第2態様に係る車両の走行安全装置によれば、交差距離情報を更新することにより、自車両と他車両との衝突可能性の有無の判定結果の精度および信頼性を向上させることができる。
【0010】
さらに、本発明の第3態様に係る車両の走行安全装置によれば、交差距離情報の汎用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両の走行安全装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る自車両と交差道路の他車両との相対位置の例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る自車両の走行距離および速度(自車速度)およびアクセル開度の変化の一例を示すグラフ図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る自車両と交差道路の他車両との相対位置の例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る車両の走行安全装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る車両の走行安全装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による車両の走行安全装置10は、例えば図1に示すように、内燃機関(E)の駆動力をトランスミッション(T/M)を介して車両の駆動輪(図示略)に伝達する車両に搭載され、外界センサ11と、車両状態センサ12と、処理装置13と、スロットルアクチュエータ14と、ブレーキアクチュエータ15と、ステアリングアクチュエータ16と、報知装置17と、通信装置18を備えて構成されている。
【0013】
外界センサ11は、例えばミリ波などの電磁波によるレーダ装置あるいは撮像装置を備えて構成されている。
例えばレーダ装置は、自車両の外界に設定された検出対象領域を複数の角度領域に分割し、各角度領域を走査するようにして、電磁波の発信信号を発信し、各発信信号が自車両の外部の物体(例えば、他車両や構造物など)によって反射されることで生じた反射信号を受信し、レーダ装置から外部の物体までの距離に係る検知信号を生成し、処理装置13に出力する。
また、例えば撮像装置は、カメラの撮像により得られた画像に対して画像処理をおこなって画像データを生成し、処理装置13に出力する。
【0014】
車両状態センサ12は、例えば、自車両の駆動輪の回転速度(車輪速)を検出する車輪速センサと、車体に作用する加速度を検知する加速度センサと、車体の姿勢や進行方向を検知するジャイロセンサと、ヨーレート(車両重心の上下方向軸回りの回転角速度)を検知するヨーレートセンサと、例えば人工衛星を利用して自車両の位置を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号などの測位信号を受信する測位信号受信機と、運転者による運転操作(例えば、アクセルペダルの踏み込み操作量、ブレーキペダルの踏み込み操作量、ステアリングホイールの舵角、シフトポジションなど)を検出する各センサとなどを備えて構成され、自車両の各種の車両情報の検知結果の信号を出力する。
【0015】
処理装置13は、例えば地図データ記憶部31と、交差道路取得部32と、見通し判定部33と、最低速度検出部34と、自車位置検出部35と、走行距離検出部36と、交差距離取得部37と、交差距離記憶部38と、衝突判定部39と、車両制御部40と、更新制御部41とを備えて構成されている。
【0016】
地図データ記憶部31は、地図データを記憶している。地図データは、例えば地形図のデータと、例えば各種の施設および街区および湖沼等に対応したポリゴンのデータと、例えば各ポリゴンに対応地名等の文字のデータと、各種の記号のデータと、道路データと、線路データとを備えて構成されている。道路データは、道路の接続状態および形状などの情報であって、例えばノード(つまり、道路形状を把握するための座標点)および各ノード間を結ぶ線であるリンクと、各リンクの距離と、道路の種別および幅員および交差角度および形状などのデータを備えて構成されている。
【0017】
交差道路取得部32は、自車両が走行中の道路(例えば、図2に示す道路RA)に交差する交差道路(例えば、図2に示す道路RB)の情報を地図データから取得する。
【0018】
見通し判定部33は、外界センサ11から出力されるレーダ装置の検知信号または撮像装置の画像データに基づき、交差道路に対する自車両からの見通しの良否を判定する。
例えばレーダ装置の検知信号によれば、外界センサ11から自車両の外部の物体までの距離の空間分布において、周囲の領域に比べて所定の程度を超えて短い距離の領域が存在する場合には、見通しを悪化させる物体が存在すると判定する。
また、例えば撮像装置の画像データによれば、画像空間周波数の分布において、周囲の領域に比べて所定の程度を超えて高い空間周波数の領域が存在する場合には、見通しを悪化させる物体が存在すると判定する。
【0019】
そして、見通し判定部33は、例えば、交差道路(例えば、図2に示す道路RB)を走行中の他車両の進路(例えば、図2に示す進路R)から所定距離(例えば、5mなど)以内の領域に見通しを悪化させる物体が存在せず、かつ、所定の遠方距離(例えば、30m程度など)に存在する他車両を検知可能(あるいは、運転者により視認可能)である場合に、見通しが良好であると判定し、これ以外の場合に対して、見通しが不良であると判定する。
なお、見通し判定部33は、例えば自車両が走行中の道路(例えば、図2に示す道路RA)から右側方向および左側方向毎に個別に見通しの良否を判定する。
【0020】
最低速度検出部34は、車両状態センサ12の車輪速センサから出力される検知結果の信号に基づき、自車両の速度が最低速度となった状態の有無を検出する。
【0021】
自車位置検出部35は、例えば車両状態センサ12の測位信号受信機から出力されるGPS信号などの測位信号によって、あるいは、例えば車両状態センサ12の車輪速センサおよびヨーレートセンサなどから出力される信号に基づく自律航法の算出処理によって、自車両が走行中の道路と、この道路に交差する交差道路との交差点から所定距離以内の領域において、自車両の速度が最低速度となった時点での自車両の位置(自車位置、例えば、図2に示す自車位置A1)を検出する。
【0022】
走行距離検出部36は、例えば車両状態センサ12の車輪速センサから出力される信号に基づき、自車両の速度が最低速度となった時点での自車位置からの走行距離dsを検出する。
【0023】
交差距離取得部37は、交差道路取得部32により取得された交差道路に対して、見通し判定部33による判定結果に応じて交差距離記憶部38から交差距離dlの情報を取得する。
交差距離dlは、例えば、自車両が最低速度となった時点での自車位置(例えば、図2に示す自車位置A1)から交差道路を走行中の他車両の進路(例えば、図2に示す他車両の位置B1を含む進路R)までの距離である。
交差距離記憶部38には、例えば下記表1に示すように、交差道路に対する自車両からの見通しの良否に応じた交差距離dlの情報が記憶されている。
例えば下記表1においては、左側通行の通行区分において、左右の見通しが良好である場合の交差距離da(例えば、3mなど)と、右側方向の見通しが良好である場合の交差距離db(例えば、2.75mなど)と、左側方向の見通しが良好である場合の交差距離dc(例えば、2.25mなど)と、左右の見通しが不良である場合の交差距離dd(例えば、2mなど)とに対して、順次、交差距離dlが減少傾向(da>db>dc>dd)に変化するように設定されている。
【0024】
【表1】

【0025】
なお、交差距離dlは、例えば予め実施される複数の試験結果などに応じて各交差点毎に設定されている。これらの試験結果によると、自車両が走行中の道路に交差する交差道路を走行中の他車両が存在する場合には、自車両の一般的な運転者の運転操作による走行挙動として、他車両の進路よりも所定距離だけ手前の位置(例えば図3に示す時刻taでの自車位置)で自車両の速度が最低速度となり、この最低速度の位置から加速走行となることが認められている。そして、自車両の最低速度の位置から他車両の進路までの所定距離は、交差道路に対する自車両からの見通しの良否に対しては相対的に大きな依存性を有して変化し、複数の運転者毎に対しては変化の依存性が僅かであることが認められている。
また、交差距離記憶部38は、例えば、交差点毎の区別なしに汎用的に適用されるモデルデータとしての交差距離dlに加えて、各交差点毎に区別された交差距離dlのデータを記憶していてもよい。
【0026】
衝突判定部39は、走行距離検出部36により検出された走行距離dsと交差距離取得部37により取得された交差距離dlとにより、自車両の現在位置(例えば、図2に示す自車位置A2)から他車両の進路(例えば、図2に示す他車両の現在位置B2を含む進路R)までの距離deを演算する。そして、この距離deと、外界センサ11から出力されるレーダ装置の検知信号または撮像装置の画像データに基づいて得られる他車両の現在位置(例えば、図2に示す他車両の現在位置B2)から自車両の進路までの距離Pyとに基づき、例えば衝突回避に要する減速度などを考慮して、自車両と他車両との衝突可能性の有無および危険度を判定する。
【0027】
車両制御部40は、衝突判定部39による判定結果に応じて、自車両の走行状態を制御する制御信号を出力する。この制御信号は、例えば、トランスミッション(T/M)の変速動作を制御する制御信号およびスロットルアクチュエータ14により内燃機関(E)の駆動力を制御する制御信号およびブレーキアクチュエータ15により減速を制御する制御信号およびステアリングアクチュエータ16により転舵を制御する制御信号などである。
また、車両制御部40は、自車両の乗員に各種の情報を報知する場合に、報知装置17を制御する制御信号を出力する。
【0028】
なお、報知装置17は、例えば、触覚的伝達装置と、視覚的伝達装置と、聴覚的伝達装置とを備えて構成されている。
触覚的伝達装置は、例えばシートベルト装置や操舵制御装置などであって、車両制御部40から出力される制御信号に応じて、例えばシートベルトに所定の張力を発生させて自車両の乗員が触覚的に知覚可能な締め付け力を作用させたり、例えばステアリングホイールに自車の運転者が触覚的に知覚可能な振動(ステアリング振動)を発生させることによって、他車両との接触発生の可能性があることを乗員に認識させる。
視覚的伝達装置は、例えば表示装置などであって、車両制御部40から入力される制御信号に応じて、例えば表示装置に所定の警報情報を表示したり、所定の警報灯を点滅させることによって、他車両との接触発生の可能性があることを乗員に認識させる。
聴覚的伝達装置は、例えばスピーカなどであって、車両制御部40から入力される制御信号に応じて所定の警報音や音声などを出力することによって、他車両との接触発生の可能性があることを乗員に認識させる。
【0029】
更新制御部41は、自車両が走行中の道路と交差道路との交差点において自車両が右折または左折することで交差道路を走行する場合に、例えば走行距離検出部36から出力される走行距離dsの信号に基づき、自車両の速度が最低速度となった時点での自車位置(例えば、図4に示す自車位置A1)から交差道路での自車両の進路までの距離を検出する。そして、この距離の検出結果と、見通し判定部33による判定結果とを対応付けて交差距離dlとし、交差距離記憶部38に新たに格納、あるいは、交差距離記憶部38に既に記憶されている交差距離dlのデータを更新する。つまり、更新制御部41は、交差道路における自車両の進路(例えば、図4に示す自車両の位置A3)と他車両の進路(例えば、図4に示す他車両の位置B1を含む進路R)とが同等であると仮定して、実際に自車両が走行した距離に基づき、交差距離dlを検出する。
【0030】
なお、更新制御部41は、通信装置18により、自車両の外部に設けられた外部記憶装置に交差距離dlを格納、あるいは、外部記憶装置に既に記憶されている交差距離のデータを更新してもよい。
【0031】
本実施の形態による車両の走行安全装置10は上記構成を備えており、次に、この車両の走行安全装置10の動作について説明する。
【0032】
先ず、例えば図5に示すステップS01においては、自車両周辺の道路データを地図データから取得する。
そして、ステップS02においては、自車両が走行中の道路と、この道路に交差する交差道路との交差点から所定距離以内の領域において、自車両が交差点に向かい走行中であるか否か、つまり交差点に進入予定であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS03に進む。
【0033】
そして、ステップS03においては、外界センサ11から出力されるレーダ装置の検知信号または撮像装置の画像データに基づき、交差道路を走行中の他車両の有無を検出すると共に、交差道路に対する自車両からの見通しの良否を判定する。
そして、ステップS04においては、他車両は自車両に接近しているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS05に進む。
【0034】
そして、ステップS05においては、交差距離記憶部38に記憶されている交差距離dlのデータを取得する。このとき、例えば交差距離記憶部38に既に交差点に対応した交差距離dlが記憶されていれば、この交差距離dlのデータを取得し、交差点に対応した交差距離dlが記憶されていなければ、汎用的に適用されるモデルデータとしての交差距離dlのデータを取得してもよい。
【0035】
そして、ステップS06においては、車両状態センサ12から出力される自車両の車両状態量の検知結果の信号を取得する。
そして、ステップS07においては、車両状態センサ12の車輪速センサから出力される検知結果の信号に基づき、自車両の速度が最低速度となった時点での自車位置を検出する。
そして、ステップS08においては、車両状態センサ12の車輪速センサから出力される信号に基づき、自車両の速度が最低速度となった時点での自車位置から現在位置までの走行距離dsを検出する。
【0036】
そして、ステップS09においては、走行距離dsと交差距離dlとにより、自車両の現在位置から交差道路を走行中の他車両の進路までの距離deを推定する。
そして、ステップS10においては、距離deと、外界センサ11から出力されるレーダ装置の検知信号または撮像装置の画像データに基づいて得られる他車両の現在位置から自車両の進路までの距離Pyとに基づき、自車両と他車両との衝突可能性の有無を判定する。
そして、ステップS11においては、所定の緊急回避動作(例えば、所定減速度の自動制動など)によって他車両との衝突を回避可能であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS12に進み、このステップS12においては、例えばブレーキアクチュエータ15の駆動などによる自動制動を実行し、エンドに進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS13に進む。
そして、ステップS13においては、所定の通常回避動作(例えば、運転者による制動操作など)によって他車両との衝突を回避可能であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS14に進み、このステップS14においては、例えば報知装置17により警報を出力し、エンドに進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
【0037】
上述したように、本実施の形態による車両の走行安全装置10によれば、交差道路に対する自車両からの見通しの良否と交差道路を走行する他車両の進路までの距離とを対応付けた交差距離dlと、最低速度での自車両の位置とに基づき、自車両と他車両との衝突可能性の有無を精度良く、かつ、信頼性高く判定することができる。これにより、例えば地図データ記憶部31と他車両の位置および走行状態の検出結果などに基づき、他車両の走行軌跡を推定し、この推定走行軌跡に基づいて衝突可能性の有無を判定する場合に比べて、位置および走行状態の検出精度が低下した場合あるいは検出が困難な場合であっても、衝突可能性の有無を適切に判定することができる。
例えば、外界センサ11として、自車両前方に所定の検出対象領域が設定されたミリ波レーダなどを備える場合には、前方に比べて横方向の検出精度が低下することから、交差道路を走行中の他車両の位置の検出精度、および、他車両の位置の検出結果に基づく衝突判定の判定精度は低くなる虞がある。これに対して、交差距離dlに基づき衝突判定を行なうことで、判定精度の低下を防止することができる。
また、例えば、外界センサ11の横方向の検出精度が高い場合であっても、道路形状や障害物などによって交差道路を走行中の他車両の位置の検出精度が低下する虞があり、これに対しても、交差距離dlに基づき衝突判定を行なうことで、判定精度の低下を防止することができる。
さらに、交差距離記憶部38に記憶されている交差距離dlのデータを更新することにより、自車両と他車両との衝突可能性の有無の判定結果の精度および信頼性を向上させることができる。
また、外部記憶装置に交差距離dlのデータを記憶することで、交差距離dlのデータの汎用性を向上させることができる。
【0038】
なお、上述した実施の形態において、交差距離取得部37は、交差距離記憶部38から交差距離dlの情報を取得するとしたが、これに限定されず、例えば通信装置18により、自車両の外部に設けられた外部記憶装置に記憶されている交差距離dlのデータを取得してもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 車両の走行安全装置
11 外界センサ(他車両検出手段)
12 車両状態センサ(速度検出手段、位置検出手段)
17 報知装置
18 通信装置
32 交差道路取得部(距離検出手段)
33 見通し判定部(見通し判定手段)
38 交差距離記憶部(記憶手段)
39 衝突判定部(衝突可能性判定手段)
40 車両制御部(報知手段、走行制御手段)
41 更新制御部(記憶制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の速度を検出する速度検出手段と、
自車両の位置を検出する位置検出手段と、
前記自車両の位置から自車両が走行中の道路に交差する交差道路までの距離を検出する距離検出手段と、
前記交差道路を走行中の他車両の存在を検出する他車両検出手段と、
前記交差道路に対する自車両からの見通しの良否を判定する見通し判定手段と、
前記見通しの良否と自車両から前記他車両の進路までの距離とを対応付けて交差距離情報として記憶する記憶手段と、
前記距離検出手段により検出された前記距離が所定距離以内かつ前記速度検出手段により検出された前記速度が最低速度となった時点での前記自車両の位置と、前記記憶手段に記憶された前記交差距離情報とに基づき、自車両と前記他車両との衝突可能性の有無を判定する衝突可能性判定手段と
を備えることを特徴とする車両の走行安全装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記交差距離情報を交差点毎に記憶し、自車両が前記交差点を右折または左折する際に検知した前記見通しの良否および自車両から前記他車両の進路までの距離により前記記憶手段の前記交差距離情報を更新することを特徴とする請求項1に記載の車両の走行安全装置。
【請求項3】
前記交差距離情報を自車両外部の外部記憶手段に記憶させる記憶制御手段を備え、前記記憶制御手段は、前記交差距離情報を交差点毎に前記外部記憶手段に格納し、前記記憶手段に記憶されている前記交差距離情報、あるいは、自車両が前記交差点を右折または左折する際に検知した前記見通しの良否および自車両から前記他車両の進路までの距離により、前記外部記憶手段の前記交差距離情報を更新することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の走行安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−157181(P2010−157181A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292(P2009−292)
【出願日】平成21年1月5日(2009.1.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】