説明

車両用動力伝達装置

【課題】少なくとも2つの電動機とエンジンを車両の駆動源に用い電動機の動力によりエンジンを始動する車両用動力伝達装置において、エンジン始動時に両方の電動機で動力を発生可能とする。
【解決手段】エンジン入力軸2、4の動力を出力軸9に伝達するためのエンジン側ギア機構5、10、11が設けられ、電動機入力軸6の動力を、出力軸9に伝達するための電動機側ギア機構7、12、13が設けられ、エンジン入力軸2、4と第1電動機入力軸6とが入力側クラッチ8によって相互に断続され、エンジン1を始動する際、エンジン側ギア機構のクラッチ11を切り、電動機側ギア機構のクラッチ13を接続すると共に入力側クラッチ8を接続し、第1電動機MG1と第2電動機MG2の両方で動力を発生させてエンジン1を始動すると共に車軸15に動力を伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用動力伝達装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの電動機と内燃機関であるエンジンを車両の駆動源に用いる車両用動力伝達装置において、電動機の動力によりエンジンを始動する技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005ー155891号公報
【特許文献2】特開2003ー106389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1、2の車両用動力伝達装置においては、その構造上、エンジン始動時に一方の電動機の発生する動力をゼロにする必要があるため、エンジン始動時に十分な駆動トルクを確保するためには、電動機を大型化する必要があった。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、少なくとも2つの電動機とエンジンを車両の駆動源に用い電動機の動力によりエンジンを始動する車両用動力伝達装置において、エンジン始動時に両方の電動機で動力を発生可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、エンジンが発生した動力と第1電動機(MG1)が発生した動力と第2電動機(MG2)が発生した動力を車両の車軸(15)に伝達する車両用動力伝達装置であって、前記エンジンが発生した動力が入力され、入力された前記エンジンの動力を伝達するエンジン入力軸(2、4)と、前記第1電動機(MG1)が発生した動力が入出力され、入出力された前記第1電動機(MG1)の動力を伝達する第1電動機入力軸(6)と、前記車軸(15)に伝達するための動力を出力する出力軸(9)と、前記出力軸(9)に動力を入出力する第2電動機(MG2)と、前記エンジン入力軸(2、4)に設けられ、前記エンジン入力軸(2、4)の動力を、前記第1電動機入力軸(6)を介さずに、前記出力軸(9)に伝達するためのエンジン側ギア機構(5、10、11)と、前記第1電動機入力軸(6)に設けられ、前記第1電動機入力軸(6)の動力を、前記エンジン入力軸(2、4)を介さずに、前記出力軸(9)に伝達するための電動機側ギア機構(7、12、13)と、前記エンジン入力軸(2、4)と前記第1電動機入力軸(6)とを相互に断続する入力側クラッチ(8)と、前記エンジン(1)、前記第1電動機(MG1)、および前記第2電動機(MG2)が発生する動力の伝達経路を制御する制御装置(20)と、を備え、前記エンジン側ギア機構(5、10、11)は、当該エンジン側ギア機構(5、10、11)を介した前記エンジン入力軸(2、4)と前記出力軸(9)との間の動力伝達を断続するエンジン側クラッチ(11)を有し、前記電動機側ギア機構(7、12、13)は、当該電動機側ギア機構(7、12、13)を介した前記第1電動機入力軸(6)と前記出力軸(9)との間の動力伝達を断続する電動機側クラッチ(13)を有し、前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動する際、前記エンジン側クラッチ(11)を切り、前記電動機側クラッチ(13)を接続すると共に前記入力側クラッチ(8)を接続し、前記第1電動機(MG1)と前記第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させて前記エンジン(1)を始動すると共に前記車軸(15)に動力を伝達することを特徴とする車両用動力伝達装置である。
【0007】
このような構造の車両用動力伝達装置において、エンジン(1)を始動する際、エンジン側クラッチ(11)を切り、電動機側クラッチ(13)を接続すると共に入力側クラッチ(8)を接続することで、第1電動機(MG1)の出力したトルクおよび第2電動機(MG2)の出力したトルクは、電動機側ギア機構で適宜合成、分配される。そして、分配された一方においては、エンジン(1)を始動させるためのトルクが、第1電動機入力軸(6)、入力側クラッチ(8)、エンジン入力軸(2、4)を伝達することで、エンジン(1)に入力され、これにより、エンジン(1)が始動する。また、分配された他方においては、車両を駆動するためのトルクが、出力軸(9)を介して車軸(15)に伝達されるので、車両は必要なトルクを発生させて走行することができる。このように、第1電動機(MG1)と第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させてエンジン(1)を始動することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動するために前記エンジン(1)に印加することが必要なトルクであるエンジン始動トルクYに前記電動機側ギア機構(7、12、13)の減速比ρmを乗算した値Y・ρmと、前記車両の駆動のために必要な要求トルクTrとの和(Tr+Y・ρm)を算出し、この算出値(Tr+Y・ρm)に応じた補正要求トルクTrcを設定し、前記要求トルクTrcを発生するための前記第1電動機(MG1)のトルクTm1および前記第2電動機(MG2)のトルクTm2を、前記第1電動機(MG1)および前記第2電動機(MG2)に実現させることを特徴とする請求項1に記載の車両用動力伝達装置である。
【0009】
このようにすることで、エンジン始動トルクYが、第1電動機入力軸(6)、入力側クラッチ(8)、エンジン入力軸(2、4)を伝達することで、エンジン(1)に入力され、要求トルクTrが、出力軸(9)を介して車軸(15)に伝達されるので、車両は必要なトルクを発生させて走行することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記電動機側ギア機構(7、12、13)の減速比ρmの方が前記エンジン側ギア機構(5、10、11)の減速比ρeよりも大きく、前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動する際、前記車両の駆動に必要な要求トルクが前記第2電動機(MG2)の出力可能な最大トルクより大きいか否かを判定し、前記要求トルクが前記最大トルクより大きくないと判定した場合は、前記エンジン側クラッチ(11)および前記電動機側クラッチ(13)を切り、前記入力側クラッチ(8)を接続することで、前記第1電動機(MG1)および前記第2電動機(MG2)のうち前記第2電動機(MG2)のみの動力でエンジン(1)を始動すると共に、前記第1電動機(MG1)および前記第2電動機(MG2)のうち前記第1電動機(MG1)のみの動力で前記車両を駆動し、前記要求トルクが前記最大トルクより大きいと判定した場合は、前記エンジン側クラッチ(11)を切り、前記電動機側クラッチ(13)を接続すると共に前記入力側クラッチ(8)を接続し、前記第1電動機(MG1)と前記第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させて前記エンジン(1)を始動すると共に前記車軸(15)に動力を伝達することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用動力伝達装置である。
【0011】
このように、要求トルクが第2電動機(MG2)の最大トルクより大きくない場合は、第1電動機MG1の出力はエンジン1の始動にのみ使用され、第2電動機MG2の出力は車両の駆動にのみ使用される。そして、要求トルクが第2電動機(MG2)の最大トルクより大きいため第2電動機(MG2)のみのトルクで不足する場合は、エンジン(1)の始動時の回転数不足を回避するために、より減速比の大きい電動機側ギア機構からエンジン(1)を始動することができる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、前記電動機側ギア機構(7、12、13)の減速比ρmの方が前記エンジン側ギア機構(5、10、11)の減速比ρeよりも大きく、前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動する際、前記車両の車速Vが基準速度VL1より大きく、かつ、前記車両の駆動のために必要な要求トルクTrが基準トルクよりも大きいことに基づいて、前記入力側クラッチ(8)を切り、前記エンジン側クラッチ(11)を接続すると共に前記電動機側クラッチ(13)を接続し、前記第1電動機(MG1)と前記第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させて前記エンジン(1)を始動し、前記車両の車速Vが前記基準速度VL1より大きくなく、または、前記車両の駆動のために必要な要求トルクTrが前記基準トルクよりも大きくないことに基づいて、前記エンジン側クラッチ(11)を切り、前記電動機側クラッチ(13)を接続すると共に前記入力側クラッチ(8)を接続し、前記第1電動機(MG1)と前記第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させて前記エンジン(1)を始動すると共に前記車軸(15)に動力を伝達することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用動力伝達装置である。
【0013】
このように、車両の駆動のために必要な要求トルクTrが基準トルクよりも大きい場合は、第1電動機MG1の動力を電動機側ギア機構を介して出力軸(9)に伝達した上でエンジン側ギア機構を介してエンジン入力軸(2、4)に伝達するので、入力側クラッチ(8)を介して第1電動機MG1の動力を伝達する場合に比べ、エンジンに大きなトルクを供給することができる。これにより、エンジン始動時の駆動トルク不足を低減することができる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、エンジンが発生した動力と第1電動機(MG1)が発生した動力と第2電動機(MG2)が発生した動力を車両の車軸(15)に伝達する車両用動力伝達装置であって、前記エンジンが発生した動力が入力され、入力された前記エンジンの動力を伝達するエンジン入力軸(2、4)と、前記第1電動機(MG1)が発生した動力が入出力され、入出力された前記第1電動機(MG1)の動力を伝達する第1電動機入力軸(6)と、前記車軸(15)に伝達するための動力を出力する出力軸(9)と、前記出力軸(9)に動力を入出力する第2電動機(MG2)と、前記エンジン入力軸(2、4)に設けられ、前記エンジン入力軸(2、4)の動力を、前記第1電動機入力軸(6)を介さずに、前記出力軸(9)に伝達するためのエンジン側ギア機構(5、10、11)と、前記第1電動機入力軸(6)に設けられ、前記第1電動機入力軸(6)の動力を、前記エンジン入力軸(2、4)を介さずに、前記出力軸(9)に伝達するための電動機側ギア機構(7、12、13)と、前記エンジン入力軸(2、4)と前記第1電動機入力軸(6)とを相互に断続する入力側クラッチ(8)と、前記エンジン(1)、前記第1電動機(MG1)、および前記第2電動機(MG2)が発生する動力の伝達経路を制御する制御装置(20)と、を備え、前記エンジン側ギア機構(5、10、11)は、当該エンジン側ギア機構(5、10、11)を介した前記エンジン入力軸(2、4)と前記出力軸(9)との間の動力伝達を断続するエンジン側クラッチ(11)を有し、前記電動機側ギア機構(7、12、13)は、当該電動機側ギア機構(7、12、13)を介した前記第1電動機入力軸(6)と前記出力軸(9)との間の動力伝達を断続する電動機側クラッチ(13)を有し、前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動する際、前記電動機側クラッチ(13)を切り、前記エンジン側クラッチ(11)を接続すると共に前記入力側クラッチ(8)を接続し、前記第1電動機(MG1)と前記第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させて前記エンジン(1)を始動すると共に前記車軸(15)に動力を伝達することを特徴とする車両用動力伝達装置である。
【0015】
このような構造の車両用動力伝達装置において、エンジン(1)を始動する際、電動機側クラッチ(13)を切り、エンジン側クラッチ(11)を接続すると共に入力側クラッチ(8)を接続し、第1電動機(MG1)の出力したトルクおよび第2電動機(MG2)の出力したトルクは、エンジン側ギア機構で適宜合成、分配される。そして、分配された一方においては、エンジン(1)を始動させるためのトルクが、エンジン入力軸(2、4)を伝達することで、エンジン(1)に入力され、これにより、エンジン(1)が始動する。また、分配された他方においては、車両を駆動するためのトルクが、出力軸(9)を介して車軸(15)に伝達されるので、車両は必要なトルクを発生させて走行することができる。このように、第1電動機(MG1)と第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させてエンジン(1)を始動することができる。
また、請求項6に記載の発明は、前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動するために前記エンジン(1)に印加することが必要なトルクであるエンジン始動トルクYに前記エンジン側ギア機構(7、12、13)の減速比ρeを乗算した値Y・ρeと、前記車両の駆動のために必要な要求トルクTrとの和(Tr+Y・ρe)を算出し、この算出値(Tr+Y・ρe)に応じた補正要求トルクTrcを設定し、前記要求トルクTrcを発生するための前記第1電動機(MG1)のトルクTm1および前記第2電動機(MG2)のトルクTm2を、前記第1電動機(MG1)および前記第2電動機(MG2)に実現させることを特徴とする請求項5に記載の車両用動力伝達装置である。
【0016】
このようにすることで、エンジン始動トルクYが、エンジン入力軸(2、4)を伝達することで、エンジン(1)に入力され、要求トルクTrが、出力軸(9)を介して車軸(15)に伝達されるので、車両は必要なトルクを発生させて走行することができる。
【0017】
また、請求項7に記載の発明は、前記エンジン側ギア機構(5、10、11)の減速比ρeの方が前記電動機側ギア機構(7、12、13)の減速比ρmよりも大きく、前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動する際、前記車両の駆動に必要な要求トルクが前記第2電動機(MG2)の出力可能な最大トルクより大きいか否かを判定し、前記要求トルクが前記最大トルクより大きくないと判定した場合は、前記エンジン側クラッチ(11)および前記電動機側クラッチ(13)を切り、前記入力側クラッチ(8)を接続することで、前記第1電動機(MG1)および前記第2電動機(MG2)のうち前記第2電動機(MG2)のみの動力でエンジン(1)を始動すると共に、前記第1電動機(MG1)および前記第2電動機(MG2)のうち前記第1電動機(MG1)のみの動力で前記車両を駆動し、前記要求トルクが前記最大トルクより大きいと判定した場合は、前記電動機側クラッチ(13)を切り、前記エンジン側クラッチ(11)を接続すると共に前記入力側クラッチ(8)を接続し、前記第1電動機(MG1)と前記第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させて前記エンジン(1)を始動すると共に前記車軸(15)に動力を伝達することを特徴とする請求項5または6に記載の車両用動力伝達装置である。
【0018】
このように、要求トルクが第2電動機(MG2)の最大トルクより大きくない場合は、第1電動機MG1の出力はエンジン1の始動にのみ使用され、第2電動機MG2の出力は車両の駆動にのみ使用される。そして、要求トルクが第2電動機(MG2)の最大トルクより大きいため第2電動機(MG2)のみのトルクで不足する場合は、エンジン(1)の始動時の回転数不足を回避するために、より減速比の大きいエンジン側ギア機構からエンジン(1)を始動することができる。
【0019】
また、請求項8に記載の発明は、前記エンジン側ギア機構(5、10、11)の減速比ρeの方が前記電動機側ギア機構(7、12、13)の減速比ρmよりも大きく、前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動する際、前記車両の車速Vが基準速度VL2より大きく、かつ、前記車両の駆動のために必要な要求トルクTrが基準トルクよりも大きいことに基づいて、前記エンジン側クラッチ(11)を切り、前記電動機側クラッチ(13)を接続すると共に前記入力側クラッチ(8)を接続し、前記第1電動機(MG1)と前記第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させて前記エンジン(1)を始動すると共に前記車軸(15)に動力を伝達し、前記車両の車速Vが前記基準速度VL2より大きくなく、または、前記車両の駆動のために必要な要求トルクTrが前記基準トルクよりも大きくないことに基づいて、前記電動機側クラッチ(13)を切り、前記エンジン側クラッチ(11)を接続すると共に前記入力側クラッチ(8)を接続し、前記第1電動機(MG1)と前記第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させて前記エンジン(1)を始動すると共に前記車軸(15)に動力を伝達することを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1つに記載の車両用動力伝達装置である。
【0020】
このように、車両の駆動のために必要な要求トルクTrが基準トルクよりも大きい場合は、エンジン側クラッチ11を切り、電動機側クラッチ13を接続すると共に入力側クラッチ8を接続することで、エンジン始動時の駆動トルク不足を低減することができる。
【0021】
また、請求項9に記載の発明は、エンジンが発生した動力と第1電動機(MG1)が発生した動力と第2電動機(MG2)が発生した動力を車両の車軸(15)に伝達する車両用動力伝達装置であって、前記エンジンが発生した動力が入力され、入力された前記エンジンの動力を伝達するエンジン入力軸(2、4)と、前記第1電動機(MG1)が発生した動力が入出力され、入出力された前記第1電動機(MG1)の動力を伝達する第1電動機入力軸(6)と、前記車軸(15)に伝達するための動力を出力する出力軸(9)と、前記出力軸(9)に動力を入出力する第2電動機(MG2)と、前記エンジン入力軸(2、4)に設けられ、前記エンジン入力軸(2、4)の動力を、前記第1電動機入力軸(6)を介さずに、前記出力軸(9)に伝達するためのエンジン側ギア機構(5、10、11)と、前記第1電動機入力軸(6)に設けられ、前記第1電動機入力軸(6)の動力を、前記エンジン入力軸(2、4)を介さずに、前記出力軸(9)に伝達するための電動機側ギア機構(7、12、13)と、前記エンジン入力軸(2、4)と前記第1電動機入力軸(6)とを相互に断続する入力側クラッチ(8)と、前記エンジン(1)、前記第1電動機(MG1)、および前記第2電動機(MG2)が発生する動力の伝達経路を制御する制御装置(20)と、を備え、前記エンジン側ギア機構(5、10、11)は、当該エンジン側ギア機構(5、10、11)を介した前記エンジン入力軸(2、4)と前記出力軸(9)との間の動力伝達を断続するエンジン側クラッチ(11)を有し、前記電動機側ギア機構(7、12、13)は、当該電動機側ギア機構(7、12、13)を介した前記第1電動機入力軸(6)と前記出力軸(9)との間の動力伝達を断続する電動機側クラッチ(13)を有し、前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動する際、前記入力側クラッチ(8)を切り、前記エンジン側クラッチ(11)を接続すると共に前記電動機側クラッチ(13)を接続し、前記第1電動機(MG1)と前記第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させて前記エンジン(1)を始動すると共に前記車軸(15)に動力を伝達することを特徴とする車両用動力伝達装置である。
【0022】
このような構造の車両用動力伝達装置において、エンジン(1)を始動する際、入力側クラッチ8を切り、エンジン側クラッチ(11)を接続すると共に電動機側クラッチ(13)を接続することで、第1電動機(MG1)の出力したトルクおよび第2電動機(MG2)の出力したトルクは、電動機側ギア機構で合成され、エンジン側ギア機構で分配される。
【0023】
そして、分配された一方においては、エンジン(1)を始動させるためのトルクが、エンジン入力軸(2、4)を伝達することで、エンジン(1)に入力され、これにより、エンジン(1)が始動する。また、分配された他方においては、車両を駆動するためのトルクが、出力軸(9)を介して車軸(15)に伝達されるので、車両は必要なトルクを発生させて走行することができる。このように、第1電動機(MG1)と第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させてエンジン(1)を始動することができる。
【0024】
また、請求項10に記載の発明は、前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動するために前記エンジン(1)に印加することが必要なトルクであるエンジン始動トルクYに前記エンジン側ギア機構(7、12、13)の減速比ρeを乗算した値Y・ρeと、前記車両の駆動のために必要な要求トルクTrとの和(Tr+Y・ρe)を算出し、この算出値(Tr+Y・ρe)に応じた補正要求トルクTrcを設定し、前記要求トルクTrcを発生するための前記第1電動機(MG1)のトルクTm1および前記第2電動機(MG2)のトルクTm2を、前記第1電動機(MG1)および前記第2電動機(MG2)に実現させることを特徴とする請求項9に記載の車両用動力伝達装置である。
【0025】
このようにすることで、エンジン始動トルクYが、エンジン入力軸(2、4)を伝達することで、エンジン(1)に入力され、要求トルクTrが、出力軸(9)を介して車軸(15)に伝達されるので、車両は必要なトルクを発生させて走行することができる。
【0026】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用動力伝達装置の構成を示すスケルトン図である。
【図2】制御装置20の入出力関係を示す図である。
【図3】MG1_Lモード時の動力伝達経路23を示す図である。
【図4】MG1_Hモード時の動力伝達経路24を示す図である。
【図5】ENG_Lモード時の動力伝達経路25を示す図である。
【図6】ENG_Hモード時の動力伝達経路26を示す図である。
【図7】発電モード時の動力伝達経路27を示す図である。
【図8】電動機MG1、MG2およびエンジン1の特性を示すグラフである。
【図9】EVメインモードにおける切替マップを示す図である。
【図10】エンジンメインモードにおける切替マップを示す図である。
【図11】制御装置20の実行する処理のフローチャートである。
【図12】アクセル開度および車速に基づいて作動モードを選択する処理を示すブロック図である。
【図13】エンジン始動のための処理のフローチャートである。
【図14】EVメインモードにおける切替マップをエンジン始動時の作動で区分けした図である。
【図15】エンジン始動時の動力伝達経路の一例を示す図である。
【図16】エンジン始動時の動力伝達経路の一例を示す図である。
【図17】エンジン始動のための処理のフローチャートである。
【図18】エンジン始動時の動力伝達経路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車両用動力伝達装置の構成を、スケルトン図で示す。この車両用動力伝達装置は、ハイブリッド車両に搭載され、エンジン1、第1電動機MG1、第2電動機MG2、第1エンジン入力軸2、ダンパ3、第2エンジン入力軸4、第1ドライブギア5、第1電動機入力軸6、第2ドライブギア7、入力側クラッチ8、出力軸9、第1ドリブンギア10、第1出力側クラッチ11、第2ドリブンギア12、第2出力側クラッチ13、ディファレンシャルギア14を備えており、エンジン1、第1電動機MG1、第2電動機MG2が発生した動力(すなわち駆動トルク)を車軸に伝達し、それによって駆動輪16、17に駆動力を発生させるようになっている。
【0029】
エンジン1は内燃機関であり、電動機MG1、MG2は、車両に搭載された車両駆動用バッテリ(図示せず)の電力によって回転する電気モータであると共に、車両用動力伝達装置(具体的には第1電動機MG1なら第1電動機入力軸6、第2電動機MG2なら出力軸9)から伝達された軸トルクを利用して発電して上記駆動用バッテリに充電を行うジェネレータでもある。
【0030】
エンジン1から伸びる第1エンジン入力軸2には、エンジン1が発生した動力が入力される。この第1エンジン入力軸2は、エンジン1から入力された動力を伝達する軸として機能する。この第1エンジン入力軸2のエンジン1と反対側の端部には、周知のトーションダンパ3が取り付けられている。
【0031】
また、ダンパ3の第1エンジン入力軸2とは反対側には、第2エンジン入力軸4が第1エンジン入力軸2に対して同軸に取り付けられている。したがって、この第2エンジン入力軸4は、ダンパ3を介して第1エンジン入力軸2の動力を伝達するようになっている。
【0032】
また、第2エンジン入力軸4には、第1ドライブギア5が軸着され、第2エンジン入力軸4と共に回転するようになっている。
【0033】
また、第1電動機MG1から伸びる第1電動機入力軸6には、第1電動機MG1が発生した動力が入力される。この第1電動機入力軸6は、第1電動機MG1から入力された動力を伝達する軸として機能する。
【0034】
また、第1電動機入力軸6には、第2ドライブギア7が軸着され、第1電動機入力軸6と共に回転するようになっている。
【0035】
また、第2エンジン入力軸4と第1電動機入力軸6は、互いに平行かつ同軸に配置されている。また、入力側クラッチ8は、第2エンジン入力軸4と第1電動機入力軸6の間に設けられ、第2エンジン入力軸4と第1電動機入力軸6を相互に同軸に断続するクラッチ機構である。入力側クラッチ8としては、湿式クラッチを採用してもよいし、乾式クラッチを採用してもよい。
【0036】
また、第2電動機MG2から伸びる出力軸9には、第2電動機MG2が発生した動力が入力される。この出力軸9は、第1エンジン入力軸2、第2エンジン入力軸4、第1電動機入力軸6の側方にこれら入力軸2、4、6に対して平行に配置され、ディファレンシャルギア14、車軸15等に伝達するための動力を出力する。
【0037】
また、第1ドリブンギア10は、第1ドライブギア5に噛合し、出力軸9に回動自在に支持される。また、第1出力側クラッチ11は、出力軸9に取り付けられ、出力軸9と第1ドリブンギア10とを相互に断続するクラッチ機構である。第1出力側クラッチ11としては、湿式クラッチを採用してもよいし、乾式クラッチ、さらにはシンクロ機構等のかみ合い式クラッチを採用してもよい。
【0038】
また、第2ドリブンギア12は、第2ドライブギア7に噛合し、出力軸9に回動自在に支持される。また、第2出力側クラッチ13は、出力軸9に取り付けられ、出力軸9と第2ドリブンギア12とを相互に断続するクラッチ機構である。第2出力側クラッチ13としては、湿式クラッチを採用してもよいし、乾式クラッチ、さらにはシンクロ機構等のかみ合い式クラッチを採用してもよい。
【0039】
また、出力軸9の動力は、図示しないファイナルギアおよびディファレンシャルギア14および車軸15を介して駆動輪16、17に伝達される。
【0040】
以上のような構成の車両用動力伝達装置において、第1出力側クラッチ11を接続することで、出力軸9と第1ドリブンギア10との間で動力伝達が行われる。したがって、第1ドライブギア5、第1ドリブンギア10、第1出力側クラッチ11を介して第2エンジン入力軸4と出力軸9の間で(第1電動機入力軸6を介さず)動力伝達が行われる。逆に、第1出力側クラッチ11を切ると、第1ドライブギア5、第1ドリブンギア10、第1出力側クラッチ11を介して第2エンジン入力軸4と出力軸9の間で動力伝達が行われることがなくなる。これら第1ドライブギア5、第1ドリブンギア10、および第1出力側クラッチ11が、ハイギア機構(エンジン側ギア機構の一例に相当する)を構成する。
【0041】
したがって、クラッチ11は、ハイギア機構を介した第2エンジン入力軸4と出力軸9との間の動力伝達を断続するクラッチ(エンジン側クラッチの一例に相当する)ということになる。なお、ハイギア機構の減速比ρeは、車両用動力伝達装置に備えられたギア機構の減速比のうちで最も小さい。
【0042】
また、第2出力側クラッチ13を接続することで、出力軸9と第2ドリブンギア12との間で動力伝達が行われる。したがって、第2ドライブギア7、第2ドリブンギア12、第2出力側クラッチ13を介して第1電動機入力軸6と出力軸9の間で(エンジン入力軸2、4を介さず)動力伝達が行われる。逆に、第2出力側クラッチ13を切ると、第2ドライブギア7、第2ドリブンギア12、第2出力側クラッチ13を介して第1電動機入力軸6と出力軸9の間で動力伝達が行われることがなくなる。これら第2ドライブギア7、第2ドリブンギア12、および第2出力側クラッチ13が、ローギア機構(第1電動機側ギア機構の一例に相当する)を構成する。
【0043】
したがって、クラッチ13は、ローギア機構を介した第1電動機入力軸6と出力軸9との間の動力伝達を断続するクラッチ(電動機側クラッチの一例に相当する)ということになる。なお、ローギア機構の減速比ρmは、車両用動力伝達装置に備えられたギア機構の減速比のうちで最も大きい。したがって、ローギア機構の減速比ρmは、ハイギア機構の減速比ρeよりも大きくなっている。例えば、ρm=2、ρe=1であってもよい。
【0044】
このように、車両用動力伝達装置においては、動力の伝達経路から見ても配置から見ても、エンジン1に近い方のギア機構がハイギア機構であり、第1電動機MG1に近い方のギア機構がローギア機構である。
【0045】
また、入力側クラッチ8を接続すると、入力側クラッチ8を介して第2エンジン入力軸4と第1電動機入力軸6の間で動力が伝達されるようになり、入力側クラッチ8を切ると、入力側クラッチ8を介して第2エンジン入力軸4と第1電動機入力軸6の間で動力が伝達されなくなる。
【0046】
また、入力側クラッチ8が接続された場合、第2エンジン入力軸4上の第1ドライブギア5が設けられる位置から第1電動機入力軸6上の第2ドライブギア7が設けられる位置までの間は、常に動力伝達が可能となっている。換言すれば、入力軸2、4、6上の第1ドライブギア5が設けられる位置から第2ドライブギア7までの動力伝達経路に入力側クラッチ8以外のクラッチが介在しない。このようになっていることで、クラッチの数を従来よりも低減することができ、ひいては、車両用動力伝達装置を小型化することが可能となる。
【0047】
また、入力側クラッチ8および第1ドライブギア5を、第2ドライブギア7とエンジン1との間の位置に配置することで、エンジン1から第1ドライブギア5までの距離を低減することができ、その結果、エンジン入力軸2、4のねじれ振動に対する耐性を高く保つことができる。
【0048】
また、入力側クラッチ8および第2ドライブギア7を、第1ドライブギア5と第1電動機MG1との間の位置に配置することで、第1電動機MG1から第2ドライブギア7までの距離を低減することができ、その結果、第1電動機入力軸6のねじれ振動に対する耐性を高く保つことができる。
【0049】
またエンジン側ギア機構5、10、11は、エンジン入力軸2、4に沿ったエンジン1から入力側クラッチ8までの動力伝達経路上のいずれかの位置から、出力軸9に動力を伝達するようになっているので、特許文献1のように、エンジン1の動力伝達経路をエンジン1から第1ドライブギア5への経路とエンジン1から第2ドライブギア7への経路の2つに分岐する必要がなく、構成が簡易になる。
【0050】
また、車両用動力伝達装置は、制御装置20を備えている。制御装置20は、車両内で取得された各種物理量に基づいて、上記の電動機MG1、MG2の駆動、非駆動、および、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13の接続、切断を制御することで、エンジン1、第1電動機MG1が発生する動力の伝達経路および減速比を制御する。制御装置20としては、例えば、プログラムを実行するマイクロコントローラを備えた電子制御装置を用いる。
【0051】
より具体的には、図2に示すように、車両の車速を示す車速信号、エンジン1内の温度を示すエンジン温度信号、アクセル開度を示すアクセル開度信号、車両駆動用バッテリの充電率を表すSOC(State of Charge)を示すSOC信号等が、制御装置20に入力される。車速信号としては、例えば各車輪に対して搭載された車輪速センサから出力される信号を用いる。アクセル開度信号は、例えば、アクセル開度検出センサから出力される信号を用いる。SOC信号は、車両駆動用バッテリのSOCを検出して出力するバッテリ監視装置から出力される信号を用いる。
【0052】
また制御装置20は、これら入力された信号に基づいて、上記の入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13の接続、切断を切り替える。具体的には、制御装置20は、クラッチ8、11、13のそれぞれに対して設けられた、対応する接続、切断を実現するアクチュエータ(例えばクラッチの断続のための油圧を発生するアクチュエータ)の作動を制御することで、クラッチ8、11、13の接続、切断を切り替える。
【0053】
このような制御装置20によるクラッチ8、11、13の制御によって、第1電動機MG1の発生する動力は、ローギア機構を介して駆動輪16、17に伝達されることも、ハイギア機構を介して駆動輪16、17に伝達されることも、可能となる。また、エンジン1の発生する動力についても、ローギア機構を介して駆動輪16、17に伝達されることも、ハイギア機構を介して駆動輪16、17に伝達されることも、可能となる。
【0054】
例えば、図3に示すMG1_Lモードでは、矢印23に示すような経路で、第1電動機MG1の動力がローギア機構を介して駆動輪16、17に伝達される。このモードでは、第2出力側クラッチ13が接続され、他のクラッチ8、11の断続は任意である。ただし、クラッチ8、11、13が全部接続する場合はない。
【0055】
また、図4に示すMG1_Hモードでは、矢印24に示すような経路で、第1電動機MG1の動力がハイギア機構を介して駆動輪16、17に伝達される。このモードでは、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11が接続され、第2出力側クラッチ13が切られる。
【0056】
また、図5に示すENG_Lモードでは、矢印25に示すような経路で、エンジン1の動力がローギアを介して駆動輪16、17に伝達される。このモードでは、入力側クラッチ8、第2出力側クラッチ13が接続され、第1出力側クラッチ11が切られる。
【0057】
また、図6に示すENG_Hモードは、矢印26に示すような経路で、エンジン1の動力がハイギア機構を介して駆動輪16、17に伝達される。このモードででは、第1出力側クラッチ11が接続され、他のクラッチ8、13の断続は(全クラッチ8、11、13が接続する場合を除いて)任意である。
【0058】
また、図7に示す発電モードは、矢印27に示すような経路で、エンジン1の動力が入力側クラッチ8を介して第1電動機MG1に伝達される。このモードでは、入力側クラッチ8が接続され、他のクラッチ11、13は切られる。この発電モードでは、エンジン1の動力を用いて第1電動機MG1が発電して駆動用バッテリに充電を行うことができる。このようなモードは、車両の停止時に実現可能であり、また、第2電動機MG2の発生する動力で車両が低速走行するときにも実現可能である。また、MG1で発電した電力でMG2で走行を行う、いわゆるシリーズ運転も実現可能である。
【0059】
なお、上記のような第1電動機MG1の駆動モード(MG1_Lモード、MG1_Hモード)とエンジン1の駆動モード(ENG_Lモード、ENG_Hモード)は、組み合わせ可能である。
【0060】
具体的には、第1電動機MG1とエンジン1が共にローギア機構を使用する場合は、上記のMG1_LモードとENG_Lモードを組み合わせて、入力側クラッチ8、第2出力側クラッチ13を接続し、第1出力側クラッチ11を切るようにすればよい。
【0061】
また、第1電動機MG1とエンジン1が共にハイギア機構を使用する場合は、上記のMG1_HモードとENG_Hモードを組み合わせて、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11を接続し、第2出力側クラッチ13を切るようにすればよい。
【0062】
また、第1電動機MG1がローギア機構を使用し、エンジン1がハイギア機構を使用する場合は、上記のMG1_LモードとENG_Hモードを組み合わせて、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13を接続し、入力側クラッチ8を切るようにすればよい。このように、エンジン1と第1電動機MG1とで同時に違う減速比を実現できる。
【0063】
ただし、第1電動機MG1がハイギア機構を使用し、エンジン1がローギア機構を使用するようにクラッチ8、11、13を制御することはできない。しかし、図8を参照して後述するように、第1電動機MG1がハイギア機構を使用して効率が良い場面と、エンジン1がローギア機構を使用い使用して効率が良い場面とは、全く異なるので、これら2つを同時に実現できなくても、車両の燃費への悪影響は小さい。
【0064】
制御装置20は、上記のようなクラッチ8、11、13の接続、切断の組み合わせに加え、電動機MG1、MG2の駆動、非駆動を制御することで、車両の状態に適した走行を実現するようになっている。
【0065】
従って、上記のようなクラッチ8、11、13の接続、切断の組み合わせと、電動機MG1、MG2による駆動、非駆動とを組み合わせることで、第1電動機MG1の作動モードとしては、出力軸9に動力を伝達しない非駆動モード、MG1_LモードおよびMG1_Hモードがあり、第2電動機MG2の作動としては、動力を発生しない非駆動モードおよび動力を発生して出力軸9に入力する駆動モードがあり、エンジン1の作動モードとしては、出力軸9に動力を伝達しない非駆動モード、ENG_LモードおよびENG_Hモードがある。そして、これら電動機MG1、MG2、エンジン1の作動モードは、一部の組み合わせを除いて組み合わせ可能である。
【0066】
車両の状態に適した走行について説明するため、図8に、電動機MG1、MG2およびエンジン1の特性の一例をグラフで表す。
【0067】
図中、横軸は車速であり、縦軸は車軸15の駆動トルクである。実線30は、平地低速走行時の各車速において必要な駆動トルクを示している。実線31、32は、それぞれMG1_Lモード、MG1_Hモードでの各車速における第1電動機MG1の出力(発生)可能な駆動トルクの上限を示し、実線33は、各車速における第2電動機MG2の出力(発生)可能な駆動トルクの上限を示す。
【0068】
また、点線で囲まれた範囲34、35は、それぞれMG1_Lモード、MG1_Hモードで効率(燃費に相当する)が所定の基準以上に高いと想定される範囲を示し、点線で囲まれた範囲36は、MG_2の駆動モードの効率が所定の基準以上に高いと想定される範囲を示す。また、実線37、38は、それぞれENG_Lモード、ENG_Hモードで効率が最大であると想定される範囲(最大効率線)を示す。
【0069】
電動機MG1、MG2およびエンジン1の作動モードの選定の基本的な考え方は、第2電動機MG2のみで必要な駆動トルクを実現することができる場合は第2電動機MG2のみで車両を駆動し、また、それ以外の場合は、車速と必要な駆動トルクとの関係において、効率が最も良い組み合わせを選定する。
【0070】
典型的には、車速が0km/hから約60km/hまでの発進〜低中速加速域39aにおいては、その領域39a内に高効率域34、37がある第1電動機MG1_LモードおよびENG_Lモードを積極的に使用し、また、車速が約60km/hから約150km/hまでの範囲における高速加速・登坂域39bにおいては、その領域39b内またはその近傍に高効率域35、36、38があるMG1_Hモード、第2電動機MG2の駆動モード、ENG_Hモードを積極的に使用する。
【0071】
例として、電動機MG1、MG2を主体として車両を駆動するEVメインモードの平地低速走行について説明する。EVメインモードは、車両駆動用バッテリのSOCに余裕がある場合用の走行モードである。
【0072】
このEVメインモードにおいては、平地低速走行時は、130km/hより低い車速では、必要な駆動トルクが第2電動機MG2の最大駆動トルクを下回るので、第2電動機MG2の動力のみで走行可能である。つまり、第1電動機MG1およびエンジン1は非駆動モード、第2電動機MG2は駆動モードとする。このためには、制御装置20は、クラッチ8、11、13をすべて切り、第1電動機MG1を停止させる。このとき、第1電動機MG1は完全に停止することができるので、第1電動機MG1の連れ回り回転による損失を低減できる。
【0073】
また、平地低速走行時でも、車速が130km/hを上回る場合は、第2電動機MG2の動力のみで必要な駆動トルクを賄えないので、ENG_HモードとMG1_Hモードを組み合わせ、かつ第2電動機MG2も駆動させるモードで走行する。
【0074】
また別の例として、エンジン1を主体として車両を駆動するエンジンメインモードの平地低速走行について説明する。エンジンメインモードは、車両駆動用バッテリのSOCに余裕がない場合用の走行モードである。
【0075】
このエンジンメインモードにおいては、平地低速走行時は、車両駆動用バッテリの電力を節約するため、第2電動機MG2の駆動モードとENG_Hモードとを組み合わせ、更に、第1電動機MG1の非駆動モードも組み合わせる。このためには、制御装置20は、第1出力側クラッチ11を接続し、クラッチ8、13を切り、第1電動機MG1を停止させる。このとき、第1電動機MG1は完全に停止することができるので、第1電動機MG1の連れ回り回転による損失を低減できる。
【0076】
このように、図8に示したような電動機MG1、MG2およびエンジン1の特性を効率的に利用するため、制御装置20においては、あらかじめ(例えば工場出荷時に)自装置の記憶媒体(例えばROM、フラッシュメモリ)中に、図9に示すようなEVメインモードにおける切替マップ、および、図10に示すようなエンジンメインモードにおける切替マップが記録されるようになっている。
【0077】
これら切替マップは、車速と駆動トルクから成る二次元面を複数の区画41〜47、51〜54に分け、これら区画41〜47、51〜54のそれぞれに電動機MG1、MG2、エンジン1の作動モードの組み合わせを1組割り当てるデータである。つまり、切替マップは、車速と駆動トルクの組み合わせに対して作動モードの組み合わせを1組割り当てるデータである。
【0078】
そして制御装置20は、所定のプログラムを読み出して実行することで、図11に示すような走行モード切替処理を所定の制御周期毎に実行し、EVメインモードとエンジンメインモードとを相互に切り替える。
【0079】
具体的には、各制御周期において、まずステップ105で、現在の走行モードをRAM等の記憶媒体中の走行モード変数から読み込むことで取得し、続いてステップ110で、車両駆動用バッテリの現在のSOCを取得する。続いてステップ115で、ステップ105で取得した走行モードがEVメインモードであるか否かを判定し、EVメインモードであれば続いてステップ120を実行し、EVメインモードでなければ(すなわちエンジンメインモードであれば)続いてステップ140を実行する。
【0080】
ステップ120では、現在のSOCが所定のEV走行下限値未満であるか否かを判定し、EV走行下限値未満でなければ続いてステップ125に進む。ステップ125では、上述の走行モード変数を書き換えないことで走行モードをEVメインモードに維持し、その後、今回の走行モード切替処理を終了する。ステップ120でEV走行下限値未満であると判定すると、続いてステップ130で走行モードをエンジンメインモードに切り替えるため、走行モード変数にエンジンメインモードを示す値を代入し、今回の走行モード切替処理を終了する。
【0081】
ステップ140では、現在のSOCが所定のエンジン走行上限値未満であるか否かを判定し、EV走行下限値未満であれば続いてステップ145に進む。なお、エンジン走行上限値は、ヒステリシスを設けるため、EV走行下限値よりも大きい値とする。ステップ145では、上述の走行モード変数を書き換えないことで走行モードをエンジンメインモードに維持したまま、今回の走行モード切替処理を終了する。ステップ140でエンジン走行上限値未満でないと判定すると、続いてステップ150で走行モードをEVメインモードに切り替えるため、上記走行モード変数にEVメインモードを示す値を代入し、今回の走行モード切替処理を終了する。
【0082】
このような処理を制御装置20が繰り返すことによって、走行モードがEVメインモードでSOCがEV走行下限を下回らない間は、ステップ105、110、115、120、125の順に処理が実行されることで、走行モードがEVメインモードに維持される。そして、電動機MG1、MG2使用等によってSOCが徐々に下がっていった結果、EV走行下限値を下回るようになると、ステップ105、110、115、120、130の順に処理が実行されることで、走行モードがEVメインモードからエンジンメインモードに切り替わる。
【0083】
また、走行モードがエンジンメインモードでSOCがエンジン走行上限を下回っている間は、ステップ105、110、115、140、145の順に処理が実行されることで、走行モードがEVメインモードに維持される。そして、発電等によってSOCが徐々に上昇していった結果、エンジン走行上限値以上になると、ステップ105、110、115、140、150の順に処理が実行されることで、走行モードがエンジンメインモードからEVメインモードに切り替わる。
【0084】
また、制御装置20は、所定のプログラムを実行することで、図12に示すように、所定の制御周期毎にその時点のアクセル開度および車速を取得し、取得したアクセル開度および車速に基づいて電動機MG1、MG2、エンジン1の作動モードを選択する。具体的には、あらかじめ制御装置20の記憶媒体(ROM、フラッシュメモリ等)に記録されたトルクマップ21に従って、取得したアクセル開度Accおよび現在の車速Vから必要な駆動トルクを算出して要求トルクとする。ここで、トルクマップ21は、アクセル開度Accおよび車速Vの組み合わせと、その組み合わせで車両の駆動に必要となる駆動トルク(すなわち要求トルク)との対応関係を示すデータである。
【0085】
また制御装置20は、算出した駆動トルク(要求トルク)と取得した車速に対応する電動機MG1、MG2、およびエンジン1の作動モードの組み合わせを、図9または図10に示した切替マップ22に基づいて選択する。
【0086】
具体的には、現在の走行モードに応じた切替マップを用い、算出した駆動トルクと取得した車速の組み合わせの位置を含む区画を当該切替マップから読み取り、当該区画に割り当てられた電動機MG1、MG2、エンジン1の作動モードの組み合わせを選択する。
【0087】
ここで、図9、図10の切替マップの具体的な区画分けと割り当て内容について説明する。まず、図9のEVメインモード用の切替マップでは、全車速域に渡って、およそ駆動トルク200Nm以下の範囲が1つの区画41となっており、その区画41には、MG2の駆動モード、第1電動機MG1の非駆動モード、エンジン1の非駆動モードの組み合わせが割り当てられている。この組み合わせは、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13を切ることで実現する。
【0088】
また、0km/hから約60km/hまでの発進〜低中速加速域においては、区画41のすぐ上の駆動トルク範囲をカバーする区画42が設けられており、その区画42には、MG1_Lモード、第2電動機MG2の非駆動モード、エンジン1の非駆動モードの組み合わせが割り当てられている。この組み合わせは、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11を切り、第2出力側クラッチ13を接続し、第2電動機MG2を駆動せず出力軸9の回転によって空回りさせることで実現する。この区画42は、図8に示したMG1_Lモードの高効率領域34が含まれているので、このようにすることで効率が高くなる。
【0089】
また、0km/hから約60km/hまでの発進〜低中速加速域においては、区画42のすぐ上の駆動トルク範囲をカバーする区画43が設けられており、その区画43には、MG1_Lモード、第2電動機MG2の駆動モード、エンジン1の非駆動モードの組み合わせが割り当てられている。この組み合わせは、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11を切り、第2出力側クラッチ13を接続することで実現する。このように、第1電動機MG1と第2電動機MG2とを併用することで、第1電動機MG1の発生する動力自体は、図8のMG1_Lモードの高効率領域34内またはその近傍の駆動トルクとしつつも、その高効率領域34よりも大きい車軸15の駆動トルクを実現することができる。
【0090】
また、20km/hから約60km/hまでの車速域においては、区画43のすぐ上の駆動トルク範囲をカバーする区画44が設けられており、その区画44には、MG1_Lモード、第2電動機MG2の駆動モード、ENG_Hモードの組み合わせが割り当てられている。この組み合わせは、入力側クラッチ8を切り、第1出力側クラッチ11および第2出力側クラッチ13を接続することで実現する。このように、第1電動機MG1、第2電動機MG2、エンジン1を併用することで、第1電動機MG1の発生する動力自体は、図8のMG1_Lモードの高効率領域34内またはその近傍の駆動トルクとし、エンジン1の出力は、図8のENG_Hモードの高効率領域38またはその近傍の駆動トルクとしつつも、その高効率領域34、38よりも大きい車軸15の駆動トルクを実現することができる。
【0091】
またこのように、第1電動機MG1とエンジン1とで用いるギア機構が異なるようにすることができるので作動モードの選択の幅が広がる。特に図8に示したように、車速が約60km/h以下の発進〜低中速加速領域39aには、MG1_Lモードの高効率領域34とENG_Hモードの高効率領域38の両方が含まれているので、これら2つを組み合わせて使用することができる。
【0092】
また、約20km/hから約60km/hまでの車速域においては、区画43、44のすぐ上の駆動トルク範囲をカバーする区画45が設けられており、その区画45には、MG1_Lモード、第2電動機MG2の駆動モード、ENG_Lモードの組み合わせが割り当てられている。この組み合わせは、入力側クラッチ8および第2出力側クラッチ13を接続し、第1出力側クラッチ11を切ることで実現する。このように、第1電動機MG1、第2電動機MG2、エンジン1を併用することで、第1電動機MG1の発生する動力自体は、図8のMG1_Lモードの高効率領域34内またはその近傍の駆動トルクとし、エンジン1の出力は、図8のENG_Lモードの高効率領域37またはその近傍の駆動トルクとしつつも、その高効率領域34、37よりも大きい車軸15の駆動トルクを実現することができる。また、領域44と違ってENG_Lモードを用いるので、より大きい駆動トルクを効率よく実現できる。
【0093】
また、約60km/hを超える領域においては、区画41のすぐ上の駆動トルク範囲をカバーする区画46が設けられており、その区画46には、MG1非駆動モード、第2電動機MG2の駆動モード、ENG_Hモードの組み合わせが割り当てられている。この組み合わせは、入力側クラッチ8および第2出力側クラッチ13を切り、第1出力側クラッチ11を接続することで実現する。このように第2電動機MG2とエンジン1を併用することで、第2電動機MG2の発生する動力自体は、図8のMG2駆動モードの高効率領域33内またはその近傍の駆動トルクとし、エンジン1の出力は、図8のENG_Hモードの高効率領域38内またはその近傍の駆動トルクとしつつも、その高効率領域33、38よりも大きい車軸15の駆動トルクを実現することができる。
【0094】
また、約60km/hから約150km/hまでの領域においては、区画46のすぐ上の駆動トルク範囲をカバーする区画47が設けられており、その区画47には、MG1_Hモード、第2電動機MG2の駆動モード、ENG_Hモードの組み合わせが割り当てられている。この組み合わせは、第2出力側クラッチ13を切り、入力側クラッチ8および第1出力側クラッチ11を接続することで実現する。このように、第1電動機MG1、第2電動機MG2、エンジン1を併用することで、第1電動機MG1の発生する動力自体は、図8のMG1_Hモードの高効率領域35内またはその近傍の駆動トルクとし、エンジン1の出力は、図8のENG_Hモードの高効率領域38内またはその近傍の駆動トルクとしつつも、その高効率領域35、38よりも大きい車軸15の駆動トルクを実現することができる。
【0095】
このように、制御装置20は、EVメインモードでは、発進〜低中速加速域39aにおいては、必要な駆動トルクが大きくなるにつれ、区画41のMG2単独モード、区画42のMG1_L単独モード、区画43のMG1_L+MG2モード、区画44のMG1_L+MG2+ENG_Hモード、区画45のMG1_L+MG2+ENG_Lモードの順に駆動源を選択し、また、高速加速・登坂域39bでは、要求トルクが大きくなるにつれて、区画41のMG2単独モード、区画46のMG2+ENG_Hモード、区画47のMG1_H+MG2+ENG_Hモードの順に駆動源を選択する。
【0096】
なお、EVメインモードにおいて、入力側クラッチ8が接続されるのは、エンジン1と第1電動機MG1が同じギア機構を使用する区画45、47のみである。したがって、必要となる駆動トルクが非常に大きくならない限り、入力側クラッチ8が作動しないので、入力側クラッチ8および入力側クラッチ8の摩擦板の摩耗を大幅に低減させることができるとともに、アクチュエータの駆動エネルギーを大幅に低減させることができる。
【0097】
次に、図10のエンジンメインモード用の切替マップの内容について説明する。エンジンメインモードでは、EVメインモードとは異なり、常にエンジン1を用いることで、車両駆動用バッテリのSOCの急な低下を抑えている。
【0098】
図10のエンジンメインモード用の切替マップでは、極低速域(時速約15km未満の速度域)を除いたすべての車速域に渡って、およそ駆動トルク200〜300Nm以下の範囲が1つの区画51となっており、その区画51には、MG2の駆動モード、第1電動機MG1の非駆動モード、ENG_Hモードの組み合わせが割り当てられている。この組み合わせは、入力側クラッチ8、第2出力側クラッチ13を切り、第1出力側クラッチ11を接続し、第1電動機MG1を停止させることで実現する。このとき、第1電動機MG1は完全に停止することができるので、第1電動機MG1の連れ回り回転による損失を低減できる。
【0099】
また、0km/hから約15km/hまでの極低速域かつ約400Nm以下の範囲をカバーすると共に、約15km/hから約60km/hまでの発進〜低中速加速域において、区画51のすぐ上の駆動トルク範囲をカバーする区画52が設けられており、その区画52には、MG1の非駆動モード、第2電動機MG2の駆動モード、ENG_Lモードの組み合わせが割り当てられている。この組み合わせは、第1出力側クラッチ11を切り、入力側クラッチ8および第2出力側クラッチ13を接続し、第1電動機MG1を駆動せず第1電動機入力軸6の回転によって空回りさせることで実現する。この区画52は、図8に示したENG_Lモードの高効率領域37が含まれているので、このようにすることで効率が高くなる。
【0100】
また、0km/hから約60km/hまでの発進〜低中速加速域においては、区画52のすぐ上の駆動トルク範囲をカバーする区画53が設けられており、その区画53には、MG1_Lモード、第2電動機MG2の駆動モード、ENG_Lモードの組み合わせが割り当てられている。この組み合わせは、第1出力側クラッチ11を切り、入力側クラッチ8および第2出力側クラッチ13を接続することで実現する。
【0101】
このように、第1電動機MG1、第2電動機MG2、エンジン1を併用することで、第1電動機MG1の発生する動力自体は、図8のMG1_Lモードの高効率領域34内またはその近傍の駆動トルクとし、第2電動機MG2の発生する動力は、図8のMG2駆動モードの高効率領域36内またはその近傍の駆動トルクとし、エンジン1の出力は、図8のENG_Lモードの高効率領域37またはその近傍の駆動トルクとしつつも、その高効率領域34、36、37よりも大きい車軸15の駆動トルクを実現することができる。また、領域52と違ってMG1_Lモードも用いるので、より大きい駆動トルクを効率よく実現できる。
【0102】
また、約60km/hから約150km/hまでの領域においては、区画51のすぐ上の駆動トルク範囲をカバーする区画54が設けられており、その区画54には、MG1_Hモード、第2電動機MG2の駆動モード、ENG_Hモードの組み合わせが割り当てられている。この組み合わせは、第2出力側クラッチ13を切り、入力側クラッチ8および第1出力側クラッチ11を接続することで実現する。
【0103】
このように、第1電動機MG1、第2電動機MG2、エンジン1を併用することで、第1電動機MG1の発生する動力自体は、図8のMG1_Hモードの高効率領域35内またはその近傍の駆動トルクとし、第2電動機MG2の発生する動力は、図8のMG2駆動モードの高効率領域36内またはその近傍の駆動トルクとし、エンジン1の出力は、図8のENG_Hモードの高効率領域38またはその近傍の駆動トルクとしつつも、その高効率領域35、36、38よりも大きい車軸15の駆動トルクを実現することができる。
【0104】
このように、制御装置20は、エンジンメインモードでは、約15km/h未満の極低速域においては、必要な駆動トルクが大きくなるにつれ、区画52のENG_L+MG2モード、区画53のMG1_L+MG2+ENG_Lモードの順に駆動源を選択し、また、低中速加速域39a中で約15km/h以上となる範囲においては、必要な駆動トルクが大きくなるにつれ、区画51のENG_H+MG2モード、区画52のENG_L+MG2モード、区画53のMG1_L+MG2+ENG_Lモードの順に駆動源を選択し、また、高速加速・登坂域39bでは、要求トルクが大きくなるにつれて、区画51のENG_H+MG2モード、区画54のMG1_H+MG2+ENG_Hモードの順に駆動源を選択する。
【0105】
以上説明した通り、制御装置20は、車両駆動用バッテリのSOCに応じて電動機MG1、MG2主体のEVメインモードとエンジン1主体のエンジンメインモードを使い分け、それぞれにおいて、必要とする駆動トルクと車速に応じて、電動機MG1、MG2、エンジン1の作動・非作動および減速比の組み合わせから効率の良い組み合わせを選択し、選択した組み合わせを実現するよう、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13の断続および電動機MG1、MG2の駆動、非駆動を制御する。
【0106】
また、図9、図10の切替マップに示されるように、通常の走行において実現する領域(車速0km/h〜60km/hかつ駆動トルク0Nm〜300Nm)においては、ENG_LモードよりもENG_Hモードの方がより多用され、また、MG1_HモードよりもMG1_Lモードの方が、より多用される。
【0107】
このように、制御装置20は、高速および中速走行時でかつ、第1電動機MG1の動力のみで走行が不可能な領域において、第1電動機MG1の効率が良い領域34、35で運転できるよう、入力側クラッチ8、第1出力側クラッチ11、第2出力側クラッチ13の断続を切替え、第1電動機MG1の動力伝達の経路を減速比の低いハイギアと高いローギアとを選択可能とする。
【0108】
また制御装置20は、高速走行時でかつ、エンジン1の動力のみで走行が可能な場合において、入力側クラッチ8を接続することなく、エンジン1側に設置した減速比の小さいハイギア機構を介して、エンジン1と第2電動機MG2の動力を駆動輪に伝達する。
【0109】
また制御装置20は、低速走行時で、第1電動機MG1の動力のみで走行可能な場合において、第1電動機MG1側に設置した減速比の大きいローギアを介して第1電動機MG1の動力を駆動輪に伝達する。
【0110】
また制御装置20は、低速走行時で、第1電動機MG1の動力のみで走行が不可能な場合において、入力側クラッチ8を接続することにより、第1電動機MG1側に設置した減速比の大きいローギアを介して、エンジン1と第1電動機MG1の総力を車軸15に伝達する。
【0111】
以上説明したように車両用動力伝達装置が構成されていることで、入力側クラッチ8を接続すれば、エンジン1と第1電動機MG1とでエンジン側のハイギア機構5、10、11または電動機側のローギア機構7、12、13を共用することができる。また、入力側クラッチ8を切れば、エンジン1がハイギア機構5、10、11を使用しながら、第1電動機MG1がローギア機構7、12、13を使用することができる。
【0112】
また、エンジン1側には最も減速比の小さいハイギア機構が設けられ、また、第1電動機MG1側には最も減速比の大きいローギア機構が設けられることになる。したがって、エンジン1は、ハイブリッド車両において一般的にエンジン1が使用する頻度の高いギア機構を、入力側クラッチ8の断続に関わらず使用することができ、また、第1電動機MG1は、ハイブリッド車両において一般的に第1電動機MG1が使用する頻度の高いギア機構を、入力側クラッチ8の断続に関わらず使用することができる。
【0113】
ここで、EVメインモードにおいて、車両がエンジン1を停止させたまま第1電動機MG1および第2電動機MG2の一方のみまたは両方を用いて車両を駆動している状態において、エンジン1を始動させるときの作動について説明する。
【0114】
例えば、図9の区画41、42、43の状態においては、エンジン1が使用されず停止しており、電動機MG1、MG2一方のみまたは両方によって車軸15に動力が伝達されており、入力側クラッチ8が切られている。この状態から、図11の処理によって走行モードがエンジンメインモードに切り替わった場合は、エンジンメインモードではエンジンによる車両の駆動が必要なので、エンジン1を始動する作動を行う。また、EVメインモードが維持される場合でも、例えば区画41、42、43の状態から、区画44から47の状態に遷移した場合は、エンジン1を始動する作動を行う。
【0115】
このような場合、制御装置20は、図13に示す処理を実行することで、エンジン1を始動するための作動を行う。具体的には、まずステップ205で、制御装置20に入力される車速信号、エンジン温度信号、アクセル開度信号に基づいて、現在の車速V、アクセル開度Acc、およびエンジン温度Teを取得する。
【0116】
続いてステップ210では、取得した車速Vおよびアクセル開度Accを図12のトルクマップ21に適用することで、車速Vおよびアクセル開度Accの所定の関数F1(V、Acc)である要求トルクTrを算出する。
【0117】
続いてステップ215では、取得したエンジン温度Teに基づいて、エンジン温度Teの所定の関数F2(Te)であるエンジン始動トルクYを算出する。ここで、エンジン始動トルクYは、エンジン1を始動するためにエンジン1に印加することが最低限必要なトルクである。したがって、エンジン温度Teが高いほどエンジンオイルの粘性抵抗が低くなる等の要因により、エンジン温度Teが大きくなるほどエンジン始動トルクYが小さくなる。例えば、エンジン始動トルクYはエンジン温度Teに反比例するようになっていてもよい。
【0118】
続いてステップ220では、車速Vが基準車速VL1より大きいか否かを判定する。ここで、基準車速VL1は、エンジン始動速度にハイギア機構の減速比ρeを乗算した結果の値である。エンジン始動速度は、エンジン1を始動するために最低限必要なエンジン1の回転数NL(rpm)に所定のタイヤ直径を乗算した値としてあらかじめ定められているので、基準車速VL1は、ハイギア機構を介して第2エンジン入力軸4と出力軸9の間で動力が伝達されているときに、エンジン1を始動するために最低限必要な車速に相当する。
【0119】
車速Vが基準車速VL1以下である場合は、第1出力側クラッチ11を接続してもエンジン1が始動できないので、第1出力側クラッチ11を接続せずにエンジン1を始動するために、ステップ225に進む。
【0120】
ステップ225では、要求トルクTrが、第2電動機MG2が出力可能な最大のトルクTm2_max(車速V等に応じて決まる)より大きいか否かを判定する。図14の実線72が、このTm2_maxを表す線である。要求トルクTrがこの最大トルクTm2_maxを超えない場合は、第2電動機MG2の出力のみで要求トルクを実現できるので、ステップ230で(クラッチ11、13を切った状態で)入力側クラッチ8を接続し、ステップ235で補正要求トルクTrcに要求トルクTrと同じ値を設定し、ステップ240で、第1電動機トルクTm1として始動トルクYを設定し、第2電動機トルクTm2として補正要求トルクTrcを設定する。
【0121】
ここで、第1電動機トルクTm1、第2電動機トルクTm2は、それぞれ電動機MG1、MG2に出力させるトルクの指令値である。制御装置20は、ステップ240に続いてステップ280で、この設定した第1電動機トルクTm1、第2電動機トルクTm2を、それぞれ電動機MG1、MG2のアクチュエータに出力し、各アクチュエータは、受けた指令値に従って制御対象の電動機MG1、MG2を作動させる。
【0122】
また、ステップ280に続くステップ290では、エンジン1の回転数Ne(周知のエンジン回転数センサから取得する)が、エンジン1を始動するために最低限必要なエンジン1の回転数NLより大きいか否かを判定し、大きくないと判定した場合は、まだエンジン1の始動が完了していないので、処理をステップ205に戻し、大きいと判定した場合は、エンジン1の始動が完了したので、図13の処理を終了する。
【0123】
このようなステップ230、235、240、280、290の処理により、エンジンの始動開始から始動完了までの間、要求トルクTr(駆動トルク)と車速の組み合わせが図14の網掛け領域XC1に入っている場合は、第1電動機MG1の出力したトルクTm1(=エンジン始動トルクY)は、第1電動機入力軸6、入力側クラッチ8、第2エンジン入力軸4、ダンパ3、第1エンジン入力軸2を伝達することで、エンジン1に入力され、これにより、エンジン1が始動する。また、第2電動機MG2の出力したトルクTm2(=要求トルクTr)は、出力軸9を介して車軸15に伝達されるので、車両は必要なトルクを発生させて走行することができる。
【0124】
つまり、第1電動機MG1の出力はエンジン1の始動にのみ使用され、第2電動機MG2の出力は車両の駆動にのみ使用される。ステップ240の後、処理はステップ205に戻る。
【0125】
また、ステップ225で、要求トルクTrが最大トルクTm2_maxより大きいと判定した場合は、第2電動機MG2の出力のみでは要求トルクを実現できないので、電動機MG1、MG2の両方で車両を駆動しつエンジン1も始動するため、ステップ245に進む。ステップ245では、(第1出力側クラッチ11を切った状態で)第2出力側クラッチ13および入力側クラッチ8を接続する。これにより、図15の太実線に示すような経路で動力伝達が可能になる。
【0126】
続いてステップ250では、エンジン始動トルクYにローギア機構の減速比ρmを乗算した値Y・ρmと要求トルクTrとの和(Tr+Y・ρm)を算出し、この算出値(Tr+Y・ρm)を補正要求トルクTrcとして設定する。この算出値は、ローギア機構を介してエンジン1と出力軸9との間のトルク伝達がある場合において、エンジン始動トルクYをエンジン1に印加し、かつ、要求トルクTrを車軸15に伝達するために必要なトルクを、出力軸9におけるトルクに換算した値である。
【0127】
続いてステップ255では、設定した補正要求トルクTrcと車速Vの組み合わせを所定のマップf3に適用することで、補正要求トルクTrcおよび車速Vの所定の関数F3(Trc、V)を算出し、算出結果を第1電動機トルクTm1とする。また、設定した補正要求トルクTrcと車速Vの組み合わせを別の所定のマップf4に適用することで、補正要求トルクTrcおよび車速Vの所定の関数F4(Trc、V)を算出し、算出結果を第2電動機トルクTm2とする。
【0128】
これら所定のマップf3、f4は、補正要求トルクTrcおよび車速Vの組に対して、一意に第1電動機トルクTm1および第2電動機トルクTm2を割り当てるマップである。このようなマップとしては、車軸で補正要求トルクTrcを発生するために最も効率の良い第1電動機トルクTm1および第2電動機トルクTm2を割り当てるような周知のマップを用いればよい。
【0129】
制御装置20は、ステップ255に続いてステップ280で、この設定した第1電動機トルクTm1、第2電動機トルクTm2を、それぞれ電動機MG1、MG2のアクチュエータに出力し、各アクチュエータは、受けた指令値に従って制御対象の電動機MG1、MG2を作動させる。
【0130】
また、ステップ280に続くステップ290では、エンジン1の回転数Neが、エンジン1を始動するために最低限必要なエンジン1の回転数NLより大きいか否かを判定し、大きくないと判定した場合は、まだエンジン1の始動が完了していないので、処理をステップ205に戻し、大きいと判定した場合は、エンジン1の始動が完了したので、図13の処理を終了する。
【0131】
このようなステップ245、250、255、280、290の処理により、エンジンの始動開始から始動完了までの間、要求トルクTr(駆動トルク)と車速の組み合わせが図14の実線の斜線が付された領域XB1に入っている場合は、第1電動機MG1の出力したトルクTm1(=F3(Trc、V))および第2電動機MG2の出力したトルクTm2(=F3(Trc、V))は、ローギア機構で適宜合成、分配される。
【0132】
そして、分配された一方においては、エンジン1を始動させるための始動トルクYが、第1電動機入力軸6、入力側クラッチ8、第2エンジン入力軸4、ダンパ3、第1エンジン入力軸2を伝達することで、エンジン1に入力され、これにより、エンジン1が始動する。また、分配された他方においては、車両を駆動するための要求トルクTrが、出力軸9を介して車軸15に伝達されるので、車両は必要なトルクを発生させて走行することができる。
【0133】
このように、車速Vが基準車速VL1以下で、かつ、第2電動機MG2のみのトルクで不足する場合は、エンジン始動時の回転数不足を回避するために、より減速比の大きい第1電動機MG1側のローギア機構(第2入力側クラッチ13)からエンジン1を始動する。これにより、第1電動機MG1と第2電動機MG2の両方で動力を発生させてエンジン1を始動することができる。
【0134】
次に、ステップ220で車速Vが基準速度VL1より大きいと判定した場合について説明する。この場合、ハイギア機構を介して出力軸9からエンジン1に動力を伝達した場合も、エンジン1を始動させることができる。
【0135】
この場合、続いてステップ260に進み、要求トルクTrが基準トルクよりも大きいか否かを判定する。基準トルクは、入力側クラッチ8を接続してエンジン1を始動しつつ、ローギア機構を通じて出力軸9と第1電動機入力軸6とで動力伝達を可能としたときの、第1電動機MG1および第2電動機MG2が両方合わせて出力軸9に出力できる最大トルクである。
【0136】
具体的には、基準トルクは、(Tm1_max−Y)・ρm+Tm2_maxという式で表せる。ここで、Tm1_maxは、第1電動機MG1が出力可能な最大のトルクであり、車速V等に応じて決まる。なお、図14の実線71は、エンジン1を始動する必要がない場合の、第1電動機MG1および第2電動機MG2が両方合わせて出力軸9に出力できる最大トルクTm1_max・ρm+Tm2_maxを示す線であり、点線72は、上述の基準トルク(Tm1_max−Y)・ρm+Tm2_maxを示す線である。
【0137】
要求トルクTrが基準トルク以下である場合、ローギア機構でトルク伝達を行ってもエンジン1を始動しつつ要求トルクを満たせるので、ステップ225に進む。ステップ225以降は、既に説明した通りである。
【0138】
すなわち、第2電動機MG2が出力可能な最大のトルクを要求トルクTrが上回っていなければ(ステップ225→NO)、入力側クラッチ8を接続し、第1出力側クラッチ11および第2出力側クラッチ13を切ることで、第1電動機MG1の出力したトルクTm1(=エンジン始動トルクY)を、第1電動機入力軸6、入力側クラッチ8、第2エンジン入力軸4、ダンパ3、第1エンジン入力軸2を介してエンジン1に入力してエンジン1を始動させ、また、第2電動機MG2の出力したトルクTm2(=要求トルクTr)を、出力軸9を介して車軸15に伝達する。このような作動を行うのは、要求トルクTrと車速Vの組が点ハッチングが付された領域XC2内に入っているときである。
【0139】
また、第2電動機MG2が出力可能な最大のトルクを要求トルクTrが上回っていれば(ステップ225→YES)、第2出力側クラッチ13および入力側クラッチ8を接続して第1出力側クラッチ11を切ることで、第1電動機MG1の出力したトルクTm1(=F3(Trc、V))および第2電動機MG2の出力したトルクTm2(=F3(Trc、V))を、ローギア機構で適宜合成、分配することで、エンジン1を始動させつつ、要求トルクTrを車軸15に伝達する。このような作動を行うのは、要求トルクTrと車速Vの組が、ハッチングの付されていない領域XB2内に入っているときである。
【0140】
ステップ260で要求トルクTrが基準トルクより大きいと判定した場合、エンジン1の始動時の駆動トルク不足を低減するために、ステップ265に進む。ステップ265では、入力側クラッチ8を切った状態で第1出力側クラッチ11を接続すると共に第2出力側クラッチ13を接続する。
【0141】
続いてステップ270では、エンジン始動トルクYにハイギア機構の減速比ρeを乗算した値Y・ρeと要求トルクTrとの和(Tr+Y・ρe)を算出し、この算出値(Tr+Y・ρe)を補正要求トルクTrcとして設定する。この算出値は、ハイギア機構を介してエンジン1と出力軸9との間のトルク伝達がある場合において、エンジン始動トルクYをエンジン1に印加し、かつ、要求トルクTrを車軸15に伝達するために必要なトルクを、出力軸9におけるトルクに換算した値である。
【0142】
続いてステップ275では、ステップ255と同じ処理を行うことで、第1電動機トルクTm1および第2電動機トルクTm2を設定し、ステップ275に続いてステップ280で、この設定した第1電動機トルクTm1、第2電動機トルクTm2を、それぞれ電動機MG1、MG2のアクチュエータに出力し、各アクチュエータは、受けた指令値に従って制御対象の電動機MG1、MG2を作動させる。
【0143】
また、ステップ280に続くステップ290では、エンジン1の回転数Neが、エンジン1を始動するために最低限必要なエンジン1の回転数NLより大きいか否かを判定し、大きくないと判定した場合は、まだエンジン1の始動が完了していないので、処理をステップ205に戻し、大きいと判定した場合は、エンジン1の始動が完了したので、図13の処理を終了する。
【0144】
このようなステップ265、270、275、280、290の処理により、エンジンの始動開始から始動完了までの間、要求トルクTr(駆動トルク)と車速の組み合わせが図14の破線の斜線が付された領域XAに入っている場合は、図16に示すように、第1電動機MG1の出力したトルクTm1(=F3(Trc、V))および第2電動機MG2の出力したトルクTm2(=F3(Trc、V))は、ローギア機構で合成され、ハイギア機構で分配される。
【0145】
そして、分配された一方においては、始動トルクYが、第2エンジン入力軸4、ダンパ3、第1エンジン入力軸2を伝達することで、エンジン1に入力され、これにより、エンジン1が始動する。また、分配された他方においては、残りの駆動トルクが出力軸9を介して車軸15に伝達される。
【0146】
このように、車両の駆動のために必要な要求トルクTrが基準トルクよりも大きい場合は、第1電動機MG1の動力を電動機側ギア機構を介して出力軸9に伝達した上でエンジン側ギア機構を介してエンジン入力軸2、4に伝達するので、入力側クラッチ8を介して第1電動機MG1の動力を伝達する場合に比べ、エンジンに大きなトルクを供給することができる。つまり、図15の場合と比べ、第1電動機MG1の出力トルクはローギア機構およびハイギア機構を介することで、ρm/ρe(1より大きい)倍されてエンジン1に印加されるので、車軸15における駆動トルク不足をより低減することができる。
【0147】
以上のように、本実施形態では、要求駆動トルクTrを算出し、エンジン始動に必要なトルクYを算出し、走行条件(車速V、要求動力Tr)に応じて、駆動トルクの低下を抑制するためのエンジン再始動経路を適宜選択することで、両方の電動機MG1、MG2を同時に用いて、エンジンを始動しつつ、車両の駆動力を供給することができる。
【0148】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。本実施形態に係る車両用動力伝達装置の機構構成は、減速比ρe、ρmを除いて、第1実施形態と同じである。
【0149】
ここで、本実施形態の減速比ρe、ρmについて説明する。第1ドライブギア5、第1ドリブンギア10、および第1出力側クラッチ11によって構成されるギア機構(エンジン側ギア機構の一例に相当する)の減速比ρeは、本実施形態においては、第2ドライブギア7、第2ドリブンギア12、および第2出力側クラッチ13によって構成されるギア機構(第1電動機側ギア機構の一例に相当する)の減速比ρmよりも大きくなっている。例えば、ρe=2、ρm=1とする。
【0150】
したがって、本実施形態においては、第1ドライブギア5、第1ドリブンギア10、および第1出力側クラッチ11によって構成されるギア機構がローギア機構であり、第2ドライブギア7、第2ドリブンギア12、および第2出力側クラッチ13によって構成されるギア機構がハイギア機構である。
【0151】
そして、本実施形態の制御装置20の作動は、エンジン1を始動させるとき、図13に示した処理に代えて、図17に示す処理を実行する点のみが、第1実施形態と異なる。以下、図13の処理について説明する。図13と図17で同じ処理を行うステップについては、同じステップ番号を付し、その説明は省略または簡略化する。
【0152】
まず、第1実施形態と同様、ステップ205でアクセル開度Accおよびエンジン温度Teを取得し、続いてステップ210で要求トルクTrを算出し、続いてステップ215でエンジン始動トルクYを算出する。
【0153】
続いてステップ320では、車速Vが基準車速VL2より大きいか否かを判定する。ここで、基準車速VL2は、エンジン始動速度にハイギア機構の減速比ρmを乗算した結果の値である。基準車速VL2は、ハイギア機構を介して第1電動機入力軸6および第2エンジン入力軸4と出力軸9の間で動力が伝達されているときに、エンジン1を始動するために最低限必要な車速に相当する。
【0154】
車速Vが基準車速VL2以下である場合は、第2出力側クラッチ13を接続してもエンジン1が始動できないので、第2出力側クラッチ13を接続せずにエンジン1を始動するために、ステップ225に進む。
【0155】
ステップ225では、要求トルクTrが、第2電動機MG2が出力可能な最大のトルクTm2_maxより大きいか否かを判定する。要求トルクTrがこの最大トルクTm2_maxを超えない場合は、ステップ230に進む。ステップ230、235、240、280、290の処理は第1実施形態と同じである。
【0156】
ステップ225で、要求トルクTrが最大トルクTm2_maxより大きいと判定した場合は、第2電動機MG2の出力のみでは要求トルクを実現できないので、電動機MG1、MG2の両方で車両を駆動しつエンジン1も始動するため、ステップ345に進む。ステップ345では、(第2出力側クラッチ13を切った状態で)第1出力側クラッチ11および入力側クラッチ8を接続する。これにより、図18の太実線に示すような経路で動力伝達が可能となる。
【0157】
続いてステップ350では、エンジン始動トルクYにローギア機構の減速比ρeを乗算した値Y・ρeと要求トルクTrとの和(Tr+Y・ρe)を算出し、この算出値(Tr+Y・ρe)を補正要求トルクTrcとして設定する。この算出値は、ローギア機構を介してエンジン1と出力軸9との間のトルク伝達がある場合において、エンジン始動トルクYをエンジン1に印加し、かつ、要求トルクTrを車軸15に伝達するために必要なトルクを、出力軸9におけるトルクに換算した値である。
【0158】
続いてステップ355では、設定した補正要求トルクTrcと車速Vの組み合わせを所定のマップf5に適用することで、補正要求トルクTrcおよび車速Vの所定の関数F5(Trc、V)を算出し、算出結果を第1電動機トルクTm1とする。また、設定した補正要求トルクTrcと車速Vの組み合わせを別の所定のマップf6に適用することで、補正要求トルクTrcおよび車速Vの所定の関数F6(Trc、V)を算出し、算出結果を第2電動機トルクTm2とする。
【0159】
これら所定のマップf5、f6は、補正要求トルクTrcおよび車速Vの組に対して、一意に第1電動機トルクTm1および第2電動機トルクTm2を割り当てるマップである。このようなマップとしては、車軸で補正要求トルクTrcを発生するために最も効率の良い第1電動機トルクTm1および第2電動機トルクTm2を割り当てるような周知のマップを用いればよい。
【0160】
制御装置20は、ステップ355に続いてステップ280で、この設定した第1電動機トルクTm1、第2電動機トルクTm2を、それぞれ電動機MG1、MG2のアクチュエータに出力し、各アクチュエータは、受けた指令値に従って制御対象の電動機MG1、MG2を作動させる。
【0161】
また、ステップ280に続くステップ290では、エンジン1の回転数Ne(周知のエンジン回転数センサから取得する)が、エンジン1を始動するために最低限必要なエンジン1の回転数NLより大きいか否かを判定し、大きくないと判定した場合は、まだエンジン1の始動が完了していないので、処理をステップ205に戻し、大きいと判定した場合は、エンジン1の始動が完了したので、図17の処理を終了する。
【0162】
このようなステップ345、350、355、280、290の処理により、エンジンの始動開始から始動完了までの間、要求トルクTr(駆動トルク)と車速の組み合わせが図14(ただし、VL1をVL2に置き換える)の領域XB1に入っている場合は、図18に示すように、第1電動機MG1の出力したトルクTm1(=F5(Trc、V))および第2電動機MG2の出力したトルクTm2(=F6(Trc、V))は、ローギア機構で適宜合成、分配される。
【0163】
そして、分配された一方においては、始動トルクYが、第2エンジン入力軸4、ダンパ3、第1エンジン入力軸2を伝達することで、エンジン1に入力され、これにより、エンジン1が始動する。また、分配された他方においては、要求トルクTrが、出力軸9を介して車軸15に伝達されるので、車両は必要なトルクを発生させて走行することができる。
【0164】
このように、車速Vが基準車速VL2以下で、かつ、第2電動機MG2のみのトルクで不足する場合は、エンジン始動時の回転数不足を回避するために、より減速比の大きいエンジン1側のローギア機構(第1出力側クラッチ11)からエンジン1を始動する。
【0165】
次に、ステップ320で車速Vが基準速度VL2より大きいと判定した場合について説明する。この場合、ハイギア機構を介して出力軸9からエンジン1に動力を伝達した場合も、エンジン1を始動させることができる。
【0166】
この場合、続いてステップ360に進み、第1実施形態と同様、要求トルクTrが基準トルクよりも大きいか否かを判定する。本実施形態の基準トルクは、入力側クラッチ8を接続してエンジン1を始動しつつ、ハイギア機構を通じて出力軸9と第1電動機入力軸6とで動力伝達を可能としたときの、第1電動機MG1および第2電動機MG2が両方合わせて出力軸9に出力できる最大トルクである。具体的には、基準トルクは、第1実施形態と同様、(Tm1_max−Y)・ρm+Tm2_maxという式で表せる。
【0167】
要求トルクTrが基準トルク以下である場合、ハイギア機構でトルク伝達を行ってもエンジン1を始動しつつ要求トルクを満たせるので、ステップ225に進む。ステップ225以降は、既に説明した通りである。
【0168】
すなわち、第2電動機MG2が出力可能な最大のトルクを要求トルクTrが上回っていなければ(ステップ225→NO)、入力側クラッチ8を接続し、第1出力側クラッチ11および第2出力側クラッチ13を切ることで、第1電動機MG1の出力したトルクTm1(=エンジン始動トルクY)を、第1電動機入力軸6、入力側クラッチ8、第2エンジン入力軸4、ダンパ3、第1エンジン入力軸2を介してエンジン1に入力してエンジン1を始動させ、また、第2電動機MG2の出力したトルクTm2(=要求トルクTr)を、出力軸9を介して車軸15に伝達する。このような作動を行うのは、要求トルクTrと車速Vの組が図14(ただしVL1をVL2に置き換える)の領域XC2内に入っているときである。
【0169】
また、第2電動機MG2が出力可能な最大のトルクを要求トルクTrが上回っていれば(ステップ225→YES)、第1出力側クラッチ11および入力側クラッチ8を接続して第2出力側クラッチ13を切ることで、第1電動機MG1の出力したトルクTm1(=F5(Trc、V))および第2電動機MG2の出力したトルクTm2(=F5(Trc、V))を、ローギア機構で適宜合成、分配することで、エンジン1を始動させつつ、要求トルクTrを車軸15に伝達する。このような作動を行うのは、要求トルクTrと車速Vの組が図14(ただしVL1をVL2に置き換える)の領域XB2内に入っているときである。
【0170】
ステップ360で要求トルクTrが基準トルクより大きいと判定した場合、エンジン1の始動時の駆動トルク不足を低減するために、ステップ365に進む。ステップ365では、第1出力側クラッチ11を切った状態で第2出力側クラッチ13を接続すると共に入力側クラッチ8を接続する。これによって、図15の太実線に示すような経路で動力伝達が可能になる。
【0171】
続いてステップ370では、エンジン始動トルクYにハイギア機構の減速比ρmを乗算した値Y・ρmと要求トルクTrとの和(Tr+Y・ρm)を算出し、この算出値(Tr+Y・ρe)を補正要求トルクTrcとして設定する。この算出値は、ハイギア機構を介してエンジン1と出力軸9との間のトルク伝達がある場合において、エンジン始動トルクYをエンジン1に印加し、かつ、要求トルクTrを車軸15に伝達するために必要なトルクを、出力軸9におけるトルクに換算した値である。
【0172】
続いてステップ375では、第1実施形態のステップ255と同じ処理を行うことで、第1電動機トルクTm1および第2電動機トルクTm2を設定し、ステップ375に続いてステップ280で、この設定した第1電動機トルクTm1、第2電動機トルクTm2を、それぞれ電動機MG1、MG2のアクチュエータに出力し、各アクチュエータは、受けた指令値に従って制御対象の電動機MG1、MG2を作動させる。
【0173】
また、ステップ280に続くステップ290では、エンジン1の回転数Ne(周知のエンジン回転数センサから取得する)が、エンジン1を始動するために最低限必要なエンジン1の回転数NLより大きいか否かを判定し、大きくないと判定した場合は、まだエンジン1の始動が完了していないので、処理をステップ205に戻し、大きいと判定した場合は、エンジン1の始動が完了したので、図17の処理を終了する。
【0174】
このようなステップ365、370、375、280、290の処理により、エンジンの始動開始から始動完了までの間、要求トルクTr(駆動トルク)と車速の組み合わせが図14(ただしVL1をVL2に置き換える)の領域XAに入っている場合は、第1電動機MG1の出力したトルクTm1(=F3(Trc、V))および第2電動機MG2の出力したトルクTm2(=F3(Trc、V))は、ローギア機構で適宜合成、分配される。
【0175】
そして、分配された一方においては、始動トルクYが、第1電動機入力軸6、入力側クラッチ8、第2エンジン入力軸4、ダンパ3、第1エンジン入力軸2を伝達することで、エンジン1に入力され、これにより、エンジン1が始動する。また、分配された他方においては、要求トルクTrが、出力軸9を介して車軸15に伝達されるので、車両は必要なトルクを発生させて走行することができる。
【0176】
このように、要求動力Trが電動機側変速機で出力できる最大トルクより大きい場合は、エンジン始動時の駆動トルク不足を低減するために、減速比の小さい第1電動機MG1側(第2出力側クラッチ13)からエンジンを始動する。
【0177】
以上のように、本実施形態では、要求駆動トルクTrを算出し、エンジン始動に必要なトルクYを算出し、走行条件(車速V、要求動力Tr)に応じて、駆動トルクの低下を抑制するためのエンジン再始動経路を適宜選択することで、、両方の電動機MG1、MG2を同時に用いて、エンジンを始動しつつ、車両の駆動力を供給することができる。
【0178】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の各発明特定事項の機能を実現し得る種々の形態を包含するものである。
【0179】
(1)上記実施形態においては、入力軸2、4、6と出力軸9との間の動力伝達を行うギア機構として、2つのギア機構(ハイギア機構、ローギア機構)が例示されているが、これら2つに加え、入力軸2、4、6と出力軸9との間の動力伝達を行う他のギア機構が設けられていてもよい。
【0180】
(2)上記実施形態においては、エンジン1と第1ドライブギア5との間にダンパ3が設けられているが、このダンパを廃し、第1エンジン入力軸2と第2エンジン入力軸4とを一体にしてもよい。
【0181】
(3)また、上記各実施形態において、ダンパ3と第1ドライブギア5の間の第2エンジン入力軸4にクラッチを設けてもよい。
【0182】
(4)また、クラッチ11、13は、出力軸9側でなく、入力軸4、6側に取り付けられていてもよい。その場合、ドライブギア5、7は、入力軸に回動自在に取り付けられ、ドリブンギア10、12は、出力軸9に軸着され、クラッチ11、13、入力軸4、6とドライブギア5、7とを相互に断続するようにすればよい。
【0183】
(5)また、上記の実施形態において、制御装置20がプログラムを実行することで実
現している各機能は、それらの機能を有するハードウェア(例えば回路構成をプログラム
することが可能なFPGA)を用いて実現するようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0184】
1 エンジン
2、4 エンジン入力軸
3 ダンパ
5 第1ドライブギア
6 第1電動機入力軸
8 入力側クラッチ
9 出力軸
10 第1ドリブンギア
11 第1出力側クラッチ
12 第2ドリブンギア
13 第2出力側クラッチ
15 車軸
20 制御装置
MG1、MG2 電動機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンが発生した動力と第1電動機(MG1)が発生した動力と第2電動機(MG2)が発生した動力を車両の車軸(15)に伝達する車両用動力伝達装置であって、
前記エンジンが発生した動力が入力され、入力された前記エンジンの動力を伝達するエンジン入力軸(2、4)と、
前記第1電動機(MG1)が発生した動力が入出力され、入出力された前記第1電動機(MG1)の動力を伝達する第1電動機入力軸(6)と、
前記車軸(15)に伝達するための動力を出力する出力軸(9)と、
前記出力軸(9)に動力を入出力する第2電動機(MG2)と、
前記エンジン入力軸(2、4)に設けられ、前記エンジン入力軸(2、4)の動力を、前記第1電動機入力軸(6)を介さずに、前記出力軸(9)に伝達するためのエンジン側ギア機構(5、10、11)と、
前記第1電動機入力軸(6)に設けられ、前記第1電動機入力軸(6)の動力を、前記エンジン入力軸(2、4)を介さずに、前記出力軸(9)に伝達するための電動機側ギア機構(7、12、13)と、
前記エンジン入力軸(2、4)と前記第1電動機入力軸(6)とを相互に断続する入力側クラッチ(8)と、
前記エンジン(1)、前記第1電動機(MG1)、および前記第2電動機(MG2)が発生する動力の伝達経路を制御する制御装置(20)と、を備え、
前記エンジン側ギア機構(5、10、11)は、当該エンジン側ギア機構(5、10、11)を介した前記エンジン入力軸(2、4)と前記出力軸(9)との間の動力伝達を断続するエンジン側クラッチ(11)を有し、
前記電動機側ギア機構(7、12、13)は、当該電動機側ギア機構(7、12、13)を介した前記第1電動機入力軸(6)と前記出力軸(9)との間の動力伝達を断続する電動機側クラッチ(13)を有し、
前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動する際、前記エンジン側クラッチ(11)を切り、前記電動機側クラッチ(13)を接続すると共に前記入力側クラッチ(8)を接続し、前記第1電動機(MG1)と前記第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させて前記エンジン(1)を始動すると共に前記車軸(15)に動力を伝達することを特徴とする車両用動力伝達装置。
【請求項2】
前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動するために前記エンジン(1)に印加することが必要なトルクであるエンジン始動トルクYに前記電動機側ギア機構(7、12、13)の減速比ρmを乗算した値Y・ρmと、前記車両の駆動のために必要な要求トルクTrとの和(Tr+Y・ρm)を算出し、この算出値(Tr+Y・ρm)に応じた補正要求トルクTrcを設定し、
前記要求トルクTrcを発生するための前記第1電動機(MG1)のトルクTm1および前記第2電動機(MG2)のトルクTm2を、前記第1電動機(MG1)および前記第2電動機(MG2)に実現させることを特徴とする請求項1に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項3】
前記電動機側ギア機構(7、12、13)の減速比ρmの方が前記エンジン側ギア機構(5、10、11)の減速比ρeよりも大きく、
前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動する際、前記車両の駆動に必要な要求トルクが前記第2電動機(MG2)の出力可能な最大トルクより大きいか否かを判定し、
前記要求トルクが前記最大トルクより大きくないと判定した場合は、前記エンジン側クラッチ(11)および前記電動機側クラッチ(13)を切り、前記入力側クラッチ(8)を接続することで、前記第1電動機(MG1)および前記第2電動機(MG2)のうち前記第2電動機(MG2)のみの動力でエンジン(1)を始動すると共に、前記第1電動機(MG1)および前記第2電動機(MG2)のうち前記第1電動機(MG1)のみの動力で前記車両を駆動し、
前記要求トルクが前記最大トルクより大きいと判定した場合は、前記エンジン側クラッチ(11)を切り、前記電動機側クラッチ(13)を接続すると共に前記入力側クラッチ(8)を接続し、前記第1電動機(MG1)と前記第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させて前記エンジン(1)を始動すると共に前記車軸(15)に動力を伝達することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項4】
前記電動機側ギア機構(7、12、13)の減速比ρmの方が前記エンジン側ギア機構(5、10、11)の減速比ρeよりも大きく、
前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動する際、
前記車両の車速Vが基準速度VL1より大きく、かつ、前記車両の駆動のために必要な要求トルクTrが基準トルクよりも大きいことに基づいて、前記入力側クラッチ(8)を切り、前記エンジン側クラッチ(11)を接続すると共に前記電動機側クラッチ(13)を接続し、前記第1電動機(MG1)と前記第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させて前記エンジン(1)を始動し、
前記車両の車速Vが前記基準速度VL1より大きくなく、または、前記車両の駆動のために必要な要求トルクTrが前記基準トルクよりも大きくないことに基づいて、前記エンジン側クラッチ(11)を切り、前記電動機側クラッチ(13)を接続すると共に前記入力側クラッチ(8)を接続し、前記第1電動機(MG1)と前記第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させて前記エンジン(1)を始動すると共に前記車軸(15)に動力を伝達することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両用動力伝達装置。
【請求項5】
エンジンが発生した動力と第1電動機(MG1)が発生した動力と第2電動機(MG2)が発生した動力を車両の車軸(15)に伝達する車両用動力伝達装置であって、
前記エンジンが発生した動力が入力され、入力された前記エンジンの動力を伝達するエンジン入力軸(2、4)と、
前記第1電動機(MG1)が発生した動力が入出力され、入出力された前記第1電動機(MG1)の動力を伝達する第1電動機入力軸(6)と、
前記車軸(15)に伝達するための動力を出力する出力軸(9)と、
前記出力軸(9)に動力を入出力する第2電動機(MG2)と、
前記エンジン入力軸(2、4)に設けられ、前記エンジン入力軸(2、4)の動力を、前記第1電動機入力軸(6)を介さずに、前記出力軸(9)に伝達するためのエンジン側ギア機構(5、10、11)と、
前記第1電動機入力軸(6)に設けられ、前記第1電動機入力軸(6)の動力を、前記エンジン入力軸(2、4)を介さずに、前記出力軸(9)に伝達するための電動機側ギア機構(7、12、13)と、
前記エンジン入力軸(2、4)と前記第1電動機入力軸(6)とを相互に断続する入力側クラッチ(8)と、
前記エンジン(1)、前記第1電動機(MG1)、および前記第2電動機(MG2)が発生する動力の伝達経路を制御する制御装置(20)と、を備え、
前記エンジン側ギア機構(5、10、11)は、当該エンジン側ギア機構(5、10、11)を介した前記エンジン入力軸(2、4)と前記出力軸(9)との間の動力伝達を断続するエンジン側クラッチ(11)を有し、
前記電動機側ギア機構(7、12、13)は、当該電動機側ギア機構(7、12、13)を介した前記第1電動機入力軸(6)と前記出力軸(9)との間の動力伝達を断続する電動機側クラッチ(13)を有し、
前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動する際、前記電動機側クラッチ(13)を切り、前記エンジン側クラッチ(11)を接続すると共に前記入力側クラッチ(8)を接続し、前記第1電動機(MG1)と前記第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させて前記エンジン(1)を始動すると共に前記車軸(15)に動力を伝達することを特徴とする車両用動力伝達装置。
【請求項6】
前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動するために前記エンジン(1)に印加することが必要なトルクであるエンジン始動トルクYに前記エンジン側ギア機構(7、12、13)の減速比ρeを乗算した値Y・ρeと、前記車両の駆動のために必要な要求トルクTrとの和(Tr+Y・ρe)を算出し、この算出値(Tr+Y・ρe)に応じた補正要求トルクTrcを設定し、
前記要求トルクTrcを発生するための前記第1電動機(MG1)のトルクTm1および前記第2電動機(MG2)のトルクTm2を、前記第1電動機(MG1)および前記第2電動機(MG2)に実現させることを特徴とする請求項5に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項7】
前記エンジン側ギア機構(5、10、11)の減速比ρeの方が前記電動機側ギア機構(7、12、13)の減速比ρmよりも大きく、
前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動する際、前記車両の駆動に必要な要求トルクが前記第2電動機(MG2)の出力可能な最大トルクより大きいか否かを判定し、
前記要求トルクが前記最大トルクより大きくないと判定した場合は、前記エンジン側クラッチ(11)および前記電動機側クラッチ(13)を切り、前記入力側クラッチ(8)を接続することで、前記第1電動機(MG1)および前記第2電動機(MG2)のうち前記第2電動機(MG2)のみの動力でエンジン(1)を始動すると共に、前記第1電動機(MG1)および前記第2電動機(MG2)のうち前記第1電動機(MG1)のみの動力で前記車両を駆動し、
前記要求トルクが前記最大トルクより大きいと判定した場合は、前記電動機側クラッチ(13)を切り、前記エンジン側クラッチ(11)を接続すると共に前記入力側クラッチ(8)を接続し、前記第1電動機(MG1)と前記第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させて前記エンジン(1)を始動すると共に前記車軸(15)に動力を伝達することを特徴とする請求項5または6に記載の車両用動力伝達装置。
【請求項8】
前記エンジン側ギア機構(5、10、11)の減速比ρeの方が前記電動機側ギア機構(7、12、13)の減速比ρmよりも大きく、
前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動する際、
前記車両の車速Vが基準速度VL2より大きく、かつ、前記車両の駆動のために必要な要求トルクTrが基準トルクよりも大きいことに基づいて、前記エンジン側クラッチ(11)を切り、前記電動機側クラッチ(13)を接続すると共に前記入力側クラッチ(8)を接続し、前記第1電動機(MG1)と前記第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させて前記エンジン(1)を始動すると共に前記車軸(15)に動力を伝達し、
前記車両の車速Vが前記基準速度VL2より大きくなく、または、前記車両の駆動のために必要な要求トルクTrが前記基準トルクよりも大きくないことに基づいて、前記電動機側クラッチ(13)を切り、前記エンジン側クラッチ(11)を接続すると共に前記入力側クラッチ(8)を接続し、前記第1電動機(MG1)と前記第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させて前記エンジン(1)を始動すると共に前記車軸(15)に動力を伝達することを特徴とする請求項5ないし7のいずれか1つに記載の車両用動力伝達装置。
【請求項9】
エンジンが発生した動力と第1電動機(MG1)が発生した動力と第2電動機(MG2)が発生した動力を車両の車軸(15)に伝達する車両用動力伝達装置であって、
前記エンジンが発生した動力が入力され、入力された前記エンジンの動力を伝達するエンジン入力軸(2、4)と、
前記第1電動機(MG1)が発生した動力が入出力され、入出力された前記第1電動機(MG1)の動力を伝達する第1電動機入力軸(6)と、
前記車軸(15)に伝達するための動力を出力する出力軸(9)と、
前記出力軸(9)に動力を入出力する第2電動機(MG2)と、
前記エンジン入力軸(2、4)に設けられ、前記エンジン入力軸(2、4)の動力を、前記第1電動機入力軸(6)を介さずに、前記出力軸(9)に伝達するためのエンジン側ギア機構(5、10、11)と、
前記第1電動機入力軸(6)に設けられ、前記第1電動機入力軸(6)の動力を、前記エンジン入力軸(2、4)を介さずに、前記出力軸(9)に伝達するための電動機側ギア機構(7、12、13)と、
前記エンジン入力軸(2、4)と前記第1電動機入力軸(6)とを相互に断続する入力側クラッチ(8)と、
前記エンジン(1)、前記第1電動機(MG1)、および前記第2電動機(MG2)が発生する動力の伝達経路を制御する制御装置(20)と、を備え、
前記エンジン側ギア機構(5、10、11)は、当該エンジン側ギア機構(5、10、11)を介した前記エンジン入力軸(2、4)と前記出力軸(9)との間の動力伝達を断続するエンジン側クラッチ(11)を有し、
前記電動機側ギア機構(7、12、13)は、当該電動機側ギア機構(7、12、13)を介した前記第1電動機入力軸(6)と前記出力軸(9)との間の動力伝達を断続する電動機側クラッチ(13)を有し、
前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動する際、前記入力側クラッチ(8)を切り、前記エンジン側クラッチ(11)を接続すると共に前記電動機側クラッチ(13)を接続し、前記第1電動機(MG1)と前記第2電動機(MG2)の両方で動力を発生させて前記エンジン(1)を始動すると共に前記車軸(15)に動力を伝達することを特徴とする車両用動力伝達装置。
【請求項10】
前記制御装置(20)は、前記エンジン(1)を始動するために前記エンジン(1)に印加することが必要なトルクであるエンジン始動トルクYに前記エンジン側ギア機構(7、12、13)の減速比ρeを乗算した値Y・ρeと、前記車両の駆動のために必要な要求トルクTrとの和(Tr+Y・ρe)を算出し、この算出値(Tr+Y・ρe)に応じた補正要求トルクTrcを設定し、前記要求トルクTrcを発生するための前記第1電動機(MG1)のトルクTm1および前記第2電動機(MG2)のトルクTm2を、前記第1電動機(MG1)および前記第2電動機(MG2)に実現させることを特徴とする請求項9に記載の車両用動力伝達装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−176730(P2012−176730A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41851(P2011−41851)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】