説明

車両用制御装置

【課題】運転者の疲労を抑制する又は運転者を覚醒させる、座席シートなどの振動が、運転者の違和感となることを防止する車両用制御装置を提供する。
【解決手段】本発明の車両用制御装置1は、拍動計測手段2が計測した運転者3の拍動に基づき、体調判定手段4が運転者3の体調を判定し、その判定結果に基づき、振動発生手段6が運転者3に振動を与えるものである。具体的には、振動制御手段5により、振動発生手段6が振動するタイミング及び振幅を制御して、運転者3に振動を与えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリング又は座席シートを振動させる車両用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の生体情報を検出し、かかる生体情報に基づき運転者の座席シートなどを振動させて運転者の疲労を抑制する、又は運転者を覚醒させる車両用制御装置が知られている。
本発明者は、座席シートなどの振動と運転者の疲労抑制(又は覚醒)との関係を研究する中で、自ら座席シートなどの振動を繰り返し体感するうちに、かかる振動が単調であるため、振動に対する耐性により疲労抑制効果(覚醒効果)が低下するとの実感を得た。
【0003】
そのため、振動に対する耐性を防止するために種々のタイミングで振動を発生させて、発明者自らがその振動を体感する中で、本発明者は振動による疲労抑制(覚醒)を通り越し、振動により車酔いのような症状に見舞われた。
【0004】
かかる症状の原因について、運転者の鼓動と振動のタイミングとの関係を詳細に検討した結果、本発明者は、運転者の鼓動とシート等の振動との間にズレが生じる、つまり、運転者の心拍とタイミングと、座席シート等の振動のタイミングとの間にズレが生じると運転者に違和感となり、違和感となる振動が繰り返し運転者に与えられると、車酔いのような症状となるとの事実を把握するに至った。
【0005】
本発明者は、運転者に違和感が生じる原因を次のように考える。
ある物理的な量が変化する場合、かかる物理量の平均値は巨視的には一定であっても、微視的には完全に予測することが困難である僅かなズレ(平均値からのズレ)であるゆらぎ存在し、ゆらぎは人の自律神経を調和するものと認識されている。そして、心臓の鼓動の周期や心臓が収縮拡大する振動の振幅にゆらぎが存在すると考えられるため、その心臓の鼓動等の周期や振幅に近い振動ほど高揚感を与え、かかる振動が繰り返されると高揚感を維持できる。
一方、本発明者が体感した振動は、発明者の鼓動と外れているだけでなく、画一的な周期及び振幅で、心臓の鼓動とは無関係に振動していた。そのため、ゆらぎとはほど遠い振動であるが故に違和感となり、その違和感となる振動が繰り返されることで車酔いのような症状が出てくると、本発明者は考える。
【0006】
特許文献1は、運転者の心拍数を計測し、計測した心拍数に基づいて車両のシートを振動させて運転者の疲労を抑制する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−284449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の発明は、計測した運転者の心拍数から運転者の疲労を判定し、疲労度に応じ座席シートを振動させて運転者の疲労を抑制するものである。
つまり、特許文献1に記載の発明は、運転者の心臓の鼓動に関係なく座席シートを振動させるため、座席シートの振動による違和感を防止することができない。
【0009】
本発明の課題は、運転者の疲労を抑制する又は運転者を覚醒させる、座席シートなどの振動が、運転者の違和感となることを防止する車両用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0010】
本発明の車両用制御装置は、以下の構成を有する。
車両の運転者の拍動波形を計測する拍動計測手段と、
拍動計測手段が計測した計測拍動波形から運転者の体調を判定する体調判定手段と、
体調判定手段が判定した判定結果に基づいて車両のステアリング又は運転者の座席シートの少なくとも一方の振動させる振動発生手段と、
振動発生手段の振動を制御する振動制御手段と、
を有する車両用制御装置において、
振動制御手段は、
計測拍動波形からノイズを除去するノイズ除去手段と、
ノイズ除去手段がノイズを除去したノイズ処理後拍動波形の振幅に比例した振幅で振動発生手段を振動させる振幅制御手段と、
計測拍動波形から運転者の拍動のタイミングを予測するタイミング予測手段を有し、
タイミング予測手段が予測した予測拍動タイミングに同期させて、振動発生手段が振動するタイミングを制御するタイミング制御手段と、
を備えることにより、
振動発生手段が、予測拍動タイミングに同期するタイミングで振動し、ノイズ処理後拍動波形の振幅に比例する振幅によりステアリング又は座席シートの少なくとも一方を振動させることを特徴とする。
【0011】
本発明の車両用制御装置は、タイミング制御手段及び振幅制御手段により、運転者における心臓の鼓動の動きに近い振動を運転者に与えることが可能となる。具体的には、タイミング制御手段により運転者の鼓動の周期に追従して振動を与えることが可能となり、振幅制御手段により運転者の鼓動の振幅に追従して振動を与えることが可能となる。よって、振動が繰り返される場合でも、かかる振動は、ゆらいで計測される鼓動の周期や振幅とともに、推移する。したがって、振動が繰り返される場合でも、運転者に違和感を与えることなく、運転者を高揚させ、その高揚感を維持させることで、運転者の疲労抑制又は運転者の覚醒を図ること可能となる。
また、運転者の鼓動は、ゆらぎにより刻一刻と変化するため、単調な振動となることなく効果的に運転者に振動を与えることが可能となる。
さらに、ノイズ除去手段により、振動する振幅のノイズが除去されるため、振動発生手段が常時微細振動するのを防止できる。
【0012】
また、振幅制御手段は、判定結果に基づいて振動発生手段の振幅の比例定数を定めることができる。よって、運転者の体調に応じて、違和感を与えることなく、運転者に振動を与えることができる。
【0013】
計測拍動波形は心電波形であり、タイミング予測手段は、心電波形におけるR波の次のピーク時を予測し、予測したピーク時を予測拍動タイミングとすることができる。
【0014】
心電波形のR波は、心電波形の途中で検出される(心電図において、心拍1回毎にP波→Q波→R波→S波→T波の順で波が検出される)。よって、タイミング予測手段の予測に多少の誤差が生じても、運転者の鼓動のタイミングと、運転者に与える振動のタイミングとが大きくずれることを防止でき、運転者に違和感なく振動を与えることが可能となる。
【0015】
また、計測拍動波形は心電波形であり、タイミング予測手段は、心電波形における次のP波のピーク時を前記予測拍動タイミングとすることができる。
【0016】
心電波形は、P波→Q波→R波→S波→T波の順で各波が検出されるため、P波は最初に検出される心筋の活動電流である。よって、P波のピーク時を予測拍動タイミングとすることで、P波後の心筋の活動に合わせて、運転者に振動を与え、運転者に違和感なく振動を与えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の車両用制御装置の概略図を示すブロック図。
【図2】拍動計測手段がステアリングに配置された状態を示す参考図。
【図3】拍動計測手段が座席シートに配置された状態を示す参考図。
【図4】心電波形を示す参考図。
【図5】実施例1の処理手順を示すフローチャート。
【図6】実施例2の処理手順を示すフローチャート。
【図7】変形例1の処理手順を示すフローチャート。
【図8】変形例2の処理手順を示すフローチャート。
【図9】変形例3の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を添付の図面を用いて説明する。
図1は本発明の車両用制御装置1の概略図を示すブロック図であり、図1を用いて車両用制御装置1の概要を説明する。
本発明の車両用制御装置1は、拍動計測手段2が計測した運転者3の拍動に基づき、体調判定手段4が運転者3の体調を判定し、その判定結果に基づき、振動発生手段6が運転者3に振動を与えるものである。具体的には、振動制御手段5により、振動発生手段6が振動するタイミング及び振幅を制御して、運転者3に振動を与えるものである。
【0019】
拍動計測手段2は、車両の運転者3の拍動波形(計測拍動波形)である心電波形を計測する生体センサーである。この生体センサーは、具体的には、運転者3の心拍を計測する心拍センサーであり、脈拍を測定する脈拍センサーであってもよい。
そして、生体センサーは、車両のステアリング12又は座席シート13の少なくとも一方に備わる。
【0020】
図2に示すように、生体センサーたる心拍センサーがステアリング12に取り付けられる場合は、ステアリング12のリム部の外周縁に沿って円弧状に電極が取り付けられる。
よって、運転者3がリム部を握持してリム部の電極を押圧することにより、運転者の心臓の収縮に伴う微弱な電気信号が入力されて、心拍センサーは心電波形を抽出する。
一方、図3に示すように、心拍センサーが運転者3の座席シート13に取り付けられる場合は、座席シート13に着座する運転者3の心臓のエコー測定を行うエコー測定ユニットが座席シート13に埋設される。このエコー測定ユニットは、測定用超音波送信部と反射超音波受信部とを有する。そのため、測定用超音波送信部から超音波を検出プローブとして心臓に向けて入射させることで、心臓の動作により、ドップラー効果をともなう反射波が生じる。よって、このドップラー効果をともなう反射波から心電波形を抽出する。
【0021】
また、図2に示すように、生体センサーである脈拍センサーが車両のステアリング12に取り付けられる場合は、運転者3が握持するリム部に、運転者の血流の変化を光学的に検出できる脈波測定用のLED装置が取り付けられる。このLED装置は、発光素子と受光素子とを有する。そのため、発光素子から運転者3の指先に赤外線を投射すると、指先の血流中のヘモグロビンにより赤外線が反射される。反射された赤外線から心電波形を抽出する。
一方、図3に示すように、脈拍センサーが運転者の座席シート13に取り付けられる場合は、座席シート13に着座する運転者3の脈拍を測定する圧力センサーが座席シート13に埋設される。該圧力センサーに基づき心電波形を抽出する。
【0022】
生体センサーである拍動計測手段2が計測した心電波形が入力され、その心電波形に基づき処理を行う制御ECU7(ECU:Electronic Control Unit)は、通常のコンピュータの構造を有し、図1に図示されていないが、各種演算や情報処理を司るCPU、CPUの作業領域としての一時記憶部であるRAM、各種情報を記憶する不揮発性のメモリを備える。
具体的には、制御ECU7は、拍動計測手段2が計測した計測拍動波形から運転者3の体調を判定して、その判定結果に基づいて振動発生手段6を制御するものであり、制御ECU7は、体調判定手段4と、振動制御手段5を有する。
【0023】
体調判定手段4は、拍動計測手段2が計測した計測拍動波形から運転者3の体調を判定して、判定結果を得る。具体的には、計測拍動波形たる心電波形から特徴波を検出する。ここで言う特徴波とは、心臓の拍動に伴う心筋の活動電流を記録した図4に示す心電図のP波、Q波、R波、S波、T波である。体調判定手段4は、その特徴波のピーク間隔や電位の変化などから運転者3の現在の状態を判定する状態推定ロジックを用い、運転者3の体調を判定する。なお、拍動計測手段2が計測した計測拍動波形からノイズ成分を除去した後に、体調判定手段4が判定を行ってもよい。
【0024】
振動制御手段5は、拍動計測手段2が計測した計測拍動波形からノイズ成分を除去したノイズ処理後拍動波形と、拍動計測手段2が計測した計測拍動波形から運転者3の拍動のタイミングを予測した予測拍動タイミングとを得る。そして、ノイズ処理後拍動波形と予測拍動タイミングから運転者3に与える振動の振幅とタイミングを制御するものであり、振動制御手段5は、ノイズ除去手段8と、振幅制御手段9と、タイミング予測手段10と、タイミング制御手段11と、を有する。
【0025】
ノイズ除去手段8は、拍動計測手段2が計測した拍動からノイズを除去して、ノイズ処理後拍動波形であるノイズ処理後心電波形を得るものである。具体的には、拍動計測手段2が計測した計測拍動の特徴波、つまり、心電波形のP波、Q波、R波、S波、T波ごとに様々な周波数の正弦波等に分解して、分解した特徴波ごとにノイズ成分を除去する。そして、ノイズ成分が除去された特徴波を合成して、運転者3のノイズ処理後拍動波形を得る。なお、体調判定手段4において、ノイズ除去手段8を設け、ノイズ成分を除去したノイズ処理後拍動波形から運転者3の状態を判定してもよい。なお、体調判定手段4にノイズ除去手段8を設ける場合は、振動制御手段5にノイズ除去手段8を設けることなく、体調判定手段4で得たノイズ処理後拍動波形を用いればよい。
【0026】
振幅御手段9は、かかるノイズ処理後拍動波形の振幅に比例した振幅で、運転者3に振動を与える振動発生手段6を振動させる。
つまり、ノイズ処理後拍動波形であるノイズ処理後心電波形のP波、Q波、R波、S波、T波のぞれぞれの振幅に比例するように、振動発生手段6が振動する振幅を制御するものである。
具体的には、振幅制御手段9は、体調判定手段4の判定結果に基づいて振動発生手段6の振幅の比例定数を定め、体調判定手段4が運転者3の疲労度(覚醒度)を判定する場合は、例えば、運転者3の疲労が高いほど(覚醒度が低いほど)、振動発生手段6の振動の振幅(比例定数)を大きくし、運転者の疲労が小さいほど(覚醒度が高いほど)、振動発生手段6の振動の振幅(比例定数)を小さくする。
【0027】
一方、タイミング予測手段10は、計測拍動波形である心電波形から運転者3の拍動のタイミングを予測した予測拍動タイミングを得る。具体的には、心電波形におけるR波の次のピーク時を予測し、予測したピーク時を予測拍動タイミングとするものであり、心電波形のR波とR波の頂点の間隔であるRR間隔の時間を計測することで、直前のRR間隔の時間を、次のR波の頂点までの時間とすることで、RR間隔を予測して運転者3の拍動のタイミング(R波の頂点のタイミング)を予測することができる。また、運転者のRR間隔の平均値を求めることで、平均値に基づき運転者3の拍動のタイミング(R波の頂点のタイミング)を予測することができ、他の波においても、同様に予測できる。
【0028】
また、タイミング制御手段11は、タイミング予測手段10が予測した予測拍動タイミングに同期させて、運転者3に振動を与える振動発生手段6が振動するタイミングを制御する。
【0029】
そして、振動制御手段5により、制御される振動発生手段6は、振動制御手段5により車両のステアリング12又は運転者の座席シート13の少なくとも一方を振動させる。振動発生手段6としては、ソレノイドやモーターなどのアクチュエーターを利用して振動する振動機器である。
【0030】
以上の構成のもとで、車両用制御装置1は、運転者3の疲労を抑制又は運転者3を覚醒させる座席シート13などの振動が、運転者の違和感となることを防止する処理を実行する。
その処理手順が図5のフローチャートに示されている。かかる処理手順を予めプログラム化して、例えば、制御ECU7のメモリに記憶しておき、制御ECU7が呼び出して自動的に実行する。
【0031】
図5の処理では、まずS1で拍動計測手段2が運転者3の拍動を測定して、計測した計測拍動波形である心電波形を制御ECU7に入力して、S2に進む。続いてS2において、心電波形からP波、Q波、R波、S波、T波などの特徴波を検出して、S3に進む。S3では、体調判定手段4が、特徴波の間隔や電位などから、運転者3の現在の状態を判定する状態推定ロジックを用いて運転者3の状態を推定してS4に進む。
【0032】
S4に進むと、体調判定手段4は、S3の状態推定ロジックにより運転者3の状態を推定した推定結果から、運転者3の体調を判定する。具体的には、運転者3が疲労状態であるか否かを判定する。運転者3が疲労状態である場合(S4:YES)は、S5に進み、運転者3が疲労状態でない場合(S4:NO)は、S1に戻り、拍動計測手段2が運転者3の拍動を測定して、計測した心電波形を制御ECU7に入力して、S2に進む。
【0033】
S5に進むと、ノイズ除去手段8が、計測拍動波形からノイズを除去してノイズ処理後心電波形を得る。具体的には、拍動計測手段2が計測した心電波形の特徴波であるP波、Q波、R波、S波、T波ごとに様々な周波数の正弦波等に分解して、分解した特徴波ごとにノイズ成分を除去する。そして、ノイズ成分が除去された特徴波を合成し、運転者3のノイズ処理後心電波形を得て、S6に進む。
【0034】
S6に進むと、S4により疲労状態と判定された運転者3の疲労度に応じ、振幅制御手段9が、ノイズ処理後拍動波形であるノイズ処理後心電波形のP波、Q波、R波、S波、T波のぞれぞれの振幅に比例するように、振動発生手段6が振動する振幅を決定して、S7に進む。S5でノイズが除去されたノイズ処理後拍動波形を基準に振幅が定まるので、ノイズにより振幅が常時変動するのを防止できる。
振幅制御手段9は、具体的には、体調判定手段4の判定結果に基づき振動発生手段6の振幅の比例定数を定め、運転者3の疲労が高いほど(覚醒度が低いほど)、振動発生手段6の振動の振幅(比例定数)を大きくし、運転者の疲労が小さいほど(覚醒度が高いほど)、振動発生手段6の振動の振幅(比例定数)を小さくする。よって、運転者3の体調に応じた振動を発生させることができる。
【0035】
S7に進むと、心電波形から運転者3の拍動のタイミングをタイミング予測手段10が予測した予測拍動タイミングから、タイミング制御手段11は、運転者3の次の拍動が発生するタイミングかを判定する。
具体的には、タイミング予測手段10が、心電波形におけるR波の次のピーク時を予測して、予測したピーク時を予測拍動タイミングとする。そして、かかる予測拍動タイミングに基づいて、タイミング制御手段11は、運転者3の次の拍動が発生するタイミングかを判定する。運転者3の心臓が次に鼓動するタイミングである場合(S7:YES)は、S8に進み、運転者3の心臓が次に鼓動するタイミングでない場合(S7:NO)は、S7に戻る。
【0036】
S8に進むと、振動制御手段5は、S6で決定した振幅となるように振動発生手段6が振幅する振動波形を、振動発生手段6に出力する。その結果、振動発生手段6が振動制御手段5から出力された振動波形に基づき振動する。よって、S6によりノイズが除去された振幅を基準として振動発生手段6が振動するので、振動発生手段6が常時微細振動するのを防止できる。
【0037】
以上の構成のもとで、車両用制御装置1は、運転者3の疲労を抑制又は運転者3を覚醒させる座席シート13などの振動を運転者3の鼓動に同期するように与えることができ、以上の処理の繰り返すことで、運転者3の鼓動の動きに近い振動で振動が推移することになる。したがって、かかる振動が繰り返されても、心臓の鼓動と同様に、ゆらいで推移するため、運転者に違和感を与えずに、単調な振動となることなく、運転者の疲労抑制又は運転者の覚醒を図ることができる。
なお、S8の処理後にS1の処理をさせることで、継続的に違和感のない振動を運転者3に与えてもよい。
【0038】
次に、本発明の車両用制御装置1の実施例2を説明する。実施例1と同様の構成は、実施例1と同様の符号を付して、実施例1の説明を流用して説明を省略する。
図6は、振動制御手段5が振動のタイミングを制御する処理手順を示す実施例2のフローチャートを示すものであり、図6を用いて実施例2を説明する。図5に示す実施例1のフローチャートにおける振動制御手段5のタイミング予測手段10は、心電波形におけるR波の次のピーク時を予測し、予測したピーク時を予測拍動タイミングとしていた。しかし、実施例2は、振動制御手段5のタイミング予測手段10は、心電波形における次のP波のピーク時を予測拍動タイミングとするものである。
【0039】
次に、実施例2の振動制御手段5が振動のタイミングを制御する処理手順を図6のフローチャートから説明する。つまり、運転者3の体調を判定した図6のS1で入力された心電波形(P波、Q波、R波、S波、T波を有する1回の心拍中の心電波形)の次に計測される心電波形におけるP波の頂点のタイミングで振動制御手段5が振動発生手段6を振動させる手順を説明する。S6までは、実施例1の図5のフローチャートに示される処理と同様の処理を実行する。S6において、S4により疲労状態と判定された運転者3の疲労度に応じ、振幅制御手段9が、ノイズ処理後拍動波形であるノイズ処理後心電波形のP波、Q波、R波、S波、T波のぞれぞれの振幅に比例するように、振動発生手段6が振動する振幅を決定して、図6に示すS107に進む。
【0040】
S107に進むと、制御ECU7の振動制御手段5に、S1で入力された心電波形(P波、Q波、R波、S波、T波を有する1回の心拍中の心電波形)の次に計測される心電波形である、拍動計測手段2が計測した計測拍動波形が入力され、S108に進む。
S108に進むと、タイミング制御手段11がS107で入力された心電波形からP波が検出されたか否かを判定する。P波が検出された場合(S108:YES)は、検出されたP波のピーク時を予測拍動タイミングとして、S109に進み、P波が検出されない場合(S108:NO)は、S107に戻る。
【0041】
S109に進むと、振動制御手段5は、S6で決定した振幅となるように振動発生手段6が振幅する振動波形を、振動発生手段6に出力する。その結果、振動発生手段6が振動制御手段5から出力された振動波形に基づき振動する。よって、S108でP波のピーク時を予測拍動タイミングとするため、P波後の心筋の活動に合わせて、運転者に振動を与えることができ、運転者の違和感を防止できる。
以上の構成のもとで、車両用制御装置1は、運転者3の疲労を抑制又は運転者3を覚醒させる座席シート13などの振動が、運転者3の違和感となることを防止する処理を実行する。
【0042】
次に、本発明の車両用制御装置1の変形例1を説明する。実施例2と同様の構成は、実施例2と同様の符号を付して、実施例2の説明を流用して説明を省略する。
図7は、振動制御手段5が振動のタイミングを制御する処理手順を示す変形例1のフローチャートの一部を示すものであり、図7を用いて変形例1を説明する。図6に示す実施例2におけるフローチャートでの振動制御手段5のタイミング予測手段10は、心電波形における次のP波のピーク時を予測拍動タイミングとするものである。しかし、変形例1では、振動制御手段5のタイミング予測手段10は、心電波形におけるP波とR波の間隔時間であるPR間隔時間を予測し、心電波形における次のP波のピーク時からPR間隔時間後を予測拍動タイミングとした。
【0043】
次に、変形例1の振動制御手段5が振動のタイミングを制御する処理手順を図7のフローチャートから説明する。つまり、運転者3の体調を判定した図6のS1(図7ではS1を省略して図示してある)で入力された心電波形(P波、Q波、R波、S波、T波を有する1回の心拍中の心電波形)の次に計測される心電波形におけるP波の頂点から、その1心拍中におけるR波のピーク時のタイミングで振動制御手段5が振動発生手段6を振動させる手順を説明する。S108までは、実施例2の図6のフローチャートに示される処理と同様の処理を実行する。S108において、タイミング制御手段11がS107で入力された心電波形からP波が検出されたか否かを判定する。P波が検出された場合(S108:YES)は、S209に進み、P波が検出されない場合(S108:NO)は、S107に戻る。
【0044】
S209に進むと、拍動タイミング手段10は、拍動計測手段2が心電波形のP波とR波の頂点の間隔時間(PR間隔時間)である予測拍動タイミングを生成する。そして、その予測拍動タイミングから、タイミング制御手段11は、運転者3の次のR波が発生するタイミングかを判定する。
具体的には、タイミング予測手段10が、心電波形におけるP波とR波の平均の間隔時間を、又は、直前の心電波形のPR間隔時間を、PR間隔時間として、予測拍動タイミングとする。そして、かかる予測拍動タイミングに基づいて、タイミング制御手段11は、P波を検出してからPR間隔時間が経過したかを判定する。PR間隔時間が経過した場合(S209:YES)は、S210に進み、PR間隔時間が経過していない場合(S209:NO)は、S209に戻る。
【0045】
S210に進むと、振動制御手段5は、S6で決定した振幅となるように振動発生手段6が振幅する振動波形を、振動発生手段6に出力する。その結果、振動発生手段6が振動制御手段5から出力された振動波形に基づき振動して、S210に進む。S209により、P波を検出した後のPR間隔時間の経過後に振動が発生するため、運転者における実際のR波のタイミングと振動のタイミングをより同期させることができる。
以上の構成のもとで、車両用制御装置1は、運転者3の疲労を抑制又は運転者3を覚醒させる座席シート13などの振動が、運転者3の違和感となることを防止する処理を実行する。
【0046】
次に、実施例1の車両用制御装置1の変形例2を説明する。実施例1と同様の構成は、実施例1と同様の符号を付して、実施例1の説明を流用して説明を省略する。
図8は、図5に示す実施例1のフローチャートにS9の処理を追加したものである。S8までは、図5のフローチャートと同様の処理を行い、S9に進むと、振動制御手段5は、S4の判定結果に基づいて定められる規定の回数の振動を振動制御手段5が、振動発生手段6に出力したかを判定する。具体的には、運転者3の疲労を抑制又は、運転者3を覚醒させるに足りる回数の振動を運転者3に与えたか否かを判定する。所定の回数を繰り返していない場合(S10:NO)は、S7に戻り、所定の回数を繰り返した場合(S9:YES)は、運転者3の疲労を抑制又は運転者3を覚醒させる座席シート13などの振動が、運転者3の違和感となることを防止する処理が終了する。よって、運転者3の体調に応じて振動を発生させることができる。
【0047】
次に、実施例2の車両用制御装置1の変形例3を説明する。実施例2と同様の構成は、実施例2と同様の符号を付して、実施例2の説明を流用して説明を省略する。
図9は、図6に示す実施例2のフローチャートにS110の処理を追加したものである。S109までは、図6のフローチャートと同様の処理を行い、S110に進むと、振動制御手段5は、S4の判定結果に基づいて定められる規定の回数の振動を振動制御手段5が、振動発生手段6に出力したかを判定する。具体的には、運転者3の疲労を抑制又は、運転者3を覚醒させるに足りる回数の振動を運転者3に与えたか否かを判定する。所定の回数を繰り返していない場合(S110:NO)は、S107に戻り、所定の回数を繰り返した場合(S110:YES)は、運転者3の疲労を抑制又は運転者を覚醒させる座席シート13などの振動が、運転者3の違和感となることを防止する処理が終了する。
【0048】
以上の説明においては、P波とR波を検出する構成を採用していたが、Q波等の他の波を適宜利用することができる。また、各実施例及び変形例は適宜組み合せることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 車両用制御装置 2 拍動計測手段
3 運転者 4 体調判定手段
5 振動制御手段 6 振動発生手段
7 制御ECU 8 ノイズ除去手段
9 振幅制御手段 10 タイミング予測手段
11 タイミング制御手段 12 ステアリング
13 座席シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者の拍動波形を計測する拍動計測手段と、
前記拍動計測手段が計測した計測拍動波形から前記運転者の体調を判定する体調判定手段と、
前記体調判定手段が判定した判定結果に基づいて前記車両のステアリング又は前記運転者の座席シートの少なくとも一方の振動させる振動発生手段と、
前記振動発生手段の振動を制御する振動制御手段と、
を有する車両用制御装置において、
前記振動制御手段は、
前記計測拍動波形からノイズを除去するノイズ除去手段と、
前記ノイズ除去手段がノイズを除去したノイズ処理後拍動波形の振幅に比例した振幅で前記振動発生手段を振動させる振幅制御手段と、
前記計測拍動波形から前記運転者の拍動のタイミングを予測するタイミング予測手段を有し、
前記タイミング予測手段が予測した予測拍動タイミングに同期させて、前記振動発生手段が振動するタイミングを制御するタイミング制御手段と、
を備えることにより、
前記振動発生手段が、前記予測拍動タイミングに同期するタイミングで振動し、前記ノイズ処理後拍動波形の振幅に比例する振幅によりステアリング又は座席シートの少なくとも一方を振動させることを特徴とする車両用制御装置。
【請求項2】
前記振幅制御手段は、前記判定結果に基づいて前記振動発生手段の振幅の比例定数を定めることを特徴とする請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記計測拍動波形は心電波形であり、前記タイミング予測手段は、前記心電波形におけるR波の次のピーク時を予測し、予測した前記ピーク時を前記予測拍動タイミングとすることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記計測拍動波形は心電波形であり、前記タイミング予測手段は、前記心電波形における次のP波のピーク時を前記予測拍動タイミングとすることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−136134(P2012−136134A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289252(P2010−289252)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】