説明

車両用の流体フィルタ装置

【課題】部品点数が少なく、液密性が高いオートマチック車両用の薄型流体フィルタ装置を提供する。
【解決手段】自動変速機用のオイルを濾過する車両用の流体フィルタ装置を一対の前記ケース要素10A,10Bとこれらに挟み込まれるフィルタエレメント20とで構成する。フィルタエレメント20をひだ折りされたエレメント本体21と、その外周を取り囲む樹脂製の保持部材22とで構成し、保持部材22を射出成形してエレメント本体21と一体化する。そして、保持部材22の外周にフレームフランジ22aを形成する。一方、各ケース要素10A,10Bには、ケースフランジ14A,14Bを形成する。そして、フレームフランジ22aをケースフランジ14A,14Bで挟み、これらを溶着して一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いる薄型の流体フィルタ装置に関する。例えば、オートマチックトランスミッション内に充填される作動油に対する流体フィルタ装置に適用できる。
【背景技術】
【0002】
オートマチック式のトランスミッションを備えた自動車において、ミッション内に充填された作動油を濾過するために流体フィルタ装置が用いられている。この種の流体フィルタ装置はミッションケースの下部の狭いスペースに設置する必要から、扁平形状に構成される。
【0003】
一般に、ミッション内の作動油を濾過するフィルタエレメントは、特許文献1に開示のフィルタ装置のように、平坦に形成されたものが使用されていた。そして、濾材その物がケース要素により挟み込まれて固定されているのが従来の一般的なフィルタ装置であった。
【0004】
もっとも、オートマチックトランスミッションの作動油を濾過するフィルタ装置の中には、図6に示す形態のものも存在していた。
【0005】
このフィルタ装置は、鉄板製のケース要素1、2と、フィルタガイド3と、フィルタエレメント4とを有している。フィルタエレメント4は、フィルタガイド3とケース要素2とに対して接着剤により接着され、ケース要素1、2はそれらの外周で互いに接合されている。
【0006】
【特許文献1】特表平11−505470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の流体フィルタ装置は、各構成部品が別々の工程で製造されているために、接着工程が必要であり、部品数も多く製作工程が複雑である。また、接着剤を用いた接着では液密性が不安定であるという問題点がある。
【0008】
そこで、本発明は、部品点数の削減によるコストの低減が可能で、かつ、液密性の高いオートマチック車両用の薄形の流体フィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
樹脂製の一対のケース要素(10A,10B)を組み合わせて構成されるフィルタケース(10)と、前記一対のケース要素(10A,10B)間に挟まれて前記フィルタケース(10)内をダーティサイド(S1)とクリーンサイド(S2)とに区分するフィルタエレメント(20)とを具備し、前記ダーティサイド(S1)から前記クリーンサイド(S2)に向けて自動変速機用のオイルを通過させてこのオイルを濾過する車両用の流体フィルタ装置であって、前記フィルタエレメント(20)は、流体を濾過するためのエレメント本体(21)と、前記エレメント本体(21)の外周を取り囲む樹脂製の保持部材(22)とを有し、前記エレメント本体(21)は、所定の濾材を山部と谷部が交互に配置されるようひだ折りされて構成され、前記保持部材(22)はエレメント本体(21)をインサートとする射出成形により前記エレメント本体(21)と一体化され、この保持部材(22)の外周には外側方に向けて張り出すフレームフランジ(22a)が形成され、各ケース要素(10A,10B)の合わせ部には、外側方に向けて張り出すケースフランジ(14A,14B)がそれぞれ形成され、前記フィルタエレメント(20)は、前記保持部材(22)のフレームフランジ(22a)が前記ケース要素(10A,10B)のケースフランジ(14A,14B)の間に挟まれ、一対の前記ケース要素(10A,10B)は、ケースフランジ(14A,14B)が全周に亘って溶着されて、前記ケースフランジ(14A,14B)と前記フレームフランジ(22a)とが一体に構成された車両用の流体フィルタ装置を採用することとした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の流体フィルタ装置によれば、濾材をインサートとする射出成形方法により前記濾材と前記濾材の保持部材とを一体化することによって、部品点数の削減に基づくコストの低減と、高い液密性を有する薄型の流体フィルタ装置が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1〜図5は本発明が適用されたフィルタ装置を示している。このフィルタ装置は、樹脂製のフィルタケース10と、その内部に装着されてフィルタケース10内をダーティサイドS1とクリーンサイドS2とに区分するフィルタエレメント20とを有している。フィルタケース10は、樹脂製の一対のケース要素10A、10Bを組み合わせて構成される。一方のケース要素10Aは、ダーティサイドS1に作動油を導くための流入管11と、フィルタケース10をミッションケース等に固定するための取付孔12とを有している。他方のケース要素10Bは、クリーンサイドS2から作動油を送り出すための流出管13を有している。各ケース要素10A、10Bの外周には、両者を全周に亘って接合するためのフランジ14A、14Bがそれぞれ形成されている。
【0013】
フィルタエレメント20は、所定の濾材を山部と谷部が交互に配置されるようにひだ折りして形成されたエレメント本体21と、そのエレメント本体21の外周を取り囲むように設けられた樹脂製のフレーム22とを有している。エレメント本体21とフレーム22とは、エレメント本体21をインサートとする射出成形方法により一体に形成されている。フレーム22の外周にはフランジ22aが設けられている。
【0014】
ケース要素10A、10Bのフランジ14A、14Bの間にフィルタエレメント20のフランジ22aを挟み込み、その後にフランジ14A、14Bを相互に接合してフィルタ装置が構成される。接合の方法は、振動溶着、高周波誘電加熱溶着、超音波加熱溶着、摩擦溶着等のいずれでもよい。このように構成されたフィルタ装置は、取付孔12に挿入されたボルトにより車両の適当な固定箇所、例えばオートマチックトランスミッションのケースや車体に固定される。流入管11はトランスミッション(不図示)の作動油の排出口、流出管13はトランスミッションの作動油取込口にそれぞれ接続される。
【0015】
なお、本発明の実施の形態は上述のものに限らず、種々変更しても良い。例えば、エレメント本体21の目詰まりに起因してダーティサイドS1の圧力が所定値を超えたときに開口して、ダーティサイドS1からクリーンサイドS2へ作動油を通過させるためのエスケープバルブをフランジ22a上に設けても良い。エレメント本体21のひだ折りの方向(山部と谷部とが交互に連なる方向)を図1に示すものに対して90度ずらしても良い。
【0016】
本発明の流体フィルタ装置は、オートマチックトランスミッションの作動油に限らず、各種の流体の濾過に使用してよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用した流体フィルタ装置を示す断面概略図。
【図2】図1における上方から見た流体フィルタ装置を示す平面概略図。
【図3】図1における下方から見た流体フィルタ装置を示す平面概略図。
【図4】図1のIV−IV線に沿った断面図。
【図5】図1のV−V線に沿った断面図。
【図6】従来の車両用の流体フィルタ装置を示す斜視図。
【符号の説明】
【0018】
1,2・・・・・・ケース要素
3・・・・・・・・フィルタガイド
4・・・・・・・・フィルタエレメント
10・・・・・・・フィルタケース
10A,10B・・ケース要素
11・・・・・・・流入管
12・・・・・・・取付孔
13・・・・・・・流出管
20・・・・・・・フィルタエレメント
21・・・・・・・エレメント本体
22a・・・・・・フランジ
22・・・・・・・フレーム
14A,14B・・フランジ
S1・・・・・・・ダーティサイド
S2・・・・・・・クリーンサイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の一対のケース要素を組み合わせて構成されるフィルタケースと、前記一対のケース要素間に挟まれて前記フィルタケース内をダーティサイドとクリーンサイドとに区分するフィルタエレメントとを具備し、前記ダーティサイドから前記クリーンサイドに向けて自動変速機用のオイルを通過させてこのオイルを濾過する車両用の流体フィルタ装置であって、
前記フィルタエレメントは、流体を濾過するためのエレメント本体と、前記エレメント本体の外周を取り囲む樹脂製の保持部材とを有し、
前記エレメント本体は、所定の濾材を山部と谷部が交互に配置されるようひだ折りされて構成され、
前記保持部材はエレメント本体をインサートとする射出成形により前記エレメント本体と一体化され、この保持部材の外周には外側方に向けて張り出すフレームフランジが形成され、
各ケース要素の合わせ部には、外側方に向けて張り出すケースフランジがそれぞれ形成され、
前記フィルタエレメントは、前記保持部材のフレームフランジが前記ケース要素に形成された前記ケースフランジの間に挟まれ、
一対の前記ケース要素は、ケースフランジが全周に亘って溶着され、前記ケースフランジと前記フレームフランジとが一体に構成されたことを特徴とする車両用の流体フィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−132769(P2006−132769A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308289(P2005−308289)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【分割の表示】特願平11−85261の分割
【原出願日】平成11年3月29日(1999.3.29)
【出願人】(000223034)東洋▲ろ▼機製造株式会社 (51)
【Fターム(参考)】