説明

車両の車室底部構造

【課題】車両の車室底部構造において、車両前突時、後席着座乗員の足、ヒップポイントの前方移動を抑制すること、等々である。
【解決手段】車両Cの車室底部構造1において、前席12及び後席13が設置されるフロアパネル2を備え、後席着座乗員Mの足先Maが前席シートクッション12aの下方空間25に入るように構成され、フロントフロアパネル3のうち前席シートクッション12aの下方に位置するフロア上面26から上方へ膨出するように配置され、後席着座乗員Mの足の少なくとも踵部Mbから拇指球部Mcまでの部分を載置可能な後方下がり傾斜状の踏面部11aを有するヒールパッド11が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車室底部構造に関し、特に、後席着座乗員の足の踵部から拇指球部までの部分を載置可能な後方下がり傾斜状の踏面部を有するヒールパッドを、前席シートクッションの下方に配置した車室底部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車両では、車室フロアを形成するフロアパネルが配設され、その車幅方向外端部がサイドシルに結合され、その車幅方向中央側にフロアトンネルが設けられているが、更に、サイドシルとフロアトンネルとを連結しフロアパネルの上面に結合された車幅方向に長い前側クロスメンバを備えたものが公知である。
【0003】
更に、前席と後席を備えた車両において、前席サイド開口と後席サイド開口とを仕切るセンターピラーが配設され、そのセンターピラーの下端部がサイドシルに結合され、前側クロスメンバの後方の、センターピラーの下端部と同じ前後方向位置において、サイドシルとフロアトンネルとを連結しフロアパネルの上面に結合された車幅方向に長いクロスメンバを備えたものが公知である。
【0004】
ところで、後席着座乗員の足先が前席シートクッションの下方空間に入るように構成された車両が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1の下部車体構造では、センターピラーの下端部よりも少し前方の前後方向位置において、筒状のクロスメンバがフロアパネルの上面から上方へ間隔を空けて前席シートクッションの下方を通るように配設され、このクロスメンバの下方に後席着座乗員の足先を入れることができ、また、クロスメンバの車幅方向外端部は、補強部材を介して、サイドシルのセンターピラーとの結合近傍部に連結されている。
【0006】
他方、前席と後席を備えた車両では、後席着座乗員に対して、衝突安全性を高めるために、通常、後席用シートベルト(シートベルト装置)が装備されており、その後席用シートベルトの着用も義務付けられつつある。尚、この後席用シートベルトとしては、所謂3点式シートベルトの採用が主流になっている。
【0007】
【特許文献1】特開2000−159148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
後席着座乗員の足先が前席シートクッションの下方空間に入るように構成された車両では、後席着座乗員の着座スペースを確保しつつ、車両のコンパクト化を図るうえで有利になるが、後席着座乗員の足先を単に前席シートクッションの下方空間に入れるだけでは、後席着座乗員の足先が良好な位置・姿勢になるようにして座り心地を改善することはできないし、車両前突時、車両に対して前方へ移動しようとする後席着座乗員の足の踏ん張りがきかないため、後席着座乗員の足が前方へ移動する虞が高くなる。
【0009】
そして、後席着座乗員の足が前方へ移動すると、それに誘発されて、後部着座乗員のヒップポイントが前方へ移動する虞があるので、このとき、後席着座乗員がシートベルトを着用していても、そのシートベルトによる適正な乗員拘束機能が発揮されない虞があり、また、後席着座乗員の脛等が前席シートクッションに強く当たる虞がある。
【0010】
センターピラーの下端部と同じ前後方向位置において、サイドシルとフロアトンネルとを連結したクロスメンバを備えた車両では、車両側突時、応力集中が起こるサイドシルとセンターピラーとの結合部分の車室側への進入を抑制できるが、通常時、後席着座乗員の足先(つま先等)がクロスメンバに接触して座り心地が悪くなる虞があるし、車両前突時、後席着座乗員の足先がクロスメンバに強く当たる虞がある。
【0011】
故に、フロア上面に対してクロスメンバの高さを低く抑えているのが実情であるが、クロスメンバとフロアパネルとで形成される閉断面も小さくなり、車両側突時、サイドシルとセンターピラーとの結合部分の車室側への進入を抑制するクロスメンバの機能が低下し、更に、サイドシルの変形によって、センターピラーが車室側へ倒れる込むことも懸念される。特許文献1の下部車体構造では、クロスメンバの構成等を改良して、後席着座乗員の足先が入るようにしているが、上記課題を殆ど改善できるものではない。
【0012】
本発明の目的は、車両の車室底部構造において、後席着座乗員の足先が良好な位置・姿勢になるようにして座り心地を改善するとともに、車両前突時、車両に対して前方へ移動しようとする後席着座乗員に無理を生じさせないように、後席着座乗員の足、ヒップポイントの前方移動を抑制すること、後席着座乗員が着用のシートベルトによる適正な乗員拘束機能を発揮させること、後部着座乗員の足元空間を深く拡大すること、クロスメンバの機能を高めて車両側突性能を高めること、等々である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の車両の車室底部構造は、前席及び後席が設置されるフロアパネルを備え、後席の着座乗員の足先が前席シートクッションの下方空間に入るように構成された車両の車室底部構造において、前記フロアパネルのうち前席シートクッションの下方に位置するフロア上面から上方へ膨出するように配置され、後席の着座乗員の足の少なくとも踵部から拇指球部までの部分を載置可能な後方下がり傾斜状の踏面部を有するヒールパッドを備えたことを特徴とする。
【0014】
この車両の車室底部構造では、フロアパネルに前席及び後席が設置されて、後席着座乗員の足先が前席シートクッションの下方空間に入るように構成され、フロアパネルのうち前席シートクッションの下方に位置するフロア上面から上方へ膨出するようにヒールパッドが配置され、このヒールパッドは後席着座乗員の足の少なくとも踵部から拇指球部までの部分を載置可能な後方下がり傾斜状の踏面部を有するものになっている。
【0015】
従って、後席着座乗員は、その足先を前席シートクッションの下方空間に入れ、その足の少なくとも踵部から拇指球部までの部分をヒールパッドの踏面部に載置して、足先が良好な位置・姿勢になって座り心地が改善され、車両前突が起きた場合、後方下がり傾斜状の踏面部を有するヒールパッドによって、車両に対して前方へ移動しようとする後席着座乗員の足の踏ん張りがきくことで、後席着座乗員の足が前方へ移動することが抑制され、故に、後席着座乗員のヒップポイントが前方へ移動することが抑制される。
【0016】
ここで、従属請求項として次の構成を採用可能である。
前記フロアパネルの車幅方向外端部がサイドシルに結合されるとともに、このサイドシルに前席サイド開口と後席サイド開口とを仕切るピラーの下端部が結合され、前記フロアパネルの車幅方向中央側に設けられたフロアトンネルと、前記ピラーの下端部と同じ前後方向位置において、サイドシルとフロアトンネルとを連結しフロアパネルの上面に沿って前席シートクッションの下方を通るように配設された車幅方向に長いクロスメンバとを備え、前記ヒールパッドが前記クロスメンバを覆うように構成される(請求項2)。
【0017】
前記クロスメンバの前方において、サイドシルとフロアトンネルとを連結しフロアパネルの上面に沿って配設された車幅方向に長い前側クロスメンバを備え、前記フロアパネルは、前側クロスメンバの前方に位置するフロアパネル前部と、前側クロスメンバの後方に位置し且つフロアパネル前部よりも高さ位置が低いフロアパネル後部と、フロアパネル前部の後縁部とフロアパネル後部の前縁部とを接続する後方下がり傾斜状のフロアパネル段差部とを有し、前記前側クロスメンバは、断面ハット形に形成されフロアパネルのフロアパネル段差部の近傍部に結合されて、このフロアパネル段差部と協働して閉断面を形成する(請求項3)。
【0018】
前記フロアパネル後部の後端部に上方に立ち上がるキックアップ部が設けられ、前記フロアパネルは、前記キックアップ部の上端部から後方へ延びて後席が設置されるリヤフロアパネルを有する(請求項4)。前記ヒールパッドが衝撃緩和機能を発揮できる弾性部材で形成される(請求項5)。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の車両の車室底部構造によれば、フロアパネルのうち前席シートクッションの下方に位置するフロア上面から上方へ膨出するように配置され、後席の着座乗員の足の少なくとも踵部から拇指球部までの部分を載置可能な後方下がり傾斜状の踏面部を有するヒールパッドを備えたので、後席着座乗員は、その足先を前席シートクッションの下方空間に入れ、その足の少なくとも踵部から拇指球部までの部分をヒールパッドの踏面部に載置して、足先が良好な位置・姿勢になるようにし、その足首の角度に対して下肢関節の角度も適度な角度にすることができるので、座り心地を改善できるとともに、車両前突が起きた場合、後方下がり傾斜状の踏面部を有するヒールパッドによって、特に、後席着座乗員がシートベルトを着用している場合には、車両に対して前方へ移動しようとする後席着座乗員に無理を生じさせないように、その後席着座乗員の足の踏ん張りがきくことで、後席着座乗員の足が前方へ移動することを抑制でき、故に、後席着座乗員のヒップポイントが前方へ移動することを抑制できて、後席着座乗員が着用のシートベルトによる適正な乗員拘束機能を発揮させることができ、後席着座乗員の脛等が前席シートクッションに強く当たることも抑制できる。後席着座乗員の足先が前席シートクッションの下方空間に入ることで、後席着座乗員の着座スペースを確保しつつ、車両のコンパクト化を図るうえで有利になるが、ヒールパッドも前席シートクッションの下方空間を有効利用して邪魔にならないように設置できるので、こうした効果を阻害しない。
【0020】
請求項2の車両の車室底部構造によれば、ピラーの下端部と同じ前後方向位置において、サイドシルとフロアトンネルとを連結しフロアパネルの上面に沿って前席シートクッションの下方を通るように配設された車幅方向に長いクロスメンバとを備えたので、このクロスメンバにより、車両側突時、応力集中が起こるサイドシルとピラーとの結合部分の車室側への進入を抑制できるとともに、このクロスメンバを覆うようにヒールパッドを構成したので、クロスメンバの機能を維持して、つまり、クロスメンバの上記配置を許容して、そのクロスメンバに後部着座乗員の足先が、通常時にも車両前突時にも接触しないようにすることができる。
【0021】
請求項3の車両の車室底部構造によれば、クロスメンバの前方において、サイドシルとフロアトンネルとを連結しフロアパネルの上面に沿って配設された車幅方向に長い前側クロスメンバを備え、フロアパネルは、前側クロスメンバの前方に位置するフロアパネル前部と、前側クロスメンバの後方に位置し且つフロアパネル前部よりも高さ位置が低いフロアパネル後部と、フロアパネル前部の後縁部とフロアパネル後部の前縁部とを接続する後方下がり傾斜状のフロアパネル段差部とを有し、前側クロスメンバは、断面ハット形に形成されフロアパネルのフロアパネル段差部の近傍部に結合されて、このフロアパネル段差部と協働して閉断面を形成するので、フロアパネル前部を基準にフロアパネル後部の高さ位置を低くすることで、前席の高さ位置、クロスメンバ及び前側クロスメンバの上端高さ位置を既存のままにして、つまりは、既存車両の設計変更を大幅に行うこともなく、クロスメンバ及び前側クロスメンバにおける閉断面を大きくし、それらの機能を高めて車両側突性能を高めることができ、また、後席着座乗員の足元空間を深く拡大でき、つまり着座スペースを拡大でき、ここで、前席シートクッションの下方空間を上下に拡大できるので、この下方空間に後部着座乗員の足先を載置可能なヒールパッドを確実に配置できる。
【0022】
請求項4の車両の車室底部構造によれば、フロアパネル後部の後端部に上方に立ち上がるキックアップ部を設け、フロアパネルは、キックアップ部の上端部から後方へ延びて後席が設置されるリヤフロアパネルを有するので、リヤフロアパネル及び後席等については既存の構成のままで、後席着座乗員の足元空間を深く拡大できる。
【0023】
請求項5の車両の車室底部構造によれば、ヒールパッドを衝撃緩和機能を発揮できる弾性部材で形成したので、車両前突時、このヒールパッドにより、車両に対して前方へ移動しようとする後席着座乗員の足が踏ん張る際に、足首等への衝撃を緩和できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の車両の車室底部構造は、前席及び後席が設置されるフロアパネルを備え、後席の着座乗員の足先が前席シートクッションの下方空間に入るように構成され、フロアパネルのうち前席シートクッションの下方に位置するフロア上面から上方へ膨出するように配置され、後席の着座乗員の足の少なくとも踵部から拇指球部までの部分を載置可能な後方下がり傾斜状の踏面部を有するヒールパッドを備えている。
【実施例】
【0025】
図1〜図5に示すように、車両C(自動車C)の車室底部構造1は、フロントフロアパネル3とリヤフロアパネル4とを有するフロアパネル2、フロアトンネル5、キックアップ部6、前側クロスメンバ7(No. 2クロスメンバ7)、クロスメンバ8(No. 2.5クロスメンバ8)、後側クロスメンバ9(No. 3クロスメンバ9)、フロアフレーム10、ヒールパッド11を備えている。
【0026】
フロントフロアパネル3、前側クロスメンバ7、クロスメンバ8、フロアフレーム10、ヒールパッド11は、夫々、左右1対設けられ、左右1対のフロントフロアパネル3に左右1対の前席12が設置され、リヤフロアパネル4に前席12の後方に位置する後席13が設置され、前席12及び後席13の着座乗員を夫々拘束する図示略のシーベルト(シーベルト装置)が装備されている。後席13としては、前席12と同様に左右1対の後席13を設けてもよいし、ベンチシートタイプの後席13を採用してもよい。
【0027】
この車両Cでは、左右1対の前後方向に延びるサイドシル14、左右1対の前席サイド開口15、左右1対の後席サイド開口16、前席サイド開口15と後席サイド開口16とを仕切る左右1対の上下方向に延びるピラー17(センターピラー17)が設けられ、1対のピラー17の下端部が1対のサイドシル14に結合されている。
【0028】
尚、サイドシル14は、インナ部材14aとレインフォースメント14bとアウタ部材14cとを有し、これら部材14a〜14cが互いに結合されて閉断面を形成するとともに、更に、サイドシル14の後側部分は、上側インナ部材14dと上側レインフォースメント14eとを有し、これら部材14d,14eが互いに且つインナ部材14aとレインフォースメント14bとに結合されて上下2重の閉断面を形成している。また、ピラー17も、インナ部材とレインフォースメントとアウタ部材(図示略)とを有し、これら部材が互いに結合されて閉断面を形成している。
【0029】
車室底部構造1について詳細に説明する。尚、基本的に、車室底部構造1は、左右対称の構造であり、その左右対称の構造については、一方(左方)についてのみ説明する。
【0030】
フロントフロアパネル3は、その前端部がエンジンルーム(図示略)と車室とを仕切るダッシュパネル(図示略)の下端部に結合され、その車幅方向外端部がサイドシル14に結合され、その車幅方向中央側にフロアトンネル5が設けられ、このフロアトンネル5の下面側に沿ってエンジン排気管(図示略)が設置される。尚、左右1対のフロントフロアパネル3はフロアトンネル5と共に一体形成されている。
【0031】
フロントフロアパネル3及びフロアトンネル5の後端部に上方に立ち上がるキックアップ部6が設けられ、リヤフロアパネル4はキックアップ部6の上端部から後方へ延び、リヤフロアパネル4の下方には燃料タンク(図示略)が設置される。リヤフロアパネル4は、その車幅方向外端部の少なくとも一部がサイドシル14の後側部分に結合され、その後端部が車室(荷室)の後端を仕切るリヤエンドパネル(図示略)に結合されている。
【0032】
フロントフロアパネル3は、前側クロスメンバ8の前方に位置する略水平なフロアパネル前部3aと、前側クロスメンバ3aの後方に少し間隔を空けて位置し且つフロアパネル前部3aよりも高さ位置が低い略水平なフロアパネル後部3bと、フロアパネル前部3aの後縁部とフロアパネル後部3bの前縁部とを接続する緩やかな後方下がり傾斜状のフロアパネル段差部3cとを有する。
【0033】
フロアパネル段差部3cは、ピラー17の下端部の前後方向位置よりも前方の、前席12の前部下側に位置して、フロアパネル前部3aが前席12の着座乗員用の車室フロアを形成し、フロアパネル後部3bの後部が後席13の着座乗員用の車室フロアを形成し、尚、フロアパネル後部3bの後端部分には、緩やかに後方上がりに傾斜する傾斜後部3dが形成され、フロアパネル後部3bの後端部にキックアップ部6が設けられている。
【0034】
前側クロスメンバ7は、クロスメンバ8の前方において、サイドシル14とフロアトンネル5とを連結しフロアパネル2(フロントフロアパネル3)の上面に沿って車幅方向に延びるように配設され、この前側クロスメンバ7に前席12の前部が取り付けられる。前側クロスメンバ7は、断面ハット形に形成され、フロントフロアパネル3のフロアパネル段差部3cの近傍部に結合されて、このフロアパネル段差部3cと協働して閉断面を形成している。
【0035】
前側クロスメンバ7は、水平な上壁部7a、前壁部7b、後壁部7cを有し、後壁部7cが前壁部7bよりも下方へ延びて、前壁部7bの下端フランジ部7b1がフロアパネル前部3aの後縁近傍部の上面に結合され、後壁部7cの下端フランジ部7c1がフロアパネル後部3bの前縁近傍部の上面に結合されている。
【0036】
クロスメンバ8は、ピラー17の下端部と同じ前後方向位置において、サイドシル14とフロアトンネル5とを連結しフロアパネル2(フロントフロアパネル3)の上面に沿って車幅方向に延び前席シートクッション12aの下方を通るように配設されている。クロスメンバ8は、断面ハット形に形成され、フロントフロアパネル3のフロアパネル後部3bに結合されて、このフロアパネル後部3bと協働して閉断面を形成している。
【0037】
クロスメンバ8は、緩やかに後方下がりに傾斜する上壁部8a、前壁部8b、後壁部8cを有し、前側クロスメンバ7の1/2程度の高さを有し、上壁部8aがフロアパネル前部3aの後端縁と略同じ高さに位置して、前壁部8bと後壁部8cの下端フランジ部8b1,8c1がフロアパネル後部3bの上面に結合されている。
【0038】
後側クロスメンバ9は、キックアップ部6とリヤフロアパネル4の接続部分の裏面に沿って車幅方向に延びるように配設されて、1対のサイドシル14同士を連結している。この後側クロスメンバ9は、例えば断面L形に形成され、キックアップ部6の上端部分とリヤフロアパネル4の前端部分に結合されて、これらと協働して閉断面を形成している。
【0039】
ここで、前席シートクッション12aは、左右1対のシートフレーム12bを有し、これらシートフレーム12bが前後1対の連結ロッド12c,12dで連結され、1対のシートフレーム12bにはクッション本体を載置するクッション受け12eが連結されている。1対のシートフレーム12bに左右1対のアッパレール12fが夫々連結ブラケット12gを介して連結され、これらアッパレール12fが左右1対のロアレール12hに前後方向へスライド可能にガイド支持されている。1対のロアレール12hの前端部は夫々取付ブラケット12iを介して前側クロスメンバ8に取り付けられている。
【0040】
ここで、クロスメンバ9と同じ前後方向位置において、フロアトンネル5とサイドシル14には、クロスメンバ9側へ張り出しクロスメンバ9よりも高さ位置が高い補強部材18,19が夫々結合され、これら補強部材18,19とクロスメンバ9の車幅方向両端部とが結合されるとともに、1対のロアレール12hは、補強部材18,19に夫々取付ブラケット12jを介して取り付けられている。
【0041】
フロアフレーム10は、サイドシル14とフロアトンネル5との間でフロントフロアパネル3に沿って前後方向へ延びるように配設されている。フロアフレーム10は、フロアパネル前部3aの下面に結合され且つ後端部がフロアパネル段差部3cに下面側から結合されたフロアフレーム前部20と、フロアパネル後部3bの上面に結合され且つ前端部がフロアパネル段差部3cに上面側から結合されてフロアフレーム前部20にフロアパネル段差部3cを介してストレート状に繋がるフロアフレーム後部21とを有する。
【0042】
フロアフレーム前部20は、断面逆ハット形に形成され、その上端フランジ部20aがフロアパネル前部3aに結合されるとともに、その後端フランジ20bがフロアパネル段差部3cに結合されて、フロントフロアパネル3(フロアパネル前部3aとフロアパネル段差部3c)と協働して閉断面を形成し、その下端部がフロアパネル後部3bと高さ位置を同じにして連続的に繋がように構成されている。
【0043】
フロアフレーム後部21は、断面ハット形に形成され、その下端フランジ部21aがフロアパネル後部3bに結合されるとともに、その前端フランジ21bがフロアパネル段差部3cに結合されて、フロントフロアパネル3(フロアパネル後部3bとフロアパネル段差部3c)と協働して閉断面を形成し、その上端部がフロアパネル前部3aと高さ位置を同じにして連続的に繋がるように構成されている。
【0044】
フロアフレーム後部21は、前側クロスメンバ7とクロスメンバ8を貫通して延びて、前側クロスメンバ7とクロスメンバ8に結合されている。前側クロスメンバ7については、その後壁部7cに門形の結合フランジ部7c2が、フロアフレーム後部21の貫通部分から張り出すように形成されて、フロアフレーム後部21の表面に結合されている。
【0045】
クロスメンバ8については、その前壁部8bと後壁部8cに門形の結合フランジ部8b2,8c2が、フロアフレーム後部21の貫通部分から張り出すように形成されて、フロアフレーム後部21の表面に結合されている。尚、フロアフレーム後部21の後端部は、フロアパネル後部3bの傾斜後部3dに結合され終端している。但し、フロアフレーム後部21の後端部をキックアップ部6に直接結合してもよい。
【0046】
ここで、後席12の着座乗員M(後席着座乗員M)の足先Maが、前席12の左右1対のレール12f(12h)の間において、前席シートクッション12aの連結ロッド12d等にも干渉することなく、前席シートクッション12aの下方空間25に入るように構成され、特に、フロントフロアパネル3において、フロアパネル前部3aに対してフロントパネル後部3bの高さ位置を下げたことで、後席着座乗員Mの足先Maが大きい場合でも十分に入り得る下方空間25になっている。
【0047】
ヒールパッド11は、フロアパネル後部3bのうち前席シートクッション12aの下方に位置するフロア上面26から上方へ膨出するように配置され、後席着座乗員Mの足の少なくとも踵部Mbから拇指球部Mcまでの部分(指部Mdを含んでもよい)を載置可能な後方下がり傾斜状の踏面部11aを有し、衝撃緩和機能を発揮できる硬質のウレタンやゴム等からなる弾性部材で形成されている。
【0048】
尚、後席着座乗員Mの足の踵部Mbから拇指球部Mcまでの部分については、その全部を踏面部11aに載置するという訳ではなく、その一部(例えば、土踏まず等)を含まない部分を踏面部11aに載置できればよく、そのように踏面部11aが形成されている。
【0049】
ヒールパッド11について詳しく説明すると、ヒールパッド11は、前席シートクッション12aの半分程度の前後長を有するとともに、やや後ろ寄りに位置する前席シートクッション12aの後部下側に位置し、踏面部11aの傾斜角度が例えば20〜30度になるようにして、断面にて、踏面部11aを長辺とする直角三角形に形成され、ヒールパッド11の下端後端部には、水平面部11bが後方へ延びるように形成されている。
【0050】
ヒールパッド11は、クロスメンバ8を覆うとともに、フロアフレーム後部21のうち前席シートクッション13の後部下側に位置部分を覆うように構成されている。そのために、ヒールパッド11には、下面側から車幅方向に長いクロスメンバ8の係合用凹部11cが形成されるとともに、この係合用凹部11cと直交する前後方向に長いフロアフレーム後部21の係合用凹部11dが形成されている。
【0051】
ここで、ヒールパッド11は、その車幅方向両側に位置する補強部材18,19と干渉しないように、サイドシル14とフロアトンネル5間の間隔と略同じ車幅方向長さを有し、その車幅方向両端部分の補強部材18,19と対応する部分が切欠かれている、或いは、補強部材18,19間に入る車幅方向長さを有するものになっている。
【0052】
尚、このヒールパッド11については、フロアパネル後部3cやクロスメンバ8やフロアフレーム後部21に何らかの固定手段で固定することが望ましい。尚、ヒールパッド11の表面にはフロアシート29が敷設され、このフロアシート29は、ヒールパッド11の表面の他に、フロントフロアパネル3、リヤフロアパネル4、フロアトンネル5、キックアップ部6、前側クロスメンバ7、クロスメンバ8等の要部表面にも敷設されている。
【0053】
以上説明した車室底部構造1の作用・効果について説明する。
フロントフロアパネル3(フロアパネル後部3b)のうち前席シートクッション12aの下方に位置するフロア上面26から上方へ膨出するように配置され、後席着座乗員Mの足の少なくとも踵部Mbから拇指球部Mcまでの部分を載置可能な後方下がり傾斜状の踏面部11aを有するヒールパッド11を備えたので、後席着座乗員Mは、その足先Maを前席シートクッション12aの下方空間25に入れ、その足の少なくとも踵部Mbから拇指球部Mcまでの部分をヒールパッド11の踏面部11aに載置して、足先Maが良好な位置・姿勢になるようにし、その足首の角度に対して下肢関節の角度も適度な角度にすることができるので、座り心地を改善できる。
【0054】
車両前突が起きた場合、後方下がり傾斜状の踏面部11aを有するヒールパッド11によって、特に、後席着座乗員Mがシートベルトを着用している場合には、車両Cに対して前方へ移動しようとする後席着座乗員Mに無理を生じさせないように、その後席着座乗員Mの足の踏ん張りがきくことで、後席着座乗員Mの足が前方へ移動することを抑制でき、故に、後席着座乗員MのヒップポイントHPが前方へ移動することを抑制できて、後席着座乗員Mが着用のシートベルトによる適正な乗員拘束機能を発揮させることができ、後席着座乗員Mの脛Me等が前席シートクッション12aに強く当たることも抑制できる。
【0055】
後席着座乗員Mの足先Maが前席シートクッション12aの下方空間25に入ることで、後席着座乗員Mの着座スペースを確保しつつ、車両Cのコンパクト化を図るうえで有利になるが、ヒールパッド11も前席シートクッション12aの下方空間25を有効利用して邪魔にならないように設置できるので、こうした効果を阻害しない。
【0056】
ここで、車両前突に限らず、車両Cが急制動した場合、ヒールパッド11によって、後席着座乗員Mの足の踏ん張りがきくため、仮に、後席着座乗員Mがシートベルトを着用していない場合でも、後席着座乗員Mの足とヒップポイントHPが前方へ移動しにくくなり、例えば、後席着座乗員Mが飲料水等を持っている場合に、その飲料水等が溢れる等の事態を回避することも期待できる。
【0057】
また、ヒールパッド11は、前方程、前席シートクッション12aとの間の空間を狭くして、後席着座乗員Mの足先Maを前方へ移動させにくくする、という機能を備えている。即ち、車両前突時、後席着座乗員Mの足先Maが少し前方へ移動することで、それ以上は前方へ移動しなくなり、後席着座乗員MのヒップポイントHPが前方へ移動することを極力抑制して、後席着座乗員Mが着用のシートベルトによる適正な乗員拘束機能をより極力発揮させ、ここで、後席着座乗員Mの足先Maが少し前方へ移動しても脛Me等が前席シートクッション12aに当たる虞がるが、そのときには、ヒールパッド11によって衝撃が幾分吸収された状態になって、後席着座乗員Mの脛Me等が前席シートクッション12aに強く当たることも極力抑制する、という効果も期待できる。
【0058】
ピラー17の下端部と同じ前後方向位置において、サイドシル14とフロアトンネル5とを連結しフロントフロアパネル3の上面に沿って前席シートクッション12aの下方を通るように配設された車幅方向に長いクロスメンバ8を備えたので、このクロスメンバ8により、車両側突時、応力集中が起こるサイドシル14とピラー17との結合部分の車室側への進入を抑制できるとともに、このクロスメンバ8を覆うようにヒールパッド11を構成したので、クロスメンバ8の機能を維持して、つまり、クロスメンバ8の上記配置を許容して、そのクロスメンバ8に後部着座乗員Mの足先Maが、通常時にも車両前突時にも接触しないようにすることができる。
【0059】
クロスメンバ8の前方において、サイドシル14とフロアトンネル5とを連結しフロントフロアパネル3の上面に沿って配設された車幅方向に長い前側クロスメンバ7を備え、フロントフロアパネル3は、前側クロスメンバ7の前方に位置するフロアパネル前部3aと、前側クロスメンバ7の後方に位置し且つフロアパネル前部3aよりも高さ位置が低いフロアパネル後部3bと、フロアパネル前部3aの後縁部とフロアパネル後部3bの前縁部とを接続する後方下がり傾斜状のフロアパネル段差部3cとを有し、前側クロスメンバ7は、断面ハット形に形成されフロントフロアパネル3のフロアパネル段差部3cの近傍部に結合されて、このフロアパネル段差部3cと協働して閉断面を形成する。
【0060】
従って、フロアパネル前部3aを基準にフロアパネル後部3bの高さ位置を低くすることで、前席12の高さ位置、クロスメンバ8及び前側クロスメンバ7の上端高さ位置を既存のままにして、つまりは、既存車両の設計変更を大幅に行うこともなく、クロスメンバ8及び前側クロスメンバ7における閉断面を大きくし、それらの機能を高めて車両側突性能を高めることができ、また、後席着座乗員Mの足元空間を深く拡大でき、つまり着座スペースを拡大でき、ここで、前席シートクッション12aの下方空間25を上下に広くできるので、この下方空間25に後部着座乗員Mの足先Maを載置可能なヒールパッド11を確実に配置できる。
【0061】
フロアパネル後部3bの後端部に上方に立ち上がるキックアップ部6を設け、フロアパネル2は、キックアップ部6の上端部から後方へ延びて後席13が設置されるリヤフロアパネル4を有するので、リヤフロアパネル4及び後席13等については既存の構成のままで、後席着座乗員Mの足元空間を深く拡大できる。
【0062】
ヒールパッド11を衝撃緩和機能を発揮できる弾性部材で形成したので、車両前突時、このヒールパッド11により、車両Cに対して前方へ移動しようとする後席着座乗員Mの足が踏ん張る際に、足首等への衝撃を緩和できる。
【0063】
尚、前記実施例を次のように部分的に変更してもよい。
1)ヒールパッド11のサイズ、形状(踏面部11aの傾斜角度等)については、適宜変更可能である。
2)ヒールパッド11を特に衝撃緩和機能をそれ程有しない部材(例えば、板状金属部材)で形成してもよい。この場合、フロアシート29を厚くし、そのフロアシート29に衝撃緩和機能を持たせてもよい。
3)フロントフロアパネル3を全体的に略水平に形成してもよい。
4)前側クロスメンバ7やクロスメンバ8を筒状に構成してもよい。
5)クロスメンバ8を省略してもよい。
【0064】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を付加して実施可能であり、本発明の車両の車室底部構造については、前席と後席を備えた種々の自動車、或いは、自動車以外の種々の車両に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】車両の車室底部構造の前席及び後席を省略した斜視図である。
【図2】車室底部構造の前席及び後席を省略した平面図である。
【図3】図1のIII −III 線断面図である。
【図4】図1のIV−IV線断面図である。
【図5】図1のV −V 線断面図である。
【符号の説明】
【0066】
C 車両
M 後席着座乗員
Ma 足先
Mb 踵部
Mc 拇指球部
1 車室底部構造
2 フロアパネル
3 フロントフロアパネル
3a フロアパネル前部
3b フロアパネル後部
3c フロアパネル段差部
4 リヤフロアパネル
5 フロアトンネル
6 キックアップ部
7 前側クロスメンバ
8 クロスメンバ
11 ヒールパッド
11a 踏面部
12 前席
12a 前席シートクッション
13 後席
14 サイドシル
15 前席サイド開口
16 後席サイド開口
17 ピラー
25 下方空間
26 フロア上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前席及び後席が設置されるフロアパネルを備え、後席の着座乗員の足先が前席シートクッションの下方空間に入るように構成された車両の車室底部構造において、
前記フロアパネルのうち前席シートクッションの下方に位置するフロア上面から上方へ膨出するように配置され、後席の着座乗員の足の少なくとも踵部から拇指球部までの部分を載置可能な後方下がり傾斜状の踏面部を有するヒールパッドを備えたことを特徴とする車両の車室底部構造。
【請求項2】
前記フロアパネルの車幅方向外端部がサイドシルに結合されるとともに、このサイドシルに前席サイド開口と後席サイド開口とを仕切るピラーの下端部が結合され、
前記フロアパネルの車幅方向中央側に設けられたフロアトンネルと、
前記ピラーの下端部と同じ前後方向位置において、サイドシルとフロアトンネルとを連結しフロアパネルの上面に沿って前席シートクッションの下方を通るように配設された車幅方向に長いクロスメンバとを備え、
前記ヒールパッドが前記クロスメンバを覆うように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両の車室底部構造。
【請求項3】
前記クロスメンバの前方において、サイドシルとフロアトンネルとを連結しフロアパネルの上面に沿って配設された車幅方向に長い前側クロスメンバを備え、
前記フロアパネルは、前側クロスメンバの前方に位置するフロアパネル前部と、前側クロスメンバの後方に位置し且つフロアパネル前部よりも高さ位置が低いフロアパネル後部と、フロアパネル前部の後縁部とフロアパネル後部の前縁部とを接続する後方下がり傾斜状のフロアパネル段差部とを有し、
前記前側クロスメンバは、断面ハット形に形成されフロアパネルのフロアパネル段差部の近傍部に結合されて、このフロアパネル段差部と協働して閉断面を形成することを特徴とする請求項2に記載の車両の車室底部構造。
【請求項4】
前記フロアパネル後部の後端部に上方に立ち上がるキックアップ部が設けられ、
前記フロアパネルは、前記キックアップ部の上端部から後方へ延びて後席が設置されるリヤフロアパネルを有することを特徴とする請求項3に記載の車両の車室底部構造。
【請求項5】
前記ヒールパッドが衝撃緩和機能を発揮できる弾性部材で形成されたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の車両の車室底部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−83701(P2009−83701A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257360(P2007−257360)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】