説明

車両用ブレーキ装置

【課題】ブレーキペダルの操作が車輪ブレーキと機械的に接続されている特徴を維持したままで、従来の一般的なブレーキシステムと同様に車両搭載可能なブレーキバイワイヤを実現できる車両用ブレーキ装置を提供する。
【解決手段】倍力装置27と、マスタシリンダ25と、車輪ブレーキ30と、マスタシリンダと車輪ブレーキとの間に介在された液圧制御装置43とを備えるとともに、ブレーキ操作ストロークを検出するストロークセンサ52と、ブレーキ操作ストロークに対する擬似反力をブレーキペダル20に与えるシミュレータ51と、倍力装置と液圧制御装置との間に配設され、ブレーキ操作ストロークを所定量吸収する遊び要素53と、ストロークセンサからの入力に基づき液圧制御装置を制御する電子制御装置13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ操作部分とブレーキ制動部分とを電気信号によって結ぶブレーキバイワイヤを実現する車両用ブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブレーキペダル等からなるブレーキ操作部分と、車輪ブレーキ等からなるブレーキ制動部分とを電気信号によって結ぶ、いわゆるブレーキバイワイヤにおいては、ブレーキ操作部分とブレーキ制動部分とがメカ的に遮断されているので、例えば、アンチロックブレーキ作動時の制動力の変動によってブレーキペダルに不快な振動を発生させることがない。また、回生ブレーキ装置を備えた電気自動車やハイブリッド車両の場合で、回生制動力が何らかの理由で変動した場合にも、ブレーキペダルの操作に違和感を感じさせることなく、車輪ブレーキによる制動力を回生制動力変動を補償するように変動させることができる、といった利点がある。
【0003】
一方で、完全なブレーキバイワイヤでは、電気系の故障の際にブレーキが作動しなくなる事態を回避するために、例えば特許文献1に記載されているように、ブレーキペダルでマスタシリンダ圧力を発生させ、電気系が正常な場合は、マスタシリンダと車輪ブレーキの間を遮断し、電気系が故障した場合には、マスタシリンダと車輪ブレーキとを接続し、さらに電気系の完全故障の確率を下げるために、電源を二重化する方法が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、ブレーキペダルで作動可能なシミュレータを備え、シミュレータに設けた作動センサの信号が、この信号に応じて圧力源を制御する電子制御ユニットに送られ、この圧力源の出力が制動力用分配装置に接続されて車輪ブレーキを作動させ、さらに、失陥時には、運転者の筋力でブレーキを作動可能とする手段を備えた自動車のブレーキシステム作動用ブレーキバイワイヤアクチュエータであって、バイワイヤモードで、自動車のブレーキシステムの力の反動から機械的にブレーキペダルを分離するために、ブレーキペダルあるいはブレーキペダルに関節結合される部材と、操作入力の流れの下流に接続される作動部材との間に空動距離が設けられているブレーキバイワイヤアクチュエータが記載されている。
【0005】
また、ブレーキバイワイヤではないが、回生ブレーキとの協調制御を実現する方法として、例えば特許文献3には、ドライバのブレーキ操作力を倍力装置によって所定の倍力比に従って増大し、倍力装置に接続されたマスタシリンダにて増大されたブレーキ操作力に応じた基礎液圧を発生し、発生した基礎液圧をマスタシリンダと液圧制御弁を介在した経路によって連結された車輪ブレーキ(ホイールシリンダ)に付与し、各車輪に基礎液圧制動力を発生させるとともに、ポンプを駆動することによって形成する制御液圧を車輪ブレーキに付与し、各車輪に制御液圧制動力を発生可能な液圧ブレーキ装置を備えた車両用ブレーキ装置が記載されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、ブレーキ操作力の入力があった場合に、所定の回生制動力を車輪の何れかに発生させることによって、ブレーキ操作力に対応する目標制動力を基礎液圧制動力とともに発生する回生ブレーキ装置と、回生ブレーキ装置によって実際に発生された回生制動力の所定の回生制動力に対する変動を検出する変動検出手段とを備えている。そして、変動検出手段にて変動が検出された場合、液圧ブレーキ装置のポンプを駆動させるとともに液圧制御弁を制御することにより制御液圧を形成して、車輪に制御液圧に基づく制御液圧制動力を発生させ、変動検出手段にて検出された変動による回生制動力の不足を補償する制動力補償手段を有する車両用ブレーキ装置が記載されている。
【特許文献1】特開2003−11808号公報(段落0025、0026、図1、図5)
【特許文献2】特表2005−532220号公報(段落0046〜0048、図1)
【特許文献3】特開2005−349880号公報(段落0031、0042、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されている車両用ブレーキ装置は、電気系の完全故障に対する信頼性を向上することができるが、電源を二重化することによるコストアップは避けられない。
【0008】
特許文献2に記載されている車両用ブレーキ装置は、ブレーキペダルの操作が、電気信号に頼ることなく、車輪ブレーキと機械的に常に接続されていることから、電気系が故障した際も、正常時に準ずる制動力を確保することができる。しかしその反面、従来の一般的な車両であれば、負圧倍力装置とマスタシリンダが取付くことになるブレーキペダルからの操作入力が加わる位置に、ブレーキバイワイヤアクチュエータを装着する必要があり、さらにABS等の車輪ブレーキを個別に制御する装置が必要になるので、コスト面および車両搭載設計上の制約が大きくなる。
【0009】
特許文献3に記載されている車両用ブレーキ装置も、ブレーキペダルの操作が車輪ブレーキと機械的に常に接続されていることから、故障に対する信頼性を高くすることができる。その一方、この装置では車両制動力の全てを回生制動力が負担することはできない。また、制動途中で回生制動力が変動した場合も、ブレーキペダルを操作するブレーキ操作力に対する制動力の和を一定にさせることができるが、その際、制御液圧を発生するポンプ駆動によってマスタシリンダのブレーキ液が消費されるため、ブレーキペダルのストロークが変動することは避けられず、最大回生制動力を大きくしようとすると、ブレーキペダルのストローク変動が大きくなり、ドライバに違和感として感じられる恐れがある。これらの問題は、特許文献3に記載の車両用ブレーキ装置がブレーキバイワイヤを実現していないことからの当然の帰結である。
【0010】
本発明は係る従来の不具合を解消するためになされたもので、ブレーキペダルの操作が車輪ブレーキと機械的に接続されている特徴を維持したままで、従来の一般的なブレーキシステムと同様に車両搭載可能なブレーキバイワイヤを実現できる車両用ブレーキ装置を提供することを目的とするものである
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明の構成上の特徴は、ドライバのブレーキ操作力を増大する倍力装置と、マスタシリンダ側の作動流体を吸入し車輪ブレーキ側に吐出可能なポンプおよび液圧制御弁を有する液圧制御装置との間に、ドライバのブレーキ操作ストロークを所定量吸収する遊び要素を配設したことである。これによって、ブレーキペダルが踏まれた場合、遊び要素によって、ブレーキペダルの操作ストロークを吸収でき、ブレーキペダルの操作ストロークを検出するストロークセンサの検出信号に基づいて、電子制御装置により液圧制御装置を制御し、所要の制御液圧が車輪ブレーキに供給される。
【0012】
上記のように構成した請求項1に係る発明によれば、電気系に故障が発生した場合も、正常時に準ずる制動力を確保できるブレーキバイワイヤとすることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1において、遊び要素を、倍力装置の出力部材とマスタシリンダの入力部材との間に挿入されたスプリングおよびスプリングの最大長を制限する吊り要素からなるストローク吸収機構で構成したことである。これによって、ブレーキペダルの踏み込みの初期においては、ストローク吸収機構によって、倍力装置のストロークに比してマスタシリンダの作動ストロークが抑制される。
【0014】
上記のように構成した請求項2に係る発明によれば、倍力装置の出力を、ストローク吸収機構を変形させるだけの小さな出力とすることができ、マスタシリンダの液圧室の液圧もそれに見合った小さい圧力しか発生しないようにすることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1において、遊び要素を、マスタシリンダと液圧制御装置の間の液圧回路に一端を臨み、他端が大気圧に臨んでいるシリンダに液密かつ摺動自在に嵌装されたピストンと、ピストンを液圧回路側に付勢するスプリングとからなる液量吸収機構で構成したことである。これによって、ブレーキペダルの踏み込みの初期においては、液量吸収機構によって、液量が吸収されるため、マスタシリンダの液圧室の液圧を小さくなる。
【0016】
上記のように構成した請求項3に係る発明によれば、倍力装置とマスタシリンダとの構成を変更することなく、液圧制御装置の液圧回路に液量吸収機構を追加するだけで、遊び要素を簡単に設けることができ、請求項2と同様な効果が期待できる。
【0017】
請求項4に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1において、遊び要素に、遊び吸収速度を制限するダンパ機構を設けたことである。これによって、ブレーキペダルが踏まれた場合の遊び要素によるブレーキペダルの操作ストローク吸収速度が制限される。
【0018】
上記のように構成した請求項4に係る発明によれば、例えば、急ブレーキ操作時には、遊び要素の遊び吸収速度を制限できることにより、制御液圧を発生するためのポンプの能力をいたずらに大きくすることなく、ブレーキシステムとして要求される急ブレーキ時の応答性を確保することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明の構成上の特徴は、請求項3において、液量吸収機構の入り口側に、液量吸収機構によって吸収される液流量を制限する制限要素を設けたことである。
【0020】
上記のように構成した請求項5に係る発明によれば、急ブレーキ操作時には、液量吸収機構に吸収される液流量を制限要素によって制限でき、マスタシリンダからの吐出液量のうちのかなりの液量を車輪ブレーキに供給できるようになるので、制御液圧を発生するためのポンプの能力をいたずらに大きくすることなく、ブレーキシステムとして要求される急ブレーキ時の応答性を確保することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1ないし請求項5の何れか1項において、倍力装置が、操作反力を入力部材に伝えないように構成されていることである。これによって、ブレーキペダルには主としてシミュレータによる擬似反力が付与される。
【0022】
上記のように構成した請求項6に係る発明によれば、車輪ブレーキのいわゆる消費液量が設計値から変動するなどして、遊びの範囲を超えてしまう場合、あるいは電気系統の失陥等によってポンプが作動しない場合にも、倍力装置からブレーキペダルへの反力が発生しないので、ブレーキペダルの踏力とストロークの関係をシミュレータによって決まる関係のままとすることができる。さらに、負圧倍力装置が有するゴムディスクのような反力伝達機構が不要になるので、ストローク吸収機構の装着をより容易にすることができる。
【0023】
請求項7に記載の発明の構成上の特徴は、請求項1ないし請求項6の何れか1項において、車輪に回生制動力を発生する回生ブレーキ装置を備え、電子制御装置は、回生ブレーキ装置による回生制動力と、液圧制御装置の出力液圧で作動する車輪ブレーキによる制動力の和が目標制動力に一致するように、回生ブレーキ装置と、液圧制御装置のポンプおよび液圧制御弁とを制御するようにしたことである。これによって、液圧制御装置による液圧制動力を、目標制動力と実行回生制動力との差分だけ発生させればよく、遊び要素による遊びを適当に設定することにより、ブレーキ操作力が小さい場合の目標制動力の事実上全てを回生制動力で負担することが可能になる。
【0024】
上記のように構成した請求項7に係る発明によれば、回生制動力の変動に対応して車輪ブレーキの制動力を増減させる場合も、ブレーキペダルを操作するフィーリングに違和感を生ずることもない。しかも制動力を付与する手段として、筋力によるブレーキ以外に、回生ブレーキ装置、一般的に負圧を動力源とする倍力装置、バッテリ駆動される液圧制御装置のポンプの3種類を有することになるので、システムの信頼性を高めることができる。
【0025】
請求項8に記載の発明の構成上の特徴は、請求項7において、遊び要素が吸収する所定量を、回生ブレーキ装置が出し得る最大減速度に等しい減速度を車輪ブレーキによる減速のみで出す場合のマスタシリンダのストローク量に近い量に設定したことである。
【0026】
上記のように構成した請求項8に係る発明によれば、遊び要素を有効に作用させることができ、これによって、ブレーキ操作力が小さい場合の目標制動力の事実上全てを回生制動力で負担することが可能となり、エネルギ効率を向上することができる。
【0027】
請求項9に記載の発明の構成上の特徴は、マスタシリンダと液圧制御装置との間に、ドライバのブレーキ操作ストロークを所定量吸収する液量吸収機構を配設するとともに、マスタシリンダと液量吸収機構との間に、システム異常によってポンプより圧油が吐出されなくなったときに、マスタシリンダと液量吸収機構との連通を遮断するカット弁を配設したことである。これによって、システム異常時には、カット弁によってマスタシリンダの消費液量を液量吸収機構で消費されなくなる。
【0028】
上記のように構成した請求項9に係る発明によれば、ポンプが故障した場合でも、カット弁を閉じることにより、マスタシリンダの消費液量が液量吸収機構で消費されることがなく、これによって、ペダルストロークが伸びることがなく、通常制御時とほぼ同等の制動力を確保することができる。
【0029】
請求項10に記載の発明の構成上の特徴は、請求項9において、カット弁を非通電時は閉止される電磁弁によって構成したことである。
【0030】
上記のように構成した請求項10に係る発明によれば、電気系統の失陥によってカット弁を即座に閉止させることができる。
【0031】
請求項11に記載の発明の構成上の特徴は、請求項9または請求項10において、液圧制御弁による差圧があるときに液圧制御弁のポンプが故障した際は、カット弁を閉止した後、液圧制御弁の差圧を小さくするようにしたことである。これによって、ブレーキペダルを踏んでいるときにポンプが故障した場合でも、液量吸収機構に液量が流れて、車輪ブレーキの圧力が低下することが防止される。
【0032】
上記のように構成した請求項11に係る発明によれば、液圧制御弁の制御によって液量吸収機構が満タンになることがなく、液量吸収機構を的確に機能させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の第1の実施の形態に係るブレーキバイワイヤ式の車両用ブレーキ装置を図面に基づいて説明する。図1および図2において、車両用ブレーキ装置10は、液圧ブレーキ装置11と、液圧ブレーキ装置11を制御するブレーキECU13等を備えている。
【0034】
液圧ブレーキ装置11は、左右の前輪23fl,23frおよび左右の後輪23rl,23rrにそれぞれ設けられた左右の前輪用車輪ブレーキ30fl,30frおよび左右の後輪用車輪ブレーキ30rl,30rrを有している。左右の前輪用車輪ブレーキ30fl,30frおよび左右の後輪用車輪ブレーキ30rl,30rrは、ドライバがブレーキペダル20を操作することにより、互いに分離して設けられた略同じ構成の前輪ブレーキ系統24fおよび後輪ブレーキ系統24rによって制動力が発生されるようになっている。
【0035】
図1および図2においては、前輪および後輪ブレーキ系統24f,24rをそれぞれ構成する構成部品の構成および作動が同じであるので、それぞれ対応する構成部品には同一の算用数字にローマ字のf、rをそれぞれ付加した参照符号を付して前後を区別した。さらに、左右輪における同一構成部品には、前後輪を区別するローマ字のf、rの次にl、rを付加して左右を区別した。なお、明細書中で構成部品を前後左右の区別なく示すときは対応する算用数字のみを参照番号として付した。
【0036】
25はデュアルマスタシリンダで、マスタシリンダ25には、2つの液圧室25f、25rにブレーキ液圧をそれぞれ発生させるマスタピストン21f、21r(図2参照)が摺動可能に嵌装されている。マスタピストン21f、21rの摺動によって、マスタピストン21f、21rのストロークに応じた量のブレーキ液が液圧室25f、25rから経路26f,26rに送出される。28はブレーキ液を貯溜するリザーブタンクで、マスタシリンダ25の液圧室25f、25rにブレーキ液を補給する。
【0037】
27は、ブレーキペダル20とマスタシリンダ25との間に介在された倍力装置としての負圧式倍力装置である。負圧式倍力装置27は、公知のものを利用でき、図3に示すように、ブレーキペダル20に連結された入力ロッド61と、エンジンの吸気負圧が作用されるダイヤフラム62と、ダイヤフラム62に連結されたバルブピストン63と、バルブピストン63をブレーキペダル20側に付勢するスプリング64と、バルブピストン63に内蔵され、ブレーキペダル20の操作によって開閉作動される空気弁部65を備えている。ダイヤフラム62の両側には、大気が導入可能な変圧室66と、エンジンの吸気負圧が導入される低圧室67が配設されている。
【0038】
ブレーキペダル20が操作されると、空気弁部65が作動されて、ダイヤフラム62にて区画された変圧室66と低圧室67との連通が遮断されるとともに、大気が変圧室66に導入され、変圧室66と低圧室67との間で圧力差が発生する。この圧力差によってダイヤフラム62とともにバルブピストン63がスプリング64の付勢力に抗して、ブレーキペダル20の作動ストロークに追従して前進される。
【0039】
負圧式倍力装置27は、出力の一部をブレーキペダル20側に伝えるために通常用いられるゴムディスクを用いておらず、ブレーキペダル20が操作された際、空気弁部65を押えるために用いられているスプリング68などの小さな力以外に力がブレーキペダル20側に伝わらないようにしている。
【0040】
シミュレータ51は、ブレーキ操作ストロークに対する擬似反力をブレーキペダル20に与えるものである。シミュレータ51は、ブレーキペダル20の操作力に応じて所定量ストロークするよう複数のスプリング56等で構成されており、スプリング56の一端はブレーキペダル20に、他端は車両の固定部分に結合されている。なお、スプリング56の一端はブレーキペダル20でなく、ブレーキペダル20と同期して動く他の部品であってもよい。
【0041】
シミュレータ51にはストロークセンサ52が備えられ、このストロークセンサ52は、ブレーキペダル20のストロークを検出し、その検出信号をブレーキECU13に送信する。ブレーキECU13は、ストロークセンサ52の出力値に対する目標制動力、および液圧が車輪ブレーキ30に供給されたとき車輪23に発生させる液圧制動力をマップ、テーブルまたは演算式にしてメモリに予め記憶している。
【0042】
53は、ドライバのブレーキ操作ストロークを所定量吸収する遊び要素としてのストローク吸収機構で、負圧式倍力装置27のバルブピストン63とマスタシリンダ25のマスタピストン21fとの間に配設されている。ストローク吸収機構53は、図4に拡大して示すように、所定量相対移動可能に係合する2つの吊り要素55a、55bと、これら吊り要素55a、55bの間に介挿されたスプリング54とによって構成されている。すなわち、一方の吊り要素55aはバルブピストン63に当接され、他方の吊り要素55bはマスタピストン21fに当接され、通常はスプリング54のばね力によって、吊り要素55aに対して吊り要素55bを前方に付勢し、吊り要素55a、55bを互いに係合する位置に保持し、スプリング54の最大長を制限しており、遊び量aを設定している。
【0043】
スプリング54のセット荷重は、マスタピストン21fに作用されたスプリング22のセット荷重よりも大きくすることが望ましい。
【0044】
図1および図2に示すように、前輪および後輪ブレーキ系統24f,24rには、液圧制御弁をなすソレノイド液圧比例制御弁32f,32rがそれぞれ設けられ、ソレノイド液圧比例制御弁32f,32rの入口ポートは、マスタシリンダ25の液圧室25f,25rに経路26f,26rによりそれぞれ接続されている。ソレノイド液圧比例制御弁32は、出口ポートの液圧が入口ポートの液圧よりリニアソレノイド33に印加される制御電流に応じてゼロから制御差圧だけ高くなるように圧力制御するものである。ソレノイド液圧比例制御弁32f,32rの入口ポートおよび出口ポート間には、入口ポートから出口ポートへの液流を許容する逆止弁が接続されている。通常の制御の場合、ソレノイド液圧比例制御弁32はリニアソレノイド33の無勢により開位置にシフトされ、入口ポートと出口ポートとが直通されている。
【0045】
ソレノイド液圧比例制御弁32fの出口に接続された経路26fは、分岐されて左右の前輪用車輪ブレーキ30fl,30frに、ソレノイド開閉弁34fl,34frおよび36fl,36frからなるABS制御弁37fを介して接続されている。同様に、ソレノイド液圧比例制御弁32rの出口に接続された経路26rは、分岐されて左右の後輪用車輪ブレーキ30rl,30rrに、ソレノイド開閉弁34rl,34rrおよび36rl,36rrからなるABS制御弁37rを介して接続されている。
【0046】
モータ39によって回転駆動されるポンプ38f,38rの吐出ポートは、吐出ポートへの液流を阻止する逆止弁を介してソレノイド液圧比例制御弁32f,32rの出口ポートとABS制御弁37f,37rのインポートとの間に接続されている。ポンプ38f,38rの吸入ポートは、ABS制御弁37f,37rの出口ポートに連通された応圧弁45f、45rを介してソレノイド液圧比例制御弁32f,32rの入口ポートに接続されている。応圧弁45f、45rは、有底のケーシングを弱い圧縮スプリングで付勢されたピストンで密閉して構成されたリザーバ46f、46rを備え、リザーバ46f、46rが空になると弁を開放して、ポンプ38f,38rの吸入ポートをマスタシリンダ25の液圧室25f、25rに連通するようになっている。なお、応圧弁45f、45rはABS制御弁37f、37rの一時液溜めを兼ねている。
【0047】
ポンプ38、モータ39、ソレノイド液圧比例制御弁32等により、ポンプ38の駆動によって形成される制御液圧を車輪ブレーキ30に付与し、この車輪ブレーキ30に対応する車輪23に制御液圧制動力を発生可能な制御液圧制御装置43を構成している。制御液圧制御装置43は、マスタシリンダ25と車輪ブレーキ30との間に介在され、ポンプ駆動によって制御液圧を発生する。かかる制御液圧制御装置43と、負圧式倍力装置27と、マスタシリンダ25と、車輪ブレーキ30とによって、液圧ブレーキ装置11を構成している。
【0048】
ブレーキECU13は、ブレーキペダルストロークに応じて車輪23に発生させる目標制動力を設定し、この目標制動力に基づいて液圧制動力を演算し、液圧制動力を車輪23に発生させるために車輪ブレーキ30に供給しなければならない制御液圧を求める。また、ブレーキECU13には、モータ39により回転駆動されるポンプ38から車輪ブレーキ30に供給されるブレーキ液の液圧が制御液圧となるように、ソレノイド液圧比例制御弁32のリニアソレノイド33に制御電流を印加する。
【0049】
さらに、ブレーキECU13は、液圧センサ29、各車輪23の車輪速度を検出する図略の車輪速センサ等からの検出信号に基づいて各プログラムを実行し、制御信号をソレノイド液圧比例制御弁32r,32f、ABS制御弁37f,37r、モータ39等に出力し、車輪ブレーキ30に制御された液圧を供給して車輪23に所望の液圧制動力を発生させる。
【0050】
上記したブレーキECU13によって、ストロークセンサ52からの入力に基づき液圧制御装置43を制御する電子制御装置を構成している。
【0051】
次に、上記した第1の実施の形態に係る車両用ブレーキ装置10の作動について説明する。ブレーキペダル20が踏まれると、負圧式倍力装置27の入力ロッド61が前進し、空気弁部65が大気導入状態となり、変圧室66に大気が導入される。これにより、負圧式倍力装置27のバルブピストン63が入力ロッド61にほぼ追いつくまで前進し、ストローク吸収機構53を押す。この際、ストローク吸収機構53のスプリング54のセット荷重は、マスタシリンダ25のスプリング22のセット荷重より大きく設定されているので、ブレーキペダル20の踏み込みの初期においては、ストローク吸収機構53は変形せず、まずマスタシリンダ25のマスタピストン21f、21rが前進し、マスタシリンダ25の液圧室25f、25rとリザーブタンク28との連通が遮断される。これによって、マスタシリンダ25の液圧室25f、25rの液圧が上昇するため、その液圧とマスタシリンダ25のシリンダ径とを掛けた荷重がストローク吸収機構53に作用し、ストローク吸収機構53のスプリング54が圧縮されて、遊び量aが吸収される。この結果、マスタピストン21f、21rに対して負圧式倍力装置27のバルブピストン63が相対的に前進される。
【0052】
このようにして、ブレーキペダル20が踏まれても、ストローク吸収機構53による吸収作用によって、負圧式倍力装置27のバルブピストン63のストロークに比してマスタシリンダ25のマスタピストン21f、21rのストロークを抑制することができ、マスタシリンダ25の液圧室25f、25rの圧力もそれに見合った小さい圧力しか発生していないことになる。
【0053】
しかしながら、ブレーキペダル20には、シミュレータ51によって操作ストロークに対応した反力が発生するので、ドライバには、マスタシリンダ25に発生した液圧に拘らず、ブレーキペダル20の操作ストローク(踏み込み量)に対応した反力が作用される。ブレーキペダル20の操作ストロークはストロークセンサ52により検出され、この検出信号がブレーキECU13に入力されると、ブレーキECU13は、図5に示す制御プログラムを起動する。
【0054】
かかる制御プログラムの起動により、カウンタ、フラグ等の一時メモリをリセットして初期化し(ステップS1)、一定微少時間が経過する毎に、ステップS2以降のプログラムを実行する。
【0055】
ブレーキECU13は、メモリに記憶したブレーキペダルストロークと目標制動力との関係に基づいて、車輪23に発生させるべき目標制動力をマップ、テーブルまたは演算式で求め(ステップS3)、この目標制動力に基づいて液圧制動力を演算し(ステップS4)、この液圧制動力を車輪23に発生させるために車輪ブレーキ30に供給しなければならない制御液圧をマップ、テーブルまたは演算式で求める(ステップS5)。そして、モータ39を起動してポンプ38を駆動し、ポンプ38から車輪ブレーキ30に供給されるブレーキ液の液圧が所定の制御液圧となるようにソレノイド液圧比例制御弁32のリニアソレノイド33に制御電流を印加する(ステップS6)。
【0056】
これにより、ポンプ38から供給された液体がソレノイド液圧比例制御弁32によって所要の制御液圧に制御され、車輪ブレーキ30に供給される。従って、液圧ブレーキ装置11は、目標制動力に対応した液圧制動力を車輪23に発生させる。なお、車輪ブレーキ30の圧力をより精度よく制御するために、液圧センサ29で検出した液圧をフィードバックして制御してもよい。
【0057】
上記したブレーキ装置10で、仮に電子制御系が故障した場合には、負圧式倍力装置27の作動によりストローク吸収機構53が最大に変形してからマスタシリンダ25において液圧が発生し、車輪ブレーキ30に液圧制動力を発生させる。この場合、ブレーキペダルストロークと制動力との関係は遊びの分だけブレーキペダルストロークが長くなり、その分シミュレータ51の変形量が大きくなるので、ブレーキペダル踏力と制動力の関係で見ると、同じ制動力を出すためのブレーキペダル踏力が大きくなるが、一重故障状態として十二分な制動力を確保することができる。
【0058】
また、負圧式倍力装置27に供給される負圧に失陥が発生した場合は、一般的な負圧式倍力装置と同様に、入力ロッド61がバルブピストン63を直接押すことによって動かすことが可能である。ただし、負圧式倍力装置27内部のスプリングの力に打ち勝つ必要があるので、動き出しのブレーキペダル踏力が正常時よりも大きくなるが、先に述べたように、電子制御系が正常で、ブレーキペダルストロークに応じてポンプ38が作動していれば、マスタシリンダ25の液圧は低いままに保たれるので、負圧式倍力装置27内部のスプリング力以外のブレーキペダル踏力増はほとんど発生しない。この結果、ブレーキペダルストロークと制動力との関係は正常時と変わらず、ブレーキペダル踏力と制動力の関係では、倍力装置内部のスプリング力の分だけ同じ制動力を出すためのブレーキペダル踏力が大きくなるが、一重故障状態として十二分な制動力を確保することができる。
【0059】
このように、ブレーキ液圧を上昇させる2つの手段、すなわち、負圧式倍力装置27と制御液圧制御装置43のポンプ38とを有することにより、電気系に故障が発生した場合も、正常時に準ずる制動力を確保できるブレーキバイワイヤとすることができ、故障に対し信頼性の高いシステムとすることができる。
【0060】
図6は本発明の第2の実施の形態を示すもので、第1の実施の形態に対し、遊び要素として、スプリング54と吊り要素55a、55bからなるストローク吸収機構53に代えて、液量吸収機構153を用いた点、および負圧式倍力装置27として既存の構造のものを利用できるように、ゴムディスク69等によってブレーキペダル側に反力を返す構成とした点が相違している。従って、以下においては、第1の実施の形態と異なる点を説明し、同一構成部分については同一部品に同一の参照番号を付し、説明を省略する。
【0061】
液量吸収機構153は、マスタシリンダ25の液圧室25rに接続された経路26rから分岐された経路126に一端を臨み、他端が大気圧に臨んでいる有底のシリンダ57を備え、このシリンダ57にばね力の小さな圧縮スプリング58で付勢されたピストン59を嵌装した構成となっている。なお、液量吸収機構153の最大吸収液量は、第1の実施の形態におけるストローク吸収機構53の遊び量(最大変形量)aとマスタシリンダ径を掛けた量に等しく設定するのが望ましい。
【0062】
かかる第2の実施の形態においては、ブレーキペダル20が踏まれると、負圧式倍力装置27の入力ロッド61が前進して、変圧室66に大気が導入され、これにより、負圧式倍力装置27のバルブピストン63が入力ロッド61にほぼ追いつくまで前進する。これによって、マスタシリンダ25のマスタピストン21f、21rが前進し、マスタシリンダ25の液圧室25f、25rとリザーブタンク28との連通が遮断され、マスタシリンダ25の液圧が上昇する。マスタシリンダ25の液圧の上昇によって、液量吸収機構153のピストン59が圧縮スプリング58の付勢力に抗して、シリンダ57内を摺動され、ピストン59の摺動量に応じて液量が吸収されるため、マスタシリンダ25の液圧室25f、25rは小さい液圧しか発生しない。この結果、第1の実施の形態と同様に、ブレーキ液圧を上昇させる負圧式倍力装置27と制御液圧制御装置43のポンプ38とによって、故障に対し信頼性の高いシステムとすることができる。
【0063】
第2の実施の形態においては、操作ストロークに対応した反力をブレーキペダル20に発生させるシミュレータ51を備えているので、ブレーキペダル側に反力を返すことによるメリットはないが、正常動作中に限れば、上記したように負圧式倍力装置27の出力が小さくなることから、ブレーキペダル20側に反力を返す形式の負圧式倍力装置27を用いても、ブレーキペダル20への反力は発生せず、第1の実施の形態で述べたと同等の作用が期待できるので、既存の負圧式倍力装置27をそのまま流用できる利点がある。
【0064】
図7は本発明の第3の実施の形態を示すもので、第2の実施の形態に対し、遊び要素としての液量吸収機構153の入口に、液量吸収機構153によって吸収される液流量を制限する制限要素70を追加して、液量吸収機構153による吸収速度を制限するようにした点のみが相違している。制限要素70は、オリフィス71と、このオリフィス71に並列に接続され、シリンダ57から経路26rへの流通のみを許容する逆止弁72とによって構成されている。
【0065】
第3の実施の形態によれば、ドライバによる急ブレーキ操作時に、制限要素(オリフィス)70によって、シリンダ57に流入するブレーキ液が制限されるので、液量吸収機構153による吸収速度が制限される。これにより、マスタシリンダ25からの吐出液量のうちのかなりの液量が、閉止状態にあるソレノイド液圧比例制御弁32に並列に接続された逆止弁を介して車輪ブレーキ30に供給されるようになる。その結果、制御液圧を発生するためのポンプ38の能力をいたずらに大きくすることなく、ブレーキシステムとして要求される急ブレーキ時の応答性を確保することができる。上記した制限要素70によって、遊び要素(液量吸収機構153)の遊び吸収速度を制限するダンパ機構を構成している。
【0066】
上記した遊び要素の遊び吸収速度を制限する制限要素(ダンパ機構)70は、第1の実施の形態で述べたストローク吸収機構53に適用することもでき、この場合のダンパ機構としては、ストローク吸収機構53のスプリング54の変形速度を制限するストロークダンパが好適である。
【0067】
図8〜図10は本発明の第4の実施の形態を示すもので、第3の実施の形態における液量吸収機構153の入口側に、電子制御によって開閉が可能なカット弁80を設けたものである。かかるカット弁80は、例えば、制御液圧制御装置43のポンプ38が故障した場合に、カット弁80を閉じて、液量吸収機構153に液量が供給されないようにするものである。これによって、ブレーキペダル20を踏み込むことにより、マスタシリンダ25から押し出された液量が全て車輪ブレーキ30側に供給されるようになり、制動力が発生するまでのペダルストロークを伸ばすことなく、ペダルストロークに応じた制動力を確保することができる。
【0068】
カット弁80は、例えば、自動車バッテリからの電源が落ちてしまった場合にも対応できるように、図8に示すように、ソレノイド80aに電流が印加されなくなった場合に閉止する電磁弁によって構成されている。カット弁80は通常、開状態に保持されているが、ポンプ38が故障した場合に、ソレノイド80aへの電流をOFF制御することにより、あるいは電源が落ちた場合に、ソレノイド80aに電流が印加されなくなることにより、カット弁80を閉状態に切替え、液量吸収機構153に液量が供給されないようにしている。
【0069】
なお、ポンプ38の故障としては、例えば、モータ39が断線してポンプ38が駆動されなくなった場合、あるいは、異物の食い込み等によってモータ39が回転されなくなった場合を、適宜の断線検出手段あるいは回転検出手段によって検出し、ポンプ38の故障と判断するようにしている。
【0070】
図9は、ポンプ38の故障を検出してカット弁80を閉止するフローチャートを示すもので、ポンプ38を駆動すべき指令が発せられると、プログラムがスタートされ、ステップS11において、モータ39が起動されてポンプ38が加圧される。次いで、ステップS12では、モータ39の端子電圧に異常があるか否かが判断され、異常がない場合には、続くステップS13において、モータ39の回転数に異常があるか否かが判断され、異常がない場合には、プログラムはリターンされる。
【0071】
ところが、ステップS12あるいはステップS13において、異常があると判断されると、ステップS14に移行し、電子制御系に何らかの異常があったことを確認する。その後、ステップS15に進んで、カット弁80を閉じる指令を出力し、プログラムはリターンされる。
【0072】
このように、ポンプ38の駆動時に、例えば、モータ39の端子電圧異常あるいは回転数異常による電子制御系の故障によって、ポンプ38が必要な油を吐出していないことを検出して、カット弁80を閉じるようにしたので、電子制御系の故障時にブレーキペダル20を操作した場合には、液量吸収機構153に液量が供給されることなく、マスタシリンダ25から押し出された液量が全て車輪ブレーキ30側に供給されるので、制動力が発生するまでのペダルストロークを伸ばすことなく、ペダルストロークに応じた制動力を確保することができる。
【0073】
ところで、ブレーキペダル20を踏んでいるときにポンプ38が故障した場合には、カット弁80を閉じる前にソレノイド液圧比例制御弁32f,32rの差圧を小さくすると、液量吸収機構153に液量が流れ、同時に車輪ブレーキ30の圧力が低下するため、ソレノイド液圧比例制御弁32f,32rによる差圧があるときは、図10に示すように、ポンプ38の故障を検出する(T1)と、最初にカット弁80を閉じ(T2)、その後(T3)に、ソレノイド液圧比例制御弁32f,32rの差圧Cを小さくするように制御し、車輪ブレーキ30の圧力Bを低下させないようにしている。なお、図10中、Aはマスタシリンダ25の圧力を示す
【0074】
上記した第4の実施の形態によれば、カット弁80が電磁弁からなり、非通電時に自動的に閉止されるようになっているので、電気系統の失陥時カット弁を即座に閉止させることができる。しかも、ソレノイド液圧比例制御弁32f,32rによる差圧があるときにポンプ38が故障した際は、カット弁80を閉止した後、ソレノイド液圧比例制御弁32f,32rの差圧を小さくするようにしたので、ソレノイド液圧比例制御弁32f,32rの制御によって液量吸収機構158が満タンになることがなく、液量吸収機構158を的確に機能させることができる。
【0075】
上記したカット弁80は、ポンプ38の故障時に、液量吸収機構153に液量が供給されないようにする他に、急ブレーキ操作時に閉止させることもできる。この場合にも、カット弁80の閉止によって液量吸収機構153へのブレーキ液の流入が阻止されるので、マスタシリンダ25からの吐出液量の全量を車輪ブレーキ30側に供給できるようになる。
【0076】
図11〜図13は、本発明の第5の実施の形態を示すもので、第1の実施の形態と異なる点は、回生制動力を利用して車輪ブレーキ30に制動力を発生させるように構成した点である。従って、以下においては、主に第1の実施の形態と異なる点を説明し、同一の構成については同一の参照符号を付し、説明は省略する。
【0077】
図11に示すように、車両用ブレーキ装置は、ハイブリッド車両用ブレーキ装置10からなり、ハイブリッド車両用ブレーキ装置10は、液圧ブレーキ装置11、回生ブレーキ装置12、液圧ブレーキ装置11と回生ブレーキ装置12とを協調制御するブレーキECU13、ブレーキECU13からの要求値に応じてインバータ16を介して電気モータ14を制御するハイブリッドECU15等を備えている。ブレーキECU13によって、回生ブレーキ装置12および液圧制御装置43を制御する電子制御装置を構成している。
【0078】
電気モータ14の回転軸は歯車列により減速されて左右の前輪23fl,23frに常時回転連結されている。インバータ16は、ハイブリッドECU15から供給される制御信号に応じて車載バッテリ17の直流の放電電力を交流電力に変換して電気モータ14に供給し、電気モータ14により発電される交流電力を直流の充電電力に変換して車載バッテリ17を充電するものである。
【0079】
回生ブレーキ装置12は、前輪23fに回転連結された電気モータ14と、電気モータ14を回生制動してこの電気モータ14が回転連結された前輪23fに回生制動力を発生させる回生制動力発生装置44とを有する。回生制動力発生装置44は、ハイブリッドECU15、インバータ16等により構成されている。
【0080】
ブレーキECU13は、ブレーキペダルストロークに応じて車輪23に発生させる目標制動力を設定して、この目標制動力を回生制動力として回生制動力発生装置44に指令し、この指令に基づいて回生制動力発生装置44が発生した実行回生制動力が入力され、目標制動力と実行回生制動力との差分である液圧制動力を演算し、液圧制動力を車輪23に発生させるために車輪ブレーキ30に供給しなければならない制御液圧を求める。また、ブレーキECU13には、モータ39により回転駆動されるポンプ38から車輪ブレーキ30に供給されるブレーキ液の液圧が制御液圧となるように、ソレノイド液圧比例制御弁32のリニアソレノイド33に制御電流を印加する図12に示す協調制御プログラムが記憶されている。
【0081】
なお、回生ブレーキ装置12は、バッテリ17の状態やモータ14の状態によって決定される各時点における回生制動可能な範囲で制御される。すなわち、バッテリ17の充電状態による回生制動力の制限値と、車速に対応したモータ14の回転数による回生制動力の制限値がそれぞれ演算され、何れか小さい方が回生制動可能な範囲として決定される。
【0082】
なお、図示してないが、第5の実施の形態においても、第1の実施の形態で述べたと同様なストローク吸収機構53を負圧式倍力装置27内に備えているが、当該ストローク吸収機構53の遊び量aは、回生ブレーキ装置12が出しうる最大減速度に等しい減速度を車輪ブレーキ30による減速のみで出す場合のマスタシリンダ25のストローク量に近い量とすることが望ましい。
【0083】
次に、上記した第5の実施の形態に係るハイブリッド車両用ブレーキ装置10の作動について説明する。ブレーキペダル20が踏まれると、第1の実施の形態で述べたと同様に、負圧式倍力装置27の入力ロッド61が前進し、空気弁部65が大気導入状態となり、変圧室66に大気が導入される。これにより、負圧式倍力装置27のバルブピストン63が入力ロッド61にほぼ追いつくまで前進し、ストローク吸収機構53を押す。この際、ストローク吸収機構53のスプリング54のセット荷重は、マスタシリンダ25のスプリング22のセット荷重より大きく設定されているので、ブレーキペダル20の踏み込みの初期においては、ストローク吸収機構53は変形せず、まずマスタシリンダ25のマスタピストン21f、21rが前進し、マスタシリンダ25の液圧室25f、25rとリザーブタンク28との連通が遮断される。これによって、マスタシリンダ25の液圧室25f、25rの液圧が上昇するため、その液圧とマスタシリンダ25のシリンダ径とを掛けた荷重がストローク吸収機構53に作用し、ストローク吸収機構53のスプリング54が圧縮されて、遊び量aが吸収される。この結果、マスタピストン21f、21rに対して負圧式倍力装置27のバルブピストン63が相対的に前進される。
【0084】
このようにして、ブレーキペダル20が踏まれても、ストローク吸収機構53による吸収作用によって、負圧式倍力装置27のバルブピストン63のストロークに比してマスタシリンダ25のマスタピストン21f、21rのストロークを抑制することができ、マスタシリンダ25の圧力室25f、25rの圧力もそれに見合った小さい圧力しか発生していないことになる。
【0085】
しかしながら、ブレーキペダル20には、シミュレータ51によって操作ストロークに対応した反力が発生するので、ドライバには、マスタシリンダ25に発生した液圧に拘らず、ブレーキペダル20の操作ストローク(踏み込み量)に対応した反力が作用される。ブレーキペダル20の操作ストロークはストロークセンサ52により検出され、この検出信号がブレーキECU13に入力されると、ブレーキECU13は、図12に示す協調制御プログラムを起動する。
【0086】
かかる協調制御プログラムの起動により、カウンタ、フラグ等の一時メモリをリセットして初期化し(ステップS21)、一定微少時間が経過する毎に、ステップS22以降のプログラムを実行する。
【0087】
ブレーキECU13は、メモリに記憶したブレーキペダルストロークと目標制動力との関係に基づいて、車輪23に発生させるべき目標制動力をマップ、テーブルまたは演算式で求め(ステップS23)、この目標制動力を回生制動力として、ハイブリッドECU15に出力する(ステップS24)。ハイブリッドECU15は、回生制動力(目標制動力)に応じてインバータ16を開閉制御し、電気モータ14を回生制動し、車輪23に回生制動力を発生させるとともに、図略のセンサにより検出された回生電力の電流に基づいて電気モータ14が実際に車輪23に発生させた実行回生制動力を演算してブレーキECU13に入力する(ステップS25)。
【0088】
ブレーキECU13は、目標制動力と実行回生制動力との差の液圧制動力を演算し(ステップS26)、この液圧制動力が0であるか否かが判断(ステップS27)される。すなわち、目標制動力のすべてが回生制動力で賄われ、目標制動力と実行回生制動力との差分が0の場合には、制御液圧を発生させることが不要であるとして、ステップS2に戻る。
【0089】
これに対して、目標制動力と実行回生制動力との差の液圧制動力が0でない場合、その差に等しい液圧制動力を車輪23に発生させるために車輪ブレーキ30に供給しなければならない制御液圧をマップ、テーブルまたは演算式で求める(ステップS28)。そして、モータ39を起動してポンプ38を駆動し、ポンプ38から車輪ブレーキ30に供給されるブレーキ液の液圧が制御液圧となるようにソレノイド液圧比例制御弁32のリニアソレノイド33に制御電流を印加する(ステップS29)。
【0090】
これにより、ポンプ38から供給された液体がソレノイド液圧比例制御弁32によって所要の制御液圧に制御され、車輪ブレーキ30に供給される。従って、液圧ブレーキ装置11は、目標制動力と実行回生制動力との差に等しい液圧制動力を車輪23に発生させる。ステップS26等により回生ブレーキ装置12によって実際に発生された回生制動力の所定の回生制動力に対する変動が検出された場合には、ステップS27〜S29等により液圧ブレーキ装置11のポンプ38を駆動させるとともに、ソレノイド液圧比例制御弁32を制御することによって制御液圧を形成し、車輪23にこの制御液圧に基づく制御液圧制動力を発生させ、検出された変動による回生制動力の不足を補償する。
【0091】
図13は、ブレーキペダルストロークと制動力との関係を示す線図である。線Aは、目標制動力を示し、線Bは、目標制動力から回生制動力発生装置44が発生し得る最大回生制動力を差し引いた制動力を示す。また、線Cは、上記したストローク吸収機構53が仮に変形しないとした場合に、ブレーキペダルストロークに対して車輪ブレーキ30の特性で決まる液圧制動力を示し、線Dは、ストローク吸収機構53が仮に完全に変形するとした場合に、ブレーキペダルストロークに対して車輪ブレーキ30の特性で決まる液圧制動力を示す。
【0092】
ここで、目標制動力を実現する上では、目標制動力(図13のA)は、図13に示すように、ストローク吸収機構53が変形しないとした場合の液圧制動力(図13のC)より常に小さいことが望ましく、かつ目標制動力から最大回生制動力を差し引いた制動力(図13のB)は、図13に示すように、ストローク吸収機構53が完全に変形するとした場合の液圧制動力(図13のD)より常に大きいことが望ましい。
【0093】
この2つの条件が満足されている場合は、バッテリ17の充電状態およびモータ14の回転状態によって、回生制動力が全く発生できない場合も、最大限発生可能な場合も、必要とされる液圧制動力を発生させるための液量は、入力ロッド61のストロークとマスタシリンダ25の断面積を掛け合わせた量よりも少なく、入力ロッド61のストロークからストローク吸収機構53の最大変形量を差し引いたものとマスタシリンダ25の断面積を掛け合わせた量よりも大きくなる。
【0094】
このことから、必要とされる液圧制動力が発生した時点で、ストローク吸収機構53は常に中間状態(無変形と最大変形の中間)に変形していることになる。これにより、負圧式倍力装置27の出力は、ストローク吸収機構53を中間状態に変形させるだけの小さな出力だけ出していることになり、マスタシリンダ25の液圧室25f、25rの液圧もそれに見合った小さい圧力しか発生していないことになる。それゆえに、目標制動力が低い場合に事実上その全てを回生制動力で負担することが可能となる。
【0095】
ところで、目標制動力が、ストローク吸収機構53が仮に変形しないとした場合に、ブレーキペダルストロークに対して車輪ブレーキ30の特性で決まる液圧制動力より大きい場合には、ストローク吸収機構53が無変形であってもマスタシリンダ25から送り出された液量では液圧制動力が目標制動力に達せず、回生制動力が発生しない場合には、ポンプ38がリザーブタンク28の液をマスタシリンダ25を通して吸い込んで吐出することになる。この場合はマスタシリンダ25とリザーブタンク28との連通が遮断された状態から無理に吸い込むことになるので、吸い込み抵抗が大きくなり、応答性が悪化する。また、この結果、マスタシリンダ25に余分な液を吸い込むので、その後回生制動力が発生する場合には、遊びが不足する恐れがある。しかしながら、目標制動力が望ましい範囲を部分的に僅かに超えるだけであれば、これらの問題点は妥協可能である。
【0096】
また、目標制動力から回生制動力発生装置44が発生し得る最大回生制動力を差し引いた制動力が、ストローク吸収機構(遊び要素)53が仮に完全に変形するとした場合に、ブレーキペダルストロークに対して車輪ブレーキ30の特性で決まる液圧制動力より小さい場合には、回生制動力が最大限に発生した場合、ストローク吸収機構が最大限に変形してもマスタシリンダ25から送り出された液量で発生した液圧制動力との和が目標制動力を超えてしまう。ただし、この場合も、負圧式倍力装置27を上記したように構成したので、ブレーキペダルフィーリングは変化せず、実制動力が目標制動力を超えてしまうことだけが問題なので、目標制動力が望ましい範囲を部分的に僅かに下回るだけであれば、この問題点も妥協可能である。
【0097】
このように、第5の実施の形態においても、ブレーキ液圧を上昇させる2つの手段、すなわち、負圧式倍力装置27と制御液圧制御装置43のポンプ38とを有することにより、故障に対し信頼性の高いシステムとすることができる。しかも、ストローク吸収機構53による遊びを適当に設定することにより、ブレーキ操作力が小さい場合の目標制動力の事実上全てを回生制動力が負担することが可能となり、エネルギ効率を向上することが可能となる。
【0098】
上記した第5の実施の形態に係るハイブリッド車両用ブレーキ装置においては、ドライバのブレーキ操作ストロークを所定量吸収する遊び要素として、第1の実施の形態で述べたと同様なストローク吸収機構53を用いた例で説明したが、ハイブリッド車両用ブレーキ装置においても、遊び要素は、ストローク吸収機構53の他、図7に示す液量吸収機構153、図8に示す入口に液流量を制限する制限要素70を追加した液量吸収機構153、あるいは図8に示すカット弁80を用いた液量吸収機構153等に置き換えることもできる。
【0099】
また、上記した第5の実施の形態では、車両用ブレーキ装置10をハイブリッド車に適用しているが、車輪23に連結された電気モータ14を有する電気自動車に適用することもできる。
【0100】
上記した実施の形態では、FF車に前後配管しているが、FR車に前後配管してもよい。また、FF車またはFR車にX配管してデュアルマスタシリンダ25の液圧室25fから送出された液圧を右前輪23frおよび左後輪23rl用車輪ブレーキ30fr,30rlに供給し、液圧室25rから送出された液圧を左前輪23flおよび右後輪23rr用車輪ブレーキ30fl,30rrに供給するようにしてもよい。
【0101】
上記した実施の形態では、倍力装置として負圧式倍力装置27を用いたが、ポンプより発生した液圧をアキュムレータに蓄圧し、この液圧をピストンに作用させてブレーキペダル20に作用するブレーキ操作力を倍力するハイドロリック倍力装置を使用してもよい。
【0102】
また、上記した実施の形態においては、モータ39によって駆動されるポンプ38からの液圧を、リニアソレノイド33にて制御されるソレノイド液圧比例制御弁32によって、車輪ブレーキ30に供給されるブレーキ液の液圧が所定の制御液圧となるように制御しているが、液圧制御弁はソレノイド液圧比例制御弁32に限定されるものではなく、これに代えて、ON−OFF形の電磁弁を設け、この電磁弁をデューティ制御して、所定の制御液圧を発生させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示す車両用ブレーキ装置の系統図である。
【図2】液圧ブレーキ装置を示す図である。
【図3】ブレーキペダルと倍力装置とマスタシリンダとの関連構成を示す詳細図である。
【図4】ストローク吸収機構を示す図3の要部拡大図である。
【図5】制御プログラムを示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態を示すブレーキペダルと倍力装置とマスタシリンダとの連結構成を示す詳細図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態を示す車両用ブレーキ装置の系統図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態を示す車両用ブレーキ装置の系統図である。
【図9】カット弁を閉じるフローチャートを示す図である。
【図10】液圧制御弁を制御するタイムチャートを示す図である。
【図11】本発明の第5の実施の形態を示す車両用ブレーキ装置の系統図である。
【図12】協調制御プログラムを示す図である。
【図13】ブレーキペダルストロークと制動力との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0104】
10…ハイブリッド車両用ブレーキ装置、11…液圧ブレーキ装置、12…回生ブレーキ装置、13…ブレーキECU(電子制御装置)、14…電気モータ、15…ハイブリッドECU、16…インバータ、17…車載バッテリ、20…ブレーキペダル、23…車輪、25…マスタピストン、27…倍力装置、29…液圧センサ、30…車輪ブレーキ、32…液圧制御弁(ソレノイド液圧比例制御弁)、38…ポンプ、39…モータ、43…制御液圧制御装置、44…回生制動力発生装置、45…応圧弁、51…シミュレータ、52…ストロークセンサ、53、153…遊び要素(ストローク吸収機構、液量吸収機構)、54…スプリング、55a、55b…吊り要素、55…スプリング、57…シリンダ、58…スプリング、59…ピストン、70…制限要素(ダンパ機構)、80…カット弁。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバのブレーキ操作力を増大する倍力装置(27)と、
該倍力装置に作動的に連結されたマスタシリンダ(25)と、
該マスタシリンダと連結された各車輪(23)の車輪ブレーキ(30)と、
前記マスタシリンダと前記車輪ブレーキとの間に介在され、少なくとも前記マスタシリンダ側の作動流体を吸入し前記車輪ブレーキ側に吐出可能なポンプ(38)、および前記車輪ブレーキ側から前記マスタシリンダ側への作動流体の移動を制限可能な液圧制御弁(32)を有する液圧制御装置(43)と、
を有し、さらに、
ブレーキ操作ストロークを検出するストロークセンサ(52)と、
ブレーキ操作ストロークに対する擬似反力をブレーキペダルに与えるシミュレータ(51)と、
前記倍力装置と前記液圧制御装置との間に配設され、ドライバのブレーキ操作ストロークを所定量吸収する遊び要素(53、153)と、
前記ストロークセンサからの入力に基づき前記液圧制御装置を制御する電子制御装置(13)と、
を備えた、
ことを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記遊び要素が、前記倍力装置の出力部材と前記マスタシリンダの入力部材との間に挿入されたスプリング(54)および該スプリングの最大長を制限する吊り要素(55a、55b)から構成されるストローク吸収機構であることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項3】
請求項1において、前記遊び要素が、前記マスタシリンダと前記液圧制御装置の間の液圧回路に一端を臨み、他端が大気圧に臨んでいるシリンダ(57)に液密かつ摺動自在に嵌装されたピストン(59)と、該ピストンを前記液圧回路側に付勢するスプリング(58)とから構成される液量吸収機構であることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項4】
請求項1において、前記遊び要素に、遊び吸収速度を制限するダンパ機構(70)を設けたことを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項5】
請求項3において、前記液量吸収機構の入り口側に、前記液量吸収機構によって吸収される液流量を制限する制限要素(70)を設けたことを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか1項において、前記倍力装置が、操作反力を入力部材に伝えないように構成されていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか1項において、前記車輪に回生制動力を発生する回生ブレーキ装置(12)を備え、
前記電子制御装置は、前記ストロークセンサからの入力に基づいて目標制動力を演算し、前記回生ブレーキ装置による回生制動力と、前記液圧制御装置の出力液圧で作動する前記車輪ブレーキによる制動力の和が目標制動力に一致するように、前記回生ブレーキ装置のその時点での回生制動可能な範囲で、前記回生ブレーキ装置と、前記液圧制御装置の前記ポンプおよび前記液圧制御弁とを制御することを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項8】
請求項7において、前記遊び要素が吸収する所定量を、前記回生ブレーキ装置が出し得る最大減速度に等しい減速度を前記車輪ブレーキによる減速のみで出す場合の前記マスタシリンダのストローク量に近い量に設定したことを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項9】
ドライバのブレーキ操作力を増大する倍力装置(27)と、
該倍力装置に作動的に連結されたマスタシリンダ(25)と、
該マスタシリンダと連結された各車輪(23)の車輪ブレーキ(30)と、
前記マスタシリンダと前記車輪ブレーキとの間に介在され、少なくとも前記マスタシリンダ側の作動流体を吸入し前記車輪ブレーキ側に吐出可能なポンプ(38)、および前記車輪ブレーキ側から前記マスタシリンダ側への作動流体の移動を制限可能な液圧制御弁(32)を有する液圧制御装置(43)と、
を有し、さらに、
ブレーキ操作ストロークを検出するストロークセンサ(52)と、
ブレーキ操作ストロークに対する擬似反力をブレーキペダルに与えるシミュレータ(51)と、
前記マスタシリンダと前記液圧制御装置との間に配設され、ドライバのブレーキ操作ストロークを所定量吸収する液量吸収機構(153)と、
前記マスタシリンダと前記液量吸収機構との間に配設され、システム異常によって前記ポンプより圧油が吐出されなくなったときに、前記マスタシリンダと前記液量吸収機構との連通を遮断するカット弁(80)を備えた、
ことを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項10】
請求項9において、前記カット弁は電磁弁からなり、非通電時は閉止されるようになっていることを特徴とする車両用ブレーキ装置。
【請求項11】
請求項9または請求項10において、前記液圧制御弁による差圧があるときに前記液圧制御弁の前記ポンプが故障した際は、前記カット弁を閉止した後、前記液圧制御弁の差圧を小さくするようにしたことを特徴とする車両用ブレーキ装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2008−265728(P2008−265728A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−22420(P2008−22420)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】