説明

車両システム

【課題】車両の重量軽減を図ると共に、水に濡れた作業場でも容易に、弾性体に弾性力を備蓄できる車両システムを提供すること。
【解決手段】車体フレーム24の補助駆動輪38に連結され、動力を弾性力に変換して備蓄可能な一方、備蓄した弾性力を動力として補助駆動輪38に出力可能なぜんまいばね32を含むエネルギ備蓄機構34を有する搬送車10と、この搬送車10が停止する各作業ステーション102a〜102cとを備え、これら作業ステーション102a〜102cには、当該作業ステーション102a〜102cに搬送車10が停止した際に、当該搬送車10のエネルギ備蓄機構34と連結し、当該エネルギ備蓄機構34のぜんまいばね32に動力を備蓄する巻上げモータ36を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性体に備蓄された弾性力で走行する車両と、この車両が停止するステーションとを備える車両システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車工場等の生産現場では、例えば、エンジンやギアボックス等の部品(ワーク)を、各作業ステーションに搬送する車両として、バッテリを搭載し、このバッテリからの電力で走行用モータを回転駆動することにより駆動輪を駆動して走行する無人の自動搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)が用いられている。この種の搬送車では、エンジン部品のような重量物を搬送するため、走行用モータに十分な出力が求められる。従って、モータの大型化やこれに伴う車両の大型化等による設備コストや消費電力の増大等が懸念される。
【0003】
特許文献1には、オートマチックトランスミッション等の部品(ワーク)を搬送する搬送車として、電動や油圧による駆動系統を設けない構成が記載されている。この搬送車では、搬送するワークの自重によってラック・ピニオン機構を駆動し、車輪の前進駆動力にすると共に、該ワークの自重を台座に設けたコイルばね(弾性体)に備蓄する。そして、ワークを台座から取り除いた際の前記コイルばねの反発力によりラック・ピニオン機構を逆方向に駆動し、車両の後退駆動力にすることができる。
【特許文献1】特開2004−331052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合、上記特許文献1に記載の搬送車では、台座の高さが移動に基づいて変更されるため、この台座に載置された部品同士の組み付け等を行う生産ラインに適用することが困難である。一方、台座の高さを変更せずに弾性体に弾性力を備蓄するには、備蓄用の動力源を搭載する必要があり、その分、車両の重量が増加する問題がある。
また、備蓄用の動力源として、例えば、電動モータを搭載する場合には、車両がステーションに停止している際に、このステーションに設けられている外部電源と電動モータとを接続して、この電動モータを駆動する構成が想定される。しかし、水に濡れているような作業ステーションでは、外部電源との接続が困難となる問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、車両の重量軽減を図ると共に、水に濡れた作業場でも容易に、弾性体に弾性力を備蓄できる車両システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述課題を解決するため、本発明は、車両本体の駆動輪に連結され、動力を弾性力に変換して備蓄可能な一方、備蓄した弾性力を動力として前記駆動輪に出力可能な弾性体を含むエネルギ備蓄機構を有する車両と、前記車両が停止するステーションとを備え、前記ステーションには、当該ステーションに前記車両が停止した際に、当該車両の前記エネルギ備蓄機構と連結し、当該エネルギ備蓄機構の弾性体に動力を備蓄する備蓄用動力源を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ステーションには、当該ステーションに車両が停止した際に、当該車両のエネルギ備蓄機構と連結し、当該エネルギ備蓄機構の弾性体に動力を備蓄する備蓄用動力源を備えたため、車両に備蓄用動力源を設ける必要はなく、この車両の重量軽減化及び小型化を実現することができる。さらにステーションの備蓄用駆動源から車両のエネルギ備蓄機構には、動力を供給するだけで良く、水に濡れた作業場でも容易に弾性体に弾性力を備蓄することができる。更に、各車両ではなく作業ステーションに備蓄用駆動源を備えるため、作業ステーションの数が車両の数よりも少ない場合には、配置される備蓄用駆動源の数が低減され、低コストでシステム構成が可能となる。
【0008】
この構成において、前記車両は、前記エネルギ備蓄機構の弾性体から前記車両の駆動輪への動力の出力、及び前記駆動輪から前記弾性体への動力の回生を切り替えるクラッチ機構を備え、前記ステーション間を移動するに際し、前記エネルギ備蓄機構に備蓄した動力で走行し、走行途中で前記クラッチ機構を回生側に切り替えて、走行しつつ前記駆動輪から前記弾性体への動力の回生を可能に構成しても良い。
【0009】
この構成によれば、エネルギ備蓄機構の弾性体から車両本体の駆動輪への動力の出力、及び駆動輪から弾性体への動力の回生を切り替えるクラッチ機構を備えるため、このクラッチ機構の切り替えにより、走行中の駆動輪の動力をエネルギ備蓄機構の弾性体に弾性力として回生(備蓄)することができる。このため、停止したステーションでは、備蓄用動力源を駆動して、回生した分では不足する弾性力をエネルギ備蓄機構の弾性体に補充すれば良い。従って、弾性体に弾性力を備蓄するための動力を低減し、備蓄用動力源を駆動させるエネルギ消費量を低減することができ、省エネルギ化を図ることができる。
【0010】
また、この構成において、前記車両は、前記車両本体を駆動する主駆動輪と、前記主駆動輪を駆動する走行用モータとを備え、前記エネルギ備蓄機構の弾性体に備蓄した動力が、車両の発進時に、前記走行用モータの駆動力をアシストすると共に、前記ステーション間距離の終点近くで、前記クラッチ機構を回生側に切り替えて、走行しつつ前記駆動輪から前記弾性体への動力の回生を可能に構成しても良い。
【0011】
この構成によれば、エネルギ備蓄機構の弾性体に備蓄した動力が、車両の発進時に、走行用駆動源の駆動力をアシストするため、走行用駆動源として低出力かつ小型のものを用いることができ、車両の軽量化及び省エネルギ化が可能となる。さらに、ステーション間距離の終点近くで、クラッチ機構を回生側に切り替えて、走行しつつ駆動輪から弾性体への動力の回生を可能に構成したため、停止したステーションでは、備蓄用動力源を駆動して、回生した分では不足する弾性力をエネルギ備蓄機構の弾性体に補充すれば良い。従って、弾性体に弾性力を備蓄するための動力を低減し、備蓄用動力源を駆動させるエネルギ消費量を低減することができ、省エネルギ化を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ステーションには、当該ステーションに車両が停止した際に、当該車両のエネルギ備蓄機構と連結し、当該エネルギ備蓄機構の弾性体に動力を備蓄する備蓄用動力源を備えたため、車両に備蓄用動力源を設ける必要はなく、この車両の重量軽減化及び小型化を実現することができる。さらにステーションの備蓄用駆動源から車両のエネルギ備蓄機構には、動力を供給するだけで良く、水に濡れた作業場でも容易に弾性体に弾性力を備蓄することができる。更に、各車両ではなく作業ステーションに備蓄用駆動源を備えるため、作業ステーションの数が車両の数よりも少ない場合には、配置される備蓄用駆動源の数が低減され、低コストでシステム構成が可能となる。
また、本発明によれば、エネルギ備蓄機構の弾性体から車両本体の駆動輪への動力の出力、及び駆動輪から弾性体への動力の回生を切り替えるクラッチ機構を備えるため、このクラッチ機構の切り替えにより、走行中の駆動輪の動力をエネルギ備蓄機構の弾性体に弾性力として回生(備蓄)することができる。このため、停止したステーションでは、備蓄用動力源を駆動して、回生した分では不足する弾性力をエネルギ備蓄機構の弾性体に補充すれば良い。従って、弾性体に弾性力を備蓄するための動力を低減し、備蓄用動力源を駆動させるエネルギ消費量を低減することができ、省エネルギ化を図ることができる。
また、本発明によれば、エネルギ備蓄機構の弾性体に備蓄した動力が、車両の発進時に、走行用駆動源の駆動力をアシストするため、走行用駆動源として低出力かつ小型のものを用いることができ、車両の軽量化及び省エネルギ化が可能となる。さらに、ステーション間距離の終点近くで、クラッチ機構を回生側に切り替えて、走行しつつ駆動輪から弾性体への動力の回生を可能に構成したため、停止したステーションでは、備蓄用動力源を駆動して、回生した分では不足する弾性力をエネルギ備蓄機構の弾性体に補充すれば良い。従って、弾性体に弾性力を備蓄するための動力を低減し、備蓄用動力源を駆動させるエネルギ消費量を低減することができ、省エネルギ化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を添付した図面を参照して説明する。以下の説明中、前後左右及び上下といった方向の記載は車体に対してのものとする。また、図中矢印FRは車体前方を、矢印Rは車体右方を、矢印UPは車体上方をそれぞれ示している。
【0014】
図1は、本実施形態に係る搬送システム(車両システム)100を示す一部省略平面図である。この搬送システム100は、例えば、自動車工場等の生産現場に導入されるものであり、工場内に設けられた作業ステーション102a〜102cと、自動車のエンジンやギアボックス等のワークWを載置台16に積載して各作業ステーション102a〜102cに、当該ワークWを搬送する複数台の搬送車10とを備えて構成される。
各作業ステーション102a〜102cは、工場内に敷設された磁気テープ86によって接続され、この磁気テープ86に案内される経路上を搬送車10が走行する。各作業ステーション102a〜102cには、作業ロボット106a、106bや作業者107が配置され、搬送車10で搬送されたワークWに所望の部品(図示せず)を組み付ける作業を行う。また、各作業ステーション102a〜102cには、それぞれ、当該作業ステーション102a〜102cに搬送車10が停止した際に、この搬送車10のバッテリ(後述する)を充電するための外部電源31と、搬送車10のエネルギ備蓄機構のぜんまいばね(後述する)を巻き上げて動力を備蓄する巻上げモータ(備蓄用動力源)36とが配置されている。
【0015】
次に、搬送車10について説明する。図2は、本実施形態に係る車両の適用例である搬送車10の一部省略斜視図であり、図3は、図2に示す搬送車10の一部省略側面図である。また、図4は、図3に示す搬送車10の駆動系を模式的に示す一部省略平面図であり、図5は、図2に示す搬送車10の電気系統及び油圧系統を説明するためのブロック説明図である。
【0016】
搬送車10は、主にバッテリ(電力供給部)12を電源とする主動力部14からの駆動力で所望の経路を走行可能な電動車両であり、例えば、自動車のエンジンやギアボックス等のワークWを載置台16に積載し、工場内の所望の位置へと搬送するAGVである。なお、本実施形態では、電動車両の例示として搬送車10を挙げて説明するが、乗用車、電動カート及び電車等、電動で走行する車両であれば適用可能である。
【0017】
このような搬送車10は、主として通常走行時に駆動される主動力部14と、例えば当該搬送車10の停止状態からの発進時に駆動され、主動力部14による走行を補助(アシスト)する補助動力部18と、載置台16でワークWを積載する積載部20と、主動力部14、補助動力部18及び積載部20の駆動を総合的に制御する制御部22とを備え、各部がボディ23で覆われた車体フレーム(車両本体)24に搭載されている。
【0018】
主動力部14は、車体フレーム24の車長方向の略中央部に設けられ、当該車体フレーム24の車幅方向に橋架された支持フレーム26で支持した走行用モータ(走行用駆動源)28と、支持フレーム26に対して回転可能に軸支され、走行用モータ28の駆動軸28aにより回転駆動される主駆動輪30と、走行用モータ28に電力を供給するバッテリ12とを備える。バッテリ12は、例えば、搬送車10が待機や作業のために所定のステーションに停車された際、当該ステーションに設置された外部電源31によって充電される。搬送車10と外部電源31とは、例えば、磁力で着脱可能な雄雌一対のコネクタ29、33によって、容易に電気的な接続が可能である(図5参照)。
【0019】
補助動力部18は、図3及び4に示すように、車体フレーム24の車長方向の後部に設けられており、動力を弾性力に変換して備蓄可能な一方、備蓄した弾性力を動力として出力可能なぜんまいばね(弾性体)32を有したエネルギ備蓄機構34と、エネルギ備蓄機構34で備蓄した弾性力に基づく動力で駆動される補助駆動輪(駆動輪)38と、エネルギ備蓄機構34のぜんまいばね32からの補助駆動輪38への動力の出力及び当該補助駆動輪38からぜんまいばね32への動力の回生を切り替えるクラッチ機構40とを備える。
【0020】
車体フレーム24の車幅方向には、プレート44が橋架されており、このプレート44上には、入力シャフト27、メインシャフト(回転軸)41及び中間シャフト42が略平行にかつ回転可能に軸支されている。この中間シャフト42の下方には、補助駆動輪38の駆動シャフト43(図3)が設けられ、この駆動シャフト43は、車体フレーム24に回転可能に軸支されている。
入力シャフト27は、一対の軸受部33、33によってプレート44上に軸支されており、一方(本実施形態では車体右方)の軸端部には、搬送車10がステーションに停止した際に、このステーションに設置された巻上げモータ36に連結されるカップリング25が設けられている。このカップリング25は、車体フレーム24から突出しないように、車体フレーム24内に位置し、ボディ23に形成されら開口(不図示)を通じて、巻上げモータ36のモータ軸36aに固定されたモータ側カップリング21と係合するようになっている。
このように、本実施形態では、各作業ステーション102aに、搬送車10のエネルギ備蓄機構34と連結し、当該エネルギ備蓄機構34のぜんまいばね32に動力を備蓄する巻上げモータ36を備えたため、搬送車10にぜんまいばね32の書き上げ用の巻上げモータ36を設ける必要はなく、この搬送車10の重量軽減化及び小型化を実現することができる。また、各作業ステーション102a〜102cの巻上げモータ36から搬送車10のエネルギ備蓄機構34には、入力シャフト27を介して回転駆動力を供給するだけで良く、水に濡れた作業場でも容易にぜんまいばね32に弾性力を備蓄することができる。
【0021】
本実施形態では、例えば、作業ステーション102aに設置された巻上げモータ36は、モータ軸36aと入力シャフト27との高さを略同一とする台車90の上に載置されており、この台車90を搬送車10の車幅方向に移動させることにより、巻上げモータ36のモータ側カップリング21と入力シャフト27のカップリング25とが係合もしくは離脱するようになっている。また、入力シャフト27にはブレーキ35と、第1スプロケット37とが設けられている。ブレーキ35は、例えば、電磁ブレーキであり、制御部22の制御の下、入力シャフト27の回転を許容もしくは禁止する。
【0022】
メインシャフト41は、第1シャフト(第1の回転軸)41aと第2シャフト(第2の回転軸)41bとに分割され、これら第1シャフト41a及び第2シャフト41bは、それぞれ軸受部46、47によってプレート44上に軸支されている。第2シャフト41bの軸端部には、有底筒状のケーシング45が固定され、このケーシング45内には、第1シャフト41aの軸端部が延在するとともに渦巻き型のぜんまいばね32が収容されている。このぜんまいばね32の一端はケーシング45の内壁面45aに固着され、当該ぜんまいばね32の他端は上記第1シャフト41aの軸端部外周に固着される。これにより、第1シャフト41a及び第2シャフト41bの回転に基づき、当該第1シャフト41aにぜんまいばね32が巻き掛けられる。本実施形態では、ケーシング45の内壁面45aが、第1シャフト41aの軸端部と平行に延びる平行部として機能する。
【0023】
また、第2シャフト41bのケーシング45とは反対側の軸端部には、上記した入力シャフト27の第1スプロケット37とチェーン39を介して連結される第2スプロケット48が設けられ、この第2スプロケット48と第2シャフト41bとの間には、第1ワンウェイクラッチ49が設けられている。
この第1ワンウェイクラッチ49は、第2スプロケット48が正転方向(巻上げモータ36により回転する方向)に回転する場合に、第2シャフト41bと係合し、第2スプロケット48が逆転方向に回転する場合に、上記した係合が解除されてスリップする機械式のクラッチである。
【0024】
また、第2シャフト41bには、第2スプロケット48とケーシング45との間に配置される第3スプロケット50と、この第3スプロケット50と第2シャフト41bとを接離自在に切り替える入力クラッチ51とが配置されている。この入力クラッチ51は、例えば、電磁式のクラッチであり、制御部22の制御の下、この入力クラッチ51を係合すると、第3スプロケット50と第2シャフト41bとが係合して当該第3スプロケット50が第2シャフト41bとともに回転する。一方、入力クラッチ51の係合を解除すると、第3スプロケット50と第2シャフト41bとの係合が解除され、当該第3スプロケット50は第2シャフト41bに対してスリップする。
【0025】
一方、第1シャフト41aには、上記した一対の軸受部46、46間に、第4スプロケット52と、この第4スプロケット52と第1シャフト41aとを接離自在に切り替える出力クラッチ53と、第1シャフト41aの回転量を調整するぜんまいブレーキ(出力制限器)54とが配置されている。出力クラッチ53は上記入力クラッチ51と同種のものであり、本実施形態では、これら入力クラッチ51及び出力クラッチ53を備えてクラッチ機構40が構成される。
ぜんまいブレーキ54は、例えば、電磁ブレーキであり、制御部22の制御の下、第1シャフト41aの回転を許容もしくは禁止する。また、このぜんまいブレーキ54は、第1シャフト41aの回転量を調整することができ、エネルギ備蓄機構34のぜんまいばね32に備蓄された弾性力を0%から100%の範囲で連続的または段階的に動力として出力する。これによれば、ぜんまいばね32に備蓄された弾性力が一気に出力されることがなく、また出力量を制御できるため、搬送車10の加速度や速度を適度に制御できる。さらに、出力量を抑えることにより巻上げモータ36の駆動時間が減少するため、この巻上げモータ36を駆動するための電力消費量の低減を図ることができ、省エネルギ化を実現できる。
【0026】
中間シャフト42は、両端を一対の軸受部55、55によってプレート44上に軸支されており、この中間シャフト42には、上記した第3スプロケット50とチェーン56を介して連結される第5スプロケット57と、上記した第4スプロケット52とチェーン58を介して連結される第6スプロケット59とを備え、この第6スプロケット59と中間シャフト42との間には第2ワンウェイクラッチ61が配置されている。
この第2ワンウェイクラッチ61は、上記第1ワンウェイクラッチ49と同様、第6スプロケット59が正転方向に回転する場合に、中間シャフト42と係合し、第6スプロケット59が逆転方向に回転する場合に、上記した係合が解除されてスリップする機械式のクラッチである。
また、第6スプロケット59と軸受部55との間には、第7スプロケット63が設けられ、この第7スプロケット63は、チェーン65を介して、駆動シャフト43に設けられる第8スプロケット67(図6)に連結されている。これにより、メインシャフト41の回転動力が中間シャフト42を介して駆動シャフト43に伝達され、補助駆動輪38が駆動される。
さらに、中間シャフト42には、第5スプロケット57と第6スプロケット59との間に、この中間シャフト42の回転を規制する車輪ブレーキ69、69が配置されている。これら車輪ブレーキ69、69は、例えば、電磁ブレーキであり、制御部22の制御下、中間シャフト42の回転速度を低下、もしくは、当該中間シャフト42の回転を停止することにより搬送車10の速度を制御する。
【0027】
図3及び図5に示すように、積載部20は、ワークWが載置されるテーブルである載置台16と、載置台16を上下方向に昇降可能であって該載置台16及びワークWを所望の高さ位置に保持可能な昇降装置60とを備える。
昇降装置60は、載置台16の略中央下面に固定されたロッド62を介して当該載置台16を昇降させる油圧シリンダ(昇降機構)64と、油圧シリンダ64を駆動する油圧回路66(図5参照)とから構成されている。載置台16の昇降動作は、載置台16後方に設けられた垂直プレート68の車幅方向両側でロッド62と平行して車体上下方向に延びたレール70と、車体フレーム24側に固定され、レール70が摺動可能に係合するガイド凹部72とによって案内される。
【0028】
図5に示すように、油圧回路66は、ロッド62に連結されたピストン74によって画成される油圧シリンダ64の上室64a及び下室64bに制御弁機構76を介してそれぞれ接続される。制御弁機構76は、油圧回路66の上室64aや下室64bとの連通状態や作動油の流通方向を適宜切換可能な弁装置であり、制御部22により駆動制御される。
【0029】
さらに、油圧回路66の途中には、回路内の作動油を加圧・流動するポンプ78と、作動油の圧力や流動を受けて発電するジェネレータ(発電機)80とが配設されている。該ジェネレータ80で発電された電力は、キャパシタ等の蓄電素子や2次電池等で構成される補助バッテリ82に蓄電された後、ポンプ78の駆動電力として使用される。なお、補助バッテリ82の電力だけではポンプ78の駆動電力が不足する際には、バッテリ12を使用することもできる。また、補助バッテリ82を設けずに、ジェネレータ80で発電した電力をバッテリ12に蓄電しても構わないことは言うまでもない。この場合、補助バッテリ82が存在しない分だけ搬送車10が軽量になる。
【0030】
このような搬送車10は、制御部22の制御下に、主駆動輪30及び補助駆動輪38が適宜駆動されて走行するものであるが、車体フレーム24には(図3参照)、さらに,主駆動輪30及び補助駆動輪38による走行で従動回転する車輪84a〜84dが軸支されている。なお、搬送車10の前進走行方向(図1の矢印方向)で前輪となる車輪84a、84bは、例えば、制御部22の制御下に操舵される操舵輪として機能させてもよく、勿論、後輪となる車輪84c、84dを操舵輪とすることもできる。
【0031】
また、搬送車10の車体底面側には、例えば、工場内で搬送車10が走行すべき経路上に貼り付けられ、当該搬送車10を案内する磁気テープ86(図6参照)の磁界を検知するセンサ88(図3参照)が設けられ、これにより搬送車10を磁気誘導することができる。なお、搬送車10を案内する方法としては、これ以外にも、例えば、床面にレールを敷設し、これによって当該搬送車10を誘導する方法等、各種方法がある。
【0032】
次に、本実施形態に係る搬送車10の走行動作について説明する。
搬送車10では、基本的には制御部22の制御下に、停止状態からの発進時には補助動力部18を用いて走行(発進)し、発進後の通常走行時には主動力部14を用いて走行する制御が行われる。
搬送車10が、例えば、待機ステーションや作業ステーション102a〜102c(図1)に停止している場合、この搬送車10のバッテリ12は、待機ステーションや作業ステーション102a〜102cに設けられる外部電源31で充電されている。ここで、補助動力部18による走行(発進)を行う場合には、外部電源31に繋がる巻上げモータ36を駆動し、この巻上げモータ36の駆動力で、エネルギ備蓄機構34のぜんまいばね32を巻き上げる。
この際、制御部22は、ブレーキ35を解除状態(オフ)とし、ぜんまいブレーキ54を作動状態(オン)とする一方、入力クラッチ51及び出力クラッチ53を切離状態(オフ)としておく。つまり、ぜんまいブレーキ54を作動させることにより、第1シャフト41aが回転しないように固定するとともに、入力クラッチ51を切離することにより、第2シャフト41bが回転する際に、この回転力が中間シャフト42に伝達しないようにする。
【0033】
巻上げモータ36のモータ側カップリング21を入力シャフト27のカップリング25に係合させて、この巻上げモータ36を駆動すると、図6Aに示すように、巻上げモータ36の正転方向の回転が、入力シャフト27、第1スプロケット37、チェーン39、第2スプロケット48及び第1ワンウェイクラッチ49を介して第2シャフト41bに伝達され、この第2シャフト41bがケーシング45とともに回転することにより、ぜんまいばね32が第1シャフト41aに巻き上げられる。この状態において、ぜんまいばね32には、第2シャフト41bを逆回転方向に回転させようとする弾性力が発生している。このため、制御部22は、ぜんまいばね32が巻き上がると、入力シャフト27に設けられたブレーキ35を作動(オン)させる。これにより、入力シャフト27及び第2シャフト41bは逆回転方向に回転しないように固定されため、上記カップリングを離脱させて、巻上げモータ36を入力シャフト27から取り外すことができる。このように、エネルギ備蓄機構34では,巻上げモータ36の動力(回転トルク)をぜんまいばね32の弾性力に変換して備蓄される。
【0034】
次に、外部電源31によるバッテリ12の充電と共に、エネルギ備蓄機構34での弾性力の備蓄が完了した後、走行開始(発進)をするための準備を実施する。すなわち、制御部22は、出力クラッチ53を連結状態(オン)としておく。これにより、第4スプロケット52と第1シャフト41aとが係合し、この第1シャフト41aの回転とともに第4スプロケット52が回転可能となるため、当該第1シャフト41aの動力(回転力)が中間シャフト42及び駆動シャフト43を介して補助駆動輪38に伝達可能な状態となる。この場合、第1シャフト41aを回転停止状態にしているぜんまいブレーキ54による保持、及び、第2シャフト41bを回転停止状態にしているモータブレーキ36aによる保持は継続されている。
【0035】
そして、ぜんまいブレーキ54を解除すると、図6Bに示すように、ぜんまいばね32の弾性力が開放されることにより、第1シャフト41aが勢いよく回転する。従って、第1シャフト41aの回転駆動力が、第4スプロケット52、チェーン58、第6スプロケット59、第2ワンウェイクラッチ61、中間シャフト42、第7スプロケット63、チェーン65及び第8スプロケット67を介して、駆動シャフト43に伝達され、この駆動シャフト43が回転することにより、補助駆動輪38が搬送車10を前進させる方向に回転し、当該搬送車10を発進させることができる。
【0036】
このような補助動力部18による発進では、少なくともぜんまいばね32に備蓄された弾性力が開放されるまでの間は、第1シャフト41aが回転することにより補助駆動輪38に回転トルクが付与される。更に、中間シャフト42と第6スプロケット59との間には、第2ワンウェイクラッチ61が設けられている。このため、ぜんまいばね32に備蓄された弾性力が開放されて第1シャフト41aの回転速度が中間シャフト42の回転速度よりも遅くなったとしても、第2ワンウェイクラッチ61がスリップすることにより、中間シャフト42及び駆動シャフト43の回転が継続され、搬送車10は慣性力によってある程度の距離を走行することができる。従って、搬送するワークの重さを含む搬送車10の車体車重やぜんまいばね32の特性、各軸受部等のロス等を考慮した設計を行っておくことにより、例えば、工場内での各作業ステーション間を、エネルギ備蓄機構34のぜんまいばね32に備蓄した弾性力のみで走行することも可能である。
【0037】
なお、走行用モータ28の駆動軸28aと主駆動輪30との間にもクラッチ(図示せず)を配設しておき、このような補助動力部18による発進に際し、当該グラッチを切離状態としておくこともできる。そうすると、発進時に使用しない走行用モータ28への負荷を軽減すると共に、該走行用モータ28からの負荷が当該発進動作に影響することを有効に抑えることができる。
【0038】
補助動力部18による発進後、さらに走行を継続する場合、制御部22は、主動力部14を駆動し、バッテリ12からの電力で走行用モータ28を駆動することで、搬送車10は通常の電動車両として走行を継続することができる。
【0039】
続いて、搬送車10が走行している際に、制御部22は、補助駆動輪38の回転動力をエネルギ備蓄機構34のぜんまいばね32へ回生する動作を行う。この場合、走行用モータ28による走行中よりも搬送車10の減速時に行うのがエネルギ効率等の観点から望ましい。
制御部22は、搬送車10が減速運転に移行した場合には、ぜんまいブレーキ54を作動状態(オン)とするとともに、入力クラッチ51を連結(オン)させて、第3スプロケット50と第2シャフト41bとを係合させる。これによれば、補助駆動輪38の回転駆動力が、駆動シャフト43、第8スプロケット67、チェーン65、第7スプロケット63、中間シャフト42、第5スプロケット57、チェーン56及び第3スプロケット50を介して、第2シャフト41bに伝達され、この第2シャフト41bとともにケーシング45が回転することにより、ぜんまいばね32が第1シャフト41aに巻き上げられる。
このように、本構成では、搬送車10の走行中に入力クラッチ51を連結することにより、補助駆動輪38の回転駆動力をぜんまいばね32の弾性力として回生(備蓄)することができる。このため、次回の走行時には、ステーションにおいて、巻上げモータ36を駆動して、回生した分では不足する弾性力をエネルギ備蓄機構34のぜんまいばね32に補充すれば良い。従って、ぜんまいばね32に弾性力を備蓄するための動力を低減し、巻上げモータ36を駆動させる電力消費量を低減することができ、省電力化を図ることができる。
【0040】
一般に、ぜんまいばねを回転軸に巻き上げて弾性力を備蓄するものでは、この弾性力の備蓄時と当該弾性力の出力時で回転軸の回転方向が逆転する。このため、搬送車の駆動シャフトのように、通常の走行時(例えば前進走行)には一定方向に回転する軸に対して弾性力を出力し、この軸の回転駆動力を利用して弾性力を回生しようとすると、出力時と回生時とでぜんまいばねの回転軸を反転させる機構が必要となるため、構成が煩雑となる。
これに対して、本構成では、エネルギ備蓄機構34は、分割された第1シャフト41a及び第2シャフト41bと、これらシャフト間に配置されたぜんまいばね32とを備えて構成されるため、このぜんまいばね32に備蓄された弾性力を補助駆動輪38に出力する出力時と、補助駆動輪38の回転駆動力を当該ぜんまいばね32に弾性力として回生(備蓄)する回生時とで、第1シャフト41a、第2シャフト41bを同一の回転方向に回転させることができる。このため、弾性力の備蓄(回生)時と、出力時とで、回転軸の回転を反転させて駆動輪に連結させる機構が不要となり、エネルギ備蓄機構の構成を簡素化することができる。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る搬送車10によれば、エネルギ備蓄機構34のぜんまいばね32で備蓄した弾性力で補助駆動輪38を駆動して、停止状態から発進することができる。この場合、ぜんまいばね32を巻き上げる巻上げモータ36は、搬送車10の停車時に外部電源31で駆動するため、バッテリ12を消費する必要がなく、しかもバッテリ12の充電と同時に行うことができるため時間的なロスを生じることもない。さらに、補助動力部18による発進後は、一般的な電動車両と同様に主動力部14による電気走行を行うことができることから、所望の経路を所望の距離走行することができる。
【0042】
また、一般に、低速回転時のモータの電力量(電流量)は所定の高速回転時に比べて大きく、しかも停車時からの発進に必要な駆動トルクは定常走行時に比べて非常に大きい。換言すれば、仮に走行用モータ28で搬送車10を発進させようとした場合には、当該走行用モータ28は低速回転で且つ高トルクを出力しなければならず、その電力消費量は、ぜんまいまね32を巻き上げるための巻上げモータ36の電力消費量に比べて極めて大きなものとなる。
【0043】
これに対して、搬送車10では、発進をぜんまいばね32の弾性力で賄うことができるため、走行用モータ28として低出力且つ小型のものを用いることができ、特に、重量物であるワークを搬送することも必要とされる搬送車10では、発進に係る負荷は非常に大きく、その効果は顕著である。さらに、搬送車10では、発進時にバッテリ12をほとんど使用する必要がないため、バッテリ12の小容量化・小型化も可能となり、搬送車10の軽量化及び省電力化が可能となる。しかも、エネルギ備蓄機構34を構成する弾性体としてぜんまいばね32を用いていることから、簡単且つ低コストで補助動力部18を構成可能である。
【0044】
本実施形態の搬送車10では、上記のように主動力部14及び補助動力部18を選択的に駆動して走行することで通常の電動車両に比べて大幅な省電力化を可能としているが、ワークが積載される積載部20を構成する昇降装置60についても、上記したジェネレータ80及び補助バッテリ82等を設け、一層の省電力化を可能としている。
すなわち、昇降装置60では、ワークWを載置台16に載置する前、先ず、制御部22の制御下に制御弁機構76を切り替えると共にポンプ78を駆動して、油圧回路66に図4中の破線矢印Pで示す方向の油圧をかける。これにより、下室64bを加圧し、ピストン74を介して載置台16を所望の高さ位置まで上昇させる。
【0045】
次いで、載置台16にワークWを載置する。この際、制御弁機構76によって下室64bからの油圧の抜けを防止し、その加圧状態を維持しておけば、ポンプ78の駆動を維持することなく、容易に且つ省電力でワークWの高さ位置を維持しておくことができる。
そして、載置台16にワークWを載置した際、又は上記所望の高さ位置で保持しているワークWを下降させる際には、制御弁機構76を適宜制御しておくことで、ポンプ78を駆動させず、ワークW及び載置台16の重量によって載置台16を下降させることができる。すなわち、制御弁機構76は、下室64bから作動油が流出可能に、且つ、流出した作動油が油圧回路66中で実線矢印Q方向に流動するように切り替え制御される。これにより、ワークW及び載置台16の下降に伴うピストン74の下降で圧縮される下室64bから作動油が流動し、ジェネレータ80の図示しない羽根車等が回転されて発電し、その電力が補助バッテリ82に蓄電される。
【0046】
昇降装置60では、このように蓄電した補助バッテリ82からの電力によりポンプ78を駆動し、再び載置台16を所望の高さ位置へと戻すことができる。なお、補助バッテリ82からの電力だけでは足りない場合には、バッテリ12も併用すればよい。
【0047】
以上のように、昇降装置60では、ワークW及び載置台16の重量を利用してジェネレータ80で発電し、補助バッテリ82を介して載置台16の再上昇に用いるポンプ78の駆動源として利用することができる。すなわち、昇降装置60は、所望の高さ位置とした載置台16に載置されたワークWの位置エネルギを、油圧回路66及びジェネレータ80を用いて電気エネルギとして回生し、補助バッテリ82を充電するエネルギ回生機構を備えている。このため、基本的には載置台16の昇降に要するエネルギを当該昇降装置60自体で賄うことができる。
従って、搬送車10では、上記のエネルギ回生機構を有する昇降装置60を備えていることから、載置台16の昇降エネルギとしてバッテリ12等の電力を用いる必要がない。このため、バッテリ12の一層の小容量化及び小型化が可能となり、当該搬送車10の一層の省電力化が可能となる。
【0048】
また、図5に示すように、搬送車10では、昇降装置60で回生されるジェネレータ80からの電気エネルギは、補助バッテリ82の充電用としてだけではなく、例えば、補助動力部18の巻上げモータ36の駆動用電力として用いることもできる。これにより,搬送車10の停車時、例えば、バッテリ12に充電をする必要がない場合や停車しているステーション等に外部電源31がない場合等であっても、バッテリ12からの電力を使うことなく、補助バッテリ82からの電力で巻上げモータ36を駆動し、エネルギ備蓄機構34に弾性力を備蓄することができる。
【0049】
しかも、ワークWを載置した載置台16を停車時の所望のタイミングで下降させ、ジェネレータ80で発電することで、当該停車時にジェネレータ80からの電力を巻上げモータ36に供給してぜんまいばね32に弾性力を備蓄することも可能である。つまり、搬送車10の停車時に、ワークWの積載と、ぜんまいばね32への弾性力の備蓄とを略同時に行うことができ、ワークWの積載後、補助動力部18による迅速な発進が可能となる。このため、一層の省電力化や搬送作業の迅速化が可能となる。
【0050】
次に、本実施形態に係る搬送車10の適用例である搬送システム100について説明する。先ず、図7に示すように、搬送システム100の待機ステーション104で待機している搬送車10は、外部電源31から電力供給を受けてバッテリ12の充電を行うと共に、巻上げモータ36の駆動力によりエネルギ備蓄機構34での弾性力を備蓄する。これらの作業が完了した後、補助動力部18を駆動源として発進する。発進した搬送車10は、制御部22の制御下に、センサ88による磁界検知によって磁気テープ86に案内され、1番目の作業ステーション102aに到着する。
この場合、エネルギ備蓄機構34では、搬送車10の減速時にぜんまいばね32に補助駆動輪38の回転駆動力が弾性力として回生されている。このため、作業ステーション102aにおいて、巻上げモータ36を駆動して、回生した分では不足する弾性力をエネルギ備蓄機構34のぜんまいばね32に補充すれば良い。従って、ぜんまいばね32に弾性力を備蓄するための動力を低減し、巻上げモータ36を駆動させる電力消費量を低減することができ、省電力化を図ることができる。
なお、待機ステーション104と作業ステーション102aとの間の距離が補助動力部18による動力だけで十分到達可能な距離であれば、発進後に主動力部14を駆動する必要がないため極めて省電力であり、以下の各作業ステーション聞での移動についても同様である。
【0051】
次いで、作業ステーション102aに到着した搬送車10には、該作業ステーション102aに設けられた作業ロボット106aにより、例えば自動車エンジン等のワークWが積載される。また、昇降装置60では、必要に応じてワークWの重量を利用してエネルギ回生を行い、補助バッテリ82に蓄電しておく。
【0052】
なお、ワークWの積載と略同時に昇降装置60で発電を行えば、その発電した電力で補助モータ36を駆動し、エネルギ備蓄機構34に弾性力を備蓄することができ、場合によっては当該作業ステーション102aから外部電源31を省略することもできる。
ワークWを積載された搬送車10は、補助動力部18を駆動源として発進し、2番目の作業ステーション102bに到着する。該作業ステーション102bでは、例えば、作業ロボット106bによって作業ステーション102aから搬送してきたワークWに所望の部品(図示せず)を組み付ける。
【0053】
続いて、搬送車10が、3番目の作業ステーション102cに到着すると、例えば、作業ロボット106cが前記所望の部品の組み付けがなされたワークWを載置台16から搬出する。同時に、巻上げモータ36を入力シャフト27に係合させ、外部電源31により、再びエネルギ備蓄機構34に弾性力を備蓄する。
【0054】
その後、作業ステーション102cから発進した搬送車10は、再び待機ステーション104へと戻る経路を走行する。この際、補助動力部18による発進後、主動力部14を駆動すれば、待機ステーション104までの戻り経路が比較的長距離であっても容易に帰着することができる。待機ステーション104へと戻った搬送車10では、再び上記のように外部電源31から電力供給を受け、バッテリ12の充電やエネルギ備蓄機構34での弾性力の備蓄を行う。また、作業ステーション102aで充電した補助バッテリ82によって昇降装置60を駆動することで、載置台16を所望の高さ位置へと上昇させることができる。
【0055】
以上のように、搬送システム100では、搬送車10が、各作業ステーション間等での移動を補助動力部18による動力のみで移動することができるため、極めて省電力で作業を行うことができる。勿論、各作業ステーション間等での移動中にも必要に応じて主動力部14を駆動することもできる。
しかも搬送車10は、通常の電動車両と同様に走行用モータ28による走行も行うことができる。このため、比較的長い走行経路等であっても確実に移動可能であり、移動経略の設計自由度を向上させることができる。そこで、図7に破線で示すように、搬送車10の走行経賂は,例えば、磁気テープ86を貼り替えて制御部22の制御プログラムを多少変更するだけで容易に変更可能である。
【0056】
以上、説明したように、本実施形態によれば、車体フレーム24の補助駆動輪38に連結され、動力を弾性力に変換して備蓄可能な一方、備蓄した弾性力を動力として補助駆動輪38に出力可能なぜんまいばね32を含むエネルギ備蓄機構34を有する搬送車10と、この搬送車10が停止する各作業ステーション102a〜102cとを備え、これら作業ステーション102a〜102cには、当該作業ステーション102a〜102cに搬送車10が停止した際に、当該搬送車10のエネルギ備蓄機構34と連結し、当該エネルギ備蓄機構34のぜんまいばね32に動力を備蓄する巻上げモータ36を備えたため、搬送車10にぜんまいばね32の書き上げ用の巻上げモータ36を設ける必要はなく、この搬送車10の重量軽減化及び小型化を実現することができる。
また、各作業ステーション102a〜102cの巻上げモータ36から搬送車10のエネルギ備蓄機構34には、入力シャフト27を介して回転駆動力を供給するだけで良く、水に濡れた作業場でも容易にぜんまいばね32に弾性力を備蓄することができる。更に、各搬送車10ではなく各作業ステーション102a〜102cに巻上げモータ36を備えるため、作業ステーションの数が搬送車の数よりも少ない場合には、配置される電動モータの数が低減され、低コストでシステム構成が可能となる。
【0057】
また、本実施形態によれば、搬送車10は、エネルギ備蓄機構34のぜんまいばね32から車体フレーム24の補助駆動輪38への動力の出力、及び補助駆動輪38からぜんまいばねへの動力の回生を切り替えるクラッチ機構40を備え、作業ステーション102a〜102c間を移動するに際し、エネルギ備蓄機構34に備蓄した動力で走行し、走行途中でクラッチ機構40を回生側に切り替えて、走行しつつ補助駆動輪38からぜんまいばねへの動力の回生を可能に構成したため、このクラッチ機構40の切り替えにより、走行中の補助駆動輪38の動力をエネルギ備蓄機構34のぜんまいばね32に弾性力として回生(備蓄)することができる。
このため、作業ステーションでは、巻上げモータ36を駆動して、回生した分では不足する弾性力をエネルギ備蓄機構34のぜんまいばね32に補充すれば良い。従って、ぜんまいばね32に弾性力を備蓄するための動力を低減し、巻上げモータ36を駆動させる電力消費量を低減することができ、省電力化を図ることができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、車体フレーム24を駆動する主駆動輪30と、主駆動輪30を駆動する走行用モータ28とを備え、エネルギ備蓄機構34のぜんまいばねに備蓄した動力が、車両の発進時に、走行用モータ28の駆動力をアシストするため、走行用モータ28として低出力かつ小型のものを用いることができ、搬送車10の軽量化及び省電力化が可能となる。さらに、各作業ステーション間距離の終点近くで、クラッチ機構40を回生側に切り替えて、走行しつつ補助駆動輪38からぜんまいばね32への動力の回生を可能に構成したため、停止した作業ステーションでは、巻上げモータ36を駆動して、回生した分では不足する弾性力をエネルギ備蓄機構34のぜんまいばね32に補充すれば良い。従って、ぜんまいばね32に弾性力を備蓄するための動力を低減し、巻上げモータ36を駆動させる電力消費量を低減することができ、省電力化を図ることができる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。例えば、本実施形態では、搬送車10は、走行用モータ28を有する主動力部14を備え、エネルギ備蓄機構34を発進時の補助として利用する構成について説明したが、例えば、作業ステーション間のように走行する距離が予め決まっているような場合には、エネルギ備蓄機構34を条件に適合した設計とすることにより、主動力部14を備えない構成とすることもできる。
【0060】
また、本実施形態の搬送車10は、主動力部14に走行用駆動源として走行用モータ28を備える構成としているが、エンジン等の内燃機関やぜんまい駆動など他の駆動源を用いることができるのは勿論である。また、本実施形態では、走行用モータ28に電力を供給する電力供給部としてバッテリ12を備える構成としているが、例えば、床面等に電力架線を設け、この電力架線を介して走行用モータに電力を供給する構成としても良い。また、バッテリ12を外部電源のみで充電するのではなく、例えば、搬送車にソーラーパネルを設け、このソーラーパネルと外部電源とを併用する構成としても良い。
【0061】
また、本実施形態では、備蓄用駆動源として電動の巻上げモータを備える構成としていたが、これに限るものではなく、第2シャフト41bに回転駆動力を与えるものであれば、例えば、インパクトレンチ等に使用される、圧縮空気を動力源として回転駆動するエアモータを用いても良い。
【0062】
また、本実施形態では、エネルギ備蓄機構34は、ケーシング45が第2シャフト41bに連結されているが、第1シャフト41aに連結した構成としても良い。さらに、本実施形態では、第2シャフト41bに筒状のケーシング45を固定する構成としているが、第1シャフト41aの軸端部と平行に延びる構成とすれば、第2シャフト41bの軸端部に略L字状の部材を固定する構成としても良い。
【0063】
なお、搬送車10では、バッテリ12からの電力で駆動される走行用モータ28及び主駆動輪30を備える主動力部14で得られる駆動力によって、一般的な電動車両と同様に発進、定速運転及び加速等を行い、通常の走行を行うように構成してもよいことは言うまでもない。すなわち、搬送車10は、一般的な電動車両と略同様な走行ができることから、後退(バック)等も勿論可能であり、これにより、搬送システム100等の構成の自由度を一層向上させることができる。
【0064】
また、エネルギ備蓄機構34等を含む補助動力部18等を主動力部14とは別体に構成したけん引車(押し車〉として構成し、主動力部14及び積載部20を備えた搬送車をけん引又は押すように外付けすることも可能である。そうすると、既存のAGV等に容易に補助動力部18による機能を付加することができる。
【0065】
さらに、搬送車10では、積載部20を省略した構成として、ワークW等を搬送する代わりに、他の荷物を搬送し、人が乗車する電動車両として構成することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送システムを示す平面図である。
【図2】搬送システムに用いられる搬送車の一部省略斜視図である。
【図3】図2に示す搬送車の一部省略側面図である。
【図4】図2に示す搬送車の駆動系を模式的に示す一部省略平面図である。
【図5】図2に示す搬送車の電気系統及び油圧系統を説明するためのブロック説明図である。
【図6】図6Aは、エネルギ備蓄機構のぜんまいばねに弾性力を備蓄する際の動作を説明する概略図であり、図6Bは、備蓄された弾性力を補助駆動輪に出力する際の動作を説明する概略図であり、図6Cは、補助駆動輪の駆動力をぜんまいばねに回生する際の動作を説明する概略図である。
【図7】搬送システムの動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0067】
10 搬送車(車両)
14 主動力部
16 載置台
18 補助動力部
22 制御部
24 車体フレーム
27 入力シャフト
28 走行用モータ(走行用駆動源)
30 主駆動輪
31 外部電源
34 エネルギ備蓄機構
36 巻上げモータ(備蓄用駆動源)
36a モータブレーキ
37 第1スプロケット
38 補助駆動輪
40 クラッチ機構
41 メインシャフト(回転軸)
41a 第1シャフト
41b 第2シャフト
42 中間シャフト
43 駆動シャフト
45 ケーシング
45a 内壁面
48 第2スプロケット
49 第1ワンウェイクラッチ
50 第3スプロケット
51 入力クラッチ
52 第4スプロケット
53 出力クラッチ
54 ぜんまいブレーキ(出力制限器)
57 第5スプロケット
59 第6スプロケット
61 第2ワンウェイクラッチ
63 第7スプロケット
65 チェーン
67 第8スプロケット
69 車輪ブレーキ
84a 車輪
84c 車輪
86 磁気テープ
88 センサ
100 搬送システム(車両システム)
102a〜102c 作業ステーション(ステーション)
104 待機ステーション(ステーション)
106a〜106c 作業ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体の駆動輪に連結され、動力を弾性力に変換して備蓄可能な一方、備蓄した弾性力を動力として前記駆動輪に出力可能な弾性体を含むエネルギ備蓄機構を有する車両と、
前記車両が停止するステーションとを備え、
前記ステーションには、当該ステーションに前記車両が停止した際に、当該車両の前記エネルギ備蓄機構と連結し、当該エネルギ備蓄機構の弾性体に動力を備蓄する備蓄用動力源を備えたことを特徴とする車両システム。
【請求項2】
前記車両は、前記エネルギ備蓄機構の弾性体から前記車両の駆動輪への動力の出力、及び前記駆動輪から前記弾性体への動力の回生を切り替えるクラッチ機構を備え、
前記ステーション間を移動するに際し、前記エネルギ備蓄機構に備蓄した動力で走行し、走行途中で前記クラッチ機構を回生側に切り替えて、走行しつつ前記駆動輪から前記弾性体への動力の回生を可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両システム。
【請求項3】
前記車両は、前記車両本体を駆動する主駆動輪と、前記主駆動輪を駆動する走行用モータとを備え、
前記エネルギ備蓄機構の弾性体に備蓄した動力が、車両の発進時に、前記走行用モータの駆動力をアシストすると共に、前記ステーション間距離の終点近くで、前記クラッチ機構を回生側に切り替えて、走行しつつ前記駆動輪から前記弾性体への動力の回生を可能に構成したことを特徴とする請求項2に記載の車両システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−213517(P2010−213517A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58943(P2009−58943)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】