説明

車両用ドアの開閉操作装置

【課題】クローザ機構の作動中に挟み込みを検知した場合、ドアを直ちに開方向へ反転移動させる。
【解決手段】コントローラは、ハーフラッチ検知信号に基づきラッチ機構をハーフラッチ状態からフルラッチ状態へ作動させるクローザモータ41のクローズ制御実行中に、ドアと車体間に物の挟み込みを検知可能な挟み込み検知センサ14からの挟み込み信号を受け付けた場合、先ずクローザモータ41のクローズ制御を中断すると共に解放機構を解放作動させるために解放モータ51の駆動制御を実行し、次にドアを開方向へ移動させるためにドア開閉モータ61の開制御を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアの開閉操作装置に関するもので、特に、ドアによる挟み込みを検知したとき、及び挟み込みを回避するための操作を行ったとき、ドアをモータの動力によって反転移動させるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この主の車両用ドアの開閉操作装置においては、例えば、特許文献1に記載されているように、ドアを開閉移動させるためのドア電動開閉機構(移動機構)と、車体側のストライカと係合しドアを閉鎖状態に保持可能なラッチ機構と、ラッチ機構とストライカとの係合を解放可能な解放アクチュエータ(レリーズアクチュエータ)と、ラッチ機構をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に作動させるクローザ機構(第1駆動機構)と、車体とドア間に物体の挟み込みを検知可能な挟み込み検知手段と、ドア電動開閉機構、解放アクチュエータ及びクローザ機構を制御するためのコントローラ(制御手段)とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2850284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のような車両用ドアの開閉操作装置においては、クローザ機構の作動中に挟み込み検知手段が挟み込みを検知した際、コントローラは、解放アクチュエータを解放作動制御すると同時に、クローザ機構の移動部材を初期位置に復帰させる反転駆動制御を実行し、次いで、クローザ機構の移動部材が初期位置に移動した後にドアを反転移動させるべくドア電動開閉機構の開駆動制御を実行するため、ドアをドア電動開閉機構により開方向へ反転移動させるには、クローザ機構の移動部材が初期位置に復帰するのを待たなければならず、ドアを直ちに反転移動させることができないという問題点がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、クローザ機構の作動中に挟み込みを検知した場合、及び挟み込みを回避するための操作を行った場合、ドアを直ちに開方向へ反転移動させることができる車両用ドアの開閉操作装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために第1の発明は、車両のドアに設けられ車体側のストライカと係合することによりドアを閉鎖状態に保持可能なラッチ機構及び当該ラッチ機構と前記ストライカとの係合を解除可能な解放機構を有するドアラッチと、前記ラッチ機構をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に作動させる動力を発生可能なクローザモータを有するクローザ機構と、前記ドアを開閉移動させるための動力を発生可能なドア開閉モータを有するドア電動開閉機構と、前記解放機構を解放作動させる動力を発生可能な解放モータを有する解放アクチュエータと、前記クローザモータ、前記ドア開閉モータ及び前記解放モータを制御可能なコントローラとを備え、前記ドアラッチは、さらに前記解放機構の解放作動に基づいて前記クローザ機構と前記ラッチ機構間の動力伝達経路を切断可能な動力切断機構を有し、前記コントローラは、ハーフラッチ検知信号に基づき前記ラッチ機構をハーフラッチ状態からフルラッチ状態へ作動させる前記クローザモータのクローズ制御実行中に、所定のオープン要求信号を受け付けた場合、先ず前記クローザモータのクローズ制御を中断すると共に前記解放機構を解放作動させるために前記解放モータの駆動制御を実行し、次に前記ドアを開方向へ移動させるために前記ドア開閉モータの開制御を実行することを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、第1の発明において、前記コントローラは、前記所定のオープン要求信号の受け付けに伴って、車載バッテリの電力を供給する通電路を前記クローザモータ側から前記解放モータ側に切替可能な切替リレー回路を有することを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記所定のオープン要求信号は、前記ドアと車体間に物の挟み込みを検知可能な挟み込み検知センサからの挟み込み信号であることを特徴とする。
【0009】
第4の発明は、第1または第2の発明において、前記所定のオープン要求信号は、前記ドアと車体間に物の挟み込みを検知可能な挟み込み検知センサからの挟み込み信号であることを特徴とする。
【0010】
第5の発明は、車両のドアに設けられ車体側のストライカと係合することによりドアを閉鎖状態に保持可能なラッチ機構及び当該ラッチ機構と前記ストライカとの係合を解除可能な解放機構を有するドアラッチと、前記ラッチ機構をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に作動させる動力を発生可能なクローザモータを有するクローザ機構と、前記ドアを開閉移動させるための動力を発生可能なドア開閉モータを有するドア電動開閉機構と、前記ドアに設けられ前記ラッチ機構を解放作動させる際に操作されるドアハンドルと、前記クローザモータ及び前記ドア開閉モータを制御可能なコントローラとを備え、前記ドアラッチは、さらに前記解放機構の解放作動に基づいて前記クローザ機構と前記ラッチ機構間の動力伝達経路を切断可能な動力切断機構を有し、前記コントローラは、ハーフラッチ検知信号に基づき前記ラッチ機構をハーフラッチ状態からフルラッチ状態へ作動させる前記クローザモータのクローズ制御実行中に、前記ドアハンドルの操作に伴って前記解放機構が解放作動したことを示すオープン要求信号を受け付けた場合、先ず前記クローザモータのクローズ制御を中断し、次に前記ドアを開方向へ移動させるために前記ドア開閉モータの開制御を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、クローザモータのクローズ制御実行中に、オープン要求信号を受け付けた場合、先ずクローザモータのクローズ制御を中断し、次にドア開閉モータの開制御を実行することによって、ドアを直ちに開方向へ反転移動させることができ、より安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した車両の側面図である。
【図2】本発明に係わる要素を説明するための概略図である。
【図3】本発明に係わる制御回路のブロック図である。
【図4】本発明に係わる動作を説明するためのタイミングチャート図である。
【図5】本発明に係わる動作を説明するためのタイミングチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1において、1は、ミニバンまたはワゴンタイプの自動車の車体、2は、車体1の側面に前後方向へ開閉自在に支持されたスライドドア、3は、スライドドア2内の後端部に設けられるドアラッチ、4は、ドアラッチ3に連結される電動式のクローザ機構、5は、ドアラッチ3に連結される電動式の解放アクチュエータ、6は、スライドドア2をモータの動力により開閉移動させるためのドア電動開閉機構である。
【0014】
クローザ機構4のクローザモータ41、解放アクチュエータ5の解放モータ51及びドア電動開閉機構6のドア開閉モータ61は、車体1の適所に設けられるコントローラ7により後述のように制御される。
【0015】
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものでなく、ドアをスライドドア2に代えて、例えばスイング式のサイドドアや上下方向に開閉可能なバックドア等にも適用可能である。
【0016】
車体1とスライドドア2とは、伸縮自在な電線をもって互いに電気的に常時接続され、スライドドア2がいずれの位置にあっても、車体1側に設けられる車載バッテリ8の電力をスライドドア2側に給電可能であり、かつスライドドア2側に設けられる各スイッチの検知信号をコントローラ7に送信可能となっている。
【0017】
図2に示すように、ドアラッチ3は、車体1側に固着されたストライカ(図示略)に係合しスライドドア2を全閉位置に保持可能なラッチ機構31及び当該ラッチ機構31とストライカとの係合を解放してスライドドア2の開移動を可能にする解放機構32を有している。解放機構32には、スライドドア2に設けられスライドドア2を開けるときに操作されるドアハンドル21及び解放アクチュエータ5の作動が入力される。
【0018】
ラッチ機構31は、ストライカから離脱したオープン状態と、スライドドア2の閉移動時にストライカに辛うじて係合するハーフラッチ状態(スライドドア2の半ドア位置に相当)と、ストライカに完全に係合するフルラッチ状態(スライドドア2の全閉位置に相当)に作動可能である。ドアラッチ3には、ラッチ機構31のハーフラッチ状態を検知可能なハーフラッチ検知スイッチ9及びフルラッチ状態を検知可能なフルラッチ検知スイッチ10が設けられる。
【0019】
クローザ機構4は、クローザモータ41及びクローザモータ41の回転を減速して出力する出力レバー(図示略)を有し、出力レバーがドアラッチ3の後述の動力切断機構33を介してラッチ機構31に連結されることにより、スライドドア2の閉移動時、ハーフラッチ検知スイッチ9がラッチ機構31のハーフラッチ状態を検知すると、クローザモータ41がクローズ方向へ駆動し当該駆動を出力レバー及び動力切断機構33を介してラッチ機構31に伝達し、ラッチ機構31をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に作動させてスライドドア2を半ドア位置から全閉位置に移動させる。そしてフルラッチ検知スイッチ10がラッチ機構31のフルラッチ状態を検知すると、クローザモータ41及び出力レバーが反転し、クローザ機構4は作動前の初期状態に戻る。
【0020】
解放アクチュエータ5は、解放モータ51及び当該解放モータ51の回転を減速して出力する出力レバー(図示略)を有し、出力レバーがドアラッチ3の解放機構32に連結され、ワイヤレス操作スイッチまたは車内に設けられた所定の操作スイッチ11が開操作されると、解放モータ51が駆動し当該駆動を出力レバーを介して解放機構32に伝達することにより、解放機構32を解放作動させてラッチ機構31とストライカとの係合を解放してスライドドア2の開移動を可能にする。
【0021】
動力切断機構33は、通常はクローザ機構4におけるクローザモータ41のクローズ方向への回転による出力レバーの作動をラッチ機構31に伝達し得るようにクローザ機構4の出力レバーとラッチ機構31間の動力伝達経路を接続しているが、解放機構32がドアハンドル21の開操作または解放アクチュエータ5の解放駆動により解放作動した場合には、クローザ機構4の出力レバーとラッチ機構31間の動力伝達経路を切断しクローザ機構4の出力レバーの作動をラッチ機構31に伝達不能にする。これにより、クローザ機構4のクローズ作動に伴って、ラッチ機構31がハーフラッチ状態からフルラッチ状態に作動している最中であっても、動力切断機構33を切断状態とすることによって、ラッチ機構31のオープン状態への復帰作動が自由になる。
【0022】
ドア電動開閉機構6は、車体1の側部に配置されるとともに、正逆回転可能なドア開閉モータ61と、ドア開閉モータ61の回転により減速機(図示略)を介して回転可能な回転ドラム62と、ドア開閉モータ61と回転ドラム62間の動力伝達経路を断続可能な電磁クラッチ63と、回転ドラム62に巻き取り及び送り出し可能に掛け回されるとともに、スライドドア2の後端部に連結される動力伝達用のケーブル64とを備える。
【0023】
電磁クラッチ63が動力伝達経路を切断した状態のときには、ドア開閉モータ61を逆転させる抵抗を受けることなく、スライドドア2を軽力で手動開閉することができる。
【0024】
スライドドア2の開閉移動に同期して回転する回転ドラム62には、回転ドラム62の回転角度を検出する移動センサ65が設けられている。移動センサ65は、回転ドラム62の回転角度(スライドドア2の移動量に相当)及び回転方向(スライドドア2の移動方向に相当)に応じたパルス信号を発生可能なロータリエンコーダにより構成させる。
【0025】
図3に示すように、コントローラ7は、主にマイクロコンピュータにより構成される制御処理部71と、制御処理部71により制御される切替リレー回路72、クローザリレー回路73、電磁クラッチリレー回路74及びドア開閉モータリレー回路75を有する。コントローラ7の入力ポートには、ハーフラッチ検知スイッチ9、フルラッチ検知スイッチ10、操作スイッチ11、スライドドア2の開閉を検出するドアスイッチ12、解放機構32の解放作動を検知する解放検知スイッチ13及びスライドドア2と車体1間に物体が挟み込まれたことを検知する感圧センサにより構成される挟み込み検知センサ14から出力される各信号が入力され、また同じく出力ポートには、クローザモータ41、解放モータ51、ドア開閉モータ61及び電磁クラッチ63が電気的に接続される。
【0026】
次に、コントローラ7が行う制御について説明する。
(スライドドア2が全閉位置にあるとき、操作スイッチ11が開操作された場合)
操作スイッチ11の開操作信号がコントローラ7に入力されると、制御処理部71は、切替リレー回路72に対してオープン制御指令を送出する。これにより、切替リレー回路72の可動接点721は、車載バッテリ8の電力をクローザリレー回路73側の通電路に供給可能な状態(図3に実線で示す状態)から解放モータ51側の通電路に供給可能な状態(図3に2点鎖線で示す状態)に切り替わり、車載バッテリ8の電力を切替リレー回路72を介して解放モータ51に供給可能にする。
【0027】
解放アクチュエータ5は、解放モータ51の解放駆動をもって、出力レバー介して解放機構32を解放作動させ、ドアラッチ3のラッチ機構31とストライカとの係合を解放する。そして、コントローラ7は、少なくともドアスイッチ12がスライドドア2の開きを検知すると、電磁クラッチリレー回路74及びドア開閉モータリレー回路75を駆動制御する。これにより、電磁クラッチ63が接続状態になると共に、ドア開閉モータ61が開方向へ駆動し、当該駆動をもって、スライドドア2を開方向へ移動させることができる。
【0028】
(スライドドア2が全開位置にあるとき、操作スイッチ11が閉操作された場合)
操作スイッチ11の閉操作信号がコントローラ7に入力されると、制御処理部71は、電磁クラッチリレー回路74及びドア開閉モータリレー回路75を駆動制御してオン状態とする。これにより、電磁クラッチ63が接続状態となり、ドア開閉モータ61が閉方向へ回転する。この結果、ドア開閉モータ61の閉方向の回転は、電磁クラッチ63、回転ドラム62及びケーブル64を介してスライドドア2に伝達され、スライドドア2は、閉方向へ移動する。
【0029】
スライドドア2が半ドア位置に達して、ハーフラッチ検知スイッチ9がラッチ機構31のハーフラッチ状態を検知すると、ハーフラッチ信号はコントローラ7に入力される。制御処理部71は、ドア開閉モータリレー回路75及び電磁クラッチリレー回路74を共にオフ制御すると共に、クローザリレー回路73をクローザモータ41がクローズ方向へ駆動するようにクローズ制御する。
【0030】
上記の制御により、ドア電動開閉機構6は停止し、クローザ機構4はクローズ作動する。このクローズ作動は、動力切断機構33を介してラッチ機構31に伝達される。ラッチ機構31は、ハーフラッチ状態からフルラッチ状態に作動し、スライドドア2を半ドア位置から全閉位置に移動させる。そして、フルラッチ検知スイッチ10がラッチ機構31のフルラッチ状態を検知すると、制御処理部71は、フルラッチ信号に基づいて、クローザモータリレー回路73を反転制御し、クローザモータ41を反転させる。これにより、クローザ機構4は、作動前の初期状態に戻って停止する。
【0031】
(クローザ機構4のクローズ作動中に、挟み込み検知センサ14が物体の挟み込みを検知した場合または操作スイッチ11が開操作された場合)
図4に示すように、スライドドア2の閉移動時に半ドア位置Aにおいて、ハーフラッチ検知スイッチ9からのハーフラッチ信号(ON)がコントローラ7に入力され、制御処理部71がクローザモータ41をクローズ方向へ駆動制御している最中、位置Cにおいて挟み込み検知センサ14が物体の挟み込みを検知するか、または挟み込み検知センサ14が物体の挟み込みを検知する前に操作スイッチ11が開操作されると、コントローラ7に挟み込み信号または開操作信号が入力される。
【0032】
コントローラ7の制御処理部71は、挟み込み信号または開操作信号に基づいて、先ず切替リレー回路72に対して切替制御指令を送出する。これにより、切替リレー回路72の可動接点721は、車載バッテリ8の電力をクローザリレー回路73側の通電路に供給可能な状態(図3に実線で示す状態)から解放モータ51側の通電路に供給可能な状態(図3に2点鎖線で示す状態)に切り替わり、車載バッテリ8の電力を切替リレー回路72を介して解放モータ51に供給可能にする。これにより、クローザモータ41への電力供給が中断されるとほぼ同時に、解放モータ51へ電力が供給され、解放アクチュエータ5は、解放作動を開始して解放機構32を解放作動させると共に、動力切断機構33を切断状態とする。これにより、ラッチ機構31とクローザ機構4間の動力伝達経路が切断され、ラッチ機構31はオープン状態へ作動することができる。
【0033】
そして、解放機構32の解放作動に基づいて、解放検知スイッチ13が解放機構32の解放作動を検知(ON)した後、少なくともドアスイッチ12が位置Bにおいてスライドドア2の開を検知すると、制御処理部71は、電磁クラッチリレー回路74をオン制御すると共にドア開閉モータリレー回路75を開制御して、ドア開閉モータ61を開駆動制御する。これにより、スライドドア2は、ドア電動開閉機構6の作動により直ぐに開方向へ移動する。
【0034】
また、ドア開閉モータ61の開駆動制御とほぼ同時に、切替リレー回路72の可動接点721を、車載バッテリ8の電力を解放モータ51側の通電路に供給可能な状態(図3に2点鎖線で示す状態)からクローザリレー回路73側の通電路に供給可能な状態(図3に実線で示す状態)に切り替え制御すると共に、クローザリレー回路73を反転制御する。これにより、解放モータ51への電力供給が遮断されると共に、クローザモータ41は反転し、クローザ機構4は作動前の初期状態に戻る。
【0035】
上述により、クローザ機構4のクローズ作動中に、挟み込み検知センサ14が物体の挟み込みを検知した場合または操作スイッチ11が開操作された場合には、クローザモータ41のクローズ駆動を中断させてドア開閉モータ61を開方向へ反転させるため、従来技術のように、クローザ機構4が初期状態へ戻ることを待つことなく、直ちにスライドドア2を開方向へ反転移動させることができる。
【0036】
(クローザ機構4のクローズ作動中に、ドアハンドル21が開操作された場合)
図5に示すように、スライドドア2の半ドア位置Aにおけるハーフラッチ検知スイッチ9のハーフラッチ信号に基づいて、クローザモータ41がクローズ方向へ駆動している最中に、位置Dにおいてドアハンドル21が開操作されると、解放機構32は、解放作動すると共に動力切断機構33を切断状態とし、ラッチ機構31のオープン状態への作動を可能にする。また、解放検知スイッチ13が解放機構31の解放作動を検知し、この検知信号がコントローラ7に入力されると、制御処理部71は、クローザリレー回路73を遮断制御してクローザモータ41への電力供給を中断する。
【0037】
そして、位置Bにおいて、ハーフラッチ検知スイッチ9のオープン信号、フルラッチ検知スイッチ10のオープン信号及びドアスイッチ12がスライドドア2の開を検知すると、制御処理部71は、電磁クラッチリレー回路74及びドア開閉リレー回路75を制御して、ドア開閉モータ61を開駆動制御する。これにより、スライドドア2は、ドア電動開閉機構6の作動により直ちに開方向へ移動する。
【0038】
また、ドア開閉モータ61の開駆動制御とほぼ同時に、クローザリレー回路73を反転制御してクローザモータ41を反転させ、クローザ機構4を作動前の初期状態に戻す。
【0039】
なお、クローザモータ41の反転制御については、本実施形態に限定されるものではない。例えば、クローザモータ41の反転駆動制御の開始時とドア開閉モータ61の開駆動制御の開始時とが同時にならないように、クローザモータ41の反転起動をドア開閉モータ61の起動から所定時間遅らすことで、急激な消費電流が抑えられ、ドア電動開閉機構6の起動電流を確保することができ、早い段階でスライドドア2を目標速度に制御可能となる。
【0040】
上述により、クローザ機構4のクローズ作動中、ドアハンドル21が開操作された場合にも、クローズモータ41のクローズ作動を中断させてドア開閉モータ61を開方向へ反転させるため、従来技術のように、クローザ機構4が初期状態へ戻ることを待つことなく、直ちにスライドドア2を開方向へ反転移動させることができ、物体の挟み込みを未然に防止することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 車体
2 スライドドア(ドア)
3 ドアラッチ
4 クローザ機構
5 解放アクチュエータ
6 ドア電動開閉機構
7 コントローラ
8 車載バッテリ
9 ハーフラッチ検知スイッチ
10 フルラッチ検知スイッチ
11 操作スイッチ
12 ドアスイッチ
13 解放検知スイッチ
14 挟み込み検知センサ
21 ドアハンドル
31 ラッチ機構
32 解放機構
33 動力切断機構
41 クローザモータ
51 解放モータ
61 ドア開閉モータ
62 回転ドラム
63 電磁クラッチ
64 ケーブル
65 移動センサ
71 制御処理部
72 切替リレー回路
721 可動接点
73 クローザリレー回路
74 電磁クラッチリレー回路
75 ドア開閉モータリレー回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに設けられ車体側のストライカと係合することによりドアを閉鎖状態に保持可能なラッチ機構及び当該ラッチ機構と前記ストライカとの係合を解除可能な解放機構を有するドアラッチと、
前記ラッチ機構をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に作動させる動力を発生可能なクローザモータを有するクローザ機構と、
前記ドアを開閉移動させるための動力を発生可能なドア開閉モータを有するドア電動開閉機構と、
前記解放機構を解放作動させる動力を発生可能な解放モータを有する解放アクチュエータと、
前記クローザモータ、前記ドア開閉モータ及び前記解放モータを制御可能なコントローラとを備え、
前記ドアラッチは、さらに前記解放機構の解放作動に基づいて前記クローザ機構と前記ラッチ機構間の動力伝達経路を切断可能な動力切断機構を有し、
前記コントローラは、ハーフラッチ検知信号に基づき前記ラッチ機構をハーフラッチ状態からフルラッチ状態へ作動させる前記クローザモータのクローズ制御実行中に、所定のオープン要求信号を受け付けた場合、先ず前記クローザモータのクローズ制御を中断すると共に前記解放機構を解放作動させるために前記解放モータの駆動制御を実行し、次に前記ドアを開方向へ移動させるために前記ドア開閉モータの開制御を実行することを特徴とする車両用ドアの開閉操作装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記所定のオープン要求信号の受け付けに伴って、車載バッテリの電力を供給する通電路を前記クローザモータ側から前記解放モータ側に切替可能な切替リレー回路を有することを特徴とする請求項1記載の車両用ドアの開閉操作装置。
【請求項3】
前記所定のオープン要求信号は、前記ドアと車体間に物の挟み込みを検知可能な挟み込み検知センサからの挟み込み信号であることを特徴とする請求項1または2記載の車両用ドアの開閉操作装置。
【請求項4】
前記所定のオープン要求信号は、前記ドアを前記ドア電動開閉機構により開閉移動させる際に操作される操作スイッチからの開操作信号であることを特徴とする請求項1または2記載の車両用ドアの開閉操作装置。
【請求項5】
車両のドアに設けられ車体側のストライカと係合することによりドアを閉鎖状態に保持可能なラッチ機構及び当該ラッチ機構と前記ストライカとの係合を解除可能な解放機構を有するドアラッチと、
前記ラッチ機構をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に作動させる動力を発生可能なクローザモータを有するクローザ機構と、
前記ドアを開閉移動させるための動力を発生可能なドア開閉モータを有するドア電動開閉機構と、
前記ドアに設けられ前記ラッチ機構を解放作動させる際に操作されるドアハンドルと、
前記クローザモータ及び前記ドア開閉モータを制御可能なコントローラとを備え、
前記ドアラッチは、さらに前記解放機構の解放作動に基づいて前記クローザ機構と前記ラッチ機構間の動力伝達経路を切断可能な動力切断機構を有し、
前記コントローラは、ハーフラッチ検知信号に基づき前記ラッチ機構をハーフラッチ状態からフルラッチ状態へ作動させる前記クローザモータのクローズ制御実行中に、前記ドアハンドルの操作に伴って前記解放機構が解放作動したことを示すオープン要求信号を受け付けた場合、先ず前記クローザモータのクローズ制御を中断し、次に前記ドアを開方向へ移動させるために前記ドア開閉モータの開制御を実行することを特徴とする車両用ドアの開閉操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−7343(P2012−7343A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143003(P2010−143003)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(000148896)三井金属アクト株式会社 (127)
【Fターム(参考)】