説明

車両用表示装置

【課題】フロントウィンドウシールドに運転支援情報を表示する部分の照度と異なる照度を照度センサが検出してしまう走行状態にあっても、運転支援情報を表示する態様を最適化する。
【解決手段】外界カメラ2からの画像から影42の鳥瞰図を作成し(S7)、鳥瞰図に基づいて、照度センサ22が受ける照度とフロントウィンドウシールド10の各部位の照度とが一致する一致ゾーンと、一致しない不一致ゾーンとを予め求め(S9)、運転支援情報26を表示する部位が不一致ゾーンに位置するときには、照度センサ22に基づく表示制御をキャンセルして、運転支援情報26の表示位置での推定した照度に基づいて運転支援情報26の表示態様が制御される(S12)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交通情報、車速、各種の警告などの運転支援情報をフロントウィンドウシールドに投影表示することが既に提案されている。例えば特許文献1は、外界カメラであるCCDカメラと照度センサを用意し、晴れた日の昼間では、運転支援情報の表示色を全体的に暗くし、夜間やトンネルでは表示色を明るくすることを提案している。また、この特許文献1は、車外の景色の色が青系の色であれば、表示色を緑系や黄色系にすることも提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−311732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の走行中、フロントウィンドウシールドの半分がビルディングの影になることがある。また、夜間走行中、街路灯の光でフロントウィンドウシールドの一部が明るい状態になることがある。このような走行状態を念頭に入れたとき特許文献1のように照度センサでフロントウィンドウシールドにおける運転支援情報の表示部分の照度を検出することは事実上不可能であり、このことから照度センサに依存して運転支援情報の輝度や色を制御したときに適切に表示制御できない場合が想定できる。例えば、フロントウィンドウシールドの一部がビルディングの影になり、この影を照度センサで検出したときには、本来表示すべき輝度又は色とは異なる輝度又は色で運転支援情報が、ビルディングの影の影響を受けていないフロントウィンドウシールドの部分に表示されることになる。
【0005】
本発明の目的は、上記の問題点を解消するために、フロントウィンドウシールドに運転支援情報を表示する部分の照度と異なる照度を照度センサが検出してしまう走行状態にあっても、運転支援情報を表示する態様を最適化することのできる車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
フロントウィンドウシールド上に運転支援情報を投影して該運転支援情報を表示するウィンドウシールドディスプレイ装置と、
前記フロントウィンドウシールドの近傍に設けられ該フロントウィンドウシールドを通して車内に入る光の照度を検出する照度センサと、
前記フロントウィンドウシールドにおける前記運転支援情報の表示位置の照度を推定する表示位置照度推定手段と、
前記フロントウィンドウシールドにおいて、前記照度センサが検出する照度と、前記表示位置照度推定手段が推定した照度とが一致する一致ゾーンと、前記照度センサが検出する照度と、前記表示位置照度推定手段が推定した照度とが一致しない不一致ゾーンデータとを生成する不一致ゾーンデータ生成手段と、
前記一致ゾーンに前記運転支援情報の表示位置が位置するときには、前記照度センサが検出した照度に応じて前記フロントウィンドウシールドに表示する前記運転支援情報の表示態様を制御する第1の表示制御手段と、
前記不一致ゾーンに前記運転支援情報の表示位置が位置するときには、前記表示位置照度推定手段により推定した照度に基づいて前記運転支援情報の表示態様を制御する第2の表示制御手段とを有することを特徴とする車両用表示装置を提供することより達成される。
【0007】
すなわち、本発明によれば、照度センサが検出する照度と、フロントウィンドウシールド上の運転支援情報の表示位置の照度とが異なる走行状態に入ったときには、第2の表示制御手段による表示制御が実行され、表示位置照度推定手段により推定した照度に基づいて運転支援情報の表示態様が制御される。このことから、晴天時でのビルディングの影や夜間走行での街路灯の光などによって運転支援情報の表示態様が運転者にとって不適になってしまうのを防止することができる。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態では、前記表示位置照度推定手段は、自車両の位置及び進行方向、周囲の建造物と太陽の位置とに基づいて前記フロントウィンドウシールド上の前記運転支援情報の表示位置における照度を推定する。また、自車両の前方の風景を撮像する外界カメラを更に有し、
前記表示位置照度推定手段が、前記外界カメラが撮像した画像から検出される影又は前記周囲の建造物の少なくともいずれか一方に基づいて前記運転支援情報の表示位置における照度を推定する。また、前記太陽の位置が、予め用意した太陽の軌跡のデータベースと現在の時刻に基づいて特定される。これらにより、太陽光による照度及び影の部分の照度の検出精度を向上することができる。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態では、
前記第1、第2の表示制御手段による前記運転支援情報の表示態様において、前記照度センサ又は前記推定した照度が所定の照度以上であるときに前記運転支援情報の周囲を囲む注意喚起枠が表示される。これにより、炎天下の走行のように、日差しが強くてフロントウィンドウシールドに投影した運転支援情報が見難いときでも、注意喚起枠によって運転者の注意を喚起することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例が適用された車両の平面図である。
【図2】実施例の表示装置の全体系統をブロック図的に示す図である。
【図3】典型的には炎天下での走行中は、運転支援情報の周りに注意喚起枠を表示することを説明するための図である。
【図4】注意喚起枠を表示しない通常表示モードと、注意喚起枠で囲んで表示する特別表示モードの表示モード切り替え制御のマップを説明するための図である。
【図5】走行路上の例えばビルディングの影の中に侵入する直前の日射センサの検出照度に基づく表示制御と、影の中に入った後の推定した照度に基づく表示制御を説明するための図である。
【図6】図5に関連して、車両の進行に伴ってビルディングの影が占める面積が拡大することを説明するための図である。
【図7】対向車のヘッドライト、街路灯の光の影響を受けるフロントウィンドウシールドの領域をマップ化してあることを説明するための図である。
【図8】実施例の具体的な制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0011】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。図1において、車両としての自動車VCは、左右の前輪1Fと、左右の後輪1Rとを有し、この車両VCの車室には、自車両VCの前方の風景を撮像する外界カメラ2を有している。外界カメラ2は、CCDカメラに限定されるものではなく、例えばCMOSカメラ等であってもよく、また、「ステレオカメラ」と称される複数の撮像手段で構成してもよい。なお、ステレオカメラを車両VCに搭載するのであれば、例えば2台のカメラを水平方向に離間して(例えばルームミラーを挟んでその左右に)配置するのがよい。
【0012】
車両VCには、地理上の位置を計測する測位センサ4の他にナビゲーションシステム8が搭載されている。このナビゲーションシステム8は、周知のように、記憶媒体に記録された道路地図情報を有し、この地図情報を必要に応じて読み出し、そして測位センサ4などからの情報と自車走行経路の情報と照合することで自車位置(緯度及び経度)を求めて経路案内等を行うものである。また、フロントウィンドウシールド10には、運転席12の前方の部分にウィンドウシールドディスプレイ装置14が生成した運転支援情報がプロジェクタによって投影表示され、この運転支援情報には、障害物と衝突の危険性を表示する警報表示が含まれる。なお、上記測位センサ4には、GPS受信システム16、ジャイロセンサ18の他に車速センサなどの各種の車載センサ20が含まれる。また、インスツルメントパネルのフロントウィンドウシールド10の近傍には、その車幅方向中央部分に照度センサ22が搭載されており、この照度センサ22によってフロントウィンドウシールド10を通して車内に入る光の照度が検出される。照度センサ22が検出した照度は、後に詳しく説明するように、フロントウィンドウシールド10に投影表示される運転支援情報26の表示態様の制御に用いられる。
【0013】
図2は、CPU、プログラム等を記憶したメモリ等を備えたマイクロコンピュータを利用して構成されたコントローラ(制御ユニット)において、ウィンドウシールドディスプレイ装置14で生成する警報情報等の運転支援情報26に関する制御の系統をブロック図的に示す図であり、このコントローラUには、例えば前方に位置する車両との車間距離が小さい、路側に近寄り過ぎている、注意すべき歩行者の存在などの警報やその他の運転者に伝えるべき情報(車速、右折表示、左折表示など)が情報提供ユニット24から表示制御コントローラUに入力される。
【0014】
ウィンドウシールドディスプレイ装置14は、フロントウィンドウシールド10に情報を表示する態様として、図3に示すように、運転支援情報26として現在の車速などの数値及び/又は文字情報、車の進行方向を指し示す矢印マークを表示する第1の表示モードである通常表示モード(図3の(I))と、運転支援情報26の周囲を注意喚起枠28で囲んで表示する第2の表示モードである特別表示モード(図3の(II)(a)又は(b))とを有し、この第1、第2の表示モードは後に説明する一定の条件の下で切り替えられる。
【0015】
ここに第2の表示モードである特別表示モードでは、枠28で囲んで運転支援情報26の表示が行われるのは上述したとおりであるが、図3(a)に示す注意喚起枠28の太さTは、後に説明するように所定の条件で変更される。また、注意喚起枠28は実線に限定されず、図3(b)に示すように表示したい数値や文字情報の周りの背景を暗くする構成とし、その暗さが所定条件で変更されるものとしても良く、また、詳細について後述するグラデーションで構成されてもよい。なお、図3では、フロントウィンドウシールド10の運転席側の下端部に運転支援情報26を表示するように描いてあるが、この表示位置は、運転支援情報26の種類に応じて適宜変更されることは言うまでもない。
【0016】
フロントウィンドウシールド10上の運転支援情報26の表示は、基本的には、照度センサ22が検出した自車両VCの周囲の明るさに応じて表示の輝度を高める制御が行われる。図4は、制御の一例を示す図であり、横軸は照度センサ22が検出した照度であり、縦軸は表示輝度を示す。
【0017】
フロントウィンドウシールド10をディスプレイとして利用する場合、自車両VCの周囲の明るさとの関係で情報表示の輝度を変更するのが好ましい。具体的には夜間や朝、夕であれば周囲が比較的暗いため表示輝度が高いと眩しさを感じることになるため、表示輝度を相対的に低くするのがよい。このことから、所定の照度よりも低い照度の雰囲気下での走行中、典型的には夜間や朝、夕の走行中は、通常表示モードの下で運転支援情報26の表示が行われ、そして、照度の大きさ、つまり明るくほど表示輝度を高める制御が行われる。しかし、所定の照度以上の照度の雰囲気下での走行中、典型的には炎天下で走行中は、表示輝度を高くしたとしても運転支援情報26を視認し難い。このことから晴天や炎天下での走行中は、特別表示モードに切り替えられて、この特別表示モードの下で、運転支援情報26と共にその周囲に注意喚起枠28が表示される。この注意喚起枠28は、これを実線、又は背景を暗くする、又はグラデーションで表示するのいずれの場合にあっても、運転支援情報26とは異なる色で注意喚起枠28を表示する及び/又は雰囲気の照度が高くなるほど太さTを太くしたり、背景の暗さを暗くする、又はグラデーションの幅を拡大して運転者の注意を呼び込むようにしてもよい。このような表示態様の制御や表示モードの切り替えは表示画像作成処理部30(図2)で行われる。
【0018】
ところで、照度センサ22が検出した自車両VCの周囲の照度と、運転支援情報26を表示するフロントウィンドウシールド10の表示位置の照度とが一致しないことがある。その典型例が、晴天下で走行中に自車両VCの一部がビルディングの影に入ってしまい、この影の中に照度センサ22が位置するものの、フロントウィンドウシールド10の運転支援情報26を投影する表示位置がビルディングの影の影響を受けていないような場合である。この場合には、照度センサ22が検出した照度に基づいて運転支援情報26の表示を制御した場合には、運転者にとって適切な視認性を確保できなくなってしまう。
【0019】
上記の問題を解消することを企図して、フロントウィンドウシールド10の表示位置における推定した照度に応じて運転支援情報26の表示態様を最適化して、運転者に対して適切な視認性を確保することのできる次の構成が採用されている。すなわち、コントローラUは、外界カメラ2が撮像した画像中の走行路面に、太陽光によるビルディングの影が存在するか否を検出する第1の路面上影検出部34(図2)を有し、また、GPS受信システム16などの測位センサ4からの信号を受けて自車両VCの位置及び進行方向の推定を行う自車位置・進行方向推定部36を有している。なお、コントローラUには、外部と交信可能な通信機(図示せず)から情報が入力可能である。
【0020】
外界カメラ2がステレオカメラで構成されている場合には、この外界カメラ2が撮像した画像から車両前方の影の位置を検出することができる。図5の(I)は車道40を走行中の自車両VCを示し、また、この図5の(I)は、車道40に隣接した例えばビルディングの影42の鳥瞰図である。また、図5の(II)は、走行中の車両VCが位置Aに位置しているときに運転者が見る前方の風景を示し、図5の(III)は、走行中の車両VCが位置Bに位置しているときに運転者が見る前方の風景を示す。図5の(II)、(III)中の参照符号44はバックミラーを示し、また、参照符号46はステアリングハンドルを示す。
【0021】
なお、図5の(II)、(III)は、歩行者Oが車道40に侵入しようとしており、このことを運転者に知らせるために、フロントウィンドウシールド10を通じて運転者が見る歩行者Oの足元に、ウィンドウシールドディスプレイ装置14を使って運転支援情報26として円形の警報マークが表示されている状態を示してある。
【0022】
なお、図5の(II)に図示の影42は、作図上の理由だけで車道40上だけの影を描いたものであり、実際の影42は立体的であるのは言うまでもない。外界カメラ2がステレオカメラで構成されている場合、周知のステレオ法により、影42の周縁部の特徴点と対応点を各カメラにより検出することで、位置Aにあるときの自車両VCの先端位置を座標基準原点とした場合の三次元座標(xi、yi、zi)で抽出する。なお、x方向は車両進行方向、y方向は車幅方向、z方向は鉛直方向である。そして、これら影42の三次元座標をもとに、(xi,yi)座標データのみを取り出し、影42の鳥瞰図が作成される。変形例として、ナビゲーションシステム8が備える地図情報から得られる自車両VCの周囲に存在する建物情報に基づいて影42の鳥瞰図を作成してもよい。そして、こうして得られた鳥瞰図上に自車両VCの移動に伴い変化する自車両VCの位置データを順次あてはめ、自車両VCの各位置における影42と自車両フロントウィンドウシールド10と照度センサ22の位置関係を順次推定する。
【0023】
位置Aでは、自車両VCが影42の前方に位置しているため、照度センサ22が検出した照度と、フロントウィンドウシールド10を通して歩行者Oが見える位置つまり警報マーク(表示情報)26の表示位置の照度とが共通していることから、第1の表示制御態様である、照度センサ22が検出した照度に基づいて、例えば炎天下の日射を照度センサ22が検出したときには図4を参照して説明した特別表示モードの下で、警報マークの周囲に、注意喚起枠28として例えばグラデーションが付加された運転支援情報26が表示され、この注意喚起枠28のグラデーションの表示幅は、照度センサ22が検出した照度が高くなるほど拡大される。
【0024】
車両VCが位置Aから前進した位置Bに達したとき、フロントウィンドウシールド10の助手席側の左半分が影42で覆われて、この影42の状態が照度センサ22で検出されるものの、フロントウィンドウシールド10の運転者側は影42の影響を受けていない。したがって、運転者は、フロントウィンドウシールド10において影42の影響を受けていない部分を通して歩行者Oの足元に表示された運転支援情報26を視認することになる。この状態において、照度センサ22が検出した照度に基づいて運転支援情報26の表示を制御したときには、フロントウィンドウシールド10の表示位置の照度と一致しない表示態様となるため運転者にとって視認し難くなる。
【0025】
これを防止するために、影42の影響を受ける直前の位置Aにおいて、影42の鳥瞰図上に自車両VCの進行位置でのフロントウィンドウシールド10を重畳して、影42の影響を受けるフロントウィンドウシールド10の領域を予め求め、フロントウィンドウシールド10における運転支援情報26の表示位置と照度センサ22との間で、一方が影42の影響を受け、他方が影42の影響を受けない不一致ゾーンと、双方とも影の影響を受けない又は影の影響を受ける一致ゾーンとに区分した不一致ゾーンデータを生成する(不一致ゾーンデータ生成手段)。
【0026】
また、運転支援情報の表示位置が不一致ゾーンに位置するときは、照度センサ22が検出した照度と、運転支援情報の表示位置の照度とが一致しないことから、この運転支援情報の表示位置の照度が予め推定される。この表示位置照度推定手段として、気象情報を外部から取得し、この外部から入手した気象情報に基づいてウィンドウシールド10の各部位の照度を推定すると共に、予め用意した太陽の軌跡のデータベースなどを使って現在時刻と外部から受け取った気象情報に基づいて太陽の位置を特定し、そして、この太陽の位置とナビゲーションシステム8に含まれる建造物の形状と、自車両VCの位置、又は外界カメラ2(この場合にはステレオカメラである必要はない)の撮影画像に基づく影42の濃淡、影42の形状によりウィンドウシールド10の各部位の照度、特に運転支援情報の表示位置での照度の推定が行われる。
【0027】
そして、この不一致ゾーンデータに基づいて、例えば照度センサ22が影42の影響を受けるものの運転支援情報26の表示位置が影42の影響を受けないときには、照度センサ22に基づく表示制御をキャンセルして、第2の表示制御態様として、運転支援情報26の表示位置における推定した照度に基づいて運転支援情報26の表示態様が制御される。これにより、照度センサ22とフロントウィンドウシールド10における運転支援情報26の表示位置との間の照度の不一致に基づく運転支援情報26の表示態様を適正化することができる。
【0028】
すなわち、上述した実施例によれば、自車両VCが影42の影響を受ける直前の走行位置において、外界カメラ2からの情報などにより影42の鳥瞰図を作成し、そして、この鳥瞰図に基づいて、自車両VCが進行する過程でのウィンドウシールド10の各部位に差し込む光の照度を推定する(表示位置照度推定手段)と共に、照度センサ22が受ける照度と、フロントウィンドウシールド10の各部位の照度とが一致する一致ゾーンと、一致しない不一致ゾーンとを予め求めておいて、自車両VCの時々刻々と変化する走行位置において、図6に示すように、運転支援情報26を表示する部位が一致ゾーンに位置するときには、照度センサ22に基づいて運転支援情報26の表示態様が制御され、他方、運転支援情報26を表示する部位が不一致ゾーンに位置するときには、照度センサ22に基づく表示制御をキャンセルして、この照度センサ22に依存しない制御つまり第2の表示制御態様である上記推定した照度に基づいて運転支援情報26の表示態様が制御される。これにより、照度センサ22が検出する照度と、運転支援情報26の表示位置における推定した照度とが不一致であったとしても運転支援情報26の表示態様が適切化される。
【0029】
この不一致ゾーンでの運転支援情報26の表示態様として、ウィンドウシールド10において運転支援情報26が表示される部位が影42で覆われ、他方、照度センサ22の部位には影42の影響無しに太陽光が当たるような場合には、この照度センサ22が検出した照度に依存することなく、第2の表示制御態様である、フロントウィンドウシールド10の表示位置における推定した照度に基づいて運転支援情報16の表示態様が制御される。
【0030】
上述した例は昼間の走行に関する実施例であったが、夜間走行(ヘッドライト点灯)においてヘッドライト(HL)の光が建造物で反射して、この反射光によって図6のように一致ゾーンと不一致ゾーンとが発生する場合について以下に説明する。
【0031】
ナビゲーションシステム8の前方の建造物(建物など)の位置及びその反射面とヘッドライトの光との角度を検出する。なお、外界カメラ2から取得した画像をステレオ法により建造物の形状及びその反射面を特定してもよい。
【0032】
次に、測位センサ4からの情報に基づいて特定される自車両VCと進行方向とに基づいて建造物までの相対位置及び反射面に対する相対角度を演算により求め、これに基づいてヘッドライトの光の反射光による一致ゾーンと不一致ゾーンを求める。この一致ゾーンと不一致ゾーンを求めるのに予め用意したマップを用いるようにしてもよい。このマップは、建造物との相対位置と反射面に対する相対角度とをパラメータとしたフロントウィンドウシールド10の一致ゾーンと不一致ゾーンのデータであるのがよい。一致ゾーンでは、照度センサ22に基づいて運転支援情報26の表示態様が制御される。他方、不一致ゾーンでは、フロントウィンドウシールド10における運転支援情報26の表示を行う部分の推定照度に基づいて運転支援情報26の表示態様が制御される。勿論、不一致ゾーンでの運転支援情報26の表示態様に関して、表示位置の照度とこれに対応する最適な表示態様を予めマップ化しておき、このマップに基づく不一致ゾーンではフロントウィンドウシールド10の運転支援情報26の表示位置の推定した照度に基づいて運転支援情報26の表示態様を制御してもよい。
【0033】
上記の例は、夜間走行中、自車のヘッドライトの反射光による影響に対処するものであったが、次の例は、街路灯や他車のヘッドライトの影響で不一致ゾーンができてしまうのに対処することを企図した例である。
【0034】
外界カメラ2から取得した撮像画像から街路灯の光や、対向車などの他車のヘッドライトの光を推定し、この光の長さ、方向から光源の位置及び光の強さを推定して、自車両VCとの相対位置及び相対的な方位を特定する。他車のヘッドライト及び街路灯と自車両VCとの相対位置及び相対方位とフロントウィンドウシールド10の不一致ゾーンとの関係を予めマップ化しておくのがよい。
【0035】
図7は、他車のヘッドライト及び街路灯によるウィンドウシールド10の一致ゾーン(斜線部分)と不一致ゾーンとを画像化したマップの例を示す。なお、このマップは、例えば他車のヘッドライトと街路灯との双方の影響を受けるときに、両者のマップを合成することで一致ゾーンと不一致ゾーンと区分した不一致ゾーンデータを生成することができる。
【0036】
図7のマップを使うことで、一致ゾーンに運転支援情報26を表示する状態では、照度センサ22に基づいて運転支援情報26の表示態様が制御される。他方、不一致ゾーンに運転支援情報26を表示する状態では、フロントウィンドウシールド10における運転支援情報26の表示位置の推定した照度に基づいて運転支援情報26の表示態様が制御される。勿論、不一致ゾーンでの運転支援情報26の表示態様に関して、他車のヘッドライトや街路灯の照度で最適な表示態様を予めマップ化しておき、このマップに基づいてフロントウィンドウシールド10上の運転支援情報26の表示態様を制御するようにしてもよい。
【0037】
図8は、フロントウィンドウシールド10を使った表示情報の表示態様の制御の具体例を説明するためのフローチャートである。図8において、先ずステップS1で各センサからのデータの入力処理が行われる。次いで、ウィンドウシールド10に表示すべき運転支援情報26の有無が判定され、YESつまり表示すべき運転支援情報26が存在するときにはステップS3に進んで、ヘッドライトスイッチ32がON状態にあるか否かの判定が行われる。このステップS3でNOであると判定されたときには、昼間走行状態であるとしてステップS4に進んで、外界カメラ2の撮像画像から路面上の影42(図5)を検出する処理が行われ、次のステップS5で路面上に影42が存在するか否かの判定が行われる。この判定の結果、NOつまり影42が検出されなかったときには、ステップS6に進んで照度センサ22が検知した照度に応じた輝度で運転支援情報26が表示される。
【0038】
上記ステップS5において、YESつまり例えば図5の自車両VCの走行位置Aにおいて路面上に影42が検出されたときには、ステップS7に進んで撮像画像から影42の周縁部の三次元位置が検出される。そして、次のステップS8で路面上の影42の鳥瞰図が作成され、次いでステップS9において、鳥瞰図に、自車両VCの位置(例えば図5の位置B)におけるフロントウィンドウシールド10を重畳してフロントウィンドウシールド10における不一致ゾーンを求め、次のステップS10において、照度センサ22の照度と、運転支援情報26を表示すべきウィンドウシールド10の表示位置の推定した照度とが異なる不一致ゾーンが存在するか否かの判定が行われる。
【0039】
上記ステップS10においてYESつまり不一致ゾーンが存在するときには、フロントウィンドウシールド10の不一致領域を算出、又は予め画像データとして記憶している場合には画像データを抽出し(S11)、そして、フロントウィンドウシールド10における表示位置の推定した照度に基づいて運転支援情報26の表示態様で運転支援情報26の表示が行われる。(S12)
【0040】
前述したステップS3においてYESと判定されたとき、つまりヘッドライトがONされる夜間走行中では、ステップS13に進んで自車両VCのヘッドライトが反射する建造物が存在するか否かの判定が行われ、YESつまり建造物(典型的にはビルディングなどの建物)が存在するときにはステップS14に進んで、自車両VCと建造物との間の相対距離、当該建造物の反射面とヘッドライトとの相対角度が算出される。
【0041】
次いで、ステップS15において図7で説明したマップを使ってフロントウィンドウシールド10における一致ゾーンと不一致ゾーンの画像を求め、そして、ステップS16で、外界カメラ2の撮像画像に基づいて路面上に自車両VCのヘッドライトとは異なる光の有無が判定され、NOつまりその存在が認められないときには、ステップS17に進んで、上記ステップS15で用いたフロントウィンドウシールド10の画像に基づいて不一致ゾーンを特定し、そして、ステップS12に進んで、運転支援情報26の表示する領域が一致ゾーンであれば照度センサ22が検出した照度に基づいて運転支援情報26の表示態様が制御され、他方、運転支援情報26の表示位置が不一致ゾーンであれば、フロントウィンドウシールド10の表示位置の推定した照度に基づいて運転支援情報26の表示態様で運転支援情報26の表示が行われる。
【0042】
前述したステップS16において、YESつまり走行路面上に街路灯などの光の存在が確認できたときには、ステップS18に進んで、外界カメラ2の撮像画像中の路面上の光から街路灯や対向車のヘッドライトの位置及び方位を推定し、そして、仮に街路灯及び対向車のヘッドライトの光を確認しているときにはステップS19で図7のマップデータから街路灯による不一致ゾーンの画像を抽出し、また、ステップS20で図7のマップデータから他車のヘッドライトによる不一致ゾーンの画像を抽出し、そしてステップS17に進んで、街路灯及び他車のヘッドライトによる画像を重畳することにより合成して不一致ゾーンを抽出した後に前述したステップS12に進んで、運転支援情報26の表示する領域が一致ゾーンであれば照度センサ22が検出した照度に基づいて運転支援情報26の表示態様が制御され、他方、運転支援情報26の表示位置が不一致ゾーンであれば、フロントウィンドウシールド10の表示位置の推定した照度に基づいて運転支援情報26の表示態様で運転支援情報26の表示が行われる。
【符号の説明】
【0043】
U コントローラ
2 外界カメラ
4 測位センサ(GPS、ジャイロ、車速など)
8 ナビゲーションシステム
10 フロントウィンドウシールド
12 運転席
14 ウィンドウシールドディスプレイ装置
16 GPS受信システム
18 ジャイロセンサ
20 車載センサ
22 照度センサ
26 運転支援情報
28 運転支援情報を囲む注意喚起枠
40 車道
42 ビルディングの影

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントウィンドウシールド上に運転支援情報を投影して該運転支援情報を表示するウィンドウシールドディスプレイ装置と、
前記フロントウィンドウシールドの近傍に設けられ該フロントウィンドウシールドを通して車内に入る光の照度を検出する照度センサと、
前記フロントウィンドウシールドにおける前記運転支援情報の表示位置の照度を推定する表示位置照度推定手段と、
前記フロントウィンドウシールドにおいて、前記照度センサが検出する照度と、前記表示位置照度推定手段が推定した照度とが一致する一致ゾーンと、前記照度センサが検出する照度と、前記表示位置照度推定手段が推定した照度とが一致しない不一致ゾーンデータとを生成する不一致ゾーンデータ生成手段と、
前記一致ゾーンに前記運転支援情報の表示位置が位置するときには、前記照度センサが検出した照度に応じて前記フロントウィンドウシールドに表示する前記運転支援情報の表示態様を制御する第1の表示制御手段と、
前記不一致ゾーンに前記運転支援情報の表示位置が位置するときには、前記表示位置照度推定手段により推定した照度に基づいて前記運転支援情報の表示態様を制御する第2の表示制御手段とを有することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記表示位置照度推定手段は、自車両の位置及び進行方向、周囲の建造物と太陽の位置とに基づいて前記フロントウィンドウシールド上の前記運転支援情報の表示位置における照度を推定する、請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
自車両の前方の風景を撮像する外界カメラを更に有し、
前記表示位置照度推定手段が、前記外界カメラが撮像した画像から検出される影、又は前記周囲の建造物の少なくともいずれか一方に基づいて前記運転支援情報の表示位置における照度を推定する、請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記太陽の位置が、予め用意した太陽の軌跡のデータベースと現在の時刻に基づいて特定される、請求項2又は3に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記第1、第2の表示制御手段による前記運転支援情報の表示態様において、前記照度センサ又は前記推定した照度が所定の照度以上であるときに前記運転支援情報の周囲を囲む注意喚起枠が表示される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−188826(P2010−188826A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34578(P2009−34578)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】