説明

車両用通信装置

【課題】消費電力が少なく、電池交換頻度が少ない携帯機の位置特定機能を有する車両用通信装置を提供する。
【解決手段】車両用通信装置は、車両に設置され、電波を受信したとき自身を特徴付ける発信機ID情報を含む変調波を発信する少なくとも1つのID発信機と、上記車両に設置され、上記ID発信機に上記電波を放射する車載器と、上記ID発信機が発信する上記発信機ID情報を含む変調波を受信する携帯機と、を備え、上記携帯機は、受信した変調波を増幅して上記車載器に送信し、上記車載器は、上記携帯機から受信した変調波を復調して得られた上記発信機IDに基づき、上記携帯機の位置を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子キーシステムなどの携帯機の位置特定機能を有する車両用通信装置に関し、特に、携帯機を所持しているだけで車両ドアの施錠または解錠を作動させるパッシブエントリ技術に適用した場合に好適な車両用通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の車載機器を遠隔制御する通信装置として、携帯機を所持した利用者が車両に接近したときに車両ドアが自動的に解錠され、利用者が車両から離れると車両ドアが自動的に施錠される機能を有する車両用通信装置が提案されている。
【0003】
しかし、このような従来装置においては、携帯機が車両内にある場合に携帯機の閉じ込めを防止するために、自動でドアが施錠されないように対策されているので、携帯機を車両内に置き忘れたまま利用者が車両を離れると、ドアが施錠されないまま放置されることになり、防犯上問題となる。
そこで、利用者が車両から離れるときに、携帯機を車両内に置き忘れた場合には、その状態を利用者に報知することが必要となる。つまり、携帯機が車両内にあるのか車両外にあるのかを判定する機能が要求されている。
【0004】
携帯機が車両内にあるか否かを判定するための技術(以下、「車内外判定技術」という)として、例えば高周波帯を使用した非接触通信技術を適用し、リーダライタのリーダ機能を携帯機と車載器とに分離することにより、安価な携帯機を実現することが提案されている。この提案では、車両の各所にID発信機の一種であるRFタグを配置し、RFタグに対して電力を供給する車載器が車両に設置される。そして、車載器から放射される電波を受信したRFタグは自身が保有する発信機ID(以下、「タグID」という)をRFタグの近傍に送信する。携帯機がRFタグの近傍に存在するとき、携帯機はRFタグのタグIDを受信し、車載器に送信することにより、携帯機が車内外のどちらに存在するかを車載器が判定している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、車両用に用いられる通信装置としての車両用施錠制御装置は、送受信アンテナ、受信・復調回路、マイクロコンピュータ、メモリ、変調回路、キャリア発生回路によって構成され、その通信動作にはそれぞれの回路を駆動するための電源および電源回路が備えられる(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−221954号公報
【特許文献2】特公平03−60696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来技術を用いた車両用通信装置の場合、携帯機で変調波を復調してタグIDを確認するので、携帯機には発振回路、変復調回路を含めた送受信回路、マイクロコンピュータ、メモリそれぞれを駆動するための電源および電源回路が必要となる。また、このような携帯機の場合、電源としては電池が考えられるが、車両側との通信が頻繁に行われるような車両用通信装置においては、電力消費量が増えるため電池寿命が短く、電池交換の頻度が多くなるという問題がある。
【0008】
この発明の目的は、消費電力が少なく、電池交換頻度が少ない携帯機の位置特定機能を有する車両用通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係わる車両用通信装置は、車両に設置され、電波を受信したとき自身を特徴付ける発信機ID情報を含む変調波を発信する少なくとも1つのID発信機と、上記車両に設置され、上記ID発信機に上記電波を放射する車載器と、上記ID発信機が発信する上記発信機ID情報を含む変調波を受信する携帯機と、を備え、上記携帯機は、受信した変調波を増幅して上記車載器に送信し、上記車載器は、上記携帯機から受信した変調波を復調して得られた上記発信機IDに基づき、上記携帯機の位置を判定する。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係わる車両用通信装置は、ID発信機が発信する発信機ID情報を含む変調波を、携帯機が発振回路、変復調回路を含めた送受信回路、マイクロコンピュータ、メモリなどの回路を用いた複雑な復調動作をせず、受信した変調波を増幅して車載器に送信するので、復調動作は車載器にて行われ、携帯機では単純に増幅動作のみが行われるため、携帯機にて復調動作をした場合に比べて消費電力を低減することができ、携帯機内蔵の電池の寿命が延び、その交換頻度も軽減できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1に係わる車両用通信装置ついて図面を用いて説明する。
図1は、この発明の実施の形態1に係わる車両用通信装置の構成を示すブロック図である。
この発明の実施の形態1に係わる車両用通信装置は、図1に示すように、車載器1、車載器送受信アンテナ2、ID発信機としてのRFタグ3、携帯機4、携帯機受信アンテナ5a、5b、携帯機送信アンテナ5c、電源6、電源6を起動する起動手段としての起動回路7、増幅器8、車載装置9を備える。車載器1およびRFタグ3は車両に設置される。
【0012】
車両内に設置された車載器1は、電力供給用の電波を送信し、且つ携帯機4からの電波を受信するためのアンテナ2を備える。
RFタグ3は、ID発信機として機能し、車載器1からの電波の受信に応答して、自身が保有する発信機IDとしてのタグIDを発信する。
なお、ここでは、RFタグ3として、複数個のRFタグ3a、3b、・・・を使用する場合を示しているが、1個のRFタグ3(単数または複数の場合を総称して「RFタグ3」という)であってもよい。
また、RFタグ3(3a、3b、・・・)の使用周波数は、900MHz付近、または2.45GHz付近が適しているが、高周波帯域であればよく、必ずしもこれらの周波数に限定されるものではない。
【0013】
また、図示を省略するが、RFタグ3(3a、3b、・・・)は、たとえば、車載器1からの電波を受信するアンテナおよびアンテナ回路と、受信した電波から電圧を取り出すレクテナと呼ばれる公知技術を用いた電圧抽出回路と、抽出した電圧で動作する各種回路と、発信機IDを電波として発信する発信回路とを含む。
【0014】
車載器1および携帯機4は、使用するRFタグ3の周波数に応じて設計される。
携帯機4は、利用者が持ち運びやすい形状からなり、車載器1が発信した起動信号を受信するための携帯機受信アンテナ5aと、RFタグ3が発信したタグIDを受信するための携帯機受信アンテナ5bと、車載器1にデータを送信するための携帯機送信アンテナ5cと、を備えている。
なお、携帯機受信アンテナ5bと携帯機送信アンテナ5cは、車載器1との間で送受信可能に構成された一体化された送受信アンテナで構成されてもよい。
【0015】
次に、携帯機4が車内外のいずれに存在しているかを判定する車内外判定動作について図2を参照して詳細に説明する。図2は、実施の形態1に係わる車両用通信装置における社内外判定動作の手順を示すフローチャートである。
まず、ステップS101において、車載器1からスリープ状態の携帯機4を起動するため、起動信号を車載器送受信アンテナ2を介して携帯機4へ送信する。
ステップS102において、携帯機4は携帯機受信アンテナ5aを介して起動信号を受信し、起動信号を起動回路7に入力する。そこで、起動信号が入力された起動回路7は電源6を動作状態に遷移する。この時点にて増幅器8は入力信号待ちの状態となる。
【0016】
次にステップS103において、車載器1はRFタグ3に電力を供給するために、車載器1から車載器送受信アンテナ2を介して電波を放射する。
ステップS104において、RFタグ3は供給された電力を使ってRFタグ3自身が保有するタグID情報を用いて、搬送波を例えばASK変調し、変調波を放射する。
ステップS105において、携帯機4は携帯機受信アンテナ5bを介して変調波を受信し、増幅器8で増幅し、携帯機送信アンテナ5cを介して車載器1へ転送する。なお、変調波を転送した後、携帯機4の電源6は非動作状態に遷移する。
【0017】
ステップS106において、車載器1は車載器送受信アンテナ2を介して変調波を受信する。
ステップS107において、車載器1内部の復調回路にて変調波を復調する。
ステップS108において、復調信号にタグID情報が含まれているか否かを判断し、復調信号にタグID情報が含まれているときステップS109に進み、復調信号にタグID情報が含まれていないときステップS110に進む。
ステップS109において、車載器1は携帯機4がRFタグ3の近傍にあり、携帯機4が車内に存在すると判定して動作を終了する。
ステップS110において、車載器1は携帯機4がRFタグ3の近傍に存在せず、携帯機4が車外に存在すると判定して動作を終了する。
【0018】
この実施の形態1に係わる携帯機4は、車載器1から起動信号を受信して動作状態となり、RFタグ3のタグID情報を含む変調波を転送して休眠状態になるまでの一連の動作で消費される電力は、電源6および増幅器8での電力消費だけであり、従来のようにマイコン、メモリおよび発振回路を動作するために消費される電力に比べて大幅に少なくすることができる。
そのため、電力消費による電池交換などの手間がかからず、携帯機4自体の回路構成も簡略化でき、小型化、低コスト化が実現できる。
【0019】
実施の形態2.
以下、この発明の実施の形態2に係わる車両用通信装置について図面を用いて説明する。図3は、この発明の実施の形態2に係わる車両用通信装置の構成を示すブロック図である。
この発明の実施の形態2に係わる車両用通信装置は、実施の形態1に係わる車両用通信装置と携帯機4Bが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
この実施の形態2に係わる携帯機4Bは、実施の形態1に係わる携帯機4に方向性結合器11とレベル検出回路12を追加し、増幅器8の代わりに利得可変増幅器10を使用していることが異なっており、それ以外は同様であるので同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
【0020】
方向性結合器11は、携帯機受信アンテナ5bを介して受信した変調波を電力が9対1の割合になるように分け、電力が9の割合の変調波を利得可変増幅器10に、電力が1の割合の変調波をレベル検出回路12に分配する。このように9対1の割合に分けているので、利得可変増幅器10への変調波電力が大きくは減衰しない。なお、分配の割合はこれに限るものではない。
レベル検出回路12は、分配された変調波の受信電力を検出し、電源6に変調波の受信電力に対応した制御信号を出力する。
電源6は、レベル検出回路12から得た制御信号に基づいて利得可変増幅器10の利得を制御する。利得の制御量は、受信した変調波の受信電力が低いときには大きく、逆に受信電力が高いときには小さく設定する。
【0021】
次に、この実施の形態2に係わる携帯機4Bの動作を説明する。
携帯機4Bは、携帯機受信アンテナ5aを介して起動信号を受信し、起動信号を起動回路7に入力する。そこで、起動信号が入力された起動回路7は電源6を動作状態に遷移する。この時点にて利得可変増幅器10は入力信号待ちの状態となる。
次に、携帯機4は、携帯機受信アンテナ5bを介して変調波を受信し、方向性結合器11で変調波を利得可変増幅器10とレベル検出回路12に分配する。そして、レベル検出回路12は、変調波の受信電力レベルを検出し、受信電力レベルに対応する制御信号を電源6に送信する。電源6では、制御信号に基づいて利得可変増幅器10の利得を制御する。一方、利得可変増幅器10に分配された変調波は、利得が制御された利得可変増幅器10で増幅され、携帯機送信アンテナ5cから車載器1に転送される。最後に、変調波を転送した後、携帯機4の電源6は非動作状態に遷移する。
【0022】
このように実施の形態2に係わる車両用通信装置は、携帯機4Bでの変調波の増幅が変調波の受信電力レベルに対応して利得が可変され、受信電力レベルが高いときにも利得が小さいので利得可変増幅器10が飽和せず、逆に、受信電力レベルが低いときには利得が大きいので車載器1へ送信できるレベルまで変調波が増幅され、安定した電力レベルの変調波を車載器1へ転送することができる。
【0023】
また、実施の形態2に係わる携帯機4Bに追加した方向性結合器11およびレベル検出回路12は、電源を必要としないので、車載器1から起動信号を受信して動作状態となり、RFタグ3のタグID情報を含む変調波を転送して休眠状態になるまでの一連の動作で消費される電力は、電源6、利得可変増幅器10での電力消費だけであり、従来のようにマイコン、メモリ、発振回路を動作するために消費される電力に比べて大幅に少なくすることができる。
そのため、電力消費による電池交換などの手間がかからず、携帯機4B自体の回路構成も簡略化でき、小型化、低コスト化が実現できる。
【0024】
実施の形態3.
以下、この発明の実施の形態3に係わる車両用通信装置について図面を用いて説明する。図4は、この発明の実施の形態3に係わる車両用通信装置の構成を示すブロック図である。
この発明の実施の形態3に係わる車両用通信装置は、実施の形態1に係わる車両用通信装置と携帯機4Cが異なっており、それ以外は同様であるので、同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
この実施の形態3に係わる携帯機4Cは、実施の形態1に係わる携帯機4の起動回路7および電源6の代わりに検波・電圧発生回路13を使用していることが異なっており、それ以外は同様であるので同様な部分に同じ符号を付記して説明は省略する。
【0025】
この実施の形態3に係わる検波・電圧発生回路13は、車載器1から携帯機4Cに対して送信される電力供給用の電波を携帯機受信アンテナ5aを介して受信し、受信した電力を電圧に変換し、増幅器8の駆動電源として供給する。
なお、実施の形態3に係わる車載器1は、携帯機4Cが変調波を受信し、増幅し、車載器1に送信する間、電力供給用の電波を車載器送受信アンテナ2から送信する。
【0026】
次に、この実施の形態3に係わる携帯機4Cの動作を説明する。
携帯機4Cは、携帯機受信アンテナ5aを介して車載器1から送信される電力供給用の電波を受信し、受信した電力を電圧に変換し、増幅器8に駆動電源を供給する。一方、携帯機受信アンテナ5bで受信した変調波は、検波・電圧発生回路13から駆動電源が供給されて入力信号待ちの状態になった増幅器8に入力され、増幅され、携帯機送信アンテナ5cを介して車載器1に送信される。
【0027】
ところで、実施の形態1に係わる携帯機4では、携帯機4に搭載されている増幅器8を動作させるために、携帯機4に内蔵されている電源6を使用しているが、実施の形態3に係わる携帯機4Cでは、検波・電圧発生回路13を搭載しているため、携帯機4C用の電源およびそれに付随する電源回路を必要としないので、携帯機4C自体の回路構成も簡略化でき、小型化、低コスト化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施の形態1に係わる車両用通信装置の構成を示すブロック図である
【図2】この発明の実施の形態1に係わる携帯機の位置を特定するときのフローチャートである
【図3】この発明の実施の形態2に係わる車両用通信装置の構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態3に係わる車両用通信装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0029】
1 車載器、2 車載器送受信アンテナ、3、3a、3b RFタグ、4、4B、4C 携帯機、5a、5b 携帯機受信アンテナ、5c 携帯機送信アンテナ、6 電源、7 起動回路、8 増幅器、9 車載装置、10 利得可変増幅器、11 方向性結合器、12 レベル検出回路、13 検波・電圧発生回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置され、電波を受信したとき自身を特徴付ける発信機ID情報を含む変調波を発信する少なくとも1つのID発信機と、
上記車両に設置され、上記ID発信機に上記電波を放射する車載器と、
上記ID発信機が発信する上記発信機ID情報を含む変調波を受信する携帯機と、
を備え、
上記携帯機は、受信した変調波を増幅して上記車載器に送信し、
上記車載器は、上記携帯機から受信した変調波を復調して得られた上記発信機IDに基づき、上記携帯機の位置を判定することを特徴とする車両用通信装置。
【請求項2】
上記携帯機は、上記ID発信機が発信する発信機ID情報を含む変調波の受信電力に応じて利得を可変して増幅することを特徴とする請求項1に記載の車両用通信装置。
【請求項3】
上記携帯機は、上記車載器から放射される電力供給用の電波を検波して、変調波を増幅する回路に電力を供給する検波・電力発生回路を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−94303(P2008−94303A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279916(P2006−279916)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】