説明

車両用シートのアクティブヘッドレスト

【課題】追突時に、簡素な機構で前傾されたヘッドレスト支持フレームのロックができるアクティブヘッドレストを提供する。
【解決手段】ヘッドレスト支持フレーム6の下部に設けられて着座者の腰部の荷重を受ける受圧部6cと、前記受圧部6cが後方に押されて支点を中心に回動して前傾した前記ヘッドレスト支持フレーム6を前傾位置でロックするロック機構12が備えられ、前記ロック機構12は、前記ヘッドレスト支持フレーム6の上部に設けられたコの字形状のストライカ11と、前記シートバックフレームの上部に設けられ前記ストライカ11を前後方向に移動可能に挿通させ得る長孔15aが設けられたロックプレート15と、前記ヘッドレスト支持フレーム6が前傾して前記ストライカ11が前方位置に変位した場合にロックプレート15が回動して係合して前記ヘッドレスト支持フレーム6の前後移動を規制する凹部15bが前記長孔15a上に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が後方から追突された場合、ヘッドレストを前方に傾けることで着座者が鞭打ち傷害となるのを軽減できるようにしたアクティブヘッドレストに係り、より詳細には、追突された時、着座者の腰部が受圧板を押すと、ヘッドレストフレームが前方に傾斜されるとともに、前傾したヘッドレストフレームが元の位置に戻らないようにロックしたアクティブヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献に記載された従来のヘッドレスト装置は、ヘッドレスト20、ヘッドレストフレーム2、ヘッドレストフレーム2の下端の上部受圧板3、ヘッドレスト20を支える支柱31で構成される。ヘッドレストフレーム2は、回動軸8を支点としてシートバックフレーム1の内側にシーソーのように前方向に傾動する。ヘッドレストフレーム2は、通常時は上部受圧板3付近で付勢ばね18により付勢されることにより、ヘッドレストフレーム2の上部が後方に傾いて、支柱31がシートバックフレーム1に対向して押圧した状態となっている。
【0003】
車両が追突されると、車両は衝撃で前方に加速され、その反動で着座者は車両シート後方に押し出される。上部受圧板3が着座者の背中の荷重を受け、付勢ばね18に抗して後方に押されると、ヘッドレストフレーム2が回動軸8を支点に回動し、ヘッドレスト20を前方に傾ける。この時、シートバックフレーム1とヘッドレストフレーム2との間に入り込んでヘッドレストフレーム2を前傾位置でロックするように、ロック部材11が設けられている。
【0004】
ロック部材11は、シートバックフレーム1の下側に設けられた下部受圧板4に着座者の腰部が押圧することによってロック部材11に連結されたワイヤ9が下方に引き込まれ、ロック部材回動機構6によって、シートバックフレーム1とヘッドレストフレーム2との間に入り込むようになっている。これにより、ヘッドレストフレーム2の後方への傾動が規制され、着座者の頭部が確実にヘッドレスト20で支持されて急激な後方移動ができないようになっている。
【0005】
前記ヘッドレスト装置では、前傾したヘッドレスト20を前傾位置でロックするため、着座者の腰部の荷重を受ける下部受圧板4の押圧によってロック部材11を駆動させる構造となっており、部品点数が多く複雑になっている。
また、前記ヘッドレスト装置では、追突された時、着座者の腰部が背中より先にシートバック側を押圧す傾向にあるため、ヘッドレスト20の前傾動作が遅れる懸念がある。
【先行技術文献】
【0006】
【特許文献】
【特許文献】 特開2009−214565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みて創案されたものであり、追突された時、簡単な機構で、前傾されたヘッドレストフレームを前傾位置でロックすることができるとともに、迅速に着座者の頭部をヘッドレストで支持できるようにしたアクティブヘッドレストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明による請求項1に記載のアクティブヘッドレストは、シートバックフレームに取り付けられたヘッドレスト支持フレームの支点となる回動軸と、前記ヘッドレスト支持フレームの下部に設けられて追突された時に着座者の腰部の荷重を受ける受圧部と、前記受圧部が後方に押されて前記支点を中心に回動して前傾した前記ヘッドレスト支持フレームの上部を元の位置に戻すように付勢するバネ部材と、前記受圧部が後方に押されて前記支点を中心に回動して前傾した前記ヘッドレスト支持フレームを前傾位置でロックするロック機構が備えられたアクティブヘッドレストにおいて、
前記ロック機構は、前記ヘッドレスト支持フレームの上部に設けられたコの字形状のストライカと、前記シートバックフレームの上部に設けられ、前記ストライカを前後方向に移動可能に挿通させ得る長孔が設けられたロックプレートと、該ロックプレートを常時、一方向に回動させるように付勢するバネ部材と、前記シートバックフレームの上部に設けられ、前記ロックプレートを回動自在に支持された支持部材とが設けられ、前記ヘッドレスト支持フレームが前傾して前記ストライカが前方位置に変位した場合にロックプレートが回動して係合し、前記ヘッドレスト支持フレームの前後移動を規制する凹部を前記長孔上に設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明による請求項2は、前記シートバックフレームに回動可能に支持された前記ヘッドレスト支持フレームの両側部の略中間位置に、追突時、着座者の腰部が前記受圧部を後方に押圧する時、前記ヘッドレスト支持フレームが後方へ折曲することで衝撃を適度に吸収するための脆弱部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1によれば、追突時、ヘッドレストの前傾動作に伴い、ヘッドレスト支持フレーム側に設けられたストライカが、シートバック側に設けられたロックプレート内に設けられた長孔内を移動して端部に変位した時、すなわちヘッドレストが最前傾位置に変位した時、ロックプレートが付勢バネ力によってロックプレートが回動し、ストライカが長孔上に設けられた凹部に自動的に係入することでヘッドレスト支持フレームをロックするようにしたので、複雑な構成によることなく、簡易な構造でヘッドレストを最前傾位置でロックすることが可能になり、部品点数の増加に伴うコストアップや重量増加を招くことを抑制できる。
【0011】
本発明による請求項2によれば、追突時、着座者の腰部が受圧部を後方に押圧した時、ヘッドレスト支持フレームに設けられた脆弱部によって、所定以上の荷重を受けたヘッドレスト支持フレームが後方に折曲して受圧部が後方へ変位することになる。これによって、着座者の受ける衝撃を緩和すると伴に、着座者の背中や腰がシートバック内に沈み込んで着座者の頭部がヘッドレストに近づき、ヘッドレストの前方移動と相まって、迅速に着座者の頭部がヘッドレストで支持されるようになり、着座者の鞭打ち傷害の軽減の効果が一層大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの斜視図である。
【図2】本発明によるアクティブヘッドレストが装備された車両用シートのシートバック内部構造を示すとともに、アクティブヘッドレストが作動していない通常の使用状態を示す斜視図である。
【図3】本発明によるアクティブヘッドレストが装備された車両用シートのシートバック内部構造を示すとともに、追突時にアクティブヘッドレストが作動してヘッドレストが前傾位置でロックされた状態を示す斜視図である。
【図4】図2のA−A線に沿う断面を示す図である。
【図5】図3のB−B線に沿う断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施形態に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0014】
本発明に係る車両用シート1は、図1に示すように、乗員が着座する座面となるシートクッション2と、背凭れとなるシートバック3と、シートバック3に対して上下調節可能なヘッドレスト4とで構成されている。また、車両用シート1は、車体フロアにシートスライド装置(図示省略)を介して固定され、シート全体を車体フロアに対して前後方向に位置調節できるようになっている。
【0015】
図2、図3は、本発明によるアクティブヘッドレストが装備された車両用シートのシートバック内部の構造を示す斜視図である。コ字形のパイプ材からなるアッパフレーム5aと、アッパフレーム5aの両端部を支持する左右一対のサイドフレーム5a、5bと、サイドフレーム5a、5bの下端部に連結するロアフレーム5dによってシートバックフレーム5が形成されている。シートバックフレーム5は、公知のリクライナ(図示省略)によって底部となるシートクッションフレーム(図示省略)に、前後傾動可能に取り付けられている。
【0016】
図3、図4に示すように、シートバックフレーム5の内側には、矩形形状のヘッドレスト支持フレーム6が、ヘッドレスト支持フレーム6の両側に設けられたヒンジブラケット8を介して回動軸7a、7bによって前後方向に回動自在にシートバックフレーム5に軸支される。ヘッドレスト支持フレーム6の下部には、追突された時、着座者の腰部の後方荷重を受ける受圧部6cが形成されている。受圧部6cはパイプ材を平坦に潰すようにして形成され、従来構造の別体で設けた受圧板を一体的に形成したものである。
バネ部材10の一端は、サイドフレーム5bに設けられた係止孔5eに係止され、他端はヘッドレスト支持フレーム6の下端部のコーナー部に係止されている。このように、バネ部材10がヘッドレスト支持フレーム6の下端を前方側に引いているので、ヘッドレスト支持フレーム6の上部は逆に、後方側に向かって付勢されている。受圧部6aが後方に押圧されると、回動軸7a、7bを支点にしてヘッドレスト支持フレーム6の上部が、シーソーのように揺動して前方に傾く。回動軸7a、7bから下側の長さが長いので、小さな力でヘッドレスト支持フレーム6の上部を確実に回動させて前傾させることができる。ヘッドレスト支持フレーム6には、左右一対のヘッドレストポールガイドホルダ9a、9bが備えられ、ヘッドレストポールガイドホルダ9a、9bにはヘッドレストポール4a、4bを支持し、かつヘッドレスト4を上下調節するポールガイド(図示省略)が挿入固定される。ヘッドレストポールガイドホルダ9a、9bに各々、ヘッドレストポール4a、4bが差し込まれる。そのため、ヘッドレスト支持フレーム6の上部が前方に傾けば、ヘッドレスト4も前方に傾く。
【0017】
シートバックフレーム5の上部には、ヘッドレスト支持フレーム6の上部のヘッドレストポールガイドホルダ9a、9bの近接位置に後方かつ斜め下方向に向かって凸状に配置され固定されたコの字形状のストライカ11に係合して、ヘッドレスト支持フレーム6を前傾状態で保持するロック機構12が設けられている。ロック機構12は、シートバックフレーム5の上部に固定された左右一対のベースブラケット13a、13bと、ベースブラケット13a、13bを連結する連結ピン14と、ベースブラケット13a、13b間に配置されるとともに回動軸17によって軸支され、ストライカ11を挿通して前後移動を許容し、前傾位置にあるヘッドレスト支持フレーム6のストライカ11に係入してヘッドレスト支持フレーム6の上部の後方移動を規制する凹部15bが設けられた長孔15aが穿設されたロックプレート15と、ヘッドレスト支持フレーム6の前傾時にロックプレート15を回転させてストライカ11が凹部15bに係入するように付勢するバネ部材16とで構成されている。バネ部材16は、一端が前記連結ピン14に係止され、他端は前記ロックプレート15の長孔15aとは反対側の端部に穿設された係止孔15bに係止されている。
【0018】
また、本件発明によるアクティブヘッドレストでは、ヘッドレスト支持フレーム6の両側に脆弱部6a、6bが設けられている。脆弱部6a、6bを設けることによって、受圧部6cに所定以上の後方荷重がかかった場合、ヘッドレスト支持フレーム6の脆弱部6a、6bより下側部分が脆弱部6a、6bを折曲点として後方に折曲するようになっている。このように、ヘッドレスト支持フレーム6の後方への折曲によって受圧部6cが後方に変位するようになっている。
なお、本願発明は、この実施例に限定されるものでなく、本願発明の技術的思想の範囲で、様々な変形例が実現できるものと解される。
【符号の説明】
【0019】
1 車両用シート
2 シートクッション
3 シートバック
4 ヘッドレスト
4a、4b ヘッドレストポール
5 シートバックフレーム
5a アッパフレーム
5b、5c サイドフレーム
5d ロアフレーム
5e 係止孔
6 ヘッドレスト支持フレーム
6a、6b 脆弱部
6c 受圧部
7a、7b 回動軸
8 ヒンジブラケット
9a、9b ヘッドレストポールガイドホルダ
10 バネ部材
11 ストライカ
12 ロック機構
13a、13b ベースブラケット
14 連結ピン
15 ロックプレート
15a 長孔
15b 凹部
15c 係止孔
16 バネ部材
17 回動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックフレームに取り付けられたヘッドレスト支持フレームの支点となる回動軸と、前記ヘッドレスト支持フレームの下部に設けられて追突された時に着座者の腰部の荷重を受ける受圧部と、前記受圧部が後方に押されて前記支点を中心に回動して前傾した前記ヘッドレスト支持フレームの上部を元の位置に戻すように付勢するバネ部材と、前記受圧部が後方に押されて前記支点を中心に回動して前傾した前記ヘッドレスト支持フレームを前傾位置でロックするロック機構が備えられたアクティブヘッドレストにおいて、
前記ロック機構は、前記ヘッドレスト支持フレームの上部に設けられたコの字形状のストライカと、前記シートバックフレームの上部に設けられ、前記ストライカを前後方向に移動可能に挿通させ得る長孔が設けられたロックプレートと、該ロックプレートを常時、一方向に回動させるように付勢するバネ部材と、前記シートバックフレームの上部に設けられ、前記ロックプレートを回動自在に支持された支持部材とが設けられ、前記ヘッドレスト支持フレームが前傾して前記ストライカが前方位置に変位した場合にロックプレートが回動して係合し、前記ヘッドレスト支持フレームの前後移動を規制する凹部を前記長孔上に設けたことを特徴とするアクティブヘッドレスト。
【請求項2】
前記シートバックフレームに回動可能に支持された前記ヘッドレスト支持フレームの両側部の略中間位置に、追突時、着座者の腰部が前記受圧部を後方に押圧する時、前記ヘッドレスト支持フレームが後方へ折れ曲がることで衝撃を適度に吸収するための脆弱部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のアクティブヘッドレスト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−96773(P2012−96773A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257264(P2010−257264)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000151760)株式会社東洋シート (142)
【Fターム(参考)】