説明

車両周辺監視装置および運転支援装置

【課題】道路上での車両の走行位置を良好に監視することができる車両周辺監視装置、および、識別された車線に関連した運転支援を実行することができる運転支援装置を提供する。
【解決手段】走行車線識別部45は、検出部40によって検出された各道路区分線の画像上の位置に基づいて車両1が走行する走行車線を識別する。車両位置取得部47は、例えばGPS衛星から送信される情報に基づいて、車両1の現在位置を取得する。これにより、表示制御部50および音声案内部60は、運転者に対して大容量記憶部16のデータベース16aから抽出された現在位置データに対応する道路データと、車両1が走行する走行車線とに基づいた具体的な指示をすることができる。そのため、運転者は、目的地までの経路案内処理につき、車両1の走行する車線に応じた適切な指示を受けることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両周辺監視装置および運転支援装置に関するもので、特に、当該車両の走行する車線の監視、および、識別された車線に関連する運転支援処理に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、GPS(Global Positioning System)衛星からの送信信号等に基づいて検出される自車位置情報と、大容量記憶部に格納された地図情報を組み合わせることによって目的地までの経路案内を行うなど、車両の運転者の手助けをする車載システムが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この車載システムでは、自車両のおおよその位置は検出できても、例えば、道路に複数の車線が存在しているような場合に自車両がどの車線を走行しているかまでは識別することができなかった。したがって、車両が走行する車線に応じた運転支援処理を実行することができなかった。
【0004】
そこで、本発明では、道路上での車両の走行位置を良好に監視することができる車両周辺監視装置を提供することを第1の目的とする。
【0005】
また、識別された車線に関連した運転支援を実行することができる運転支援装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、車両に設置されており、車線を区分する道路区分線の撮像が可能な撮像部と、前記撮像部によって撮像された画像に含まれる各道路区分線の画像上の位置を検出する検出部と、前記各道路区分線の画像上の位置と画像上における前記車両の位置とに基づいて前記車両が走行する走行車線を識別する識別部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の車両周辺監視装置と、道路データと位置データとを関連付けて格納するデータベースを記憶可能な記憶部と、前記車両の現在位置データを取得可能な車両位置取得部と、前記データベースから前記現在位置データに対応する道路データを抽出するとともに、抽出された道路データと前記識別部によって識別された走行車線とに基づいて車線に関連した運転支援処理を実行する処理部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3の発明は、車両に設置されており、道路の両側外方に前記道路に沿ってそれぞれ配設される構造物を撮像可能な撮像部と、前記撮像部によって撮像された画像に含まれる各構造物の画像上の位置を検出する検出部と、道路データと位置データとを関連付けて格納するデータベースを記憶可能な記憶部と、前記車両の現在位置データを取得可能な車両位置取得部と、前記データベースから前記現在位置データに対応する道路データを抽出するとともに、抽出された道路データと、前記各構造物の画像上の位置と、画像上における前記車両の位置とに基づいて前記車両が走行する走行車線を識別する識別部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4の発明は、請求項3に記載の車両周辺監視装置と、前記現在位置データに対応する道路データと、前記識別部によって識別された走行車線とに基づいて車線に関連した運転支援処理を実行する処理部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5の発明は、請求項2または請求項4に記載の運転支援装置において、前記処理部は、前記運転支援処理として、前記抽出された道路データと前記識別された走行車線とに基づいた表示によって経路案内処理を実行することを特徴とする。
【0011】
また、請求項6の発明は、請求項2または請求項4に記載の運転支援装置において、前記運転支援処理として、前記処理部は、前記抽出された道路データと前記識別された走行車線とに基づき、音声によって経路案内を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1および請求項2に記載の発明によれば、検出された各道路区分線の位置から車両が走行する走行車線を識別することができる。
【0013】
特に、請求項2に記載の発明によれば、識別部によって識別された走行車線に関する情報と、現在位置データに対応する道路データとに基づき、運転支援処理を実行することができる。そのため、車両の運転者は、目的地までの経路案内につき、車両の走行する車線に応じた適切な指示を受けることが可能となる。
【0014】
また、請求項3および請求項4に記載の発明によれば、現在位置データに対応する道路データと、道路の両側外方に前記道路に沿ってそれぞれ配設される構造物の位置とから車両の走行する走行車線を識別することができる。
【0015】
特に、請求項4に記載の発明によれば、識別部によって識別された走行車線に関する情報と、現在位置データに対応する道路データとに基づき、運転支援処理を実行することができる。そのため、車両の運転者は、目的地までの経路案内につき、車両の走行する車線に応じた適切な指示を受けることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
<1.車両周辺監視装置の構成>
図1は、本実施の形態における車両周辺監視装置5を搭載可能な車両1の一例を示す上面図である。図2は、車両周辺監視装置5の機能構成を例示するブロック図である。なお、図1および以降の各図には、それらの方向関係を明確にするため、必要に応じて前後方向、および左右方向を示す座標軸が付されている。
【0018】
車両周辺監視装置5は、車両1が複数の車線を有する道路を走行する際に、その車両1が走行する走行車線を識別する装置である。また、車両周辺監視装置5は、識別された走行車線に基づいて車線に関連した運転支援処理を実行することができ、運転支援装置5としても使用される。
【0019】
図1および図2に示すように、車両周辺監視装置5は、主として、前方カメラ31と、後方カメラ32と、検出部40と、大容量記憶部16と、走行車線識別部45と、車両位置取得部47と、表示制御部50と、音声案内部60と、を備える。
【0020】
前方カメラ31および後方カメラ32は、車両1の前部および後部に取り付けられた撮像部である。図1に示すように、前方カメラ31は、車両1の前方につき、所定の広い撮像範囲31aを撮像することができる。また同様に、後方カメラ32は、車両1の後方につき、所定の広い撮像範囲32aを撮像することができる。そして、各カメラ31、32で撮像された画像は、画像入力部30に入力され、車両1の室内に設置された表示部51に表示される。
【0021】
図3は、車両1が複数(図3では、3本)の車線を有する道路を前方向に走行している場合に、前方カメラ31によって撮像された画像の一例を示す。なお、後方カメラ32によっても、同様な画像を取得することができる。図3に示すように、この画像には、道路70と路側帯74(74a、74b)との境界を示す路側線71(71a、71b)と、各車線73(73a〜73c)を区分する車線区分線72(72a、72b)と、中央分離帯75および防音壁76を構成する構造物と、が含まれる。
【0022】
すなわち、図3に示すように、路側線71および車線区分線72は、道路70上に設けられており、道路70に沿って延伸する線である。また、中央分離帯75および防音壁76は、道路70の両側外方に、この道路70に沿ってそれぞれ配設される構造物である。なお、本実施の形態では、路側線71および車線区分線72を総称して道路区分線と呼ぶことにする。
【0023】
検出部40は、例えばパターンマッチング等の画像処理を施すことによって、画像から各道路区分線(路側線71および車線区分線72)の位置や各構造物(中央分離帯75、防音壁76)の位置を検出する。すなわち、検出部40は、各道路区分線や各構造物に関して、画像上の位置を検出することができる。
【0024】
また、走行車線識別部45は、検出部40によって検出された各道路区分線の画像上の位置から車両1が走行する走行車線を識別する。すなわち、運転手は、走行車線識別部45により、車両1の走行車線に関する情報を取得することが可能となる。
【0025】
ここで、前方カメラ31および後方カメラ32は、車両1の幅方向(左右方向)の略中央であって、各カメラ31、32の光軸が車両1の進行方向と略平行となるように設けられる。また、各車線73は、対応する路側線71および車線区分線72に挟まれる領域として求められる。
【0026】
したがって、走行車線識別部45は、各道路区分線の画像上の位置から求められる車線のうち左右方向から見て画像上の略中央に位置する車線を、車両1が走行する走行車線であると判断することができる。すなわち、走行車線識別部45は、各道路区分線の画像上の位置と、画像上における車両の位置とに基づいて、車両1が走行する走行車線を識別する。
【0027】
車両位置取得部47は、例えばGPS衛星から送信される情報に基づいて、車両1の現在位置データ(経度および緯度)を取得することができる。また、大容量記憶部16には、道路データのような地図情報と車両1の位置データとを関連付けて格納するデータベースが記憶される。ここで、道路データとは、対応する位置における道路70の形状に関するデータであり、例えば、その位置における道路70の車線数および道路幅等が該当する。また、交差点における道路形状(例えば、右折レーン、直進レーン、および左折レーンの配置状況)も、道路データとしてデータベースに格納される。
【0028】
表示制御部50および音声案内部60は、運転者に対して、データベース16aから抽出された現在位置データに対応する道路データと、車両1が走行する走行車線とに基づいて車線に関連した運転支援処理を実行する処理部である。
【0029】
例えば、車両1が図3に示す道路の中央車線73bを走行している場合において、道路上の所定の施設(例えば、インターチェンジやサービスエリア)に移動するために一番左の車線73aに車線変更する必要が生じた場合、表示制御部50および音声案内部60は、車線に関連した運転支援処理として、以下のような処理を実行する。
【0030】
すなわち、表示制御部50は、現在走行中の車線73が中央車線73bであること、および、中央車線73bから見て1つ左の車線73aに車線変更することを促す表示を表示部51にする。また、音声案内部60は、現在走行中の車線73が中央車線73bであること、および、中央車線73bから見て1つ左の車線73aに車線変更することを音声によって促す。
【0031】
これにより、表示制御部50および音声案内部60は、車両1の運転手に対して、車両1が走行する走行車線に基づいた具体的な指示をすることができる。そのため、運転者は表示制御部50および音声案内部60によって、目的地までの経路案内処理の実行につき、適切な指示を受けることが可能となる。
【0032】
RAM13は、読み書き自在のメモリ(記憶部)である。大容量記憶部16は、DVD(Digital Versatile Disk)やCD(Compact Disc)に記録されたデータを読み出すことができる。本実施の形態では、このDVDやCDに道路データと車両1の位置データとを関連付けて格納するデータベース16aが保存される。なお、大容量記憶部16としては、シリコンディスクドライブやハードディスクドライブ等のような記憶容量の大きな素子によって構成してもよい。
【0033】
ROM12は、読出し専用メモリーであり、MPU11は、ROM12に格納されたプログラムに従った制御を実行する。また、MPU11は、ROM12、RAM13、大容量記憶部16、画像入力部30、検出部40、走行車線識別部45、車両位置取得部47、および表示制御部50等と信号線15を介して電気的に接続される。したがって、MPU11は、このプログラムに従って、各道路区分線の位置検出処理や車両1が走行する車線の識別処理等を所定のタイミングで実行することができる。
【0034】
<2.本実施の形態の車両周辺監視装置の利点>
以上のように、本実施の形態の車両周辺監視装置(運転支援装置)5は、走行車線識別部45によって複数の車線73から車両1が走行する走行車線を識別することができる。また、車両位置取得部47によって車両1の現在位置を取得することができる。これにより、表示制御部50および音声案内部60は、車両1が走行する走行車線に基づいた具体的な指示をすることができる。そのため、運転者は、目的地までの経路案内の実行につき、車両1の走行する車線に応じた適切な指示を受けることが可能となる。
【0035】
<3.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0036】
(1)本実施の形態において、車両1が走行する走行車線は、道路区分線の画像上の位置に基づいて識別されるが、走行車線の識別処理はこれに限定されるものでなく、例えば、以下の手順によって実行してもよい。
【0037】
すなわち、前方カメラ31または後方カメラ32によって撮像された画像から、中央分離帯75および防音壁76のような道路の両側外方に道路に沿って配設される構造物の画像上の位置を検出して、画像上における道路70部分の抽出を行う。次に、車両1の現在位置に対応する道路データをデータベース16aから抽出して、現在位置における道路70の車線数を取得する。
【0038】
そして、抽出された道路データ(車線数)と、画像上における道路70部分の位置とから、車両1が走行する車線を判断する。具体的には、抽出された道路70部分を左右方向に車線数に応じて分割する。例えば、現在位置における車線数が3本の場合、抽出された道路70部分を左右方向に3つに分割する。続いて、分割された各道路部分(車線に対応)のうち左右方向から見て画像上の略中央に位置するものを、車両1の走行車線であると判断する。
【0039】
これにより、道路70上に道路区分線が明瞭に描画されていない場合や、積雪等により道路区分線が視認できない場合であっても、車両1が走行する走行車線を良好に識別することができる。
【0040】
(2)また、走行車線の識別処理は、以下の手順によって実行してもよい。すなわち、前方カメラ31または後方カメラ32によって撮像された画像から、各道路区分線の画像上の位置と、中央分離帯75および防音壁76の画像上の位置と、を検出する。次に、車両1の現在位置に対応する道路データをデータベース16aから抽出して、現在位置における道路70の車線数を取得する。
【0041】
そして、各道路区分線の画像上の位置から求められる車線のうち左右方向から見て画像の略中央に位置する車線と、抽出された道路データ(車線数)と画像上における道路70部分の位置とから識別される車線とが一致する場合に、走行車線識別部45は、この一致する車線を車両1の走行車線であると判断する。これにより、さらに精度良く車両1が走行する走行車線を求めることができる。
【0042】
(3)さらに、本実施の形態において、データベース16aは大容量記憶部16に格納されるものとして説明したが、これに限定されるものでない。RAM13に十分な記憶容量が確保されている場合、データベース16aは、大容量記憶部16でなくRAM13に格納されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態における車両周辺監視装置を搭載可能な車両の一例を示す上面図である。
【図2】車両周辺監視装置の機能構成を例示するブロック図である。
【図3】表示部に表示された画像の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 車両
5 車両周辺監視装置(運転支援装置)
10 制御部
13 RAM
16 大容量記憶部
16a データベース
31 前方カメラ
32 後方カメラ
40 検出部
45 走行車線識別部
47 車両位置取得部
50 表示制御部
51 表示部
60 音声案内部
70 道路
71(71a、71b) 路側線
72(72a、72b) 車線区分線
73(73a〜73c) 車線
74(74a、74b) 路側帯
75 中央分離帯
76 防音壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 車両に設置されており、車線を区分する道路区分線の撮像が可能な撮像部と、
(b) 前記撮像部によって撮像された画像に含まれる各道路区分線の画像上の位置を検出する検出部と、
(c) 前記各道路区分線の画像上の位置と画像上における前記車両の位置とに基づいて前記車両が走行する走行車線を識別する識別部と、
を備えることを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項2】
(a) 請求項1に記載の車両周辺監視装置と、
(b) 道路データと位置データとを関連付けて格納するデータベースを記憶可能な記憶部と、
(c) 前記車両の現在位置データを取得可能な車両位置取得部と、
(d) 前記データベースから前記現在位置データに対応する道路データを抽出するとともに、抽出された道路データと前記識別部によって識別された走行車線とに基づいて車線に関連した運転支援処理を実行する処理部と、
を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項3】
(a) 車両に設置されており、道路の両側外方に前記道路に沿ってそれぞれ配設される構造物を撮像可能な撮像部と、
(b) 前記撮像部によって撮像された画像に含まれる各構造物の画像上の位置を検出する検出部と、
(c) 道路データと位置データとを関連付けて格納するデータベースを記憶可能な記憶部と、
(d) 前記車両の現在位置データを取得可能な車両位置取得部と、
(e) 前記データベースから前記現在位置データに対応する道路データを抽出するとともに、抽出された道路データと、前記各構造物の画像上の位置と、画像上における前記車両の位置とに基づいて前記車両が走行する走行車線を識別する識別部と、
を備えることを特徴とする車両周辺監視装置。
【請求項4】
(a) 請求項3に記載の車両周辺監視装置と、
(b) 前記現在位置データに対応する道路データと、前記識別部によって識別された走行車線とに基づいて車線に関連した運転支援処理を実行する処理部と、
を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項5】
請求項2または請求項4に記載の運転支援装置において、
前記処理部は、前記運転支援処理として、前記抽出された道路データと前記識別された走行車線とに基づいた表示によって経路案内処理を実行することを特徴とする運転支援装置。
【請求項6】
請求項2または請求項4に記載の運転支援装置において、
前記処理部は、前記運転支援処理として、前記抽出された道路データと前記識別された走行車線とに基づき、音声によって経路案内処理を実行することを特徴とする運転支援装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−300534(P2006−300534A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118165(P2005−118165)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】