説明

車両挙動制御装置

【課題】 車両の絶対的な挙動と、相対的な挙動の両方を適正に制御可能な車両挙動制御装置を提供すること。
【解決手段】 ブレーキペダルとは別に設けられマスタシリンダを作動させてホイルシリンダを加圧する第1の昇圧部と、マスタシリンダを介さずにホイルシリンダを加圧する第2の昇圧部と、昇圧部を制御するコントロールユニットと、を備え、コントロールユニットには、自車両と周囲との相対的な関係に基づく第1の動作指令と、自車両の絶対的な挙動に基づく第2の動作指令とが入力され、入力された指令が第1の動作指令の場合、第1の昇圧部を作動させると共に、入力された指令が第2の動作指令の場合、第2の昇圧部を作動させ、第1の動作指令が入力されて前記第1の昇圧部が作動しているときに第2の動作指令が入力された場合、第1の昇圧部に加え、第2の昇圧部を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の操作を補助するとともに、車両挙動を検出して安定方向へ導く車両挙動制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両挙動制御装置の技術として、例えば特許文献1に記載の技術が知られている。この公報では、車両がオーバーステア状態またはアンダーステア状態のときに、運転者のブレーキ操作に関わり無くマスタシリンダ圧を制御可能な制御ブースタを駆動し、各輪のホイルシリンダ圧を制御して車両挙動制御を行っている。
【特許文献1】特開2000-255405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、制御対象となるホイルシリンダとマスタシリンダとが連通するため、ホイルシリンダの液圧変動がブレーキペダルに伝わってしまう。ホイルシリンダの液圧が高く、液圧の変化速度が速い状況においては、運転者がブレーキペダル操作を行ったときのペダルフィールが悪いという問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、自動でホイルシリンダの液圧を制御しているときに運転者がブレーキペダル操作を行った場合において、ペダルフィールを向上させることが可能な車両挙動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の車両挙動制御装置では、ブレーキペダルの操作に応じて作動してホイルシリンダを加圧するマスタシリンダと、ブレーキペダルとは別に設けられ前記マスタシリンダを作動させてホイルシリンダを加圧する第1の昇圧部と、前記マスタシリンダを介さずに前記ホイルシリンダを加圧する第2の昇圧部と、前記昇圧部を制御するコントロールユニットと、を備え、前記コントロールユニットには、自車両と周囲との相対的な関係に基づく第1の動作指令と、自車両の絶対的な挙動に基づく第2の動作指令とが入力され、入力された指令が第1の動作指令の場合、前記第1の昇圧部を作動させると共に、入力された指令が第2の動作指令の場合、前記第2の昇圧部を作動させ、第1の動作指令が入力されて前記第1の昇圧部が作動しているときに第2の動作指令が入力された場合、第1の昇圧部に加え、第2の昇圧部を作動させることを特徴とする。
【0006】
よって、車両の絶対的な挙動と相対的な挙動の両方を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の最良の実施形態について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
〔車両のシステム構成〕
図1は、実施例1の車両挙動制御装置を備えた車両の全体構成を表すシステム図である。マスタシリンダ圧を任意に制御する制御ブースタ1と、各車輪FL,FR,RL,RRのホイルシリンダ圧を任意に制御するブレーキユニット31と、これら各ユニットに指令信号を出力するコントロールユニット32を備えている。
【0009】
コントロールユニット32は、ブレーキスイッチBS,ヨーレイトセンサ33,前後加速度センサ34,横加速度センサ35,舵角センサ36,カメラ37,車輪速センサ38からの信号を入力する。そして、入力された各種センサ信号に基づいて、各ユニットに対し指令信号を出力する。
【0010】
〔ブレーキ配管の構成〕
図2は実施例1の車両挙動制御装置を適用したブレーキシステムの液圧回路図である。このブレーキシステムにおいては、P系統とS系統との2系統からなる、X配管と呼ばれる配管構造となっている。
【0011】
P系統には、左前輪のホイルシリンダW/C(FL)、右後輪のホイルシリンダW/C(RR)が接続され、S系統には、右前輪のホイルシリンダW/C(FR)、左後輪のホイルシリンダW/C(RL)が接続されている。また、P系統、S系統それぞれに、ポンプPPとポンプPSとが設けられ、このポンプPPとポンプPSは、1つのモータMによって駆動される。尚、ポンプは、プランジャポンプやギヤポンプ等が適宜搭載される。コストの面から言えば、プランジャポンプが望ましく、滑らかさ(制御性)から言えば、ギヤポンプが望ましい。
【0012】
ブレーキペダルBPには、ブレーキペダルBPの操作状態を検出するブレーキスイッチBSが設けられている。ブレーキペダルBPは、制御ブースタ1を介してマスタシリンダM/Cに接続されている。
【0013】
マスタシリンダM/CとポンプPP,PS(以下、ポンプPと記載する)の吸入側とは、管路11P,11S(以下、管路11と記載する)によって接続されている。この各管路11上には、常閉型の電磁弁であるゲートインバルブ2P,2Sが設けられている。マスタシリンダM/Cとゲートインバルブ2Pとの間には、マスタシリンダM/Cの圧力を検出する圧力センサPMCが設けられている。
【0014】
また、管路11上であって、ゲートインバルブ2P,2S(以下、ゲートインバルブ2と記載する)とポンプPとの間にはチェックバルブ6P,6S(以下、チェックバルブ6と記載する)が設けられ、この各チェックバルブ6は、ゲートインバルブ2からポンプPへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0015】
各ポンプPの吐出側と各ホイルシリンダW/Cとは、管路12P,12S(以下、管路12と記載する)によって接続されている。この各管路12上には、各ホイルシリンダW/Cに対応する常開型の電磁弁であるソレノイドインバルブ4FL,4RR,4FR,4RL(以下、ソレノイドインバルブ4)が設けられている。
【0016】
また、各管路12上であって、各ソレノイドインバルブ4とポンプPとの間にはチェックバルブ7P,7S(以下、チェックバルブ7と記載する)が設けられて、この各チェックバルブ7は、ポンプPからソレノイドインバルブ4へ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0017】
更に、各管路12には、各ソレノイドインバルブ4を迂回する管路17FL,17RR,17FR,17RL(以下、管路17と記載する)が設けられ、この管路17には、チェックバルブ10FL,10RR,10FR,10RL(以下、チェックバルブ10と記載する)が設けられている。この各チェックバルブ10は、ホイルシリンダW/CからポンプPへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0018】
マスタシリンダM/Cと管路12とは管路13P,13S(以下、管路13と記載する)によって接続され、管路12と管路13とはポンプPとソレノイドインバルブ4との間において合流する。この各管路13上には、常開型の電磁弁であるゲートアウトバルブ3P,3S(以下、ゲートアウトバルブ3と記載する)が設けられている。
【0019】
また各管路13には、各ゲートアウトバルブ3を迂回する管路18P,18S(以下、管路18と記載する)が設けられ、この管路18には、チェックバルブ9P,9S(以下、チェックバルブ9と記載する)が設けられている。この各チェックバルブ9は、マスタシリンダM/C側からホイルシリンダW/Cへ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0020】
ポンプPの吸入側にはリザーバ16P,16S(以下、リザーバ16と記載する)が設けられ、このリザーバ16とポンプPとは管路15P,15S(以下、管路15と記載する)によって接続されている。リザーバ16とポンプPとの間にはチェックバルブ8P,8S(以下、チェックバルブ8と記載する)が設けられて、この各チェックバルブ8は、リザーバ16からポンプPへ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0021】
ホイルシリンダW/Cと管路15とは管路14P,14S(以下、管路14と記載する)によって接続され、管路14と管路15とはチェックバルブ8とリザーバ16との間において合流する。この各管路14には、それぞれ常閉型の電磁弁であるソレノイドアウトバルブ5FL,5RR,5FR,5RLが設けられている。
【0022】
図3は、第1及び第2の液圧昇圧機能の動作の状態と、状態が遷移する条件とを示した状態遷移図である。
【0023】
状態0は、後述する図4のステップS1においてセットされる初期状態であり、通常ブレーキ状態である。
状態1は、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止した状態である。
状態2は、制御ブースタ1の駆動を禁止し、液圧ポンプPの駆動を許可した状態である。
状態3は、制御ブースタ1と液圧ポンプPの駆動を許可した状態である。
【0024】
状態0から状態1へと遷移する条件Aは、自車両と周囲との相対的な関係に基づく第1の動作指令が入力されたときである。
状態1から状態0へと遷移する条件Bは、自車両と周囲との相対的な関係に基づく第1の動作指令の入力がなくなったときである。
【0025】
状態0から状態2へと遷移する条件Cは、自車両の挙動に基づく第2の動作指令が入力されたときである。
状態2から状態0へと遷移する条件Dは、自車両の挙動に基づく第2の動作指令の入力がなくなったときである。
【0026】
状態1から状態3へと遷移する条件Eは、状態1において自車両の挙動に基づく第2の動作指令が入力されたときである。
状態3から状態1へと遷移する条件Fは、状態3において自車両の挙動に基づく第2の動作指令の入力がなくなったときである。
【0027】
状態3から状態2へと遷移する条件Gは、状態3において自車両と周囲との相対的な関係に基づく第1の動作指令の入力がなくなったときである。
【0028】
図4は、車両挙動制御を実現するフローチャートである。
ステップS1では、各変数の初期値をセットする。ここで、各変数とは、制御に用いられる各種フラグや、タイマ値、車両モデル演算係数等を表す。
ステップS2では、各種センサの検出値を読み込む。
ステップS3では、運転者の操作状態を判断する。
ステップS4では、前方、側方、後方に存在する車両、歩行者、ガードレール、標識等を認識し、自車両との相対位置及び相対速度を演算する。
ステップS5では、運手者の操作状態と、自車両の周辺環境から、衝突の危険度や安全走行からの逸脱の危険度を判断する。
ステップS6では、危険を回避するための車両の動作指令を演算する。
【0029】
ステップS7では、オーバーステアやアンダーステアといった自車両の挙動を判断する。
ステップS8では、車両挙動を安定方向に導くための車両の動作指令を演算する。
ステップS9では、ステップS6で演算した動作指令と、ステップS8で演算した動作指令に基づき、駆動する液圧昇圧機能を選択する。尚、液圧昇圧機能選択については後の図5〜図8において説明する。
ステップS10では、動作指令から各輪のホイルシリンダ液圧指令を演算するとともに、制御ブースタ液圧指令を演算する。尚、液圧指令生成については後の図9において説明する。
ステップS11では、運転者のブレーキペダル操作量を検出する。尚、ペダル操作量検出については後の図10において説明する。
ステップS12では、制御ブースタ液圧指令に基づき、制御ブースタ1に指令信号を出力する。尚、制御ブースタ駆動については後の図11において説明する。
ステップS13では、各輪のホイルシリンダ液圧指令に基づいて、モータ及びバルブに指令信号を出力する。尚、モータ・バルブ駆動については後の図12において説明する。
ステップS14では、車両挙動制御の終了を判断する。
【0030】
〔液圧昇圧機能選択について〕
次に、ステップS9における液圧昇圧機能選択における基本的な制御内容について説明する。図5から図8は、液圧昇圧機能選択を表すフローチャートである。以下、車両横方向の運動を制御するパラメータとしてヨーモーメントM(Nm)もしくはヨーレイトγ(rad/s)を用い、車両前後方向の運動を制御するパラメータとして減速度G(m/s2)もしくは制動力F(N)を用い、車両横方向と車両前後方向の両方を、いずれか一方のパラメータを用いて組み合わせた例を示す。
【0031】
実施例1におけるヨーレイトセンサ33,前後Gセンサ34,横Gセンサ35は、ヨーレイトγ及び減速度Gを直接検出するものであり、ヨーモーメントM(=I・γ)や、制動力F(=m・G)は間接的にしか得ることができない。ここで、Iは車体の慣性モーメント(kg・m2)、mは車体の質量(kg)である。すなわち、パラメータの質の違いに基づく制御ロジックの違いがあるため、各組み合わせについての特徴と併せて説明する。
【0032】
図5は、ステップS6とステップS8で演算された動作指令が、少なくとも車体の減速度指令Gxと車体のヨーモーメント指令Mとを含む場合のフローチャートである。すなわち、各種センサにより直接検出できる減速度Gと、直接検出できないヨーモーメントMとを組み合わせた例である。
【0033】
ステップS100では、ステップS6で演算された減速度指令Gx1の有無を判断する。肯定判断、即ち減速度指令Gx1がゼロという判断が行われたときにはステップS101に進み、否定判断、即ち減速度指令Gx1がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS104に進む。
【0034】
ステップS101では、ステップS6で演算されたヨーモーメント指令M1の有無を判断する。肯定判断、即ちヨーモーメント指令M1がゼロという判断が行われたときにはステップS102へ進み、否定判断、即ちヨーモーメント指令M1がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS104に進む。
【0035】
ステップS102では、ステップS8で演算された減速度指令Gx2の有無を判断する。肯定判断、即ち減速度指令Gx2がゼロという判断が行われたときにはステップS103に進み、否定判断、即ち減速度指令Gx2がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS107へ進み、状態2(制御ブースタ1の駆動を禁止、液圧ポンプPの駆動を許可)を選択し、ステップS200に進む。
【0036】
ステップS103では、ステップS8で演算されたヨーモーメント指令M2の有無を判断する。肯定判断、即ちヨーモーメント指令M2がゼロという判断が行われたときにはステップS106へ進み、状態0(制御ブースタ1の駆動を禁止、液圧ポンプPの駆動を許可)を選択し、ステップS200に進む。否定判断、即ちヨーモーメント指令M2がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS107に進む。
【0037】
ステップS104では、ステップS8で演算された減速度指令Gx2の有無を判断する。肯定判断、即ち減速度指令Gx2がゼロという判断が行われたときにはステップS105に進み、否定判断、即ち減速度指令Gx2がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS109に進み、状態3(制御ブースタ1の駆動を許可、液圧ポンプPの駆動を許可)を選択し、ステップS200に進む。
【0038】
ステップS105では、ステップS8で演算されたヨーモーメント指令M2の有無を判断する。肯定判断、即ちヨーモーメント指令M2がゼロという判断が行われたときにはステップS108に進み、状態1(制御ブースタ1の駆動を許可、液圧ポンプPの駆動を禁止)を選択し、ステップS200に進む。否定判断、即ちヨーモーメント指令M2がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS109に進む。
【0039】
このように、容易に計測可能な減速度を動作指令にすることで、運転者の制動意思である前後方向の車両挙動制御の精度が向上する。
【0040】
図6は、ステップS6とステップS8で演算された動作指令が、少なくとも車体の減速度指令Gxと車体のヨーレイト指令γとを含む場合のフローチャートである。すなわち、各種センサにより直接検出できる減速度Gと、ヨーレイトγを組み合わせた例である。
【0041】
ステップS110では、ステップS6で演算された減速度指令Gx1の有無を判断する。肯定判断、即ち減速度指令Gx1がゼロという判断が行われたときにはステップS111に進み、否定判断、即ち減速度指令Gx1がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS114に進む。
【0042】
ステップS111では、ステップS6で演算されたヨーレイト指令γ1の有無を判断する。肯定判断、即ちヨーレイト指令γ1がゼロという判断が行われたときにはステップS112に進み、否定判断、即ちヨーレイト指令γ1がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS114に進む。
【0043】
ステップS112では、ステップS8で演算された減速度指令Gx2の有無を判断する。肯定判断、即ち減速度指令Gx2がゼロという判断が行われたときにはステップS113に進み、否定判断、即ち減速度指令Gx2がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS117に進み、状態2(制御ブースタ1の駆動を禁止、液圧ポンプPの駆動を許可)を選択し、ステップS200に進む。
【0044】
ステップS113では、ステップS8で演算されたヨーレイト指令γ2の有無を判断する。肯定判断、即ちヨーレイト指令γ2がゼロという判断が行われたときにはステップS116に進み、状態0(制御ブースタ1の駆動を禁止、液圧ポンプPの駆動を許可)を選択し、ステップS200に進む。否定判断、即ちヨーレイト指令γ2がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS117に進む。
【0045】
ステップS114では、ステップS8で演算された減速度指令Gx2の有無を判断する。肯定判断、即ち減速度指令Gx2がゼロという判断が行われたときにはステップS115に進み、否定判断、即ち減速度指令Gx2がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS119に進み、状態3(制御ブースタ1の駆動を許可、液圧ポンプPの駆動を許可)を選択し、ステップS200に進む。
【0046】
ステップS115では、ステップS8で演算されたヨーレイト指令γ2の有無を判断する。肯定判断、即ちヨーレイト指令γ2がゼロという判断が行われたときにはステップS118に進み、状態1(制御ブースタ1の駆動を許可、液圧ポンプPの駆動を禁止)を選択し、ステップS200に進む。否定判断、即ちヨーレイト指令γ2がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS119に進む。
【0047】
このように、容易に計測可能な減速度とヨーレイトを動作指令にすることで、前後方向及び横方向の車両挙動制御の精度が向上する。
【0048】
図7は、ステップS6とステップS8で演算された動作指令が、少なくとも車体の制動力指令Fxと車体のヨーモーメント指令Mとを含む場合のフローチャートである。すなわち、各種センサにより直接検出できない制動力FとヨーモーメントMとを組み合わせた例である。
【0049】
ステップS120では、ステップS6で演算された制動力指令Fx1の有無を判断する。肯定判断、即ち制動力指令Fx1がゼロという判断が行われたときにはステップS121に進み、否定判断、即ち制動力指令Fx1がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS124に進む。
【0050】
ステップS121では、ステップS6で演算されたヨーモーメント指令M1の有無を判断する。肯定判断、即ちヨーモーメント指令M1がゼロという判断が行われたときにはステップS122に進み、否定判断、即ちヨーモーメント指令M1がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS124に進む。
【0051】
ステップS122では、ステップS8で演算された制動力指令Fx2の有無を判断する。肯定判断、即ち制動力指令Fx2がゼロという判断が行われたときにはステップS123に進み、否定判断、即ち制動力指令Fx2がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS127に進み、状態2(制御ブースタ1の駆動を禁止、液圧ポンプPの駆動を許可)を選択し、ステップS200に進む。
【0052】
ステップS123では、ステップS8で演算されたヨーモーメント指令M2の有無を判断する。肯定判断、即ちヨーモーメント指令M2がゼロという判断が行われたときにはステップS126に進み、状態0(制御ブースタ1の駆動を禁止、液圧ポンプPの駆動を許可)を選択し、ステップS200に進む。否定判断、即ちヨーモーメント指令M2がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS127に進む。
【0053】
ステップS124では、ステップS8で演算された制動力指令Fx2の有無を判断する。肯定判断、即ち制動力指令Fx2がゼロという判断が行われたときにはステップS125に進み、否定判断、即ち制動力指令Fx2がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS129に進み、状態3(制御ブースタ1の駆動を許可、液圧ポンプPの駆動を許可)を選択し、ステップS200に進む。
【0054】
ステップS125では、ステップS8で演算されたヨーモーメント指令M2の有無を判断する。肯定判断、即ちヨーモーメント指令M2がゼロという判断が行われたときにはステップS128に進み、状態1(制御ブースタ1の駆動を許可、液圧ポンプPの駆動を禁止)を選択し、ステップS200に進む。否定判断、即ちヨーモーメント指令M2がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS129に進む。
【0055】
このように、各種センサにより直接検出できない値を用いているため、センサ値を換算してフィードバックループを組むと、制御演算が煩雑となり、また、応答遅れを招く虞がある。そこで、上記パラメータを組み合わせた場合には、オープンループ制御構成として、動作指令に車両の前後方向の挙動指令である制動力指令と、横方向の挙動指令であるヨーモーメント指令とを用いることが望ましい。これにより、車両挙動制御を簡単に実現できる。
【0056】
図8は、ステップS6とステップS8で演算された動作指令が、少なくとも車体の制動力指令Fxと車体のヨーレイト指令γとを含む場合のフローチャートである。すなわち、各種センサにより直接検出できない制動力Fと、直接検出できるヨーレイトγとを組み合わせた例である。
【0057】
ステップS130では、ステップS6で演算された制動力指令Fx1の有無を判断する。肯定判断、即ち制動力指令Fx1がゼロという判断が行われたときにはステップS131に進み、否定判断、即ち制動力指令Fx1がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS134に進む。
【0058】
ステップS131では、ステップS6で演算されたヨーレイト指令γ1の有無を判断する。肯定判断、即ちヨーレイト指令γ1がゼロという判断が行われたときにはステップS132に進み、否定判断、即ちヨーレイト指令γ1がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS134に進む。
【0059】
ステップS132では、ステップS8で演算された制動力指令Fx2の有無を判断する。肯定判断、即ち制動力指令Fx2がゼロという判断が行われたときにはステップS133に進み、否定判断、即ち制動力指令Fx2がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS137に進み、状態2(制御ブースタ1の駆動を禁止、液圧ポンプPの駆動を許可)を選択し、ステップS200に進む。
【0060】
ステップS133では、ステップS8で演算されたヨーレイト指令γ2の有無を判断する。肯定判断、即ちヨーレイト指令γ2がゼロという判断が行われたときにはステップS136に進み、状態0(制御ブースタ1の駆動を禁止、液圧ポンプPの駆動を許可)を選択し、ステップS200に進む。否定判断、即ち、ヨーレイト指令γ2がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS137に進む。
【0061】
ステップS134では、ステップS8で演算された制動力指令Fx2の有無を判断する。肯定判断、即ち制動力指令Fx2がゼロという判断が行われたときにはステップS135に進み、否定判断、即ち制動力指令Fx2がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS139に進み、状態3(制御ブースタ1の駆動を許可、液圧ポンプPの駆動を許可)を選択し、ステップS200に進む。
【0062】
ステップS135では、ステップS8で演算されたヨーレイト指令γ2の有無を判断する。肯定判断、即ちヨーレイト指令γ2がゼロという判断が行われたときにはステップS138に進み、状態1(制御ブースタ1の駆動を許可、液圧ポンプPの駆動を禁止)を選択し、ステップS200に進む。否定判断、即ちヨーレイト指令γ2がゼロ以外という判断が行われたときにはステップS139に進む。
【0063】
このように、容易に計測可能なヨーレイトを動作指令にすることで、運転者の制動意思である横方向の車両挙動制御の精度が向上する。
【0064】
〔液圧指令生成について〕
次に、ステップS10における液圧指令生成について、基本的な制御内容について説明する。図9は液圧指令生成処理を表すフローチャートである。
【0065】
ステップS200では、ステップS9で選択された状態を判断する。肯定判断、即ち状態0であるときにはステップS202に進み、車両挙動制御を行う必要がないため、各輪の液圧指令P*(FL)〜(RR)に現在の液圧P(FL)〜(RR)をセットし、ステップS205に進む。否定判断、即ち状態0でないときにはステップS201に進む。
【0066】
ステップS201では、ステップS9で選択された状態を判断する。肯定判断、即ち状態1であるときにはステップS203に進み、ステップS6で演算された動作指令を満たす各輪の制動力を演算し、液圧に換算して各輪の液圧指令P*(FL)〜(RR)をセットする。否定判断、即ち状態1ではないときにはステップS204に進み、ステップS6及びステップS8で演算された動作指令を満たす各輪の制動力を演算し、液圧に換算して各輪の液圧指令P*(FL)〜(RR)をセットする。
【0067】
ステップS205では、ステップS9で選択された状態を判断する。肯定判断、即ち状態0であるときにはステップS208に進み、車両挙動制御を行う必要がないため、制御ブースタ液圧指令P*_mc=0にセットしてステップS209に進み、制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOSTER_REQ=0にリセットしてステップS300に進む。否定判断、即ち状態0ではないときにはステップS206に進む。
【0068】
ステップS206では、ステップS9で選択された状態を判断する。肯定判断、即ち状態1であるときにはステップS210に進み、制御ブースタ1を液圧供給源として車両挙動制御を行うため、制御ブースタ液圧指令P*_mcに各輪の液圧指令P*(FL)〜(RR)の最大値をセットしてステップS211に進み、制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOSTER_REQ=1にセットする。否定判断、即ち状態1ではないときにはステップS207に進む。
【0069】
ステップS207では、ステップS9で選択された状態を判断する。肯定判断、即ち状態2であるときにはステップS212に進み、制御ブースタ1の駆動が禁止であるため、制御ブースタ液圧指令P*_mc=0にセットしてステップS213に進み、制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOSTER_REQ=0にリセットする。否定判断、即ち状態2ではないときにはステップS214に進み、制御ブースタ液圧指令P*_mcには前回の制御ブースタ液圧指令値を継続してセットしてステップS215に進み、制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOSTER_REQ=1にセットする。
【0070】
〔ペダル操作量検出について〕
次に、ステップS11におけるペダル操作量検出について、基本的な制御内容について説明する。図10はペダル操作量検出処理を表すフローチャート、及びペダル操作量と信号との関係について示したものである。
PEDAL=0は、運転者によるブレーキペダルの操作がない状態である。
PEDAL=1は、自動ブレーキ制御圧未満のブレーキペダル操作がある状態である。
PEDAL=2は、自動ブレーキ制御圧以上のブレーキペダル操作がある状態である。
【0071】
ステップS300では、ブレーキスイッチの状態を判断する。肯定判断、即ち運転者によるブレーキペダル操作がなくブレーキスイッチがOFFという判断が行われたときにはステップS304に進み、後述する自動ブレーキ制御圧以上のブレーキペダル操作の検出に用いるカウンタCOUNT=0にリセットしてステップS312に進み、ペダル操作モードPEDAL=0にセットしてステップS400に進む。否定判断、即ち運転者がブレーキペダル操作を行ってブレーキスイッチがONという判断が行われたときにはステップS301に進む。
【0072】
ステップS301では、ステップS9で選択された状態を判断する。肯定判断、即ち状態0であるときにはステップS305に進み、カウンタCOUNT=0にリセットしてステップS313に進み、ペダル操作モードPEDAL=2にセットする。否定判断、即ち状態0ではないときにはステップS302に進む。
【0073】
ステップS302では、ステップS9で選択された状態を判断する。肯定状態、即ち状態2であるときにはステップS306に進み、カウンタCOUNT=0にリセットしてステップS309に進み、液圧ポンプ吐出側の上流圧P_up(P)〜(S)を算出し、ステップS310に進む。否定判断、即ち状態2ではないときにはステップS303に進む。
【0074】
ステップS310では、上流圧P_upとマスタシリンダ圧P_mcとの大小関係を判断する。肯定判断、即ちP_mc<P_upであり、運転者のペダル操作量が液圧ポンプによる制御圧よりも小さいという判断が行われたときにはステップS314に進み、ペダル操作モードPEDAL=1にセットする。否定判断、即ちP_mc≧P_upであり、運転者のペダル操作量が液圧ポンプによる制御圧以上であるという判断が行われたときにはステップS315に進み、ペダル操作モードPEDAL=2にセットする。
【0075】
ステップS303では、制御ブースタ液圧指令P*_mcとマスタシリンダ圧P_mcとの偏差と、予め定めた所定値αとの大小関係を判断する。肯定判断、即ちP_mc<P*_mc+αであり、運転者のペダル操作量が制御圧よりも小さいという判断が行われたときにはステップS307に進み、カウンタCOUNT=0にリセットしてステップS316に進み、ペダル操作モードPEDAL=1にセットする。否定判断、即ちP_mc≧P*_mc+αであり、制御圧以上に運転者がペダル操作量を行っている可能性があるという判断が行われたときにはステップS308に進み、カウンタCOUNTをインクリメントしてステップS311に進む。
【0076】
ステップS311では、カウンタCOUNTを用いて所定時間βが経過したか否かを判断する。ここでカウンタCOUNTを用いる理由は、制御ブースタ1は制御圧と運転者のペダル操作量とのセレクトハイでマスタシリンダ圧P_mcを発生する構造であり、運転者のペダル操作量が検出しにくい状況を補うためである。肯定判断、即ちCOUNT<βであるという判断が行われたときにはステップS317に進み、ペダル操作モードPEDAL=1にセットする。否定判断、即ちCOUNT≧βであるという判断が行われたときにはステップS318に進み、ペダル操作モードPEDAL=2にセットする。
【0077】
〔制御ブースタ駆動について〕
次に、ステップS12における制御ブースタ駆動の基本的な制御内容について説明する。図11は、制御ブースタ駆動処理を表すフローチャートである。
【0078】
ステップS400では、制御ブースタ駆動要求の有無を判断する。肯定判断、即ち制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOSTER_REQ=0という判断が行われたときにはステップS401に進み、電流指令をゼロにセットする。否定判断、即ち制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOTER_REQ=1という判断が行われたときにはステップS402に進み、制御ブースタ液圧指令P*_mcに基づき電流指令を演算・セットしてステップS403に進み、マスタシリンダ圧P*_mcが急激に変化することを防止するためにソフトランディング処理を行ってステップS500に進む。尚、制御ブースタ1の駆動方法は、例えば特開2002-255024号公報に開示しているためここでは省略する。また、ソフトランディング処理とは、最大値もしくは最小値に向けて状態を変化させるときに、変化終了間際における変化勾配を小さく制御することである。
【0079】
〔モータ・バルブ駆動〕
次に、ステップS13におけるモータ・バルブ駆動の基本的な制御内容について説明する。図12はモータ・バルブ駆動を表すフローチャートである。
【0080】
ステップS500では、ステップS9で選択された状態を判断する。肯定判断、即ち状態0であるときにはステップS502に進み、液圧ポンプ駆動要求フラグf_PUMP_REQ=0にリセットしてステップS503に進み、ゲートインバルブ2とゲートアウトバルブ3を非駆動としてステップS504に進み、ソレノイドインバルブ4とソレノイドアウトバルブ5を非駆動としてステップS511に進み、ホイルシリンダ圧が急激に変化することを防止するためにソフトランディング処理を行ってステップS512に進む。否定判断、即ち状態0ではないときにはステップS501に進む。
【0081】
ステップS501では、ステップS9で選択された状態を判断する。肯定判断、即ち状態1であるときにはステップS505に進み、液圧ポンプ駆動要求フラグf_PUMP_REQ=0にリセットしてステップS506に進み、ゲートインバルブ2とゲートアウトバルブ3を非駆動としてステップS507に進み、制御ブースタ液圧指令P*_mc、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)の信号に基づきゲートインバルブ2とゲートアウトバルブ3の制御量を決定してステップS510に進み、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)、各輪液圧P(FL)〜(RR)の信号に基づきソレノイドインバルブ4とソレノイドアウトバルブ5の制御量を決定してステップS511に進む。
【0082】
ステップS512では、液圧ポンプ駆動要求の有無を判断する。肯定判断、即ち液圧ポンプ駆動要求フラグf_PUMP_REQ=1という判断が行われたときにはステップS515に進み、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)、各輪液圧P(FL)〜(RR)の信号に基づきモータ制御量を決定してステップS516に進み、ホイルシリンダ圧が急激に変化することを防止するためにソフトランディング処理を行ってステップS2に戻る。否定判断、即ち液圧ポンプ駆動要求フラグf_PUMP_REQ=0という判断が行われたときにはステップS513に進む。
【0083】
ステップS513では、ソレノイドアウトバルブ5の状態を判断する。肯定判断、即ちソレノイドアウトバルブ5が開閉操作されているという判断が行われたときにはステップS515に進み、リザーバ16の液量に基づきモータ制御量を決定してステップS516に進む。否定判断、即ちソレノイドアウトバルブ5が非駆動であるという判断が行われたときにはステップS514に進み、モータ制御量をゼロにセットしてステップS516に進む。
【0084】
図13は、図3で示す状態0→遷移C→状態2→遷移D→状態0という状態遷移を表すタイムチャートである。これより、ヨーモーメント指令及びヨーレイト指令は、左回りの方向を正、右回りの方向を負として説明する。
【0085】
時刻t11において、第2ヨーモーメント指令M2が発生すると、ステップS9で示す液圧昇圧機能選択で、制御ブースタ1の駆動を禁止し、液圧ポンプPの駆動を許可する状態2が選択される。即ち、ステップS100→ステップS101→ステップS102→ステップS103→ステップS107へと進む処理である。
【0086】
第2ヨーモーメント指令M2に基づき各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)を演算する。このM2が左回りのヨーモーメント指令であるから、FL輪とRL輪にヨーモーメントを発生させるための液圧指令がセットされ、FR輪とRR輪の液圧指令はゼロにセットされる。
【0087】
更に、制御ブースタ液圧指令P*_mc=0にセットされ、制御ブースタ駆動要求フラグがf_BOOSTER_REQ=0にリセットされる。即ち、ステップS200→ステップS201→ステップS204→ステップS205→ステップS206→ステップS207→ステップS212→ステップS213へと進む処理である。
【0088】
ここで、運転者のブレーキペダル操作がないため、ブレーキスイッチBSはOFFの状態であり、ペダル操作モードPEDAL=0が選択される。即ち、ステップS300→ステップS304→ステップS312へと進む処理である。
【0089】
制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOSTER_REQ=0であるため、電流指令値にゼロがセットされ、制御ブースタ1は非駆動となる。即ち、ステップS400→ステップS401→ステップS403へと進む処理である。
【0090】
液圧ポンプPの駆動が許可であるため、モータMを駆動する。各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)と各輪液圧P(FL)〜(RR)との関係に基づき、ゲートインバルブ2、ゲートアウトバルブ3を開閉操作する。更に、自動でホイルシリンダ圧を制御するFL輪とRL輪のソレノイドインバルブ4及びソレノイドアウトバルブ5は非駆動となり、FR輪とRR輪のソレノイドインバルブ4は閉状態となるよう駆動する。即ち、ステップS500→ステップS501→ステップS508→ステップS509→ステップS510→ステップS511→ステップS512→ステップS515→ステップS516へと進む処理である。
【0091】
時刻t12において、第2ヨーモーメント指令M2がゼロになると、状態0(通常ブレーキ状態)に戻る。即ち、ステップS100→ステップS101→ステップS102→ステップS103→ステップS106→ステップS200→ステップS202→ステップS205→ステップS208→ステップS209→ステップS300→ステップS304→ステップS312→ステップS400→ステップS401→ステップS403→ステップS500→ステップS502→ステップS503→ステップS504→ステップS511→ステップS512→ステップS513→ステップS514→ステップS516へと進む処理である。
【0092】
すなわち、液圧ポンプPを駆動して各ホイルシリンダに液圧を発生させ、各輪に制動力を発生させることで車両挙動を制御する。
【0093】
図14は、図3で示す状態0→遷移A→状態1→遷移E→状態3→遷移F→状態1→遷移B→状態0という状態遷移を表すタイムチャートである。
【0094】
時刻t21において、第1減速度指令Gx1が発生すると、ステップS9で示す液圧昇圧機能選択で、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止する状態1が選択される。即ち、ステップS100→ステップS104→ステップS105→ステップS108へと進む処理である。
【0095】
第1減速度指令Gx1に基づき各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)を演算する。このとき、各輪の液圧指令は全て同値がセットされる。更に、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)の最大値が制御ブースタ液圧指令P*mcにセットされ、制御ブースタ駆動要求フラグがf_BOOSTER_REQ=1にセットされる。即ち、ステップS200→ステップS201→ステップS203→ステップS205→ステップS206→ステップS210→ステップS211へと進む処理である。
【0096】
ここで運転者のブレーキペダル操作がないため、ブレーキスイッチBSはOFFの状態であり、ペダル操作モードPEDAL=0が選択される。即ち、ステップS300→ステップS304→ステップS312へと進む処理である。
【0097】
制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOSTER_REQ=1であるため、制御ブースタ液圧指令P*_mcとマスタシリンダ圧P_mcとの関係に基づき電流指令値がセットされ、制御ブースタ1を駆動する。即ち、ステップS400→ステップS402→ステップS403へと進む処理である。
【0098】
液圧ポンプPの駆動が禁止であるため、モータM、ゲートインバルブ2、ゲートアウトバルブ3は非駆動となる。更に、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)が全て同値であるため、各輪のソレノイドインバルブ4及びソレノイドアウトバルブ5も非駆動となる。即ち、ステップS500→ステップS501→ステップS505→ステップS506→ステップS507→ステップS511→ステップS512→ステップS513→ステップS514→ステップS516へと進む処理である。
【0099】
時刻t22において、第2ヨーモーメント指令M2が発生すると、ステップS9で示す液圧昇圧機能選択で、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を許可する状態3が選択される。即ち、ステップS100→ステップS104→ステップS105→ステップS109へと進む処理である。
【0100】
第1減速度指令Gx1、第2ヨーモーメント指令M2に基づき各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)がセットされる。ブースタ液圧指令P*_mc=0には前回の制御ブースタ液圧指令値が継続してセットされ、制御ブースタ駆動要求フラグがf_BOOSTER_REQ=1にセットされる。即ち、ステップS200→ステップS201→ステップS204→ステップS205→ステップS206→ステップS207→ステップS214→ステップS215へと進む処理である。
【0101】
ここで運転者のブレーキペダル操作がないため、ブレーキスイッチBSはOFFの状態であり、ペダル操作モードPEDAL=0が選択される。
【0102】
制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOSTER_REQ=1であるため、制御ブースタ液圧指令P*_mcとマスタシリンダ圧P_mcとの関係に基づき電流指令値がセットされ、制御ブースタ1を駆動する。
【0103】
液圧ポンプPの駆動が許可であるため、モータMを駆動する。各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)と各輪液圧P(FL)〜(RR)との関係に基づき、ゲートインバルブ2、ゲートアウトバルブ3を開閉操作する。更に、FL輪とRL輪のソレノイドインバルブ4及びソレノイドアウトバルブ5は非駆動となり、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)と各輪液圧P(FL)〜(RR)との関係に基づき、FR輪とRR輪のソレノイドインバルブ4及びソレノイドアウトバルブ5を開閉操作する。
【0104】
時刻t24において、第2ヨーモーメント指令M2がゼロになると、ステップS9を示す液圧昇圧機能選択で、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止する状態1が選択される。時刻t24から時刻t25の処理は、時刻t21から時刻t22の処理と同じであるため、ここでは省略する。
【0105】
時刻t25において、第2ヨーモーメント指令M2がゼロになると、状態0(通常ブレーキ)の状態に戻る。
【0106】
すなわち、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止した状態1から、制御ブースタ1の駆動を許可すると共に液圧ポンプPの駆動を許可した状態3に移行し、更に、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止した状態1に移行させることにより、各ホイルシリンダに液圧を発生させ、各輪に制動力を発生させることで車両挙動を制御する。
【0107】
図15は、図3で示す状態0→遷移A→状態1→遷移E→状態3→遷移G→状態2→遷移D→状態0という状態遷移を表すタイムチャートである。
【0108】
時刻t33において、第1減速度指令Gx1がゼロになると、ステップS9で示す液圧昇圧機能選択で、制御ブースタ1の駆動を禁止し、液圧ポンプPの駆動を許可する状態2が選択される。
【0109】
第2ヨーモーメント指令M2に基づき各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)を演算する。このM2が左回りのヨーモーメント指令であるから、FL輪とRL輪にヨーモーメントを発生させるため、更に大きい液圧指令がセットされる。更に、制御ブースタ液圧指令P*_mc=0にセットされ、制御ブースタ駆動要求フラグがf_BOOSTER_REQ=0にリセットされる。
【0110】
ここで、運転者のブレーキペダル操作がないため、ブレーキスイッチはOFFの状態であり、ペダル操作モードPEDAL=0が選択される。制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOSTER_REQ=0であるため、電流指令にゼロがセットされ、制御ブースタ1は非駆動となる。
【0111】
液圧ポンプPの駆動が許可であるため、モータMを駆動する。各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)と各輪液圧P(FL)〜(RR)との関係に基づき、ゲートインバルブ2、ゲートアウトバルブ3を開閉操作する。更に、自動でホイルシリンダ圧を制御するとFL輪とRL輪のソレノイドインバルブ4及びソレノイドアウトバルブ5は非駆動となり、FR輪とRR輪のソレノイドインバルブ4は閉状態となるように駆動する。
【0112】
以降の処理は、前述した図13のタイムチャートにおける時刻t11以降の処理と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0113】
すなわち、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止した状態1から、制御ブースタ1の駆動を許可すると共に液圧ポンプPの駆動を許可した状態3に移行し、更に、制御ブースタ1の駆動を禁止し、液圧ポンプPの駆動を許可した状態2に移行させることにより、各ホイルシリンダに液圧を発生させ、各輪に制動力を発生させることで車両挙動を制御する。
【0114】
図16は、図3で示す状態0→遷移A→状態1と状態遷移した状態で、運転者がブレーキペダルを踏み込んだ状態を表すタイムチャートである。
【0115】
時刻t41において、第1ヨーモーメント指令M1が発生すると、ステップS9で示す液圧昇圧機能選択で、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止する状態1が選択される。
【0116】
第1ヨーモーメント指令M1に基づき各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)を演算する。このM1が左回りのヨーモーメント指令であるから、FL輪とRL輪にヨーモーメントを発生させるための液圧指令がセットされ、FR輪とRR輪の液圧指令にはゼロがセットされる。更に、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)の最大値が制御ブースタ液圧指令P*_mcにセットされ、制御ブースタ駆動要求フラグがf_BOOSTER_REQ=1にセットされる。
【0117】
ここで、運転者のブレーキペダル操作がないため、ブレーキスイッチBSはOFFの状態であり、ペダル操作モードPEDAL=0が選択される。
【0118】
制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOSTER_REQ=1であるため、制御ブースタ液圧指令P*_mcとマスタシリンダ圧P_mcとの関係に基づき電流指令値がセットされ、制御ブースタ1を駆動する。
【0119】
液圧ポンプPの駆動が禁止であるため、モータM、ゲートインバルブ2、ゲートアウトバルブ3は非駆動となる。更に、自動でホイルシリンダ圧を制御するFL輪とRL輪のソレノイドインバルブ4及びソレノイドアウトバルブ5は非駆動となり、FR輪とRR輪のソレノイドインバルブ4は閉状態となるように駆動する。
【0120】
時刻t42において、運転者がブレーキペダルを操作し、ブレーキスイッチBSがONになると共に第1減速度指令Gx1が発生すると、ステップS9で示す液圧昇圧機能選択で、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止する状態1が選択される。
【0121】
第1減速度指令Gx1及び第1ヨーモーメント指令M1に基づき各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)を演算する。ゼロであってFR輪及びRR輪の液圧指令を増加させ、減速度を発生させる。更に、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)の最大値が制御ブースタ液圧指令P*_mcにセットされ、制御ブースタ駆動要求フラグがf_BOOSTER_REQ=1にセットされる。
【0122】
ここで、ブレーキスイッチBSはON状態であるが、制御ブースタ1による制御圧よりもペダル操作量が小さいときは、ペダル操作モードPEDAL=1が選択される。即ち、ステップS300→ステップS301→ステップS302→ステップS303→ステップS307→ステップS316へと進む処理である。
【0123】
制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOSTER_REQ=1であるため、制御ブースタ液圧指令P*_mcとマスタシリンダ圧P_mcとの関係に基づき電流指令値がセットされ、制御ブースタ1を駆動する。
【0124】
液圧ポンプPの駆動が禁止であるため、モータM、ゲートインバルブ2、ゲートアウトバルブ3は非駆動となる。更に、FL輪とRL輪のソレノイドインバルブ4及びソレノイドアウトバルブ5は非駆動となり、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)と各輪液圧P(FL)〜(RR)との関係に基づき、FR輪とRR輪のソレノイドインバルブ4及びソレノイドアウトバルブ5を開閉操作する。
【0125】
時刻t43において、運転者がブレーキペダルを放し、ブレーキスイッチがOFFになると共に第1減速度指令Gx1が減少し、ステップS9で示す液圧昇圧機能選択で、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止する状態1が選択される。
【0126】
第1ヨーモーメント指令M1に基づき各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)を演算する。更に、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)の最大値が制御ブースタ液圧指令P*_mcにセットされ、制御ブースタ駆動要求フラグがf_BOOSTER_REQ=1にセットされる。
【0127】
ここで、運転者のブレーキペダル操作がないため、ブレーキスイッチBSはOFFの状態であり、ペダル操作モードPEDAL=0が選択される。
【0128】
制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOSTER_REQ=1であるため、制御ブースタ液圧指令P*_mcとマスタシリンダ圧P_mcとの関係に基づき電流指令値がセットされ、制御ブースタ1を駆動する。
【0129】
液圧ポンプPの駆動が禁止であるため、ゲートインバルブ2、ゲートアウトバルブ3は非駆動となる。更に、FL輪とRL輪のソレノイドインバルブ4及びソレノイドアウトバルブ5は非駆動となり、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)と各輪液圧P(FL)〜(RR)との関係に基づき、FR輪とRR輪のソレノイドインバルブ4及びソレノイドアウトバルブ5を開閉操作する。
【0130】
ソレノイドアウトバルブ5が開状態となり、リザーバ16の液をマスタシリンダ側に戻すためモータMを駆動する。即ち、ステップS500→ステップS501→ステップS505→ステップS506→ステップS507→ステップS511→ステップS512→ステップS513→ステップS515→ステップS516へと進む処理である。
【0131】
以降の処理は、前述した図13のタイムチャートにおける時刻t11から時刻t12の処理と同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0132】
すなわち、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止した状態1でヨーモーメント制御を実行中に運転者がブレーキペダル操作を行った場合、ホイルシリンダ圧がゼロであった輪に液圧を発生させ、制動力を増加させることで車両挙動を制御する。これにより、ヨーモーメント制御を実行中であっても運転者の制動意図を反映させることができる。
【0133】
図17は、図3で示す状態0→遷移A→状態1と状態遷移した状態で、運転者がブレーキペダルを踏み込んだ状態を表すタイムチャートである。時刻t53より以前においては、前述した図16のタイムチャートにおける時刻t41から時刻t43の処理と同じであるため、ここでは省略する。
【0134】
時刻t53において、運転者がブレーキペダルを踏み増すと、制御ブースタ1による制御圧、即ち制御ブースタ液圧指令P*_mcとマスタシリンダ圧P_mcとの偏差がαよりも大きくなっていく。このとき、ステップS11のペダル操作量検出において、カウンタCOUNTをインクリメントしていく。即ち、ステップS300→ステップS301→ステップS302→ステップS308→ステップS311→ステップS317へと進む処理である。
【0135】
更に、時刻t53からβ経過し、制御ブースタ液圧P*_mcとマスタシリンダ圧P_mcとの偏差がαよりも大きい状態が所定時間続いたことで運転者がブレーキペダルを踏み増したことを検出し、ペダル操作モードPEDAL=2にセットする。即ち、ステップS300→ステップS301→ステップS302→ステップS303→すてぷS308→ステップS311→ステップS318へと進む処理である。
【0136】
時刻t54において、第1減速度指令Gx1及び第1ヨーモーメント指令M1が減少し、通常ブレーキへと移行する。制御ブースタ1及びバルブは、それぞれステップS403、ステップS511でソフトランディング処理が行われ、時刻t55において完全に通常ブレーキ状態となる。
【0137】
すなわち、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止した状態1で、運転者がブレーキペダル操作に応じてヨーモーメント制御を実行中に、運転者がブレーキペダルを踏み増した場合、4輪全てのホイルシリンダ圧をマスタシリンダ圧と一致させて通常ブレーキ状態に移行させる。これにより、運転者の制動意図が自動ブレーキ制御圧よりも大きい場合には、運転者の操作を優先させることにより、違和感を与えないようにすることができる。
【0138】
以上説明したように、実施例1の車両挙動制御装置にあっては、下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(1)ブレーキペダルBPの操作に応じて作動してホイルシリンダW/Cを加圧するマスタシリンダM/Cと、ブレーキペダルBPとは別に設けられマスタシリンダM/Cを作動させてホイルシリンダW/Cを加圧する第1の昇圧部である制御ブースタ1と、マスタシリンダM/Cを介さずにホイルシリンダW/Cを加圧する第2の昇圧部であるポンプPと、昇圧部を制御するコントロールユニット32と、を備え、コントロールユニット32には、自車両と周囲との相対的な関係に基づく第1の動作指令(ステップS6参照)と、自車両の絶対的な挙動に基づく第2の動作指令(ステップS8参照)と、が入力され、入力された指令が第1の動作指令の場合、第1の昇圧部である制御ブースタ1を作動させる(状態0から状態1への遷移A)と共に、入力された指令が第2の動作指令の場合、第2の昇圧部であるポンプPを作動させ(状態0から状態2への遷移C)、第1の動作指令が入力されて第1の昇圧部が作動しているときに第2の動作指令が入力された場合、第1の昇圧部に加え、第2の昇圧部を作動させる(状態1から状態3への遷移E)こととした。
【0139】
よって、動作指令に応じて液圧昇圧機能を選択することで、相対的な車両挙動と絶対的な車両挙動の両方を同時に制御することができると共に、運転者がブレーキペダル操作を行ったときのペダルフィールを向上することができる。
【0140】
即ち、相対的な関係に基づく車両挙動を制御する場合、マスタシリンダM/CとホイルシリンダW/Cを連通させ、通常のブレーキ動作と同じ原理で液圧制御を行うため、運転者がブレーキペダルを踏み増したときに液圧が急激に変化することなく通常ブレーキ状態へと移行することができる。一方で、絶対的な車両挙動を制御する場合、マスタシリンダM/CをホイルシリンダW/Cから遮断することで、運転者がブレーキペダルBPを踏んだときに、ホイルシリンダW/Cの液圧変動がブレーキペダルに伝わらないため、運転者に違和感を与えることなく車両挙動を制御することができる。また、第1と第2の昇圧部を同時に作動させることで、昇圧速度を上げることができ、車両挙動をより早く収束させることができる。
【0141】
(2)コントロールユニット32は、第1及び第2の昇圧部の両方が作動しているときに、第1または第2の動作指令のうち、一方の動作指令の入力がなくなったときは、入力されている動作指令に該当する昇圧部のみを作動する(状態3から状態1もしくは状態2への遷移F,G)こととした。
【0142】
即ち、同一制御対象であるホイルシリンダW/Cへの液圧昇圧機能を複数備え、動作指令に応じて液圧昇圧機能を選択しているため、両昇圧部による制御から一方の昇圧部による制御に移行したとしても、違和感を与えることなく遷移することができる。
【0143】
(3)コントロールユニット32は、第1の動作指令が入力され、かつ、第2の動作指令が入力されていないときは、第2の昇圧部の作動を禁止することとした。
【0144】
すなわち、第1の動作指令はあくまで制御ブースタ1により行うことで、第2の動作指令がきたとしても、違和感無く両動作指令に対応することができる。
【0145】
(4)コントロールユニット32は、第1の動作指令が入力されておらず、かつ、第2の動作指令が入力されているときは、第1の動作指令が入力されたとしても第1の昇圧部の作動を禁止することとした。すなわち、状態2から状態3への遷移を禁止することとした。
【0146】
状態2では、ゲートアウトバルブ3を閉じ、ヨーレイト等を発生させるのに必要な対応するホイルシリンダW/Cのソレノイドインバルブ4を開き、それ以外のホイルシリンダW/Cのソレノイドインバルブ4は閉じた状態である。この状態で、制御ブースタ1の駆動を許可すると、ゲートアウトバルブ3を開くため、制御ブースタ1により発生したマスタシリンダ圧は、ヨーレイト等を発生させるのに必要な対応するホイルシリンダW/Cのみに供給されることになり、安定した車両挙動制御を継続できなくなる。そこで、状態2から状態3への遷移を禁止することで、安定した車両挙動制御を達成することができる。
【実施例2】
【0147】
次に、実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点について説明する。
【0148】
〔車両のシステム構成〕
実施例2の車両挙動制御装置を備えた車両の全体構成を表すシステム図は、実施例1の図1に示す構成と同じであるため、説明を省略する。
【0149】
〔ブレーキ配管の構成〕
図18は実施例2の車両挙動制御装置を適用したブレーキシステムの液圧回路図である。このブレーキシステムにおいては、P系統とS系統との2系統からなる、H配管と呼ばれる配管構造となっている。
【0150】
P系統には、左前輪のホイルシリンダW/C(FL)、右前輪のホイルシリンダW/C(FR)が接続され、S系統には、右後輪のホイルシリンダW/C(RR)、左後輪のホイルシリンダW/C(RL)が接続されている。また、P系統、S系統それぞれに、ポンプPPとポンプPSとが設けられ、このポンプPPとポンプPSは、1つのモータMによって駆動される。
【0151】
ブレーキペダルBPには、ブレーキペダルBPの操作状態を検出するブレーキスイッチBSが設けられている。ブレーキペダルBPは、制御ブースタ1を介してマスタシリンダM/Cに接続されている。
【0152】
マスタシリンダM/Cの第1出力ポートPRIは、常開型の電磁弁であるゲートアウトバルブ3P、常開型の電磁弁であるソレノイドインバルブ4FLが非通電状態(図示状態)にあるときに第1油路19P及びゲートアウトバルブ3P、ソレノイドインバルブ4FLを介し左前輪FL用のホイルシリンダW/C(FL)に連通しているとともに、ゲートアウトバルブ3P、常開型の電磁弁であるソレノイドインバルブ4FRが非通電状態(図示状態)にあるときに、第1油路19P及びゲートアウトバルブ3P、ソレノイドインバルブ4FRを介し右前輪FR用のホイルシリンダW/C(FR)に連通している。
【0153】
また、第1油路19Pの液圧を検出する圧力センサPMCを備えている。ゲートアウトバルブ3Pは、通電により状態を切換制御されて、ホイルシリンダW/C(FL),W/C(FR)に対して第1油路19Pを連通及び遮断するためのものであり、マスタシリンダカット手段として機能する。
【0154】
ソレノイドインバルブ4FL,4FRは、通電により状態を切換制御されて、ホイルシリンダW/C(FL),W/C(FR)に対して第1油路19P又は後述の第1高圧油路12Pを連通及び遮断するものである。
【0155】
車両挙動制御装置は、液圧供給源としてのポンプPPを備えている。ポンプPPは電動モータMによって駆動されている。ポンプPPの吸い込み口はブレーキ液を貯蔵する内蔵リザーバタンク16Pに連通しており、ポンプPPはそのブレーキ液を吸い込んで昇圧して吐出口から吐出している。ポンプPPの吐出口は、マスタシリンダカット手段であるゲートアウトバルブ3Pが非通電状態(図示状態)にあるときに第1高圧油路12P、ゲートアウトバルブ3P及び第1油路19Pを介してマスタシリンダM/Cに連通し、増圧手段であるソレノイドインバルブ4FL,4FRが非通電状態(図示状態)にあるときに第1高圧油路12P及びソレノイドインバルブ4FL,4FRを介してホイルシリンダW/C(FL),W/C(FR)に連通する。
【0156】
ソレノイドインバルブ4FL,4FRとホイルシリンダW/C(FL),W/C(FR)の間からは、減圧手段である常閉型の電磁弁であるソレノイドアウトバルブ5FL,5FRを介して内蔵リザーバタンク16Pに接続された第1低圧油路14Pが分流している。ソレノイドアウトバルブ5FL,5FRは、通電により切換制御されて、ホイルシリンダW/C(FL),W/C(FR)に対して第1低圧油路14Pを連通及び遮断するものである。
【0157】
マスタシリンダM/Cの第2出力ポートSECは、常開型の電磁弁であるゲートアウトバルブ3S、常開型の電磁弁であるソレノイドインバルブ4RLが非通電状態(図示状態)にあるときに第2油路19S及びゲートアウトバルブ3S、ソレノイドインバルブ4RLを介し左後輪RL用のホイルシリンダW/C(RL)に連通していると共に、ゲートアウトバルブ3S、常開型の電磁弁であるソレノイドインバルブ4RRが非通電状態(図示状態)にあるときに第2油路19S及びゲートアウトバルブ3S、ソレノイドインバルブ4RRを介し右後輪RR用のホイルシリンダW/C(RR)に連通している。
【0158】
ゲートアウトバルブ3Sは、通電により状態を切換制御されて、ホイルシリンダW/C(RL),W/C(RR)に対して第2油路19Sを連通及び遮断するためのものであり、マスタシリンダカット手段として機能する。ソレノイドインバルブ4RL,4RRは、通電により状態を切換制御されて、ホイルシリンダW/C(RL),W/C(RR)に対して第2油路19S又は後述の第2高圧油路12Sを連通及び遮断するものである。
【0159】
車両挙動制御装置は、液圧供給源としてのポンプPSを備えている。ポンプPSは電動モータMによって駆動されている。ポンプPSの吸い込み口はブレーキ液を吸い込んで昇圧し吐出口から吐出している。ポンプPSの吐出口は、マスタシリンダカット手段であるゲートアウトバルブ3Sが非通電状態(図示状態)にあったときに第2昇圧油路12S、ゲートアウトバルブ3S及び第2油路19Sを介してマスタシリンダM/Cに連通し、増圧手段であるソレノイドインバルブ4RL,4RRが非通電状態(図示状態)にあるときに第2高圧油路12S及びソレノイドインバルブ4RL,4RRを介してホイルシリンダW/C(RL),W/C(RR)に連通する。
【0160】
ソレノイドインバルブ4RL,4RRとホイルシリンダW/C(RL),W/C(RR)の間からは、減圧手段である常閉型の電磁弁であるソレノイドアウトバルブ5RL,5RRを介して内蔵リザーバタンク16Sに接続された第2低圧油路14Sが分流している。ソレノイドアウトバルブ5RL,5RRは、通電位より切換制御されて、ホイルシリンダW/C(RL),W/C(RR)に対して第2低圧油路14Sを連通及び遮断するものである。
【0161】
〔モータ・バルブ駆動について〕
次に、図18に示す液圧回路図を適用した場合のステップS13におけるモータ・バルブ駆動の基本的な制御内容について説明する。図19は、モータ・バルブ駆動を表すフローチャートである。
【0162】
ステップS530では、ステップS9で選択された状態を判断する。肯定判断、即ち状態0であるときにはステップS532に進み、液圧ポンプ駆動要求フラグf_PUMP_REQ=0にリセットしてステップS533に進み、ゲートアウトバルブ3を非駆動としてステップS534に進み、ソレノイドインバルブ4とソレノイドアウトバルブ5を非駆動としてステップS541に進み、ホイルシリンダ圧が急激に変化することを防止するためにソフトランディング処理を行ってステップS542に進む。否定処理、即ち状態0ではないときにはステップS531に進む。
【0163】
ステップS531では、ステップS9で選択された状態を判断する。肯定判断、即ち状態1であるときにはステップS535に進み、液圧ポンプ駆動要求フラグf_PUMP_REQ=0にリセットしてステップS536に進み、ゲートアウトバルブ3を非駆動としてステップS537に進み、制御ブースタ液圧指令P*_mc、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)、各輪液圧P(FL)〜(RR)の信号に基づきソレノイドインバルブ4とソレノイドアウトバルブ5の制御量を決定してステップS541に進む。否定判断、即ち状態1ではないときにはステップS538に進み、液圧ポンプ駆動要求フラグf_PUMP_REQ=1にセットしてステップS539に進み、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)、各輪液圧P(FL)〜(RR)の信号に基づきゲートアウトバルブ3の制御量を決定してステップS540に進み、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)、各輪液圧P(FL)〜(RR)の信号に基づきソレノイドインバルブ4とソレノイドアウトバルブ5の制御量を決定してステップS541に進む。
【0164】
ステップS542では、液圧ポンプ駆動要求の有無を判断する。肯定判断、即ちf_PUMP_REQ=1という判断が行われたときにはステップS545に進み、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)、各輪液圧P(FL)〜(RR)の信号に基づきモータ制御量を決定してステップS546に進み、ホイルシリンダ圧が急激に変化することを防止するためにソフトランディング処理を行ってステップS2に戻る。否定判断、即ちf_PUMP_REQ=0という判断が行われたときにはステップS543に進む。
【0165】
ステップS543では、ソレノイドアウトバルブ5の状態を判断する。肯定判断、即ちソレノイドアウトバルブ5が開閉操作されているという判断が行われたときにはステップS545に進み、リザーバ液量に基づいてモータ制御量を決定してステップS546に進む。否定判断、即ちソレノイドアウトバルブ5が非駆動であるという判断が行われたときにはステップS544に進み、モータ制御量をゼロにセットしてステップS546に進む。
【0166】
図20は、制御ブースタ駆動中にブレーキペダル操作を行った場合のタイムチャートである。これより、ヨーモーメント指令及びヨーレイト指令は、左回りの方向を正、右回りの方向を負として説明する。
【0167】
時刻t41において、第1ヨーモーメント指令M1が発生すると、ステップS9で示す液圧昇圧機能選択で、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止する状態1が選択される。
【0168】
第1ヨーモーメント指令M1に基づき各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)を演算する。このM1が左回りのヨーモーメント指令であることから、FL輪とRL輪にヨーモーメントを発生させるための液圧指令がセットされ、FR輪とRR輪の液圧指令にはゼロがセットされる。更に、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)の最大値が制御ブースタ液圧指令P*_mcにセットされ、制御ブースタ駆動要求フラグがf_PUMP_REQ=1にセットされる。
【0169】
ここで、運転者のブレーキペダル操作がないため、ブレーキスイッチBSはOFFの状態であり、ペダル操作モードPEDAL=0が選択される。制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOSTER_REQ=1であるため、制御ブースタ液圧指令P*_mcとマスタシリンダ圧P_mcとの関係に基づき電流指令値がセットされ、制御ブースタ1を駆動する。
【0170】
液圧ポンプPの駆動が禁止であるため、モータM、ゲートアウトバルブ3は非駆動となる。更に、自動でホイルシリンダ圧を制御するFL輪とRL輪のソレノイドインバルブ4及びソレノイドアウトバルブ5は非駆動となり、FR輪とRR輪のソレノイドインバルブ4は閉状態となるように駆動する。
【0171】
時刻t42において、運転者がブレーキペダル操作をし、ブレーキスイッチBSがONになると共に第1減速度指令Gx1が発生すると、ステップS9で示す液圧昇圧機能選択で、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止する状態1が選択される。
【0172】
第1減速度指令Gx1及び第1ヨーモーメント指令M1に基づき各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)を演算する。ゼロであったFR輪及びRR輪の液圧指令を増加させ、減速度を発生させる。更に、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)の最大値が制御ブースタ液圧指令P*_mcにセットされ、制御ブースタ駆動要求フラグがf_BOOSTER_REQ=1にセットされる。
【0173】
ここで、ブレーキスイッチBSはONの状態であるが、制御ブースタ1による制御圧よりもペダル操作量が小さいときは、ペダル操作モードPEDAL=1が選択される。即ち、ステップS300→ステップS301→ステップS302→ステップS303→ステップS307→ステップS316へと進む処理である。
【0174】
制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOSTER_REQ=1であるため、制御ブースタ液圧指令P*_mcとマスタシリンダ圧P_mcとの関係に基づき電流指令値がセットされ、制御ブースタ1を駆動する。
【0175】
液圧ポンプPの駆動が禁止であるため、モータM、ゲートアウトバルブ3は非駆動となる。更に、FL輪とRL輪のソレノイドインバルブ4及びソレノイドアウトバルブ5は非駆動となり、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)、各輪液圧P(FL)〜(RR)の信号に基づき、FR輪とRR輪のソレノイドインバルブ4及びソレノイドアウトバルブ5を開閉操作する。
【0176】
時刻t43において、運転者がブレーキペダルを放し、ブレーキスイッチBSがOFFになると共に第1減速度指令Gx1が減少し、ステップS9で示す液圧昇圧機能選択で、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止する状態1が選択される。
【0177】
第1ヨーモーメント指令M1に基づき各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)を演算する。更に、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)の最大値が制御ブースタ液圧指令P*_mcにセットされ、制御ブースタ駆動要求フラグがf_BOOSTER_REQ=1にセットされる。ここで、運転者のブレーキペダル操作がないため、ブレーキスイッチBSはOFFの状態であり、ペダル操作モードPEDAL=0が選択される。
【0178】
制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOSTER_REQ=1であるため、制御ブースタ液圧指令P*_mcとマスタシリンダ圧P_mcとの関係に基づき電流指令値がセットされ、制御ブースタ1を駆動する。
【0179】
液圧ポンプPの駆動が禁止であるため、ゲートアウトバルブ3は非駆動となる。更に、FL輪とRL輪のソレノイドインバルブ4及びソレノイドアウトバルブ5は非駆動となり、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)、各輪液圧P(FL)〜(RR)の信号に基づきFR輪とRR輪のソレノイドインバルブ4及びソレノイドアウトバルブ5を開閉操作する。ソレノイドアウトバルブが開状態となり、リザーバ16の液をマスタシリンダ側に戻すためモータMを駆動する。即ち、ステップS500→ステップS501→ステップS505→ステップS506→ステップS507→ステップS511→ステップS512→ステップS513→ステップS515→ステップS516へと進む処理である。
【0180】
以降の処理は、実施例1の図13のタイムチャートにおける時刻t11から時刻t12の処理と同じであるため、ここでは省略する。
【0181】
すなわち、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止した状態1でヨーモーメント制御を実行中に、運転者がブレーキペダル操作を行った場合、ホイルシリンダ圧がゼロであった輪に液圧を発生させ、制動力を増加させることで車両挙動を制御する。これにより、ヨーモーメント制御を実行中に運転者の制動意図を反映させることができる。
【0182】
図21は、制御ブースタ駆動中にブレーキペダル操作を強く行った場合のタイムチャートである。
【0183】
時刻t53より以前については、前述した図20のタイムチャートにおける時刻t41から時刻t43の処理と同じであるため説明を省略する。
【0184】
時刻t53において、運転者がブレーキペダルを踏み増すと、制御ブースタ1による制御圧、即ち制御ブースタ液圧指令P*_mcとマスタシリンダ圧P_mcとの偏差がαよりも大きくなっていく。このとき、ステップS11のペダル操作量検出において、カウンタCOUNTをインクリメントしていく。即ち、ステップS300→ステップS301→ステップS302→ステップS303→ステップS308→ステップS311→ステップS318へと進む処理である。
【0185】
時刻t54において、第1減速度指令Gx1及び第1ヨーモーメント指令M1が減少し、通常ブレーキへと移行する。制御ブースタ1及びバルブは、それぞれステップS403,ステップS511でソフトランディング処理が行われ、時刻t55において完全に通常ブレーキ状態となる。
【0186】
以上説明したように、実施例2の車両挙動制御装置にあっては、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止した状態1で、運転者がブレーキペダル操作に応じてヨーモーメント制御を実行中に、運転者がブレーキペダルを踏み増しした場合、4輪全てのホイルシリンダ圧をマスタシリンダ圧と一致させて通常ブレーキ状態に移行させる。これにより、運転者の制動意図が自動ブレーキ制御圧よりも大きい場合には、運転者の操作を優先させることにより、違和感を与えないようにすることができる。
【実施例3】
【0187】
次に、実施例3について説明する。基本的な構成は実施例1と同じであるため、異なる点について説明する。
【0188】
〔車両のシステム構成〕
実施例3の車両挙動制御装置を備えた車両の全体構成を表すシステム図は、実施例1の図1に示す構成と同じであるため、説明を省略する。
【0189】
〔ブレーキ配管の構成〕
図22は実施例3の車両挙動制御装置を適用したブレーキシステムの液圧回路図である。このブレーキシステムにおいては、いわゆるブレーキバイワイヤタイプのものであり、ブレーキペダルBPの踏み込み状態に応じて液圧を生成するマスタシリンダM/Cと、このマスタシリンダM/Cとは別に設けられて車両の左右前後輪FL,FR,RL,RRの回転をそれぞれ規制する各ホイルシリンダW/C(FL),W/C(FR),W/C(RL),W/C(RR)に液圧を供給する液圧供給源20とを備えている。
【0190】
この液圧供給源20の正常時においては、液圧供給源20から車両の左右前後輪FL,FR,RL,RRの各ホイルシリンダW/C(FL),W/C(FR),W/C(RL),W/C(RR)へブレーキペダル踏力に対応した液圧を供給し、液圧供給源20の異常時においてはブレーキペダルBPと作動的に連結したマスタシリンダM/Cから車両の左右前輪FL,FRの各ホイルシリンダW/C(FL),W/C(FR)に必要な液圧を供給するように構成されている。
【0191】
そして、このように構成された車両挙動制御装置においては、液圧供給源20の背異常時においてブレーキペダルBPの操作状態に応じた大きさのストロークをブレーキペダルBPに発生させるためのストロークシミュレータSSが設置されている。また、ブレーキペダルBPには、ブレーキペダルBPの操作状態を検出するブレーキスイッチBSが設けられている。
【0192】
車両挙動制御装置は、ブレーキペダルBPの踏込み操作に応じて第1及び第2出力ポートPRI,SECからほとんど同一のブレーキ液圧を圧送するマスタシリンダM/Cを備えている。マスタシリンダM/Cの第1出力ポートPRIは油路19Pを介してホイルシリンダW/C(FL)に接続されている。油路19Pには、常開型の電磁弁であるゲートアウトバルブ3Pが設けられており、第1出力ポートPRIはゲートアウトバルブ3Pが非通電状態(図示状態)にあるときに、ゲートアウトバルブ3Pを介して左前輪FL用のホイルシリンダW/C(FL)に連通している。また、油路19Pの液圧を検出する圧力センサPMCを備えている。
【0193】
マスタシリンダM/Cの第2出力ポートSECは油路19Sを介してホイルシリンダW/C(FR)に接続されている。油路19Sには常開型の電磁弁であるゲートアウトバルブ3Sが設けられており、第2出力ポートSECはゲートアウトバルブ3Sが非通電状態(図示状態)にあるときにゲートアウトバルブ3Sを介して右前輪FR用のホイルシリンダW/C(FR)に連通している。
【0194】
ゲートアウトバルブ3P,3Sは、通電位より開閉を切換制御されて、ホイルシリンダW/C(FR),W/C(FL)に対してマスタシリンダM/Cをそれぞれ連通及び遮断するものである。すなわちこれらゲートアウトバルブ3P,3Sは、液圧供給源20の正常時において通電されて閉じられ、マスタシリンダM/Cと両ホイルシリンダW/C(FL),W/C(FR)との間を遮断し、異常時において非通電とされて開かれ、マスタシリンダM/Cと両ホイルシリンダW/C(FL),W/C(FR)とを連通するマスタシリンダカット手段であるマスタシリンダカット弁として機能する。
【0195】
油路19P上であってマスタシリンダM/Cとゲートアウトバルブ3Pとの間には、ストロークシミュレータSSが連通可能に接続されている。マスタシリンダM/CとストロークシミュレータSSの間には、常閉型の電磁弁であるキャンセル弁21が設けられている。ストロークシミュレータSSは、マスタシリンダM/Cの第1出力ポートPRIから供給された液圧を吸収するものである。
【0196】
キャンセル弁21は、非通電状態(図示状態)にあるときマスタシリンダM/Cの第1出力ポートPRIとストロークシミュレータSSとを遮断し、通電状態にあるときマスタシリンダM/Cの第1出力ポートPRIとストロークシミュレータSSとを連通するものである。
【0197】
そして、このキャンセル弁21は、液圧供給源20の正常時において通電されて開かれ、マスタシリンダM/CとストロークシミュレータSSとを連通し、異常時において非通電とされて閉じられマスタシリンダM/CとストロークシミュレータSSとの間を遮断するシミュレータカット手段であるストロークシミュレータカット弁として機能する。
【0198】
液圧供給源20は、電動モータM、ポンプP及びアキュムレータACCから構成されている。ポンプPは、電動モータMによって駆動されて、リザーバタンク22の入力ポート22aに連通する吸入ポートPaから吸い込んだリザーバタンク22のブレーキ液を吐出ポートPbから圧送する。
【0199】
アキュムレータACCは、ポンプPの吐出ポートPbに連通しており、ポンプPから供給される高圧のブレーキ液を常に一定の液圧に保って貯蔵し、必要に応じて各ホイルシリンダW/C(FL),W/C(FR),W/C(RL),W/C(RR)に供給するようになっている。ポンプPの吸入及び吐出ポートPa,Pbの間にはリリーフ弁23が介装されており、このリリーフ弁23はポンプPから吐出されるブレーキ液の液圧が所定値未満である場合には閉じられ、所定値以上となった場合には開かれるものである。これにより、液圧供給源20は、各ホイルシリンダW/C(FL),W/C(FR),W/C(RL),W/C(RR)に所定の高圧ブレーキ液を供給する。
【0200】
液圧供給源20は、常閉型の電磁弁であるソレノイドインバルブ4FLが通電状態にあるとき、ソレノイドインバルブ4FLを介して左前輪FL用のホイルシリンダW/C(FL)に連通している。ソレノイドインバルブ4FLは、通電により開閉を切換制御されるものであり、非通電状態(図示状態)にあるときホイルシリンダW/C(FL)に対して液圧供給源20を遮断する。また、ホイルシリンダW/C(FL)は、常閉型の電磁弁であるソレノイドアウトバルブ5FLが通電状態にあるときにソレノイドアウトバルブ5FLを介してリザーバタンク22に連通している。ソレノイドアウトバルブ5FLは、通電により開閉を切換制御するものであり、非通電状態(図示状態)にあるときリザーバタンク22に対してホイルシリンダW/C(FL)を遮断する。
【0201】
更に、液圧供給源20は、常閉型の電磁弁であるソレノイドインバルブ4FRが通電状態にあるときにソレノイドインバルブ4FRを介して右前輪FL用のホイルシリンダW/C(FR)に連通している。ソレノイドインバルブ4FRは、通電により開閉を切換制御されるものであり、非通電状態(図示状態)にあるときホイルシリンダW/C(FR)に対して液圧供給源20を遮断する。また、ホイルシリンダW/C(FR)は、常閉型の電磁弁であるソレノイドアウトバルブ5FRが通電状態にあるときにソレノイドアウトバルブ5FRを介してリザーバタンク22に連通している。ソレノイドアウトバルブ5FRは、通電により開閉を切換制御されるものであり、非通電状態(図示状態)にあるときリザーバタンク22に対してホイルシリンダW/C(FR)を遮断する。
【0202】
更に、液圧供給源20は、常閉型の電磁弁であるソレノイドインバルブ4RLが通電状態にあるときにソレノイドインバルブ4RLを介して左後輪RL用のホイルシリンダW/C(RL)に連通している。ソレノイドインバルブ4RLは、通電により開閉を切換制御されるものであり、非通電状態(図示状態)にあるときホイルシリンダW/C(RL)に対して液圧供給源20を遮断する。また、ホイルシリンダW/C(RL)は、常開型の電磁弁であるソレノイドアウトバルブ5RLが非通電状態(図示状態)にあるときにソレノイドアウトバルブ5RLを介してリザーバタンク22に連通している。ソレノイドアウトバルブ5RLは、通電により開閉を切換制御されるものであり、通電状態にあるときリザーバタンク22に対してホイルシリンダW/C(RL)を遮断する。
【0203】
更に、液圧供給源20は、常閉型の電磁弁であるソレノイドインバルブ4RRが通電状態にあるときにソレノイドインバルブ4RRを介して左後輪RR用のホイルシリンダW/C(RR)に連通している。ソレノイドインバルブ4RRは、通電により開閉を切換制御されるものであり、非通電状態(図示状態)にあるときホイルシリンダW/C(RR)に対して液圧供給源20を遮断する。また、ホイルシリンダW/C(RR)は、常開型の電磁弁であるソレノイドアウトバルブ5RRが非通電状態(図示状態)にあるときにソレノイドアウトバルブ5RRを介してリザーバタンク22に連通している。ソレノイドアウトバルブ5RRは、通電により開閉を切換制御されるものであり、通電状態にあるときリザーバタンク22に対してホイルシリンダW/C(RR)を遮断する。
【0204】
上述したソレノイドインバルブ4FL,4FR,4RL,4RRは、液圧供給源20と各ホイルシリンダW/C(FL),W/C(FR),W/C(RL),W/C(RR)をそれぞれ連通または遮断する増圧手段であり、ソレノイドアウトバルブ5FL,5FR,5RL,5RRは、各ホイルシリンダW/C(FL),W/C(FR),W/C(RL),W/C(RR)とリザーバタンク22をそれぞれ連通又は遮断する減圧手段である。
【0205】
〔モータ・バルブ駆動について〕
次に、図22に示す液圧回路図を適用した場合のステップS13におけるモータ・バルブ駆動の基本的な制御内容について説明する。図23は、モータ・バルブ駆動を表すフローチャートである。
【0206】
ステップS560では、ステップS9で選択された状態を判断する。肯定判断、即ち状態0であるときにはステップS562に進み、液圧ポンプ停止フラグf_PUMP_STOP=0にリセットしてステップS563に進み、キャンセル弁21を開状態及びゲートアウトバルブ3を閉状態としてステップS564に進み、通常ブレーキの各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)、各輪液圧P(FL)〜(RR)の信号に基づきソレノイドインバルブ4とソレノイドアウトバルブ5の制御量を決定してステップS571に進み、ホイルシリンダ圧が急激に変化することを防止するためにソフトランディング処理を行ってステップS572に進む。否定判断、即ち状態0ではないときにはステップS561に進む。
【0207】
ステップS561では、ステップS9で選択された状態を判断する。肯定判断、即ち状態1であるときにはステップS565に進み、液圧ポンプ停止フラグf_PUMP_STOP=1にリセットしてステップS566に進み、キャンセル弁21を閉状態及びゲートアウトバルブ3を開状態としてステップS567に進み、制御ブースタ液圧指令P*_mc、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)、各輪液圧P(FL)〜(RR)の信号に基づきソレノイドインバルブ4とソレノイドアウトバルブ5の制御量を決定してステップS571に進む。否定判断、即ち状態1ではないときにはステップS568に進み、液圧ポンプ停止フラグf_PUMP_STOP=0にセットしてステップS569に進み、キャンセル弁21を開状態及びゲートアウトバルブ3を閉状態としてステップS570に進み、P*(FL)〜(RR)、各輪液圧P(FL)〜(RR)の信号に基づきソレノイドインバルブ4とソレノイドアウトバルブ5の制御量を決定してステップS571に進む。
【0208】
ステップS572では、液圧ポンプ駆動の有無を判断する。肯定判断、即ちf_PUMP_STOP=1という判断が行われたときはステップS575に進み、モータ制御量をゼロにセットしてステップS2に戻る。否定判断、即ちf_PUMP_STOP=0という判断が行われたときにはステップS573に進む。
【0209】
ステップS573では、アキュムレータ圧力P_accと所定値P_motonの大小関係により液圧ポンプ駆動の有無を判断する。肯定判断、即ちP_acc≧P_motonでありアキュムレータ圧力が十分に高いという判断が行われたときにはステップS575に進み、モータ制御量をゼロにセットする。否定判断、即ちアキュムレータ圧力が低いという判断が行われたときにはステップS574に進み、モータ制御量を決定する。
【0210】
図24は、制御ブースタ駆動中にブレーキペダル操作を行った場合のタイムチャートである。これより、ヨーモーメント指令及びヨーレイト指令は、左回りの方向を正、右回りの方向を負として説明する。
【0211】
時刻t41において、第1ヨーモーメント指令M1が発生すると、ステップS9で示す液圧昇圧機能選択で、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止する状態1が選択される。
【0212】
第1ヨーモーメント指令M1に基づき各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)を演算する。このM1が左回りのヨーモーメント指令であるから、FL輪とRL輪にヨーモーメントを発生させるための液圧指令がセットされ、FR輪とRR輪の液圧指令にはゼロがセットされる。更に、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)の最大値が制御ブースタ液圧指令P*_mcにセットされ、制御ブースタ駆動要求フラグがf_BOOSTER_REQ=1にセットされる。
【0213】
ここで、運転者のブレーキペダル操作がないため、ブレーキスイッチBSはOFFの状態であり、ペダル操作モードPEDAL=0が選択される。
【0214】
制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOSTER_REQ=1であるため、制御ブースタ液圧指令P*_mcとマスタシリンダ圧P_mcとの関係に基づき電流指令値がセットされ、制御ブースタ1を駆動する。
【0215】
液圧ポンプPの駆動が禁止であるため、モータMは非駆動、キャンセル弁21は閉状態、ゲートアウトバルブ3Pは開状態、ゲートアウトバルブ3Sは閉状態となる。更に、自動でホイルシリンダ圧を制御するFL輪とRL輪のソレノイドインバルブ4は開状態、ソレノイドアウトバルブ5は閉状態となり、FR輪とRR輪のソレノイドインバルブ4は閉状態、ソレノイドアウトバルブ5は閉状態となるように駆動する。
【0216】
時刻t42において、運転者がブレーキペダルBPを操作し、ブレーキスイッチBSがONになると共に第1減速度指令Gx1が発生すると、ステップS9で示す液圧昇圧選択で制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止する状態1が選択される。
【0217】
第1減速度指令Gx1及び第1ヨーモーメント指令M1に基づき各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)を演算する。ゼロであったFR輪及びRR輪の液圧指令を増加させ、減速度を発生させる。更に、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)の最大値が制御ブースタ液圧指令P*_mcにセットされ、制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOSTER_REQ=1にセットされる。
【0218】
ここで、ブレーキスイッチはONの状態であるが、制御ブースタ1による制御圧よりもペダル操作量が小さいときは、ペダル操作モードPEDAL=1が選択される。すなわち、ステップS300→ステップS301→ステップS302→ステップS303→ステップS307→ステップS316へと進む処理である。
【0219】
制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOSTER_REQ=1であるため、制御ブースタ液圧指令P*_mcとマスタシリンダ圧P_mcとの関係に基づき電流指令値がセットされ、制御ブースタ1を駆動する。
【0220】
液圧ポンプPの駆動が禁止であるため、モータMは非駆動、キャンセル弁21は閉状態、ゲートアウトバルブ3Pは開状態、ゲートアウトバルブ3Sは閉状態となる。更に、FL輪とRL輪のソレノイドインバルブ4は開状態、ソレノイドアウトバルブ5は閉状態となり、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)と各輪液圧P(FL)〜(RR)との関係に基づき、FR輪とRR輪のソレノイドインバルブ4及びソレノイドアウトバルブ5を開閉操作する。
【0221】
時刻t43において、運転者がブレーキペダルBPを放し、ブレーキスイッチBSがOFFになると共に第1減速度指令Gx1が減少し、ステップS9で示す液圧昇圧機能選択で、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止する状態1が選択される。
【0222】
第1ヨーモーメント指令M1に基づき各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)を演算する。更に、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)の最大値が制御ブースタ液圧指令P*_mcにセットされ、制御ブースタ駆動要求フラグがf_BOOSTER_REQ=1にセットされる。
【0223】
ここで、運転者のブレーキペダル操作がないため、ブレーキスイッチBSはOFFの状態であり、ペダル操作モードPEDAL=0が選択される。
【0224】
制御ブースタ駆動要求フラグf_BOOSTER_REQ=1であるため、制御ブースタ液圧指令P*_mcとマスタシリンダ圧P_mcとの関係に基づき電流指令値がセットされ、制御ブースタ1を駆動する。
【0225】
液圧ポンプPの駆動が禁止であるため、モータMは非駆動、キャンセル弁21は閉状態、ゲートアウトバルブ3Pは開状態、ゲートアウトバルブ3は閉状態となる。更に、FL輪とRL輪のソレノイドインバルブ4は開状態、ソレノイドアウトバルブ5は閉状態となり、各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)と各輪液圧P(FL)〜(RR)との関係に基づき、FR輪とRR輪のソレノイドインバルブ4及びソレノイドアウトバルブ5を開閉操作する。即ち、ステップS560→ステップS561→ステップS565→ステップS566→ステップS567→ステップS571→ステップS572→ステップS575へと進む処理である。
【0226】
以降の処理は、前述した図13のタイムチャートにおける時刻t11から時刻t12の処理と同じであるため、ここでは省略する。
【0227】
以上説明したように、実施例3の車両挙動制御装置にあっては、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止した状態1でヨーモーメント制御を実行中に運転者がブレーキペダル操作を行った場合、ホイルシリンダ圧がゼロであった輪に液圧を発生させ、制動力を増加させることで車両挙動を制御する。これにより、ヨーモーメント制御を実行中に運転者の制動意図を反映させることができる。
【0228】
図25は、制御ブースタ駆動中にブレーキペダル操作を強く行った場合のタイムチャートである。
【0229】
時刻t53より以前においては、前述した図24のタイムチャートにおける時刻t41から時刻t43の処理と同じであるため、ここでは省略する。
【0230】
時刻t53において、運転者がブレーキペダルBPを踏み増すと、制御ブースタ1による制御圧、即ち制御ブースタ液圧指令P*_mcとマスタシリンダP_mcとの偏差がαよりも大きくなっていく。このとき、ステップS11のペダル操作量検出において、カウンタCOUNTをインクリメントしていく。即ち、ステップS300→ステップS301→ステップS302→ステップS303→ステップS308→ステップS311→ステップS317へと進む処理である。
【0231】
更に、時刻t53からβ経過し、制御ブースタ液圧指令P*_mcとマスタシリンダ圧P_mcとの偏差がαより大きい状態が所定時間続いたことで運転者がブレーキペダルを踏み増したことを検出し、ペダル操作モードPEDAL=2にセットする。即ち、ステップS300→ステップS301→ステップS302→ステップS303→ステップS308→ステップS311→ステップS318へと進む処理である。
【0232】
時刻t54において、第1減速度指令Gx1及び第1ヨーモーメント指令M1が減少し、通常ブレーキへと移行する。制御ブースタ1及びバルブは、それぞれステップS403、ステップS571でソフトランディング処理が行われ、時刻t55において完全に通常ブレーキ状態となる。
【0233】
以上説明したように、実施例3の車両挙動制御装置にあっては、制御ブースタ1の駆動を許可し、液圧ポンプPの駆動を禁止した状態1で、運転者がブレーキペダル操作に応じてヨーモーメント制御を実行中に、運転者がブレーキペダルを踏み増しした場合、4輪全てのホイルシリンダ圧をマスタシリンダ圧と一致させて通常ブレーキ状態に移行させる。これにより、運転者の制動意図が自動ブレーキ制御圧よりも大きい場合には、運転者の操作を優先させることにより、違和感を与えないようにすることができる。
【0234】
(他の実施例)
【0235】
以上、実施例1から3を図面に基づいて説明したが、上記構成に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更などがあっても本発明に含まれる。
例えば、ブレーキペダル操作量を検出する際、ブレーキペダルのストロークを検出するストロークセンサを設け、ストロークセンサの信号からペダル操作量を検出してもよい。また、ブレーキペダルの踏力を検出する踏力センサを設け、踏力センサの信号からペダル操作量を検出してもよい。
【0236】
このとき、ステップS11に示すペダル操作量検出において、より細かくペダル操作量を検出することが可能になる。したがって、ホイルシリンダ圧をゼロに制御していた旋回外輪の液圧の増圧量をより細かく演算することが可能になるため、運転者の制動意図をより正確に反映することができる。
【0237】
また、ステップS10において、ヨーモーメント指令から各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)を演算する際、旋回内前輪のみホイルシリンダ圧を発生させてもよい。これにより、後輪の車輪スリップ率を小さくすることで、ハンドル操作時の車両安定性を高めることができる。
【0238】
また、ステップS10において、ヨーモーメント指令から各輪液圧指令P*(FL)〜(RR)を演算する際、旋回内後輪のみホイルシリンダ圧を発生させてもよい。これにより、前輪のホイルシリンダ圧をゼロにすることで、液圧制御によるステアリングホイルへの振動を抑えることができ、運転者に違和感を与えないようにすることができる。
【0239】
また、ステップS10において、減速度指令に基づいて4輪を同圧で制御中にヨーモーメント指令が発生した際、旋回内輪のホイルシリンダ圧を増圧すると共に、旋回外輪のホイルシリンダ圧を減圧してヨーモーメントを発生させてもよい。これにより、旋回内輪の車輪の制動力を増加させると共に、旋回外輪の車輪の制動力を減圧させることで、車両の制動力を一定に保ち、運転者に減速感を与えないようにすることができる。
【0240】
また、バルブ駆動信号は、オンデューティ比であってもよい。これにより、バルブ開度を制御することで、より細かな液圧制御を行うことができ、運転者に違和感を与えないようにすることができる。
【0241】
また、モータ駆動信号は、オンデューティ比であってもよい。これにより、モータ回転数を制御することでより細かな液圧制御を行うことができ、運転者に違和感を与えないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0242】
【図1】実施例1の車両挙動制御装置を備えた車両の全体構成を表すシステム図である。
【図2】実施例1の車両挙動制御装置を適用したブレーキシステムの液圧回路図である。
【図3】実施例1における第1及び第2の液圧昇圧機能の動作の状態と、状態が遷移する条件とを示した状態遷移図である。
【図4】実施例1の車両挙動制御を実現するフローチャートである。
【図5】実施例1の液圧昇圧機能選択を表すフローチャートである。
【図6】実施例1の液圧昇圧機能選択を表すフローチャートである。
【図7】実施例1の液圧昇圧機能選択を表すフローチャートである。
【図8】実施例1の液圧昇圧機能選択を表すフローチャートである。
【図9】実施例1の液圧指令生成処理を表すフローチャートである。
【図10】実施例1のペダル操作量検出処理を表すフローチャートであ。
【図11】実施例1の制御ブースタ駆動処理を表すフローチャートである。
【図12】実施例1のモータ・バルブ駆動を表すフローチャートである。
【図13】実施例1の状態遷移を表すタイムチャートである。
【図14】実施例1の状態遷移を表すタイムチャートである。
【図15】実施例1の状態遷移を表すタイムチャートである。
【図16】実施例1の状態遷移を表すタイムチャートである。
【図17】実施例1の状態遷移を表すタイムチャートである。
【図18】実施例2の車両挙動制御装置を適用したブレーキシステムの液圧回路図である。
【図19】実施例2のモータ・バルブ駆動を表すフローチャートである。
【図20】実施例2の状態遷移を表すタイムチャートである。
【図21】実施例2の状態遷移を表すタイムチャートである。
【図22】実施例3の車両挙動制御装置を適用したブレーキシステムの液圧回路図である。
【図23】実施例3のモータ・バルブ駆動を表すフローチャートである。
【図24】実施例3の状態遷移を表すタイムチャートである。
【図25】実施例3の状態遷移を表すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0243】
1 制御ブースタ
2 ゲートインバルブ
3 ゲートアウトバルブ
4 ソレノイドインバルブ
5 ソレノイドアウトバルブ
16 リザーバ
20 液圧供給源
21 キャンセル弁
22 リザーバタンク
23 リリーフ弁
31 ブレーキユニット
32 コントロールユニット
33 ヨーレイトセンサ
34 前後加速度センサ
35 横加速度センサ
36 舵角センサ
37 カメラ
38 車輪速センサ
ACC アキュムレータ
BP ブレーキペダル
BS ブレーキスイッチ
COUNT カウンタ
M モータ
M/C マスタシリンダ
P ポンプ
PMC 圧力センサ
PRI,SEC 出力ポート
SS ストロークシミュレータ
W/C ホイルシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルの操作に応じて作動してホイルシリンダを加圧するマスタシリンダと、
ブレーキペダルとは別に設けられ前記マスタシリンダを作動させてホイルシリンダを加圧する第1の昇圧部と、
前記マスタシリンダを介さずに前記ホイルシリンダを加圧する第2の昇圧部と、
前記昇圧部を制御するコントロールユニットと、
を備え、
前記コントロールユニットには、自車両と周囲との相対的な関係に基づく第1の動作指令と、自車両の絶対的な挙動に基づく第2の動作指令とが入力され、
入力された指令が第1の動作指令の場合、前記第1の昇圧部を作動させると共に、入力された指令が第2の動作指令の場合、前記第2の昇圧部を作動させ、
第1の動作指令が入力されて前記第1の昇圧部が作動しているときに第2の動作指令が入力された場合、第1の昇圧部に加え、第2の昇圧部を作動させることを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両挙動制御装置において、
前記コントロールユニットは、第1及び第2の昇圧部の両方が作動しているときに、第1または第2の動作指令のうち、一方の動作指令の入力がなくなったときは、入力されている動作指令に該当する昇圧部のみを作動することを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両挙動制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記第1の動作指令が入力され、かつ、第2の動作指令が入力されていないときは、第2の昇圧部の作動を禁止することを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両挙動制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記第1の動作指令が入力されておらず、かつ、第2の動作指令が入力されているときは、第1の動作指令が入力されたとしても第1の昇圧部の作動を禁止することを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両挙動制御装置において、
前記自車両と周囲との相対的な関係は、車両に取り付けられたカメラ又はレーダによって認識される関係であり、
前記自車両の絶対的な挙動は、車両に取り付けられた挙動検出センサの検出値であることを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項6】
請求項4に記載の車両挙動制御装置において、
第1の昇圧部は、ドライバのブレーキペダルの操作力を補助する制御ブースタであり、
第2の昇圧部は、ドライバのブレーキペダルの操作とは無関係にホイルシリンダ圧を制御可能な液圧源であることを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両挙動制御装置において、
前記液圧源はポンプであることを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項8】
ブレーキペダルの操作に応じて作動してホイルシリンダを加圧するマスタシリンダと、
ブレーキペダルとは別に設けられマスタシリンダを作動させてホイルシリンダを加圧する第1の昇圧部と、
前記マスタシリンダを介さずに前記ホイルシリンダを加圧する第2の昇圧部と、
前記昇圧部を制御するコントロールユニットと、
を備え、
前記コントロールユニットは、前記第1の昇圧部を作動させホイルシリンダを加圧する第1昇圧制御と、前記第2の昇圧部を作動させホイルシリンダを加圧する第2昇圧制御と、前記第1昇圧制御の開始後に前記第2昇圧制御を同時に行う同時昇圧制御を行うことを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の車両挙動制御装置において、
前記コントロールユニットには、自車両と周囲の相対的な関係に基づき演算され前記第1昇圧制御に用いられる第1の動作指令と、自車両の絶対的な挙動に基づき演算され前記第2昇圧制御に用いられる第2の動作指令とが入力され、
前記コントロールユニットは、第1及び第2昇圧制御の両方の制御中に、前記第1または第2の動作指令のうち、一方の動作指令の入力がなくなったときには、入力されている動作指令に該当する昇圧部のみを作動することを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車両挙動制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記第1の動作指令が入力され、かつ、前記第2の動作指令が入力されていないときは、前記第2の昇圧部の作動を禁止することを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載の車両挙動制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記第1の動作指令が入力されていなく、かつ、前記第2の動作指令が入力されているときは、前記第1の動作指令がきたとしても前記第1の昇圧部の作動を禁止することを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の車両挙動制御装置において、
前記自車両と周囲との相対的な関係は、車両に取り付けられたカメラ又はレーダによって認識される関係であり、
前記自車両の絶対的な挙動は、車両に取り付けられた挙動検出船さの検出値であることを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載の車両挙動制御装置において、
前記第1の昇圧部は、ドライバのブレーキペダルの操作力を補助する制御ブースタであり、
前記第2の昇圧部は、ドライバのブレーキペダル操作とは無関係にホイルシリンダ圧力を制御可能な液圧源であることを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項14】
請求項13に記載の車両挙動制御装置において、
前記液圧源はポンプであることを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項15】
ブレーキペダルの操作に応じて作動してホイルシリンダを加圧するマスタシリンダと、
ブレーキペダルとは別に設けられマスタシリンダを作動させてホイルシリンダを加圧する第1の昇圧部と、
前記マスタシリンダを介さずに前記ホイルシリンダを加圧する第2の昇圧部と、
前記昇圧部を制御するコントロールユニットと、
前記マスタシリンダと前記ホイルシリンダとを接続する第1ブレーキ回路と、
前記第1ブレーキ回路と前記第2の昇圧部の吐出側とを前記第1ブレーキ回路側への流れのみ許容する逆止弁を介して接続する第2ブレーキ回路と、
前記第1ブレーキ回路上であって前記第2ブレーキ回路の接続位置よりも前記マスタシリンダ側に設けられたアウト側ゲート弁と、
前記第1ブレーキ回路上であって前記アウト側ゲート弁よりも前記マスタシリンダ側の位置と前記第2の昇圧部の吸入側とを接続する第3ブレーキ回路と、
前記第3ブレーキ回路上であって前記第2の昇圧部の吸入側と、前記マスタシリンダ側とを選択的に連通・非連通状態とに切り換える切換弁と、
前記第1ブレーキ回路上であって前記第2ブレーキ回路の接続位置よりも前記ホイルシリンダ側に設けられた流入弁と、
前記第1ブレーキ回路上であって前記流入弁よりも前記ホイルシリンダ側の位置と前記ポンプの吸入側とを接続する第4ブレーキ回路と、
前記第4ブレーキ回路上に設けられた常閉の流出弁と、
前記第4ブレーキ回路上であって前記流出弁よりも前記第2の昇圧部の吸入側に設けられたリザーバと、
を備え、
前記コントロールユニットは、前記第2の昇圧部を作動させるときは前記アウト側ゲート弁を閉弁し前記切換弁を開弁する第1の状態と、前記第1の昇圧部を作動させるときは前記アウト側ゲート弁を開弁し前記切換弁を閉弁する第2の状態と、前記第1の昇圧部を作動中に前記第2の昇圧部を加えて作動させたときは前記切換弁を開弁させる第3の状態とを形成することを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項16】
請求項15に記載の車両挙動制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記第1及び第2の昇圧部の両方が作動しているときに、前記第1または第2の動作指令のうち、一方の動作指令の入力がなくなったときには、入力されている動作指令に該当する昇圧部のみを作動することを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項17】
請求項15または16に記載の車両挙動制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記第1の動作指令が入力され、かつ、前記第2の動作指令が入力されていないときは前記第2の昇圧部の作動を禁止することを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項18】
請求項17に記載の車両挙動制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記第1の動作指令が入力されていなく、かつ、前記第2の動作指令が入力されているときは、前記第1の動作指令がきたとしても前記第1の昇圧部の作動を禁止することを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項19】
請求項18に記載の車両挙動制御装置において、
前記自車両と周囲との相対的な関係は、車両に取り付けられたカメラ又はレーダによって認識される関係であり、
前記自車両の絶対的な挙動は、車両に取り付けられた挙動検出船さの検出値であることを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項20】
請求項18または19に記載の車両挙動制御装置において、
前記第1の昇圧部は、ドライバのブレーキペダルの操作力を補助する制御ブースタであり、
前記第2の昇圧部は、ドライバのブレーキペダル操作とは無関係にホイルシリンダ圧力を制御可能な液圧源であることを特徴とする車両挙動制御装置。
【請求項21】
請求項20に記載の車両挙動制御装置において、
前記液圧源はポンプであることを特徴とする車両挙動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−296740(P2008−296740A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145206(P2007−145206)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】