説明

車両制御装置、及び車両制御方法

【課題】ローダウン仕様やサイドスカートなどのエアロパーツ装着の車両等であっても、
ロック板などの出庫阻止手段が設置された駐車場に安心して駐車させることができ、出庫
阻止手段の起立(上昇)動作による車両の損傷を防止する効果を高めることができる車両
制御装置を提供すること。
【解決手段】自車両が駐車スペースに駐車された場合に、自車両の底部周辺の撮像データ
を取得する撮像データ取得手段と、取得した撮像データに基づいて、駐車車両の不正出庫
を阻止するために駐車スペースに設置された出庫阻止手段の動作と、自車両の底部との関
係を示す情報を演算する演算手段と、演算により求められた前記情報に基づいて、自車両
の底部が出庫阻止手段の動作によって損傷を受けないように、自車両の車高を調整する制
御を行う車高制御手段とを装備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両制御装置、及び車両制御方法に関し、より詳細には、無人駐車場などに設
置された可動式のロック板(フラップ板とも言う)などの出庫阻止手段が、駐車車両の底
部に当たって、車両が損傷してしまう現象を防止することができる車両制御装置、及び車
両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、比較的小規模な有料駐車場では、自動精算機と車両ロック装置などを組み合わせ
たコインパーキングシステムが導入されている。このようなコインパーキングシステムで
は、例えば、各駐車スペースに、駐車車両の車体底面に向けて起倒可能なロック板(可動
翼)を備えた車両ロック装置が、駐車車両の前輪と後輪との間に位置するように設置され
ており、駐車スペースに車両が駐車されたことがセンサ等で検出されると、駐車車両の底
面に向けてロック板を起立させて、駐車車両の不正出庫を防ぐ出庫阻止状態とし、その後
、自動精算機で駐車料金の精算が終了すると、ロック板をもとの位置まで倒伏させて車両
が出庫できる状態に制御されている。このような車両ロック装置については、下記の特許
文献1、2などに開示されている。
【0003】
上記した車両ロック装置は、ロック板を起倒させる駆動力として、エアシリンダを用い
たもの、多数の歯車からなる減速機構を介して電動モータで起倒動作させるもの、又は油
圧シリンダを用いたもの等、種々の形式の装置が提案されている。
【0004】
また、上記車両ロック装置のロック板を起立(上昇)させる時の制御としては、ロック
板が車体に接触したことをリミットスイッチ等で検知し、その後、ロック板の起立動作を
停止させる機構などが提案されている。しかしながら、前記ロック板の制御機構では、リ
ミットスイッチの取り付け位置の影響や経年劣化による感度の悪化等もあり、常に適切な
タイミングでロック板の起立動作を停止させる制御を行うことは容易ではなく、場合によ
っては、ロック板が車体に接触した状態のまま起立動作が続き、駐車車両の底部が傷つい
てしまう虞があった。
【0005】
さらに、駐車場を利用する車種も多様であり、近年では、走行安定性を高めるために車
高を落したり、車両の両側下部にサイドスカートなどのエアロパーツが装着された車両も
多くみられ、これらローダウン仕様やエアロパーツ装着の車両が駐車された場合、従来の
車両ロック装置では、車体の底面やサイドスカートを損損させることなく、ロック板を適
切な位置で停止させることが難しくなってきており、ロック板により車体の底面やサイド
スカートを大きく損傷させてしまう虞があり、車両の損傷に対して駐車設備側の対策だけ
では、十分な対応が難しくなってきているという問題があった。
【特許文献1】特開2000−213197号公報
【特許文献2】特開平11−62302号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段及びその効果】
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、ローダウン仕様やサイドスカートなど
のエアロパーツ装着の車両等であっても、ロック板などの出庫阻止手段が設置された駐車
場に安心して駐車させることができ、出庫阻止手段の起立(上昇)動作による車両の損傷
を防止する効果を高めることができる車両制御装置、及び車両制御方法を提供することを
目的としている。
【0007】
上記目的を達成するために本発明に係る車両制御装置(1)は、自車両が駐車スペース
に駐車された場合に、前記自車両の底部周辺の撮像データを取得する撮像データ取得手段
と、該取得した撮像データに基づいて、駐車車両の不正出庫を阻止するために駐車スペー
スに設置された出庫阻止手段の動作と、前記自車両の底部との関係を示す情報を演算する
演算手段と、該演算手段により求められた前記情報に基づいて、前記自車両の底部が前記
出庫阻止手段の動作によって損傷を受けないように、前記自車両の車高を調整する制御を
行う車高制御手段とを備えていることを特徴としている。
【0008】
上記車両制御装置(1)によれば、自車両が駐車スペースに駐車された場合に、前記自
車両の底部周辺の撮像データを取得し、該取得した撮像データに基づいて、駐車車両の不
正出庫を阻止するために駐車スペースに設置された出庫阻止手段の動作と、前記自車両の
底部との関係を示す情報が演算され、該演算された前記情報に基づいて、前記自車両の底
部が前記出庫阻止手段の動作によって損傷を受けないように、前記自車両の車高を調整す
る制御を行うので、前記出庫阻止手段の動作(すなわち、起立、上昇動作)による車両の
損傷を防止する効果を高めることができ、上記車両制御装置が搭載された車両であれば、
ローダウン仕様やサイドスカートなどのエアロパーツ装着の車両等であっても、前記出庫
阻止手段が設置された駐車場に安心して駐車させることができる。
【0009】
また本発明に係る車両制御方法(1)は、自車両が駐車スペースに駐車された場合に、
前記自車両の底部周辺の撮像データを取得する撮像データ取得ステップと、該取得した撮
像データに基づいて、駐車車両の不正出庫を阻止するために駐車スペースに設置された出
庫阻止手段の動作と、前記自車両の底部との関係を示す情報を演算する演算ステップと、
該演算により求められた前記情報に基づいて、前記自車両の底部が前記出庫阻止手段の動
作によって損傷を受けないように、前記自車両の車高を調整する制御を行う車高制御ステ
ップとを含んでいることを特徴としている。
【0010】
上記車両制御方法(1)によれば、前記自車両の底部が前記出庫阻止手段の動作によっ
て損傷を受けないように、前記自車両の車高を調整する制御を行うことができ、前記出庫
阻止手段の動作(すなわち、起立、上昇動作)による車両の損傷を防止する効果を高める
ことができ、上記車両制御方法が採用された車両であれば、ローダウン仕様やサイドスカ
ートなどのエアロパーツ装着の車両等であっても、前記出庫阻止手段が設置された駐車場
に安心して駐車させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る車両制御装置、及び車両制御方法の実施の形態を図面に基づいて説
明する。図1は、実施の形態(1)に係る車両制御装置が採用された車載システムの要部
を概略的に示したブロック図である。
【0012】
図中1は、車両の後部バンパーの内側に設置された車載カメラを示している。車載カメ
ラ1は、車両の後方と車両の底部周辺とを撮影することができるように可動式となってお
り、レンズなどを含むカメラの本体部2と、本体部2の向き(すなわち、撮影方向)を変
えるための駆動部3とを含んで構成されている。
【0013】
車載カメラ1は、マイクロコンピュータ(マイコン)11などを含んで構成されている
車両制御装置10に接続されており、車両制御装置10では、後述する所定のタイミング
で、車載カメラ1の駆動部3に駆動信号を送り、本体部2による撮影方向(すなわち、車
両後方を撮影する状態から車両底部周辺(車両底面と路面との間)を撮影する状態へ、又
はその逆)の変更を行う制御、所定の時間間隔で、車載カメラ1で撮影された撮像(画像
)データを取得する制御、さらに、取得した撮像データを画像解析する処理も行うように
なっている。
【0014】
また、車両制御装置10は、通信ラインLを介して、車高調整機能を備えたサスペンシ
ョン制御装置20に接続されており、後述する所定のタイミングで、サスペンション制御
装置20に対して、車高調整を指示する制御信号を出力するようになっており、サスペン
ション制御装置20では、前記制御信号に基づいて、車高の調整(上昇、下降)制御が行
われるようになっている。
【0015】
サスペンション制御装置20には、エアサスペンションシステムを構成する各種部品が
接続されており、エアサスペンションシステムは、前後各車輪に設けられたエアバネ(エ
アサスペンション)23、ハイトコントロールバルブ22、車高センサ23、さらに、エ
ア配管24の経路に設けられた給気バルブ25、エアタンク26、排気バルブ27、エア
コンプレッサ28などを含んで構成されている。各エアバネ23には、油圧式のショック
アブソーバやエアチャンバ(いずれも図示せず)などが装備されており、エア配管24を
介して給気バルブ25、エアを貯留するエアタンク26、エアを取り込むためのエアコン
プレッサ28、排気バルブ27に接続されている。
【0016】
サスペンション制御装置20は、マイクロコンピュータ(図示せず)を含んで構成され
ており、ハイトコントロールバルブ22、給気バルブ25、及び排気バルブ27の開閉制
御やエアコンプレッサ28の駆動制御などを行い、車高を調整する制御を行う機能を備え
ている。
【0017】
すなわち、車高上昇調整時は、給気バルブ25とハイトコントロールバルブ22とを開
く制御が行われ、エアタンク26内の圧縮空気をエアバネ23(のエアチャンバ)内に給
気し、その後、所定の給気停止条件が成立した時点で、給気バルブ25とハイトコントロ
ールバルブ22とを閉じる制御が行われる。これにより、エアバネ23内に圧縮空気が閉
じ込められるのでその時の車高が維持される。
【0018】
また、車高下降調整(元の位置に戻す)時は、排気バルブ27とハイトコントロールバ
ルブ22とを開く制御が行われ、エアバネ23(のエアチャンバ)内の圧縮空気を大気中
に排出し、その後、所定の排気停止条件が成立した時点で、排気バルブ27とハイトコン
トロールバルブ22とを閉じる制御が行われる。これにより、車高が通常の高さに戻され
るようになっている。
【0019】
また、車両に搭載されている自動変速機のシフトレバー(パーキングP、リバースR、
ニュートラルN、ドライブDなど)の位置を示すシフトレバーポジションスイッチ31や
イグニッションスイッチ32が、車両制御装置10に接続されており、車両制御装置10
では、シフトレバーポジションスイッチ31からシフトレバーの位置を示す信号やイグニ
ッションスイッチ32のオン/オフ信号などが取り込めるようになっている。
【0020】
また、車両に搭載されたナビゲーション装置を制御するナビゲーション制御装置33が
、車両制御装置10に接続されており、車両制御装置10では、ナビゲーション制御装置
33から出力される各種の信号や情報、例えば、地図データに登録されている駐車場に自
車が位置することを示す信号や該駐車場の情報などが取り込めるようになっている。なお
、前記駐車場の情報には、駐車場の種別、例えば、有料駐車場か否か、さらに有料駐車場
の場合、駐車ロック装置の有無、有りの場合、さらにフリップ式、ゲート式、それらの規
格サイズなどの設置装置の情報などが含まれている。
【0021】
車両制御装置10では、これらの信号や情報に基づいて、自車両が有料駐車場に駐車さ
れたか否かを判断し、該判断に基づいて、車載カメラ1の向きを変えて、自車両の底部周
辺の撮像データを取得する制御、該取得した撮像データに基づいて、駐車車両の不正出庫
を阻止するために駐車スペースに設置されたロック板41(図4参照)の動作と、自車両
の底部との関係を示す情報を演算する処理、及び該演算により求められた前記情報に基づ
いて、自車両の底部がロック板41の動作によって損傷を受けないように、サスペンショ
ン制御装置20を介して自車両の車高を調整する制御などを行うようになっている。
【0022】
また、車両制御装置10は、通信ラインLを介して、エンジン制御を行うエンジン制御
装置34に接続されており、車両制御装置10では、シフトレバーがパーキング(P)に
設定され、自車が有料駐車場に位置すると判断された場合、所定の時間(数分間程度)、
エンジンを作動させた状態を継続させるための制御信号をエンジン制御装置34に出力す
るようになっている。これにより、シフトレバーがパーキング(P)に設定された後、イ
グニッションスイッチ32がオフされた状態でも、エンジンの動力で発電を行うオルタネ
ータ(図示せず)の電力が、各部に供給される状態が所定の時間継続されるようになって
いる。
【0023】
なお、前記所定の時間は、固定値としてもよいが、ナビゲーション制御装置33から取
得した駐車場の情報(例えば、駐車スペースに車を検知してからロック板41が作動し始
めるまでの時間などの情報)を基に設定される構成とすることもできる。
【0024】
また、液晶パネルなどから構成された表示部35が、車両制御装置10に接続されてお
り、操作部(図示せず)を操作して表示部35に表示させた設定画面を通じて、サスペン
ション制御装置20を介して車高調整制御を行う場合の各種の条件設定を行うことができ
るようになっており、条件設定画面の表示例を図2に示している。
【0025】
図2に示した設定画面では、車両制御装置10からサスペンション制御装置20に車高
調整を指示する制御信号を出力して、実際に車高が動き(上昇)し始めるまでに必要な処
理時間Tsが表示され、また、必要処理時間Tsのバラツキなどを考慮するための安全率
Z、及び車載カメラ1から撮像データを取得するサンプリング間隔Δtなどの設定を行う
ことができるようになっている。また、必要処理時間Tsと、設定された安全率Zとが考
慮された制御開始判定時間T0(=Ts×Z)も表示されるようになっており、これらの
データは、車両制御装置10内の不揮発性メモリ(図示せず)に記憶される。なお、この
条件設定画面で設定がなされていない場合は、予め初期値として記憶されているデフォル
ト値が利用されるようになっている。このような専用のアプリケーションが、車両制御装
置10のマイコン11内のROM(図示せず)に格納されている。
【0026】
次に実施の形態(1)に係る車両制御装置10におけるマイコン11の行う処理動作を
図3−1、図3−2に示したフローチャートに基づいて説明する。なお、必要処理時間T
s、安全率Z、制御開始判定時間T0(=Ts×Z)、及び撮像データのサンプリング間
隔Δtは、図2に示した条件設定画面で設定された値、又はデフォルト値が使用されるよ
うになっている。また、本処理動作は、シフトレバーポジションスイッチ31からパーキ
ング(P)に設定された信号を取得した場合に開始され、所定の時間(イグニッションス
イッチ32がオフされた後も)実行されるようになっている。
【0027】
まず、ステップS1では、シフトレバーポジションスイッチ31からパーキング(P)
に設定された信号を取得したか否かを判断し、パーキング(P)に設定された信号を取得
していないと判断すれば、その後処理を終える一方、パーキング(P)に設定された信号
を取得したと判断すればステップS2に進む。
【0028】
ステップS2では、ナビゲーション制御装置33から自車が駐車場(駐車ロック装置4
0が設置されている駐車場)に位置する信号を取得したか否か(すなわち、自車位置が駐
車場であるか否か)を判断し、自車位置が駐車場ではないと判断すれば、その後処理を終
える一方、自車位置が駐車場であると判断すればステップS3に進む。ステップS3では
、所定の時間、エンジンを作動させた状態を継続させるための制御信号をエンジン制御装
置34に出力する処理を行い、その後ステップS4に進む。
【0029】
前記制御信号を取り込んだエンジン制御装置34では、イグニッションスイッチ32が
オフされた場合でも、エンジンの作動を継続するための制御が行われ、エンジンの動力で
発電を行うオルタネータの電力が各部に供給される状態が所定の時間継続されるようにな
っている。
【0030】
続くステップS4では、車載カメラ1の向き(撮影方向)を変える制御、すなわち、車
載カメラ1の向きを車両後方を撮影する状態から車両底部周辺(車両底面と路面との間)
を撮影する状態へ変更するための駆動信号を車載カメラ1の駆動部3に出力する処理を行
い、その後ステップS5に進む。
【0031】
前記駆動信号を取り込んだ車載カメラ1では、該駆動信号に基づいて駆動部3が駆動さ
れて、車両後方を撮影する状態から車両底部周辺を撮影可能な状態に、本体部2の向きが
回転される。なお、図4は、車載カメラ1の向きが、車両底部周辺を撮影可能な状態に変
更された状態を模式的に示した側面図である。また、図5は、車載カメラ1の向きが、車
両底部周辺を撮影可能な状態に変更された後に、車載カメラ1で撮影された画像の一例を
示している。
【0032】
図4の符号40は、車両50の不正出庫を阻止するための車両ロック装置を示しており
、図中42は車止めを示している。車両ロック装置40には、可動(起倒)式のロック板
(フリップ板とも言う)41が装備されており、ロック板41を起立させることにより、
車両50の不正出庫を阻止するように構成されている。車両50の両側下部にはサイドス
カート51が装着されている。
【0033】
また、図5に示したように、車載カメラ1の撮影枠内の上部に、車体底面52の一部と
、サイドスカート51とが写し出され、撮影枠の上辺と、車体底面52の境界ラインとが
略平行となるように車載カメラ1の向きが設定されており、また、撮影枠内の中央部から
下部にかけて、駐車スペースの路面に設置されたロック板41の起倒動作が写し出される
ように撮影範囲や向きが設定されている。
【0034】
続くステップS5では、撮像データのサンプリングカウントnをクリア(0)し、その
後、車載カメラ1から撮像データを取り込み(ステップS6)、サンプリングカウントn
に1を加算する(ステップS7)。
【0035】
続くステップS8では、取得した撮像データの画像解析を開始し、まず、撮影された画
像データに含まれる物体のエッジ(輪郭)を抽出する処理を行い、その後ステップS9に
進む。
【0036】
ステップS9では、抽出されたエッジの形状や撮影枠内の位置などに基づいて、車両底
部(車体底面52やサイドスカート51)と、路面に設置されたロック板41とを認識す
る処理を行う。すなわち、撮影枠の上部で、略水平方向にエッジが検出されている物体を
車体底面52と認識し、撮影枠の右側上部で、下に凸の形状でエッジが検出されている物
体をサイドスカート51と認識し、撮影枠の中央部付近で、略水平方向にエッジが検出さ
れている物体をロック板41と認識する処理を行い、その後ステップS10に進む。
【0037】
ステップS10では、認識結果に基づいて、撮影枠の上辺からサイドスカート51の下
端までの画素数(Ah)(図4参照)と、撮影枠の右辺からサイドスカート51の左端ま
での画素数(Aw)とを算出する処理を行い、その後ステップS11に進む。
【0038】
ステップS11では、撮影枠の上辺からロック板41上部までの画素数(B)を算出す
る処理を行い、その後ステップS12に進み、ステップS12では、ロック板41上部か
らサイドスカート51の下端までの画素数C(=B−Ah)を算出する処理を行い、その
後ステップS13に進む。
【0039】
ステップS13(図3−2参照)では、サンプリングカウントnが1であるか否かを判
断し、サンプリングカウントnが1であると判断すればステップS20に進む一方、サン
プリングカウントnが1ではない、すなわちn≧2であると判断すればステップS14に
進む。ステップS14では、ロック板41の移動速度V=(Cn−Cn-1)/Δtを算出
する処理を行い、その後ステップS15に進む。なお、(Cn−Cn-1)は、今回(サン
プリングカウントn)の画素数Cと、前回(サンプリングカウントn−1)の画素数Cと
の差、Δtは、撮像データのサンプリング間隔を示している。
【0040】
ステップS15では、ロック板41の移動速度Vが0(すなわち、ロック板41が停止
状態)であるか否かを判断し、移動速度Vが0ではないと判断すればステップS16に進
む。ステップS16では、移動速度Vでロック板41が等速運動した場合に、ロック板4
1がサイドスカートに接触するまでの予測時間、すなわち、ロック板41からサイドスカ
ート51までの画素数Cが0になるまでの時間T1(=Cn/V)を算出する処理を行い
、その後ステップS17に進む。
【0041】
ステップS17では、算出された予測時間T1が、車高調整制御を開始する制御開始判
定時間T0以下であるか否かを判断し、予測時間T1が判定時間T0以下であると判断す
ればステップS18に進む。ステップS18では、サスペンション制御装置20に、車高
を上昇させる制御を開始させるように制御信号を出力する処理を行い、その後、車高調整
制御中であることを示すフラグFに1を立てて(ステップS19)、ステップS20に進
む。
【0042】
車両制御装置10から車高調整開始の制御信号を取得したサスペンション制御装置20
では、給気バルブ25とハイトコントロールバルブ22とを開いて、エアタンク26内の
圧縮空気をエアバネ23(のエアチャンバ)内に給気し、車高を上昇させる制御が行われ
る。
【0043】
一方、ステップS17において、予測時間T1が制御開始判定時間T0より大きいと判
断すればステップS21に進む。ステップS21では、フラグFが1であるか否かを判断
し、フラグFが1である、すなわち、現在、車高制御中であると判断すればステップS2
2に進む。ステップS22では、サスペンション制御装置20に、車高を上昇させる制御
を停止させる制御信号を出力する処理を行い、その後、フラグFを0にして(ステップS
23)、ステップS20に進む。ステップS20では、撮像データのサンプリング間隔Δ
tが経過したか否かを判断し、サンプリング間隔Δtが経過したと判断すれば、ステップ
S6に戻り処理を繰り返す。
【0044】
車両制御装置10から車高調整停止の制御信号を取得したサスペンション制御装置20
では、給気バルブ25とハイトコントロールバルブ22とを閉じる制御を行い、車高の上
昇制御を停止する処理が行われる。
【0045】
一方、ステップS15において、ロック板41の移動速度Vが0であると判断すればス
テップS24に進む。ステップS24では、前回の移動速度Vも0であったか否かを判断
し、前回の移動速度Vも0である、すなわち、ロック板41が動く前の状態であると判断
すればステップS20に進む一方、前回の移動速度Vは0ではなかった、すなわち、ロッ
ク板41が動いた後に停止した状態であると判断すればステップS25に進む。
【0046】
ステップS25では、フラグFが1であるか否かを判断し、フラグFが1ではない、す
なわち、フラグFが0であり、現在、車高制御中ではないと判断すれば、その後処理を終
える一方、フラグFが1である、すなわち、現在、車高制御中であると判断すればステッ
プS26に進み、サスペンション制御装置20に、車高を上昇させる制御を停止させる制
御信号を出力する処理を行い、その後、フラグFを0にして(ステップS27)、処理を
終える。
【0047】
次に実施の形態(1)に係る車両制御装置10におけるマイコン11の行う別の処理動
作を図6に示したフローチャートに基づいて説明する。なお、本処理動作は、図3−1、
図3−2で説明した処理が実行された後、イグニッションスイッチ32がオンされた場合
に実行される。すなわち、駐車スペースから出庫する際の処理動作を示している。
【0048】
まず、ステップS31では、イグニッションスイッチ32がオンされたか否かを判断し
、イグニッションスイッチ32がオンされたと判断すればステップS32に進む。ステッ
プS32では、車両底部周辺が撮影できる向きに設定された状態の車載カメラ1で撮影さ
れた撮像データを所定のサンプリング間隔で取得する処理を開始し、その後ステップS3
3に進む。
【0049】
ステップS33では、取得した撮像データの画像解析を開始し、抽出されたエッジのデ
ータなどに基づいて、ロック板41を認識する処理を行い、その後ステップS34に進む
。ステップS34では、ロック板41の上部エッジの移動状態に基づいて、ロック板41
がもとの位置に倒伏されたか否かを判断し、ロック板41がもとの位置に倒伏されていな
いと判断すれば、ステップS32に戻り処理を繰り返す一方、ロック板41がもとの位置
に倒伏されたと判断すればステップS35に進む。
【0050】
ステップS35では、サスペンション制御装置20に、車高をもとの位置まで降下させ
る制御を指示する制御信号を出力する処理を行い、続くステップS36では、車載カメラ
1の向き(撮影方向)をもとの位置に戻す制御、すなわち、車載カメラ1の向きを車両の
底部周辺を撮影する状態から車両の後方を撮影する状態へ変化させるための駆動信号を車
載カメラ1の駆動部3に出力する処理を行い、その後処理を終える。
【0051】
サスペンション制御装置20では、車両制御装置10からの前記制御信号に基づいて、
排気バルブ27とハイトコントロールバルブ22とを開いてエアバネ23(のエアチャン
バ)内の圧縮空気を大気中に排出し、その後、車高センサ23の値がもとの基準値になっ
た時点で、排気バルブ27とハイトコントロールバルブ22とを閉じる制御が行われ、車
高が通常の高さに戻される。また、車載カメラ1では、車両制御装置10からの前記駆動
信号に基づいて、駆動部3により本体部2の向きが、車両の後方を撮影可能な位置に設定
されるようになっている。
【0052】
上記実施の形態(1)に係る車両制御装置10によれば、自車両が、駐車ロック装置4
0が設置された駐車スペースに駐車された場合に、自車両の底部周辺の撮像データを取得
し、該取得した撮像データに基づいて、駐車車両の不正出庫を阻止するために設置された
ロック板41の動作と、自車両の底部(車体52やサイドスカート51)との関係を示す
情報(接触までの予測時間T1など)が演算され、該演算された前記情報に基づいて、自
車両の底部がロック板41の動作によって損傷を受けないように、サスペンション制御装
置20を介して自車両の車高を調整する制御を行うので、ロック板41の起立動作に起因
する車体52やサイドスカート51の損傷を防止する効果を高めることができ、車両制御
装置10が搭載された車両であれば、ローダウン仕様やサイドスカートなどのエアロパー
ツ装着の車両等であっても、ロック板41が設置された駐車場に安心して駐車させること
ができる。
【0053】
なお、上記車載システムでは、車載カメラ1が、後方監視と車両底部監視とで兼用され
るようになっているが、別の実施の形態では、車両底部監視専用の車載カメラを、車両の
前方部分、及び/又は後方部分に設けるようにしてもよい。また、車両制御装置10にお
けるマイコン11が行う機能を、サスペンション制御装置20のマイコンに組み込んだ構
成とすることもできる。
【0054】
図7は、実施の形態(2)に係る車両制御装置が採用された車載システムの要部を概略
的に示したブロック図である。但し、図1に示した車載システムと同一機能を有する構成
部品には同一符合を付し、その説明を省略することとする。
【0055】
実施の形態(2)に係る車両制御装置10Aが採用された車載システムでは、車両の底
面部(前輪と後輪との間)に配設された車両保護プレート36と、車両保護プレート36
を昇降させるための昇降駆動部37とがさらに装備されており、車両制御装置10Aによ
り、車両保護プレート36の昇降動作が制御されるようになっている点が、実施の形態(
1)に係る車両制御装置10と相違している。
【0056】
車両保護プレート36は、車両ロック装置40のロック板41による車両底部のサイド
スカート51(図4参照)などの損傷を防止するためのものであり、ロック板41の上昇
を抑えることができるように配設されている。駐車設備によっては、駐車スペース内の車
止めからロック板41までの距離などが異なる場合も考えられるので、車両保護プレート
36は、前輪と後輪との間に、車両前後方向に向けて縦長に配設するのが好ましい。
【0057】
実施の形態(2)に係る車両制御装置10Aでは、サスペンション制御装置20による
車高調整を開始した後に、車高を上昇させる速度よりも車両ロック装置40のロック板4
1の上昇速度が速く、ロック板41が車両底部に接近してきて、車両底部がロック板41
と接触すると判断した場合、又は、車高を調整範囲の上限値まで上昇させた後も、車両ロ
ック装置40のロック板41が上昇してきて、車両底部がロック板41と接触すると判断
した場合などに、昇降駆動部37に対して、車両保護プレート36を降下させる駆動信号
を出力し、車両保護プレート36を降下させて、車両保護プレート36をロック板41に
接触させて、サイドスカートなどの底部にロック板41が接触するのを防止する制御を行
うようになっている。
【0058】
次に実施の形態(2)に係る車両制御装置10Aにおけるマイコン11Aの行う処理動
作を図8に示したフローチャートに基づいて説明する。なお、本処理動作は、図3−2に
示したステップS19において、車高調整制御中であることを示すフラグFに1を立てた
後に実行される。
【0059】
まず、ステップS41では、サスペンション制御装置20から車高センサ23の検出値
hを所定時間Δth毎に取り込む処理を開始し、続くステップS42では、取得した車高
センサ23の検出値hが、車高調整(上昇)範囲の上限値Hmaxになったか否かを判断
し、車高センサ23の検出値hが上限値Hmaxになっていないと判断すればステップS
43に進む。
【0060】
ステップS43では、取得した検出値hから車高の上昇速度Vh=(hn−hn-1)/
Δthを算出する処理を行い、その後ステップS44に進む。なお、hnは、今回(最も
新しい)の検出値、hn-1は、前回の検出値を示している。
【0061】
ステップS44では、車高の上昇速度Vhが、ロック板41の移動速度V以上であるか
否かを判断し、車高の上昇速度Vhが、ロック板41の移動速度V以上ではない、すなわ
ち、車高の上昇速度Vhが、ロック板41の移動速度Vより小さいと判断すればステップ
S45に進む。
【0062】
ステップS45では、ロック板41がサイドスカート51に接触するまでの予測時間T
1(=Cn/V)が、プレート駆動判定時間Tp以下であるか否かを判断し、予測時間T
1がプレート駆動判定時間Tp以下であると判断すればステップS46に進む。なお、プ
レート駆動判定時間Tpは、車両保護プレート36をサイドスカート51下端よりも下の
位置まで降下させるのに必要な処理時間を考慮して設定されている。
【0063】
ステップS46では、車両保護プレート36を駆動させる昇降駆動部37に、車両保護
プレート36の降下を開始させる制御信号を出力する処理を行い、その後処理終える。な
お、車両保護プレート36は、サイドスカート51下端よりも下に位置するところまで降
下されるようになっている。
【0064】
一方、ステップS42において、車高センサ23の検出値hが上限値Hmaxになった
と判断すればステップS45に進み、ステップS45では、接触までの予測時間T1(=
n/V)が、プレート駆動判定時間Tp以下であるか否かを判断し、予測時間T1がプ
レート駆動判定時間Tp以下であると判断すればステップS46に進み、車両保護プレー
ト36の降下を開始させる制御信号を出力する処理を行い、その後処理終える。
【0065】
また、ステップS44において、車高の上昇速度Vhが、ロック板41の移動速度V以
上であると判断した場合、または、ステップS45において、予測時間T1がプレート駆
動判定時間Tp以下ではないと判断した場合、ステップS47に進む。ステップS47で
は、ロック板41の移動速度Vが0(ロック板41が停止した状態)になったか否かを判
断し、移動速度Vが0になっていないと判断すればステップS41に戻り処理を繰り返す
一方、移動速度Vが0になったと判断すれば、その後処理を終える。
【0066】
上記実施の形態(2)に係る車両制御装置10によれば、自車両の車高を調整する制御
のみでは、自車両の底部(車体52やサイドスカート51)へのロック板41の接触が避
けられないと判断された場合に、自車両の底部に昇降可能に配設された車両保護プレート
36を、車体52やサイドスカート51が損傷を受けない下方位置まで降下させるので、
車両保護プレート36とロック板41とを接触させることにより、車体52やサイドスカ
ート51がロック板41と接触して損傷する現象をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態(1)に係る車両制御装置が採用された車載システムの概略概略を示したブロック図である。
【図2】表示部に表示された、車高調整制御を行う場合の各種の条件設定を行う画面の表示例である。
【図3−1】実施の形態(1)に係る車両制御装置におけるマイコンが行う処理動作を示したフローチャートである。
【図3−2】実施の形態(1)に係る車両制御装置におけるマイコンが行う処理動作を示したフローチャートである。
【図4】車載カメラの向きが、車両の底部周辺を撮影可能な状態に変更された状態を模式的に示した側面図である。
【図5】車載カメラの向きが、車両の底部周辺を撮影可能な状態に変更された後に、車載カメラ1で撮影された画像の一例である。
【図6】実施の形態(1)に係る車両制御装置におけるマイコンが行う別の処理動作を示したフローチャートである。
【図7】実施の形態(2)に係る車両制御装置が採用された車載システムの概略概略を示したブロック図である。
【図8】実施の形態(2)に係る車両制御装置におけるマイコンが行う処理動作を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
1 車載カメラ
10、10A 車両制御装置
11、11A マイコン
20 サスペンション制御装置
21 エアバネ
22 ハイトコントロールバルブ
23 車高センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が駐車スペースに駐車された場合に、前記自車両の底部周辺の撮像データを取得
する撮像データ取得手段と、
該取得した撮像データに基づいて、駐車車両の不正出庫を阻止するために駐車スペース
に設置された出庫阻止手段の動作と、前記自車両の底部との関係を示す情報を演算する演
算手段と、
該演算手段により求められた前記情報に基づいて、前記自車両の底部が前記出庫阻止手
段の動作によって損傷を受けないように、前記自車両の車高を調整する制御を行う車高制
御手段とを備えていることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記演算手段が、前記自車両の底部に前記出庫阻止手段が接触するまでの予測時間を算
出するものであり、
前記車高制御手段が、前記予測時間と、車高調整可能な車高調整手段に対する車高制御
指示から車高が上昇し始めるまでに必要な処理時間が考慮された制御開始判定時間とが、
所定の関係を満たした場合に、前記車高調整手段に対する車高制御を開始するものである
ことを特徴とする請求項1記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記自車両の底部に前記出庫阻止手段を接触させないように、前記自車両の底部に昇降
可能に配設された車両底部保護手段の昇降制御を行う昇降制御手段を備えていることを特
徴とする請求項1又は請求項2記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記車高制御手段による、前記自車両の車高を調整する制御のみでは、前記自車両の底
部への前記出庫阻止手段の接触が避けられないと判断された場合に、
前記昇降制御手段が、前記車両底部保護手段の昇降制御を行うものであることを特徴と
する請求項3記載の車両制御装置。
【請求項5】
自車両が駐車スペースに駐車された場合に、前記自車両の底部周辺の撮像データを取得
する撮像データ取得ステップと、
該取得した撮像データに基づいて、駐車車両の不正出庫を阻止するために駐車スペース
に設置された出庫阻止手段の動作と、前記自車両の底部との関係を示す情報を演算する演
算ステップと、
該演算により求められた前記情報に基づいて、前記自車両の底部が前記出庫阻止手段の
動作によって損傷を受けないように、前記自車両の車高を調整する制御を行う車高制御ス
テップとを含んでいることを特徴とする車両制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−12696(P2009−12696A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179217(P2007−179217)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】