説明

車両の電源装置

【課題】二次電池の充放電の経過に適した方法で、SOCの推定精度を向上させた車両の電源装置を提供する。
【解決手段】車両の電源装置は、充放電が可能なバッテリB1,B2と、バッテリの電流を検出する電流センサ11−1,11−2と、バッテリの充電状態を推定し、推定した充電状態に基づいてバッテリの充放電を制御する制御装置30とを備える。制御装置30は、所定期間において第1、第2の推定方法によってそれぞれ第1、第2の推定値を算出し、所定期間内における充電量と放電量とを観測し、観測結果に基づいて第1、第2の推定値のいずれかに基づいてバッテリの充電状態SOCを更新する。第1の推定方法は、バッテリの開路電圧を推定し、開路電圧補正した値に基づいて第1の推定値を決定する方法である。第2の推定方法は、電流センサで検出された電流を積算した結果に基づいて第2の推定値を決定する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の電源装置に関し、特に二次電池の充放電の制御のために二次電池の充電状態を推定して推定した充電状態を用いる車両の電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車では、主として蓄電装置として二次電池(以下、バッテリともいう)が使用されている。この二次電池の充電状態(SOC:State Of Charge、蓄電量、残存容量などともいう)は、二次電池の充放電電流の積算値を端子電圧の測定値に基づいて補正することによって算出されている。
【0003】
たとえば、特開2009−5458号公報(特許文献1)には、電流と電圧を用いる充電状態推定方法についての開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−5458号公報
【特許文献2】特開2006−98135号公報
【特許文献3】特開2006−98134号公報
【特許文献4】特開2009−201197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハイブリッド自動車では、二次電池からの放電と二次電池への充電とが細かく切り替わり、ユーザの運転時間が長いとこの細かな切り替わりが発生する状態が継続する。このような状態では、電流積算値のみによって充電状態の増減量(ΔSOC)を算出すると誤差が累積してしまう。
【0006】
この誤差を少なくして充電状態の推定精度を向上させるため、電流−電圧プロットを用いて開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)を推定することによりSOCの推定を行なう手法や、電池モデルを用い電圧、電流、温度からSOCを算出する手法が提案されている。しかし、充放電履歴に関わらず、SOC推定精度を一律に向上させるのは難しく、使用条件によっては誤差が拡大してしまう瞬間も生じる。
【0007】
図8は、SOC推定値の誤差が拡大する例を説明するための図である。
図8を参照して、二次電池からの放電電流IBが正の状態が連続する状況、つまり放電が連続する状況が示されている。このような状況ではSOCは単調に減少する。電流積算値のみによってSOCの増減量(ΔSOC)を算出し、SOCを更新した場合(SOCi)は、実際のSOCと一致する。しかし、ΔSOCに電圧による補正を行なって、SOCを更新した場合(SOCv)は放電初期に誤差が発生し放電しているにもかかわらず一時的にSOCが増加したように変化している。
【0008】
近年、外部からの充電が可能なプラグインハイブリッド自動車が開発されている。このプラグインハイブリッド自動車では、外部から充電を実行している場合(外部充電モード)や、エンジンを停止して充電しておいたバッテリのエネルギを優先的に使用する場合(EVモード)など、充電または放電のいずれか一方が単純に連続することが多い。そのような領域では、従来のSOC推定方法では精度が悪化する場合がある。
【0009】
この発明の目的は、二次電池の充放電の経過に応じて適した方法でΔSOCを求め、SOCの推定精度を向上させた車両の電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、要約すると、車両の電源装置であって、充放電が可能な二次電池と、二次電池の電流を検出する電流センサと、二次電池の充電状態を推定し、推定した充電状態に基づいて二次電池の充放電を制御する制御装置とを備える。制御装置は、所定期間において第1、第2の推定方法によってそれぞれ第1、第2の推定値を算出し、所定期間内における二次電池への充電量と二次電池からの放電量とを観測し、観測結果に基づいて第1、第2の推定値のいずれかに基づいて二次電池の充電状態を更新する。第1の推定方法は、二次電池の開路電圧を推定し、開路電圧を分極に基づいて補正した値に基づいて第1の推定値を決定する方法である。第2の推定方法は、第1の推定方法とは異なる推定方法であって、電流センサで検出された電流を積算した結果に基づいて第2の推定値を決定する方法である。
【0011】
好ましくは、制御装置は、所定期間内に合計として放電が行なわれている場合には、所定期間における充電が発生する度合いを示す第1の評価値が第1のしきい値を超えるときに第1の推定値に基づいて二次電池の充電状態を更新し、第1の評価値が第1のしきい値を超えないときに第2の推定値に基づいて二次電池の充電状態を更新する。
【0012】
好ましくは、制御装置は、所定期間内に合計として充電が行なわれている場合には、所定期間における放電が発生する度合いを示す第2の評価値が第2のしきい値を超えるときに第1の推定値に基づいて二次電池の充電状態を更新し、第2の評価値が第2のしきい値を超えないときに第2の推定値に基づいて二次電池の充電状態を更新する。
【0013】
好ましくは、車両は、二次電池に車両外部から充電を行なう外部充電が可能に構成される。所定期間内に合計として充電が行なわれている場合は、外部充電が実行されるときを含む。
【0014】
好ましくは、車両には、エンジンと、力行動作と回生動作とが実行可能な電動機とが搭載される。所定期間内に合計として放電が行なわれている場合は、エンジンを停止した状態で電動機によって車両を走行させるときを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プラグインハイブリッド自動車のような様々な充放電状態を取りうる車両においても二次電池のSOCの推定精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両1の主たる構成を示す図である。
【図2】バッテリの開路電圧(OCV:Open-Circuit Voltage)とSOCとの関係を示した図である。
【図3】充電時のバッテリ電圧および放電時のバッテリ電圧の時間的変化を説明するための波形図である。
【図4】制御装置30が実行するSOC推定処理の構成を示すブロック図である。
【図5】図4の選択指令部146に関連する切替処理について説明するためのフローチャートである。
【図6】切替え判定パラメータKの変化について説明するための図である。
【図7】プラグイン充電後EV走行およびHV走行を実行したときのSOC変化の例を示した図である。
【図8】SOC推定値の誤差が拡大する例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0018】
[車両の全体構成]
図1は、本発明の実施の形態に係る車両1の主たる構成を示す図である。
【0019】
図1を参照して、車両1は、バッテリB1,B2と、昇圧コンバータ12−1,12−2と、平滑コンデンサCHと、電圧センサ10−1,10−2,13と、インバータ14と、エンジン4と、モータジェネレータMG1,MG2と、動力分割機構3と、制御装置30とを含む。
【0020】
この車両に搭載されるバッテリB1,B2は外部から充電が可能である。このために、車両1は、さらに、たとえばAC100Vまたは200Vの商用電源8に接続可能なコネクタを有し、正極線PL1および負極線NL1に接続される充電器6を含む。充電器6は、交流を直流に変換するとともに電圧を調圧してバッテリに与える。なお、外部充電可能とするために、他にも、モータジェネレータMG1,MG2のステータコイルの中性点を交流電源に接続する方式や昇圧コンバータ12−1,12−2を合わせて交流直流変換装置として機能させる方式を用いても良い。
【0021】
平滑コンデンサCHは、昇圧コンバータ12−1,12−2によって昇圧された電圧を平滑化する。電圧センサ13は、平滑コンデンサCHの端子間電圧VHを検知して制御装置30に出力する。
【0022】
インバータ14は、昇圧コンバータ12−1または12−2から与えられる直流電圧VHを三相交流電圧に変換してモータジェネレータMG1およびMG2に出力する。
【0023】
動力分割機構3は、エンジン4とモータジェネレータMG1,MG2に結合されてこれらの間で動力を分配する機構である。たとえば動力分割機構3としてはサンギヤ、プラネタリキャリヤ、リングギヤの3つの回転軸を有する遊星歯車機構を用いることができる。遊星歯車機構では、3つの回転軸のうち2つの回転軸の回転が定まれば、他の1つの回転軸の回転は強制的に定まる。この3つの回転軸がエンジン4、モータジェネレータMG1,MG2の各回転軸にそれぞれ接続される。なおモータジェネレータMG2の回転軸は、図示しない減速ギヤや差動ギヤによって車輪に結合されている。また動力分割機構3の内部にモータジェネレータMG2の回転軸に対する減速機をさらに組み込んでもよい。
【0024】
バッテリB1は、正極線PL1に正極が接続され、負極線NL1に負極が接続されている。電圧センサ10−1は、バッテリB1の正負極間の電圧VB1を測定する。電圧センサ10−1とともにバッテリB1の充電状態SOC1を監視するために、バッテリB1に流れる電流IB1を検知する電流センサ11−1が設けられている。また、バッテリB1の充電状態SOC1が制御装置30において検出されている。制御装置30は、後に図4、図5で説明する方法を用いて充電状態SOC1を算出する。
【0025】
バッテリB2は、正極線PL2に正極が接続され、負極線NL2に負極が接続されている。電圧センサ10−2は、バッテリB2の端子間の電圧VB2を測定する。電圧センサ10−2とともにバッテリB2の充電状態SOC2を監視するために、バッテリB2に流れる電流IB2を検知する電流センサ11−2が設けられている。また、バッテリB2の充電状態SOC2が制御装置30において検出されている。制御装置30は、後に図4、図5で説明する方法を用いて充電状態SOC2を算出する。
【0026】
バッテリB1,B2としては、たとえば、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池や、電気二重層コンデンサ等の大容量キャパシタなどを用いることができる。
【0027】
バッテリB2とバッテリB1とは、たとえば、同時使用することにより主正母線MPLと主負母線MNLとの間に接続される電気負荷(インバータ14およびモータジェネレータMG2)に許容された最大パワーを出力可能であるように蓄電可能容量が設定される。これによりエンジンを使用しないEV(Electric Vehicle)走行において最大パワーの走行が可能である。
【0028】
そしてバッテリB2の電力が消費されてしまったら、バッテリB1に加えてエンジン4を使用することによって、バッテリB2を使用しないでも最大パワーの走行を可能とすることができる。なお、バッテリB2を複数搭載して、1つめのバッテリの電力が消費されてしまったらスイッチ等で2つめ、3つめのバッテリにつなぎ替えるようにして、EV走行を継続可能な構成としても良い。
【0029】
インバータ14は、主正母線MPLと主負母線MNLに接続されている。インバータ14は、昇圧コンバータ12−1および12−2から昇圧された電圧を受けて、たとえばエンジン4を始動させるために、モータジェネレータMG1を駆動する。また、インバータ14は、エンジン4から伝達される動力によってモータジェネレータMG1で発電された電力を昇圧コンバータ12−1および12−2に戻す。このとき昇圧コンバータ12−1および12−2は、電圧VHを電圧VB1,VB2にそれぞれ変換する電圧変換回路として動作するように、制御装置30によって制御される。
【0030】
インバータ14は車輪を駆動するモータジェネレータMG2に対して昇圧コンバータ12−1および12−2の出力する直流電圧を三相交流電圧に変換して出力する。またインバータ14は、回生制動に伴い、モータジェネレータMG2において発電された電力を昇圧コンバータ12−1および12−2に戻す。このとき昇圧コンバータ12−1および12−2は、電圧VHを電圧VB1,VB2にそれぞれ変換する電圧変換回路として動作するように制御装置30によって制御される。
【0031】
制御装置30は、モータジェネレータMG1,MG2の各トルク指令値、モータ電流値および回転速度、電圧VB1,VB2,VHの各値、および起動信号を受ける。そして制御装置30は、昇圧コンバータ12−1,12−2に対して昇圧指示と降圧指示と動作禁止指示とを出力する。
【0032】
さらに、制御装置30は、インバータ14に対して、昇圧コンバータ12−1,12−2の出力である直流電圧VHをモータジェネレータMG1を駆動するための交流電圧に変換する駆動指示と、モータジェネレータMG1で発電された交流電圧を直流電圧VHに変換して昇圧コンバータ12−1,12−2側に戻す回生指示とを出力する。
【0033】
同様に制御装置30は、インバータ14に対してモータジェネレータMG2を駆動するための交流電圧に直流電圧を変換する駆動指示と、モータジェネレータMG2で発電された交流電圧を直流電圧に変換して昇圧コンバータ12−1,12−2側に戻す回生指示とを出力する。
【0034】
昇圧コンバータ12−1は、チョッパ回路40−1と、正母線LN1Aと、負母線LN1Cと、配線LN1Bと、平滑コンデンサC1とを含む。チョッパ回路40−1は、トランジスタQ1A,Q1Bと、ダイオードD1A,D1Bと、インダクタL1とを含む。トランジスタQ1BおよびダイオードD1Bによって上アームが構成される。また、トランジスタQ1AおよびダイオードD1Aによって下アームが構成される。
【0035】
正母線LN1Aは、一方端がトランジスタQ1Bのコレクタに接続され、他方端が主正母線MPLに接続される。また、負母線LN1Cは、一方端が負極線NL1に接続され、他方端が主負母線MNLに接続される。
【0036】
トランジスタQ1A,Q1Bは、負母線LN1Cと正母線LN1Aとの間に直列に接続される。具体的には、トランジスタQ1Aのエミッタが負母線LN1Cに接続され、トランジスタQ1BのエミッタがトランジスタQ1Aのコレクタに接続され、トランジスタQ1Bのコレクタが正母線LN1Aに接続される。下アームにおいて、ダイオードD1Aは、トランジスタQ1Aに並列に接続される。上アームにおいて、ダイオードD1Bは、トランジスタQ1Bに並列に接続される。ダイオードD1Aの順方向は、母線LN1CからインダクタL1に向かう向きである。また、ダイオードD1Bの順方向は、インダクタL1から母線LN1Aに向かう向きである。インダクタL1の一方端は、トランジスタQ1AとトランジスタQ1Bとの接続ノードに接続される。
【0037】
配線LN1Bは、正極線PL1とインダクタL1の他方端との間に接続される。平滑コンデンサC1は、配線LN1Bと負母線LN1Cとの間に接続され、配線LN1Bおよび負母線LN1C間の直流電圧に含まれる交流成分を低減する。
【0038】
正極線PL1および負極線NL1は、システムメインリレーSMR1によって、バッテリB1の正極および負極にそれぞれ接続される。
【0039】
そして、チョッパ回路40−1は、制御装置30から与えられる駆動信号PWC1に応じて、正極線PL1および負極線NL1から受ける直流電力(駆動電力)を昇圧して主正母線MPLおよび主負母線MNLへ供給し、また、主正母線MPLおよび主負母線MNLの電圧を降圧してバッテリB1へ供給することができる。
【0040】
昇圧コンバータ12−2は、チョッパ回路40−2と、正母線LN2Aと、負母線LN2Cと、配線LN2Bと、平滑コンデンサC2とを含む。チョッパ回路40−2は、トランジスタQ2A,Q2Bと、ダイオードD2A,D2Bと、インダクタL2とを含む。トランジスタQ2BおよびダイオードD2Bによって上アームが構成される。また、トランジスタQ2AおよびダイオードD2Aによって下アームが構成される。
【0041】
正母線LN2Aは、一方端がトランジスタQ2Bのコレクタに接続され、他方端が主正母線MPLに接続される。また、負母線LN2Cは、一方端が負極線NL2に接続され、他方端が主負母線MNLに接続される。
【0042】
トランジスタQ2A,Q2Bは、負母線LN2Cと正母線LN2Aとの間に直列に接続される。具体的には、トランジスタQ2Aのエミッタが負母線LN2Cに接続され、トランジスタQ2BのエミッタがトランジスタQ2Aのコレクタに接続され、トランジスタQ2Bのコレクタが正母線LN2Aに接続される。下アームにおいて、ダイオードD2Aは、トランジスタQ2Aに並列に接続される。上アームにおいて、ダイオードD2Bは、トランジスタQ2Bに並列に接続される。ダイオードD2Aの順方向は、母線LN2CからインダクタL2に向かう向きである。また、ダイオードD2Bの順方向は、インダクタL2から母線LN2Aに向かう向きである。インダクタL2は、トランジスタQ2AとトランジスタQ2Bとの接続ノードに接続される。
【0043】
なお、トランジスタQ1B,Q1A,Q2A,Q2Bは、パワースイッチング素子であればよく、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子やパワーMOSFET(Metal−Oxide Semiconductor Field−Effect Transistor)等を用いることができる。
【0044】
配線LN2Bは、一方端が正極線PL2に接続され、他方端がインダクタL2に接続される。平滑コンデンサC2は、配線LN2Bと負母線LN2Cとの間に接続され、配線LN2Bおよび負母線LN2C間の直流電圧に含まれる交流成分を低減する。
【0045】
正極線PL2および負極線NL2は、システムメインリレーSMR2によって、バッテリB2の正極および負極にそれぞれ接続される。
【0046】
そして、チョッパ回路40−2は、図1の制御装置30から与えられる駆動信号PWC2に応じて、正極線PL2および負極線NL2から受ける直流電力(駆動電力)を昇圧して主正母線MPLおよび主負母線MNLへ供給し、また、主正母線MPLおよび主負母線MNLの電圧を降圧してバッテリB2へ供給することができる。
【0047】
[開路電圧と充電状態の説明]
図2は、バッテリの開路電圧(OCV:Open−Circuit Voltage)とSOCとの関係を示した図である。
【0048】
バッテリのOCVは、SOCが増加すると高くなるという相関関係がある。たとえば、リチウムイオンバッテリは、OCV=3.0VでSOC=0%、OCV=4.1VでSOC=100%でその間は図2に示すような相関関係を有する。この相関を予め測定しておき、マップとして記憶しておく。そしてOCVを電圧センサで測定し、OCVに基づいてマップを参照してSOCを推定することができる。
【0049】
しかし、走行中や外部充電中は回路に電流を流す必要があるので、開路電圧は測定することができない。回路に電流を流している場合には、バッテリ電圧は、内部抵抗による電圧増減分および分極による電圧増減分の影響を受ける。
【0050】
図3は、充電時のバッテリ電圧および放電時のバッテリ電圧の時間的変化を説明するための波形図である。
【0051】
図3を参照して、時刻t1〜t2ではバッテリに充電が行なわれ、時刻t2〜t3ではバッテリに充放電が行なわれておらず、時刻t3以降バッテリから放電が行なわれる場合について説明する。
【0052】
まず、時刻t1においてバッテリに充電が開始される。バッテリ電流IBは、正の向きが放電、負の向きが充電を示す。充電が進むにつれて、開路電圧OCVは充電状態SOCの増加に伴って上昇する。この開路電圧OCVは、充電中は直接計測することはできない。充電中に電圧センサでバッテリ電圧VBとして検出できるのは閉路電圧CCV(Closed Circuit Voltage)である。この閉路電圧CCVは、開路電圧OCVにバッテリ内部抵抗による変化分ΔV1と分極による変化分ΔV2を加えたものである。
【0053】
変化分ΔV1については、充電電流Iと内部抵抗Rとの積で求めることができる。なおバッテリの内部抵抗Rは、温度依存性があるのでバッテリ温度を計測して温度に基づいて補正して用いても良い。
【0054】
変化分ΔV2については、充電時間が増加するにつれて増加する傾向がある。したがって、時刻t1〜t2において変化分ΔV2は次第に増加している。
【0055】
時刻t2において充電が停止されると、変化分ΔV1については電流が流れなくなるのでゼロとなる。しかし、変化分ΔV2については直ちにゼロになることは無く、時間がたつにつれてゼロに近づいていく。したがって、バッテリ電圧VBは、しばらくの間は開路電圧OCVよりも高い値を示し、ある程度の時間が経過すると開路電圧OCVに一致する。
【0056】
時刻t3以降の放電時については、変化分ΔV1、ΔV2は逆方向すなわち測定電圧を下げる方向に現れる。放電時においても、ΔV1が内部抵抗と電流の積であること、およびΔV2は分極に起因するものであり時間とともに増加するものであることについては、充電時と同様であるので説明は繰返さない。図示していないが、放電が停止してバッテリ電流がゼロになると変化分ΔV1分は電圧が上昇するが変化分ΔV2は直ちにゼロにはならず、しばらく開路電圧OCVよりも低めの電圧が測定される。その後、時間がある程度経過すると測定される電圧が開路電圧OCVに一致するようになる。
【0057】
分極によって生ずる電圧変化分ΔV2は、充電や放電の開始からの時間によって変化する。したがって、後に図4の電池モデルMBで説明するように、車両走行時に適用されるSOCの推定処理では、回生と力行の充放電のサイクルが繰返される走行パターンに合せて分極による電圧変化分ΔV2(図4ではVdyn)を決定し、これを用いて閉路電圧CCVから開路電圧OCVを推定し、推定された開路電圧OCVに基づいて最終的にSOCが推定される。
【0058】
すなわち、電圧変化分ΔV2(図4ではVdyn)は、充放電を繰返す走行時にマッチングさせた値に基づいて算出される。
【0059】
制御装置30は、充電または放電のいずれかしか実行されないことが分かっている場合には、主として、SOCの初期値に対して充電又は放電する電流を積算してSOCの推定を行なう。一方、走行時のように充電と放電のサイクルが頻繁に繰返される可能性のある場合には、主として、異なる推定方法である推定OCV法を用いて推定する。この推定OCV法では、電流積算だけでなく、バッテリ電圧やバッテリ内部抵抗を反映させて、頻繁に充電と放電とを繰返すようなバッテリ使用法がなされた場合に誤差が積算されてしまうのを防いでいる。
【0060】
制御装置30が行なうこのようなSOCの推定処理の切替えについて、ブロック図を用いて説明する。
【0061】
図4は、制御装置30が実行するSOC推定処理の構成を示すブロック図である。
図4を参照して、制御装置30は、電流積算に基づいてSOCの変化を検出する電池モデルMAと、電流積算に加えて電圧の検出値を用いる補正を適用してSOCの変化を検出する電池モデルMBとを含む。
【0062】
バッテリの充放電電流は電流検出部110により検出される。また、そのときのバッテリ電圧は電圧検出部112により検出される。なお、電流検出部110は、図1の電流センサ11−1,11−2に対応する。電圧検出部112は、図1の電圧センサ10−1,10−2に対応する。
【0063】
エンジンとモータを併用する車両の通常走行時(HV走行時)には、電池モデルMBを用いたSOCの推定によってΔSOCv演算部142で算出されたSOCの変化量ΔSOCvが選択指令部146によって選択され選択部136の選択設定がB側に設定される。この変化量ΔSOCvがSOC積算部148で積算されSOC推定値が出力される。
【0064】
電流検出部110により検出された充放電電流値は、疑似SOC推定部114で積分され、あらかじめ求められていたバッテリのSOCの初期値に加算されてSOCの一応の値である疑似SOCが推定される。このSOCの初期値は、外部充電直後の満充電時であればSOC上限値に設定される。外部充電しない場合には、前回使用終了時に制御装置30の内部の不揮発性メモリに保存されていたSOC推定値を読み出してSOCの初期値として用いることができる。
【0065】
このようにして求めた疑似SOCに基づき、起電力推定部116により、その疑似SOCに対応するバッテリ電圧を推定する。この起電力推定部116によって推定されるバッテリ電圧は、バッテリの開路電圧の推定値Vocである。このような開路電圧Vocは、例えば、あらかじめ図2のようなSOCと開路電圧とのマップをバッテリ毎に求めておき、疑似SOC推定部114から与えられる疑似SOCに対応する開路電圧Vocとして推定することができる。
【0066】
また、電流検出部110によって検出されたバッテリの充放電電流値から、バッテリの内部抵抗による電圧変動が電圧変動推定部118により推定される。この電圧変動推定部118では、下に示す式により内部抵抗によるバッテリ電圧の変動を推定する。
Vr=−r×IB
ここでrは内部抵抗を示し、IBはバッテリ電流値(放電が正)を示す。また、Vrは電圧変動推定部118によって推定される内部抵抗による電圧変動である。なお、バッテリの内部抵抗rは、あらかじめバッテリ毎に決定しておく。また、電流値IBは、電流検出部110によって検出された充放電電流値である。この電圧変動分Vrは、図3のΔV1に対応するものである。
【0067】
さらに、動的電圧変動推定部120により、バッテリの充放電電流の変化に基づいたバッテリ電圧の変動が推定される。この動的電圧変動は、バッテリの分極によって生じるものである。動的電圧変動推定部120では、頻繁に充放電を繰返すような使用パターンに基づいて決定されたバッテリの動的な電圧変動Vdynを与える。この電圧変動分Vdynは、図3のΔV2に対応するものである。たとえば、バッテリ電流IBに対して走行時に適合した設定時間における分極電圧を計測しておき電圧変動Vdynを電流に対するマップとして定義して用いることができる。
【0068】
次に、上述した起電力推定部116、電圧変動推定部118、動的電圧変動推定部120の出力値を加算器122で加算し、バッテリ電圧の推定値である推定電圧Vestを求める。すなわち、Vest=Voc+Vr+Vdynとなる。
【0069】
なお、以上に述べた疑似SOC推定部114、起電力推定部116、電圧変動推定部118、動的電圧変動推定部120、加算器122により、電池モデルMBが構成される。
【0070】
上述した電池モデルMBにより推定されたバッテリの推定電圧Vestは、比較器124で、電圧検出部112によって検出された実際のバッテリの測定電圧Vmesと比較され、その差がSOC修正量算出部126に入力される。SOC修正量算出部126および加算器128によって、下に示す式の演算が実行され、バッテリのSOCの推定値SOCvが算出される。
SOCv=SOCp+Kp×(Vmes−Vest)+Ki×∫(Vmes−Vest)dt
ここでSOCpは、疑似SOCを示し、Kp,Kiは係数を示す。上式において、疑似SOC(SOCp)は疑似SOC推定部114の出力値である。また、SOC修正量算出部126では、上式の第2項及び第3項すなわち比較器124によって求められた推定電圧Vestと測定電圧Vmesとの差(Vmes−Vest)に比例する成分と、この差の積分値に比例する成分とを算出する。ここで、係数Kp,Kiはそれぞれあらかじめバッテリ特性から決定しておく。SOC修正量算出部126によって算出された上記各成分は、上式に示されるように、加算器128により疑似SOC推定部114の出力値SOCpに加算される。これによりバッテリのSOCの推定値を得ることができる。
【0071】
このようにHV走行時に主として使用される電池モデルMBによって、疑似SOCからバッテリの起電力を推定するとともに、バッテリ電圧の内部抵抗による変動分と、充放電電流の変化による動的な電圧変動分とを推定し、これらの合計としてバッテリの電圧を推定する。すなわち、電池モデルにより、疑似SOCとともにバッテリの状態の変動を考慮してバッテリ電圧Vestを推定する。次に、この推定電圧Vestが実際に測定されたバッテリの電圧Vmesと等しくなるように疑似SOCを修正してバッテリのSOCを推定している。
【0072】
このように、電池モデルMBを使用すれば、推定電圧Vestと実際に測定されたバッテリの電圧Vmesとが等しくなるように疑似SOCを修正していくので、仮に最初に与えられるSOCの初期値が大きな誤差を含んでいても、速やかに正確なSOCの推定値に収束することができる。
【0073】
一方、充電または放電のいずれかしか実行されない場合たとえば、プラグイン充電時や乗車前空調の実行時のような場合には、電池モデルMAを用いたSOCの推定結果SOCiが使用される。そして、SOCiの変化量ΔSOCiがSOCの積算に使用されるように、選択部136の選択設定がA側に設定される。選択指令部は、ΔSOCi,ΔSOCvのいずれをSOCの積算に使用すべきかを決定して選択部136に指令を出す。
【0074】
電池モデルMAにおいて、初期SOC検出部132は、電圧検出部112で検出されたバッテリ電圧に基づいて初期SOCを決定する。図3で説明したように充電または放電が停止された直後であれば分極の影響が残存しているので、それまでに電池モデルMA、MB等で推定されていたSOCを引き継ぐ。充電または放電が停止されてからしばらく電流がほぼゼロである時間が続いた後であれば、電流ゼロ制御が実行されたときに計測したバッテリ電圧VBは電池起電力に等しいので図2に示したマップからSOCを求める。
【0075】
そして、電流検出部110により検出された充放電電流値が、電流積算処理部134で積分され、初期SOC検出部132で求められていたバッテリのSOCの初期値に加算され、SOCが推定される。
【0076】
プラグイン充電時や乗車前空調の実行時のような場合は、充電または放電のいずれかしか実行されないし、車両走行時のモータ電流のような大電流が流れることも無い。したがってSOCの推定誤差も蓄積しにくいのでこのような電流積算法でSOCを推定すればよい。これにより分極による電圧変動分の拡大の影響を受けないので、SOC管理上限値まで正確にプラグイン充電を行なうことが可能となる。また乗車前空調でバッテリから使用した分の電力を確実にプラグイン充電で戻すことができる。このため、EV走行の航続距離を伸ばす点で有利となる。
【0077】
なお、プラグイン充電時や乗車前空調の実行時のような場合は、充電または放電のいずれかしか実行されないし、車両走行時のモータ電流のような大電流が流れることも無いので、図4の電流検出部110を電流検出部110A,110B(図示せず)のようにレンジの異なる検出部に分けてもよい。そして、電池モデルMAを使用するときは、低計測レンジで高分解能の電流検出部110Aを使用し、電池モデルMBを使用するときは、大電流が計測可能な計測レンジで低分解能の電流検出部110Bを使用するように、選択部136の選択設定に連動させて電流検出部110A,110Bの使用を切替えても良い。図1でいえば電流センサ11−1,11−2に代えて、それぞれ同じ場所に精度の高いセンサ11−1A,11−2A(図示せず)と精度は劣るがもっと大電流を計測可能なセンサ11−1B,11−2B(図示せず)を設けて使い分ければよい。このようにすることでより一層正確なSOC推定が実行できる。
【0078】
選択部136の切替えは、充電プラグが挿入されて充電中であるか、エンジンが停止しているか、などに基づいて行なわれても良い。しかし、たとえばエンジンを停止して走行するEV走行時であっても、減速時や下り坂走行時に回生制動によって二次電池に充電が行なわれることもある。また、プラグイン充電時であってもライトやエアコン等の電気負荷を作動させていると二次電池から放電が起こる可能性もある。したがって、充放電を繰返す頻度は、走行する道路や運転者の操作によって様々に変化し得るので、車両の状態に合わせてこまめに選択部136を切替えると精度が向上する。
【0079】
図5は、図4の選択指令部146に関連する切替処理について説明するためのフローチャートである。
【0080】
図4、図5を参照して、まずステップS1においてΔSOCvとΔSOCiがΔSOCv演算部142,ΔSOCi演算部144でそれぞれ算出され選択指令部146に記憶される。次にステップS2において、選択指令部146において時間期間Tの間の絶対値積算値Σ|ΔSOCv|と積算値ΣΔSOCvが算出され、ステップS3において切替え判定パラメータKが次式によって算出される。
K=|Σ|ΔSOCv|/ΣΔSOCv|
このパラメータKは充放電の繰返しの頻度を示すものである。ステップS2、S3においてΔSOCvを使用したが、これに変えてΔSOCiを使用してパラメータKを求めても良い。
【0081】
図6は、切替え判定パラメータKの変化について説明するための図である。
図6を参照して、横軸は時間を示している。そしてSOC、ΔSOC、期間TあたりのΣΔSOC、パラメータKの波形が上から順に示されている。
【0082】
期間TAは、SOCが増減を繰返した場合の例である。この場合、ΔSOCはプラスの値とマイナスの値を交互に取るので、期間TあたりのΣΔSOCは最初一瞬プラスの値をとるがその後ずっと0となる。このときパラメータKの分子に当たるΣΔSOCが0になるため、パラメータKも0になる。
【0083】
期間TBは、SOCが単調に増加した場合の例である。この場合、ΔSOCはプラスの値を取るので、期間TあたりのΣΔSOCはプラスの値をとる。このときパラメータKの分子に当たるΣΔSOCと分母に当たるΣ|ΔSOC|が同じになるため、パラメータKは1になる。
【0084】
期間TCは、SOCが単調に減少した場合の例である。この場合、ΔSOCはマイナスの値を取るので、期間TあたりのΣΔSOCはマイナスの値をとる。このときパラメータKの分子に当たるΣΔSOCと分母に当たるΣ|ΔSOC|の大きさが同じで符号が異なるため、Σ|ΔSOCv|/ΣΔSOCvは−1となる。パラメータKはこの値の絶対値になるため、パラメータKは1になる。
【0085】
図6では理解の容易のため、簡単な波形例で説明した。このようにパラメータKは0〜1の間の値をとり、0に近いほど充放電が繰返されていることを示し、1に近いほど充電または放電が単調に連続していることを示す。
【0086】
再び図4,図5を参照して、ステップS3でパラメータKの算出が完了すると、ステップS4においてパラメータKがしきい値Ktよりも大きいか否かが判断される。
【0087】
ステップS4において、パラメータKがしきい値Ktよりも大きい場合には、ステップS5に処理が進む。すなわち選択部136はAの経路を選択し、SOC積算部148は、今までの値にΔSOCiを加えてSOC推定値を更新する。
【0088】
また、ステップS4において、パラメータKがしきい値Ktよりも大きくない場合には、ステップS6に処理が進む。すなわち選択部136はBの経路を選択し、SOC積算部148は、今までの値にΔSOCvを加えてSOC推定値を更新する。
【0089】
ステップS5、S6のいずれかにおいてSOC推定値の更新が完了すると、ステップS7に処理が進み制御はメインルーチンに戻る。
【0090】
なお、ΔSOCを算出する単位時間や、ΣΔSOCを算出する期間Tおよび判定しきい値Ktは、SOCの推定精度が向上するように実験やシミュレーションにより適合化される。
【0091】
図7は、プラグイン充電後EV走行およびHV走行を実行したときのSOC変化の例を示した図である。
【0092】
図7を参照して、時刻t1〜t2においては、プラグイン充電が実行されている。このとき、SOCは単調に増加する。パラメータKは1に近い値をとり、しきい値Ktよりも大きい。このため時刻t1〜t2においてはSOCの算出に次式のようにΔSOCiが使用される。
SOC(t+Δt)=SOC(t)+ΔSOCi
時刻t3〜t4においてはEV走行が実行されている。充電されていた電池電力が使用されるのでSOCは減少していく。ただし、制動時や下り坂などにおいて回生ブレーキが作動し、その際に電池に充電されるためパラメータKは1付近から0に向けて低下する。図7の例ではあまり頻繁に充放電の繰返しが発生していないので、パラメータKがしきい値Ktよりも低下することはなかった。このため時刻t3〜t4においても上記と同様にSOCの算出にΔSOCiが使用される。
【0093】
時刻t4以降は、外部充電によって二次電池に充電しておいた電力が消費されてしまい、エンジンを併用するHV走行が実行される。HV走行を開始してからしばらくすると、時刻t5においてパラメータKがしきい値Ktよりも小さくなるので、時刻t5以降はSOCの算出に次式のようにΔSOCvが使用される。
SOC(t+Δt)=SOC(t)+ΔSOCv
なお、ΔSOCvとΔSOCiとを置き換えて積算を開始する際には、徐徐にSOC推定値が変化するようになまし徐変などのフィルタ処理を適用してもよい。
【0094】
以上説明したように、本実施の形態では、プラグインハイブリッド自動車またはハイブリッド自動車のEVモード、あるいはプラグインハイブリッド自動車の外部充電モードでSOCの推定方法を切替える。このために、電圧補正を用いる推定方法によるSOC推定値と電流積算のみ用いる推定方法によるSOC推定値とを両方演算しておく。
【0095】
そして、所定期間において結果的に放電が実行される場合に、その期間に充電が占める割合がしきい値より小さいときは電流積算のみ用いる推定方法を使用する。同様に所定期間において結果的に充電が実行される場合に、その期間に放電が占める割合がしきい値より小さいときは電流積算のみ用いる推定方法を使用する。このような充電中に放電が占める割合や放電中に充電が占める割合を評価するパラメータとして、例えば図6で説明したパラメータKを用いることができる。
【0096】
最後に、本実施の形態について、図1等を参照しつつ総括する。
本実施の形態に示される車両の電源装置は、充放電が可能なバッテリB1,B2と、バッテリの電流を検出する電流センサ11−1,11−2と、バッテリの充電状態を推定し、推定した充電状態に基づいてバッテリの充放電を制御する制御装置30とを備える。制御装置30は、所定期間において第1、第2の推定方法によってそれぞれ第1、第2の推定値SOCv,SOCiを算出し、所定期間内におけるバッテリへの充電量とバッテリからの放電量とを観測し、観測結果に基づいて第1、第2の推定値のいずれかに基づいてバッテリの充電状態SOCを更新する。第1の推定方法は、バッテリの開路電圧を推定し、開路電圧を分極に基づいて補正した値に基づいて第1の推定値を決定する方法である。第2の推定方法は、第1の推定方法とは異なる推定方法であって、電流センサで検出された電流を積算した結果に基づいて第2の推定値を決定する方法である。
【0097】
好ましくは、制御装置30は、所定期間内に合計として放電が行なわれている場合には、所定期間における充電が発生する度合いを示す第1の評価値が第1のしきい値Ktを超えるときに第1の推定値に基づいてバッテリの充電状態を更新し、第1の評価値が第1のしきい値を超えないときに第2の推定値に基づいてバッテリの充電状態を更新する。たとえば、図6で説明したパラメータKは、放電時に充電が起こる頻度が低い場合や充電時に放電が起こる頻度が低い場合に増加して1に近づく。そこで、第1の評価値として1−Kを用いると、第1のしきい値は1−Ktとすることができる。
【0098】
好ましくは、制御装置30は、所定期間内に合計として充電が行なわれている場合には、所定期間における放電が発生する度合いを示す第2の評価値が第2のしきい値を超えるときに第1の推定値に基づいてバッテリの充電状態を更新し、第2の評価値が第2のしきい値を超えないときに第2の推定値に基づいてバッテリの充電状態を更新する。たとえば、第2の評価値として1−Kを用いると、第2のしきい値は1−Ktとすることができる。
【0099】
好ましくは、車両1は、バッテリB1に車両外部から充電を行なう外部充電が可能に構成される。所定期間内に合計として充電が行なわれている場合は、外部充電が実行されるときを含む。
【0100】
好ましくは、車両1には、エンジン4と、力行動作と回生動作とが実行可能なモータジェネレータMG2とが搭載される。所定期間内に合計として放電が行なわれている場合は、エンジン4を停止した状態でモータジェネレータMG2によって車両を走行させるときを含む。
【0101】
なお、本実施の形態では、プラグインハイブリッド自動車の例を示して説明したが、本実施の形態で開示されたSOCの推定手法は、プラグインハイブリッド自動車以外にも種々の車両たとえば電気自動車や燃料電池自動車にも適用することが可能である。
【0102】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0103】
1 車両、3 動力分割機構、4 エンジン、6 充電器、8 商用電源、13 電圧センサ、14 インバータ、30 制御装置、110,110A,110B 電流検出部、112 電圧検出部、114 疑似SOC推定部、116 起電力推定部、118 電圧変動推定部、120 動的電圧変動推定部、122,128 加算器、124 比較器、126 SOC修正量算出部、132 初期SOC検出部、134 電流積算処理部、136 選択部、142 ΔSOCv演算部、144 ΔSOCi演算部、146 選択指令部、148 SOC積算部、B1,B2 バッテリ、C1,C2,CH 平滑コンデンサ、D1A,D1B,D2A,D2B ダイオード、L1,L2 インダクタ、LN1A,LN2A 正母線、LN1B,LN2B 配線、LN1C,LN2C 負母線、MA,MB 電池モデル、MG1,MG2 モータジェネレータ、MNL 主負母線、MPL 主正母線、NL1,NL2 負極線、PL1,PL2 正極線、Q1A,Q1B,Q2A,Q2B トランジスタ、SMR1,SMR2 システムメインリレー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電が可能な二次電池と、
前記二次電池の電流を検出する電流センサと、
前記二次電池の充電状態を推定し、推定した充電状態に基づいて前記二次電池の充放電を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、所定期間において第1、第2の推定方法によってそれぞれ第1、第2の推定値を算出し、前記所定期間内における前記二次電池への充電量と前記二次電池からの放電量とを観測し、観測結果に基づいて前記第1、第2の推定値のいずれかに基づいて前記二次電池の充電状態を更新し、
前記第1の推定方法は、前記二次電池の開路電圧を推定し、前記開路電圧を分極に基づいて補正した値に基づいて前記第1の推定値を決定する方法であり、
前記第2の推定方法は、前記第1の推定方法とは異なる推定方法であって、前記電流センサで検出された電流を積算した結果に基づいて前記第2の推定値を決定する方法である、車両の電源装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記所定期間内に合計として放電が行なわれている場合には、前記所定期間における充電が発生する度合いを示す第1の評価値が第1のしきい値を超えるときに前記第1の推定値に基づいて前記二次電池の充電状態を更新し、前記第1の評価値が前記第1のしきい値を超えないときに前記第2の推定値に基づいて前記二次電池の充電状態を更新する、請求項1に記載の車両の電源装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記所定期間内に合計として充電が行なわれている場合には、前記所定期間における放電が発生する度合いを示す第2の評価値が第2のしきい値を超えるときに前記第1の推定値に基づいて前記二次電池の充電状態を更新し、前記第2の評価値が前記第2のしきい値を超えないときに前記第2の推定値に基づいて前記二次電池の充電状態を更新する、請求項1または2に記載の車両の電源装置。
【請求項4】
前記車両は、前記二次電池に車両外部から充電を行なう外部充電が可能に構成され、
前記所定期間内に合計として充電が行なわれている場合は、前記外部充電が実行されるときを含む、請求項1に記載の車両の電源装置。
【請求項5】
前記車両には、エンジンと、力行動作と回生動作とが実行可能な電動機とが搭載され、
前記所定期間内に合計として放電が行なわれている場合は、前記エンジンを停止した状態で前記電動機によって車両を走行させるときを含む、請求項1に記載の車両の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−97729(P2011−97729A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248859(P2009−248859)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】