説明

車両用空気案内装置

【課題】熱交換器の熱交換効率を向上させることができる車両用空気案内装置を提供する。
【解決手段】下端部5aよりも上端部5bの方が後方に位置する後傾状態で車両1のエンジンルーム3の内部に配置され、前面部5cから流入した空気が後面部5dから流出するラジエータ5と、エンジンルーム3の内部に導入された空気を流出口7bからラジエータ5の前面部5cに供給する第1のダクト7と、エンジン2に吸気としての空気を導く第2のダクト8と、第1のダクト7の流出口7bの上端部および第2のダクト8を連通する連通路11と、第1のダクト7の内部の空気圧の増加に応じて連通路11の開放量を増大させる弁装置9と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンルームに設けられる車両用空気案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンルームに熱交換器であるラジエータを搭載した車両においては、エンジンルームに設けられた空気導入口から導入した空気をダクトによってラジエータに供給して、その空気を用いてラジエータで熱交換をしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ラジエータでは、前面部から流入した空気が後面部から流出する過程でその空気と冷却水との熱交換が行なわれるようになっている。
【特許文献1】特開平11−20483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたラジエータは、その下端部よりも上端部の方が前方に位置する前傾状態で配置されているとともに、この熱交換器の下方には熱交換器に近接したアンダーカバーが配置されているため、熱交換器の下端部とアンダーカバーとに囲まれた熱交換器の下端部前方の空間の空気が抜け難く、その空間に空気が停滞してしまう。これにより、ラジエータの前の空気の温度が上昇しラジエータの熱交換効率が大きく低下するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、熱交換器の熱交換効率を向上させることができる車両用空気案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の車両用空気案内装置は、下端部よりも上端部の方が後方に位置する後傾状態でエンジンルームの内部に配置され、前面部から流入した空気が後面部から流出する熱交換器と、前記エンジンルームの内部に導入された空気を流出口から前記熱交換器の前面部に供給する第1のダクトと、前記流出口の上端部およびエンジンに吸気としての空気を導く前記第2のダクトを連通する連通路と、前記第1のダクトの内部の空気圧の増加に応じて前記連通路の開放量を増大させる弁装置と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の態様の車両用空気案内装置は、下端部よりも上端部の方が後方に位置する後傾状態でエンジンルームの内部に配置され、前面部から流入した空気が後面部から流出する熱交換器と、前記エンジンルームの内部に導入された空気を前記流出口から前記熱交換器の前面部に供給する第1のダクトと、前記流出口の上端部およびエンジンに吸気としての空気を導く前記第2のダクトを連通する連通路と、前記車両の車速の増加に応じて前記連通路の開放量を増大させる弁装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用空気案内装置によれば、第1のダクトの内部の空気圧の増加に応じて弁装置が連通路の開放量を増大させる、又は、車両の車速の増加に応じて弁装置が連通路の開放量を増大させるので、第1のダクトにおけるラジエータの前方に空気が停滞することが抑制されて第1のダクトの内部の圧力増加が抑制され、ラジエータの前の空気の温度が上昇することを抑制することができる。よって、熱交換器の熱交換効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態について図1ないし図3を参照して説明する。図1は、本実施形態にかかる車両のエンジンルームの内部を示す縦断側面図、図2は、本実施形態にかかる弁体が開いた状態の車両のエンジンルームの内部を示す縦断側面図、図3は、本実施形態にかかる車両のエンジンルームの内部を示す平面図である。
【0010】
図1ないし図3に示すように、車両1の前部には、エンジン2を収容したエンジンルーム3が設けられている。このエンジンルーム3の内部には、エンジン2の他に、このエンジン2に供給される空気を清浄するエアクリーナボックス4と、熱交換器であってエンジン2の冷却水を冷却するラジエータ5と、このラジエータ5を含んで構成されエンジンルーム3の内部の空気を案内する車両用空気案内装置6とが配置されている。
【0011】
エンジンルーム3の前壁部3aには、空気導入口3bが設けられている。空気導入口3bは、エンジンルーム3の内外を連通しエンジンルーム3の内部に空気を導入する、また、エンジンルーム3の底部3cには、開口3dが設けられており、この開口3dは、エンジンルーム3の内外を連通しエンジンルーム3の内部の空気を排出する。また、エンジンルーム3の上壁部3eには、フード3fが開閉可能に設けられている。
【0012】
車両用空気案内装置6は、ラジエータ5と、空気導入口3bと、空気導入口3bによって導入された空気をラジエータ5に供給する第1のダクト7と、エンジン2に吸気としての空気を導く第2のダクト8と、第2のダクト8の下流部および第1のダクト7の連通状態を制御する弁装置9と、を備えている。
【0013】
ラジエータ5は、エンジンルーム3の内部において空気導入口3bの後方であってエンジン2の前方に配置されている。詳しくは、ラジエータ5は、その下部が空気導入口3bと前後方向で対面している。ラジエータ5は、下端部5aよりも上端部5bの方が後方に位置する後傾状態で、図示しないラジエータサポートによってエンジンルーム3に固定されている。ラジエータ5は、前面部5cから流入した空気が後面部5dから流出するようになっている。詳しくは、ラジエータ5の内部には、前面部5cから後面部5dに至る通風路(図示せず)が形成されており、前面部5cから流入した空気がその通風路を通過して後面部5dから流出する。このラジエータ5における空気の通過過程で、その空気とラジエータ5の内部の冷却水用通路(図示せず)にエンジン2から導入される冷却水との間で熱交換が行なわれるようになっている。このラジエータ5では、ラジエータ5を通過して後面部5dから流出する空気が後方斜め下方に向かって流出する。ラジエータ5には、ラジエータ5の後面部5dに対向してファン10が取り付けられている。
【0014】
第1のダクト7は、その前端部に流入口7aを有する一方、その後端部に流出口7bを有している。流入口7aは、空気導入口3bに接続されている一方、流出口7bは、ラジエータ5の前面部5cに臨んだ状態でラジエータ5の前面部5cに接続されている。この第1のダクト7は、流出口7bから流出口7bへ向かう途中から径が徐々に拡大した形状に形成されている。かかる構造の第1のダクト7は、空気導入口3bによって流入口7aから第1のダクト7の内部に導入された空気を流出口7bからラジエータ5の前面部5cに供給する。
【0015】
第2のダクト8は、エンジンルーム3の内部において第1のダクト7の下流部の上方位置から後方に延在してエンジン2に空気を吸気として供給可能に接続されている。この第2のダクト8の中間部には、エアクリーナエレメント(図示せず)を内蔵したエアクリーナボックス4が一体に配設されており、このエアクリーナボックス4のケースも第2のダクト8の一部を構成している。第2のダクト8は、その前端部に空気を取り入れる吸気口8aを有し、この吸気口8aから導入した空気をエンジン2に導くようになっている。吸気口8aは、本実施形態では、エンジンルーム3の内部に開口しており、エンジンルーム3の内部の空気を取り入れるようになっている。詳しくは、エンジンルーム3においては、フード3fの取付部等の隙間から外部の空気が流入可能となっており、この空気を吸気口8aが取り入れるようになっている。この第2のダクト8は、第1のダクト7と一体形成されている。かかる構造によって、第2のダクト8を通る空気は、エアクリーナエレメントによって清浄された後にエンジン2に供給される。
【0016】
この第2のダクト8と第1のダクト7とは、連通路11によって連通される。連通路11は、第2のダクト8の流出口7bの上端部7cに開口するとともに、第2のダクト8における吸気口8aの下流側に開口し、これらを連通する。連通路11は、弁装置9によって開閉されるようになっている。この連通路11は、第1のダクト7および第2のダクト8と一体成形されている。
【0017】
弁装置9は、連通路11の開放量を調整可能であり、第1のダクト7の内部の空気圧の増加に応じて連通路11の開放量を増大させるものである。詳しくは、弁装置9は、連通路11を開閉可能であって、第1のダクト7の内部の空気圧が規定の圧力未満の場合には、連通路11を閉じる一方、第1のダクト7の内部の空気圧が規定の圧力以上となった場合には、連通路11を開放して第1のダクト7の内部の空気を第2のダクト8に供給するようになっている。
【0018】
この弁装置9は、連通路11を開閉する弁体12と、弁体12を駆動する駆動部である付勢部材14と、を備えている。
【0019】
弁体12は、車幅方向を軸方向として連通路11の前端部に設けられた支軸15によって、連通路11に対して回動可能に設けられている。弁体12は、フラップ状に形成されている。この弁体12は、連通路11を閉塞する状態では、連通路11の内面11aに当接し、この内面11aによって閉弁方向への移動(回動)が規制される(図1)。即ち、連通路11の内面11aが弁座として機能している。一方、弁体12は、連通路11を開放(全開)した状態で吸気口8aを閉塞する(図2)。このとき、弁体12は、第2のダクト8の内面8bに当接し、当該第2のダクト8の内面8bによって開弁方向への移動が規制される。即ち、第2のダクト8の内面8bは、弁座として機能している。
【0020】
この弁体12は、付勢部材14によって閉弁方向に付勢されている。付勢部材14は、本実施形態では、ねじりバネであり、支軸15に外挿された状態で一端部が連通路11に対して固定され、他端部が弁体12に固定されている。付勢部材14は、弁体12を閉弁方向に付勢して弁体12に連通路11を閉じさせる。
【0021】
このような構成において、車両1が前進すると、車外の空気が空気導入口3bからエンジンルーム3の内部である第1のダクト7の内部に導入される。このとき、第1のダクト7の内部の空気圧が規定の圧力未満である場合には、連通路11は弁装置9の弁体12によって閉塞された状態となっている(図1)。そして、第1のダクト7の内部に導入された空気は、第1のダクト7によってラジエータ5に供給され、ラジエータ5の前面部5cからラジエータ5の内部に流入し後面部5dから流出する。また、エンジン2が行なう吸気動作によって、エンジンルーム3の内部の空気が第2のダクト8の吸気口8aから第2のダクト8を経由してエンジン2の内部に吸気される。
【0022】
そして、車速の増大に伴い第1のダクト7の内部に導入される空気量が増大し、第1のダクト7の内部の空気圧が規定の圧力以上となった場合には、第1のダクト7の内部の空気に押圧された弁体12が付勢部材14の付勢力に抗して開弁し、連通路11が開放される(図2)。詳しくは、第1のダクト7の内部の空気圧の増大に応じて弁体12の開弁度が徐々に大きくなり連通路11の開放量も徐々に大きくなる。そして、第1のダクト7の内部の空気圧が規定の圧力よりも大きい圧力である全開用圧力以上では、弁体12の開弁度が最大になって連通路11が全開になるとともに第2のダクト8の吸気口8aが弁体12によって閉塞される。以上の弁体12の開弁によって、第1のダクト7の内部の空気の一部は、ラジエータ5に流入することなく、連通路11を経由して第2のダクト8に流入し、第2のダクト8を介してエンジン2に至る。このとき、ラジエータ5が下端部5aよりも上端部5bの方が後方に位置する後傾状態で配置されていることにより、ラジエータ5の前方の空気は、ラジエータ5の前面部5cに沿って流出口7bの上端部へとスムーズに上昇し、連通路11を経由して第2のダクト8に流入する。これにより、第1のダクト7におけるラジエータ5の前方に空気が停滞することが抑制されて第1のダクト7の内部の圧力増加が抑制され、ラジエータ5の前の空気の温度が上昇することが抑制される。
【0023】
そして、この状態から車両1が減速して第1のダクト7の内部の空気圧が減少すると、弁体12が付勢部材14の付勢力によって徐々に閉弁方向に回動してその開弁度が小さくなり、第1のダクト7の内部の空気圧が規定の圧力未満になると、弁体12が閉弁状態となり第2のダクト8の吸気口8aが全開状態となる。
【0024】
以上説明した本実施形態では、第1のダクト7の内部の圧力が増加する場合には、弁装置9が第1のダクト7の内部の空気圧の増加に応じて連通路11の開放量を増大させることにより、第1のダクト7におけるラジエータ5の前方に空気が停滞することが抑制され第1のダクト7の内部の圧力増加が抑制されるので、ラジエータ5の前の空気の温度が上昇することが抑制されてラジエータ5に高温の空気が流入することを抑制することができる。よって、ラジエータ5の熱交換効率を向上させることができる。
【0025】
また、本実施形態では、第1のダクト7の内部の空気圧が規定の圧力未満である場合には、付勢部材14の付勢力によって弁体12が閉弁状態となるので、ラジエータ5前の空気圧が低下しすぎてラジエータ5の抵抗によって空気がラジエータ5を通過できなくなることを回避でき、ラジエータ5に十分な空気を流入させることができる。
【0026】
また、本実施形態では、弁装置9は、連通路11を開閉する弁体12と、弁体12を閉弁方向に付勢して弁体12に連通路11を閉じさせる付勢部材14と、を有し、第1のダクト7の内部の空気圧が規定の圧力以上となった場合に、第1のダクト7の内部の空気に押圧された弁体12が付勢部材14の付勢力に抗して開弁するので、弁体12の駆動に電力が必要でなく、経済的に有利である。
【0027】
また、本実施形態では、第2のダクト8は、空気を取り入れる吸気口8aを有し、弁体12は、連通路11を開放した状態で吸気口8aを閉塞することにより、一つの弁体12で、連通路11および吸気口8aの開閉を制御できるので、連通路11および吸気口8aそれぞれに弁体を設ける場合に比べて、弁装置9を簡素な構成とすることができる。
【0028】
また、本実施形態では、エンジンルーム3の底部3cには、開口3dが設けられている一方、ラジエータ5は、ラジエータ5を通過して後面部5dから流出する空気が後方斜め下方に向かって流出するようになっているので、ラジエータ5を通過した空気がスムーズにエンジンルーム3の開口3dから排出され、エンジンルーム3の内部の空気圧が増大することを抑制することができる。
【0029】
なお、本実施形態では、付勢部材14がねじりバネである例を説明したが、付勢部材14は、これに限るものではなく、例えば板バネなどであっても良い。
【0030】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について図4ないし図6を参照して説明する。なお、前述した実施形態と同じ部分は、同一符号で示し説明も省略する。図4は、本実施形態にかかる車両のエンジンルームの内部を示す縦断側面図、図5は、本実施形態にかかる車両用空気案内装置の電装系を示すブロック図、図6は、本実施形態にかかる車両用空気案内装置の制御部が実行する空気案内処理の流れを示すフローチャートである。
【0031】
本実施形態の車両用空気案内装置6Aは、弁装置9Aの駆動部14Aが第1の実施形態に対して異なり、その他の構成は第1の実施形態と同じである。
【0032】
本実施形態の駆動部14Aは、図4および図5に示すように、弁体12を駆動するモータ21と、第1のダクト7の内部の空気圧を検出する圧力センサ23と、モータ21を駆動して弁体12の開閉を制御する制御部24(図5)と、を備えている。この駆動部14Aは、第1の実施形態で説明した付勢部材14は備えていない。
【0033】
モータ21は、正逆両方向に回転可能であり、ギヤ22を介して支軸15に連結されている。このモータ21は、例えばステッピングモータである。このモータ21が図示しないバッテリから供給される電力によって回転することで、モータ21の回転駆動力がギヤ22を介して支軸15に伝達され、支軸15とともに弁体12が回動(開閉)する。
【0034】
圧力センサ23は、第1のダクト7の内部であってラジエータ5の前方に位置した状態でラジエータ5の前面部5cに固定されている。この圧力センサ23は、図示しないバッテリから供給される電力によって動作し、第1のダクト7の内部にけるラジエータ5の前方の空気圧を検出し、検出した空気圧を電気信号で制御部24に送信する。
【0035】
制御部24は、各種の演算および各部の駆動制御を実行する演算回路、情報を記憶する記憶回路等を有して構成されている。この制御部24には、モータ21および圧力センサ23が通信可能に接続されている。
【0036】
次に、制御部24が実行する空気案内処理を図6に示すフローチャートに沿って説明する。
【0037】
まず、制御部24は、第1のダクト7の内部におけるラジエータ5の前方の空気圧を検出する(ステップS1)。これは、圧力センサ23から送信される空気圧のデータを受信することで実行される。
【0038】
次に、制御部24は、圧力センサ23から受信した第1のダクト7の内部におけるラジエータ5の前方の空気圧に応じてモータ21を駆動して弁体12の開閉を制御する(ステップS2)。このステップS1〜S2の処理を規定時間毎に繰り返し実行する。
【0039】
具体的には、初期状態では、図4中に実線で示すように弁体12は閉弁状態となっており、車両1が前進して、車外の空気が空気導入口3bからエンジンルーム3の内部である第1のダクト7の内部に導入され、第1のダクト7の内部の空気圧が増大し、圧力センサ23が検出する第1のダクト7の内部の空気圧が規定の圧力以上となると、制御部24は、図4中に仮想線で示すように、モータ21を正回転方向に駆動して弁体12を開弁状態とする。このとき、制御部24は、圧力センサ23が検出する第1のダクト7の内部の空気圧の増大に応じて弁体12の開弁度を徐々に大きくするようにモータ21の回転角度を制御する。この制御は例えば、次のように行われる。制御部24は、初期状態(閉弁状態)からのモータ21の回転角度を記憶回路に記憶する。そして、制御部24は、記憶回路を参照して現在のモータ21の回転角度を取得し、モータ21の回転角度が空気圧に応じた目標回転角度となるようにモータ21を駆動する。
【0040】
制御部24は、第1のダクト7の内部の空気圧が規定の圧力よりも大きい圧力である全開用圧力以上の場合には、弁体12の開弁度を最大にして、連通路11を全開にするとともに第2のダクト8の吸気口8aを弁体12によって閉じる。以上の弁体12の開弁によって、第1の実施形態と同様に、第1のダクト7の内部の空気の一部は、ラジエータ5に流入することなく、連通路11を経由して第2のダクト8に流入し、第2のダクト8およびエアクリーナボックス4を介してエンジン2に至るので、第1のダクト7におけるラジエータ5の前方に空気が停滞することが抑制されて第1のダクト7の内部の圧力増加が抑制され、ラジエータ5の前の空気の温度が上昇することが抑制される。
【0041】
この状態から、車両1が減速して第1のダクト7の内部の空気圧が減少した場合には、制御部24は、モータ21を逆回転方向に駆動して、その空気圧の減少に応じて弁体12の開弁度を小さくする。そして、制御部24は、第1のダクト7の内部の空気圧が規定の圧力未満になると、弁体12を閉弁状態とするともに、第2のダクト8の吸気口8aは全開状態とする(図4中の実線)。即ち、制御部24は、モータ21を駆動して、圧力センサ23が検出する第1のダクト7の内部の空気圧が規定の圧力未満である場合には、弁体12を閉弁状態とし、圧力センサ23が検出する第1のダクト7の内部の空気圧が規定の圧力以上である場合には、弁体12を開弁状態とする。
【0042】
以上説明した本実施形態では、弁装置9Aは、連通路11を開閉する弁体12と、弁体12を駆動するモータ21と、第1のダクトの内部の空気圧を検出する圧力センサ23と、モータ21を駆動して、圧力センサ23が検出する第1のダクト7の内部の空気圧が規定の圧力未満である場合には弁体12を閉弁状態とし、圧力センサ23が検出する第1のダクト7の内部の空気圧が規定の圧力以上である場合には、弁体12を開弁状態とする制御部24と、を有する。したがって、第1の実施形態と同様に、第1のダクト7におけるラジエータ5の前方に空気が停滞することが抑制され第1のダクト7の内部の圧力増加が抑制されるので、ラジエータ5の前の空気の温度が上昇することが抑制されてラジエータ5に高温の空気が流入することを抑制することができる。よって、ラジエータ5の熱交換効率を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、圧力センサ23が検出する第1のダクト7の内部の空気圧が規定の圧力未満である場合には、弁装置9が弁体12を閉弁状態とするので、ラジエータ5前の空気圧が低下しすぎてラジエータ5の抵抗によって空気がラジエータ5を通過できなくなることを回避でき、ラジエータ5に十分に空気を流入させることができる。
【0044】
また、本実施形態では、制御部24が、圧力センサ23が検出する第1のダクト7の内部の空気圧に応じてモータ21を駆動して、弁体12の開閉状態を制御するので、弁体12を第1の実施形態で説明したバネ力によって制御する場合に比べて、第1のダクト7の内部におけるラジエータ5の前の空気圧を、より正確に制御することができる。
【0045】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について図7ないし図9を参照して説明する。なお、前述した実施形態と同じ部分は、同一符号で示し説明も省略する。図7は、本実施形態にかかる車両のエンジンルームの内部を示す縦断側面図、図8は、本実施形態にかかる車両用空気案内装置の電装系を示すブロック図、図9は、本実施形態にかかる車両用空気案内装置の制御部が実行する空気案内処理の流れを示すフローチャートである。
【0046】
本実施形態の車両用空気案内装置6Bは、弁装置9Bが第1の実施形態に対して異なり、その他の構成は第1の実施形態と同じである。また、本実施形態は、第1のダクト7の内部の空気圧が車速と略比例することから、車速に基づいて連通路11の開閉量を制御するようになっている点が第2の実施形態と異なる。
【0047】
弁装置9Bは、連通路11の開放量を調整可能であり、車両1の車速の増加に応じて連通路11の開放量を増大させるようになっている。この弁装置9Bは、駆動部14Bが第1の実施形態と異なり、他の構成は第1の実施形態と同じである。
【0048】
駆動部14Bは、弁体12を駆動するモータ21と、車両1の車速を検出する速度センサ31と、モータ21を駆動して弁体12の開閉を制御する制御部24と、を備えている。
【0049】
速度センサ31は、車軸に取り付けられて車軸の単位時間あたりの回転数に基づいて車速を検出するものであり、例えば車両1の速度計用に車両1に取り付けられているものを用いて良い。この速度センサ31は、図示しないバッテリから供給される電力によって動作し、検出した車速を電気信号で制御部24に送信する。
【0050】
モータ21は、第2の実施形態と同じでものである。制御部24は、基本構成は第2の実施形態と同じであるが、その制御内容が第2の実施形態に対して異なる。この制御部24にモータ21および速度センサ31が通信可能に接続されている。
【0051】
次に、制御部24が実行する空気案内処理を図9に示すフローチャートに沿って説明する。
【0052】
まず、制御部24は、車速を検出する(ステップS11)。これは、速度センサ31から送信される車速のデータを受信することで実行される。
【0053】
次に、制御部24は、速度センサ31から受信した車速に応じてモータ21を駆動して弁体12の開閉を制御する(ステップS12)。このステップS11〜S12の処理を規定時間毎に繰り返し実行する。
【0054】
具体的には、初期状態では、図7中に実線で示すように弁体12は閉弁状態となっており、車両1が前進して、速度センサ31が検出する車速が規定速度以上になると、制御部24は、図7に仮想線で示すように、モータ21を正回転方向に駆動して弁体12を開弁状態とする。このとき、制御部24は、速度センサ31が検出する車速の増大に応じて弁体12の開弁度を徐々に大きくするようにモータ21の回転角度を制御する。この制御は、例えば、次のように行われる。制御部24は、初期状態(閉弁状態)からのモータ21の回転角度を記憶回路に記憶する。そして、制御部24は、記憶回路を参照して現在のモータ21の回転角度を取得し、モータ21の回転角度が空気圧に応じた目標回転角度となるようにモータ21を駆動する。
【0055】
制御部24は、車速が規定速度の圧力よりも速い速度である全開用速度以上になった場合には、弁体12の開弁度を最大にして、連通路11を全開にするとともに第2のダクト8の吸気口8aを弁体12によって閉じる。以上の弁体12の開弁によって、第1の実施形態と同様に、第1のダクト7の内部の空気の一部は、ラジエータ5に流入することなく、連通路11を経由して第2のダクト8に流入し、第2のダクト8を介してエンジン2に至るので、第1のダクト7におけるラジエータ5の前方に空気が停滞することが抑制されて第1のダクト7の内部の圧力増加が抑制され、ラジエータ5の前の空気の温度が上昇することが抑制される。
【0056】
そして、この状態から車両1が減速して車速が遅くなったには、制御部24は、モータ21を逆回転方向に駆動して、その減速に応じて弁体12の開弁度を小さくし、車速が規定速度未満になると、弁体12を閉弁状態とするともに、第2のダクト8の吸気口8aは全開状態とする。即ち、制御部24は、モータ21を駆動して、速度センサ31が検出する車速が規定速度未満である場合には、弁体12を閉弁状態とし、速度センサ31が検出する車速が規定速度以上である場合には、弁体12を開弁状態とする。
【0057】
以上説明したように、本実施形態では、弁装置9Bは、連通路11の開放量を調整可能であり、車両1の車速の増加に応じて連通路11の開放量を増大させるようになっているので、第1の実施形態と同様に、第1のダクト7におけるラジエータ5の前方に空気が停滞することが抑制され第1のダクト7の内部の圧力増加が抑制されるので、ラジエータ5の前の空気の温度が上昇することが抑制されてラジエータ5に高温の空気が流入することを抑制することができる。よって、ラジエータ5の熱交換効率を向上させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、速度センサ31が検出する車速が規定速度未満である場合には、弁装置9が弁体12を閉弁状態とするので、ラジエータ5前の空気圧が低下しすぎてラジエータ5の抵抗によって空気がラジエータ5を通過できなくなることを回避でき、ラジエータ5に十分に空気を流入させることができる。
【0059】
また、本実施形態では、弁装置9Bは、連通路11を開閉する弁体12と、弁体12を駆動するモータ21と、車両1の車速を検出する速度センサ31と、モータ21を駆動して、速度センサ31が検出する車速が規定速度未満である場合には弁体12を閉弁状態とし、速度センサ31が検出する車速が規定速度以上である場合には、弁体12を開弁状態とする制御部24と、を有するので、車速に応じて、弁体12の開閉を正確に制御することができる。
【0060】
また、弁装置9Bを車両1の速度計用のものを用いた場合には、弁装置9Bのために速度センサを別途設ける必要が無いので、車両1の構成が複雑化するのを抑制することができる。
【0061】
なお、本発明は、本実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。例えば、熱交換器は、ラジエータに限ることなく、インタクーラなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる車両のエンジンルームの内部を示す縦断側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかる弁体が開いた状態の車両のエンジンルームの内部を示す縦断側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態にかかる車両のエンジンルームの内部を示す平面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかる車両のエンジンルームの内部を示す縦断側面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態にかかる車両用空気案内装置の電装系を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかる車両用空気案内装置の制御部が実行する空気案内処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施形態にかかる車両のエンジンルームの内部を示す縦断側面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態にかかる車両用空気案内装置の電装系を示すブロック図である。
【図9】本発明の第3の実施形態にかかる車両用空気案内装置の制御部が実行する空気案内処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
1 車両
3 エンジンルーム
3b 空気導入口
5 ラジエータ(熱交換器)
5a ラジエータの下端部
5b ラジエータの上端部
5c ラジエータの前面部
5d ラジエータの後面部
6,6A,6B 車両用空気案内装置
7 第1のダクト
7b 流出口
7c 流出口の上端部
8 第2のダクト
8a 吸気口
9,9A,9B 弁装置
11 連通路
12 弁体
14 付勢部材
21 モータ
23 圧力センサ
24 制御部
31 速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端部よりも上端部の方が後方に位置する後傾状態で車両のエンジンルームの内部に配置され、前面部から流入した空気が後面部から流出する熱交換器と、
前記エンジンルームの内部に空気を導入する空気導入口と、
前記熱交換器の前面部に臨む流出口を有し、前記空気導入口によって導入された空気を前記流出口から前記熱交換器の前面部に供給する第1のダクトと、
エンジンに吸気としての空気を導く第2のダクトと、
前記流出口の上端部および前記第2のダクトを連通する連通路と、
前記連通路の開放量を調整可能であり、前記第1のダクトの内部の空気圧の増加に応じて前記連通路の開放量を増大させる弁装置と、
を備えることを特徴とする車両用空気案内装置。
【請求項2】
下端部よりも上端部の方が後方に位置する後傾状態で車両のエンジンルームの内部に配置され、前面部から流入した空気が後面部から流出する熱交換器と、
前記エンジンルームの内部に空気を導入する空気導入口と、
前記熱交換器の前面部に臨む流出口を有し、前記空気導入口によって導入された空気を前記流出口から前記熱交換器の前面部に供給する第1のダクトと、
エンジンに吸気としての空気を導く第2のダクトと、
前記流出口の上端部および前記第2のダクトを連通する連通路と、
前記連通路の開放量を調整可能であり、前記車両の車速の増加に応じて前記連通路の開放量を増大させる弁装置と、
を備えることを特徴とする車両用空気案内装置。
【請求項3】
前記弁装置は、
前記連通路を開閉する弁体と、
前記弁体を閉弁方向に付勢して前記弁体に前記連通路を閉じさせる付勢部材と、
を有し、
前記第1のダクトの内部の空気圧が規定の圧力以上となった場合に、前記第1のダクトの内部の空気に押圧された前記弁体が前記付勢部材の付勢力に抗して開弁することを特徴とする請求項1に記載の車両用空気案内装置。
【請求項4】
前記弁装置は、
前記連通路を開閉する弁体と、
前記弁体を駆動するモータと、
前記第1のダクトの内部の空気圧を検出する圧力センサと、
前記モータを駆動して、前記圧力センサが検出する前記第1のダクトの内部の空気圧が規定の圧力未満である場合には前記弁体を閉弁状態とし、前記圧力センサが検出する前記第1のダクトの内部の空気圧が前記規定の圧力以上である場合には、前記弁体を開弁状態とする制御部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用空気案内装置。
【請求項5】
前記弁装置は、
前記連通路を開閉する弁体と、
前記弁体を駆動するモータと、
前記車両の車速を検出する速度センサと、
前記モータを駆動して、前記速度センサが検出する車速が規定速度未満である場合には前記弁体を閉弁状態とし、前記速度センサが検出する車速が前記規定速度以上である場合には、前記弁体を開弁状態とする制御部と、
を有することを特徴とする請求項2に記載の車両用空気案内装置。
【請求項6】
前記第2のダクトは、空気を取り入れる吸気口を有し、
前記弁体は、前記連通路を解放した状態で前記吸気口を閉塞することを特徴とする請求項3ないし5のいずれか一項に記載の車両用空気案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−184553(P2009−184553A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27531(P2008−27531)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】