説明

車両用のハイブリッド駆動機構

【課題】コンパクトな構造の車両用のハイブリッド駆動機構を提供する。
【解決手段】ダブルクラッチトランスミッション10が中空シャフトとしての第1のインプットシャフト9と、第1のインプットシャフトを貫通する第2のインプットシャフト11とを有し、第1及び第2のインプットシャフトに対し平行に配置されるトランスミッションシャフト15を有し、ダブルクラッチトランスミッションのダブルクラッチ5を介して内燃機関2及び/又は電気機械26によって駆動トルクを第1のインプットシャフト又は第2のインプットシャフトに加えることができる車両用のハイブリッド駆動機構であって、電気機械がダブルクラッチトランスミッションの外側に配置され、電気機械のアウトプットシャフト25が、中空シャフトとしてのトランスミッションシャフトを貫通し、アウトプットシャフトの回転運動をダブルクラッチ5に伝達するための手段27、24が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と、電気機械と、多数の切換可能なギヤ速度を有するダブルクラッチトランスミッションとを有する車両用のハイブリッド駆動機構(Hybrid drive、ハイブリッド駆動装置)であって、ダブルクラッチトランスミッションが中空シャフトとしての第1のインプットシャフトと、第1のインプットシャフトを貫通する第2のインプットシャフトとを有し、かつ第1及び第2のインプットシャフトに対し平行に配置されるトランスミッションシャフトを有し、及びダブルクラッチトランスミッションのダブルクラッチを介して内燃機関及び/又は電気機械によって駆動トルクを第1又は第2のインプットシャフトに加えることができる車両用のハイブリッド駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなハイブリッド駆動機構では、1つ以上の電気機械を設けることができる。電気機械は、トルクをトランスミッションシャフトに供給し及び/又は発電機モードによってトランスミッションシャフトからトルクを取り除くために、特にトランスミッションに使用される。この他にも、電気機械はまた、内燃機関の冷機始動又は暖機始動のために使用することができる。
【0003】
公知のハイブリッド駆動機構では、電気機械は、空間的にはダブルクラッチトランスミッションの内部に配置されることが多く、この場合ダブルクラッチトランスミッションは、内燃機関、電気機械、ダブルクラッチ及びトランスミッションによって必要とされる比較的大きな取付け空間を占める。このような取付け空間は、特に、内燃機関が車両の後部領域に配置される乗用車では確保できない。
【0004】
冒頭に述べた種類のハイブリッド駆動機構は、下記特許文献1から公知である。この文献は、電気機械用の多数の異なる作用位置を提案し、かつ多数の運転モードに電気機械を使用することを示唆している。一変形例によれば、電気機械の配置によってダブルクラッチの入力側に直接作用できるように、ダブルクラッチトランスミッションを具体化することが意図される。この関連で、電気機械からの駆動エンジンの選択的な切り離しを可能にする別のクラッチを設けることが提案されている。同様に、電気機械がトランスミッションのアウトプットシャフトに直接、あるいはトランスミッションのレイシャフト(layshaft)に直接作用するべきであることも提案されている。
【0005】
電気機械がダブルクラッチトランスミッションの外側に配置される場合、内燃機関とダブルクラッチトランスミッションとの分離点の領域にトルクを加えることができないことは不利である。
【0006】
内燃機関と、電気機械と、ダブルクラッチトランスミッションとを有する車両用のハイブリッド駆動機構が、下記特許文献2からも公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005035328A1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1714817A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、電気機械のトルクが内燃機関とダブルクラッチトランスミッションとの分離点の領域に適用される場合に、ダブルクラッチトランスミッションのコンパクトな構造が保証されるように冒頭に述べた種類のハイブリッド駆動機構を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、冒頭に述べた種類のハイブリッド駆動機構において、電気機械がダブルクラッチトランスミッションの外側に配置され、電気機械のアウトプットシャフトが、中空シャフトとして具体化されるトランスミッションシャフトを貫通し、及びアウトプットシャフトの回転運動をダブルクラッチに伝達するための手段が設けられることによって達成される。
【0010】
したがって、本発明では、電気機械がダブルクラッチトランスミッションの外側に配置されるが、電気機械の出力トルクが、ダブルクラッチトランスミッションの内側に、具体的にはダブルクラッチを介して適用されることが重要である。したがって、電気機械は、内燃機関とトランスミッションとの間の分離が行われる箇所に機能的に配置される。
【0011】
トランスミッションシャフトは、ダブルクラッチトランスミッションのアウトプットシャフト又はレイシャフトであることが好ましい。トランスミッションシャフトは、電気機械のアウトプットシャフトを保持するために使用される。電気機械の出力トルクは、そのアウトプットシャフトによってダブルクラッチに伝達される。
【0012】
アウトプットシャフトの回転運動を伝達するための手段が、歯車段(a gearwheel stage)として具体化される場合、特に有利であると考えられ、この場合、一方の歯車がアウトプットシャフトに回転に関して固定されて結合され、他方の歯車がダブルクラッチに回転に関して固定されて結合される。歯車段としての構造によって、構造上特に簡単に、電気機械のアウトプットシャフトのトルクをダブルクラッチに伝達することができる。スパーギヤ段(平歯車)として歯車段を具体化することにより、この歯車段の領域において、トランスミッションの取付け空間が小さくてすむ。ダブルクラッチ側のスパーギヤは、特に、ダブルクラッチのハウジングに回転に関して固定されて結合される。このハウジングは、クラッチ、特に分離クラッチが内燃機関とダブルクラッチとの間に配置されない限り、内燃機関のアウトプットシャフトの回転速度で回転する。この分離クラッチは、電気モータのみによって車両を駆動できるために、したがって内燃機関が切り離されたときに使用される。
【0013】
本発明の特別な一実施形態によれば、他方の歯車又はスパーギヤが、ダブルクラッチトランスミッションの油圧ポンプを駆動するための歯車又はスパーギヤと係合することが意図される。この歯車セットは、特に、油圧ポンプの駆動用にすでに提供されている設計による歯車セットである。したがって、必要なことは、電気機械のアウトプットシャフトに結合されかつ油圧ポンプを駆動するための歯車セットと噛合する追加の歯車を設けることである。しかし、電気機械による駆動の必要性に従って、油圧ポンプを駆動するために設けられる歯車セットを構成することが必要である。
【0014】
ハイブリッド駆動機構は、特に、内燃機関及びダブルクラッチトランスミッションが車両の後部領域に配置され、電気機械がダブルクラッチトランスミッションの上流に配置される車両に使用される。内燃機関と一方でダブルクラッチトランスミッションと、他方で電気機械との構造的な分離の結果、したがって、内燃機関とダブルクラッチトランスミッションとの間の電気機械ユニットの省略の結果、電気機械が内燃機関とトランスミッションとの間に配置され、したがって、電気機械がエンジントランスミッションフランジの領域に配置されるハイブリッド駆動機構と比較して、全長を短縮することができる。さらに、後部装着エンジンによって駆動される車両では、電気機械がダブルクラッチトランスミッションの上流に配置された場合、重量分布の大幅な改良が達成される。しかし、電気機械は、内燃機関に面するダブルクラッチトランスミッションの側面に基本的には同様に容易に配置できるであろう。
【0015】
特に、電気機械が車両の後部領域に配置される。車両の後部領域の内燃機関及びダブルクラッチトランスミッションの配置を前提として、車両の前車軸の領域に電気機械を配置することが完全に考えられる。電気機械とダブルクラッチトランスミッションとの間の結合は、例えばカルダン(cardan)シャフトによって行うことができる。アウトプットシャフトが、それに対し横方向に配置されかつダブルクラッチトランスミッションの出力に結合される車輪駆動シャフトの下に配置される場合、構造的に特に有利であると考えられる。このことにより、ダブルクラッチ、車軸駆動装置、車輪セット及び油圧ポンプに利用可能な空間が限定されるにもかかわらず、電気機械の装着部をダブルクラッチトランスミッションの外側に移動する可能性が提供される。
【0016】
本発明の例示的な好ましい一実施形態を図面に示し、次の詳細な説明においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】電気機械のアウトプットシャフトがダブルクラッチトランスミッションの出力アウトプットシャフトを貫通するハイブリッド駆動機構の第1の実施形態の概略図である。
【図2】電気機械のアウトプットシャフトがダブルクラッチトランスミッションのレイシャフトを貫通するハイブリッド駆動機構の第1の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1の図に係る実施形態は、ハイブリッド駆動機構1の内燃機関2の出力アウトプットのために使用される2質量の(two−mass)フライホイール3のみを示しており、このフライホイールは、分離クラッチ4を介してダブルクラッチ5のハウジング6の領域でダブルクラッチ5に結合することができる。ダブルクラッチ5が結合される方法に応じて、ダブルクラッチ5のハウジング6は、ダブルクラッチ5の一方のクラッチ7又は他方のクラッチ8に摩擦ロック式に結合することができる。クラッチ7の半分は、ダブルクラッチトランスミッション10の第1のインプットシャフト9に回転に関して固定されて結合され、他方、クラッチ8の半分は、第1のインプットシャフト9を同軸に貫通するダブルクラッチトランスミッション10の第2のインプットシャフト11に回転に関して固定されて結合される。偶数の前進ギヤ速度(ギヤ速度2、4と6)を有する第1の部分トランスミッションは、第1のインプットシャフト9に付設され、奇数の前進ギヤ速度(ギヤ速度1、3、5と7)及び後退ギヤ速度は、第2のインプットシャフト11に付設される。第1のインプットシャフト9に結合される歯車は、参照番号12で示され、第2のインプットシャフト11に結合される歯車は、参照番号13で示されている。上述のギヤ速度は、小さな数1〜7及び小さな大文字Rで示されている。同期ユニット14は、歯車12と13を同期させるために設けられる。
【0019】
ダブルクラッチトランスミッション10の出力アウトプットシャフト15は、2つのインプットシャフト9と11と平行に、すなわち、それらからある距離を置いて配置される。歯車12と相互作用する(噛み合う)歯車16及び歯車13と相互作用する(噛み合う)歯車17は、この出力アウトプットシャフト15に付設される。出力アウトプットシャフト15の歯車16と17を同期させるための同期ユニットは、参照番号18で示されている。
【0020】
最後に、車両のディファレンシャル22を介して車輪駆動シャフト23を駆動させることができるシャフト21に結合される歯車20と噛合する歯車19は、出力アウトプットシャフト15に結合される。
【0021】
ダブルクラッチトランスミッション10の油圧ポンプを駆動するように機能するスパーギヤ24は、歯車12に面する側面においてダブルクラッチ5のハウジング6に結合される。このスパーギヤ24は、油圧ポンプ(図示せず)の駆動シャフトに結合される図示していないスパーギヤと相互作用する(噛み合う)。2つのインプットシャフト9と11は、スパーギヤ24を貫通する。
【0022】
出力アウトプットシャフト15は、中空シャフトとして具体化され、ダブルクラッチトランスミッション10の外側に配置される電気機械26のアウトプットシャフト25は、前記出力アウトプットシャフト15を同心に貫通する。電気機械26の反対側のアウトプットシャフト25の端部は、スパーギヤ24と噛合するスパーギヤ27に結合される。
【0023】
ハイブリッド駆動機構1は、内燃機関2及びダブルクラッチトランスミッション10が乗用車の後部領域に配置されるように配向され、電気機械26は、ダブルクラッチトランスミッション10の上流に、必要に応じて、車両の前車軸の領域にさえも配置される。
【0024】
したがって、ハイブリッド駆動機構1により、内燃機関2及びダブルクラッチトランスミッション10の位置と異なる位置に電気機械26を配置することができ、それにもかかわらず、スパーギヤ27に対し出力アウトプットシャフト15を通してアウトプットシャフト25が延びることにより、トルクが前記ダブルクラッチ5の領域のダブルクラッチ5に加えられる電気機械26が、したがって、内燃機関2とダブルクラッチトランスミッション10との間に機能的に配置されることが保証される。
【0025】
図2による実施形態は、シャフト15が出力アウトプットシャフトの機能の代わりにレイシャフトの機能を有する点でのみ、図1の実施形態とは異なる。この場合、歯車17aと13aは、歯車12と13を介して歯車16と17にかつそこからレイシャフト15に加えられたトルクを、歯車13aが結合される出力アウトプットシャフト28に伝達する機能を担う。この変形例では、5番目の前進ギヤ速度の場合、第2のインプットシャフト11の歯車13とレイシャフト15の歯車との間に相互作用はなく、その代わりに、出力アウトプットシャフト28が第2のインプットシャフト11によって直接駆動される。
【符号の説明】
【0026】
1 ハイブリッド駆動機構
2 内燃機関
4 クラッチ
5 ダブルクラッチ
6 ハウジング
9 第1のインプットシャフト
10 ダブルクラッチトランスミッション
11 第2のインプットシャフト
15 トランスミッションシャフト
23 車輪駆動シャフト
24 歯車
25 アウトプットシャフト
26 電気機械
27 歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(2)と、電気機械(26)と、多数の切換可能なギヤ速度を有するダブルクラッチトランスミッション(5)とを有する車両用のハイブリッド駆動機構(1)であって、ダブルクラッチトランスミッション(10)が中空シャフトとしての第1のインプットシャフト(9)と、前記第1のインプットシャフト(9)を貫通する第2のインプットシャフト(11)とを有し、かつ前記第1及び第2のインプットシャフトに対し平行に配置されるトランスミッションシャフト(15)を有し、及び前記ダブルクラッチトランスミッション(10)のダブルクラッチ(5)を介して前記内燃機関(2)及び/又は前記電気機械(26)によって駆動トルクを前記第1のインプットシャフト(9)又は第2のインプットシャフト(11)に適用することができるハイブリッド駆動機構において、
前記電気機械(26)が前記ダブルクラッチトランスミッション(10)の外側に配置され、前記電気機械(26)のアウトプットシャフト(25)が、中空シャフトとして具体化される前記トランスミッションシャフト(15)を貫通し、及び前記アウトプットシャフト(25)の回転運動を前記ダブルクラッチ(5)に伝達するための手段(27、24)が設けられることを特徴とするハイブリッド駆動機構。
【請求項2】
前記トランスミッションシャフト(15)が、前記ダブルクラッチトランスミッション(10)の出力アウトプットシャフト又はレイシャフトであることを特徴とする、請求項1に記載のハイブリッド駆動機構。
【請求項3】
前記アウトプットシャフト(25)の回転運動を伝達するための前記手段(27、24)が、歯車段として具体化され、一方の歯車(27)が前記アウトプットシャフト(25)に回転に関して固定されて結合され、他方の歯車(24)が前記ダブルクラッチ(5)に回転に関して固定されて結合されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のハイブリッド駆動機構。
【請求項4】
前記歯車段がスパーギヤ段として具体化され、前記ダブルクラッチ側のスパーギヤ(24)が、前記ダブルクラッチ(5)のハウジング(6)に回転関して固定されて結合されることを特徴とする、請求項3に記載のハイブリッド駆動機構。
【請求項5】
前記他方の歯車(24)又はスパーギヤが、前記ダブルクラッチトランスミッション(10)の油圧ポンプを駆動するための歯車又はスパーギヤと係合することを特徴とする、請求項3又は4に記載のハイブリッド駆動機構。
【請求項6】
前記内燃機関(2)及び前記ダブルクラッチトランスミッション(10)が、車両の後部領域に配置され、前記電気機械(26)が前記ダブルクラッチトランスミッション(10)の上流に配置されることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動機構。
【請求項7】
前記電気機械(26)が、車両の後部領域に、又は、特にカルダンシャフトによって車両の前車軸の領域に配置されることを特徴とする、請求項6に記載のハイブリッド駆動機構。
【請求項8】
前記アウトプットシャフト(25)が、前記アウトプットシャフトに対し横方向に配置されかつ前記ダブルクラッチトランスミッション(10)の出力に結合される車輪駆動シャフト(23)の下に配置されることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動機構。
【請求項9】
クラッチ(4)が、前記内燃機関(2)と前記ダブルクラッチ(5)との間に配置されることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のハイブリッド駆動機構。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−70188(P2010−70188A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211355(P2009−211355)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(508174975)ドクトル イング ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (134)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】