説明

車両トレーラの揺れを安定化するための全体制御

【課題】トレーラ揺れ介入システム。トレーラ揺れ介入システムは、ブレーキをそれぞれ有する複数の車輪を有するトレーラと、トレーラを牽引する車両とを備える。車両は、車両の動作特性を検知するように構成される複数のセンサと、コントローラとを含む。
【解決手段】コントローラは、センサから検知された動作特性を受け取り、予想ヨーレートと検知ヨーレートとの差に基づいて誤差を確定し、この差に基づいて1つ又は複数のトレーラ車輪に非対称制動力を加え、予想ヨーレートと検知ヨーレートとの差の絶対値が減少しているときにトレーラ車輪に対称制動力を加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーラブレーキの選択的な制動によってトレーラ振動を抑制することに関する。特に、電子安定制御システムが、トレーラの振動を検出し、トレーラを制動する非対称制動トルク及び対称制動トルクを加えて振動を減らす。
【背景技術】
【0002】
車両の後方でトレーラを牽引することには、多くの場合、車両及びトレーラの両方で安定性の問題が伴う。トレーラは、車両の後方で引かれているときに横方向に往復して振動する、すなわち揺れる傾向がある。振動は、特に高い運転速度で風に起因して生じ得る。さらに、振動は、他の事象の結果としても生じ得る。例えば、車両の操作者が、路上の障害物への衝突を避けるためにハンドルを切る場合がある。この急ハンドルの動きがトレーラに伝達され、トレーラが振動し始める場合がある。適切な抑制がなければ、振動が大きくなり続ける可能性がある。振動が低減されない場合、車両及びトレーラが不安定になり得る。
【0003】
車両の車輪に制動力を加えることによって、車両及びトレーラを安定した動作状態に戻すためにトレーラ振動の周波数及び大きさを抑制して実質的に低減するための方法が、いくつか開発されている。例えば、車両におけるトレーラの揺れ軽減(「TSM」)が、2006年8月11日付けで出願された特許文献1(参照により本明細書に援用される)に記載されている。この発明の実施の形態は、トレーラの車輪に制動力を加えることによってトレーラ振動を抑制するように働く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第11/503,875号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施の形態によれば、本発明は、トレーラ揺れ介入システムを提供する。トレーラ揺れ介入システムは、ブレーキをそれぞれ有する複数の車輪を有するトレーラと、トレーラを牽引する車両とを備える。車両は、車両の動作特性を検知するように構成される複数のセンサと、コントローラとを含む。コントローラは、センサから検知された動作特性を受け取り、予想ヨーレートと検知ヨーレートとの差に基づいて誤差を確定し、この差に基づいて1つ又は複数のトレーラ車輪に非対称制動力を加え、予想ヨーレートと検知ヨーレートとの差の絶対値が減少しているときにトレーラ車輪に対称制動力を加える。
【0006】
別の実施の形態によれば、本発明は、トレーラ振動を低減する方法を提供する。該方法は、車両の目標ヨーレートを計算する働き、車両の実ヨーレートを検知する働き、目標ヨーレートと検知ヨーレートとの差に基づいて誤差(error value)を確定する働き、誤差に基づいてトレーラの1つ又は複数の車輪に非対称制動力を加える働き、及び誤差の大きさの絶対値が減少しているときにトレーラの1つ又は複数の車輪の複数に対称制動力を加える働き、を含む。
【0007】
本発明の他の態様は、詳細な説明及び添付図面を熟考することによって明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】車両及びトレーラの概略図である。
【図2】電子安定制御システムのブロック図である。
【図3】図2の電子安定制御システムのトレーラ揺れ介入構成要素のブロック図である。
【図4】対称制動制御機能のブロック図である。
【図5】対称トレーラ揺れ介入機能を用いたトレーラ振動のシミュレーショングラフである。
【図6】非対称制動制御機能のブロック図である。
【図7】非対称トレーラ揺れ介入機能を用いたトレーラ振動のシミュレーショングラフである。
【図8】複合対称/非対称トレーラ揺れ介入機能、対称トレーラ揺れ介入機能、及び非対称トレーラ揺れ介入機能の影響を比較したトレーラ振動のシミュレーショングラフである。
【図9】複合対称/非対称トレーラ揺れ介入機能、対称トレーラ揺れ介入機能、及び非対称トレーラ揺れ介入機能を用いたトレーラの速度を比較したトレーラ振動のシミュレーショングラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のいずれの実施形態も詳細に説明する前に、本発明の用途が、以下の説明に記載されるか又は添付図面に示される構成要素の構成及び配置の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、さまざまな方法で実施又は実行することが可能である。
【0010】
同じく当業者に明らかなはずであるが、図示されるシステムは、実際のシステムがどのようなものであるかを示すモデルである。説明されるモデル及び論理構造の多くは、マイクロプロセッサ又は同様の装置によって実行されるソフトウェアに実装することができるか、又は例えば特定用途向け集積回路(「ASIC」)を含むさまざまな構成要素を用いるハードウェアに実装することができる。「プロセッサ」のような用語は、ハードウェア及び/又はソフトウェアの両方を含むか又は指すことができる。さらに、本明細書全体を通して、大文字で書かれた用語が用いられる。そのような用語は、一般的な慣習に合うように、且つ説明をコーディング例、式、及び/又は図面と相関させるのに役立つように用いられる。しかしながら、大文字が用いられているという理由だけで特定の意味が暗示されることはなく、推測されるべきでもない。
【0011】
図1は、4つの車輪105A、105B、105C、及び105Dを有する車両100を示す。前輪105A及び105Bは、前車軸110に結合され、後輪105C及び105Dは、後車軸115に結合される。車両100は、エンジン120及び電子制御ユニット(「ECU」)125を含む。車両100の操作者(すなわち、運転者)が、スロットル及びブレーキを操作し、ハンドルを切って車両を所望の方向に向ける。
【0012】
車両100は、ECU125に情報を提供する複数のセンサも含む。センサは、操舵角センサ135と、エンジントルクセンサ140と、各車輪に対応する複数の車輪速度センサ145A、145B、145C、及び145Dと、ブレーキシステムマスタシリンダ圧力センサ150と、横加速度センサ155と、ヨーレートセンサ160とを含む。当然ながら、他の実施形態では、車両100がこれよりも多いか又は少ないセンサを含んでいてもよい。検知された状態は、車両100の動作を示す較正済みの信号に変換される(transduced and converted)。例えば、車輪速度センサ145A、145B、145C、及び145Dに較正回路又はプロセッサが設けられている場合、センサは、速度を較正された形態に内部で変換することができる。そうでない場合、センサ状態は、他の外部プロセスによって当該技術分野で既知の方法で(例えば、ECU125)較正済みの信号に変換され得る。説明したものに加えて、又は説明したものの代わりに、車両100の左右の運動又は加速等の他の事象を検知するためにセンサを用いてもよい。センサによって出力される信号の値を、まとめて検知された値又は値と呼ぶ。
【0013】
トレーラ200は、ヒッチ205によって車両の後端に連結される。トレーラ200は、4つの車輪210A、210B、210C、及び210Dを含む。前輪210A及び210Bは、前車軸215に結合され、後輪210C及び210Dは、後車軸220に結合される。トレーラ200は、異なる数の車軸(例えば1つ)を(したがって、異なる数の車輪を)有していてもよく、セミトレーラ、フルサイズトレーラ、ボートトレーラ、キャンピングカー等であってもよい。トレーラ200は、車輪210A〜210Dのそれぞれにブレーキも含む。ブレーキは、電気ブレーキであっても油圧ブレーキであってもよく、(例えば、個々のブレーキ弁への、又は電気モータ又はアクチュエータへの)電気信号を介してECU125によって制御される。
【0014】
ECU125は、車両100の車両目標のセットを確定する。特に、運転者が特定の方向に、又は特定の速度で車両100を動かそうと試みるとき、運転者の入力が検知され、運転者の入力を示す信号がECU125に送られる。結果として、ECU125は、運転者の入力(例えば、操舵、スロットル等)を示す車両目標のセットを確定する。例えば、運転者がハンドルを用いて車両100を特定の方向に操舵しようと試みるとき、ECU125は、運転者が生成する操舵角に対応する車両目標のセットを生成する。いくつかの実施形態では、車両目標のセットは、ヨーレートのセットを含む。結果として、車両状態のセットは、車両100によって実際に示されるヨーレートのセット、及び運転者の操舵入力に基づく予想ヨーレートのセットを含む。
【0015】
車両100は、電子安定制御(「ESC」)アプリケーション又はモジュールを含む。ESCアプリケーションは、ECU125によって実行されるソフトウェアプログラムであり、1つ又は複数の電子安定制御機能を含む。ECU125は、車両センサ(例えば、エンジントルクセンサ140、車両速度センサ145A〜145D、マスタシリンダ圧力センサ150、横加速度センサ155、及びヨーレートセンサ160)から車両特性に対応する信号を受け取り、ESCアプリケーションは、これらの信号を用いて、車両100の不安定性を検出してその状況の補正を助ける。例えば、ECU125が操舵制御不能を検出すると、ECU125は、車両100を所望の方向に操舵するのを助けるために車両のブレーキの1つ又は複数を自動的にかける。すなわち、ESCアプリケーションは、ブレーキ(又はより広範には、車輪トルク)に指定の制御を与えることによって、車両100の安定性を高める。この制動(又はより広範には、トルク制御)は、対称制動及び非対称制動であり得る。ESCは、トレーラ振動を検出して抑制することもできる。いくつかの実施形態では、ECU125は、車両100のスキッド又はスライドを検出すると、運転者が車両100の制御を取り戻すまでエンジンパワーも減らす。
【0016】
対称制動力は、すべての車輪(すなわち2つの前輪及び2つの後輪)に均等に加えられる制動力である。非対称制動力は、車輪の1つ又は複数に不均等に加えられる制動力である。例えば、非対称制動力が右前輪のみに加えられ得る。続いて、同様の非対称制動力が左前輪のみに加えられ得る。又は、非対称制動が複数の車輪に異なる割合で加えられてもよい。
【0017】
トレーラ200が振動し始めた場合、運転者は、その動きを補償するために、操舵するか又はブレーキペダルを踏むことによって振動に応答し得る。結果として、運転者は、オーバーステアになって車両を制御できなくなり得る。車両安定機能に加えて、ESCアプリケーションは、トレーラ揺れ介入(「TSI」)機能を含む。TSIは、運転者がトレーラ振動を低減するのを補助する。ESCは、トレーラ200が振動していることを検出すると、トレーラ振動が許容レベルに低減されるまでさまざまな非対称制動力及び対称制動力を与える。
【0018】
一般的には、TSIは、トレーラ200のブレーキ(又はより広範には、車輪トルク)に指定の制御を与えることによって、車両100及びトレーラ200の安定性を高める。非対称及び対称制動(又はより広範には、トルク制御)が、トレーラ振動を抑制するためにトレーラの車輪210A〜210Dに加えられる。対称制動力は、トレーラの車輪に均等に加えられるが、非対称制動力は、車輪の1つ又は複数に不均等に加えられる。例えば、制動力が右車輪のみに加えられ得る。続いて、同様の制動力が左車輪のみに加えられ得る。トレーラ振動が許容レベルに低減されるまで、さまざまな非対称制動が実行され得る。
【0019】
図2は、ESCアプリケーション250の機能を示す。フィルタ255が、(例えばヨーレートセンサ160からの)ヨーレート信号260を受け取り、ヨーレート信号260にさまざまなフィルタリング処理を施して、バンドパスフィルタリング済み信号265及びローパスフィルタリング済み信号270を生成する。バンドパスフィルタリング済み信号265は、信号処理モジュール275に供給され、信号処理モジュール275は、ヨーレート振動信号280及び制御信号285を生成する。最大振動検出モジュール290が、フィルタ255からのローパス信号270と、信号処理モジュール275からのヨーレート振動信号280及び制御信号285とを受け取る。最大振動検出モジュール290は、各ヨーレートサイクルのヨーレートの最大振動を検出する。最大振動検出モジュール290は、現在のヨーレートサイクルの最大ヨーレートを示す信号295を振動解析モジュール300に供給する。振動解析モジュール300は、信号処理モジュール275からのヨーレート振動信号280も受け取る。振動解析モジュール300は、ヨーレートの振動が所定の閾値を超えているか否かを示す制御信号305を供給する。
【0020】
ESC250は、車両100の速度を示す信号312を受け取るヨーレート閾値モジュール310も含む。ヨーレート閾値モジュール310は、車両100の速度に基づいて最大許容ヨーレートを確定し、ヨーレート閾値信号315を生成する。状況モジュール320が、ヨーレート閾値信号315及び(例えば、操舵角センサ135からの)運転者操舵入力信号325を受け取り、(例えば、運転者が特定の状況でオーバーステアを試みているか否かを示す)閾値比較信号327を生成する。
【0021】
比較モジュール330が、振動解析モジュール300からの制御信号305と、状況モジュール320からの閾値比較信号327と、運転者のブレーキペダル操作を示すペダル移動信号335と、車両がトレーラに電気的且つ機械的に接続されているか否かを示すトレーラ接続信号340とを受け取る。いくつかの実施形態では、トレーラ接続信号がない。
【0022】
受け取った信号に基づいて、比較モジュール330は、制御信号345をトレーラブレーキ(制動)モジュール350に供給し、制御信号355を車両ブレーキ(制動)モジュール360に供給する。制御信号345及び355は、ブレーキモジュール350及び360がそれらの安定制御機能を実行するか否か及びその実行の程度を示す。比較モジュール330は、(例えば、TSI機能が有効であるか否かを示す)トレーラ揺れ軽減信号365、及び(例えば、ECU125にエンジン120のトルク出力を低減させて車両の減速を補助させるための)エンジントルク低減信号370も供給する。
【0023】
制御信号355に加えて、車両ブレーキモジュール360は、振動解析モジュール300からの制御信号305、バンドパスフィルタリング済みヨーレート信号265、ヨーレート閾値信号315、及び運転者のスロットル操作に基づく所望のエンジントルクを示す信号375を受け取る。これらの入力に基づいて、車両ブレーキモジュール360は、上述のように車両のブレーキに加えられる制動トルクを制御する対称車両制動信号380及び非対称車両制動信号385を生成する。
【0024】
トレーラブレーキモジュール350は、比較モジュール330からの制御信号345とバンドパスフィルタリング済みヨーレート信号265とを受け取る。これらの入力に基づいて、トレーラブレーキモジュール350は、対称トレーラ制動信号390及び非対称トレーラ制動信号395を生成する。対称トレーラ制動信号390、非対称トレーラ制動信号395、対称車両制動信号380、及び非対称車両制動信号385はすべて、トルクオプティマイザモジュール400に供給され、トルクオプティマイザモジュール400は、トレーラ制動信号を最適化して、最適化対称トレーラブレーキ信号405及び最適化非対称トレーラ制動信号410をトレーラコントローラ415に供給する。トレーラコントローラ415は、信号405及び410に基づいてトレーラのブレーキを制御する。
【0025】
図3は、トレーラ揺れ介入機能450の関数を示す。ヨーチェックモジュール455が、複数の車両センサ460から情報を受け取る。センサ460からのデータに基づいて、ヨーチェックモジュール455は、目標ヨーレート465及び測定ヨーレート470を生成する。目標ヨーレート465は、測定ヨーレート470と比較され、差信号又は誤差信号475が生成される。誤差信号475は、車両100の運転者が意図するヨーレートと検出された実ヨーレートとの差を表す。誤差信号475は、バンドパスフィルタ480に供給され、バンドパスフィルタ480は、フィルタリング済み誤差信号485を生成する。
【0026】
フィルタリング済み誤差信号485は、第1の加算器490に供給され、第1の加算器490は、フィルタリング済み誤差信号485に定数を加える。いくつかの実施形態では、定数はゼロである。第1の加算器490の出力は、非対称制御信号495である。非対称制御信号495は、第1の閉ループコントローラ500(すなわち、PIDコントローラ)に供給される。第1の閉ループコントローラ500は、トレーラ200のブレーキに加えられる制動トルクの量及びブレーキ間のトルクの分配を確定し、このトルク及び分配を示す非対称信号505を出力する。
【0027】
フィルタリング済み誤差信号485は、ピーク識別モジュール510にも供給される。ピーク識別モジュール510は、ヨー振動の各サイクルのフィルタリング済み誤差信号485のピークを確定してピーク信号512を出力する。第2の加算器515が、ピーク信号512と現在のフィルタリング済み誤差信号485との差を確定して差信号520を出力する。差信号520は、スイッチ525に供給される。スイッチ525は、フィルタリング済み誤差信号485がピーク(正又は負)からゼロに移動しているときに(すなわち、d(|フィルタリング済み誤差485|)/dtがゼロ未満であるときに)閉じており、残りの時間は開いている。スイッチ525が閉じると、差信号520は、第2の閉ループコントローラ530(例えば、PIDコントローラ)に供給される。第2の閉ループコントローラ530は、トレーラブレーキに対称に加えるべき制動トルクの量を確定する。油圧ユニット535が、非対称信号505及び(第2の閉ループコントローラ530からの)対称信号540を受け取り、左右のトレーラブレーキそれぞれに対する(すなわち、2つの車輪を有するトレーラ200の)制動トルク信号545及び550を生成する。
【0028】
図4は、対称制動機能600の関数を示す。比較モジュール605が、フィルタリング済み誤差信号(フィルタリング済みヨーレート誤差信号)485をピーク信号(ピークフィルタリング済みヨーレート誤差信号)512と比較する。差信号520が増幅器610に供給されることで、対称信号615が得られ、これが対称コントローラ620に供給される。対称コントローラ620は、対称(均等)制動トルク625をブレーキに与える。図5に示すように、対称制動トルク625は、ヨーレート誤差が正又は負のピークからゼロに移動している間(スイッチ525が閉じているとき)にトレーラブレーキに加えられる。
【0029】
図6は、非対称制動機能650の関数を示す。比較モジュール655が、フィルタリング済み誤差信号485を定数(例えば、ゼロ)と比較する。差信号660が、増幅器665及び微分器670に供給される。得られる信号は、加算器675で加算されてコントローラ680に供給され、コントローラ680は、(単軸トレーラの場合)右トレーラブレーキトルク685及び左トレーラブレーキトルク690を生成する。図7に示すように、非対称制動トルク685/690は、過度のトレーラ振動が生じている間ずっとトレーラブレーキに(さまざまなレベルで)加えられる。
【0030】
対称トレーラ制動及び非対称トレーラ制動は、協働して互いを補償する。対称制動が最大であるときは非対称制御が最小であり、逆の場合も同じである(例えば、対称及び非対称が反比例の関係を有する)。したがって、ヨーレート誤差がゼロからピークに移動している期間中は、非対称制動が最大で対称制動がゼロである。誤差がピークからゼロに移動しているとき、対称制動及び非対称制動は様々な割合になる。図8は、対称トレーラ制動単独705及び非対称トレーラ制動単独710に対する対称/非対称トレーラ制動の組み合わせ700のシミュレーション試験の結果を示す。図9は、対称/非対称トレーラ制動の組み合わせ715、対称トレーラ制動単独720、及び非対称トレーラ制動単独725という3つの制動方法を用いて得られるトレーラのシミュレーション速度を示す。
【0031】
本発明のさまざまな特徴及び利点が、特許請求の範囲に記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーラ揺れ介入システムであって、
ブレーキをそれぞれ有する複数の車輪を含むトレーラと、
前記トレーラを牽引する車両であって、
該車両の動作特性を検知するように構成される複数のセンサ、及び
前記複数のセンサから前記検知された動作特性を受け取り、
予想ヨーレートと検知ヨーレートとの差である誤差を確定し、
前記予想ヨーレートと前記検知ヨーレートとの前記差に基づいて1つ又は複数のトレーラ車輪に非対称制動力を加え、且つ
前記予想ヨーレートと前記検知ヨーレートとの前記差の絶対値が減少しているときに前記トレーラ車輪に対称制動力を加える
ように構成されるコントローラ、
を含む、車両と、
を備える、トレーラ揺れ介入システム。
【請求項2】
前記非対称制動力は、前記対称制動力と反比例の関係を有する、請求項1に記載のトレーラ揺れ介入システム。
【請求項3】
前記非対称制動力の大きさは、前記誤差を用いて第1の閉ループコントローラによって確定される、請求項1に記載のトレーラ揺れ介入システム。
【請求項4】
前記第1の閉ループコントローラは、PIDコントローラである、請求項3に記載のトレーラ揺れ介入システム。
【請求項5】
前記対称制動力の大きさは、前記誤差と、前記予想ヨーレートと前記検知ヨーレートとの差のピーク値との差を用いて、第2の閉ループコントローラによって確定される、請求項3に記載のトレーラ揺れ介入システム。
【請求項6】
前記第2の閉ループコントローラは、PIDコントローラである、請求項5に記載のトレーラ揺れ介入システム。
【請求項7】
車両電子安定制御システムの一部である、請求項1に記載のトレーラ揺れ介入システム。
【請求項8】
前記トレーラが存在するときに、前記車両における前記車両電子安定制御システムの動作が変更される、請求項7に記載のトレーラ揺れ介入システム。
【請求項9】
トレーラ振動を低減する方法であって、
車両の目標ヨーレートを計算すること、
前記車両の実ヨーレートを検知すること、
前記目標ヨーレートと前記検知ヨーレートとの差に基づいて誤差を確定すること、
前記誤差に基づいてトレーラの1つ又は複数の車輪に非対称制動力を加えること、及び
前記誤差の大きさの絶対値が減少しているときに前記トレーラの前記1つ又は複数の車輪の複数に対称制動力を加えること、
を含む、トレーラ振動を低減する方法。
【請求項10】
前記非対称制動力は、前記対称制動力と反比例の関係を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記誤差に対して比例積分微分閉ループ制御を行って、前記非対称制動力を確定することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記誤差の各サイクルで前記誤差のピーク値を確定することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記誤差の前記ピーク値と前記確定された誤差との差を確定することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記誤差の前記ピーク値と前記確定された誤差との前記差に対して比例積分微分閉ループ制御を行って、前記対称制動力を確定することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記車両がトレーラを牽引しているときに、1つ又は複数の車両電子安定制御機能が変更される、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−31881(P2011−31881A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−171283(P2010−171283)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】