説明

車両用オーディオの制御装置

【課題】この発明の目的は、ハードディスクドライブ等の記憶装置に記憶される音楽や映像ソフトのデータに格納されている音楽ジャンル情報を用いて、ユーザ自身が再生される音楽毎に再生特性を設定する操作を必要とすることなく、自動的に音楽のジャンルに最適な再生特性を設定することができ、操作の煩わしさを解消することにある。
【解決手段】この発明は、車両に音楽あるいは映像ソフトのデータを記憶する記憶装置を搭載して設け、この記憶装置に記憶される音楽あるいは映像ソフトのデータから音楽を再生する車両用オーディオを設け、この車両用オーディオにより音楽を再生する際に、前記記憶装置に記憶される音楽あるいは映像ソフトのデータの一部である音楽ジャンル情報に応じて音楽の再生特性を設定する制御手段を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両用オーディオの制御装置に係り、特に、ハードディスクドライブ等の記憶装置に記憶される音楽や映像ソフトのデータに格納されている音楽ジャンル情報を用いて、ユーザ自身が再生される音楽毎に再生特性を設定する操作を必要とすることなく、自動的に音楽のジャンルに最適な再生特性を設定することができる車両用オーディオの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される車両用オーディオにおいては、車室内の音場を良好なものとするために、音楽のジャンル、例えば、クラシック、ポップス、ジャズ、ロック、演歌等に応じて、再生時の周波数特性や音場特性(残響、反射等)を変化させるイコライザ等の機能を備えているものがある。
【0003】
このような車両用オーディオとしては、パネルスイッチの操作により音楽ジャンルを選択すると、オーディオソースからの出力信号に選択された音楽ジャンルに対応する周波数特性を与えるとともに、この周波数特性に対応する所定の遅延時間を出力信号に与えて遅延信号を形成し、この遅延信号をもとの出力信号に重畳して再生音を得るものがある。
【特許文献1】特開平8−10958号公報
【0004】
また、従来の車両用オーディオとしては、モード選択キーの操作により音楽ジャンル別のモードを設定すると、予め記憶されていた複数のイコライザー特性と音量特性の中から、設定された音楽ジャンルに適したイコライザー特性と音量特性が選択されて、これら特性に従って音を再生するものがある。
【特許文献2】特開平7−284185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の車両用オーディオにおいては、前記特許文献1・2に示されるように、ユーザによるパネルスイッチやモード選択キー等の操作によって音楽ジャンルやモードを設定することにより、設定された音楽ジャンルやモードに対応する周波数特性や音場特性に従って音楽を再生することができるものである。
【0006】
ところが、従来の車両用オーディオにおいては、ユーザである運転者が運転操作をしながら、スイッチ等を操作して音楽ジャンルを設定する必要があるため、操作が煩わしい不都合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、車両に音楽あるいは映像ソフトのデータを記憶する記憶装置を搭載して設け、この記憶装置に記憶される音楽あるいは映像ソフトのデータから音楽を再生する車両用オーディオを設け、この車両用オーディオにより音楽を再生する際に、前記記憶装置に記憶される音楽あるいは映像ソフトのデータの一部である音楽ジャンル情報に応じて音楽の再生特性を設定する制御手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の車両用オーディオの制御装置は、制御手段によって、車両用オーディオにより音楽を再生する際に、記憶装置に記憶される音楽あるいは映像ソフトのデータの一部である音楽ジャンル情報に応じて音楽の再生特性を設定することにより、ハードディスクドライブ等の記憶装置に記憶される音楽や映像ソフトのデータに格納されている音楽ジャンル情報を用いて、ユーザ自身が再生される音楽毎に再生特性を設定する操作を必要とすることなく、自動的に音楽のジャンルに最適な再生特性を設定することができ、操作の煩わしさを解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明は、記憶装置に記憶される音楽あるいは映像ソフトのデータから車両用オーディオにより音楽を再生する際に、記憶装置に記憶される音楽や映像ソフトのデータに格納されている音楽ジャンル情報を用いて、自動的に音楽のジャンルに最適な再生特性を設定することができるものである。
以下図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0010】
図1は、この発明の実施例を示すものである。図1において、2は図示しない車両に搭載される記憶装置、4は車両用オーディオ、6は制御装置である。
【0011】
前記記憶装置2は、大容量のハードディスクドライブ等からなり、音楽データ部8と情報データベース部10とを備えている。記憶装置2は、読み出し装置12によって音楽を記録したCDや映像ソフトを記録したDVD等の記録媒体14から読み出された音楽あるいは映像ソフトのデータを取り込み、音楽データを音楽データ部8に記憶するとともに音楽に関する情報(TOCデータ:table of contents )を情報データベース部10に記憶する。音楽に関する情報としては、CDタイトル、アーティスト名、曲名、曲数、各曲の演奏時間、総演奏時間、音楽ジャンル(クラシック、ポップス、ジャズ、ロック、演歌等)がある。
【0012】
前記車両用オーディオ4は、記憶装置2に記憶される音楽あるいは映像ソフトのデータから音楽を再生するものであり、信号処理部16とボリューム18とアンプ20とを備えている。信号処理部16は、記憶装置2から送られる音楽あるいは映像ソフトの音楽データに音楽ジャンルに合わせた処理を施し、音楽信号として出力する。ボリューム18は、信号処理部16から出力される音楽信号の大きさを調整する。アンプ20は、ボリューム18から出力される音楽信号を増幅してスピーカ22に出力し、音楽としての再生音を出力させる。
【0013】
前記記憶装置2と車両用オーディオ4とは、前記制御装置6の制御手段24に接続して設けている。制御手段24は、保存処理部26と音楽設定部28と特性検索部30と特性記憶部32と特性設定部34とを備えている。
【0014】
保存処理部26は、読み出し装置12を駆動して音楽を記録したCDや映像ソフトを記録したDVD等の記録媒体14から音楽あるいは映像ソフトのデータを読み出し、記憶装置2の音楽データ部8に音楽データを記憶させるとともに情報データベース部10に音楽に関する情報を記憶させる。
【0015】
音楽設定部28は、記憶装置2の音楽データ部8に記憶される音楽あるいは映像ソフトのデータから、車両用オーディオ4により再生される音楽データを設定する。特性検索部30は、車両用オーディオ4により再生される音楽データから、記憶装置2の情報データベース部10に記憶される音楽あるいは映像ソフトのデータの一部である音楽ジャンル情報を検索する。特性記憶部32は、音楽ジャンル情報に合わせて設定された複数の周波数特性・音場特性から構成され再生特性を記憶する。特性設定部34は、検索により得られた音楽ジャンル情報に応じて特性記憶部32に記憶される再生特性を設定する。
【0016】
制御手段24は、読み出し装置12を駆動して記録媒体14から音楽あるいは映像ソフトのデータを読み出して保存処理部26により記憶装置2に記憶させ、また、車両用オーディオ4により音楽を再生する際に、記憶装置2に記憶される音楽あるいは映像ソフトのデータから再生される音楽データを音楽設定部28により設定し、記憶装置2に記憶される音楽あるいは映像ソフトのデータから音楽データの一部である音楽ジャンル情報を特性検索部30により検索し、検索により得られた音楽ジャンル情報に応じて特性記憶部32に記憶される特性から再生される音楽の再生特性を特性設定部34により設定し、信号処理部16に出力する。
【0017】
また、制御手段24には、操作手段36を接続して設けている。操作手段36は、データ保存スイッチ38と音楽再生スイッチ40とを備えている。データ保存スイッチ38は、読み出し装置12により記録媒体14からデータを読み出して記憶装置2に記憶させるデータ保存指令を、制御手段24に出力する。音楽再生スイッチ40は、記憶装置2に記憶されている音楽データを選択して車両用オーディオ4により再生させる音楽再生指令を、制御手段24に出力する。
【0018】
次に、この実施例の作用を説明する。
【0019】
車両用オーディオ4の制御装置6は、先ず、記憶装置2に音楽データを記憶するとともに音楽に関する情報を記憶する。
【0020】
制御装置6は、操作手段36のデータ保存スイッチ38がユーザである車両の運転者によりオン操作されると、制御手段24にデータ保存指令が出力される。
【0021】
制御手段24は、データ保存指令が入力されると、読み出し装置12を駆動して音楽を記録したCDや映像ソフトを記録したDVD等の記録媒体14から音楽あるいは映像ソフトのデータを読み出し、記憶装置2に取り込む。
【0022】
記憶装置2は、取り込まれたデータのうち、音楽データを音楽データ部8に記憶するとともに音楽に関する情報を情報データベース部10に記憶する。これにより、車両用オーディオ4の制御装置6は、記憶装置2に音楽データを記憶するとともに音楽に関する情報を記憶する。
【0023】
記憶装置2に記憶された音楽データは、操作手段36の音楽再生スイッチ40をオン操作することにより、車両用オーディオ4により再生される。
【0024】
車両用オーディオ4の制御装置6は、操作手段36の音楽再生スイッチ40が運転者によりオン操作されると、制御手段24に音楽再生指令が出力される。
【0025】
制御手段24は、音楽再生指令が入力されると、記憶装置2の音楽データ部8に記憶される音楽データから音楽再生指令に対応する音楽データを選択し、この音楽データを信号処理部16に出力させるとともに、選択された音楽データを基に情報データベース部10を検索して選択された音楽データに関する音楽ジャンル情報を得て、得られた音楽ジャンル情報に応じて特性記憶部32に記憶される特性から再生特性である周波数特性・音場特性を設定し、設定された周波数特性・音場特性のデータを信号処理部16に出力する。
【0026】
信号処理部16は、記憶装置2から入力される音楽データを制御手段24から入力される周波数特性・音場特性のデータにより処理し、周波数特性・音場特性を処理された音楽信号をボリューム18に出力する。信号処理部16から出力される音楽ジャンル情報に応じて周波数特性・音場特性を処理された音楽信号は、ボリューム18により大きさを調整され、アンプ20により増幅してスピーカ22に出力され、音楽としての再生音を出力される。
【0027】
このように、この車両用オーディオ4の制御装置6は、制御手段24によって、車両用オーディオ4により音楽を再生する際に、記憶装置2に記憶される音楽あるいは映像ソフトのデータの一部である音楽ジャンル情報に応じて音楽の再生特性を設定することにより、ハードディスクドライブ等の記憶装置2に記憶される音楽や映像ソフトのデータに格納されている音楽ジャンル情報を用いて、ユーザである運転者自身が再生される音楽毎に再生特性を設定する操作を必要とすることなく、自動的に音楽のジャンルに最適な再生特性を設定することができる。
【0028】
このため、この車両用オーディオ4の制御装置6は、運転者に音楽毎に再生特性を設定する操作を要求することがなく、操作の煩わしさを解消することができる。
【0029】
また、この車両用オーディオ4の制御装置6は、再生される音楽の音楽ジャンル情報に応じて設定される再生特性が、音楽ジャンル情報に合わせて設定された複数の周波数特性・音場特性から構成されることにより、音楽の再生時に音楽ジャンル毎に最適な周波数特性・音場特性を設定することが可能である。
【0030】
なお、この発明は、上述実施例に限定されることなく、種々応用改変が可能である。
【0031】
例えば、上述実施例においては、再生される音楽のジャンルに応じて再生特性を設定したが、時間帯(例えば、朝、昼、夕方、夜、深夜)や天候等を加味して再生特性を設定することにより、さらに適切に音楽を再生することができ、また、高速道路、一般道路、トンネル等の走行状況や同乗者間での会話等の車内状況に応じて音量を調整することにより、会話を妨げることなくより聞きやすい音量で再生することができ、さらに、車速超過やタイヤロックなどの車両の運転状態に応じて音量を低下させる一方で警告音を発することにより、運転者に車両の運転操作について警告を発することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明の車両用オーディオの制御装置は、車両用オーディオにより音楽を再生する際に、記憶装置に記憶される音楽や映像ソフトのデータに格納されている音楽ジャンル情報を用いて、自動的に音楽のジャンルに最適な再生特性を設定することができるものであり、室内用オーディオにも適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の実施例を示す車両オーディオの制御装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0034】
2 記憶装置
4 車両用オーディオ
6 制御装置
8 音楽データ部
10 情報データベース部
12 読み出し装置
14 記録媒体
16 信号処理部
18 ボリューム
20 アンプ
22 スピーカ
24 制御手段
26 保存処理部
28 音楽設定部
30 特性検索部
32 特性記憶部
34 特性設定部
36 操作手段
38 データ保存スイッチ
40 音楽再生スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に音楽あるいは映像ソフトのデータを記憶する記憶装置を搭載して設け、この記憶装置に記憶される音楽あるいは映像ソフトのデータから音楽を再生する車両用オーディオを設け、この車両用オーディオにより音楽を再生する際に、前記記憶装置に記憶される音楽あるいは映像ソフトのデータの一部である音楽ジャンル情報に応じて音楽の再生特性を設定する制御手段を設けたことを特徴とする車両用オーディオの制御装置。
【請求項2】
前記再生特性は、音楽ジャンル情報に合わせて設定された複数の周波数特性・音場特性から構成されることを特徴とする請求項1に記載の車両用オーディオの制御装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−50063(P2006−50063A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225446(P2004−225446)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】