説明

車両用操舵装置

【課題】 操舵状態に関わらず良好な操舵フィーリングを確保することができる車両用操舵装置を提供すること。
【解決手段】 マイコンは、車速V及び操舵速度ωsを検出すると(ステップ101)、操舵速度ωsが所定の操舵速度ω0よりも低速であり、且つ検出された車速Vが所定の車速V0よりも低速であるか否かを判定する(ステップ102)。そして、操舵速度ωsが所定の操舵速度ω0よりも低速であり、且つ車速Vが所定の車速V0よりも低速である場合(ステップ102:YES)には、ACT角θtaを固定、即ちギヤ比可変アクチュエータの駆動源であるモータを停止すべくモータ制御信号を出力する(ステップ103)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用操舵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリング操作に基づく操舵輪の舵角にモータ駆動に基づく操舵輪の舵角を上乗せすることにより、ステアリングホイールの舵角(操舵角)に対する操舵輪の舵角(タイヤ角)の比率、即ち伝達比(ギヤ比)を可変させるギヤ比可変システムを備えたステアリング装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、こうしたギヤ比可変システムでは、通常、モータ駆動に基づく操舵輪の舵角、即ちACT角をその制御目標値(ACT目標角)に追従させるべくフィードバック制御が行われる。しかしながら、その性格上、モータのトルク特性については、電動パワーステアリング装置(EPS)ほどの滑らかは要求されない。そのため、ブラシレスモータを駆動源として採用するものにおいては、多くの場合、モータの回転に応じてパルス信号を出力するホール素子等を回転角センサとして用い、そのパルス信号に基づき検出される回転角に応じて通電相を切り替える、即ち所謂矩形波駆動によりモータの回転が制御されている。
【0004】
このように、矩形波駆動を採用することで、ホール素子のような構成簡素且つ安価なものを回転角センサに用いて製造コストを抑えることができ、更に、各相(U,V,W)に対して正弦波通電を行う所謂正弦波駆動の場合よりも大きなモータトルクを得ることができる。また、図8に示すように、回転角センサの分解能の低さに起因して、通電相切替時にトルクリップルが発生するという問題はあるものの、人間には速い周期(毎秒30回程度若しくはそれ以上)のトルクリップルを感じにくいという特性があるため、通常の使用状態では、このトルクリップルによる操舵フィーリングの悪化も起こりにくい。尚、同図中、波形αはモータの回転角を示し、波形βはモータトルクを示す。そして、領域γに示す部分が通電相の切り替えによって生ずるトルクリップルである。
【特許文献1】特開2002−240734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、運転者が極めて遅いステアリング操作をした場合(例えば、操舵速度が4deg/秒以下の場合)には、モータの通電相切替周期が長くなり、運転者がその切替の際に発生するトルクリップルを感じやすくなるという問題がある。そして、図9に示すように、トルクリップルの大きさはモータへの通電電流の大きさに比例することから(同図中、波形β1は電流量が小さい場合を、波形β2は電流量が大きい場合を示す)、路面反力が強くモータの負荷が大きい場合(車両がほぼ停車状態にある場合等、例えば3Km/時以下)、この傾向は更に顕著なものとなる。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、操舵状態に関わらず良好な操舵フィーリングを確保することができる車両用操舵装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、ステアリングホイールの操舵角に基づく操舵輪の第1の舵角にモータ駆動に基づく前記操舵輪の第2の舵角を上乗せすることにより前記ステアリングホイールと前記操舵輪との間の伝達比を可変させる伝達比可変装置と、該伝達比可変装置の駆動源であるブラシレスモータの回転角を検出するための回転角センサと、該検出された回転角に基づいて前記ブラシレスモータに三相の駆動電力を供給することにより前記伝達比可変装置の作動を制御する制御手段とを備え、前記回転角センサは、前記ブラシレスモータの回転に応じたパルス信号を出力し、前記制御手段は、該パルス信号に基づき検出された前記回転角に応じて前記ブラシレスモータの通電相を切り替える車両用操舵装置であって、前記ステアリングホイールの操舵速度を検出する操舵速度検出手段と、車速を検出する車速検出手段とを備え、前記制御手段は、前記検出された操舵速度が所定の操舵速度よりも低速であり、且つ前記検出された車速が所定の車速よりも低速である場合には、前記ブラシレスモータを停止させること、を要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、ステアリングホイールの操舵角に基づく操舵輪の第1の舵角にモータ駆動に基づく前記操舵輪の第2の舵角を上乗せすることにより前記ステアリングホイールと前記操舵輪との間の伝達比を可変させる伝達比可変装置と、該伝達比可変装置の駆動源であるブラシレスモータの回転角を検出するための回転角センサと、該検出された回転角に基づいて前記ブラシレスモータに三相の駆動電力を供給することにより前記伝達比可変装置の作動を制御する制御手段とを備え、前記回転角センサは、前記ブラシレスモータの回転に応じたパルス信号を出力し、前記制御手段は、該パルス信号に基づき検出された前記回転角に応じて前記ブラシレスモータの通電相を切り替える車両用操舵装置であって、前記ステアリングホイールの操舵速度を検出する操舵速度検出手段と、路面反力を検出する路面反力検出手段とを備え、前記制御手段は、前記検出された操舵速度が所定の操舵速度よりも低速であり、且つ前記検出された路面反力が所定の路面反力よりも大きい場合には、前記ブラシレスモータを停止させること、を要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、ステアリングホイールの操舵角に基づく操舵輪の第1の舵角にモータ駆動に基づく前記操舵輪の第2の舵角を上乗せすることにより前記ステアリングホイールと前記操舵輪との間の伝達比を可変させる伝達比可変装置と、該伝達比可変装置の駆動源であるブラシレスモータの回転角を検出するための回転角センサと、該検出された回転角に基づいて前記ブラシレスモータに三相の駆動電力を供給することにより前記伝達比可変装置の作動を制御する制御手段とを備え、前記回転角センサは、前記ブラシレスモータの回転に応じたパルス信号を出力し、前記制御手段は、該パルス信号に基づき検出された前記回転角に応じて前記ブラシレスモータの通電相を切り替える車両用操舵装置であって、前記ステアリングホイールの操舵速度を検出する操舵速度検出手段と、前記ブラシレスモータに通電される電流量を検出する通電電流量検出手段とを備え、前記制御手段は、前記検出された操舵速度が所定の操舵速度よりも低速であり、且つ前記検出された電流量が所定の電流量よりも大きい場合には、前記ブラシレスモータを停止させること、を要旨とする。
【0010】
上記各構成によれば、ホール素子等を回転角センサとして用い、そのパルス信号に基づき検出される回転角に応じてその通電相を切り替える、所謂矩形波駆動によりその回転を制御するものにおいても、操舵速度や車速等の車両状態に関わらず、運転者にトルクリップルを感じさせることなく、良好な操舵フィーリングを確保することができる。また、新たなセンサの付加等、コストの上昇を招くこともない。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記制御手段は、前記ブラシレスモータの停止後、前記検出された操舵速度が所定の操舵速度以上となった場合には、前記第2の舵角を該第2の舵角の制御目標値まで前記操舵速度に応じた割合で徐々に変化させるべく前記伝達比可変装置を制御すること、要旨とする。
【0012】
上記構成によれば、ブラシレスモータの停止によって第2の舵角とその制御目標値との偏差が大きく開いた場合であっても、ブラシレスモータの再始動時における第2の舵角の急速な変化を防止して良好な操舵フィーリングを確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、操舵状態に関わらず良好な操舵フィーリングを確保することが可能な車両用操舵装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明をギヤ比可変システムを備えた車両用操舵装置(ステアリング装置)に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、本実施形態のステアリング装置1の概略構成図である。同図に示すように、ステアリングホイール(ステアリング)2が固定されたステアリングシャフト3は、ラックアンドピニオン機構4を介してラック5に連結されており、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト3の回転は、ラックアンドピニオン機構4によりラック5の往復直線運動に変換される。そして、このラック5の往復直線運動により操舵輪6の舵角、即ちタイヤ角が可変することにより、車両進行方向が変更されるようになっている。
【0015】
尚、本実施形態のステアリング装置1は、ラック5と同軸配置されたモータ7を駆動源とする所謂ラック型の電動パワーステアリング装置(EPS)であり、このモータ7の発生するアシストトルクがラック5に伝達されることにより、操舵系にアシスト力が付与されるようになっている。
【0016】
また、本実施形態のステアリング装置1は、ステアリング2の舵角(操舵角)に対する操舵輪6の舵角(タイヤ角)の比率、即ち伝達比(ギヤ比)を可変させる伝達比可変装置としてのギヤ比可変アクチュエータ8と、該ギヤ比可変アクチュエータ8の作動を制御する制御手段としてのECU9とを備えている。
【0017】
詳述すると、ステアリングシャフト3は、ステアリング2が連結された第1シャフト10とラックアンドピニオン機構4に連結される第2シャフト11とからなり、ギヤ比可変アクチュエータ8は、第1シャフト10及び第2シャフト11を連結する差動機構12と、該差動機構12を駆動するモータ13とを備えている。そして、ギヤ比可変アクチュエータ8は、ステアリング操作に伴う第1シャフト10の回転に、モータ駆動による回転を上乗せして第2シャフト11に伝達することにより、ラックアンドピニオン機構4に入力されるステアリングシャフト3の回転を増速(又は減速)する。
【0018】
つまり、図2及び図3に示すように、ギヤ比可変アクチュエータ8は、ステアリング操作に基づく操舵輪6の舵角(ステア転舵角θts)にモータ駆動に基づく操舵輪の舵角(ACT角θta)を上乗せすることにより、操舵角θsに対する操舵輪6のギヤ比を可変させる。
【0019】
尚、この場合における「上乗せ」とは、加算する場合のみならず減算する場合をも含むものと定義し、以下同様とする。また、「操舵角θsに対する操舵輪6のギヤ比」をオーバーオールギヤ比(操舵角θs/タイヤ角θt)で表した場合、ステア転舵角θtsと同方向のACT角θtaを上乗せすることによりオーバーオールギヤ比は小さくなる(タイヤ角θt大、図2参照)。そして、逆方向のACT角θtaを上乗せすることによりオーバーオールギヤ比は大きくなる(タイヤ角θt小、図3参照)。
【0020】
また、本実施形態のモータ13は、ブラシレスモータであり、ECU9から三相(U,V,W)の駆動電力が供給されることにより回転する。そして、ECU9は、この駆動電力の供給によりモータ13の回転、即ちACT角θtaを制御することにより、ギヤ比可変アクチュエータ8の作動を制御する(ギヤ比可変制御)。
【0021】
次に、本実施形態のステアリング装置の電気的構成及び制御態様について説明する。
ECU9は、モータ制御信号Scを出力するマイコン14と、モータ制御信号Scに基づいてモータ13に三相の駆動電力を供給する駆動回路15とを備えている。本実施形態では、ECU9には、ステアリング2の操舵角θs(操舵速度ωs)を検出するための操舵速度検出手段としてのステアリングセンサ17、モータ13の回転角θを検出するための回転角センサ18、及び車速を検出するための車速検出手段としての車速センサ19が接続されている。そして、マイコン14は、これらの各センサにより検出される各種状態量に基づいて、モータ制御信号Scを出力する。
【0022】
詳述すると、本実施形態では、回転角センサ18として、モータ13の回転に応じてパルス信号Spを出力するホール素子が採用されており、マイコン14は、ホール素子の出力するパルス信号Spに基づいてモータ13の回転角θを検出する。そして、マイコン14は、その回転角θに基づいてACT角θtaを検出する。また、マイコン14は、車速V及び操舵角θs、並びに操舵速度ωsに基づいてACT角θtaの制御目標値であるACT目標角を演算する。そして、マイコン14は、ACT角θtaをACT目標角に追従させるべくモータ制御信号Scを出力する。
【0023】
具体的には、本実施形態では、U,V,Wの各相のうち二相を通電相(通電がなされる相)とする矩形波駆動が採用されており、マイコン14は、ホール素子の出力するパルス信号Spに基づき検出された回転角θに応じて上記通電相が順次切り替わるようにモータ制御信号Scを出力する。そして、このモータ制御信号Scに基づいて駆動回路15がモータ13に三相の駆動電力を供給することにより、モータ13の回転、即ちACT角θtaが制御されるようになっている。
【0024】
(極低速操舵時のギヤ比可変制御)
次に、本実施形態のステアリング装置における極低速操舵時のギヤ比可変制御について説明する。
【0025】
上述のように、矩形波駆動によりモータの回転を制御する場合、回転角センサ18の分解能の低さに起因して、通電相切替時にトルクリップルが発生するという問題がある。そして、この問題は、運転者によるステアリング操作が極めて遅い、即ち極低速操舵時に表面化し、車両がほぼ停車状態にある場合等、路面反力が強くモータの負荷が大きい場合に顕著なものとなる。
【0026】
このような問題を回避すべく、本実施形態では、図4に示す例のように、ECU9は、検出された操舵速度ωsが所定の操舵速度ω0よりも低速であり、且つ検出された車速Vが所定の車速よりも低速である場合には、ACT角θtaを固定する。即ち、モータ13の通電相切替時に発生するトルクリップルの問題が顕著となる領域では、ギヤ比可変アクチュエータ8の駆動源であるモータ13を停止させる。
【0027】
具体的には、図5のフローチャートに示すように、ECU9のマイコン14は、車速V及び操舵速度ωsを検出すると(ステップ101)、操舵速度ωsが所定の操舵速度ω0よりも低速であり、且つ検出された車速Vが所定の車速V0よりも低速であるか否かを判定する(ステップ102)。尚、本実施形態では、所定の操舵速度ω0は、予め実験やシミュレーション等により求められた「運転者が知覚しやすくなる程度の周期(毎秒30回程度)でトルクリップルが発生する操舵速度(例えば4deg/秒)」が設定されており、所定の車速V0は、車両が略停車状態にある車速(例えば3Km/秒)に設定されている。そして、操舵速度ωsが所定の操舵速度ω0よりも低速であり、且つ車速Vが所定の車速V0よりも低速である場合(ステップ102:YES)には、ACT角θtaを固定、即ちギヤ比可変アクチュエータ8の駆動源であるモータ13を停止すべくモータ制御信号Scを出力する(ステップ103)。
【0028】
尚、上記ステップ102において、操舵速度ωsが所定の操舵速度ω0以上、又は車速Vが所定の車速V0以上であると判定した場合(ステップ102:NO)には、マイコン14は、ACT角θtaを固定することなく、通常通りのモータ制御信号Scを出力する。
【0029】
また、ECU9は、モータ13の停止後、検出された操舵速度ωsが所定の操舵速度ω0以上、又は検出された車速Vが所定の車速V以上となった場合、再びギヤ比可変アクチュエータ8を作動させる。そして、本実施形態では、このモータ13の停止後の再作動時において、検出された操舵速度ωsが所定の操舵速度ω0以上となった場合には、ACT角θtaを操舵速度ωsに応じた割合でACT目標角θta*まで徐々に変化させる(オフセット処理)。これにより、モータ13の停止によってACT目標角θta*とACT角θtaとの偏差が大きく開いた場合であっても、ACT角θtaの急速な変化を防止して良好な操舵フィーリングを確保することが可能となっている。
【0030】
以上、本実施形態によれば、以下のような特徴を得ることができる。
(1)マイコン14は、車速V及び操舵速度ωsを検出すると(ステップ101)、操舵速度ωsが所定の操舵速度ω0よりも低速であり、且つ検出された車速Vが所定の車速V0よりも低速であるか否かを判定する(ステップ102)。そして、操舵速度ωsが所定の操舵速度ω0よりも低速であり、且つ車速Vが所定の車速V0よりも低速である場合(ステップ102:YES)には、ACT角θtaを固定、即ちギヤ比可変アクチュエータ8の駆動源であるモータ13を停止すべくモータ制御信号Scを出力する(ステップ103)。即ち、モータ13の通電相切替時に発生するトルクリップルの問題が顕著となりやすい状態においては、ギヤ比可変アクチュエータ8の駆動源であるモータ13を停止させて、トルクリップルの発生を防止する。
【0031】
このような構成とすれば、ホール素子等を回転角センサとして用い、そのパルス信号に基づき検出される回転角に応じて通電相を切り替える、即ち矩形波駆動を採用するものにおいても、操舵速度ωsや車速V等の車両状態に関わらず、運転者にトルクリップルを感じさせることなく、良好な操舵フィーリングを確保することができる。また、新たなセンサの付加等、コストの上昇を招くこともない。
【0032】
(2)ECU9は、モータ13の停止後の再作動時において、検出された操舵速度ωsが所定の操舵速度ω0以上となった場合には、ACT角θtaを操舵速度ωsに応じた割合でACT目標角θta*まで徐々に変化させる。
【0033】
このような構成とすれば、モータ13の停止によってACT目標角θta*とACT角θtaとの偏差が大きく開いた場合であっても、ACT角θtaの急速な変化を防止して良好な操舵フィーリングを確保することができる。
【0034】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・本実施形態では、電動パワーステアリング装置(EPS)であるステアリング装置1に具体化したが、油圧ポンプと、その油圧に基づいて操舵系にアシスト力を付与するパワーシリンダと、前記パワーシリンダに供給する圧油の流量を変更可能な流量制御弁とを備えた流量可変型の油圧式パワーステアリング装置に具体化してもよい。
【0035】
・本実施形態では、ECU9は、操舵速度ωsが所定の操舵速度ω0よりも低速であり、且つ車速Vが所定の車速よりも低速である場合に、ACT角θtaを固定、即ちギヤ比可変アクチュエータ8の駆動源であるモータ13を停止させることとした。しかし、これに限らず、モータ13の通電相切替時に発生するトルクリップルの問題が顕著となる領域を特定可能なものであれば、車速V以外のパラメータを用いてモータ13の停止判定を行うこととしてもよい。
【0036】
具体的には、例えば、路面反力検出手段として路面反力Frを検出可能なトルクセンサ等を有する場合、図6のフローチャートに示すように、車速V及び路面反力Frを検出し(ステップ201)、続いて操舵速度ωsが所定の操舵速度ω0よりも低速であり、且つ検出された路面反力Frが所定の路面反力Fr0よりも大きいか否かを判定する(ステップ202)。そして、操舵速度ωsが所定の操舵速度ω0よりも低速であり、且つ路面反力Frが所定の路面反力Fr0よりも大きい場合(ステップ202:YES)には、ACT角θtaを固定、即ちギヤ比可変アクチュエータ8の駆動源であるモータ13を停止させる(ステップ203)構成としてもよい。
【0037】
同様に、図7のフローチャートに示すように、車速V及びモータ13に通電される電流量Iを検出し(ステップ301)、続いて操舵速度ωsが所定の操舵速度ω0よりも低速であり、且つ検出された電流量Iが所定の電流量I0よりも大きいか否かを判定する(ステップ302)。そして、操舵速度ωsが所定の操舵速度ω0よりも低速であり、且つ電流量Iが所定の電流量I0よりも大きい場合(ステップ302:YES)には、ACT角θtaを固定、即ちギヤ比可変アクチュエータ8の駆動源であるモータ13を停止させる(ステップ303)構成としてもよい。
【0038】
尚、この場合、所定の路面反力Fr0は、例えば、車両が略停車状態にある場合の値等に設定すればよく、所定の電流量I0は、その場合にモータ13にかかる負荷に相当する値に設定すればよい。また、電流量Iを検出する通電電流量検出手段としてはモータ13への給電線に電流センサを設ければよい。
【0039】
・本実施形態では、ホール素子を回転角センサ18として用いることとしたが、ホール素子以外のものを用いてモータの回転に応じてパルス信号を出力する回転角センサを採用するものに具体化してもよい。
【0040】
次に、以上の実施形態から把握することのできる請求項以外の技術的思想を記載する。
(イ)請求項1〜請求項3のうちの何れか一項に記載の車両用操舵装置において、前記回転角センサとしてホール素子を用いること、を特徴とする車両用操舵装置。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態のステアリング装置の概略構成図。
【図2】ギヤ比可変制御の説明図。
【図3】ギヤ比可変制御の説明図。
【図4】極低速操舵時のギヤ比可変制御の説明図。
【図5】極低速操舵時のギヤ比可変制御の処理手順を示すフローチャート。
【図6】別例の極低速操舵時のギヤ比可変制御の処理手順を示すフローチャート。
【図7】別例の極低速操舵時のギヤ比可変制御の処理手順を示すフローチャート。
【図8】通電相切替時に発生するトルクリップルを示す波形図。
【図9】電流量とトルクリップルの大きさとの関係を示す波形図。
【符号の説明】
【0042】
1…ステアリング装置、2…ステアリングホイール(ステアリング)、6…操舵輪、8…ギヤ比可変アクチュエータ、9…ECU、13…モータ、14…マイコン、15…駆動回路、17…ステアリングセンサ、18…回転角センサ、19…車速センサ、Sp…パルス信号、θ…回転角、ωs,ω0…操舵速度、V,V0…車速、θta…ACT角、θta*…ACT目標角、θts…ステア転舵角、θt…タイヤ角、Fr,Fr0…路面反力、I,I0…電流量。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールの操舵角に基づく操舵輪の第1の舵角にモータ駆動に基づく前記操舵輪の第2の舵角を上乗せすることにより前記ステアリングホイールと前記操舵輪との間の伝達比を可変させる伝達比可変装置と、該伝達比可変装置の駆動源であるブラシレスモータの回転角を検出するための回転角センサと、該検出された回転角に基づいて前記ブラシレスモータに三相の駆動電力を供給することにより前記伝達比可変装置の作動を制御する制御手段とを備え、前記回転角センサは、前記ブラシレスモータの回転に応じたパルス信号を出力し、前記制御手段は、該パルス信号に基づき検出された前記回転角に応じて前記ブラシレスモータの通電相を切り替える車両用操舵装置であって、
前記ステアリングホイールの操舵速度を検出する操舵速度検出手段と、
車速を検出する車速検出手段とを備え、
前記制御手段は、前記検出された操舵速度が所定の操舵速度よりも低速であり、且つ前記検出された車速が所定の車速よりも低速である場合には、前記ブラシレスモータを停止させること、を特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
ステアリングホイールの操舵角に基づく操舵輪の第1の舵角にモータ駆動に基づく前記操舵輪の第2の舵角を上乗せすることにより前記ステアリングホイールと前記操舵輪との間の伝達比を可変させる伝達比可変装置と、該伝達比可変装置の駆動源であるブラシレスモータの回転角を検出するための回転角センサと、該検出された回転角に基づいて前記ブラシレスモータに三相の駆動電力を供給することにより前記伝達比可変装置の作動を制御する制御手段とを備え、前記回転角センサは、前記ブラシレスモータの回転に応じたパルス信号を出力し、前記制御手段は、該パルス信号に基づき検出された前記回転角に応じて前記ブラシレスモータの通電相を切り替える車両用操舵装置であって、
前記ステアリングホイールの操舵速度を検出する操舵速度検出手段と、
路面反力を検出する路面反力検出手段とを備え、
前記制御手段は、前記検出された操舵速度が所定の操舵速度よりも低速であり、且つ前記検出された路面反力が所定の路面反力よりも大きい場合には、前記ブラシレスモータを停止させること、を特徴とする車両用操舵装置。
【請求項3】
ステアリングホイールの操舵角に基づく操舵輪の第1の舵角にモータ駆動に基づく前記操舵輪の第2の舵角を上乗せすることにより前記ステアリングホイールと前記操舵輪との間の伝達比を可変させる伝達比可変装置と、該伝達比可変装置の駆動源であるブラシレスモータの回転角を検出するための回転角センサと、該検出された回転角に基づいて前記ブラシレスモータに三相の駆動電力を供給することにより前記伝達比可変装置の作動を制御する制御手段とを備え、前記回転角センサは、前記ブラシレスモータの回転に応じたパルス信号を出力し、前記制御手段は、該パルス信号に基づき検出された前記回転角に応じて前記ブラシレスモータの通電相を切り替える車両用操舵装置であって、
前記ステアリングホイールの操舵速度を検出する操舵速度検出手段と、
前記ブラシレスモータに通電される電流量を検出する通電電流量検出手段とを備え、
前記制御手段は、前記検出された操舵速度が所定の操舵速度よりも低速であり、且つ前記検出された電流量が所定の電流量よりも大きい場合には、前記ブラシレスモータを停止させること、を特徴とする車両用操舵装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のうちの何れか一項に記載の車両用操舵装置において、
前記制御手段は、前記ブラシレスモータの停止後、前記検出された操舵速度が所定の操舵速度以上となった場合には、前記第2の舵角を該第2の舵角の制御目標値まで前記操舵速度に応じた割合で徐々に変化させるべく前記伝達比可変装置を制御すること、
を特徴とする車両用操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−111232(P2006−111232A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303401(P2004−303401)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】