説明

車両用ワイヤハーネスをアース及び固定するための方法及びアースコネクタ

【課題】 ワイヤハーネスに含まれるアース電線の接地及び当該ワイヤハーネスの固定を簡単な作業で効率良く行う。
【解決手段】 ワイヤハーネスWHに含まれるアース電線DをアースコネクタCに接続する。このアースコネクタCは、アース電線Dと車両の接地部分とを接続する接続導体及びこの接続導体を保持する絶縁ハウジング20,50を有する。この絶縁ハウジング20,50に形成されたワイヤハーネス固定部29,59とワイヤハーネスWHの本体外周面とに跨ってテープ80を巻き付ける等して、前記絶縁ハウジング20,50を前記ワイヤハーネスWHの本体外周面上に固定し、そのアースコネクタCの接続導体のアース接続部32を前記接地部分に固定することにより、前記アース電線Dの接地とともに前記接地部分へのワイヤハーネスWHの固定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に設けられるワイヤハーネスをボディ等の接地部分に接続することによりアースし、かつ当該部分に固定するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等に配索されるワイヤハーネスに含まれるアース電線を接地する手段として、当該アース電線の端末にアース端子を固定し、このアース端子をボディ等の所定の接地部分にボルトで固定するといったことがなされている。
【0003】
例えば下記特許文献1には、アース電線の端末にリング状のアース端子を固定し、このアース端子の中央孔にボルトを挿通してボディ側のねじ孔に締めつけることにより、前記アース端子をボディに固定してアースするようにしたものが開示されている。
【特許文献1】特開2002−231334号公報(図2,図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のような配線構造において、前記アース端子が固定されている接地箇所に対してワイヤハーネスが車両の振動等により大きく相対移動すると、前記アース端子やアース電線に大きな強度的負担がかかり、断線等を招くおそれがある。よって、特にアース端子の近傍部位ではワイヤハーネスを車両側に確実に固定しておくことが望まれる。
【0005】
このようにワイヤハーネスを車両側に固定する手段として、当該ワイヤハーネスの適当な部分を粘着テープによって車両の適所に巻き付けたり、ワイヤハーネス固定専用のクランプ部材でワイヤハーネスの適当な部位を保持して当該クランプ部材を車両の適所に係合させたりすることが一般に知られているが、いずれの場合も、前記アース端子をボディに固定する作業とは全く別の作業を車両内の狭所で行わなければならず、かかる作業は非常に面倒なものとなる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、ワイヤハーネスに含まれるアース電線の接地及び当該ワイヤハーネスの固定を簡単な作業で効率良く行うことができる技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、ワイヤハーネスに含まれるアース電線を車両の接地部分に電気的に接続し、かつ、当該接地部分に固定する方法であって、前記アース電線と前記接地部分とを接続する接続導体及びこの接続導体を保持する絶縁ハウジングを有するアースコネクタの当該接続導体に前記アース電線を接続する工程と、前記コネクタの絶縁ハウジングを前記ワイヤハーネスの本体外周面上に固定する工程と、このワイヤハーネス本体に固定されたアースコネクタの接続導体を前記接地部分に接触させた状態で当該接地部分に固定する工程とを含むものである。
【0008】
また本発明は、アース電線を含み、このアース電線が車両の接地部分に電気的に接続され、かつ、当該接地部分に固定される車両用ワイヤハーネスであって、前記アース電線と前記接地部分とを接続する接続導体及びこの接続導体を保持する絶縁ハウジングを有するアースコネクタを備え、このアースコネクタの絶縁ハウジングが前記ワイヤハーネスの本体外周面上に固定されるとともに、前記コネクタの接続導体に、前記接地部分と接触した状態で当該接地部分に固定されるアース接続部が設けられているものである。
【0009】
これらの構成によれば、ワイヤハーネスに含まれるアース電線とアースコネクタの接続導体とを接続した上で当該アースコネクタを前記ワイヤハーネスの本体外周面上に固定しておくことにより、車両内では前記アースコネクタのアース接続部を当該車両の接地部分に固定するだけの作業で、前記接続導体を介して前記アース電線を前記接地部分に電気的に接続するのと同時に前記ワイヤハーネスの本体を前記アースコネクタを介して前記接地部分に固定することができる。すなわち、前記アースコネクタの絶縁ハウジングをワイヤハーネスの本体外周面上に固定することによって、当該アースコネクタを、前記アース電線と前記接地部分との間に介在する電気的接続媒体と、前記ワイヤハーネス本体と前記接地部分との間に介在するワイヤハーネス固定具として兼用することができ、これにより簡単な作業でワイヤハーネスの接地と固定の双方を行うことが可能になる。
【0010】
具体的に、前記アースコネクタの絶縁ハウジングをワイヤハーネスの本体外周面上に固定する態様としては、前記アースコネクタの絶縁ハウジングに、前記接続導体が前記ワイヤハーネスのアース電線に接続された状態で当該ワイヤハーネスの本体外周面上に接触するワイヤハーネス固定部が形成され、このワイヤハーネス固定部と前記ワイヤハーネスの本体外周面とに跨ってテープが巻き付けられることにより当該ワイヤハーネス固定部が前記ワイヤハーネス本体に固定されているものが、好適である。
【0011】
このように、絶縁ハウジングに、前記接続導体が前記ワイヤハーネスのアース電線に接続された状態で当該ワイヤハーネスの本体外周面上に接触しかつ当該本体外周面とまたがってテープを巻き付けることが可能な形状のワイヤハーネス固定部が形成されたアースコネクタを用いることにより、いわゆるテープ巻によって前記絶縁ハウジングを前記ワイヤハーネスの本体外周面上に簡易かつ確実に固定することが可能になる。
【0012】
より具体的に、前記ワイヤハーネス固定部としては、前記接続導体と前記アース電線とが接続される箇所を挟んでその両外側に張り出す形状を有しているものが、好適である。
【0013】
この構成によれば、絶縁ハウジングに形成された両ワイヤハーネス固定部とワイヤハーネスの本体外周面とにまたがってテープを巻き付けることにより、前記アース電線と接続導体が接続された状態のまま前記絶縁ハウジングをワイヤハーネス本体に対して安定した状態で固定することができる。
【0014】
本発明において、前記アースコネクタの具体的な構造は問わない。例えば、前記接続導体として、前記アース接続部を有するアース接続導体と、前記電線側端子が接続される電線接続導体とを含み、これらアース接続導体と電線接続導体との間にコンデンサが介在しているコネクタ、すなわちコンデンサ内蔵コネクタを前記アースコネクタとして用いれば、前記アース電線をコンデンサを介してアースに接続することにより、ノイズの低減を図ることが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、ワイヤハーネスに含まれるアース電線の接地及び当該ワイヤハーネスの固定を簡単な作業で効率良く行うことができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の好ましい実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。
【0017】
図8(a)(b)は、本発明に係るワイヤハーネス用アースコネクタCの一例を示したものである。
【0018】
このアースコネクタCは、後に詳述するように、ハウジング本体20及びカバー50からなる絶縁ハウジングを備え、かつ、車両用ワイヤハーネスWHに含まれるアース電線Dと車両のボディとを接続するための接続導体が前記ハウジング本体20に保持されたものである。
【0019】
さらに、このアースコネクタCのその特徴として、前記ハウジング本体20及びカバー50から相互逆向きに板状のワイヤハーネス固定部29,59がそれぞれ延び、前記各アース電線Dが前記接続導体に接続される箇所から両外側に張り出した状態となっている。そして、その接続状態で各ワイヤハーネス固定部29,59の片側面が図8(b)に示すようにワイヤハーネスWHの本体外周面上に接触し、かつ、この状態で当該ワイヤハーネス固定部29,59とワイヤハーネスWHの外周面とに跨って粘着テープ80が巻き付けられることにより、当該ワイヤハーネスWHの本体に前記絶縁ハウジングを固定することが可能となっている。
【0020】
このアースコネクタCは、この実施の形態では、コンデンサを内蔵するコンデンサ内蔵コネクタで構成されており、このアースコネクタCを用いることにより、前記アース電線Dをコンデンサを介してアースに接続することができ、これによりノイズの低減を図ることが可能となっている。
【0021】
このアースコネクタC及び当該コネクタCへのアース電線Dの接続構造の詳細を図1〜図7に示す。なお、これらの図においては便宜上、前記ワイヤハーネス固定部29,59の図示を省略する。
【0022】
前記ワイヤハーネスWHの本体からは一対のアース電線Dが導出されており、各アース電線Dの端末に電線側端子60が固定されている。
【0023】
前記電線側端子60は通常の雌型端子であり、箱型の電気接触部62を有するとともに、その後方に導体バレル63及びインシュレーションバレル64を順に有しており、その両バレル63,64により(図例では)アース接続すべき2本のアース電線Dがまとめて抱き込み保持されている。すなわち、単一の電線側端子60が2本のアース電線Dの端末に共通圧着されている。また、前記電気接触部62の適所からは逆姿勢挿入防止用のスタビライザ66が突出している。
【0024】
前記コンデンサ10は、ごく一般的な形状、すなわち、略直方体状のコンデンサ本体12からピン状の第1コンデンサ端子14及び第2コンデンサ端子16が互いに間隔をおいて同じ向きに突出する形状を有している。
【0025】
前記ハウジング本体20は、図例では平面視が略正方形の直方体状をなしている。このハウジング本体20には上方に開口する比較的大面積の開口部21Aが形成され、この開口部21A内に前記コンデンサ10が横向きの姿勢で収納可能となっている。
【0026】
このハウジング本体20は、前記開口部21Aのすぐ側方の位置に端子挿入孔22を有している。この端子挿入孔22は、前記開口部21A内に収納されるコンデンサ10の両コンデンサ端子14,16の突出の向きと逆向きに開口し、その開口22aから当該端子挿入孔22内に前記電線側端子60が挿入可能となっている。図例では、この電線側端子60の前記スタビライザ66がハウジング本体20の外側を向く姿勢でのみ前記端子挿入孔22内に挿入可能とされている。
【0027】
前記アース接続導体30及び電線接続導体40は、金属板を所定形状に打ち抜いて曲げ加工することにより形成されており、このうちアース接続導体30は、アース端子部32と、第1コンデンサ接続部34と、圧入固定部36とを一体に有している。
【0028】
前記アース端子部32と圧入固定部36とは僅かな段差を挟んで略同一平面上に並び、かつ、互いに逆向きに突出しており、前記第1コンデンサ接続部34は、前記圧入固定部36の上面から上方に隆起し、かつ、前記アース端子部32と逆向きに突出する鍵状をなしている。これに対し、ハウジング本体20においては、前記コンデンサ10からその両コンデンサ端子14,16の並び方向と直交する方向に外れた位置(図例ではコンデンサ10よりも下方の位置)に、前記圧入固定部36が前記両コンデンサ端子14,16の突出の向きと逆向きに圧入可能である偏平なアース接続導体用圧入孔23Aを有するとともに、その圧入に伴って前記第1コンデンサ接続部34が挿入可能な形状の第1コンデンサ接続部用挿入孔23Bを有している。
【0029】
そして、前記アース接続導体用圧入孔23A内に前記圧入固定部36が圧入されることにより、前記アース接続導体30が前記ハウジング本体20に固定されるようになっている。具体的には、前記第1コンデンサ接続部34が前記第1コンデンサ端子14に対して下側から接触する位置に保持され、また、前記アース端子部32が前記ハウジング本体20から前記両コンデンサ端子14,16の突出の向きと同じ向きに突出する姿勢でアース接続導体30が保持される。
【0030】
前記アース端子部32にはボルト挿通孔32aが設けられ、このボルト挿通孔32aに挿通されるボルトによって当該アース端子部32を所定のアース部位(例えば車両のボディ)に締結することが可能となっている。また、図4(a)に示すように、前記ハウジング本体20の下半部には、前記第1コンデンサ接続部34が前記第1コンデンサ端子14と接触する部位を下方に開放する開口部21Bが形成されており、この開口部21B及び前記開口部21Aを通じて上下から溶接用電極を挿入して前記第1コンデンサ端子14とこれに接触する前記第1コンデンサ接続部34とを上下から挟み込むことにより、これら第1コンデンサ端子14と第1コンデンサ接続部34とを電気溶接により接続することが可能となっている。
【0031】
一方、前記電線接続導体40は、第2コンデンサ接続部42と、端子嵌合部44と、これらを連結する連結部46とを一体に有しており、この連結部46の両端から前記第2コンデンサ接続部42及び端子嵌合部44が互いに同じ向きに突出する形状をなしている。
【0032】
前記第2コンデンサ接続部42は、前記連結部46からこれと直交する方向に延び、ハウジング本体20に立直姿勢で保持される立直部42aと、この立直部42aの端部下縁から端子嵌合部44側に延びるコンデンサ端子接触部42bとで構成されている。前記端子嵌合部44は、前記電線側端子60の電気接触部62内に嵌入可能なタブ(雄型端子)を構成しており、前記立直部42aと同様に立直姿勢でハウジング本体20に保持されるようになっている。
【0033】
具体的に、前記ハウジング本体20には、前記アース接続導体用圧入孔23Aが開口する側面と同じ側面に開口する第2コンデンサ接続部用圧入孔24A及び端子嵌合部用圧入孔24Bが形成されており、これらの圧入孔24A,24B内に前記第2コンデンサ接続部42及び端子嵌合部44がそれぞれ両コンデンサ端子14,16の突出の向きと逆の向きに挿入され、かつ、前記連結部46が前記ハウジング側面に当接する深さまで圧入されることにより、電線接続導体40全体がハウジング本体20に固定されるようになっている。その固定位置は、前記第2コンデンサ接続部42のコンデンサ端子接触部42bが前記第2コンデンサ端子16に対して下側から接触可能で、かつ、前記端子嵌合部44が立直姿勢で前記端子挿入孔22内に前記両コンデンサ端子14,16の突出の向きと逆向きに突出する位置に設定されている。
【0034】
ここで、図4(a)に示すように、前記ハウジング本体20の下半部には、前記第2コンデンサ接続部42のコンデンサ端子接触部42bが前記第2コンデンサ端子16と接触する部位を下方に開放する開口部21Cが形成されており、前記アース接続導体30の圧入固定部36には前記開口部21Cを避けてこれを開通させるための切欠36a(図6(a)参照)が形成されている。そして、この開口部21C及び前記開口部21Aを通じて上下から溶接用電極を挿入して前記第1コンデンサ端子14とこれに接触する前記第1コンデンサ接続部34とを上下から挟み込むことにより、これら第1コンデンサ端子14と第1コンデンサ接続部34とを電気溶接により接続することが可能となっている。
【0035】
また、前記端子嵌合部44の位置は、前記端子挿入孔22内に挿入される電線側端子60の電気接触部62と嵌合可能な位置に設定されている。一方、ハウジング本体20には、前記端子挿入孔22の外側に位置する側壁に撓み変形可能なランス25が形成され、前記端子嵌合部44に嵌合する位置まで前記電線側端子60が挿入された状態で前記ランス25の端部に形成された係止部25aが前記電線側端子60を係止するように構成されている。
【0036】
なお、図例では電線側端子60が雌型端子、端子嵌合部44が雄型端子となっているが、その雌雄は逆でもよい。
【0037】
前記カバー50は、前記ハウジング本体20のほぼ全体を収容する容器状をなしている。具体的には、内部空間を四方から囲む周壁52と、この周壁52により囲まれた内部空間を一方の側から塞ぐ側壁54とを有し、この側壁54と反対側に開口している。そして、この開口部56を入口として前記ハウジング本体20がその端子挿入孔22側から挿入可能となっている。
【0038】
前記カバー50の周壁52のうち、前記端子挿入孔22の開口22aに面する周壁には、当該開口22aと合致する開口52aが形成され、両開口22a,52aを通じて端子挿入孔22内に電線側端子60が挿入可能となっている。
【0039】
ここで、前記ハウジング本体20に対するカバー50の装着位置は、図3(a)及び図5(a)に示すような仮装着位置(一次係止位置)と、図3(b)及び図5(b)に示すような完全装着位置(二次係止位置)の二段にわたって設定されており、この完全装着位置においてカバー50が後述のような電線側端子60の二次係止を行うように構成されている。
【0040】
ます仮装着位置について、前記カバー50の開口52aからはさらに被係止窓57が延長される一方、これに対応するハウジング本体20の側面には仮係止突起27が突設されている。そして、この仮係止突起27が前記被係止窓57に嵌まり込む位置までカバー50内にハウジング本体20を挿入することにより、当該ハウジング本体20に対して前記カバー50が前記完全装着位置よりも手前側の仮装着位置に係止されるようになっている。
【0041】
さらに、完全装着位置について、前記カバー50の周壁52のうち前記開口52aが形成されている周壁と反対側の周壁には、図1に示すように水平方向に延びる上下のスリット51に挟まれた撓み片53が形成され、この撓み片53の先端部に内向きの突起53aが形成される一方、これに対応するハウジング本体20の側面には係止凹部28が形成されており、前記仮装着位置からさらに深くカバー50内にハウジング本体20を挿入することにより前記係止凹部28に前記撓み片53の突起53aが嵌まり込んでカバー50が完全装着位置に保持されるようになっている。
【0042】
ここで、前記スリット51のうち下側のスリット51は前記アース接続導体30の圧入固定部36が差込可能な位置に形成されており、当該圧入固定部36とカバー50との干渉防止用スリットを兼ねている。
【0043】
前記側壁54の内側面には、図2及び図5(a)(b)に示すような上下一対の二次係止突起58が内向きに突設されている。これに対し、前記ハウジング本体20における前記端子挿入孔22の外側の側壁には、前記ランス25から上下に外れた位置に二次係止突起挿入孔26が設けられている。そして、カバー50が前記仮装着位置にあり、かつ、前記端子嵌合部44に完全嵌合する位置まで端子挿入孔22内に電線側端子60が挿入された状態で、当該仮装着位置から前記完全装着位置までカバー50とハウジング本体20とを相対移動させることにより、当該カバー50の二次係止突起58が前記二次係止突起挿入孔26を通じて前記電線側端子60のスタビライザ66のすぐ後側の位置まで進入し、これにより当該電線側端子60を二次係止するように、当該二次係止突起58の位置が設定されている。
【0044】
また、前記ハウジング本体20の四隅のうち前記ランス25の先端部及び端子嵌合部44に近接する隅部と、この隅部に対応するカバー50の隅部とには、図3(a)に示すような仮装着位置において互いに開通する治具挿入窓22b,55がそれぞれ形成されている。そして、これら治具挿入窓22b,55から導通検査用治具70を挿入して前記端子嵌合部44に接触させ、別の導通検査用治具をアース接続導体30に接触させることにより、前記コンデンサ10を介してのアース接続導体30と電線接続導体40との導通を検査することが可能となっている。さらに、同じ治具挿入窓22b,55から端子挿入孔22内に係止解除治具72も挿入可能となっており、当該係止解除治具72を用いてランス25を強制的に撓ませることによって当該ランス25による電線側端子60の係止を解除することが可能となっている。
【0045】
このアースコネクタCの組立要領及びこれを用いたワイヤハーネスWHのアース及び固定要領は次のとおりである。
【0046】
1)図6(a)に示すようにアース接続導体30及び電線接続導体40をハウジング本体20に固定する。具体的には、ハウジング本体20のアース接続導体用圧入孔23Aにアース接続導体30の圧入固定部36を圧入するとともに第1コンデンサ接続部用挿入孔23Bに第1コンデンサ接続部34を挿入することにより、当該ハウジング本体20にアース接続導体30を固定する。また、前記ハウジング本体20の第2コンデンサ接続部用圧入孔24A及び端子嵌合部用圧入孔24Bにそれぞれ電線接続導体40の第2コンデンサ接続部42及び端子嵌合部44を圧入することにより、当該ハウジング本体20に電線接続導体40を固定する。
【0047】
2)図6(b)に示すような市販のコンデンサ、すなわち、コンデンサ本体12から同じ側に第1コンデンサ端子14及び第2コンデンサ端子16が突出するコンデンサ10を用意し、そのコンデンサ端子14,16を適当な長さに切断して同図(c)に示すようにハウジング本体20内にセットする。具体的には、前記コンデンサ10をハウジング本体20内に開口部21Aから嵌め込み、その第1コンデンサ端子14及び第2コンデンサ端子16がそれぞれアース接続導体30の第1コンデンサ接続部34及び電線接続導体40の第2コンデンサ接続部42のコンデンサ端子接触部42bに上から接触する状態にする。
【0048】
3)図4(b)に示す開口部21A,21B内にそれぞれ溶接用電極を挿入して第1コンデンサ端子14と第1コンデンサ接続部34との接触部位を上下から挟み込むことにより、これら第1コンデンサ端子14と第1コンデンサ接続部34とを溶接により接続する。同様に、開口部21A,21C内にそれぞれ溶接用電極を挿入して第2コンデンサ端子16と第2コンデンサ接続部42のコンデンサ端子接触部42bとの接触部位を上下から挟み込むことにより、これら第2コンデンサ端子16とコンデンサ端子接触部42bとを溶接により接続する。さらに、必要に応じて前記各接続部位に接着剤を滴下する等して防水処理を施す。
【0049】
4)図7(a)に示すようにカバー50の開口部56に対してハウジング本体20をその端子挿入孔22側の端部から挿入し、当該カバー50の被係止窓57内にハウジング本体20側の仮係止突起27を入り込ませて当該カバー50を同図(b)に示すような仮装着位置に保持する。このとき、図5(a)に示すようにカバー50側の二次係止突起58は端子挿入孔22内に侵入しておらず、よって当該端子挿入孔22内に電線側端子60が侵入可能な状態にある。
【0050】
5)ワイヤハーネスに含まれる適当なアース電線D(図例では2本のアース電線D)の端末に電線側端子60を圧着しておき、この電線側端子60をカバー50及びハウジング本体20の開口52a,22aを通じて端子挿入孔22内に奥まで挿入することにより、当該端子挿入孔22内に突出する端子嵌合部44に前記電線側端子60を嵌合して当該電線側端子60と電線接続導体40とが電気的に接続された状態にする。
【0051】
6)前記仮装着位置からさらにハウジング本体20に対してカバー50を変位させて図7(c)に示すような完全装着位置にする。この完全装着位置は、図3(b)に示すようにカバー50側の撓み片53の突起53aがハウジング本体20の係止凹部28に嵌まり込むことにより維持される。
【0052】
7)以上のようにしてアース電線Dと電線接続導体40との接続を完了した段階で、図8(a)に示すように、ハウジング本体20に形成されたワイヤハーネス固定部29とカバー50に形成されたワイヤハーネス固定部59は、前記ワイヤハーネスWHの本体軸方向と略平行な直線上において互いに逆向きに延び、前記アース電線Dと電線接続導体40との接続箇所を挟んでその両側に張り出していて、その片側面がワイヤハーネスWHの外周面に対向した状態となる。そこで、これらのワイヤハーネス固定部29,59の片側面を同図(b)に示すようにワイヤハーネスWHの本体の軸方向に沿わせるようにしての外周面上に接触させ、当該本体外周面とワイヤハーネス固定部29,59とに跨るようにして粘着テープ80を巻き付けることにより、当該ワイヤハーネス本体外周面上にアースコネクタCを固定する。この状態で、前記ハウジング本体20及びカバー50からなる絶縁ハウジング並びにアース接続導体30のアース端子部32が前記ワイヤハーネスWHの本体からその軸方向と略直交する方向に突出した状態となる。
【0053】
8)前記ワイヤハーネスWHを車両内の適当な位置に配索し、前記アース端子部32のボルト挿通孔32aにボルトを挿通して車両の適当な接地部分(例えばボディ)に締結する。これにより、前記アース電線Dの端末の電線側端子60が電線接続導体40、コンデンサ10、及びアース接続導体30を順に経由してアースに接続されるのと同時に、アースコネクタCそのものを媒介としてワイヤハーネスWHの本体と前記接地部分とが連結されて当該接地部分にワイヤハーネスWHが固定された状態となる。すなわち、前記アース端子部32を前記接地部分に締結するだけの作業で、アース電線Dの接地と、ワイヤハーネスWHの固定とを同時に実現することができる。
【0054】
なお、本発明で用いるアースコネクタCは、前記のようなコンデンサ内蔵コネクタに限らない。例えば、図9に示すようなアースジョイントコネクタ、つまり、ワイヤハーネスから導出されるアース電線Dと、同じワイヤハーネスから導出される別のアース電線の端末に固定されたコネクタ120とを一括してアース接続するためのコネクタを、アースコネクタCとして利用することも可能である。
【0055】
図示のアースコネクタCは、絶縁ハウジング100と、これに保持される接続導体110とを有している。絶縁ハウジング100には、アース電線Dの端末に固定された電線側端子60がそのまま挿入される端子挿入室102と、前記コネクタ120のハウジングが嵌入されるハウジング挿入室104とが一体に形成されている。一方、接続導体110は、ボルト挿通孔112aをもつアース端子部112と、このアース端子部112とは逆向きに突出する電線用端子114及びコネクタ用端子116とを一体に有し、前記端子挿入室102に挿入される電線側端子60が前記電線用端子114と嵌合し、前記ハウジング挿入室104に挿入されるコネクタ120の端子が前記コネクタ用端子116と嵌合するように、前記接続導体110が前記絶縁ハウジング100内に保持されている。
【0056】
このようなアースコネクタCにおいても、その絶縁ハウジング100の例えば天壁から左右に図示のようなワイヤハーネス固定部106を延ばして、前記各挿入室102,104を挟んでその両外側に張り出す形状とし、これらワイヤハーネス固定部106の上面を前記ワイヤハーネスの本体外周面に接触させて両者に跨るようにテープを巻き付けることにより、当該アースコネクタCを安定した状態でワイヤハーネス本体に固定することができ、そのアース端子部112を車両の接地部分に固定することによって、前記ワイヤハーネスの接地と固定の双方を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態において使用されるアースコネクタの本体とカバーとを示す斜視図である。
【図2】前記アースコネクタの本体とカバーとを示す一部断面斜視図である。
【図3】(a)(b)は前記アースコネクタを図4(b)のD−D線の高さで切った断面平面図であり、(a)はカバーが仮装着位置にある状態を示す断面平面図、(b)はカバーが完全装着位置にある状態を示す断面平面図である。
【図4】(a)は図3(b)のA−A線断面図、(b)は図3(b)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【図5】(a)(b)は前記アースコネクタを図4(b)のC−C線の高さで切った断面平面図であり、(a)はカバーが仮装着位置にある状態を示す断面平面図、(b)はカバーが完全装着位置にある状態を示す断面平面図である。
【図6】(a)〜(c)は前記アースコネクタの組立工程を示す斜視図である。
【図7】(a)〜(c)は前記アースコネクタの本体に対してカバーを装着する工程を示す斜視図である。
【図8】(a)は前記アースコネクタにワイヤハーネス側のアース電線を接続した状態を示す斜視図、(b)は前記アースコネクタを前記ワイヤハーネスの本体に固定した状態を示す斜視図である。
【図9】本発明に係るアースコネクタとして使用可能なアースジョイントコネクタの例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
10 コンデンサ
20 ハウジング本体(絶縁ハウジング)
29,59 ワイヤハーネス固定部
30 アース接続導体
32 アース端子部
40 電線接続導体
50 カバー
60 電線側端子
80 粘着テープ
C アースコネクタ
WH ワイヤハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスに含まれるアース電線を車両の接地部分に電気的に接続し、かつ、当該接地部分に固定する方法であって、前記アース電線と前記接地部分とを接続する接続導体及びこの接続導体を保持する絶縁ハウジングを有するアースコネクタの当該接続導体に前記アース電線を接続する工程と、前記コネクタの絶縁ハウジングを前記ワイヤハーネスの本体外周面上に固定する工程と、このワイヤハーネス本体に固定されたアースコネクタの接続導体を前記接地部分に接触させた状態で当該接地部分に固定する工程とを含むことを特徴とするワイヤハーネスのアース及び固定方法。
【請求項2】
アース電線を含み、このアース電線が車両の接地部分に電気的に接続され、かつ、当該接地部分に固定される車両用ワイヤハーネスであって、前記アース電線と前記接地部分とを接続する接続導体及びこの接続導体を保持する絶縁ハウジングを有するアースコネクタを備え、このアースコネクタの絶縁ハウジングが前記ワイヤハーネスの本体外周面上に固定されるとともに、前記コネクタの接続導体に、前記接地部分と接触した状態で当該接地部分に固定されるアース接続部が設けられていることを特徴とする車両用ワイヤハーネス。
【請求項3】
請求項2記載の車両用ワイヤハーネスにおいて、前記アースコネクタの絶縁ハウジングに、前記接続導体が前記ワイヤハーネスのアース電線に接続された状態で当該ワイヤハーネスの本体外周面上に接触するワイヤハーネス固定部が形成され、このワイヤハーネス固定部と前記ワイヤハーネスの本体外周面とに跨ってテープが巻き付けられることにより当該ワイヤハーネス固定部が前記ワイヤハーネス本体に固定されていることを特徴とする車両用ワイヤハーネス。
【請求項4】
ワイヤハーネスに含まれるアース電線を車両の接地部分に電気的に接続し、かつ、当該接地部分に固定するためのアースコネクタであって、前記アース電線と前記接地部分とを接続する接続導体と、この接続導体を保持する絶縁ハウジングとを備え、この絶縁ハウジングに、前記接続導体が前記ワイヤハーネスのアース電線に接続された状態で当該ワイヤハーネスの本体外周面上に接触しかつ当該本体外周面とまたがってテープを巻き付けることが可能な形状のワイヤハーネス固定部が形成されていることを特徴とするワイヤハーネス用アースコネクタ。
【請求項5】
請求項4記載のワイヤハーネス用アースコネクタにおいて、前記ワイヤハーネス固定部は、前記接続導体と前記アース電線とが接続される箇所を挟んでその両外側に張り出す形状を有していることを特徴とするワイヤハーネス用アースコネクタ。
【請求項6】
請求項4または5記載のアースコネクタにおいて、前記接続導体として、前記アース接続部を有するアース接続導体と、前記電線側端子が接続される電線接続導体とを含み、これらアース接続導体と電線接続導体との間にコンデンサが介在していることを特徴とするワイヤハーネス用アースコネクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−107809(P2006−107809A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−289877(P2004−289877)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】