説明

車両用表示器の制御装置

【課題】 種々の車両用表示器に応じて適した通信手段を選択できる車両用表示器の制御装置を提案することにある。
【解決手段】 車両情報を入力する入力ポート22と、この車両情報に基づいて複数の計器3,4を駆動するため表示用駆動信号を生成するコントロールユニット2と、前記表示用駆動信号を前記複数の計器3,4に出力できる複数の出力ポート53,54と、を備えてなる車両用表示器の制御装置であって、コントロールユニット2は、異なる通信プロトコル(例えば、UART通信プロトコルとCAN通信プロトコル)の前記表示用駆動信号をそれぞれ生成し、これらの表示用駆動信号を出力ポート23,24から出力可能に設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定対象からの車両情報を入力し、各車両情報に応じた計測データを求め、この各計測データに基づいて表示部を駆動させる車両用表示器の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用表示器として、車両には、速度計や回転計,水温計,燃料計などが、ケース体に収納された既存の複合計器(純正のコンビネーションメータ)が搭載されている。また、その他に、例えば、サーキットレース場等を走行する競技車両などに特化した吸気圧計や排気温度計などの種々の計器が提案されており、使用者の好みや用途によって選択し車両に搭載することができる(例えば、特許文献1参照)。また、競技車両やスーパーチャージャあるいはターボ付き車両等では、回転計,吸気圧計,過給気圧器,排気温度計,油温計及び油圧計といった複数の補助計器を取り付けることによって多くの情報を得られるようにすることが望まれている。
【0003】
かかる車両用表示器の駆動装置は、車両状態に応じた複数の状態信号を入力可能とする入力ポートを備え、複数の前記状態信号に応じた各計測データを求める単一のコントロールユニットを設け、このコントロールユニットと前記各計器との間を前記コントロールユニットにより生成されるシリアルデータによって通信してなるもので、前記コントロールユニットから一つの計器へ、そして前記一つの計器から、次なる計器へと順次数珠繋ぎ上に前記シリアルデータを転送するシリアル転送ケーブルで接続することにより、計器を複数設けることができる。したがって、複数の計器からなる車両用表示器の取付作業を簡素化し、かつダッシュボードやインパネ回りの美観を損ねることなく取付けることが可能となる。
【0004】
また、車両用表示器として、比較的大型の複合計器にマルチディスプレイなどを搭載し、多種の情報を表示させるものが望まれる場合があり、CAN(Controller Area Network)通信などの多重通信を利用して高速で大量のデータをやり取りする車両用表示器が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−18974号
【特許文献2】特開平9−154187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、車両用表示器として、運転者の視認性や好みなどを考慮した箇所、例えば、ダッシュボード箇所及び車両のピラー箇所に設けるなど、車両に応じた配設位置をできるだけ自由に設定でき、かつ運転者の運転の妨げにならないような小型のものが求められる場合がある。
【0006】
しかしながら、これら小型の車両用表示器を駆動するためにCAN通信を利用する場合、CAN通信を行うための回路構成で大型化してしまう問題があった。また、複数の計器を取り付ける場合、計器毎にこの回路構成が必要となるため一層にコストを上げてしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、上述した問題に着目してなされたものであって、種々の車両用表示器に応じて適した通信手段を選択できる車両用表示器の制御装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用表示器の制御装置は、前記課題を解決するため、請求項1に記載したように、車両情報を入力する入力ポートと、この車両情報に基づいて複数の表示器を駆動するため表示用駆動信号を生成する制御手段と、前記表示用駆動信号を前記複数の表示器に出力できる複数の出力ポートと、を備えてなる車両用表示器の制御装置であって、前記制御手段は、異なる通信プロトコルの前記表示用駆動信号をそれぞれ生成し、これらの表示用駆動信号を前記出力ポートから出力可能に設けてなることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載したように、請求項1に記載の車両用表示器の制御装置において、前記制御手段は、多重通信を行う前記表示用駆動信号と、半二重通信を行う前記表示用駆動信号と、をそれぞれ別の前記出力ポートから出力可能に設けてなることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載したように、請求項1に記載の車両用表示器の制御装置において、前記制御手段は、CAN(Controller Area Network)通信を行う前記表示用駆動信号と、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)通信を行う前記表示用駆動信号と、をそれぞれ別の前記出力ポートから出力可能に設けてなることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載したように、請求項1に記載の車両用表示器の制御装置において、前記複数の出力ポートのうち一つは、少なくとも複数の前記車両情報を表示する複合表示器と配線を介して接続可能に設けられ、多重通信を行う前記表示用駆動信号を出力可能に設けられてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、被測定対象からの車両情報を入力し、各車両情報に応じた計測データを求め、この各計測データに基づいて表示部を駆動させる車両用表示器の制御装置に関し、種々の車両用表示器に応じて適した通信手段を選択できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を適応したものを添付図面を用いて説明する。なお、図1,2に示すように、操作部1と、コントロールユニット(制御手段)2と、補助計器(表示器)3と,複合計器(表示器)4と、を車両内に備えたものについて例に挙げて説明する。
【0014】
操作部1は、複数の押しボタンスイッチ11を設けてなり、配線51を介してコントロールユニット2の入力ポート21に接続され、所望の操作信号をコントロールユニット2に出力する。操作部1は、操作者の押圧操作によって各計器3,4の表示機能について設定または切り換え操作することができる。操作部1は、例えば、各計器3,4における調光設定,警告値設定,ピーク値設定など、各種機能を設定または切り替えるための入力インターフェイスとして用いられる。
【0015】
コントロールユニット2は、操作部1からの操作信号や車両情報を得るための各種センサからの信号を入力する入力ポート22と、前記車両情報に基づいて導き出される表示用駆動信号を補助計器3および複合計器4に出力するための出力ポート23,24を備えており、単一のパッケージ内に収納されている。また、コントロールユニット2は、バッテリー電源と接続されることによって、コントロールユニット2の駆動回路へ電源供給を行うだけでなく、補助計器3や複合計器4の駆動電源として供給することもできる。
【0016】
コントロールユニット2は、所謂マイクロコンピュータからなる駆動装置制御部25を設けており、車両の吸気圧,エンジン回転数,水温及び油温等の複数の被測定対象について検出する各種センサからの各車両情報を配線52を介して入力し、入力された各車両情報をデジタル値に変換するA/D変換部25aと、前記各車両情報を所定の周期によりサンプリングし、各計測データを求めたり、また、操作部1からの操作信号に応じて各メータの各種機能の設定および切り換えを行うなどの処理動作を行う表示用駆動信号を生成するCPU25bと、このCPU25bによる前述の処理動作プログラム等が記憶されたROM25cと、前記CPU25bにより処理されたデータ等を一時的に記憶するRAM25dと、前述の処理動作によって生成された表示用駆動信号をシリアルデータに変換するパラレル・シリアル変換部(P/S変換部)25eと、操作部1の操作による設定値などを不揮発的に記憶するEEPROM25fと、前記シリアルデータを所定の周期により送信する送信部25gと、から構成されている。また、この場合、駆動装置制御部25によって、半二重通信を行うことができるUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)通信プロトコルの表示用駆動信号が生成でき、UART通信を用いて複数の補助計器3へ出力できる。
【0017】
また、駆動装置制御部25のCPU25bは、パラレル・シリアル変換部25eを介して送信されるシリアルデータとは別に、前述の処理動作によって生成された表示用駆動信号をCANコントローラ26へ出力している。CANコントローラ26は、表示用駆動信号を多重通信が行えるCAN通信プロトコルに変換し、変換された表示用駆動信号をCAN(Controller Area Network)通信を用いて複合計器4へ出力できる。
【0018】
なお、送信部25gやCANコントローラ26を介して送信される表示用駆動信号は、それぞれの出力ポート23,24から出力可能に設けられ、電源ラインやデータ転送ラインを有するシリアル転送ケーブル53,54を介して、補助計器3や複合計器4へ出力される。
【0019】
補助計器3は、文字やメモリ等の指標を有する文字板31と、前記指標を回転指示する指針32と、によって計測量を対比判読できる交差コイル式メータ(アナログ計器)にて構成され、車両におけるダッシュボード箇所や運転席側のAピラー箇所に取付台33を介して複数設けることができる。補助計器3は、例えば、燃圧計,排気温度計,吸気圧計などの計器が連なるように設けられ、それぞれの計器がシリアル転送ケーブル53を介してコントロールユニットに電気的に接続される。なお、補助計器3の間は、シリアル転送ケーブル53と同様の配線55によって接続されており、同様のUART通信プロトコルからなる表示用駆動信号が配信される。
【0020】
また、各補助計器3は、補助計器制御部3aと、駆動処理部3bと、駆動源3cと、を含む駆動回路が設けられている。補助計器制御部3aは、所謂マイクロコンピュータを適用でき、シリアル転送ケーブルを介して配信される表示用駆動信号(シリアルデータ)のうち、各補助計器3に対応する車両情報を読み取るための受信部と、この車両情報に応じて指針32などを動作させるための制御信号を演算処理するCPUと、このCPUの処理プログラムを格納するROMと、受信した車両情報やCPUによって処理されたデータを一時的に格納するRAMと、から構成される。駆動処理部3bは、補助計器制御部3aによって生成された制御信号に応じた駆動電圧を駆動源3cに与える。駆動源3cは、前記駆動電圧が通電した状態の交差コイルにおいて発生する磁界の変化に追従する回転磁石が内装され、この回転磁石と連動して指針32を動作させることができる。
【0021】
複合計器4は、文字やメモリ等の指標を有する文字板41と、前記指標を回転指示する指針42と、によって計測量を対比判読できる交差コイル式メータ(アナログ計器)や、操作部1によって選択された所望の表示や設定画面など多様な表示を行うことのできる有機ELパネルからなる表示部43を同一のケース44内に設けてなるコンビネーションメータである。複合計器4は、既存のメータの手前のスペースや、車両のインストルメントパネル面に固定して設けることができる。複合計器4は、例えば、過給気圧,エンジン回転数などを文字板41や指針42にて指示表示するアナログ表示部と、積算走行距離,排気温度,油温,水温,油圧,燃圧,速度,残燃料などを数値やゲージにてデジタル表示することのできる表示部43と、を備えて、多種類の車両情報を複合して表示するものである。複合計器4は、シリアル転送ケーブル54を介してコントロールユニット2に電気的に接続される。
【0022】
複合計器4は、CANコントローラ4aと、複合計器制御部4bと、駆動処理部4cと、駆動源4dと、表示処理部4eと、表示部43と、を含む駆動回路が設けられている。CANコントローラ4aは、コントロールユニット2に設けられるCANコントローラ26と同様なもので構成され、CAN通信プロトコルの表示用駆動信号を複合計器制御部4bが判読可能な信号に変換するものである。複合計器制御部4bは、所謂マイクロコンピュータを適用でき、CANコントローラ4aを介して配信される表示用駆動信号に応じて指針42や表示部43などを動作させるための制御信号を演算処理するCPUと、このCPUの処理プログラムを格納するROMと、受信した車両情報やCPUによって処理されたデータを一時的に格納するRAMと、積算走行距離などを不揮発的に記憶するEEPROMと、から構成される。駆動処理部4cは、複合計器制御部4bによって生成された制御信号に応じた駆動電圧を駆動源4dに与える。駆動源4dは、前記駆動電圧が通電した状態の交差コイルにおいて発生する磁界の変化に追従する回転磁石が内装され、この回転磁石と連動して指針42を動作させることができる。表示処理部4eは、複合計器制御部4bによって生成された制御信号に応じて表示部43に駆動信号を与えるものである。表示部43は、前記駆動信号に基づいて、例えば、計測値や設定画面などの表示を行う。
【0023】
かかる車両用表示器の制御装置は、車両情報を入力する入力ポート22と、この車両情報に基づいて複数の計器3,4を駆動するため表示用駆動信号を生成するコントロールユニット2と、前記表示用駆動信号を前記複数の計器3,4に出力できる複数の出力ポート53,54と、を備えてなる車両用表示器の制御装置であって、コントロールユニット2は、異なる通信プロトコル(例えば、UART通信プロトコルとCAN通信プロトコル)の前記表示用駆動信号をそれぞれ生成し、これらの表示用駆動信号を出力ポート23,24から出力可能に設けてなる。
【0024】
したがって、ダッシュボード箇所やAピラー箇所などに搭載され、運転者の運転の妨げとならないような小型の補助計器3においては、UART通信を用いることによって、CANコントローラ分の回路スペースを必要とせず小さな駆動回路と、少ない配線によって補助計器3を構成することが可能となる。また、多種の車両情報をまとめて得ることのできる複合計器4においては、CAN通信を用いて、比較的多量の車両情報であっても、瞬時に送受信することができるだけでなく、少ない配線にて複合計器4を構成することができる。そのため、搭載する計器の種類や用途に適した通信プロトコルにて、車両用表示器となる複合計器3や補助計器3を車両に搭載できる。
【0025】
なお、本発明の車両用表示器の制御装置を上述した実施の形態に構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに設計の変更が可能なことは勿論である。例えば、補助計器3として指針32と文字板31によって指示表示するアナログ計器を例に挙げて説明したが、有機ELパネルや液晶パネルを用いて数値やゲージ表示するデジタル計器であってもよいし、また、車両のフロントガラス面またはコンバイナ(反射部材)に表示像を照射する所謂ヘッドアップディスプレイによってこれを構成するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態の車両用表示器の制御装置の概略を示す図。
【図2】同上実施の形態の回路構成を示す図。
【符号の説明】
【0027】
2 コントロールユニット(制御手段)
22 入力ポート
23,24 出力ポート
3 補助計器(表示器)
4 複合計器(表示器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両情報を入力する入力ポートと、この車両情報に基づいて複数の表示器を駆動するため表示用駆動信号を生成する制御手段と、前記表示用駆動信号を前記複数の表示器に出力できる複数の出力ポートと、を備えてなる車両用表示器の制御装置であって、
前記制御手段は、異なる通信プロトコルの前記表示用駆動信号をそれぞれ生成し、これらの表示用駆動信号を前記出力ポートから出力可能に設けてなることを特徴とする車両用表示器の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、多重通信を行う前記表示用駆動信号と、半二重通信を行う前記表示用駆動信号と、をそれぞれ別の前記出力ポートから出力可能に設けてなることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示器の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、CAN(Controller Area Network)通信を行う前記表示用駆動信号と、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)通信を行う前記表示用駆動信号と、をそれぞれ別の前記出力ポートから出力可能に設けてなることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示器の制御装置。
【請求項4】
前記複数の出力ポートのうち一つは、少なくとも複数の前記車両情報を表示する複合表示器と配線を介して接続可能に設けられ、多重通信を行う前記表示用駆動信号を出力可能に設けられてなることを特徴とする請求項1に記載の車両用表示器の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−93425(P2007−93425A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284090(P2005−284090)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】