説明

車両用サイドエアバッグ装置

【課題】サイドエアバッグをより確実に制御することができるとともに、サイドエアバッグ装置の製造コストを低減すること。
【解決手段】車両用サイドエアバッグ装置20は、シートバック13の幅方向中央の部位に配置され、乗員の有無を検知する第1乗員センサ23と、シートバック13の幅方向外側の部位に配置され、乗員の有無を検知する第2乗員センサ24と、第1・第2乗員センサ23,24の検知情報を受けて、サイドエアバッグ21aの展開を制御する制御部25とを備える。制御部25は、第1乗員センサ23が乗員を検知していないという検知無し条件と、第2乗員センサ24が乗員を検知しているという検知有り条件との、2つの条件を共に満足していると判断した場合に、サイドエアバッグ21aの展開を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに着座している乗員の着座姿勢や状態に応じてサイドエアバッグを制御することができる、車両用サイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の側面衝突時にシートバックの側部からドアの内側に沿って展開することにより乗員を保護する、サイドエアバッグを装備した車両の開発が進められている。
ところで、助手席に着座した子供が眠り込んで身体がドア側に傾くと、座高の低い子供の頭部がシートバックの側部に収納したサイドエアバッグ装置の前方を覆ってしまう。この場合に、サイドエアバッグの展開を禁止する技術が知られている(例えば、特許文献1−2参照。)。
【0003】
特許文献1に示すサイドエアバッグ装置は、シートバックの中央部に配置された1つの乗員センサによる検知情報に基づいて乗員の存在及び姿勢を判断し、サイドエアバッグの展開を一時的に禁止するというものである。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示すサイドエアバッグ装置は、1つのセンサだけで検知を行うため、検知の正確性を高めるためには改善の余地がある。例えば、実際は乗員が着座しているにも関わらず、乗員の姿勢や状態により検知されなかった場合には、サイドエアバッグは展開しない。このため、特許文献1に示すサイドエアバッグ装置では、検知の対象となる乗員の姿勢や状態が限定される。
【0005】
また、特許文献2に示すサイドエアバッグ装置は、シートバックの中央部に配置された複数のアンテナ電極とシートバックの側部に配置された1つのアンテナ電極とによる検知情報に基づいて乗員の着座状態を判断し、サイドエアバッグの展開を一時的に禁止するというものである。
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に示すサイドエアバッグ装置は、乗員の多様な着座姿勢に対応するために、複数のアンテナ電極を配置しているので、制御装置を構成する部品が多くなり、製造コストが嵩む。さらに、シート内に配置するスペースには制約があるため、その構成は複雑にならざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−085524公報
【特許文献2】特開平11−334451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、サイドエアバッグをより確実に制御することができるとともに、サイドエアバッグ装置の製造コストを低減することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明では、車両用シートのシートバックにおける幅方向外側の部位に配置されたサイドエアバッグを展開することによって、前記シートに着座している乗員を保護する車両用サイドエアバッグ装置において、前記シートバックの幅方向中央に配置されて、前記シートに着座している前記乗員の有無を検知する単一の第1乗員センサと、前記シートバックにおける幅方向外側の部位に配置されて、前記乗員の有無を検知する単一の第2乗員センサと、前記第1及び第2乗員センサの検知情報に基づいて前記サイドエアバッグの展開を制御する制御部とを有し、この制御部は、前記第1乗員センサが前記乗員を検知していないという検知無し条件と、前記第2乗員センサが前記乗員を検知しているという検知有り条件との、2つの条件を共に満足していると判断した場合に、前記サイドエアバッグの展開を抑制することを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、第1及び第2乗員センサは、シートを正面から見たときに、乗員を検知するための、所定の幅及び高さに設定された検知面を、それぞれ有しており、第1乗員センサの検知面の下端の位置は、第2乗員センサの検知面の上端よりも上の位置に設定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明では、第1及び第2乗員センサは、シートを正面から見たときに、乗員を検知するための、所定の幅及び高さに設定された検知面を、それぞれ有しており、第1乗員センサの検知面の少なくとも一部は、第2乗員センサの検知面の真上の位置まで延びていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、制御部は、第1乗員センサが乗員を検知していないという検知無し条件と、第2乗員センサが乗員を検知しているという検知有り条件との、2つの条件を共に満足していると判断した場合に、サイドエアバックの展開を抑制する(例えば、展開を禁止する)。第1乗員センサが乗員を検知していない場合としては、乗員の頭部が第1乗員センサの下方にある場合と、乗員が着座してない場合との2つが考えられる。しかし、第2乗員センサが乗員を検知しているという条件が加われば、乗員の頭部が第1乗員センサの下方にある場合に限られる。つまり、この2つの条件は第2乗員センサが乗員の頭部を検知した場合を想定したものであって、子供が眠り込んで、頭部をドア側に傾けて着座している場合には、サイドエアバッグの展開を抑制する。
【0013】
また、請求項1に係る発明では、第1乗員センサが乗員を検知している場合、つまり乗員が頭部をドア側に傾けずに着座している場合に、サイドエアバッグを展開する。それに加えて、2つの乗員センサが共に乗員を検知できなかった場合にも、サイドエアバッグを展開する。これは実際には乗員が着座しているにも関わらず、乗員の姿勢や状態により検知できなかった場合を想定したものである。このように、請求項1に係る発明では、乗員の姿勢や状態を意識した技術思想に基づくものであり、2つの乗員センサによる検知結果の組み合わせにより、乗員の着座姿勢を確実に検知して、柔軟にサイドエアバッグの展開を制御することができる。
【0014】
さらに、請求項1に係る発明では、第1乗員センサの数量は1つだけですむ。このため、サイドエアバッグ装置を少ない部品(例えばセンサや信号線)で、かつ比較的簡単な構成とすることができる。この結果、サイドエアバッグ装置の製造コストを低減することができるとともに、装置を小型化することができる。
【0015】
請求項2に係る発明では、第1乗員センサの検知面の下端の位置は、第2乗員センサの検知面の上端よりも上の位置に設定されている。このため、乗員が頭部をドア側に傾けて着座している場合には、第1乗員センサが乗員の頭部を検知する可能性は低くなる。つまり、乗員が頭部をドア側に傾けて着座しているにも関わらず、第1乗員センサが乗員を検知してしまい、サイドエアバッグが展開してしまう可能性を減らすことができるので、乗員をより確実に保護することができる。
【0016】
請求項3に係る発明では、第1乗員センサの検知面の少なくとも一部は、第2乗員センサの真上の位置まで延びている。このため、例えばシートに対し、乗員がドア側に寄って着座している場合には、乗員の頭部は第2乗員センサではなく、第1乗員センサにより検知される。一方、第2乗員センサは乗員の肩部又は上腕部周辺を検知する。このとき、第1乗員センサと第2乗員センサは共に乗員を検知するため、サイドエアバッグを展開する。乗員がシートバックの中央部に着座していなくても第1乗員センサが乗員を検知すれば、サイドエアバッグは展開するため、乗員の姿勢に影響されず、より柔軟にサイドエアバッグの展開を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1に係る車両用サイドエアバッグ装置及びシートの斜視図である。
【図2】図1に示された車両用サイドエアバッグ装置のブロック構成図である。
【図3】本発明の実施例1に係る車両用サイドエアバッグ装置及びシートの正面図である。
【図4】乗員の座高と乗員センサの出力との関係を示すグラフである。
【図5】図3に示された制御部の制御フロー図である。
【図6】図1に示された車両用サイドエアバッグ装置の作用図である。
【図7】本発明の実施例2に係る車両用サイドエアバッグ装置の正面図である。
【図8】図7に示された車両用サイドエアバッグ装置の作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0019】
実施例1に係る車両用サイドエアバッグ装置を、図1〜図6に基づいて説明する。
図1は、車両用サイドエアバッグ装置20を備えた車両10を示している。サイドエアバッグ装置20は、車両用シート11のシートバック12における幅方向外側の部位に配置されたサイドエアバッグ21aを展開することによって、シート11に着座している乗員を保護するものである。
【0020】
図1及び図2に示されるように、サイドエアバッグ装置20は、サイドエアバッグモジュール21と加速度センサ22と第1乗員センサ23と第2乗員センサ24と制御部25とを有している。
【0021】
サイドエアバッグモジュール21は、シートバック12における幅方向外側の部位に埋設されており、折り畳んだ状態のサイドエアバッグ21aを収納している。加速度センサ22は、車両10の側部に受けた衝撃力に対応した加速度を検出する。第1乗員センサ23及び第2乗員センサ24は、シート11に着座している乗員の有無を検知するものであり、それぞれシートバック12に1つずつ設けられている。
【0022】
制御部25は、加速度センサ22及び第1・第2乗員センサ23,24から検知情報を受けて、サイドエアバッグ21aの展開を制御する。つまり、制御部25は、加速度センサ22で検知された加速度に基づいて衝突の有無を判断し、衝突したと判断したとき、第1・第2乗員センサ23,24で検出された検知情報に応じてサイドエアバッグモジュール21に展開信号または抑制信号を発する。制御部25から信号を受けたサイドエアバッグモジュール21は、インフレータから高圧ガスを発生させてサイドエアバッグ21aに供給する。サイドエアバッグ21aは膨張して、車体の内面(例えばサイドドア15の内面)と乗員との間の空間に展開する。この結果、シート11のシートクッション13に着座している乗員をサイドエアバッグ21aによって保護することができる。
【0023】
以下、第1・第2乗員センサ23,24について詳しく説明する。図1に示されるように、第1・第2乗員センサ23,24は、シートバック12において、表皮材の内側に埋設されている。これらの第1・第2乗員センサ23,24は、例えば接触面積に比例して変化する静電容量を用いた、静電容量方式の近接センサである。単一の第1乗員センサ23は、シートバック12の幅方向中央の部位12aに配置されている。単一の第2乗員センサ24は、シートバック12における幅方向外側の部位12bに配置されている。
【0024】
図3に示されるようにシート11を正面から見たときに、第1乗員センサ23は、シートバック12の幅方向に細長い長方形状の検知面23aを有している。この検知面23aの大きさは、所定の幅W1及び高さH1に設定されている。同様に、第2乗員センサ24は、シートバック12の高さ方向に細長い長方形状の検知面24aを有している。この検知面24aの大きさは、所定の幅W2及び高さH2に設定されている。各検知面23a,24aによって乗員を検知することが可能である。
【0025】
図3は、シート11に着座する座高の異なる各乗員Mn1,Mn2,Mn3と、第1乗員センサ23との関係を示している。各乗員Mn1,Mn2,Mn3の標準体型については、サイドエアバッグ装置20の設計段階において設定される。第1の乗員Mn1は、座高h1が低い標準体型の、乗員(子供を含む)に相当する。第2の乗員Mn2は、第1の乗員Mn1よりも座高h2がやや大きい標準体型の、小さい乗員(例えば小学生の高学年程度)に相当する。第3の乗員Mn3は、第2の乗員Mn2よりも座高h3が更に大きい標準体型の、大人の乗員に相当する。
【0026】
シートクッション13の上面13aを基準として、第1乗員センサ23の検知面23aの下端23aDまでの高さはHD、第1乗員センサ23の検知面23aの上端23aUまでの高さはHUである。下端23aDの高さHDは、着座している第1の乗員Mn1における肩の上面の高さに相当する。上端23aUの高さHUは、着座している第3の乗員Mn3における肩の上面の高さに相当する。また、第1乗員センサ23の検知面23aの高さH1は、上端23aUの高さHUと下端23aDの高さHDの差である。
【0027】
第1乗員センサ23の検知面23aの下端23aDの位置は、第2乗員センサ24の検知面24aの上端24aUよりも、高さHiだけ上の位置に設定されている。
【0028】
各乗員Mn1,Mn2,Mn3と第1乗員センサ23の検出情報との関係を、図3〜図4に基づいて説明する。図4は、横軸をシートに着座している乗員の座高とし、縦軸を第1乗員センサの出力として、座高に対する出力の関係を示した特性図である。ここで、第1乗員センサ23によって乗員Mn1〜Mn3が検知されたか否かを判断するための、基準値(しきい値)をP0とする。
【0029】
図4において、曲線C1は、シート11に着座している乗員Mn1〜Mn3の頭部が、シートバック12に接触している場合における、第1乗員センサ23の出力特性線である。曲線C2は、着座している乗員Mn1〜Mn3の頭部が、シートバック12から離れている場合における、第1乗員センサ23の出力特性線である。
【0030】
まず、座高がh1である第1の乗員Mn1が着座している場合について、説明する。
第1の乗員Mn1がシート11の中央に真っ直ぐな着座姿勢で座って、頭部をシートバック12に接している場合には、頭部が第1乗員センサ23の検知面23aに位置する。この場合には、検知面23aに直接的又は間接的に接する第1の乗員Mn1の接触面積が小さいので、曲線C1に示されるように、第1乗員センサ23が発する出力P1は小さい。しかし、この出力P1は基準値P0よりも大きい。この結果、制御部25(図2を参照。)は、第1乗員センサ23によって第1の乗員Mn1を検知している、いわゆる「検知有り」と判断する。
【0031】
一方、第1の乗員Mn1がシート11の中央に真っ直ぐな着座姿勢で座っているが、頭部をシートバック12に接しない場合には、曲線C2に示されるように、第1乗員センサ23が発する出力は0であり、基準値P0を下回っている。この結果、制御部25は第1乗員センサ23によって第1の乗員Mn1を検知していない、いわゆる「検知無し」と判断する。
【0032】
次に、座高がh2である第2の乗員Mn2が着座している場合について、説明する。
第2の乗員Mn2がシート11の中央に真っ直ぐな着座姿勢で座って、頭部をシートバック12に接している場合には、頭部の一部や肩部の一部が第1乗員センサ23の検知面23aに位置する。検知面23aに接する第2の乗員Mn2の接触面積が広いので、曲線C1に示されるように、第1乗員センサ23が発する出力P2は、基準値P0よりも大きく、しかも上記出力P1よりも大きい。この結果、制御部25は、第1乗員センサ23によって第1の乗員Mn1を検知している、いわゆる「検知有り」と判断する。
【0033】
一方、第2の乗員Mn2がシート11の中央に真っ直ぐな着座姿勢で座っているが、頭部をシートバック12に接しない場合であっても、座高が高いので、肩部の一部が第1乗員センサ23の検知面23aに位置する。検知面23aに接する第2の乗員Mn2の接触面積が比較的広いので、曲線C2に示されるように、第1乗員センサ23が発する出力P3は、基準値P0よりも大きい。この結果、制御部25は、第1乗員センサ23によって第2の乗員Mn2を検知している、いわゆる「検知有り」と判断する。
【0034】
次に、座高がh3である第3の乗員Mn3が着座している場合について、説明する。
第3の乗員Mn3がシート11の中央に真っ直ぐな着座姿勢で座っている場合には、座高が高いので、頭部をシートバック12に接しているか否かにかかわらず、検知面23aに接する第3の乗員Mn3の接触面積が広い。このため、曲線C1,C2に示されるように、第1乗員センサ23が発する出力P4は、基準値P0よりも大きい。この結果、制御部25は、第1乗員センサ23によって第3の乗員Mn3を検知している、いわゆる「検知有り」と判断する。
【0035】
このようにして、シートバック12の幅方向中央に位置した単一の第1乗員センサ23によって、座高の異なる乗員Mn1〜Mn3を検知することができる。
このため、車両用サイドエアバッグ装置20を少ない部品(例えばセンサや信号線)で、かつ比較的簡単な構成とすることができる。この結果、車両用サイドエアバッグ装置20の製造コストを低減することができるとともに、装置を小型化することができる。
【0036】
次に、制御部25の制御をフロー図で説明する。
図5に示すように、ST(ステップ番号。以下同様)01で、制御部25は、第1・第2乗員センサ23,24が検知した各々の検知情報を読み込む。この検知情報は、互いに同じタイミングで検知されたものであるとする。
【0037】
また、ST02において、制御部25は、読み込んだ検知情報に基づいて、第1乗員センサ23が乗員を検知しているか否かを判断する。
第1乗員センサ23が乗員を検知していると判断した場合(YES)、制御部25はサイドエアバッグモジュール21に展開信号を送信する(ST03)。一方、第1乗員センサ23が乗員を検知していないと判断した場合(NO)、制御部25は第2乗員センサ24が乗員を検知しているか否かを判断する(ST04)。
【0038】
第2乗員センサ24が乗員を検知していると判断した場合(YES)、制御部25はサイドエアバッグモジュール21に抑制信号を送信する(ST05)。また、第2乗員センサ24が乗員を検知していないと判断した場合(NO)、制御部25はサイドエアバッグモジュール21に展開信号を送信する(ST06)。
ここでは便宜上、第1乗員センサ23の検知情報を先に判断するものとして説明したが、第2乗員センサ24の検知情報を先に判断することもできる。
【0039】
次に、車両用サイドエアバッグ装置20の作用を図6に基づき説明する。但し、乗員Mnについては、第1の乗員Mn1を対象として説明する。
図6(a)は、乗員Mnがシート11の中央に真っ直ぐな姿勢で着座している場合を示した図である。第1乗員センサ23の検知面23a(図3を参照。)には、乗員Mnの頭部が接しているため、第1乗員センサ23は乗員Mnを検知する(ON)。一方、第2乗員センサ24の検知面24a(図3を参照。)には、乗員Mnの何れの部位も接していないため、第2乗員センサ24は乗員Mnを検知しない(OFF)。つまり、制御部25は、図5のST02でYESと判断するため、サイドエアバッグモジュール21に展開信号を送信する(ST03)。
【0040】
図6(b)は、乗員Mnがシート11の中央に着座しているが、頭部をドア15側に傾けて眠り込んでいる場合を示した図である。第1乗員センサ23の検知面23aには、乗員Mnの何れの部位も接していないため、第1乗員センサ23は乗員Mnを検知しない(OFF)。一方、第2乗員センサ24の検知面24aには、乗員Mnの頭部及び肩部が接しているため、第2乗員センサ24は乗員Mnを検知する(ON)。つまり、制御部25は、図5のST02でNOと判断し、ST04でYESと判断するため、サイドエアバッグモジュール21に抑制信号を送信する(ST05)。
従って、このように子供が眠り込んで、頭部をドア15側に傾けて着座している場合には、サイドエアバッグ21aの展開を抑制することができる。
【0041】
図6(c)は、乗員Mnがシート11の中央に着座しているが、頭部をドア15と逆側に傾けて眠り込んでいる場合を示した図である。第1乗員センサ23の検知面23aには、乗員Mnの何れの部位も接していないため、第1乗員センサ23は乗員Mnを検知しない(OFF)。一方、第2乗員センサ24の検知面24aについても、乗員Mnの何れの部位も接していないため、第2乗員センサ24は乗員Mnを検知しない(OFF)。つまり、制御部25は、図5のST02でNOと判断し、ST04でNOとするため、サイドエアバッグモジュール21に展開信号を送信する(ST06)。
【0042】
図6(d)は、乗員Mnがシート11の中央に着座しているが、頭部を前方に傾けて眠り込んでいる場合を示した図である。第1乗員センサ23の検知面23aには、乗員Mnの何れの部位も接していないため、第1乗員センサ23は乗員Mnを検知しない(OFF)。一方、第2乗員センサ24の検知面24aについても、乗員Mnの何れの部位も接していないため、第2乗員センサ24は乗員を検知しない(OFF)。つまり、制御部25は、図5のST02でNOと判断し、ST04でNOと判断するため、サイドエアバッグモジュール21に展開信号を送信する(ST06)。
【0043】
以上に説明したように、本実施例に係る車両用サイドエアバッグ装置20は、第1・第2乗員センサ23,24の検知情報の組み合わせによって、乗員Mnの着座姿勢を確実に検知して、柔軟にサイドエアバッグ21aの展開を制御することができる。
【実施例2】
【0044】
実施例2に係る車両用サイドエアバッグ装置を、図7〜図8に基づいて説明する。
図7(a)は実施例1に係る車両用サイドエアバッグ装置20であり、図7(b)は実施例2に係る車両用サイドエアバッグ装置30である。実施例2に係る車両用サイドエアバッグ装置30は、実施例1に係る車両用サイドエアバッグ装置20と比べて、第1乗員センサ23の検知面23aの一部が、第2乗員センサ24の検知面24aの真上の位置まで延びている。この拡大された検知面23bの大きさは、所定の幅W3及び高さH3に設定されており、シートバック12に埋設されているサイドエアバッグモジュール21と重ならない位置に設定されている。シートクッション13の上面13aを基準として、拡大された検知面23bの下端23bDまでの高さはHMである。
【0045】
次に、乗員Mnが様々な姿勢で着座している場合での、車両用サイドエアバッグ装置30の作用について図8に基づき説明する。但し、乗員Mnについては、第1の乗員Mn1を対象として説明する。
図8(a)は、図6(a)と同様、乗員Mnがシート11の中央に着座している場合を示した図である。第1乗員センサ23の検知面23a(図3を参照。)には、乗員Mnの頭部が接しているため、第1乗員センサ23は乗員Mnを検知する(ON)。一方、第2乗員センサ24の検知面24a(図3を参照。)には、乗員Mnの何れの部位も接していないため、第2乗員センサ24は乗員Mnを検知しない(OFF)。つまり、制御部25は、図5のST02でYESと判断するため、サイドエアバッグモジュール21に展開信号を送信する(ST03)。
【0046】
図8(b)は、図6(b)と同様、乗員Mnがシート11の中央に着座しているが、頭部をドア15側に傾けて眠り込んでいる場合を示した図である。第1乗員センサ23の検知面23aには、乗員Mnの何れの部位も接していないため、第1乗員センサ23は乗員Mnを検知しない(OFF)。一方、第2乗員センサ24の検知面24aには、乗員Mnの頭部が接しているため、第2乗員センサ24は乗員Mnを検知する(ON)。つまり、制御部25は、図5のST02でNOと判断し、ST04でYESと判断するため、サイドエアバッグモジュール21に抑制信号を送信する(ST05)。
従って、このように子供が眠り込んで、頭部をドア15側に傾けて着座している場合には、サイドエアバッグ21aの展開を抑制することができる。
【0047】
図8(c)は、図6(c)と同様、乗員Mnがシート11の中央に着座しているが、頭部をドア15と逆側に傾けて眠り込んでいる場合を示した図である。第1乗員センサ23の検知面23aには、乗員Mnの何れの部位も接していないため、第1乗員センサ23は乗員Mnを検知しない(OFF)。一方、第2乗員センサ24の検知面24aについても、乗員Mnの何れの部位も接していないため、第2乗員センサ24は乗員Mnを検知しない(OFF)。つまり、制御部25は、図5のST02でNOと判断し、ST04でNOと判断するため、サイドエアバッグモジュール21に展開信号を送信する(ST06)。
【0048】
図8(d)は、図6(d)と同様、乗員Mnがシート11の中央に着座しているが、頭部を前方に傾けて眠り込んでいる場合を示した図である。第1乗員センサ23の検知面23aには、乗員Mnの何れの部位にも接していないため、第1乗員センサ23は乗員Mnを検知しない(OFF)。一方、第2乗員センサ24の検知面24aについても、乗員Mnの何れの部位も接していないため、第2乗員センサ24は乗員Mnを検知しない(OFF)。つまり、制御部25は、図5のST02でNOと判断し、ST04でNOと判断するため、サイドエアバッグモジュール21に展開信号を送信する(ST06)。
【0049】
図8(e)は、乗員Mnがドア15側に寄って着座している場合を示した図である。第1乗員センサ23の検知面23b(図7を参照。)には、乗員Mnの頭部が接しているため、第1乗員センサ23は乗員Mnを検知する(ON)。一方、第2乗員センサ24の検知面24aには、乗員Mnの肩部及び上腕部周辺が接しているため、第2乗員センサ24は乗員Mnを検知する(ON)。つまり、制御部25は、図5のST02でYESと判断するため、サイドエアバッグモジュール21に展開信号を送信する(ST03)。
【0050】
このように、例え乗員Mnがシート11の中央に着座していなくても、検知面を拡大することによって乗員Mnを検知することができる。従って、このとき、サイドエアバッグ21aは展開されるため、乗員Mnの姿勢に影響されず、より柔軟にサイドエアバッグ21aの展開を制御することができる。
【0051】
実施例2において、図7(b)に示される拡大された検知面23bの下端23bDの高さHMは、次の第1条件と第2条件の2つの条件を満足するように設定されることが好ましい。
第1条件は、図8(b)に示される着座姿勢の乗員Mn(第1の乗員Mn1)の頭部が、拡大された検知面23bによって検知されない(OFF)という条件である。
第2条件は、図8(e)に示される着座姿勢の乗員Mn(第1の乗員Mn1)の頭部が、拡大された検知面23bによって検知される(ON)という条件である。
【0052】
また、実施例2において、第2乗員センサ24の検知面24aの上端24aUは、第1乗員センサ23の検知面23aの下端23aDより下位に限定されるものではなく、拡大された検知面23bの下端23bDの下位であればよい。
【0053】
なお、本発明に係る乗員センサは静電容量方式に限定されない。例えば、インピーダンスの変化を用いた電磁誘導方式の近接センサであっても、磁石によってリード片を動作させることでオンオフを切り換える磁気方式の近接センサであっても差し支えない。
【0054】
また、第1・第2乗員センサ23,24の位置及び大きさは限定されないが、本実施例1及び2のように、第1乗員センサ23の検知面23aの下端23aDの高さHDが、第2乗員センサ24の検知面24aの上端24aUよりも上の位置に設定されていれば、例えば乗員Mnが頭部をドア15側に傾けて着座している場合(図6(b)及び図8(b)を参照。)に、第1乗員センサ23が乗員Mnの頭部を検知する可能性は低くなる。つまり、乗員Mnが頭部をドア15側に傾けて着座しているにも関わらず、第1乗員センサ23が乗員Mnを検知してしまい(ON)、サイドエアバッグ21aが展開してしまう可能性を減らすことができるので、乗員Mnをより確実に保護することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の車両用サイドエアバッグ装置は、自動車の助手席に着座している乗員の姿勢及び状態に基づいてサイドエアバッグを制御するのに好適である。
【符号の説明】
【0056】
11…車両用シート、12…シートバック、20…車両用サイドエアバッグ装置、21a…サイドエアバッグ、23…第1乗員センサ、23a…第1乗員センサの検知面、23aD…第1乗員センサの検知面の下端、24…第2乗員センサ、24a…第2乗員センサの検知面、24aU…第2乗員センサの検知面の上端、25…制御部、H1,H2…所定の高さ、W1,W2…所定の幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートバックにおける幅方向外側の部位に配置されたサイドエアバッグを展開することによって、前記シートに着座している乗員を保護する車両用サイドエアバッグ装置において、
前記シートバックの幅方向中央に配置されて、前記シートに着座している前記乗員の有無を検知する単一の第1乗員センサと、
前記シートバックにおける幅方向外側の部位に配置されて、前記乗員の有無を検知する単一の第2乗員センサと、
前記第1及び第2乗員センサの検知情報に基づいて前記サイドエアバッグの展開を制御する制御部とを有し、
この制御部は、前記第1乗員センサが前記乗員を検知していないという検知無し条件と、前記第2乗員センサが前記乗員を検知しているという検知有り条件との、2つの条件を共に満足していると判断した場合に、前記サイドエアバッグの展開を抑制することを特徴とした車両用サイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記第1及び第2乗員センサは、前記シートを正面から見たときに、前記乗員を検知するための、所定の幅及び高さに設定された検知面を、それぞれ有しており、
前記第1乗員センサの検知面の下端の位置は、前記第2乗員センサの検知面の上端よりも上の位置に設定されていることを特徴とした請求項1記載の車両用サイドエアバッグ装置。
【請求項3】
前記第1及び第2乗員センサは、前記シートを正面から見たときに、前記乗員を検知するための、所定の幅及び高さに設定された検知面を、それぞれ有しており、
前記第1乗員センサの検知面の少なくとも一部は、前記第2乗員センサの検知面の真上の位置まで延びていることを特徴とした請求項1記載の車両用サイドエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−157036(P2011−157036A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22326(P2010−22326)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】