説明

車両用樹脂ウインドウ及びそれを用いた車両用ドア

【課題】可視領域を過度に狭めることなく、十分に確保することができると共に、設計上の制約を少なくすることができる車両用樹脂ウインドウ及びそれを用いた車両用ドアを提供すること。
【解決手段】車両に昇降可能に配設される樹脂ウインドウ2は、板状の本体部21と、本体部21の前方側縁部218において、本体部21の第1表面211から厚み方向に突出し、本体部21と一体的に成形されてなる前方突片部22とを有している。前方突片部22における本体部21の側縁側とは反対側の内方側面222には、被駆動ギヤ24を上下方向に設けたギヤ形成面222aが形成されている。本体部21の第1表面211とギヤ形成面222aとが成す角度αは、鈍角である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に昇降可能に配設される車両用樹脂ウインドウ及びそれを用いた車両用ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用のドア等に昇降可能に配設されるガラス、樹脂等からなる車両用のウインドウが知られている。
このうち、樹脂製のウインドウ(以下、樹脂ウインドウという)としては、樹脂の成形性を生かして、可視領域を含む板状の本体部と、他の機能を有する部分とを一体的に成形したものがある。
【0003】
また、車両用のウインドウの昇降装置としては、例えば、特許文献1及び2に記載されているように、ウインドウ本体に固定され、一方の側縁に歯列が形成されたラックを設けることが知られている。ラックに噛合うギヤは、ドア本体に固定されたモータの駆動軸に連結されており、モータの回転によりウインドウ本体が昇降される。ラックの歯列は、ウインドウ本体の厚み方向又はウインドウ本体の側縁に配置される。このような構造は、モータがスイングアームを介してウインドウ本体を昇降する構造と比較して、スイングアームが揺動するための空間を必要とせず、ドアパネル内にて必要とされる容積が小さくて済む。
【0004】
【特許文献1】実開昭60−150291号公報
【特許文献2】特開2002−120556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、樹脂ウインドウであれば、特許文献1のラック(被駆動ギヤ)をウインドウ本体の成形時に一体成形することも可能である。そこで、被駆動ギヤに噛合する駆動ギヤ及び駆動ギヤを駆動するモータ等の回転手段を比較的設計上の制約の少ないドア中央方向に配置することを考えると、例えば、図7のような構造も考えられる。
同図に示すごとく、樹脂ウインドウ9は、突片部92における本体部91の側縁側とは反対側の内方側面922に、被駆動ギヤ94が設けられている。被駆動ギヤ94は、モータ等の回転手段983により駆動するドライブギヤ等の駆動ギヤ984に噛合する。
【0006】
しかしながら、上記構成の樹脂ウインドウ9では、以下の問題が生じていた。
すなわち、図8(a)に示すごとく、成形型97を用いて樹脂ウインドウ9を成形する際に、樹脂ウインドウ9の突片部92周辺を成形する部分においては、例えば、第1成形型971と第2成形型972とを用いて成形する。第1成形型971は、2つの分割成形型971a、971bにより構成されている。分割成形型971aは、分割成形型bに設けられた案内孔979に挿通されたピン971cに連結されており、ピン971cを相対的に前進させることによって971bから離隔可能に設けられている。また、分割成形型971aには、被駆動ギヤ94を形成するためのギヤ形成部970が設けられている。そして、第1成形型971と第2成形型972との間に樹脂ウインドウ9の材料となる樹脂を流し込み、樹脂ウインドウ9の突片部92周辺を成形する。
【0007】
ここで、被駆動ギヤ94は、本体部91の第1表面911に垂直な面である突片部92の内方側面922に形成する。そのため、樹脂ウインドウ9の成形後、ギヤ形成部970を設けた分割成形型971aを樹脂ウインドウ9から直接、本体部91の第1表面911に対して垂直な方向X(被駆動ギヤ94の歯の山谷方向に対して垂直な方向)に離型させることが困難であった。これは、離型時に、被駆動ギヤ94の歯欠け等が生じる場合があるからである。
【0008】
したがって、図8(b)に示すごとく、分割成形型971aを一旦、本体部91の第1表面911に対して平行な方向Y(被駆動ギヤ94の歯の山谷方向に対して平行な方向)にスライドさせて被駆動ギヤ94から抜いた後、樹脂ウインドウ9から離型させる。このように、被駆動ギヤ94を形成する成形型(分割成形型971a)を被駆動ギヤ94の歯の山谷方向に対して平行な方向に抜くことにより、被駆動ギヤ94の歯欠け等を抑制して、樹脂ウインドウ9を成形することができる。
【0009】
ところが、上述した作業を行うためには、樹脂ウインドウ9の本体部91の第1表面911に配置する成形型が複数となる。すなわち、図8(a)に示すごとく、被駆動ギヤ94を形成する分割成形型971aとその分割成形型971aに隣接する分割成形型bとが必要となる。そのため、図8(b)に示すごとく、可視領域を含む本体部91の第1表面911において、分割成形型971aと分割成形型971bとの境界(分割位置A)に成形上の分割痕が生じてしまう。
この分割痕は、外観上、視認できる位置には配置できないため、例えばドア側の支持部又はドアに配置されるウェザーストリップを延ばして分割痕を隠す必要があった。その結果、可視領域を狭めることになってしまっていた。
【0010】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、可視領域を過度に狭めることなく、十分に確保することができると共に、設計上の制約を少なくすることができる車両用樹脂ウインドウ及びそれを用いた車両用ドアを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、車両に昇降可能に配設される車両用樹脂ウインドウにおいて、
板状の本体部と、該本体部の側縁部の少なくとも一方において、上記本体部の一方の表面から厚み方向に突出し、該本体部と一体的に成形されてなる突片部とを有しており、
該突片部における上記本体部の側縁側とは反対側の内方側面には、被駆動ギヤを上下方向に設けたギヤ形成面が形成されており、
上記本体部の上記一方の表面と上記ギヤ形成面とが成す角度αは、鈍角であることを特徴とする車両用樹脂ウインドウ(請求項1)。
【0012】
本発明の樹脂ウインドウにおいて、上記突片部の内方側面には、上記被駆動ギヤを設けたギヤ形成面が形成されている。そして、上記本体部の上記一方の表面と上記ギヤ形成面とが成す角度αは、鈍角である。そのため、上記樹脂ウインドウを成形する際に、上記被駆動ギヤを形成する成形型(以下、適宜、ギヤ成形型という)を上記被駆動ギヤから上記本体部の上記一方の表面に対して平行な方向(以下、適宜、面方向という)に抜く必要がなくなる。すなわち、上記本体部の面方向以外の方向に抜くことができる。
【0013】
従来では、ギヤ成形型を上記被駆動ギヤから抜く方向が上記本体部の面方向であったため、上記本体部の上記一方の表面側を形成する成形型が複数となっていた(前述の図8参照)。これに対し、本発明では、これら複数の成形型を一体とした一体成形型とし、この一体成形型を上記被駆動ギヤから抜くと同時に、上記樹脂ウインドウから直接的に離型させることができる(後述の実施例の図4参照)。よって、従来、複数の成形型を用いることによって生じていた成形上の分割痕を無くすことができ、上記樹脂ウインドウの可視領域を十分に確保した状態で成形することができる。また、成形型一体化によって成形工程を容易にすることもできる。
【0014】
また、上記樹脂ウインドウや上記被駆動ギヤの構造上、上述した一体成形型を用いることが困難な場合であっても、その一体成形型を例えば上記本体部の上記一方の表面と上記突片部との境界において分割した構成とすれば、その分割位置を上記樹脂ウインドウの可視領域に影響のない場所に設定することができる(後述の実施例の図6参照)。そのため、可視領域に成形上の分割痕を生じさせないようにすることができる。これにより、上記樹脂ウインドウの可視領域を過度に狭めることなく、十分に確保した状態で成形することができる。
【0015】
また、本発明では、上記突片部の内方側面には、上記ギヤ形成面が形成されており、該ギヤ形成面には、上記被駆動ギヤが設けられている。そのため、例えば、上記樹脂ウインドウを車両用のドアに取り付けた際に、上記被駆動ギヤに噛合する駆動ギヤやその駆動ギヤ駆動する回転手段を配置するスペースを上記樹脂ウインドウの中央方向、すなわちドアの中央方向に十分に確保することができる。そのため、設計上の制約を少なくすることができ、デザイン的な自由度を高めることができる。これにより、いろいろなタイプの車種への展開が可能になる。
【0016】
このように、本発明によれば、可視領域を過度に狭めることなく、十分に確保することができると共に、設計上の制約を少なくすることができる車両用樹脂ウインドウを提供することができる。
【0017】
第2の発明は、上記第1の発明の車両用樹脂ウインドウを昇降可能に配設してなり、
上記被駆動ギヤに噛合する駆動ギヤ及び該駆動ギヤを駆動する回転手段を内蔵していることを特徴とする車両用ドアにある(請求項2)。
【0018】
本発明の車両用ドアは、上記樹脂ウインドウを昇降可能に配設してなる。そして、該樹脂ウインドウにおける上記突片部の内方側面には、上記ギヤ形成面が形成されており、該ギヤ形成面には、上記被駆動ギヤが設けられている。そのため、上記樹脂ウインドウを上記ドアに取り付けた際に、上記被駆動ギヤに噛合する上記駆動ギヤや該駆動ギヤを駆動する上記回転手段を配置するスペースを上記樹脂ウインドウの中央方向、すなわち上記ドアの中央方向に十分に確保することができる。そのため、上記ドアにおける設計上の制約を少なくすることができ、デザイン的な自由度を高めることができる。これにより、いろいろなタイプの車種への展開が可能になる。
【0019】
第3の発明は、上記第1の発明の車両用樹脂ウインドウを成形型により成形する方法であって、
上記成形型は、上記樹脂ウインドウにおける上記本体部の上記一方の表面側の表面形状に対応する第1成形型と、上記本体部の他方の表面側の表面形状に対応する第2成形型とからなり、
上記第1成形型は、上記樹脂ウインドウにおける上記本体部の上記一方の表面と上記突片部との境界に対応する位置で分割されてなることを特徴とする車両用樹脂ウインドウの成形方法にある(請求項3)。
【0020】
本発明の車両用樹脂ウインドウの成形方法において、上記樹脂ウインドウにおける上記本体部の上記一方の表面側の表面形状に対応する第1成形型は、上記本体部の上記一方の表面と上記突片部との境界に対応する位置で分割されてなる。すなわち、上記第1成形型の分割位置を上記樹脂ウインドウの可視領域に影響のない場所に設定することができる(後述の実施例の図6)。そのため、可視領域に成形上の分割痕を生じさせないようにすることができる。これにより、上記樹脂ウインドウの可視領域を過度に狭めることなく、十分に確保した状態で成形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
上記第1〜第3の発明において、上記樹脂ウインドウを成形する際に、上記被駆動ギヤを形成する成形型(ギヤ成形型)を上記被駆動ギヤの歯の山谷方向に対して平行な方向(具体的には、歯の山部が突出している方向)に抜くことがより好ましい。
この場合には、成形時における上記被駆動ギヤの歯欠け等を抑制することができ、上記樹脂ウインドウを精度良く成形することができる。
【実施例】
【0022】
実施例にかかる本発明の車両用樹脂ウインドウについて説明する。
本例は、図1〜図4に示すごとく、車両用の側面のドア8において、昇降可能に配設される樹脂ウインドウ2に関するものである。なお、「前後」、「上下」、「内外」等の方向、位置を表す言葉は、ドア8に樹脂ウインドウ2を取り付けた状態における方向、位置等を表している。
【0023】
本例において、図1〜図4に示すごとく、樹脂ウインドウ2は、板状の本体部21と、本体部21の前方側縁部218において、本体部21の第1表面211から厚み方向に突出し、本体部21と一体的に成形されてなる前方突片部22とを有している。
また、前方突片部22における本体部21の側縁側とは反対側の内方側面222には、被駆動ギヤ24を上下方向に設けたギヤ形成面222aが形成されている。また、本体部21の第1表面211とギヤ形成面222aとが成す角度αは、鈍角である。
以下、これを詳説する。
【0024】
図1に示すごとく、車両用のドア8は、車内側のインナパネル(図示略)と車外側のアウタパネル82とにより構成されている。アウタパネル82の上方には、樹脂ウインドウ2の可視領域を形成する窓用開口部821が設けられている。また、窓用開口部821の前後には、それぞれ前方ガイドフレーム3及び後方ガイドフレーム4が上下方向に配設されている。前方ガイドフレーム3及び後方ガイドフレーム4は、窓用開口部821の下端よりも下方まで延びて設けられている。また、前方ガイドフレーム3と後方ガイドフレーム4との間には、樹脂ウインドウ2が内挿されている。
【0025】
また、同図に示すごとく、インナパネルの前方には、前方ガイドフレーム3より後方に隣接して、モータ(回転手段)83とそのモータ83により駆動するドライブギヤ(駆動ギヤ)84とが配設されている。前方ガイドフレーム3には、ドライブギヤ84が配設されている付近のインナパネル側にフレーム開口部30が形成されており、そのフレーム開口部30から樹脂ウインドウ2のギヤ形成面222aの一部が露出している。
【0026】
図2に示すごとく、樹脂ウインドウ2は、板状の本体部21と、本体部21の前方側縁部218及び後方側縁部219において、本体部21の第1表面211から厚み方向に突出した前方突片部22及び後方突片部23とにより構成されている。ここで、本体部21の第1表面211とは、本体部21における車内側の表面のことである。
樹脂ウインドウ2は、本体部21と前方突片部22と後方突片部23とを一体的に成形して構成されており、水平方向の断面において略「コ」の字状を呈している。本例の樹脂ウインドウ2は、ポリカーボネート樹脂からなる。
【0027】
また、図1、図2に示すごとく、樹脂ウインドウ2における前方突片部22及び後方突片部23は、前方ガイドフレーム3及び後方ガイドフレーム4内にて摺動し、図示しない係合構造にて前方突片部22及び後方突片部3の前後方向の移動が制限されている。また、樹脂ウインドウ2は、材質上、ガラスに比べて弾性変形しやすい。そのため、上記構造により、樹脂ウインドウ2が湾曲することを抑制している。
【0028】
また、図2、図3に示すごとく、前方突片部22の内方側面222には、被駆動ギヤ24を上下方向に設けたギヤ形成面222aが形成されている。被駆動ギヤ24は、モータ83により駆動するドライブギヤ84に対して噛合する。ここで、前方突片部22の内方側面222とは、前方突片部22における本体部21の側縁側(前方の側縁側)の外方側面221とは反対側の内方の側面である。
また、図2に示すごとく、本体部21の第1表面211とギヤ形成面222aとが成す角度αは鈍角である。
【0029】
また、図2、図3に示すごとく、前方突片部22の内方側面222には、本体部21の第1表面211とギヤ形成面222aとの間をつなぐ連結面222bが形成されている。この連結面222bを設けることにより、被駆動ギヤ24の一方の側面に壁部25を形成することができる。そして、この壁部25によって被駆動ギヤ24の強度を高めることができる。
【0030】
また、図1、図2に示すごとく、前方突片部22のギヤ形成面222aに形成された被駆動ギヤ24は、前方ガイドフレーム3のフレーム開口部30においてドライブギヤ84と噛合している。そして、樹脂ウインドウ2は、モータ83によってドライブギヤ84を前方突片部23の被駆動ギヤ24に対して駆動させることにより、前方ガイドフレーム3及び後方ガイドフレーム4に沿って上下方向に昇降できるよう構成されている。
【0031】
次に、本例の樹脂ウインドウ2の成形について簡単に説明する。本例では、特に被駆動ギヤ24を形成する前方突片部22周辺の成形について説明する。
まず、図4(a)に示すごとく、樹脂ウインドウ2を成形するための成形型7を所定の位置にセットする。樹脂ウインドウ2の前方突片部22周辺を成形する部分においては、樹脂ウインドウ2の主に本体部21の第1表面211側を成形する第1成形型71と第2表面212側を成形する第2成形型72とがセットされている。第1成形型71には、被駆動ギヤ24を形成するためのギヤ形成部710が設けられている。
【0032】
次いで、同図に示すごとく、成形型7内に樹脂ウインドウ2の材料となる溶融したポリカーボネート樹脂を流し込み、樹脂ウインドウ2を成形する。これにより、第1成形型71と第2成形型72との間に、本体部21及び前方突片部22が成形される。そして、前方突片部22の内方側面222のギヤ形成面222aには、第1成形型71のギヤ形成部710によって被駆動ギヤ24が形成される。
【0033】
次いで、図4(b)に示すごとく、成形型7を樹脂ウインドウ2から離型させる。ここで、本例では、第1成形型71を樹脂ウインドウ2の本体部21の第1表面211に垂直な方向Xに移動させ、ギヤ成形部710を被駆動ギヤ24から抜くと同時に、第1成形型71全体を樹脂ウインドウ2から直接的に離型させる。その後、第2成形型72を樹脂ウインドウ2から離型させる。
以上により、樹脂ウインドウ2を成形する。
【0034】
次に、本例の樹脂ウインドウ2における作用効果について説明する。
本例の樹脂ウインドウ2において、図2、図3に示すごとく、突片部22の内方側面222には、被駆動ギヤ24を設けたギヤ形成面222aが形成されている。そして、本体部21の第1表面211とギヤ形成面222aとが成す角度αは、鈍角である。そのため、図4に示すごとく、樹脂ウインドウ2を成形する際に、被駆動ギヤ24を形成する成形型(本例では、第1成形型71)を被駆動ギヤ24から本体部21の第1表面211に対して平行な方向(面方向)Yに抜く必要がなくなる。すなわち、本例では、本体部21の第1表面211に対して垂直な方向Xに抜いており、面方向Y以外の方向に抜くことができる。
【0035】
これにより、従来では、前述の図8(b)に示すごとく、被駆動ギヤ94を形成する分割成形型971aを被駆動ギヤ24から抜く方向が本体部921の面方向Yであったため、本体部91の第1表面911側を形成する成形型が複数となっていた。これに対し、本例では、図4に示すごとく、本体部21の第1表面211側を形成する成形型を一体化した第1成形型71とし、この第1成形型71のギヤ形成部710を被駆動ギヤ24から抜くと同時に、第1成形型71全体を樹脂ウインドウ2から直接的に離型させることができる。よって、従来、複数の成形型を用いることによって生じていた成形上の分割痕を無くすことができ、樹脂ウインドウ2の可視領域を十分に確保した状態で成形することができる。また、成形型を一体化したことによって成形工程を容易にすることもできる。
【0036】
また、本例では、前方突片部22の内方側面222には、ギヤ形成面222aが形成されており、ギヤ形成面222aには、被駆動ギヤ24が設けられている。そのため、樹脂ウインドウ2を車両用のドア8に取り付けた際に、被駆動ギヤ24に噛合するドライブギヤ84やそのドライブギヤ84を駆動するモータ83を配置するスペースを樹脂ウインドウ2の中央方向、すなわちドア8の中央方向に十分に確保することができる。そのため、設計上の制約を少なくすることができ、デザイン的な自由度を高めることができる。これにより、いろいろなタイプの車種への展開が可能になる。
【0037】
このように、本例によれば、可視領域を十分に確保することができると共に、設計上の制約を少なくすることができる車両用の樹脂ウインドウ2を提供することができる。
【0038】
また、本例では、図4に示すごとく、樹脂ウインドウ2の本体部21の第1表面211側を形成する成形型として、一体化した第1成形型71を用いた。しかしながら、例えば、図5に示すごとく、樹脂ウインドウ2が上下方向に湾曲している形状の場合には、図4の一体化した第1成形型71を用いて、樹脂ウインドウ2から直接的に離型させることが構造上困難となる場合がある。
【0039】
そこで、このような場合には、図6(a)に示すごとく、第1成形型71を、樹脂ウインドウ2における本体部21の第1表面211と前方突片部22との境界に対応する位置で分割した分割成形型71a、71bにより構成すればよい。
そして、樹脂ウインドウ2を成形後、成形型7を樹脂ウインドウ2から離型させる際には、図6(b)に示すごとく、分割成形型71aを分割成形型71aと分割成形型71bとの分割方向に平行な方向に移動させ、ギヤ成形部710を被駆動ギヤ24から抜くと同時に、分割成形型71aを樹脂ウインドウ2から直接的に離型させる。さらに、図6(c)に示すごとく、分割成形型71bを樹脂ウインドウ2の本体部21の第1表面211に垂直な方向Xに移動させ、分割成形型71bを樹脂ウインドウ2から直接的に離型させる。その後、第2成形型72を樹脂ウインドウ2から離型させる。
以上により、樹脂ウインドウ2を成形する。
【0040】
これにより、分割成形型71a、71bの分割位置Aを樹脂ウインドウ2の可視領域に影響のない場所に設定することができる。そして、可視領域に成形上の分割痕を生じさせないようにすることができる。よって、樹脂ウインドウ2の可視領域を過度に狭めることなく、十分に確保した状態で成形することができる。
なお、上記図6に示した構造の成形型は、樹脂ウインドウ2が上下方向に湾曲することなく、直線状の場合(図3参照)に適用することも、もちろん有効である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例における、車両用のドアに昇降可能に配設された樹脂ウインドウを示す説明図。
【図2】実施例における、樹脂ウインドウの構造を示す説明図。
【図3】実施例における、樹脂ウインドウの前方突片部の構造を示す説明図。
【図4】実施例における、(a)樹脂ウインドウを成形するための成形型を示す説明図、(b)成形型を樹脂ウインドウから離型する様子を示す説明図。
【図5】実施例における、樹脂ウインドウ(別例)の前方突片部の構造を示す説明図。
【図6】実施例における、(a)樹脂ウインドウ(別例)を成形するための成形型を示す説明図、(b)成形型を樹脂ウインドウ(別例)から離型する様子を示す説明図、(c)成形型を樹脂ウインドウ(別例)から離型する様子を示す説明図。
【図7】従来における、樹脂ウインドウの構造を示す説明図。
【図8】従来における、(a)樹脂ウインドウを成形するための成形型を示す説明図、(b)成形型を樹脂ウインドウから離型する様子を示す説明図。
【符号の説明】
【0042】
2 樹脂ウインドウ
21 本体部
211 第1表面(表面)
218 前方側縁部(側縁部)
22 前方突片部(突片部)
222 内方側面
222a ギヤ形成面
24 被駆動ギヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に昇降可能に配設される車両用樹脂ウインドウにおいて、
板状の本体部と、該本体部の側縁部の少なくとも一方において、上記本体部の一方の表面から厚み方向に突出し、該本体部と一体的に成形されてなる突片部とを有しており、
該突片部における上記本体部の側縁側とは反対側の内方側面には、被駆動ギヤを上下方向に設けたギヤ形成面が形成されており、
上記本体部の上記一方の表面と上記ギヤ形成面とが成す角度αは、鈍角であることを特徴とする車両用樹脂ウインドウ。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用樹脂ウインドウを昇降可能に配設してなり、
上記被駆動ギヤに噛合する駆動ギヤ及び該駆動ギヤを駆動する回転手段を内蔵していることを特徴とする車両用ドア。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用樹脂ウインドウを成形型により成形する方法であって、
上記成形型は、上記樹脂ウインドウにおける上記本体部の上記一方の表面側の表面形状に対応する第1成形型と、上記本体部の他方の表面側の表面形状に対応する第2成形型とからなり、
上記第1成形型は、上記樹脂ウインドウにおける上記本体部の上記一方の表面と上記突片部との境界に対応する位置で分割されてなることを特徴とする車両用樹脂ウインドウの成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−137620(P2010−137620A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313834(P2008−313834)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【Fターム(参考)】