説明

車両用カウルトップ構造

【課題】
歩行者保護性能を向上した車両用カウルトップ構造を提供することである。
【解決手段】
ウインドシールドの前端を支持するウインドシールドロアパネルに装着される車両用カウルトップ構造であって、該ウインドシールドロアパネルよりも高さが高い断面が概略反転U形状の隆起部と、該隆起部に一体的に形成された、前記ウインドシールドロアパネルに取り付けるための少なくとも隆起部上壁からウインドシールドロアパネルまでの縦壁を有する取付座を備え、前記隆起部の上壁はボンネットと概略面一の上面を有し、前記縦壁は少なくとも2箇所の変形容易部を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外気を車室内に取り入れるための車両用カウルトップ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カウルトップは、エンジンルームと車室とを仕切るダッシュボードの上に配置されたカバー部材であり、外気取り入れ用グリルを有する。
【0003】
従来から種々の構造のカウルトップが提案されており、例えば特開2003−175862号公報では、カウルトップを車幅方向に2分割し、エンジンルーム内への水滴の侵入を防止するようにした車両用カウルトップのシール構造が提案されている。また、特開平8−80869号公報では、左右2分割されたカウルトップの水密性を向上する分割式カウルトップの接続部構造が提案されている。
【0004】
一方、歩行者との正面衝突時にボンネットに跳ね上げられた歩行者がカウルトップに衝突した際、この衝撃力を十分吸収して歩行者保護を図るカウルトップ構造が要望されている。
【特許文献1】特開2003−175862号公報
【特許文献2】特開平8−80869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献に記載された2分割カウルトップでは、エンジンルーム内への水滴の侵入防止というシールド効果はあるものの、カウルトップの下方の部品、例えばエンジンルーム内に設けられているエンジン部品等をメンテナンスする場合、ワイパーアーム及び全てのカウルトップを車体から取り外す必要があり、カウルトップの取り外し及び再組付けに多大な時間を要するという問題があった。
【0006】
また従来のカウルトップでは、衝撃力が加わった場合に変形し易い構造を有していないため、歩行者がカウルトップに衝突する際の衝撃を有効に吸収することができず、歩行者保護性能が十分でないという問題があった。
【0007】
よって、本発明の目的は、十分な歩行者保護性能を達成可能な車両用カウルトップ構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、ウインドシールドの前端を支持するウインドシールドロアパネルに装着される車両用カウルトップ構造であって、該ウインドシールドロアパネルよりも高さが高い断面が概略反転U形状の隆起部と、該隆起部に一体的に形成された、前記ウインドシールドロアパネルに取り付けるための少なくとも隆起部上壁からウインドシールドロアパネルまでの縦壁を有する取付座を備え、前記隆起部の上壁はボンネットと概略面一の上面を有し、前記縦壁は少なくとも2箇所の変形容易部を有していることを特徴とする車両用カウルトップ構造が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両用カウルトップ構造によると、前面衝突した歩行者がボンネットに跳ね上げられてカウルトップに衝突すると、取付座の縦壁の変形容易部で取付座が折れ曲がりカウルトップ全体が潰れるため、歩行者がカウルトップに衝突する際の衝撃を有効に吸収することができ、歩行者保護を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお本明細書において、「前」、「後ろ」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従うものとする。
【0011】
図1は本発明に係るカウルトップ構造を具備した車両を前から見た斜視図であり、ボンネット(フード)2で覆われたエンジンルーム内には符号4で示す位置にエンジン及びトランスミッションが搭載されている。車室内に外気を取り入れるためのカウルトップ6は中央パネル8と、左サイドパネル10と、右サイドパネル12に3分割されている。
【0012】
ウインドシールド(フロントガラス)14の下部には黒色セラミック膜15が貼付されている。16はルーフ、18はワイパーアーム、20はフロントグリル、22はヘッドライト、24はフロントバンパである。
【0013】
エンジンルーム内には、フロントサスペンションのダンパ(ストラット)を連結支持する一対のダンパハウジング(ストラットタワー)26が配置されている。
【0014】
図2は図1の概略側面図であり、カウルトップ6の中央パネル8の上面がボンネット2と概略同一面を成すように配置されている。
【0015】
図3は本発明実施形態に係るカウルトップ6の斜視図を示している。カウルトップ6は中央パネル8と、左サイドパネル(左ヒンジカバー)10と右サイドパネル(右ヒンジカバー)12に3分割されている。左右のサイドパネル10,12はワイパーアーム18の回転軸挿入用の穴28を有している。
【0016】
中央パネル8は図4に示すようにその断面が概略逆U字形状をしており、上壁8aと前壁8bと、運転手側の後壁8cと、取り付けフランジ8dを有している。中央パネル8は合成樹脂のモールド成形品であり、同様に左右のサイドパネル10,12も合成樹脂のモールド成形品である。
【0017】
図4から明らかなように、前壁8b及び後壁8cは垂直方向から若干傾斜したハの字形状をしている。前壁8bは複数の穴を画成する空気取り入れ用グリル9を有しており、後壁8cも複数の穴を画成する空気取り入れ用グリル11を有している。
【0018】
図5を参照すると、左サイドパネル10と中央パネル8の接続部の裏面図が示されている。左サイドパネル10は固定部30で左フェンダー(図示せず)にクリップ締結され、クリップ32でウインドシールドロアパネル(図示せず)に係合され、クリップ34でダンパハウジング26に取付けられたダンパベース(図示せず)に固定される。
【0019】
中央パネル8は左サイドパネル10上に重ね合わせられて3個のクリップ38を差し込むことにより左サイドパネル10に係止されるとともに、クリップ36により中央パネル8は左サイドパネル10とともにウインドシールドロアパネルに固定される。40はメンテナンス用の蓋であり、爪42により着脱可能に左サイドパネル10に取付けられている。
【0020】
図6は中央パネル8と左サイドパネル10の重ね合わせ部の運転席側の拡大裏面図を示している。図6の7−7線断面図である図7に示すように、中央パネル8には引っかけ爪44が一体的に形成されており、左サイドパネル10には引っかけ爪44が係合する薄肉部10aが形成されている。
【0021】
センターパネル8の引っかけ爪44を押し込んで左サイドパネル10の薄肉部10aに係合させることにより、センターパネル8と左サイドパネル10の重ね合わせ部の浮き上がりを防止することができる。右サイドパネル12と中央パネル8との重ね合わせ部も同様に構成されている。
【0022】
図8はカウルトップ6の裏面図を示している。カウルトップ6の中央パネル8内には中央パネル8の後壁8cに形成された空気取り入れ用グリル11に向かって開口する2個のウオッシャーノズル46が設けられている。
【0023】
ウオッシャーノズル46はゴムホース48に接続され、ゴムホース48はクリップ50で中央パネル8に係止されている。ウオッシャーノズル46部分の拡大図が図9に、運転席側から見たウオッシャーノズル46を収容した中央パネル部分の拡大図が図10にそれぞれ示されている。
【0024】
再び図8を参照すると、カウルトップ6の中央パネル8は一体的にモールド成形された4個の取付座52を有しており、これらの取付座52にクリップ54が嵌め込まれている。
【0025】
図1のA−A線断面図である図9に示すように、クリップ54をウインドシールドロアパネル56に形成した係合穴に嵌め込むことにより、中央パネル8の運転席側がウインドシールドロアパネル56に固定される。図9は図8のA−A線断面でもある。
【0026】
一方、中央パネル8の取付けフランジ8dに形成した係合穴53にクリップ60を挿入し、このクリップ60をダッシュボードアッパリッド58に形成した係合穴中に押し込むことにより、中央パネル8の前側がダッシュボードアッパリッド58に固定される。
【0027】
62はシール部材であり、ボンネット(フード)2をカウルトップ6に対して閉めると、カウルトップ6の中央パネル8の上壁8aがボンネット2と概略同一面を成すように設計されている。取付座52は隆起部上壁8aからウインドシールドロアパネル56までの縦壁51を有しており、該縦壁51はくの字に屈曲し、上壁8a根元部と途中折れ曲がり部に肉盗みにより2個の薄肉部53が形成されている。この薄肉部53は変形容易部を形成する。
【0028】
図9に示すように、カウルトップ6の中央パネル8はウインドシールドロアパネル56よりも高さが高い断面が概略反転U形状の隆起部を備えている。そして、複数の取付座52はこの隆起部に一体的にモールド成形されている。
【0029】
このような取付座52を有する本実施形態のカウルトップ6によると、前面衝突した歩行者がボンネット2上に跳ね上げられてカウルトップ6に衝突すると、カウルトップ6の取付座52が2個の薄肉部(変形容易部)53を有しているため、取付座52が薄肉部53で折れ曲がって、カウルトップ6の中央パネル8が例えば図10に示すように容易に潰れることになる。これにより、歩行者がカウルトップ6に衝突する際の衝撃を有効に吸収することができ、歩行者保護を図ることができるとともに、縦壁51によりカウルトップの取付剛性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のカウルトップ構造を具備した自動車を前から見た斜視図である。
【図2】図1の概略側面図である。
【図3】本発明実施形態に係るカウルトップの斜視図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】左サイドパネルと中央パネルとの重ね合わせ部の裏面図である。
【図6】運転席側の重ね合わせ部の拡大裏面図である。
【図7】図6の7−7線断面図である。
【図8】本発明実施形態に係るカウルトップの裏面図である。
【図9】図1及び図8のA−A線断面図である。
【図10】カウルトップの潰れ形状の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
6 カウルトップ
8 中央パネル
10 左サイドパネル
12 右サイドパネル
9,11 空気取り入れ用グリル
32,34,36,38 クリップ
44 引っかけ爪
46 ウオッシャーノズル
52 取付座
53 薄肉部(変形容易部)
54 クリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドシールドの前端を支持するウインドシールドロアパネルに装着される車両用カウルトップ構造であって、
該ウインドシールドロアパネルよりも高さが高い断面が概略反転U形状の隆起部と、
該隆起部に一体的に形成された、前記ウインドシールドロアパネルに取り付けるための少なくとも隆起部上壁からウインドシールドロアパネルまでの縦壁を有する取付座を備え、
前記隆起部の上壁はボンネットと概略面一の上面を有し、
前記縦壁は少なくとも2箇所の変形容易部を有していることを特徴とする車両用カウルトップ構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−327450(P2006−327450A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−155037(P2005−155037)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】