説明

車両の車体構造

【課題】車両が小型車であって、その車室の幅寸法が小さい場合でも、この車室の幅方向におけるシートの配置の自由度を向上させるようにし、かつ、車体の外側方からの車体への乗降性を向上させるようにする。
【解決手段】車両の車体構造は、車体2の側壁9の外面に沿い前後移動してドア開口11を開閉可能とするスライドドア22と、前後方向に延びてスライドドア22を支持し、その長手方向の一端部側がサイドシル13の内部に配置される一方、他端部がサイドシル13の内側方にまで延出してスライドドア22の移動を案内する下ドアレール26と、サイドシル13から車体2の幅方向の内方に延びて車室6底部の内外を区画するフロアパネル38と、前後方向に延び、車室6に配置されるシート50を支持すると共にこのシート50の前後移動を案内するシートレール54とを備える。下ドアレール26の他端部の上方にシートレール54を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の側壁に沿ってのスライドドアの移動を案内するドアレールと、車室内でのシートの移動を案内するシートレールとが互いに関連する車両の車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両の車体構造には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車両の車体構造は、車体の側壁に形成されたドア開口の下部開口縁部を構成するサイドシルと、上記側壁の外面に沿い前後移動して上記ドア開口を開閉可能とするスライドドアと、上記サイドシルの内部に配置されて前後方向に延び、上記スライドドアを支持すると共に上記スライドドアの移動を案内するドアレールと、上記サイドシルから車体の幅方向の内方に延びて車室底部の内外を区画するフロアパネルと、前後方向に延び、上記車室に配置されるシートを支持すると共にこのシートの前後移動を案内するシートレールとを備えている。
【0003】
そして、上記スライドドアをドアレールの案内により前後移動させれば、上記スライドドアにより上記ドア開口の開閉が可能とされる。また、上記シートをシートレールの案内により前後移動させて固定させれば、上記シートに対する着座位置を所望位置にさせることができる。
【特許文献1】特開平6−107052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の技術では、ドアレールとシートレールとは、車体の幅方向で互いに離間して並設されている。このため、車体の幅寸法が所定寸法に定められているとすると、上記のように両レールが互いに離間して、これら両レールの間に「スペース」が設けられる分、この車体の幅方向での上記シートレールの配置に制約が生じる。よって、このシートレールに支持されるシートにとって、その車室の幅方向における寸法や配置の自由度が狭められがちとなり、これは、車両が小型車であって、車室の幅寸法が小さい場合に特に好ましくない。
【0005】
また、上記ドアレールは、上記シートレールよりも車体の外側寄りに配置されている。このため、このようにドアレールが車体の外側寄りに配置された分、上記シートレールに支持されたシートが存在する車体の幅方向での実質的な車室内部から、車体の外側面に至るまでの離間距離は長くなりがちである。よって、車体の外側方から上記ドア開口を通して上記車室内部に対し乗降しようとする場合、上記離間距離が長いために、この乗降は煩雑になるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、車両が小型車であって、その車室の幅寸法が小さい場合でも、この車室の幅方向におけるシートの配置の自由度を向上させるようにし、かつ、車体の外側方からの車体への乗降性を向上させるようにすることである。
【0007】
請求項1の発明は、車体2の側壁9に形成されたドア開口11の下部開口縁部を構成するサイドシル13と、上記側壁9の外面に沿い前後移動して上記ドア開口11を開閉可能とするスライドドア22と、前後方向に延びてこのスライドドア22を支持し、その長手方向の一端部側が上記サイドシル13の内部に配置される一方、他端部が上記サイドシル13の内側方にまで延出して上記スライドドア22の移動を案内するドアレール26と、上記サイドシル13から車体2の幅方向の内方に延びて車室6底部の内外を区画するフロアパネル38と、前後方向に延び、上記車室6に配置されるシート50を支持すると共にこのシート50の前後移動を案内するシートレール54とを備えた車両の車体構造において、
上記ドアレール26の他端部の上方に上記シートレール54を配置したことを特徴とする車両の車体構造である。
【0008】
請求項2の発明は、上記ドアレール26の他端部を上記サイドシル13の内側板15に形成した内側開口33を通過させて上記サイドシル13の内側方における車室6側に延出させ、上記ドアレール26の他端部を車室6側から覆うと共に上記サイドシル13とフロアパネル38とに架設されるカバー体40を設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両の車体構造である。
【0009】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0010】
本発明による効果は、次の如くである。
【0011】
請求項1の発明は、車体の側壁に形成されたドア開口の下部開口縁部を構成するサイドシルと、上記側壁の外面に沿い前後移動して上記ドア開口を開閉可能とするスライドドアと、前後方向に延びてこのスライドドアを支持し、その長手方向の一端部側が上記サイドシルの内部に配置される一方、他端部が上記サイドシルの内側方にまで延出して上記スライドドアの移動を案内するドアレールと、上記サイドシルから車体の幅方向の内方に延びて車室底部の内外を区画するフロアパネルと、前後方向に延び、上記車室に配置されるシートを支持すると共にこのシートの前後移動を案内するシートレールとを備えた車両の車体構造において、
上記ドアレールの他端部の上方に上記シートレールを配置している。
【0012】
このため、車体の幅方向で上記両レールは互いに同じところに位置することとなり、つまり、従来の技術のように、これら両レールが互いに離間して、これら両レールの間に「スペース」が設けられることは、小さく抑制される。
【0013】
よって、第1に、上記した従来の「スペース」は、車体の幅方向で上記シートレールの配置に利用できることから、上記シートレールに支持されるシートにとって、その車室の幅方向における寸法や配置の自由度を向上させることができる。そして、これは、車両が小型車であって、その車室の幅寸法が小さい場合、特に有益である。
【0014】
また、第2に、上記シートレールに支持されたシートが存在する車体の幅方向での実質的な車室内部から、車体の外側面に至るまでの離間距離は上記した従来の「スペース」が小さく抑制される分、短くできる。よって、車体の外側方からドア開口を通して上記車室内部に対し乗降しようとする場合、この乗降は容易にでき、つまり、車体への乗降性が向上する。
【0015】
請求項2の発明は、上記ドアレールの他端部を上記サイドシルの内側板に形成した内側開口を通過させて上記サイドシルの内側方における車室側に延出させ、上記ドアレールの他端部を車室側から覆うと共に上記サイドシルとフロアパネルとに架設されるカバー体を設けている。
【0016】
このため、車体の外部の塵埃や雨水が上記サイドシルの内側開口を通って車室側に浸入する、ということは、上記カバー体によって防止される。よって、上記ドアレールの他端部を上記内側開口を通過させて車室側に延出させることにより、上記スライドドアを、前後方向の案内に加え車体の幅方向の内方に十分に案内させるようにした場合でも、上記車体の外部の塵埃などにより車室側が汚損させられるということは、上記カバー体により防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の車両の車体構造に関し、車両が小型車であって、その車室の幅寸法が小さい場合でも、この車室の幅方向におけるシートの配置の自由度を向上させるようにし、かつ、車体の外側方からの上記シートへの乗降性を向上させるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための最良の形態は、次の如くである。
【0018】
即ち、車両の車体構造は、車体の側壁に形成されたドア開口の下部開口縁部を構成するサイドシルと、上記側壁の外面に沿い前後移動して上記ドア開口を開閉可能とするスライドドアと、前後方向に延びてこのスライドドアを支持し、その長手方向の一端部側が上記サイドシルの内部に配置される一方、他端部が上記サイドシルの内側方にまで延出して上記スライドドアの移動を案内するドアレールと、上記サイドシルから車体の幅方向の内方に延びて車室底部の内外を区画するフロアパネルと、前後方向に延び、上記車室に配置されるシートを支持すると共にこのシートの前後移動を案内するシートレールとを備えている。上記ドアレールの他端部の上方に上記シートレールを配置している。
【実施例】
【0019】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0020】
図において、符号1は自動車で例示される車両で、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。
【0021】
上記車両1は、板金製の車体2と、この車体2に懸架されてこの車体2を走行面3上に支持する前後車輪4,5とを備えている。上記車体2の内部が車室6とされている。また、符号7は、車体2の幅方向の車体中心を示している。なお、下記する左右とは、上記前方に向かっての車体2の幅方向をいうものとする。
【0022】
上記車体2の左右各側壁9には、それぞれ上記車室6の内外を連通させる前、後ドア開口10,11が形成されている。上記車体2の一側部(左側部)の側壁9における前、後ドア開口10,11は一体的に形成されており、センタピラーに相当するものは存在していない。一方、上記車体2の他側部(右側部)の側壁9では、前、後ドア開口10,11は個別に形成されて、これらドア開口10,11の間にはセンタピラーが形成されている。
【0023】
上記車体2の一側部の側壁9における上記ドア開口10,11の下部開口縁部はサイドシル13により構成されている。このサイドシル13は、車体2の幅方向で互いに対面する外、内側板14,15と、これら両板14,15の間に配置される補強板16とを備えている。上記外、内側板14,15と補強板16との各下端縁部はスポット溶接により互いに結合されている。また、上記外、内側板14,15の各上端部はスポット溶接により互いに結合され、この結合部にシール17が取り付けられている。上記外、内側板14,15により閉断面構造が形成され、これら両板14,15の間に内部空間18が形成されている。
【0024】
上記前ドア開口10の前部開口縁部に枢支され、この枢支部を中心とした車体2の幅方向での回動により上記前ドア開口10を開閉可能とするフロントドアであるヒンジドア21と、上記車体2の一側部の側壁9の外面に沿い前後方向に移動して上記後ドア開口11を開閉可能とするリアドアであるスライドドア22とが設けられている。
【0025】
図1中二点鎖線は、上記ヒンジドア21が上記前ドア開口10を閉じた状態を示している。また、図1中二点鎖線と図3〜5中実線とは、上記スライドドア22が前方移動して上記後ドア開口11を閉じた状態を示している。この場合、上記スライドドア22は、前方移動すると共に車体2の幅方向の内方に移動して、このスライドドア22の上記側壁9側の面が上記シール17に圧接し、かつ、上記スライドドア22の外面が上記側壁9の外面に面一とさせられる。また、図1中一点鎖線は、上記スライドドア22が少し後方移動して上記後ドア開口11の前部を少し開いた状態を示している。この場合、上記スライドドア22は後方移動すると共に車体2の幅方向の外方に移動して、上記側壁9の外面に沿って移動する。
【0026】
前後方向に延びて上記スライドドア22を支持し、このスライドドア22の前後移動を案内する上ドアレール24、中ドアレール25、および下ドアレール26が設けられている。上記上ドアレール24は上記後ドア開口11の上部開口縁部に設けられている。上記中ドアレール25は、上記側壁9の後部外面に設けられている。上記下ドアレール26は上記後ドア開口11の下部開口縁部を構成する上記サイドシル13に支持されている。
【0027】
上記スライドドア22の上記側壁9側の面から各レール24〜26に向かってそれぞれ支持アーム28が突設され、この支持アーム28の突出端部に、上記各レール24〜26内を前後に転動するローラ29が支持されている。
【0028】
上記後ドア開口11に対応するサイドシル13の外側板14には、このサイドシル13の内部空間18の内外を連通させ、前後方向に長く延びる外側開口32が形成されている。また、車体2の幅方向で、上記外側開口32の前部に対応する上記サイドシル13の内側板15には、上記内部空間18の内外を連通させる内側開口33が形成されている。
【0029】
上記下ドアレール26の長手方向の一端部(後端部)側は、前後方向に延びて上記サイドシル13の内部に配置されている。また、上記下ドアレール26の他端部(前端部)は車体2の幅方向で、上記サイドシル13の内側方に向かうよう湾曲しながら延出して上記内側開口33を通過し、上記サイドシル13の内側方における車室6側にまで延出させられている。
【0030】
上記サイドシル13の内部空間18にはこのサイドシル13に沿って延び、その長手方向の各部断面が車体2の外側方に向かって開口する断面コの字形状の支持体35が設けられている。この支持体35は上記サイドシル13に支持され、上記支持体35の開口は上記外側開口32に対向している。また、上記支持体35の前端部は、上記内側開口33を遊嵌状に通過し、上記サイドシル13の内側方における車室6側にまで延出させられている。そして、上記支持体35内に上記下ドアレール26が配置され、この下ドアレール26は、上記支持体35の天井面に支持されている。
【0031】
上記各レール24〜26の各一端部(後端部)側は、上記スライドドア22の前後移動を案内する。また、上記各レール24〜26の各他端部(前端部)は上記スライドドア22の前後移動かつ上記幅方向での移動を案内する。具体的には、上記各レール24〜26の各前端部は、上記スライドドア22の前方移動に伴い、このスライドドア22を上記幅方向の内方に十分に移動させるよう案内する。これにより、前記したように、このスライドドア22の上記側壁9側の面が上記シール17に圧接し、かつ、上記スライドドア22の外面が上記側壁9の外面に面一とさせられる。
【0032】
上記車体2の下部は、上記左右サイドシル13の間で前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム37を備えている。これらサイドシル13とサイドフレーム37とは不図示のクロスメンバにより互いに結合されて、車体2の下部における骨格部材を構成している。上記サイドシル13から車体2の幅方向の内方に延びて上記車室6の底部の内外を区画するフロアパネル38が設けられている。このフロアパネル38の上記幅方向の外端部は上記サイドシル13の内側板15の下面にスポット溶接S1されている。また、上記フロアパネル38の幅方向の中途部は上記各サイドフレーム37の上面にスポット溶接S2されている。
【0033】
上記下ドアレール26の前端部、内側開口33、および支持体35の前端部を一体的に車室6側から覆うと共に上記サイドシル13とフロアパネル38とに架設されるカバー体40が設けられている。このカバー体40は、上記サイドシル13の上面とほぼ同じ高さに位置してほぼ水平に延びる上面板41と、この上面板41の前、後端部から一体的に下方に延出する前、後面板42,43と、上記上面板41の車体2の幅方向における内側端部から一体的に下方に延出する側面板44とを備えている。
【0034】
上記上面板41の車体2の幅方向における外側端部は上記サイドシル13の内側板15の上面にスポット溶接S3されている。また、上記前、後面板42,43の各延出端部は上記フロアパネル38にスポット溶接S4されている。また、上記側面板44の延出端部は上記サイドフレーム37およびフロアパネル38と共に三枚重ねでスポット溶接S2され、これらサイドフレーム37およびフロアパネル38により上記カバー体40が補強されている。
【0035】
上記カバー体40の板厚は、上記サイドシル13の内側板15の板厚とほぼ同じとされるが、フロアパネル38の板厚よりも大きくされている。なお、上記カバー体40の板厚は上記内側板15の板厚より大きくしてもよい。また、これら15,38,40は閉断面構造とされてこれらは互いに補強され、また、上記したようにサイドフレーム37によっても補強されることから、これらの組み合せ体13,37,38,40の各部には十分の強度と剛性とが備えられている。
【0036】
上記フロアパネル38の車体中心7上にはトンネル46が形成され、上記フロアパネル38の一般部とトンネル46とに補強板47が架設されて強固に結合されている。これらフロアパネル38の一般部、トンネル46、および補強板47の互いの結合部も閉断面構造とされて、これらは互いに補強され、十分の強度と剛性とが備えられている。
【0037】
上記車室6には、それぞれ左右一対の前、後シート50,51と、前後方向に延び、上記各シート50,51を支持すると共に、これらシート50,51の前後移動を案内するそれぞれ左右一対の前、後シートレール54(後シートレールは図示していない)とが設けられている。
【0038】
上記両前シートレール54のうち、車体2の幅方向における外側のシートレール54の少なくとも一部分(後端部)は、上記カバー体40の上面に締結具55により締結されて強固に支持されている。また、上記下ドアレール26の他端部(前端部)の上方近傍に、上記外側のシートレール54の長手方向の少なくとも一部分(後端部)が配置されている。また、上記両前シートレール54のうち、内側のシートレール54の少なくとも一部分(後端部)は、上記補強板47の上面に締結具56により締結されて強固に支持されている。
【0039】
そして、上記各シート50,51を上記シートレール54の案内により前後移動させて固定させれば、上記各シート50,51に対する各着座位置を所望位置にさせることができる。
【0040】
上記フロアパネル38、カバー体40、および補強板47で囲まれた凹部58には嵩上げ材59が充填され、その上面にフロア材60が敷設されている。
【0041】
図1において、前記前シート50は、前記シートレール上に支持されるシート基台63と、このシート基台63上に支持されるシートクッション64と、上記シート基台63の後部に立設されるシートバック65と、シートベルト装置66とを備えている。上記シートベルト装置66は、上記シート基台63の一側部の下部側方に配置されるリトラクタ68と、一端部がこのリトラクタ68に連結され、他端部が上記シートクッション64の一側部側に連結されるベルト69と、このベルト69の一端部側を上記シートバック65の一側部の側面に沿ってその上端にまで案内すると共に上記ベルト69の一端部側を外方から覆うカバー70と、上記ベルト69の長手方向の中途部に摺動可能に連結され、上記シートクッション64の他端部側のバックルに着脱可能とされるタングプレート71とを備えている。
【0042】
上記構成によれば、下ドアレール26の他端部の上方にシートレール54を配置している。
【0043】
このため、車体2の幅方向で上記両レール26,54は互いに同じところに位置することとなり、つまり、従来の技術のように、これら両レール26,54が互いに離間して、これら両レール26,54の間に「スペース」が設けられることは、小さく抑制される。
【0044】
よって、第1に、上記した従来の「スペース」は、車体2の幅方向で上記シートレール54の配置に利用できることから、上記シートレール54に支持される前シート50にとって、その車室6の幅方向における寸法や配置の自由度を向上させることができる。そして、これは、車両1が小型車であって、その車室6の幅寸法が小さい場合、特に有益である。
【0045】
また、第2に、上記シートレール54に支持された前、後シート50,51が存在する車体2の幅方向での実質的な車室6内部から、車体2の外側面に至るまでの離間距離は上記した従来の「スペース」が小さく抑制される分、短くできる。よって、車体2の外側方からドア開口11を通して上記車室6内部に対し乗降しようとする場合、この乗降は容易にでき、つまり、車体2への乗降性が向上する。
【0046】
また、前記したように、下ドアレール26の他端部を上記サイドシル13の内側板15に形成した内側開口33を通過させて上記サイドシル13の内側方における車室6側に延出させ、上記下ドアレール26の他端部を車室6側から覆うと共に上記サイドシル13とフロアパネル38とに架設されるカバー体40を設けている。
【0047】
このため、車体2の外部の塵埃や雨水が上記サイドシル13の外、内側開口32,33を通って車室6側に浸入する、ということは、上記カバー体40によって防止される。よって、上記下ドアレール26の他端部を上記内側開口33を通過させて車室6側に延出させることにより、上記スライドドア22を、前後方向の案内に加え、車体2の幅方向の内方に十分に案内させるようにした場合でも、上記車体2の外部の塵埃などにより車室6側が汚損させられるということは、上記カバー体40により防止される。
【0048】
また、前記したように、カバー体40にシートレール54を支持させている。
【0049】
このため、上記カバー体40がシートレール54の支持に利用されたことから、このシートレール54の支持が簡単な構成により達成される。
【0050】
また、上記カバー体40は板厚が大きく、かつ、サイドシル13、サイドフレーム37、およびフロアパネル38により強固に補強されたものであるため、上記カバー体40に支持されたシートレール54に対し上記前シート50は強固に支持される。よって、特に、この前シート50上に上記シートベルト装置66により拘束された着座者の保護がより確実に達成される。
【0051】
なお、以上は図示の例によるが、上記車体2のセンタピラーに関し、この車体2の左右側部を逆にしてもよく、この車体2の左右各側部に共に設けてもよく、共に設けなくてもよい。また、上記外側のシートレール54は、そのほぼ全体を上記カバー体40により支持させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】車両の側面図である。
【図2】車両の部分平面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視断面図である。
【図4】図2のIV−IV線矢視断面図である。
【図5】図2のV−V線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 車両
2 車体
6 車室
7 車体中心
9 側壁
11 ドア開口
13 サイドシル
15 内側板
18 内部空間
22 スライドドア
26 下ドアレール(ドアレール)
32 外側開口
33 内側開口
35 支持体
37 サイドフレーム
38 フロアパネル
40 カバー体
50 前シート(シート)
51 後シート
54 シートレール
66 シートベルト装置
S スポット溶接

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の側壁に形成されたドア開口の下部開口縁部を構成するサイドシルと、上記側壁の外面に沿い前後移動して上記ドア開口を開閉可能とするスライドドアと、前後方向に延びてこのスライドドアを支持し、その長手方向の一端部側が上記サイドシルの内部に配置される一方、他端部が上記サイドシルの内側方にまで延出して上記スライドドアの移動を案内するドアレールと、上記サイドシルから車体の幅方向の内方に延びて車室底部の内外を区画するフロアパネルと、前後方向に延び、上記車室に配置されるシートを支持すると共にこのシートの前後移動を案内するシートレールとを備えた車両の車体構造において、
上記ドアレールの他端部の上方に上記シートレールを配置したことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項2】
上記ドアレールの他端部を上記サイドシルの内側板に形成した内側開口を通過させて上記サイドシルの内側方における車室側に延出させ、上記ドアレールの他端部を車室側から覆うと共に上記サイドシルとフロアパネルとに架設されるカバー体を設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−143451(P2009−143451A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−323896(P2007−323896)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】