車両用前照灯および車両用前照灯の制御装置
【課題】灯具のサイズやコストを抑制しつつ、前走車などの対象物へのグレアの付与を回避する。
【解決手段】車両用前照灯10において、支持部材20は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24を支持する。第1リフレクタ28および第2リフレクタ30は、第1半導体発光素子22からの光を反射して第1個別配光パターンPH1および第2個別配光パターンPH2を形成する。第3リフレクタ32および第4リフレクタ34は、第2半導体発光素子24からの光を反射して第3個別配光パターンPH3および第4個別配光パターンPH4を形成する。移動機構は、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を、第1個別配光パターンPH1および第4個別配光パターンPH4の形成を回避させるよう一体的に移動させ、第1個別配光パターンPH1または第4個別配光パターンPH4に存在する前走車などの対象物へのグレアの付与を回避する。
【解決手段】車両用前照灯10において、支持部材20は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24を支持する。第1リフレクタ28および第2リフレクタ30は、第1半導体発光素子22からの光を反射して第1個別配光パターンPH1および第2個別配光パターンPH2を形成する。第3リフレクタ32および第4リフレクタ34は、第2半導体発光素子24からの光を反射して第3個別配光パターンPH3および第4個別配光パターンPH4を形成する。移動機構は、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を、第1個別配光パターンPH1および第4個別配光パターンPH4の形成を回避させるよう一体的に移動させ、第1個別配光パターンPH1または第4個別配光パターンPH4に存在する前走車などの対象物へのグレアの付与を回避する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯およびその制御装置に関し、特に理触れリフレクタを備えた車両用前照灯およびその制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
夜間に車で走行するときは、通常は水平線より下方にロービームを照射して路面を照らして走行し、必要に応じて水平線より上方にハイビームを照射して前方を確認しながら走行する。ここで、水平線より上方に光を照射すると、前走車の運転者や車両前方にいる歩行者にグレアを与えるおそれがあるため、例えば、前走車の存在有無を検出し、検出結果に応じて一方向を減光するよう調光し、これによって減光した光を他の方向へ照射する車両用前照灯装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−81337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載される車両用前照灯装置では、投影レンズを介して車両前方に光を照射している。しかしながら、このように投影レンズを用いる方式では、灯具の前後方向における長さを抑制することは困難である。また、上述の特許文献1に記載されるような液晶調光板は一般的に高価であり、コストの点で改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、灯具のサイズやコストを抑制しつつ、前走車などの対象物へのグレアの付与を回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用前照灯は、光源を支持する支持部材と、光源からの光を各々が反射して、互いに隣接して水平方向に並ぶ複数の個別配光パターンの各々を形成する複数のリフレクタと、複数のリフレクタの少なくとも1つを、そのリフレクタによる個別配光パターンの形成を回避させるよう移動させる移動機構と、を備える。
【0007】
この態様によれば、リフレクタの移動という簡易な方法により、そのリフレクタによる個別配光パターンの形成を回避させることができる。このため、簡素な構成で前走車などの対象物へのグレアの付与を回避することができる。
【0008】
光源は、縁部を有する発光面が設けられ、複数のリフレクタの各々は、発光面の縁部の反射像で、鉛直方向に延びる縦カットオフラインを個別配光パターンに設ける。
【0009】
この態様によれば、例えばシェードなどを用いて縦カットオフラインを設ける場合に比べ、光源が発する光を有効に利用して個別配光パターンを形成することができる。また、簡素な構成で縦カットオフラインを形成することができる。
【0010】
移動機構は、複数のリフレクタのうち、移動対象のリフレクタを、他のリフレクタによって光源からの光が遮光される領域に移動させることにより、移動対象のリフレクタによる個別配光パターンの形成を回避させてもよい。
【0011】
この態様によれば、光源からの光が遮光される領域を設けるための別の部材を配置する場合などに比べて部材の追加を必要としないため、簡素な構成で、移動させたリフレクタによる個別配光パターンの形成を回避することができる。
【0012】
支持部材は、第1の光源および第2の光源を支持し、複数のリフレクタは、第1の光源からの光を各々が反射してそれぞれに対応する個別配光パターンを形成する第1のリフレクタ群と、第2の光源からの光を各々が反射してそれぞれに対応する個別配光パターンを形成する第2のリフレクタ群と、を有してもよい。移動機構は、第1のリフレクタ群の少なくとも1つのリフレクタ、および第2のリフレクタ群の少なくとも1つのリフレクタを、それぞれによる個別配光パターンの形成を回避させるよう移動可能に設けられてもよい。
【0013】
この態様によれば、例えば、第1の光源および第2の光源の点灯、消灯、およびリフレクタの移動を組み合わせることにより、様々な種類の配光パターンを形成することができる。このため、対象物の位置や移動などに合わせた配光パターンの形成が可能となる。
【0014】
本発明の別の態様は、車両用前照灯の制御装置である。この装置は、グレアの付与を回避すべき対象物の存在を検知する検知手段から検知信号を取得する信号取得部と、光源を支持する光源支持部と、光源からの光を各々が反射して、互いに隣接して水平方向に並ぶ複数の個別配光パターンの各々を形成する複数のリフレクタと、複数のリフレクタの少なくとも1つを、そのリフレクタによる個別配光パターンの形成を回避させるよう移動させる移動機構と、を有する車両用前照灯に対し、複数のリフレクタのうち、検知された対象物が個別配光パターン内に含まれるリフレクタを移動させるよう移動機構のアクチュエータに制御信号を出力することにより、そのリフレクタによる個別配光パターンの形成を回避させる信号出力部と、を備える。
【0015】
この態様によれば、対象物の位置に合わせて、その対象物に向けて光を反射するリフレクタを移動させ、そのリフレクタによる個別配光パターンの形成を回避することができる。このため、対象物へのグレアの付与を適切に回避できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、灯具のサイズやコストを抑制しつつ、前走車などの対象物へのグレアの付与を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)および(b)は、第1の実施形態に係る車両用前照灯の上面図である。
【図2】車両用前照灯によって形成されるハイビーム用配光パターンを示す図である。
【図3】(a)は、第1半導体発光素子および第2半導体発光素子の双方が点灯し、且つ第1リフレクタおよび第4リフレクタが進出位置にあるときの車両用前照灯の上面図であり、(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【図4】(a)は、第1半導体発光素子は点灯しているが第2半導体発光素子が消灯され、且つ第1リフレクタおよび第4リフレクタが進出位置にあるときの車両用前照灯の上面図であり、(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【図5】(a)は、第1半導体発光素子および第2半導体発光素子の双方が点灯し、且つ第1リフレクタおよび第4リフレクタが退避位置にあるときの車両用前照灯の上面図であり、(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【図6】車両用前照灯による配光の形成を制御する配光制御システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【図7】第2の実施形態に係る車両用前照灯の上面図である。
【図8】(a)は、第1半導体発光素子および第2半導体発光素子の双方が点灯し、且つ第1リフレクタおよび第4リフレクタが進出位置にあるときの車両用前照灯の上面図であり、(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【図9】(a)は、第1半導体発光素子は点灯しているが第2半導体発光素子が消灯され、且つ第1リフレクタおよび第4リフレクタが進出位置にあるときの車両用前照灯の上面図であり、(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【図10】(a)は、第2半導体発光素子点灯しているが第1半導体発光素子が消灯され、且つ第1リフレクタおよび第4リフレクタが進出位置にあるときの車両用前照灯の上面図であり、(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【図11】(a)は、第1半導体発光素子および第2半導体発光素子の双方が点灯し、且つ第1リフレクタが退避位置にあり、第4リフレクタが進出位置にあるときの車両用前照灯の上面図であり、(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【図12】(a)は、第1半導体発光素子および第2半導体発光素子の双方が点灯し、且つ第1リフレクタが進出位置にあり、第4リフレクタが退避位置にあるときの車両用前照灯の上面図であり、(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【図13】(a)は、第1半導体発光素子および第2半導体発光素子の双方が点灯し、且つ第1リフレクタおよび第4リフレクタが退避位置にあるときの車両用前照灯の上面図であり、(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【図14】車両用前照灯による配光の形成を制御する配光制御システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1(a)および図1(b)は、第1の実施形態に係る車両用前照灯10の上面図である。図1(a)および図1(b)は、灯具前方が図1(a)および図1(b)の各々において下方を向くよう図示されている。したがって、図1(a)および図1(b)の各々における右方向が灯具左方向となり、図1(a)および図1(b)の各々における左方向が灯具右方向となる。以下、「右」は灯具前方に向いて右を示し、「左」は灯具前方に向いて左をいうものとする。
【0020】
車両用前照灯10は、光源ユニット12、およびリフレクタユニット14を有する。光源ユニット12は、支持部材20、第1の光源である第1半導体発光素子22、および第2の光源である第2半導体発光素子24を有する。第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24には、LED(Light Emitting Diode)が採用されており、青色光を発する青色LEDを、青色光を黄色光に変換する蛍光体で覆うことによって白色光を発するよう設けられている。第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24は、同一形状の矩形の発光面を有する同一形状に形成されている。なお、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24は互いに異なる形状でもよく、また、矩形以外の他の形状の発光面を有していたもよい。また、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24に代えて、白熱灯や放電灯など他の種類の光源が採用されてもよい。
【0021】
支持部材20は板状に形成され、第1面で第1半導体発光素子22を支持し、第1面と反対側の第2面で第2半導体発光素子24を支持する。したがって支持部材20は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24を、各々の発光面が互いに反対方向に向くよう支持する。なお、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の支持形態がこれに限られないことは勿論であり、支持部材20は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24を、各々の発光面が非同一方向且つ互いに180°を除く角度を向くよう支持してもよい。
【0022】
支持部材20は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の各々が発する熱を回収して放熱する放熱部材として機能する。また、支持部材20は、第1半導体発光素子22が発する光と第2半導体発光素子24が発する光とを互いに区分ける様に遮光する遮光部材としても機能する。
【0023】
支持部材20は、鉛直方向および灯具前後方向に延在するよう配置される。第1半導体発光素子22は、発光面が右方向を向くよう支持部材20の右側面上に取り付けられる。第2半導体発光素子24は、発光面が左方向を向くよう支持部材20の左側面上に取り付けられる。
【0024】
リフレクタユニット14は、第1リフレクタ28、第2リフレクタ30、第3リフレクタ32、第4リフレクタ34、連結部材36、ガイドロッド37、および移動機構44を有する。第1リフレクタ28および第2リフレクタ30は、第1半導体発光素子22の灯具右側に配置され、第1半導体発光素子22が発する光を灯具前方に反射する。第2リフレクタ30は、第1リフレクタ28よりも支持部材20に近い位置且つ第1リフレクタ28よりも灯具後方に配置される。以下、第1リフレクタ28および第2リフレクタ30を適宜「第1リフレクタ群40」という。第3リフレクタ32および第4リフレクタ34は、第2半導体発光素子24の灯具左側に配置され、第2半導体発光素子24が発する光を灯具前方に反射する。第3リフレクタ32は、第4リフレクタ34よりも支持部材20に近い位置且つ第4リフレクタ34よりも灯具後方に配置される。以下、第3リフレクタ32および第4リフレクタ34を適宜「第2リフレクタ群42」という。
【0025】
第1リフレクタ28および第4リフレクタ34は、連結部材36によって互いに連結されている。ガイドロッド37は灯具前後方向に延在し、灯具前方の端部が連結部材36に連結されている。この第1リフレクタ28、第4リフレクタ34、連結部材36、およびガイドロッド37によって可動リフレクタユニット38が構成される。可動リフレクタユニット38は、移動機構44によって灯具前後方向に移動可能に設けられている。
【0026】
具体的には、移動機構44は、モータ46、およびギヤなどによる伝達機構(図示せず)を有する。ガイドロッド37にはラックギヤが設けられており、伝達機構は、モータ46の回転軸の回転をこのラックギヤに伝達して可動リフレクタユニット38を灯具前後方向に移動させる。こうして移動機構44は、モータ46が作動することにより第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を灯具前後方向に移動させる。
【0027】
車両用前照灯10が搭載される車両には、電子制御部50が設けられる。電子制御部50は、モータ46の作動を制御することにより、第1リフレクタ28および第2リフレクタ30の灯具前後方向への移動を制御する。
【0028】
図1(a)は、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を、各々の反射光による個別配光パターンの形成が可能となる位置まで進出させたときの図である。以下、このときの第1リフレクタ28および第4リフレクタ34の位置を「進出位置」という。一方、図1(b)は、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を、各々による個別配光パターンの形成を回避させる位置まで退避させたときの図である。以下、このときの第1リフレクタ28および第4リフレクタ34の位置を「退避位置」という。
【0029】
このように移動機構44は、第2リフレクタ群42のうち第1リフレクタ28を、および第2リフレクタ群42のうち第4リフレクタ34を、それぞれによる個別配光パターンの形成を回避させるよう同時且つ一体的に移動させるよう設けられる。
【0030】
第1の実施形態では、移動機構44は、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を退避位置に移動させることにより、第2リフレクタ30によって第1半導体発光素子22からの光が遮光される領域に第1リフレクタ28を移動させるとと同時に、第3リフレクタ32によって第2半導体発光素子24から光が遮光される領域に第4リフレクタ34を移動させる。これにより、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34への光の到達を阻止する遮光部材を別途設ける場合に比べて設ける部材を削減することができ、車両用前照灯10の構成を簡素にすることができる。なお、第1半導体発光素子22からの第1リフレクタ28への光の到達阻止方法、および第2半導体発光素子24からの第4リフレクタ34への光の到達阻止方法がこれに限られないことは勿論であり、例えば別途遮光部材を設け、この遮光部材によって光が遮光される領域に第1リフレクタ28および第4リフレクタ34の各々を退避させてもよい。
【0031】
第1リフレクタ群40に3つ以上のリフレクタが設けられ、第2リフレクタ群42に3つ以上のリフレクタが設けられてもよい。これにより、ハイビーム用配光パターンを水平方向により細かく分割することができる。このとき移動機構は、第1リフレクタ群40の少なくとも1つのリフレクタ、および第2リフレクタ群42の少なくとも1つのリフレクタを、それぞれによる個別配光パターンの形成を回避させるよう同時且つ一体的に移動可能に設けられる。
【0032】
例えば、移動機構は、第1リフレクタ群40のうちV−V線に最も近い個別配光パターンを形成する第1のリフレクタと、第2リフレクタ群42のうちV−V線に最も近い個別配光パターンを形成する第2のリフレクタとを、それぞれの個別配光パターンの形成を回避させるよう同時且つ一体的に移動可能に設けられてもよい。さらに、別の移動機構が設けられてもよい。この別の移動機構は、第1リフレクタ群40のうちV−V線に次に近い個別配光パターンを形成する第3のリフレクタと、第2リフレクタ群42のうちV−V線に次に近い個別配光パターンを形成する第4のリフレクタとを、それぞれの個別配光パターンの形成を回避させるよう同時に移動可能に設けられてもよい。これにより、例えば第1および第2のリフレクタのみを退避位置に移動させることにより、V−V線周辺の狭い領域に対し光を非照射とすることができる。また、さらに第3および第4のリフレクタを退避位置に移動させることにより、第1および第2のリフレクタのみを退避位置に移動させたときよりも水平方向に広い領域に対し光を非照射とすることができる。
【0033】
図2は、車両用前照灯10によって形成されるハイビーム用配光パターンPHを示す図である。本図は、車両用前照灯10から25m灯具前方に設けられた仮想鉛直スクリーンに投影されたハイビーム用配光パターンPHを、仮想鉛直スクリーンの裏側から灯具後方に向かって見た図を示している。したがって図2の右方向は灯具左方向となり、図2の左方向は灯具右方向となる。以下においても、「右」は灯具前方に向いて右を示し、「左」は灯具前方に向いて左をいうものとする。ハイビーム用配光パターンPHは、水平線(H−H線)よりもわずかに下方からH−H線よりも上方の所定高さまでの高さ方向の幅で、車両用前照灯10の灯具前方正面の鉛直線(V−V線)を挟んで左右同一長さにわたって水平方向に延在するよう形成される。
【0034】
第1リフレクタ28は、第1半導体発光素子22が発する光を反射して第1個別配光パターンPH1を形成する。第2リフレクタ30は、第1半導体発光素子22が発する光を反射して第2個別配光パターンPH2を形成する。第2リフレクタ30は、第2半導体発光素子24が発する光を反射して第3個別配光パターンPH3を形成する。第4リフレクタ34は、第2半導体発光素子24が発する光を反射して第4個別配光パターンPH4を形成する。こうして第1リフレクタ28〜第4リフレクタ34は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24からの光を各々が反射して、互いに隣接して水平方向に並ぶ第1個別配光パターンPH1〜第4個別配光パターンPH4の各々を形成する。ハイビーム用配光パターンPHは、第1個別配光パターンPH1〜第4個別配光パターンPH4が隣接して組み合わされることにより形成される。
【0035】
具体的には、第1個別配光パターンPH1〜第4個別配光パターンPH4の各々は矩形に形成され、水平方向に並ぶよう形成される。第1個別配光パターンPH1は、V−V線よりわずかに左から、V−V線より所定幅だけ右に延びるよう形成される。第4個別配光パターンPH4は、V−V線よりわずかに右からV−V線より所定幅だけ左に伸びるよう形成される。このため第1個別配光パターンPH1と第4個別配光パターンPH4とはV−V線周辺で互いに重複する。
【0036】
第2個別配光パターンPH2は、左端部が第1個別配光パターンPH1の右端部と互いにオーバーラップするよう、第1個別配光パターンPH1の右側に隣接して形成される。第3個別配光パターンPH3は、右端部が第4個別配光パターンPH4の左端部と互いにオーバーラップするよう、第4個別配光パターンPH4の左側に隣接して形成される。第1個別配光パターンPH1〜第4個別配光パターンPH4の各々は、H−H線よりわずかに下方から、H−H線より上方の所定高さまでの高さ方向の幅を有する。こうして第1個別配光パターンPH1〜第4個別配光パターンPH4が隣接して組み合わされることによりハイビーム用配光パターンPHが形成される。
【0037】
第1リフレクタ28および第2リフレクタ30は、第1半導体発光素子22において矩形に形成された発光面の縁部の反射像で、鉛直方向に伸びる縦カットオフラインを第1個別配光パターンPH1および第2個別配光パターンPH2の各々に設ける。第3リフレクタ32および第4リフレクタ34は、第2半導体発光素子24において矩形に形成された発光面の縁部の反射像で、鉛直方向に伸びる縦カットオフラインを第3個別配光パターンPH3および第4個別配光パターンPH4の各々に設ける。このように発光面の縁部を利用して縦カットオフラインを形成することにより、第1個別配光パターンPH1〜ハイビーム用配光パターンPHのいずれかを非形成としたときに、光が照射されない非照射領域の境界線を縦カットオフラインで明確に表すことができる。
【0038】
以下、第1個別配光パターンPH1の灯具左側の縦カットオフラインを第1縦カットオフラインa、第4個別配光パターンPH4の灯具右側の縦カットオフラインを第2縦カットオフラインb、第2個別配光パターンPH2の灯具左側の縦カットオフラインを第3縦カットオフラインc、および第3個別配光パターンPH3の灯具右側の縦カットオフラインを第4縦カットオフラインdとして説明する。
【0039】
上述のように移動機構44は、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を、各々による第1個別配光パターンPH1および第4個別配光パターンPH4の形成を回避させるよう移動させる。このため、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34が退避位置に移動すると、第1個別配光パターンPH1および第4個別配光パターンPH4が形成されず、第2個別配光パターンPH2および第3個別配光パターンPH3のみが形成される。
【0040】
図3(a)は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の双方が点灯し、且つ第1リフレクタ28および第4リフレクタ34が進出位置にあるときの車両用前照灯10の上面図であり、図3(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。このとき第1個別配光パターンPH1〜第4個別配光パターンPH4はすべて形成され、ハイビーム用配光パターンPHが形成される。
【0041】
図4(a)は、第1半導体発光素子22は点灯しているが第2半導体発光素子24が消灯され、且つ第1リフレクタ28および第4リフレクタ34が進出位置にあるときの車両用前照灯10の上面図であり、図4(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【0042】
この場合、第3個別配光パターンPH3および第4個別配光パターンPH4が非形成となり、第1個別配光パターンPH1および第2個別配光パターンPH2が形成される。したがって、第1縦カットオフラインaより灯具右側には光が照射される照射領域が設けられるが、第1縦カットオフラインaより灯具左側には光が非照射となる非照射領域が設けられる。
【0043】
なお、これとは逆に、第2半導体発光素子24は点灯しているが第1半導体発光素子22が消灯され、且つ第1リフレクタ28および第4リフレクタ34が進出位置にあるとき、第1個別配光パターンPH1および第2個別配光パターンPH2が非形成となり、第3個別配光パターンPH3および第4個別配光パターンPH4が形成される。したがって、第2縦カットオフラインbより灯具左側には光が照射される照射領域が設けられるが、第2縦カットオフラインbより灯具右側には光が非照射となる非照射領域が設けられる。
【0044】
図5(a)は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の双方が点灯し、且つ第1リフレクタ28および第4リフレクタ34が退避位置にあるときの車両用前照灯10の上面図であり、図5(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。このとき、第2個別配光パターンPH2および第3個別配光パターンPH3は形成されるが、V−V線周辺の第1個別配光パターンPH1および第4個別配光パターンPH4は非形成となる。したがって、第3縦カットオフラインcと第4縦カットオフラインdの間の領域は、光が照射されない非照射領域となる。
【0045】
図6は、車両用前照灯10による配光の形成を制御する配光制御システム48の構成を模式的に示すブロック図である。配光制御システム48は、電子制御部50、カメラ52、第1半導体発光素子22、第2半導体発光素子24、およびモータ46を有する。電子制御部50は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMを有する。図6において電子制御部50には、CPU、ROM、RAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックが描かれている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組合せによって様々な形で実現することができる。
【0046】
カメラ52は、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのイメージセンサを含み、画像を撮像して画像データを出力する。カメラ52は、例えば車両の客室内におけるフロントガラスの上部に対向する位置に設けられ、車両前方を撮像することにより、車両前方に存在する前走車や歩行者など、グレアの付与を回避すべき対象物(以下、単に「対象物」という)を検知する。したがってカメラ52は、対象物の存在を検知する検知手段として機能する。
【0047】
電子制御部50は車両内部に設けられ、カメラ52に接続されている。電子制御部50は、信号取得部54および信号出力部56を有する。カメラ52は、グレアの付与を回避すべき前走車や歩行者などの対象物の存在を検知する検知手段として機能する。信号取得部54は、カメラ52から対象物の存在を検知するための検知信号として利用するため、カメラ52によって出力された画像データを取得する。信号出力部56は、取得された画像データを利用して、対象物の位置を特定する。このような対象物位置特定方法は公知であるため説明を省略する。
【0048】
信号出力部56は、モータ46に制御信号を出力することにより、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を進出位置に進出させ、または退避位置に退避させる。また、信号出力部56は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24に点灯信号または消灯信号を出力する。第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の各々と電子制御部50との間には、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24への電力供給を制御することにより点灯、消灯を制御する駆動回路(図示せず)が設けられている。駆動回路は、第1半導体発光素子22への点灯信号が入力された場合に第1半導体発光素子22を点灯させ、第1半導体発光素子22への消灯信号が入力された場合に第1半導体発光素子22を消灯させる。また、駆動回路は、第2半導体発光素子24への点灯信号が入力された場合に第2半導体発光素子24を点灯させ、第2半導体発光素子24への消灯信号が入力された場合に第2半導体発光素子24を消灯させる。
【0049】
信号出力部56は、検知された対象物の位置が第1個別配光パターンPH1または第4個別配光パターンPH4の内部にある場合、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を退避位置に移動させるよう移動機構44のモータ46に制御信号を出力する。これにより、その第1リフレクタ28および第4リフレクタ34による第1個別配光パターンPH1および第4個別配光パターンPH4の形成を回避させる。具体的には、検知された対象物の位置が第3縦カットオフラインcと第4縦カットオフラインdとの間にある場合、信号出力部56は、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を退避位置に移動させるよう移動機構44のモータ46に制御信号を出力する。
【0050】
検知された対象物の位置が第3個別配光パターンPH3の内部にある場合、信号出力部56は、第2半導体発光素子24を消灯させて、第3個別配光パターンPH3および第4個別配光パターンPH4の形成を回避させる。具体的には、検知された対象物の位置が第4縦カットオフラインdよりも灯具左側にある場合、信号出力部56は、第2半導体発光素子24を消灯させる。
【0051】
検知された対象物の位置が第2個別配光パターンPH2の内部にある場合、信号出力部56は、第1半導体発光素子22を消灯させて、第1個別配光パターンPH1および第2個別配光パターンPH2の形成を回避させる。具体的には、検知された対象物の位置が第3縦カットオフラインcよりも灯具右側にある場合、信号出力部56は、第1半導体発光素子22を消灯させる。
【0052】
なお、例えば検知された対象物が第1縦カットオフラインaと第4縦カットオフラインdとの間にある場合、第1リフレクタ28と第4リフレクタ34とを退避位置に移動させて第1個別配光パターンPH1および第4個別配光パターンPH4を非形成とすることによりその対象物へのグレアの付与を回避できる。しかし、第2半導体発光素子24を消灯させて第3個別配光パターンPH3および第4個別配光パターンPH4を非形成とすることによっても、その対象物へのグレアの付与を回避できる。このような場合、信号出力部56は、検知された対象物の移動方向に応じて、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を退避位置に退避させるか、第2半導体発光素子24を消灯させるかを選択してもよい。
【0053】
具体的には、信号出力部56は、カメラ52から取得した画像データを利用して、対象物の移動方向も検出する。このような移動方向の検出方法は公知であることから説明を省略する。例えば検知された対象物の位置が第1縦カットオフラインaと第4縦カットオフラインdとの間にあり、且つその対象物が灯具左方向に移動している場合、その対象物は第3個別配光パターンPH3の内部にその後進行する可能性が高い。このため信号出力部56は、この場合に、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を進出位置に停止させたまま、消灯信号を第2半導体発光素子24に出力して第2半導体発光素子24を消灯させる。これにより、対象物がその内部に現在位置している第4個別配光パターンPH4と、今後その内部への進行が予想される第4個別配光パターンPH4とを非形成とすることができる。
【0054】
一方、検知された対象物の位置が第1縦カットオフラインaと第4縦カットオフラインdとの間にあり、且つその対象物が灯具右方向に移動している場合、その対象物は第1個別配光パターンPH1の内部にその後進行する可能性が高い。このため信号出力部56は、この場合に第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24を点灯させたまま、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を退避位置に移動させる。これにより、対象物がその内部に現在位置している第4個別配光パターンPH4と、今後その内部への進行が予想される第1個別配光パターンPH1とを非形成とすることができる。
【0055】
さらに、例えば検知された対象物が第2縦カットオフラインbと第3縦カットオフラインcとの間にある場合、第1リフレクタ28と第4リフレクタ34とを退避位置に移動させて第1個別配光パターンPH1および第4個別配光パターンPH4を非形成とすることによりその対象物へのグレアの付与を回避できる。しかし、第1半導体発光素子22を消灯させて第1個別配光パターンPH1および第2個別配光パターンPH2非形成とすることによっても、その対象物へのグレアの付与を回避できる。このような場合も、信号出力部56は、検知された対象物の移動方向に応じて、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を退避位置に退避させるか、第1半導体発光素子22を消灯させるかを選択してもよい。
【0056】
具体的には、例えば検知された対象物の位置が第2縦カットオフラインbと第3縦カットオフラインcとの間にあり、且つその対象物が灯具右方向に移動している場合、その対象物は第2個別配光パターンPH2の内部にその後進行する可能性が高い。このため信号出力部56は、この場合に、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を進出位置に停止させたまま、消灯信号を第1半導体発光素子22に出力して第1半導体発光素子22を消灯させる。これにより、対象物がその内部に現在位置している第1個別配光パターンPH1と、今後その内部への進行が予想される第2個別配光パターンPH2とを非形成とすることができる。
【0057】
一方、検知された対象物の位置が第2縦カットオフラインbと第3縦カットオフラインcとの間にあり、且つその対象物が灯具左方向に移動している場合、その対象物は第4個別配光パターンPH4の内部にその後進行する可能性が高い。このため信号出力部56は、この場合に第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24を点灯させたまま、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を退避位置に移動させる。これにより、対象物がその内部に現在位置している第1個別配光パターンPH1と、今後その内部への進行が予想される第4個別配光パターンPH4とを非形成とすることができる。
【0058】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る車両用前照灯100の上面図である。図2は、灯具前方が図2の下方を向くよう図示されている。したがって、図2における右方向が灯具左方向となり、図2における左方向が灯具右方向となる。以下、第1の実施形態と同様の個所は同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
車両用前照灯100は、光源ユニット12およびリフレクタユニット102を有する。リフレクタユニット102は、第1リフレクタ28、第2リフレクタ30、第3リフレクタ32、第4リフレクタ34、第1移動機構110、および第2移動機構112を有する。
【0060】
第1移動機構110は、ガイドロッド120、伝達機構122、および第1モータ124を有する。ガイドロッド120は、一端が第1リフレクタ28に連結され、灯具前後方向に延在するよう配置される。ガイドロッド120にはラックギヤ(図示せず)が設けられている。伝達機構122はギヤなどを有し、第1モータ124の回転軸の回転をガイドロッド120のラックギヤに伝達して第1リフレクタ28を灯具前後方向に移動させる。
【0061】
第2移動機構112は、ガイドロッド130、伝達機構132、および第2モータ134を有する。ガイドロッド130は、一端が第4リフレクタ34に連結され、灯具前後方向に延在するよう配置される。ガイドロッド130にはラックギヤ(図示せず)が設けられている。伝達機構132はギヤなどを有し、第2モータ134の回転軸の回転をガイドロッド130のラックギヤに伝達して第4リフレクタ34を灯具前後方向に移動させる。なお、第1移動機構110および第2移動機構112の構成がこれに限られないことは勿論であり、例えばラックギヤに代えてボールネジが用いられるなど、第1リフレクタ28または第4リフレクタ34を移動させるための他の構成が用いられてもよい。
【0062】
以下、第1個別配光パターンPH1を形成可能に進出した第1リフレクタ28の位置、および第4個別配光パターンPH4を形成可能に進出した第4リフレクタ34の位置を、それぞれ「進出位置」という。また、第1個別配光パターンPH1の形成を回避するるよう退避した第1リフレクタ28の位置、および第4個別配光パターンPH4の形成を回避するよう退避した第4リフレクタ34の位置を、それぞれ「退避位置」という。
【0063】
車両用前照灯10が搭載される車両には、電子制御部150が設けられる。電子制御部50は、第1モータ124の作動を制御することにより、第1リフレクタ28を進出位置と退避位置との間で移動させる。また、電子制御部150は、第2モータ134の作動を制御することにより、第4リフレクタ34を進出位置と退避位置との間で移動させる。
【0064】
なお、第2の実施形態においても、第1リフレクタ群40に3つ以上のリフレクタが設けられ、第2リフレクタ群42に3つ以上のリフレクタが設けられてもよい。このとき第1リフレクタ群40の少なくとも1つのリフレクタ、および第2リフレクタ群42の少なくとも1つのリフレクタを、それぞれによる個別配光パターンの形成を回避させるよう個別に移動させることができるよう、移動可能なリフレクタの各々に移動機構が設けらてもよい。
【0065】
図8(a)は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の双方が点灯し、且つ第1リフレクタ28および第4リフレクタ34が進出位置にあるときの車両用前照灯10の上面図であり、図3(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。このとき第1個別配光パターンPH1〜第4個別配光パターンPH4はすべて形成され、ハイビーム用配光パターンPHが形成される。
【0066】
図9(a)は、第1半導体発光素子22は点灯しているが第2半導体発光素子24が消灯され、且つ第1リフレクタ28および第4リフレクタ34が進出位置にあるときの車両用前照灯10の上面図であり、図9(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。この場合、第3個別配光パターンPH3および第4個別配光パターンPH4が非形成となり、第1個別配光パターンPH1および第2個別配光パターンPH2が形成される。したがって、第1縦カットオフラインaより灯具右側には光が照射される照射領域が設けられるが、第1縦カットオフラインaより灯具左側には光が非照射となる非照射領域が設けられる。
【0067】
図10(a)は、第2半導体発光素子24は点灯しているが第1半導体発光素子22が消灯され、且つ第1リフレクタ28および第4リフレクタ34が進出位置にあるときの車両用前照灯10の上面図であり、図10(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。このとき、第1個別配光パターンPH1および第2個別配光パターンPH2が非形成となり、第3個別配光パターンPH3および第4個別配光パターンPH4が形成される。したがって、第2縦カットオフラインbより灯具左側には光が照射される照射領域が設けられるが、第2縦カットオフラインbより灯具右側には光が非照射となる非照射領域が設けられる。
【0068】
図11(a)は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の双方が点灯し、且つ第1リフレクタ28が退避位置にあり、第4リフレクタ34が進出位置にあるときの車両用前照灯10の上面図であり、図11(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。このとき、第2個別配光パターンPH2、第3個別配光パターンPH3、第4個別配光パターンPH4は形成されるが、第1個別配光パターンPH1は非形成となる。このため、第2縦カットオフラインbと第3縦カットオフラインcとの間の領域は、光が照射されない非照射領域となる。
【0069】
図12(a)は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の双方が点灯し、且つ第1リフレクタ28が進出位置にあり、第4リフレクタ34が退避位置にあるときの車両用前照灯10の上面図であり、図12(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。このとき、第1個別配光パターンPH1、第2個別配光パターンPH2、および第3個別配光パターンPH3は形成されるが、第4個別配光パターンPH4は非形成となる。このため、第1縦カットオフラインaと第4縦カットオフラインdとの間の領域は、光が照射されない非照射領域となる。
【0070】
図13(a)は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の双方が点灯し、且つ第1リフレクタ28および第4リフレクタ34が退避位置にあるときの車両用前照灯10の上面図であり、図13(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。このとき、第2個別配光パターンPH2および第3個別配光パターンPH3は形成されるが、V−V線周辺の第1個別配光パターンPH1および第4個別配光パターンPH4は非形成となる。したがって、第3縦カットオフラインcと第4縦カットオフラインdの間の領域は、光が照射されない非照射領域となる。
【0071】
図14は、車両用前照灯100による配光の形成を制御する配光制御システム140の構成を模式的に示すブロック図である。配光制御システム140は、電子制御部150、カメラ52、第1半導体発光素子22、第2半導体発光素子24、第1モータ124、および第2モータ134を有する。電子制御部150は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMを有する。図14において電子制御部150には、CPU、ROM、RAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックが描かれている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組合せによって様々な形で実現することができる。
【0072】
電子制御部150は車両内部に設けられ、カメラ52に接続されている。電子制御部150は、信号取得部154および信号出力部156を有する。カメラ52は、グレアの付与を回避すべき前走車や歩行者などの対象物の存在を検知する検知手段として機能する。信号取得部154は、カメラ52から対象物の存在を検知するための検知信号として利用するため、カメラ52によって出力された画像データを取得する。信号出力部156は、取得された画像データを利用して、対象物の位置を特定する。このような対象物位置特定方法は公知であるため説明を省略する。
【0073】
信号出力部156は、第1モータ124に制御信号を出力することにより、第1リフレクタ28を進出位置に進出させ、または退避位置に退避させる。また、信号出力部156は、第2モータ134に制御信号を出力することにより、第4リフレクタ34を進出位置に進出させ、または退避位置に退避させる。さらに、信号出力部156は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24に点灯信号または消灯信号を出力する。第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の各々と電子制御部150との間に第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の点灯、消灯を制御する駆動回路(図示せず)が設けられている点などは第1の実施形態と同様である。
【0074】
検知された対象物の位置が第1個別配光パターンPH1の内部にある場合、信号出力部156は、第1リフレクタ28を退避位置に移動させるよう第1移動機構110の第1モータ124に制御信号を出力する。具体的には、信号出力部156は、検知された対象物の位置が第1縦カットオフラインaと第3縦カットオフラインcとの間にある場合、第1リフレクタ28を退避位置に移動させるよう第1モータ124に制御信号を出力し、第1個別配光パターンPH1の形成を回避する。
【0075】
検知された対象物の位置が第4個別配光パターンPH4の内部にある場合、信号出力部156は、第4リフレクタ34を退避位置に移動させるよう第2移動機構112の第2モータ134に制御信号を出力する。具体的には、信号出力部156は、検知された対象物の位置が第2縦カットオフラインbと第4縦カットオフラインdとの間にある場合、第1リフレクタ28を退避位置に移動させるよう第1モータ124に制御信号を出力し、第1個別配光パターンPH1の形成を回避する。したがって、検知された対象物が第1縦カットオフラインaと第2縦カットオフラインbとの間にある場合、信号出力部156は、第1リフレクタ28と第4リフレクタ34の双方を退避位置に移動させる。
【0076】
また、検知された対象物の位置が第3個別配光パターンPH3の内部、すなわち第4縦カットオフラインdより灯具左側にある場合、信号出力部156は、第2半導体発光素子24を消灯させて、第3個別配光パターンPH3および第4個別配光パターンPH4の形成を回避させる。検知された対象物の位置が第2個別配光パターンPH2の内部、すなわち第3縦カットオフラインcより灯具右側にある場合、信号出力部156は、第1半導体発光素子22を消灯させて、第1個別配光パターンPH1および第2個別配光パターンPH2の形成を回避させる。
【0077】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、第1の実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を第1の実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0078】
10 車両用前照灯、 20 支持部材、 22 第1半導体発光素子、 24 第2半導体発光素子、 28 第1リフレクタ、 30 第2リフレクタ、 32 第3リフレクタ、 34 第4リフレクタ、 40 第1リフレクタ群、 42 第2リフレクタ群、 44 移動機構、 50 電子制御部、 52 カメラ、 54 信号取得部、 56 信号出力部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯およびその制御装置に関し、特に理触れリフレクタを備えた車両用前照灯およびその制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
夜間に車で走行するときは、通常は水平線より下方にロービームを照射して路面を照らして走行し、必要に応じて水平線より上方にハイビームを照射して前方を確認しながら走行する。ここで、水平線より上方に光を照射すると、前走車の運転者や車両前方にいる歩行者にグレアを与えるおそれがあるため、例えば、前走車の存在有無を検出し、検出結果に応じて一方向を減光するよう調光し、これによって減光した光を他の方向へ照射する車両用前照灯装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−81337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の特許文献1に記載される車両用前照灯装置では、投影レンズを介して車両前方に光を照射している。しかしながら、このように投影レンズを用いる方式では、灯具の前後方向における長さを抑制することは困難である。また、上述の特許文献1に記載されるような液晶調光板は一般的に高価であり、コストの点で改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、灯具のサイズやコストを抑制しつつ、前走車などの対象物へのグレアの付与を回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用前照灯は、光源を支持する支持部材と、光源からの光を各々が反射して、互いに隣接して水平方向に並ぶ複数の個別配光パターンの各々を形成する複数のリフレクタと、複数のリフレクタの少なくとも1つを、そのリフレクタによる個別配光パターンの形成を回避させるよう移動させる移動機構と、を備える。
【0007】
この態様によれば、リフレクタの移動という簡易な方法により、そのリフレクタによる個別配光パターンの形成を回避させることができる。このため、簡素な構成で前走車などの対象物へのグレアの付与を回避することができる。
【0008】
光源は、縁部を有する発光面が設けられ、複数のリフレクタの各々は、発光面の縁部の反射像で、鉛直方向に延びる縦カットオフラインを個別配光パターンに設ける。
【0009】
この態様によれば、例えばシェードなどを用いて縦カットオフラインを設ける場合に比べ、光源が発する光を有効に利用して個別配光パターンを形成することができる。また、簡素な構成で縦カットオフラインを形成することができる。
【0010】
移動機構は、複数のリフレクタのうち、移動対象のリフレクタを、他のリフレクタによって光源からの光が遮光される領域に移動させることにより、移動対象のリフレクタによる個別配光パターンの形成を回避させてもよい。
【0011】
この態様によれば、光源からの光が遮光される領域を設けるための別の部材を配置する場合などに比べて部材の追加を必要としないため、簡素な構成で、移動させたリフレクタによる個別配光パターンの形成を回避することができる。
【0012】
支持部材は、第1の光源および第2の光源を支持し、複数のリフレクタは、第1の光源からの光を各々が反射してそれぞれに対応する個別配光パターンを形成する第1のリフレクタ群と、第2の光源からの光を各々が反射してそれぞれに対応する個別配光パターンを形成する第2のリフレクタ群と、を有してもよい。移動機構は、第1のリフレクタ群の少なくとも1つのリフレクタ、および第2のリフレクタ群の少なくとも1つのリフレクタを、それぞれによる個別配光パターンの形成を回避させるよう移動可能に設けられてもよい。
【0013】
この態様によれば、例えば、第1の光源および第2の光源の点灯、消灯、およびリフレクタの移動を組み合わせることにより、様々な種類の配光パターンを形成することができる。このため、対象物の位置や移動などに合わせた配光パターンの形成が可能となる。
【0014】
本発明の別の態様は、車両用前照灯の制御装置である。この装置は、グレアの付与を回避すべき対象物の存在を検知する検知手段から検知信号を取得する信号取得部と、光源を支持する光源支持部と、光源からの光を各々が反射して、互いに隣接して水平方向に並ぶ複数の個別配光パターンの各々を形成する複数のリフレクタと、複数のリフレクタの少なくとも1つを、そのリフレクタによる個別配光パターンの形成を回避させるよう移動させる移動機構と、を有する車両用前照灯に対し、複数のリフレクタのうち、検知された対象物が個別配光パターン内に含まれるリフレクタを移動させるよう移動機構のアクチュエータに制御信号を出力することにより、そのリフレクタによる個別配光パターンの形成を回避させる信号出力部と、を備える。
【0015】
この態様によれば、対象物の位置に合わせて、その対象物に向けて光を反射するリフレクタを移動させ、そのリフレクタによる個別配光パターンの形成を回避することができる。このため、対象物へのグレアの付与を適切に回避できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、灯具のサイズやコストを抑制しつつ、前走車などの対象物へのグレアの付与を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)および(b)は、第1の実施形態に係る車両用前照灯の上面図である。
【図2】車両用前照灯によって形成されるハイビーム用配光パターンを示す図である。
【図3】(a)は、第1半導体発光素子および第2半導体発光素子の双方が点灯し、且つ第1リフレクタおよび第4リフレクタが進出位置にあるときの車両用前照灯の上面図であり、(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【図4】(a)は、第1半導体発光素子は点灯しているが第2半導体発光素子が消灯され、且つ第1リフレクタおよび第4リフレクタが進出位置にあるときの車両用前照灯の上面図であり、(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【図5】(a)は、第1半導体発光素子および第2半導体発光素子の双方が点灯し、且つ第1リフレクタおよび第4リフレクタが退避位置にあるときの車両用前照灯の上面図であり、(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【図6】車両用前照灯による配光の形成を制御する配光制御システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【図7】第2の実施形態に係る車両用前照灯の上面図である。
【図8】(a)は、第1半導体発光素子および第2半導体発光素子の双方が点灯し、且つ第1リフレクタおよび第4リフレクタが進出位置にあるときの車両用前照灯の上面図であり、(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【図9】(a)は、第1半導体発光素子は点灯しているが第2半導体発光素子が消灯され、且つ第1リフレクタおよび第4リフレクタが進出位置にあるときの車両用前照灯の上面図であり、(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【図10】(a)は、第2半導体発光素子点灯しているが第1半導体発光素子が消灯され、且つ第1リフレクタおよび第4リフレクタが進出位置にあるときの車両用前照灯の上面図であり、(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【図11】(a)は、第1半導体発光素子および第2半導体発光素子の双方が点灯し、且つ第1リフレクタが退避位置にあり、第4リフレクタが進出位置にあるときの車両用前照灯の上面図であり、(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【図12】(a)は、第1半導体発光素子および第2半導体発光素子の双方が点灯し、且つ第1リフレクタが進出位置にあり、第4リフレクタが退避位置にあるときの車両用前照灯の上面図であり、(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【図13】(a)は、第1半導体発光素子および第2半導体発光素子の双方が点灯し、且つ第1リフレクタおよび第4リフレクタが退避位置にあるときの車両用前照灯の上面図であり、(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【図14】車両用前照灯による配光の形成を制御する配光制御システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1(a)および図1(b)は、第1の実施形態に係る車両用前照灯10の上面図である。図1(a)および図1(b)は、灯具前方が図1(a)および図1(b)の各々において下方を向くよう図示されている。したがって、図1(a)および図1(b)の各々における右方向が灯具左方向となり、図1(a)および図1(b)の各々における左方向が灯具右方向となる。以下、「右」は灯具前方に向いて右を示し、「左」は灯具前方に向いて左をいうものとする。
【0020】
車両用前照灯10は、光源ユニット12、およびリフレクタユニット14を有する。光源ユニット12は、支持部材20、第1の光源である第1半導体発光素子22、および第2の光源である第2半導体発光素子24を有する。第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24には、LED(Light Emitting Diode)が採用されており、青色光を発する青色LEDを、青色光を黄色光に変換する蛍光体で覆うことによって白色光を発するよう設けられている。第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24は、同一形状の矩形の発光面を有する同一形状に形成されている。なお、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24は互いに異なる形状でもよく、また、矩形以外の他の形状の発光面を有していたもよい。また、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24に代えて、白熱灯や放電灯など他の種類の光源が採用されてもよい。
【0021】
支持部材20は板状に形成され、第1面で第1半導体発光素子22を支持し、第1面と反対側の第2面で第2半導体発光素子24を支持する。したがって支持部材20は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24を、各々の発光面が互いに反対方向に向くよう支持する。なお、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の支持形態がこれに限られないことは勿論であり、支持部材20は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24を、各々の発光面が非同一方向且つ互いに180°を除く角度を向くよう支持してもよい。
【0022】
支持部材20は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の各々が発する熱を回収して放熱する放熱部材として機能する。また、支持部材20は、第1半導体発光素子22が発する光と第2半導体発光素子24が発する光とを互いに区分ける様に遮光する遮光部材としても機能する。
【0023】
支持部材20は、鉛直方向および灯具前後方向に延在するよう配置される。第1半導体発光素子22は、発光面が右方向を向くよう支持部材20の右側面上に取り付けられる。第2半導体発光素子24は、発光面が左方向を向くよう支持部材20の左側面上に取り付けられる。
【0024】
リフレクタユニット14は、第1リフレクタ28、第2リフレクタ30、第3リフレクタ32、第4リフレクタ34、連結部材36、ガイドロッド37、および移動機構44を有する。第1リフレクタ28および第2リフレクタ30は、第1半導体発光素子22の灯具右側に配置され、第1半導体発光素子22が発する光を灯具前方に反射する。第2リフレクタ30は、第1リフレクタ28よりも支持部材20に近い位置且つ第1リフレクタ28よりも灯具後方に配置される。以下、第1リフレクタ28および第2リフレクタ30を適宜「第1リフレクタ群40」という。第3リフレクタ32および第4リフレクタ34は、第2半導体発光素子24の灯具左側に配置され、第2半導体発光素子24が発する光を灯具前方に反射する。第3リフレクタ32は、第4リフレクタ34よりも支持部材20に近い位置且つ第4リフレクタ34よりも灯具後方に配置される。以下、第3リフレクタ32および第4リフレクタ34を適宜「第2リフレクタ群42」という。
【0025】
第1リフレクタ28および第4リフレクタ34は、連結部材36によって互いに連結されている。ガイドロッド37は灯具前後方向に延在し、灯具前方の端部が連結部材36に連結されている。この第1リフレクタ28、第4リフレクタ34、連結部材36、およびガイドロッド37によって可動リフレクタユニット38が構成される。可動リフレクタユニット38は、移動機構44によって灯具前後方向に移動可能に設けられている。
【0026】
具体的には、移動機構44は、モータ46、およびギヤなどによる伝達機構(図示せず)を有する。ガイドロッド37にはラックギヤが設けられており、伝達機構は、モータ46の回転軸の回転をこのラックギヤに伝達して可動リフレクタユニット38を灯具前後方向に移動させる。こうして移動機構44は、モータ46が作動することにより第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を灯具前後方向に移動させる。
【0027】
車両用前照灯10が搭載される車両には、電子制御部50が設けられる。電子制御部50は、モータ46の作動を制御することにより、第1リフレクタ28および第2リフレクタ30の灯具前後方向への移動を制御する。
【0028】
図1(a)は、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を、各々の反射光による個別配光パターンの形成が可能となる位置まで進出させたときの図である。以下、このときの第1リフレクタ28および第4リフレクタ34の位置を「進出位置」という。一方、図1(b)は、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を、各々による個別配光パターンの形成を回避させる位置まで退避させたときの図である。以下、このときの第1リフレクタ28および第4リフレクタ34の位置を「退避位置」という。
【0029】
このように移動機構44は、第2リフレクタ群42のうち第1リフレクタ28を、および第2リフレクタ群42のうち第4リフレクタ34を、それぞれによる個別配光パターンの形成を回避させるよう同時且つ一体的に移動させるよう設けられる。
【0030】
第1の実施形態では、移動機構44は、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を退避位置に移動させることにより、第2リフレクタ30によって第1半導体発光素子22からの光が遮光される領域に第1リフレクタ28を移動させるとと同時に、第3リフレクタ32によって第2半導体発光素子24から光が遮光される領域に第4リフレクタ34を移動させる。これにより、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34への光の到達を阻止する遮光部材を別途設ける場合に比べて設ける部材を削減することができ、車両用前照灯10の構成を簡素にすることができる。なお、第1半導体発光素子22からの第1リフレクタ28への光の到達阻止方法、および第2半導体発光素子24からの第4リフレクタ34への光の到達阻止方法がこれに限られないことは勿論であり、例えば別途遮光部材を設け、この遮光部材によって光が遮光される領域に第1リフレクタ28および第4リフレクタ34の各々を退避させてもよい。
【0031】
第1リフレクタ群40に3つ以上のリフレクタが設けられ、第2リフレクタ群42に3つ以上のリフレクタが設けられてもよい。これにより、ハイビーム用配光パターンを水平方向により細かく分割することができる。このとき移動機構は、第1リフレクタ群40の少なくとも1つのリフレクタ、および第2リフレクタ群42の少なくとも1つのリフレクタを、それぞれによる個別配光パターンの形成を回避させるよう同時且つ一体的に移動可能に設けられる。
【0032】
例えば、移動機構は、第1リフレクタ群40のうちV−V線に最も近い個別配光パターンを形成する第1のリフレクタと、第2リフレクタ群42のうちV−V線に最も近い個別配光パターンを形成する第2のリフレクタとを、それぞれの個別配光パターンの形成を回避させるよう同時且つ一体的に移動可能に設けられてもよい。さらに、別の移動機構が設けられてもよい。この別の移動機構は、第1リフレクタ群40のうちV−V線に次に近い個別配光パターンを形成する第3のリフレクタと、第2リフレクタ群42のうちV−V線に次に近い個別配光パターンを形成する第4のリフレクタとを、それぞれの個別配光パターンの形成を回避させるよう同時に移動可能に設けられてもよい。これにより、例えば第1および第2のリフレクタのみを退避位置に移動させることにより、V−V線周辺の狭い領域に対し光を非照射とすることができる。また、さらに第3および第4のリフレクタを退避位置に移動させることにより、第1および第2のリフレクタのみを退避位置に移動させたときよりも水平方向に広い領域に対し光を非照射とすることができる。
【0033】
図2は、車両用前照灯10によって形成されるハイビーム用配光パターンPHを示す図である。本図は、車両用前照灯10から25m灯具前方に設けられた仮想鉛直スクリーンに投影されたハイビーム用配光パターンPHを、仮想鉛直スクリーンの裏側から灯具後方に向かって見た図を示している。したがって図2の右方向は灯具左方向となり、図2の左方向は灯具右方向となる。以下においても、「右」は灯具前方に向いて右を示し、「左」は灯具前方に向いて左をいうものとする。ハイビーム用配光パターンPHは、水平線(H−H線)よりもわずかに下方からH−H線よりも上方の所定高さまでの高さ方向の幅で、車両用前照灯10の灯具前方正面の鉛直線(V−V線)を挟んで左右同一長さにわたって水平方向に延在するよう形成される。
【0034】
第1リフレクタ28は、第1半導体発光素子22が発する光を反射して第1個別配光パターンPH1を形成する。第2リフレクタ30は、第1半導体発光素子22が発する光を反射して第2個別配光パターンPH2を形成する。第2リフレクタ30は、第2半導体発光素子24が発する光を反射して第3個別配光パターンPH3を形成する。第4リフレクタ34は、第2半導体発光素子24が発する光を反射して第4個別配光パターンPH4を形成する。こうして第1リフレクタ28〜第4リフレクタ34は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24からの光を各々が反射して、互いに隣接して水平方向に並ぶ第1個別配光パターンPH1〜第4個別配光パターンPH4の各々を形成する。ハイビーム用配光パターンPHは、第1個別配光パターンPH1〜第4個別配光パターンPH4が隣接して組み合わされることにより形成される。
【0035】
具体的には、第1個別配光パターンPH1〜第4個別配光パターンPH4の各々は矩形に形成され、水平方向に並ぶよう形成される。第1個別配光パターンPH1は、V−V線よりわずかに左から、V−V線より所定幅だけ右に延びるよう形成される。第4個別配光パターンPH4は、V−V線よりわずかに右からV−V線より所定幅だけ左に伸びるよう形成される。このため第1個別配光パターンPH1と第4個別配光パターンPH4とはV−V線周辺で互いに重複する。
【0036】
第2個別配光パターンPH2は、左端部が第1個別配光パターンPH1の右端部と互いにオーバーラップするよう、第1個別配光パターンPH1の右側に隣接して形成される。第3個別配光パターンPH3は、右端部が第4個別配光パターンPH4の左端部と互いにオーバーラップするよう、第4個別配光パターンPH4の左側に隣接して形成される。第1個別配光パターンPH1〜第4個別配光パターンPH4の各々は、H−H線よりわずかに下方から、H−H線より上方の所定高さまでの高さ方向の幅を有する。こうして第1個別配光パターンPH1〜第4個別配光パターンPH4が隣接して組み合わされることによりハイビーム用配光パターンPHが形成される。
【0037】
第1リフレクタ28および第2リフレクタ30は、第1半導体発光素子22において矩形に形成された発光面の縁部の反射像で、鉛直方向に伸びる縦カットオフラインを第1個別配光パターンPH1および第2個別配光パターンPH2の各々に設ける。第3リフレクタ32および第4リフレクタ34は、第2半導体発光素子24において矩形に形成された発光面の縁部の反射像で、鉛直方向に伸びる縦カットオフラインを第3個別配光パターンPH3および第4個別配光パターンPH4の各々に設ける。このように発光面の縁部を利用して縦カットオフラインを形成することにより、第1個別配光パターンPH1〜ハイビーム用配光パターンPHのいずれかを非形成としたときに、光が照射されない非照射領域の境界線を縦カットオフラインで明確に表すことができる。
【0038】
以下、第1個別配光パターンPH1の灯具左側の縦カットオフラインを第1縦カットオフラインa、第4個別配光パターンPH4の灯具右側の縦カットオフラインを第2縦カットオフラインb、第2個別配光パターンPH2の灯具左側の縦カットオフラインを第3縦カットオフラインc、および第3個別配光パターンPH3の灯具右側の縦カットオフラインを第4縦カットオフラインdとして説明する。
【0039】
上述のように移動機構44は、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を、各々による第1個別配光パターンPH1および第4個別配光パターンPH4の形成を回避させるよう移動させる。このため、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34が退避位置に移動すると、第1個別配光パターンPH1および第4個別配光パターンPH4が形成されず、第2個別配光パターンPH2および第3個別配光パターンPH3のみが形成される。
【0040】
図3(a)は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の双方が点灯し、且つ第1リフレクタ28および第4リフレクタ34が進出位置にあるときの車両用前照灯10の上面図であり、図3(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。このとき第1個別配光パターンPH1〜第4個別配光パターンPH4はすべて形成され、ハイビーム用配光パターンPHが形成される。
【0041】
図4(a)は、第1半導体発光素子22は点灯しているが第2半導体発光素子24が消灯され、且つ第1リフレクタ28および第4リフレクタ34が進出位置にあるときの車両用前照灯10の上面図であり、図4(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。
【0042】
この場合、第3個別配光パターンPH3および第4個別配光パターンPH4が非形成となり、第1個別配光パターンPH1および第2個別配光パターンPH2が形成される。したがって、第1縦カットオフラインaより灯具右側には光が照射される照射領域が設けられるが、第1縦カットオフラインaより灯具左側には光が非照射となる非照射領域が設けられる。
【0043】
なお、これとは逆に、第2半導体発光素子24は点灯しているが第1半導体発光素子22が消灯され、且つ第1リフレクタ28および第4リフレクタ34が進出位置にあるとき、第1個別配光パターンPH1および第2個別配光パターンPH2が非形成となり、第3個別配光パターンPH3および第4個別配光パターンPH4が形成される。したがって、第2縦カットオフラインbより灯具左側には光が照射される照射領域が設けられるが、第2縦カットオフラインbより灯具右側には光が非照射となる非照射領域が設けられる。
【0044】
図5(a)は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の双方が点灯し、且つ第1リフレクタ28および第4リフレクタ34が退避位置にあるときの車両用前照灯10の上面図であり、図5(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。このとき、第2個別配光パターンPH2および第3個別配光パターンPH3は形成されるが、V−V線周辺の第1個別配光パターンPH1および第4個別配光パターンPH4は非形成となる。したがって、第3縦カットオフラインcと第4縦カットオフラインdの間の領域は、光が照射されない非照射領域となる。
【0045】
図6は、車両用前照灯10による配光の形成を制御する配光制御システム48の構成を模式的に示すブロック図である。配光制御システム48は、電子制御部50、カメラ52、第1半導体発光素子22、第2半導体発光素子24、およびモータ46を有する。電子制御部50は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMを有する。図6において電子制御部50には、CPU、ROM、RAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックが描かれている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組合せによって様々な形で実現することができる。
【0046】
カメラ52は、CCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのイメージセンサを含み、画像を撮像して画像データを出力する。カメラ52は、例えば車両の客室内におけるフロントガラスの上部に対向する位置に設けられ、車両前方を撮像することにより、車両前方に存在する前走車や歩行者など、グレアの付与を回避すべき対象物(以下、単に「対象物」という)を検知する。したがってカメラ52は、対象物の存在を検知する検知手段として機能する。
【0047】
電子制御部50は車両内部に設けられ、カメラ52に接続されている。電子制御部50は、信号取得部54および信号出力部56を有する。カメラ52は、グレアの付与を回避すべき前走車や歩行者などの対象物の存在を検知する検知手段として機能する。信号取得部54は、カメラ52から対象物の存在を検知するための検知信号として利用するため、カメラ52によって出力された画像データを取得する。信号出力部56は、取得された画像データを利用して、対象物の位置を特定する。このような対象物位置特定方法は公知であるため説明を省略する。
【0048】
信号出力部56は、モータ46に制御信号を出力することにより、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を進出位置に進出させ、または退避位置に退避させる。また、信号出力部56は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24に点灯信号または消灯信号を出力する。第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の各々と電子制御部50との間には、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24への電力供給を制御することにより点灯、消灯を制御する駆動回路(図示せず)が設けられている。駆動回路は、第1半導体発光素子22への点灯信号が入力された場合に第1半導体発光素子22を点灯させ、第1半導体発光素子22への消灯信号が入力された場合に第1半導体発光素子22を消灯させる。また、駆動回路は、第2半導体発光素子24への点灯信号が入力された場合に第2半導体発光素子24を点灯させ、第2半導体発光素子24への消灯信号が入力された場合に第2半導体発光素子24を消灯させる。
【0049】
信号出力部56は、検知された対象物の位置が第1個別配光パターンPH1または第4個別配光パターンPH4の内部にある場合、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を退避位置に移動させるよう移動機構44のモータ46に制御信号を出力する。これにより、その第1リフレクタ28および第4リフレクタ34による第1個別配光パターンPH1および第4個別配光パターンPH4の形成を回避させる。具体的には、検知された対象物の位置が第3縦カットオフラインcと第4縦カットオフラインdとの間にある場合、信号出力部56は、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を退避位置に移動させるよう移動機構44のモータ46に制御信号を出力する。
【0050】
検知された対象物の位置が第3個別配光パターンPH3の内部にある場合、信号出力部56は、第2半導体発光素子24を消灯させて、第3個別配光パターンPH3および第4個別配光パターンPH4の形成を回避させる。具体的には、検知された対象物の位置が第4縦カットオフラインdよりも灯具左側にある場合、信号出力部56は、第2半導体発光素子24を消灯させる。
【0051】
検知された対象物の位置が第2個別配光パターンPH2の内部にある場合、信号出力部56は、第1半導体発光素子22を消灯させて、第1個別配光パターンPH1および第2個別配光パターンPH2の形成を回避させる。具体的には、検知された対象物の位置が第3縦カットオフラインcよりも灯具右側にある場合、信号出力部56は、第1半導体発光素子22を消灯させる。
【0052】
なお、例えば検知された対象物が第1縦カットオフラインaと第4縦カットオフラインdとの間にある場合、第1リフレクタ28と第4リフレクタ34とを退避位置に移動させて第1個別配光パターンPH1および第4個別配光パターンPH4を非形成とすることによりその対象物へのグレアの付与を回避できる。しかし、第2半導体発光素子24を消灯させて第3個別配光パターンPH3および第4個別配光パターンPH4を非形成とすることによっても、その対象物へのグレアの付与を回避できる。このような場合、信号出力部56は、検知された対象物の移動方向に応じて、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を退避位置に退避させるか、第2半導体発光素子24を消灯させるかを選択してもよい。
【0053】
具体的には、信号出力部56は、カメラ52から取得した画像データを利用して、対象物の移動方向も検出する。このような移動方向の検出方法は公知であることから説明を省略する。例えば検知された対象物の位置が第1縦カットオフラインaと第4縦カットオフラインdとの間にあり、且つその対象物が灯具左方向に移動している場合、その対象物は第3個別配光パターンPH3の内部にその後進行する可能性が高い。このため信号出力部56は、この場合に、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を進出位置に停止させたまま、消灯信号を第2半導体発光素子24に出力して第2半導体発光素子24を消灯させる。これにより、対象物がその内部に現在位置している第4個別配光パターンPH4と、今後その内部への進行が予想される第4個別配光パターンPH4とを非形成とすることができる。
【0054】
一方、検知された対象物の位置が第1縦カットオフラインaと第4縦カットオフラインdとの間にあり、且つその対象物が灯具右方向に移動している場合、その対象物は第1個別配光パターンPH1の内部にその後進行する可能性が高い。このため信号出力部56は、この場合に第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24を点灯させたまま、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を退避位置に移動させる。これにより、対象物がその内部に現在位置している第4個別配光パターンPH4と、今後その内部への進行が予想される第1個別配光パターンPH1とを非形成とすることができる。
【0055】
さらに、例えば検知された対象物が第2縦カットオフラインbと第3縦カットオフラインcとの間にある場合、第1リフレクタ28と第4リフレクタ34とを退避位置に移動させて第1個別配光パターンPH1および第4個別配光パターンPH4を非形成とすることによりその対象物へのグレアの付与を回避できる。しかし、第1半導体発光素子22を消灯させて第1個別配光パターンPH1および第2個別配光パターンPH2非形成とすることによっても、その対象物へのグレアの付与を回避できる。このような場合も、信号出力部56は、検知された対象物の移動方向に応じて、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を退避位置に退避させるか、第1半導体発光素子22を消灯させるかを選択してもよい。
【0056】
具体的には、例えば検知された対象物の位置が第2縦カットオフラインbと第3縦カットオフラインcとの間にあり、且つその対象物が灯具右方向に移動している場合、その対象物は第2個別配光パターンPH2の内部にその後進行する可能性が高い。このため信号出力部56は、この場合に、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を進出位置に停止させたまま、消灯信号を第1半導体発光素子22に出力して第1半導体発光素子22を消灯させる。これにより、対象物がその内部に現在位置している第1個別配光パターンPH1と、今後その内部への進行が予想される第2個別配光パターンPH2とを非形成とすることができる。
【0057】
一方、検知された対象物の位置が第2縦カットオフラインbと第3縦カットオフラインcとの間にあり、且つその対象物が灯具左方向に移動している場合、その対象物は第4個別配光パターンPH4の内部にその後進行する可能性が高い。このため信号出力部56は、この場合に第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24を点灯させたまま、第1リフレクタ28および第4リフレクタ34を退避位置に移動させる。これにより、対象物がその内部に現在位置している第1個別配光パターンPH1と、今後その内部への進行が予想される第4個別配光パターンPH4とを非形成とすることができる。
【0058】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る車両用前照灯100の上面図である。図2は、灯具前方が図2の下方を向くよう図示されている。したがって、図2における右方向が灯具左方向となり、図2における左方向が灯具右方向となる。以下、第1の実施形態と同様の個所は同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
車両用前照灯100は、光源ユニット12およびリフレクタユニット102を有する。リフレクタユニット102は、第1リフレクタ28、第2リフレクタ30、第3リフレクタ32、第4リフレクタ34、第1移動機構110、および第2移動機構112を有する。
【0060】
第1移動機構110は、ガイドロッド120、伝達機構122、および第1モータ124を有する。ガイドロッド120は、一端が第1リフレクタ28に連結され、灯具前後方向に延在するよう配置される。ガイドロッド120にはラックギヤ(図示せず)が設けられている。伝達機構122はギヤなどを有し、第1モータ124の回転軸の回転をガイドロッド120のラックギヤに伝達して第1リフレクタ28を灯具前後方向に移動させる。
【0061】
第2移動機構112は、ガイドロッド130、伝達機構132、および第2モータ134を有する。ガイドロッド130は、一端が第4リフレクタ34に連結され、灯具前後方向に延在するよう配置される。ガイドロッド130にはラックギヤ(図示せず)が設けられている。伝達機構132はギヤなどを有し、第2モータ134の回転軸の回転をガイドロッド130のラックギヤに伝達して第4リフレクタ34を灯具前後方向に移動させる。なお、第1移動機構110および第2移動機構112の構成がこれに限られないことは勿論であり、例えばラックギヤに代えてボールネジが用いられるなど、第1リフレクタ28または第4リフレクタ34を移動させるための他の構成が用いられてもよい。
【0062】
以下、第1個別配光パターンPH1を形成可能に進出した第1リフレクタ28の位置、および第4個別配光パターンPH4を形成可能に進出した第4リフレクタ34の位置を、それぞれ「進出位置」という。また、第1個別配光パターンPH1の形成を回避するるよう退避した第1リフレクタ28の位置、および第4個別配光パターンPH4の形成を回避するよう退避した第4リフレクタ34の位置を、それぞれ「退避位置」という。
【0063】
車両用前照灯10が搭載される車両には、電子制御部150が設けられる。電子制御部50は、第1モータ124の作動を制御することにより、第1リフレクタ28を進出位置と退避位置との間で移動させる。また、電子制御部150は、第2モータ134の作動を制御することにより、第4リフレクタ34を進出位置と退避位置との間で移動させる。
【0064】
なお、第2の実施形態においても、第1リフレクタ群40に3つ以上のリフレクタが設けられ、第2リフレクタ群42に3つ以上のリフレクタが設けられてもよい。このとき第1リフレクタ群40の少なくとも1つのリフレクタ、および第2リフレクタ群42の少なくとも1つのリフレクタを、それぞれによる個別配光パターンの形成を回避させるよう個別に移動させることができるよう、移動可能なリフレクタの各々に移動機構が設けらてもよい。
【0065】
図8(a)は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の双方が点灯し、且つ第1リフレクタ28および第4リフレクタ34が進出位置にあるときの車両用前照灯10の上面図であり、図3(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。このとき第1個別配光パターンPH1〜第4個別配光パターンPH4はすべて形成され、ハイビーム用配光パターンPHが形成される。
【0066】
図9(a)は、第1半導体発光素子22は点灯しているが第2半導体発光素子24が消灯され、且つ第1リフレクタ28および第4リフレクタ34が進出位置にあるときの車両用前照灯10の上面図であり、図9(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。この場合、第3個別配光パターンPH3および第4個別配光パターンPH4が非形成となり、第1個別配光パターンPH1および第2個別配光パターンPH2が形成される。したがって、第1縦カットオフラインaより灯具右側には光が照射される照射領域が設けられるが、第1縦カットオフラインaより灯具左側には光が非照射となる非照射領域が設けられる。
【0067】
図10(a)は、第2半導体発光素子24は点灯しているが第1半導体発光素子22が消灯され、且つ第1リフレクタ28および第4リフレクタ34が進出位置にあるときの車両用前照灯10の上面図であり、図10(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。このとき、第1個別配光パターンPH1および第2個別配光パターンPH2が非形成となり、第3個別配光パターンPH3および第4個別配光パターンPH4が形成される。したがって、第2縦カットオフラインbより灯具左側には光が照射される照射領域が設けられるが、第2縦カットオフラインbより灯具右側には光が非照射となる非照射領域が設けられる。
【0068】
図11(a)は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の双方が点灯し、且つ第1リフレクタ28が退避位置にあり、第4リフレクタ34が進出位置にあるときの車両用前照灯10の上面図であり、図11(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。このとき、第2個別配光パターンPH2、第3個別配光パターンPH3、第4個別配光パターンPH4は形成されるが、第1個別配光パターンPH1は非形成となる。このため、第2縦カットオフラインbと第3縦カットオフラインcとの間の領域は、光が照射されない非照射領域となる。
【0069】
図12(a)は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の双方が点灯し、且つ第1リフレクタ28が進出位置にあり、第4リフレクタ34が退避位置にあるときの車両用前照灯10の上面図であり、図12(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。このとき、第1個別配光パターンPH1、第2個別配光パターンPH2、および第3個別配光パターンPH3は形成されるが、第4個別配光パターンPH4は非形成となる。このため、第1縦カットオフラインaと第4縦カットオフラインdとの間の領域は、光が照射されない非照射領域となる。
【0070】
図13(a)は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の双方が点灯し、且つ第1リフレクタ28および第4リフレクタ34が退避位置にあるときの車両用前照灯10の上面図であり、図13(b)は、このときに形成される配光パターンを示す図である。このとき、第2個別配光パターンPH2および第3個別配光パターンPH3は形成されるが、V−V線周辺の第1個別配光パターンPH1および第4個別配光パターンPH4は非形成となる。したがって、第3縦カットオフラインcと第4縦カットオフラインdの間の領域は、光が照射されない非照射領域となる。
【0071】
図14は、車両用前照灯100による配光の形成を制御する配光制御システム140の構成を模式的に示すブロック図である。配光制御システム140は、電子制御部150、カメラ52、第1半導体発光素子22、第2半導体発光素子24、第1モータ124、および第2モータ134を有する。電子制御部150は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMを有する。図14において電子制御部150には、CPU、ROM、RAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックが描かれている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組合せによって様々な形で実現することができる。
【0072】
電子制御部150は車両内部に設けられ、カメラ52に接続されている。電子制御部150は、信号取得部154および信号出力部156を有する。カメラ52は、グレアの付与を回避すべき前走車や歩行者などの対象物の存在を検知する検知手段として機能する。信号取得部154は、カメラ52から対象物の存在を検知するための検知信号として利用するため、カメラ52によって出力された画像データを取得する。信号出力部156は、取得された画像データを利用して、対象物の位置を特定する。このような対象物位置特定方法は公知であるため説明を省略する。
【0073】
信号出力部156は、第1モータ124に制御信号を出力することにより、第1リフレクタ28を進出位置に進出させ、または退避位置に退避させる。また、信号出力部156は、第2モータ134に制御信号を出力することにより、第4リフレクタ34を進出位置に進出させ、または退避位置に退避させる。さらに、信号出力部156は、第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24に点灯信号または消灯信号を出力する。第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の各々と電子制御部150との間に第1半導体発光素子22および第2半導体発光素子24の点灯、消灯を制御する駆動回路(図示せず)が設けられている点などは第1の実施形態と同様である。
【0074】
検知された対象物の位置が第1個別配光パターンPH1の内部にある場合、信号出力部156は、第1リフレクタ28を退避位置に移動させるよう第1移動機構110の第1モータ124に制御信号を出力する。具体的には、信号出力部156は、検知された対象物の位置が第1縦カットオフラインaと第3縦カットオフラインcとの間にある場合、第1リフレクタ28を退避位置に移動させるよう第1モータ124に制御信号を出力し、第1個別配光パターンPH1の形成を回避する。
【0075】
検知された対象物の位置が第4個別配光パターンPH4の内部にある場合、信号出力部156は、第4リフレクタ34を退避位置に移動させるよう第2移動機構112の第2モータ134に制御信号を出力する。具体的には、信号出力部156は、検知された対象物の位置が第2縦カットオフラインbと第4縦カットオフラインdとの間にある場合、第1リフレクタ28を退避位置に移動させるよう第1モータ124に制御信号を出力し、第1個別配光パターンPH1の形成を回避する。したがって、検知された対象物が第1縦カットオフラインaと第2縦カットオフラインbとの間にある場合、信号出力部156は、第1リフレクタ28と第4リフレクタ34の双方を退避位置に移動させる。
【0076】
また、検知された対象物の位置が第3個別配光パターンPH3の内部、すなわち第4縦カットオフラインdより灯具左側にある場合、信号出力部156は、第2半導体発光素子24を消灯させて、第3個別配光パターンPH3および第4個別配光パターンPH4の形成を回避させる。検知された対象物の位置が第2個別配光パターンPH2の内部、すなわち第3縦カットオフラインcより灯具右側にある場合、信号出力部156は、第1半導体発光素子22を消灯させて、第1個別配光パターンPH1および第2個別配光パターンPH2の形成を回避させる。
【0077】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、第1の実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を第1の実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0078】
10 車両用前照灯、 20 支持部材、 22 第1半導体発光素子、 24 第2半導体発光素子、 28 第1リフレクタ、 30 第2リフレクタ、 32 第3リフレクタ、 34 第4リフレクタ、 40 第1リフレクタ群、 42 第2リフレクタ群、 44 移動機構、 50 電子制御部、 52 カメラ、 54 信号取得部、 56 信号出力部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を支持する支持部材と、
前記光源からの光を各々が反射して、互いに隣接して水平方向に並ぶ複数の個別配光パターンの各々を形成する複数のリフレクタと、
前記複数のリフレクタの少なくとも1つを、そのリフレクタによる前記個別配光パターンの形成を回避させるよう移動させる移動機構と、
を備えることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記光源は、縁部を有する発光面が設けられ、
前記複数のリフレクタの各々は、前記発光面の縁部の反射像で、鉛直方向に延びる縦カットオフラインを前記個別配光パターンに設けることを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記移動機構は、前記複数のリフレクタのうち、移動対象のリフレクタを、他のリフレクタによって前記光源からの光が遮光される領域に移動させることにより、前記移動対象のリフレクタによる前記個別配光パターンの形成を回避させることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記支持部材は、第1の光源および第2の光源を支持し、
前記複数のリフレクタは、第1の光源からの光を各々が反射してそれぞれに対応する前記個別配光パターンを形成する第1のリフレクタ群と、第2の光源からの光を各々が反射してそれぞれに対応する前記個別配光パターンを形成する第2のリフレクタ群と、を有し、
前記移動機構は、前記第1のリフレクタ群の少なくとも1つのリフレクタ、および前記第2のリフレクタ群の少なくとも1つのリフレクタを、それぞれによる前記個別配光パターンの形成を回避させるよう移動可能に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用前照灯。
【請求項5】
グレアの付与を回避すべき対象物の存在を検知する検知手段から検知信号を取得する信号取得部と、
光源を支持する支持部材と、前記光源からの光を各々が反射して、互いに隣接して水平方向に並ぶ複数の個別配光パターンの各々を形成する複数のリフレクタと、前記複数のリフレクタの少なくとも1つを、そのリフレクタによる前記個別配光パターンの形成を回避させるよう移動させる移動機構と、を有する車両用前照灯に対し、前記複数のリフレクタのうち、検知された前記対象物が前記個別配光パターン内に含まれるリフレクタを移動させるよう前記移動機構のアクチュエータに制御信号を出力することにより、そのリフレクタによる前記個別配光パターンの形成を回避させる信号出力部と、
を備えることを特徴とする車両用前照灯の制御装置。
【請求項1】
光源を支持する支持部材と、
前記光源からの光を各々が反射して、互いに隣接して水平方向に並ぶ複数の個別配光パターンの各々を形成する複数のリフレクタと、
前記複数のリフレクタの少なくとも1つを、そのリフレクタによる前記個別配光パターンの形成を回避させるよう移動させる移動機構と、
を備えることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記光源は、縁部を有する発光面が設けられ、
前記複数のリフレクタの各々は、前記発光面の縁部の反射像で、鉛直方向に延びる縦カットオフラインを前記個別配光パターンに設けることを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記移動機構は、前記複数のリフレクタのうち、移動対象のリフレクタを、他のリフレクタによって前記光源からの光が遮光される領域に移動させることにより、前記移動対象のリフレクタによる前記個別配光パターンの形成を回避させることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記支持部材は、第1の光源および第2の光源を支持し、
前記複数のリフレクタは、第1の光源からの光を各々が反射してそれぞれに対応する前記個別配光パターンを形成する第1のリフレクタ群と、第2の光源からの光を各々が反射してそれぞれに対応する前記個別配光パターンを形成する第2のリフレクタ群と、を有し、
前記移動機構は、前記第1のリフレクタ群の少なくとも1つのリフレクタ、および前記第2のリフレクタ群の少なくとも1つのリフレクタを、それぞれによる前記個別配光パターンの形成を回避させるよう移動可能に設けられることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用前照灯。
【請求項5】
グレアの付与を回避すべき対象物の存在を検知する検知手段から検知信号を取得する信号取得部と、
光源を支持する支持部材と、前記光源からの光を各々が反射して、互いに隣接して水平方向に並ぶ複数の個別配光パターンの各々を形成する複数のリフレクタと、前記複数のリフレクタの少なくとも1つを、そのリフレクタによる前記個別配光パターンの形成を回避させるよう移動させる移動機構と、を有する車両用前照灯に対し、前記複数のリフレクタのうち、検知された前記対象物が前記個別配光パターン内に含まれるリフレクタを移動させるよう前記移動機構のアクチュエータに制御信号を出力することにより、そのリフレクタによる前記個別配光パターンの形成を回避させる信号出力部と、
を備えることを特徴とする車両用前照灯の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−74262(P2012−74262A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218294(P2010−218294)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】
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