車両用運転操作補助装置および車両用運転操作補助装置を備えた車両
【課題】
運転者が意図的に車線逸脱方向に移動する場合に、運転者に違和感を与えないような逸脱防止制御を行う車両用運転操作補助装置を提供する。
【解決手段】
自車両が自車線から逸脱する逸脱リスクポテンシャルが増加すると、逸脱を回避する方向のヨーモーメントを自車両に与える。逸脱リスクポテンシャルが増加する場合でも、アクセルペダルの操作量が大きくなり運転者が意図的に車線逸脱方向へ移動しているときは、ヨーモーメントの発生を抑制する。このとき、ヨーモーメントの抑制量に応じてアクセルペダル反力を増加し、ヨーモーメントの発生がどの程度抑制されているかを運転者に知覚させる。
運転者が意図的に車線逸脱方向に移動する場合に、運転者に違和感を与えないような逸脱防止制御を行う車両用運転操作補助装置を提供する。
【解決手段】
自車両が自車線から逸脱する逸脱リスクポテンシャルが増加すると、逸脱を回避する方向のヨーモーメントを自車両に与える。逸脱リスクポテンシャルが増加する場合でも、アクセルペダルの操作量が大きくなり運転者が意図的に車線逸脱方向へ移動しているときは、ヨーモーメントの発生を抑制する。このとき、ヨーモーメントの抑制量に応じてアクセルペダル反力を増加し、ヨーモーメントの発生がどの程度抑制されているかを運転者に知覚させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の操作を補助する車両用運転操作補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自車両が走行車線から逸脱傾向にあるときに、逸脱を防止するように運転者の運転操作を補助する車両用運転操作補助装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この装置は、自車両が走行車線から逸脱傾向にあると判断されると、左右輪のうち逸脱方向とは反対側の車輪に制動力を付加し、左右輪の制動力差によって逸脱を回避する方向にヨーモーメントを発生させる。
【0003】
本願発明に関連する先行技術文献としては次のものがある。
【特許文献1】特開2000−33860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の装置では、運転者が車線変更を行うために意図的に車線逸脱傾向となった場合であっても、車線逸脱回避のために自車両にヨーモーメントが与えられるので、システムの制御状態に対して運転者が違和感を感じてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車両用運転操作補助装置は、自車両の走行状況を検出する走行状況検出手段と、走行状況検出手段の検出結果に基づいて自車両が自車線から逸脱するリスクポテンシャルを算出する逸脱リスクポテンシャル算出手段と、リスクポテンシャル算出手段によって算出されるリスクポテンシャルに基づいて自車両の自車線からの逸脱を回避するための目標ヨーモーメントを算出するヨーモーメント算出手段と、ヨーモーメント算出手段によって算出された目標ヨーモーメントを自車両に発生させるヨーモーメント発生手段と、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダル操作量検出手段と、アクセルペダル操作量検出手段によって検出されるアクセルペダル操作量に基づいて目標ヨーモーメントの発生を抑制するヨーモーメント抑制手段と、ヨーモーメント抑制手段による目標ヨーモーメントの抑制量に応じて運転者がアクセルペダルを操作する際に発生するアクセルペダル反力を制御するアクセルペダル反力制御手段とを備える。
本発明による車両用運転操作補助方法は、自車両の走行状況を検出し、走行状況に基づいて自車両が自車線から逸脱するリスクポテンシャルを算出し、リスクポテンシャルに基づいて自車両の自車線からの逸脱を回避するための目標ヨーモーメントを算出し、目標ヨーモーメントを自車両に発生させ、アクセルペダル操作量に基づいて目標ヨーモーメントの発生を抑制し、目標ヨーモーメントの抑制量に応じて運転者がアクセルペダルを操作する際に発生するアクセルペダル反力を制御する。
本発明による車両は、自車両の走行状況を検出する走行状況検出手段と、走行状況検出手段の検出結果に基づいて自車両が自車線から逸脱するリスクポテンシャルを算出する逸脱リスクポテンシャル算出手段と、リスクポテンシャル算出手段によって算出されるリスクポテンシャルに基づいて自車両の自車線からの逸脱を回避するための目標ヨーモーメントを算出するヨーモーメント算出手段と、ヨーモーメント算出手段によって算出された目標ヨーモーメントを自車両に発生させるヨーモーメント発生手段と、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダル操作量検出手段と、アクセルペダル操作量検出手段によって検出されるアクセルペダル操作量に基づいて目標ヨーモーメントの発生を抑制するヨーモーメント抑制手段と、ヨーモーメント抑制手段による目標ヨーモーメントの抑制量に応じて運転者がアクセルペダルを操作する際に発生するアクセルペダル反力を制御するアクセルペダル反力制御手段とを有する車両用運転操作補助装置を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、自車線からの逸脱リスクポテンシャルに基づいて逸脱を回避する方向に目標ヨーモーメントを発生する際に、アクセルペダル操作量に基づいて目標ヨーモーメントを抑制するとともに、目標ヨーモーメントの抑制量に応じてアクセルペダル反力を制御するので、自車線からの逸脱を回避するように車両挙動を制御しながら、運転者がアクセルペダル操作を行う場合は運転者に違和感を与えることのない制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
《第1の実施の形態》
本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の構成を示すシステム図である。
【0008】
まず、車両用運転操作補助装置1の構成を説明する。車両用運転操作補助装置1は、前方カメラ10,画像処理装置15、車速センサ20,コントローラ50,駆動力制御装置60,アクセルペダル61、アクセルペダルストロークセンサ62、制動力制御装置70、ブレーキペダル71、およびアクセルペダル反力発生装置80等を備えている。
【0009】
前方カメラ10は、フロントウィンドウ上部に取り付けられた小型のCCDカメラ、またはCMOSカメラ等であり、前方道路の状況を画像として検出する。前方カメラ10による検知領域は車両の前後方向中心線に対して水平方向に±30deg程度であり、この領域に含まれる前方道路風景が画像として取り込まれる。画像処理装置15は、前方カメラ10で撮像した車両前方領域の撮像画像から、例えば白線等のレーンマーカを検出して自車両の走行車線を検出する。
【0010】
車速センサ20は、車輪の回転数や変速機の出力側の回転数を計測することにより自車両の車速を検出し、検出した自車速をコントローラ50に出力する。アクセルペダルストロークセンサ62は、アクセルペダル61の踏み込み量(操作量)を検出し、検出したアクセルペダル操作量をコントローラ50に出力する。
【0011】
コントローラ50は、CPUと、ROMおよびRAM等のCPU周辺部品とから構成され、車両用運転操作補助装置1全体の制御を行う。コントローラ50は、車速センサ20で検出される自車速、および前方カメラ10の撮像画像に基づいて画像処理装置15で検出されるレーンマーカの情報を読み込み、自車両の走行状態を認識する。コントローラ50は、認識した走行状態に基づいて自車両が自車線から逸脱するリスクを算出し、逸脱するリスクがある場合には、逸脱を回避するように自車両の挙動を制御する。また、コントローラ50は、車線変更等を行うために運転者が意図的に車線逸脱方向へ進んでいる場合は、運転者に違和感を与えないように自車両の挙動を調整する。コントローラ50における各種処理については後述する。
【0012】
駆動力制御装置60は、アクセルペダル61の操作状態に応じた駆動力を発生するようにエンジン(不図示)を制御するとともに、外部からの指令に応じて、発生させる駆動力を変化させる。駆動力制御装置60は、アクセルペダル操作量に応じた運転者の要求駆動力と、コントローラ50によって演算される自車両の制御内容に応じて、エンジンへの制御指令値を算出するエンジンコントローラ(不図示)を備えている。
【0013】
制動力制御装置70は、ブレーキペダル71の操作状態に応じた制動力を発生するようにブレーキ液圧を制御するとともに、外部からの指令に応じて、発生させるブレーキ液圧を変化させる。制動力制御装置70は、前後左右輪70FR,70FL,70RR,70RLに設けられたホイールシリンダ(不図示)の液圧を制御して制動力を発生させる。制動力制御装置70は、ブレーキペダル71の踏み込み量に応じた運転者の要求制動力と、コントローラ50によって演算される自車両の制御内容に応じて、ブレーキ液圧指令値を算出するブレーキ液圧コントローラ(不図示)を備えている。
【0014】
アクセルペダル反力発生装置80は、アクセルペダル61のリンク機構に組み込まれたサーボモータ(不図示)を備えている。アクセルペダル反力発生装置80は、コントローラ50からの指令に応じてサーボモータで発生させるトルクを制御し、運転者がアクセルペダル61を操作する際に発生する操作反力を任意に制御することができる。なお、反力制御を行わない場合の通常の反力特性は、アクセルペダル反力がアクセルペダル操作量の増加に対してリニアに増加するように設定されている。
【0015】
以下に、本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の動作を説明する。
コントローラ50は、自車両の走行状態に基づいて、自車両が自車線から逸脱するリスクを表す逸脱リスクポテンシャルRPを算出する。そして、逸脱リスクポテンシャルRPが所定値よりも高く逸脱のリスクがある場合に、左右の車輪に制動力差を与えることにより、逸脱を回避する方向にヨーモーメントを発生させる。さらに、ヨーモーメントの発生による効果的な逸脱防止効果を得るために、アクセルペダル61の操作量に応じた要求駆動力に対して自車両に発生する駆動力を減少させる。
【0016】
ただし、運転者が車線変更等を行うために意図的に逸脱リスクポテンシャルRPが増加する方向に移動している場合は、運転者に違和感を与えないようにヨーモーメントの発生を抑制するとともに、アクセルペダル操作量に応じた駆動力を発生させるようにする。
【0017】
このように、コントローラ50は自車線からの逸脱のリスクを算出し、運転者の車線変更意図を考慮しながら逸脱を回避するように自車両の挙動を制御する。車線変更時にヨーモーメントを抑制することによって運転者は違和感なく車線変更のための運転操作を行うことができる。ただし、運転者にとっては、車線変更意図の検出によりヨーモーメントが抑制されているのか、車線逸脱防止制御が終了してヨーモーメントが減少しているのかを直感的に理解することは困難である。そこで、運転者が意図を持って自車線から逸脱しようとしている場合に、逸脱リスクポテンシャルRPに応じて発生すべきヨーモーメントをどれだけ抑制しているかを、アクセルペダル61から発生する反力として運転者に知覚させる。
【0018】
以下に、第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の動作を、図2を用いて詳細に説明する。図2は、第1の実施の形態のコントローラ50における運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
【0019】
まず、ステップS110で、車速センサ20によって検出される自車速Vhと、アクセルペダルストロークセンサ62によって検出されるアクセルペダル操作量SAを読み込む。ステップS120では、前方カメラ10の撮像画像から画像処理装置15で検出されるレーンマーカの情報に基づいて、走行車線に対する自車両の向きを表すヨー角Φ、および車線中央からの自車両の車線内横変位Xを算出する。
【0020】
図3に、自車両のヨー角Φと横変位Xを模式的に示す。ヨー角Φは、自車両が車線に対して右側を向いている場合に正の値、図3に示すように左側を向いている場合は負の値で表す。また、横変位Xは、自車両中心Oが車線中央よりも右側領域にある場合に正の値、図3に示すように左側領域にある場合に負の値で表す。なお、横変位Xは、車線幅をLとすると、レーン右端でX=L/2,レーン左端でX=−L/2となる。
【0021】
ステップS130では、自車線からの逸脱リスクポテンシャルRPを算出する。逸脱リスクポテンシャルRPは、自車両の現在位置から所定距離D前方の将来位置における自車線からの推定逸脱量として算出する。距離D前方の将来位置において現在の走行車線中央からの自車両の推定横変位は、現在の横変位Xと現在のヨー角Φとを用いて、(X+DΦ)と表される。
【0022】
(X+DΦ)>0で将来位置において自車両が現在の車線中央よりも右側にいると推定される場合は、以下の(式1)から逸脱リスクポテンシャルRPを算出する。
・(X+DΦ)>L/2のとき
RP=(X+DΦ)−L/2
・(X+DΦ)≦L/2
RP=0 ・・・(式1)
【0023】
(X+DΦ)<0で将来位置において自車両が現在の車線中央よりも左側にいると推定される場合は、以下の(式2)から逸脱リスクポテンシャルRPを算出する。
・(X+DΦ)<−L/2のとき
RP=(X+DΦ)+L/2
・(X+DΦ)≧−L/2
RP=0 ・・・(式2)
【0024】
(式1)(式2)に示すように、将来位置において自車両が自車線から逸脱してしまっている場合に、現在の自車線のレーン端からの横方向の推定変位量、すなわち推定逸脱量を、逸脱リスクポテンシャルRPとして算出する。将来位置において自車両が自車線内にいる場合(−L/2≦X+DΦ≦L/2)は、逸脱リスクポテンシャルRP=0とする。逸脱リスクポテンシャルRPは、自車線から右側へ逸脱している場合に正の値、左側へ逸脱している場合に負の値で表す。
【0025】
なお、逸脱リスクポテンシャルRPを算出するための将来位置を、自車両が所定時間後に到達する位置として設定し、将来位置までの距離Dを、所定時間と自車速Vhとから設定することもできる。これにより、自車両の現在の走行状況を考慮して将来の逸脱リスクポテンシャルRPを算出することができる。
【0026】
続くステップS140では、ステップS130で算出した逸脱リスクポテンシャルRPに基づいて、自車両が自車線から逸脱するのを抑制するためのヨーモーメントを、制御ヨーモーメントMcとして算出する。図4に、逸脱リスクポテンシャルRPと制御ヨーモーメントMcとの関係を示す。制御ヨーモーメントMcは、自車両を右方向に曲げるモーメントの場合に正の値で表す。
【0027】
図4に示すように、右側方向への逸脱リスクポテンシャルRPが所定値R1を超えて大きくなるほど、自車両を左方向に曲げる制御ヨーモーメントMcが徐々に大きくなる。逸脱リスクポテンシャルRPが所定値R2(>R1)を超えると、制御ヨーモーメントMc=−Mc1に固定する。また、左側方向への逸脱リスクポテンシャルRPが所定値−R1を超えて大きくなるほど、自車両を右方向に曲げる制御ヨーモーメントMcが徐々に大きくなる。逸脱リスクポテンシャルRPが所定値−R2(<−R1)を超えると、制御ヨーモーメントMc=Mc1に固定する。これにより、将来位置での逸脱のリスクが大きくなるほど、逸脱を回避する方向へのヨーモーメントが大きくなる。
【0028】
ステップS150では、システム側で行う逸脱防止制御に対して、運転者が現在どれほど介入しているかを算出する。具体的には、ステップS110で読み込んだアクセルペダル操作量SAが大きいほど運転者の介入の程度が高い状態であると判断する。
【0029】
ステップS160では、ステップS150で算出した運転者の介入状態に基づいてステップS140で算出した制御ヨーモーメントMcを補正し、目標ヨーモーメントMtを算出する。まず、運転者の介入状態を表すアクセルペダル操作量SAに基づいて、制御ヨーモーメントMcを低下補正するための補正係数K1を算出する。
【0030】
図5に、アクセルペダル操作量SAと、補正係数K1との関係を示す。アクセルペダル操作量SAが所定値S1以下の場合は、補正係数K1=1とする。アクセルペダル61が踏み込まれて操作量SAが所定値S1を超えると、補正係数K1が徐々に小さくなり、操作量SAが所定値S2(>S1)を超えると、補正係数K1=0とする。
【0031】
つぎに、アクセルペダル操作量SAに基づいて算出した補正係数K1を用いて、以下の(式3)から目標ヨーモーメントMtを算出する。
Mt=K1・Mc ・・・(式3)
(式3)に示すように、アクセルペダル操作量SAが大きくなり補正係数K1が小さくなるほど、目標ヨーモーメントMtが小さくなる。
【0032】
一般的に、運転者に車線変更の意図がある場合は、車線変更を行う際に加速を行う。自車両が車線逸脱方向に進んでおり、アクセルペダル操作量SAが大きい、すなわちアクセルペダル61の踏み込み量が大きい場合には、運転者に車線変更を行う意図があると推定できる。そこで、逸脱リスクポテンシャルRPが大きく、制御ヨーモーメントMcが大きい場合であっても、アクセルペダル操作量SAが大きく車線変更意図があると推定されると、自車両に発生するヨーモーメントが小さくなるように目標ヨーモーメントMtを算出する。
【0033】
つづくステップS170では、逸脱防止制御の制御状態を運転者に知らせるために、アクセルペダル61に発生させる操作反力の増加量ΔFを算出する。図6に、アクセルペダル操作量SAとペダル反力増加量ΔFとの関係を示す。ペダル反力増加量ΔFは、アクセルペダル操作量SAに応じた通常の反力特性に付加する増加分の反力である。
【0034】
図6に示すように、アクセルペダル操作量SAが所定値S1以下の場合は、反力増加量ΔF=0とする。操作量SAが所定値S1を超えて大きくなると、反力増加量ΔFが徐々に大きくなり、操作量SAが所定値S2を超えると、反力増加量ΔF=ΔFmaxに固定する。ここで、アクセルペダル操作量SAの所定値S1,S2は、図5に示した所定値S1,S2と同一であり、補正係数K1が小さくなるほど反力増加量ΔFが大きくなる。したがって、車線変更意図の推定によりヨーモーメントが抑制される場合は、その抑制量に対応する反力増加量ΔFがアクセルペダル61に付与される。
【0035】
ステップS180では、逸脱リスクポテンシャルRPに基づいて目標駆動力を算出する。具体的には、目標駆動力に相当するアクセルペダル操作量である擬似アクセルペダル操作量SAsを算出する。逸脱を回避するために自車両にヨーモーメントを発生させる場合は、逸脱リスクポテンシャルRPの絶対値が所定値R1よりも大きくなった時点でのアクセルペダル操作量SAを初期値として、初期値から徐々に0まで減少する値を擬似アクセルペダル操作量SAsとして設定する。
【0036】
車線変更意図の推定によりヨーモーメントを抑制する場合は、アクセルペダル操作量SAが所定値S1よりも大きくなった時点での擬似アクセルペダル操作量SAsから、アクセルペダルストロークセンサ62で検出されるアクセルペダル操作量SAと一致するまで徐々に増加する値を擬似アクセルペダル操作量SAsとして設定する。擬似アクセルペダル操作量SAsが逐次読み込まれるアクセルペダル操作量SAと一致すると、アクセルペダル操作量SAを擬似アクセルペダル操作量SAとして設定する。
【0037】
なお、逸脱リスクポテンシャルRPの絶対値が所定値R1以下の場合、すなわち逸脱回避のためのヨーモーメントを発生させない場合は、逸脱リスクポテンシャルRPの絶対値が所定値R1以下となった時点での擬似アクセルペダル操作量SAsから、逐次読み込まれるアクセルペダル操作量SAと一致するまで徐々に増加する値を、擬似アクセルペダル操作量SAsとして設定する。
【0038】
ステップS190では、ステップS160で算出した目標ヨーモーメントMtを制動力制御装置70に出力する。制動力制御装置70のブレーキ液圧コントローラは、コントローラ50から入力される目標ヨーモーメントMtに基づいて、左右輪に制動力差を発生させるようにブレーキ液圧指令値Psを算出する。
【0039】
第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1を搭載した車両が自動変速機およびコンベンショナルディファレンシャルギヤを搭載した後輪駆動車両であるとすると、目標ヨーモーメントMtの絶対値が所定値Mt0未満の場合は後左右輪70RR,70RLの制動力にだけ差を発生させる。目標ヨーモーメントMtの絶対値が所定値Mt0以上の場合は、前後左右輪70FR,70FL,70RR,70RLの制動力に差を発生させる。
【0040】
したがって、|Mt|<Mt0の場合は、以下の(式4)から前左右輪70FR,70FLのブレーキ液圧差ΔPsfと、後左右輪70RR,70RLのブレーキ液圧差ΔPsrを算出する
ΔPsf=0
ΔPsr=2・Kbr・|Mt|/T ・・・(式4)
(式4)において、Tはトレッド(前後輪で同じとする)、Kbrは制動力をブレーキ液圧に換算するための換算係数である。係数Kbrは、ブレーキ諸元によって決定される。
【0041】
|Mt|≧Mt0の場合は、以下の(式5)から前左右輪ブレーキ液圧差ΔPsfと、後左右輪ブレーキ液圧差ΔPsrを算出する
ΔPsf=2・Kbf・(|Mt|−Mt0)/T
ΔPsr=2・Kbr・Mt0/T ・・・(式5)
(式5)において、Kbfは制動力をブレーキ液圧に換算するために、ブレーキ諸元によって決定される換算係数である。
【0042】
目標ヨーモーメントMt>0で自車両が自車線の左方向へ逸脱しようとしている場合は、以下の(式6)から各輪のホイールシリンダへのブレーキ液圧指令値Psを算出する。ここでは、前右輪70FR,前左輪70FL,後右輪70RR,後左輪70RLのそれぞれのホイールシリンダの液圧指令値Psfr,Psfl,Psrr,Psrlをそれぞれ算出する。
Psfr=Pm+ΔPsf
Psfl=Pm
Psrr=Pmr+ΔPsr
Psrl=Pmr ・・・(式6)
(式6)において、Pmは、各ホイールシリンダへ液圧を供給するマスタシリンダのマスタシリンダ圧であり、不図示のマスタシリンダ圧センサによって検出される。Pmrは、前後制動力配分に基づく後輪用マスタシリンダ圧である。
【0043】
目標ヨーモーメントMt<0で自車両が自車線の右方向へ逸脱しようとしている場合は、以下の(式7)から各輪のホイールシリンダへのブレーキ液圧指令値Psを算出する。
Psfr=Pm
Psfl=Pm+ΔPsf
Psrr=Pmr
Psrl=Pmr+ΔPsr ・・・(式7)
【0044】
制動力制御装置70は、上述したように算出したブレーキ液圧指令値Psに従って各ホイールシリンダの液圧を制御し、前後左右輪に制動力差を発生させることによって自車両に目標ヨーモーメントMtを発生させる。
【0045】
ステップS200では、ステップS170で算出した反力増加量ΔFをアクセルペダル反力発生装置80に出力する。アクセルペダル反力発生装置80は、コントローラ50から入力される指令値に応じてアクセルペダル反力を制御する。
【0046】
ステップS210では、ステップS180で算出した擬似アクセルペダル操作量SAsに対応した駆動力を発生するよう、駆動力制御装置60に制御信号を出力する。すなわち、逸脱リスクポテンシャルRPの絶対値が所定値R1以下で自車両が車線逸脱傾向にない場合は、アクセルペダルストロークセンサ62で検出されるアクセルペダル操作量SAに応じた駆動力を発生させる。一方、逸脱リスクポテンシャルRPの絶対値が所定値R1を超えて車線逸脱傾向にある場合は、駆動力を減少させる。このとき、アクセルペダル操作量SAが所定値S1を超えて運転者に車線変更意図があると推定される場合は、アクセルペダル操作量SAに応じた駆動力まで徐々に増加し、運転者の加速意図に応じた駆動力を発生させるようにする。これにより、今回の処理を終了する。
【0047】
このように、以上説明した第1の実施の形態においては、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用運転操作補助装置1は、自車両の走行状況に基づいて自車両が自車線から逸脱するリスクポテンシャルRPを算出し、逸脱リスクポテンシャルRPに基づいて自車線からの逸脱を回避するための目標ヨーモーメントMtを算出する。コントローラ50は、アクセルペダル操作量SAに基づいて目標ヨーモーメントMtの発生を抑制し、この抑制量に応じて運転者がアクセルペダル61を操作する際に発生するアクセルペダル反力を制御する。このように、逸脱リスクポテンシャルRPが高くなると逸脱を回避する方向にヨーモーメントが発生し、自車両の逸脱を防止するように自車両の挙動が制御される。逸脱防止制御を行っている際にアクセルペダル操作量SAに応じてヨーモーメントの発生を抑制することにより、車線変更等を行おうとして意図的に逸脱方向に進んでいる場合に運転者の運転操作を妨げないようにすることができる。このとき、ヨーモーメントの抑制量に応じてアクセルペダル反力を制御することにより、運転者の車線変更意図に応じてヨーモーメントの発生を抑制していることを、運転者に認識させることができる。
(2)コントローラ50は、ヨーモーメントの抑制量が大きくなるほどアクセルペダル反力を増大させる。具体的には、図5及び図6に示すように、目標ヨーモーメントMtを算出するための補正係数K1が小さくなるほどアクセルペダル反力増加量ΔFを大きくする。これにより、運転者の車線変更意図に応じてどれほどヨーモーメントの発生が抑制されているかを、アクセルペダル反力を介して運転者にわかりやすく伝えることができる。
(3)コントローラ50は、図5に示すようにアクセルペダル操作量SAが大きくなるほど補正係数K1を大きくし、目標ヨーモーメントMtの抑制量を大きくする。これにより、アクセルペダル61の操作量SAが大きく、車線変更に伴って加速操作を行おうとしている場合に、逸脱リスクポテンシャルRPに応じて発生するヨーモーメントを抑制して運転者の意図に沿った制御を行うことができる。
(4)逸脱リスクポテンシャルRPの増加に伴って自車両に発生する駆動力を低下するとともに、目標ヨーモーメントMtを抑制する場合は駆動力を徐々に増加することにより、車線逸脱防止制御を一層効果的に行うことができるとともに、運転者が加速操作を行う場合は速やかな加速を実現することができる。
【0048】
《第2の実施の形態》
以下に、本発明の第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図1に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0049】
第2の実施の形態では、逸脱リスクポテンシャルRPに応じて逸脱防止制御を開始した時点からのアクセルペダル61の踏み込み量に応じて、制御ヨーモーメントMcを低下補正するための補正係数K1、および反力増加量ΔFを算出する。すなわち、図4に示すように、逸脱リスクポテンシャルRPの絶対値が所定値R1を超えて制御ヨーモーメントMcが0から変化し始めた時点でのアクセルペダル操作量SAを基準値S0とする。
【0050】
図7に、アクセルペダル操作量SAと補正係数K1との関係を示し、図8に、アクセルペダル操作量SAと反力増加量ΔFとの関係を示す。図7に示すように、逸脱防止制御が開始した時点でのアクセルペダル操作量S0から所定量S1踏み込むまでは、補正係数K1=1とする。所定量S1を超えて踏み込むと補正係数K1が徐々に低下し、アクセルペダル操作量SAが所定値(S0+S2)を超えると、補正係数K1=0とする。
【0051】
図8に示すように、逸脱防止制御が開始した時点でのアクセルペダル操作量S0から所定量S1踏み込むまでは、反力増加量ΔF=0とする。所定値S1を超えて踏み込むと反力増加量ΔFが徐々に増加し、アクセルペダル操作量SAが所定値(S0+S2)を超えると、反力増加量ΔF=ΔFmaxとする。なお、アクセルペダル操作量SAが基準値S0よりも小さくなると、補正係数K1=1,反力増加量ΔF=0とする。
【0052】
なお、目標駆動力は、図7に示すように補正係数K1が低下して自車両に発生するヨーモーメントが低下するにつれて徐々に増加するように、擬似アクセルペダル操作量SAsをアクセルペダルストロークセンサ62で検出されるアクセルペダル操作量SAまで徐々に増加させる。
【0053】
このように、以上説明した第2の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
逸脱防止制御が開始された時点、すなわち逸脱リスクポテンシャルRPに応じた目標ヨーモーメントMtを発生開始した時点からのアクセルペダル61の踏み込み量に応じて、目標ヨーモーメントMtを抑制する。具体的には、逸脱防止制御開始時点からアクセルペダル61が所定量S1以上踏増しされると、補正係数K1を低下して自車両に発生するヨーモーメントを抑制する。これにより、車線変更に伴う加速操作をより確実に検出し、運転者の意図に沿って逸脱リスクポテンシャルRPに応じて発生するヨーモーメントを低下させることができる。
【0054】
《第3の実施の形態》
以下に、本発明の第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。図9に、第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置2の構成のシステム図を示す。図9において、図1に示した第1の実施の形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付している。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0055】
第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置2は、運転者が車線変更を行うことを検出する車線変更検出装置90をさらに備えている。車線変更検出装置90は、例えばウィンカ操作検出スイッチであり、ウィンカーのオン操作が検出されると、ウィンカーが操作された方向に車線変更を行うと判定する。また、車線変更検出装置90を、操舵角センサから構成することも可能である。この場合、運転者によるステアリング操舵角が所定量以上となると、操舵方向への車線変更を行うと判定する。
【0056】
車両用運転操作補助装置2は、上述した第1の実施の形態と同様に逸脱リスクポテンシャルRPが高くなると、逸脱を回避する方向にヨーモーメントを発生させる。また、アクセルペダル操作量SAが大きくなると、逸脱防止制御によって自車両に発生するヨーモーメントを抑制するとともに、抑制量に対応してアクセルペダル反力を増加させる。第2の実施の形態では、車線変更検出装置90によって運転者が車線変更を行うことが検出されると、ヨーモーメントとアクセルペダル反力の発生を終了する。
【0057】
コントローラ50Aは、車線変更検出総理90によって車線変更を行うことが検出されると、自車両に発生するヨーモーメントを速やかに低下させるとともに、アクセルペダル反力増加量ΔFはヨーモーメントの低下に対して遅れて低下するように設定する。図10に、逸脱防止制御による目標ヨーモーメントMtの時間変化を示し、図11に、反力増加量ΔFの時間変化を示す。図10および図11は、逸脱リスクポテンシャルRPおよびアクセルペダル操作量SAに応じて、すでに目標ヨーモーメントMtとアクセルペダル反力増加量ΔFが発生している場合を示している。
【0058】
図10に示すように、時間taで運転者が車線変更を行うと判定されると、目標ヨーモーメントMtを徐々に低下する。この場合、アクセルペダル操作量SAには関わらず、車線変更と判定されてから所定時間後の時間tbには目標ヨーモーメントMtが0まで低下する。目標ヨーモーメントMtが0まで低下すると、図11に示すように反力増加量ΔFが徐々に低下する。
【0059】
なお、目標駆動力は、目標ヨーモーメントMtが低下するにつれて徐々に増加するように、擬似アクセルペダル操作量SAsをアクセルペダルストロークセンサ62で検出されるアクセルペダル操作量SAまで徐々に増加させる。
【0060】
このように、以上説明した第3の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
(1)コントローラ50Aは、車線変更検出装置90によって自車両の車線変更が検出されると、逸脱リスクポテンシャルRPに応じた目標ヨーモーメントMtの発生を中止するとともに、アクセルペダル反力を徐々に低下させる。具体的には、図10及び図11に示すように、逸脱リスクポテンシャルRPおよび運転者の加速意図を表すアクセルペダル操作量SAに応じて目標ヨーモーメントMtとアクセルペダル反力を発生させている状態で、車線変更が検出されると、目標ヨーモーメントMtを低下するとともに、アクセルペダル反力増加量ΔFを低下する。目標ヨーモーメントMtとアクセルペダル反力を低下させるので、実際に車線変更を行う際に運転者の運転操作を妨げることがない。
(2)コントローラ50Aは、自車両の車線変更が検出されると、目標ヨーモーメントの発生中止に対して所定時間遅れてアクセルペダル反力を徐々に低下させる。具体的には、車線変更が検出された時点taから目標ヨーモーメントMtを徐々に低下し、目標ヨーモーメントMtが0まで低下した時点tbからアクセルペダル反力を徐々に低下させる。これにより、目標ヨーモーメントMtを速やかに低下して自車両の挙動の自由度を高める一方、アクセルペダル反力を維持することによって、アクセルペダル61を不所望に踏み込んでしまって自車両の挙動がふらつくことを防止する。
【0061】
《第4の実施の形態》
以下に、本発明の第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。図12に、第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置3の構成のシステム図を示す。図12において、図1に示した第1の実施の形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付している。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0062】
第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置3は、運転者がステアリングホイール(不図示)を操作する際に発生する操舵反力を制御する操舵反力発生装置100をさらに備えている。操舵反力発生装置100は、自車両の操舵系に組み込まれ、コントローラ50Bからの指令に応じてサーボモータ(不図示)で発生させるトルクを制御する。サーボモータで発生するトルクにより、ステアリングホイールに発生する操舵反力が制御される。
【0063】
車両用運転操作補助装置3は、上述した第1の実施の形態と同様に逸脱リスクポテンシャルRPが高くなると、逸脱を回避する方向にヨーモーメントを発生させる。また、アクセルペダル操作量SAが大きくなると、逸脱防止制御によって自車両に発生するヨーモーメントを抑制するとともに、抑制量に対応してアクセルペダル反力を増加させる。第4の実施の形態では、逸脱リスクポテンシャルRPおよびアクセルペダル操作量SAに応じて、ステアリングホイールに発生する操舵反力も制御する。
【0064】
以下に、第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置3の動作を、図13を用いて詳細に説明する。図13は、第4の実施の形態のコントローラ50Bにおける運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。ステップS310からS380での処理は、図2に示したステップS110からS180での処理と同様であるので説明を省略する。
【0065】
ステップS390では、ステップS330で算出した逸脱リスクポテンシャルRPおよびステップS350で算出したドライバ介入状態を表すアクセルペダル操作量SAに基づいて、ステアリングホイールに発生させる操舵反力FSを算出する。図14に、逸脱リスクポテンシャルRPと操舵反力指令値FSとの関係を示す。操舵反力指令値FSは、右方向へのトルクを正の値で表す。
【0066】
図14に示すように、右側方向への逸脱リスクポテンシャルRPが所定値R3を超えて大きくなるほど、左方向へのトルクを発生するよう操舵反力FSが徐々に大きくなる。逸脱リスクポテンシャルRPが所定値R4(>R3)を超えると、操舵反力FSc=−FS1に固定する。また、左側方向への逸脱リスクポテンシャルRPが所定値−R3を超えて大きくなるほど、右方向へのトルクを発生するよう操舵反力FSが徐々に大きくなる。逸脱リスクポテンシャルRPが所定値−R4(<−R3)を超えると、操舵反力FS=FS1に固定する。これにより、将来位置での逸脱のリスクが大きくなるほど、ステアリング操作を行った際に、逸脱を回避する方向へ大きな操舵トルクが発生する。
【0067】
さらに、ステップS360でアクセルペダル操作量SAに応じて算出した補正係数K1を用いて、操舵反力FSを低下補正する。そこで、以下の(式8)から目標操舵反力FStを算出する。
FSt=K1・FS ・・・(式8)
(式8)に示すように、アクセルペダル操作量SAが大きくなり補正係数K1が小さくなるほど、目標ヨーモーメントMtと同様に目標操舵反力FStが小さくなる。
【0068】
ステップS400では、ステップS360で算出した目標ヨーモーメントMtを制動力制御装置70に出力する。ステップS410では、ステップS370で算出した反力増加量ΔFをアクセルペダル反力発生装置80に出力し、ステップS420ではステップS380で算出した擬似アクセルペダル操作量SAsに応じた駆動力を発生するように、駆動力制御装置60に制御信号を出力する。最後に、ステップS430で、ステップS390で算出した目標操舵反力FStを操舵反力発生装置100に出力する。操舵反力発生装置100は、コントローラ50Bからの指令に応じて操舵反力を制御する。これにより、今回の処理を終了する。
【0069】
このように、以上説明した第4の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
逸脱リスクポテンシャルRPに応じて車両操作機器であるステアリングホイールに発生する操作反力を制御することにより、より確実な自車両の逸脱防止制御を行うことができる。さらに、アクセルペダル操作量SAに基づいてステアリングホイールの操作反力の発生を抑制することにより、車線変更を行おうとしている場合に運転者の操舵操作を妨げることがない。
【0070】
上述した第3の実施の形態においては、図10及び図11に示すように目標ヨーモーメントMtが0まで低下した時点tbから反力増加量ΔFを徐々に低下させた。ただしこれには限定されず、目標ヨーモーメントMtを低下させ始めると同時に反力増加量ΔFを低下させることもできる。ただし、車線変更時の車両操作性や車両挙動を考慮して、目標ヨーモーメントMtが低下し始めた後、反力増加量ΔFを低下させる、または目標ヨーモーメントMtの低下率よりも小さい低下率で反力増加量ΔFを低下させることが好ましい。
【0071】
以上説明した第1〜第4の実施の形態では、自車両が自車線から逸脱することを防止するために、自車両にヨーモーメントを発生させるとともに、駆動力を低下させた。ただし、これには限定されず、ヨーモーメントの発生のみによって車線逸脱防止制御を行うように構成することも可能である。
【0072】
以上説明した第1から第4の実施の形態においては、前方カメラ10、画像処理装置15、および車速センサ20が走行状況検出手段として機能し、コントローラ50,50A,50Bが逸脱リスクポテンシャル算出手段、ヨーモーメント算出手段、ヨーモーメント抑制手段、およびヨーモーメント発生中止手段として機能することができる。また、制動力制御装置70がヨーモーメント発生手段として機能し、アクセルペダルストロークセンサ62がアクセルペダル操作量検出手段として機能し、コントローラ50,50A,50Bおよびアクセルペダル反力発生装置80がアクセルペダル反力制御手段として機能し、コントローラ50Bおよび操舵反力発生装置100が操作反力制御手段として機能し、コントローラ50Bが操作反力抑制手段として機能し、車線変更検出装置90が車線変更検出手段として機能することができる。コントローラ50,50A,50Bおよび駆動力制御装置60が駆動力低下手段および駆動力増加手段として機能することができる。ただし、これには限定されず、例えば路車間通信等を用いて自車両の走行状況を検出することも可能である。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対抗関係に何等限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。
【図2】第1の実施の形態における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図3】自車両の車線内横変位とヨー角を示す図。
【図4】逸脱リスクポテンシャルと制御ヨーモーメントとの関係を示す図。
【図5】アクセルペダル操作量とヨーモーメントの補正係数との関係を示す図。
【図6】アクセルペダル操作量とアクセルペダル反力増加量との関係を示す図。
【図7】第2の実施の形態によるアクセルペダル操作量とヨーモーメントの補正係数との関係を示す図。
【図8】アクセルペダル操作量とアクセルペダル反力増加量との関係を示す図。
【図9】第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。
【図10】アクセルペダル操作量とヨーモーメントの補正係数との関係を示す図。
【図11】アクセルペダル操作量とアクセルペダル反力増加量との関係を示す図。
【図12】第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。
【図13】第4の実施の形態における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図14】逸脱リスクポテンシャルと操舵反力指令値との関係を示す図。
【符号の説明】
【0074】
10:レーダ装置
15:画像処理装置
20:車速センサ
50、50A、50B:コントローラ
60:駆動力制御装置
61:アクセルペダル
70:制動力制御装置
71:ブレーキペダル
80:アクセルペダル反力発生装置
90:車線変更検出装置
100:操舵反力発生装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の操作を補助する車両用運転操作補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自車両が走行車線から逸脱傾向にあるときに、逸脱を防止するように運転者の運転操作を補助する車両用運転操作補助装置が知られている(例えば特許文献1参照)。この装置は、自車両が走行車線から逸脱傾向にあると判断されると、左右輪のうち逸脱方向とは反対側の車輪に制動力を付加し、左右輪の制動力差によって逸脱を回避する方向にヨーモーメントを発生させる。
【0003】
本願発明に関連する先行技術文献としては次のものがある。
【特許文献1】特開2000−33860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の装置では、運転者が車線変更を行うために意図的に車線逸脱傾向となった場合であっても、車線逸脱回避のために自車両にヨーモーメントが与えられるので、システムの制御状態に対して運転者が違和感を感じてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車両用運転操作補助装置は、自車両の走行状況を検出する走行状況検出手段と、走行状況検出手段の検出結果に基づいて自車両が自車線から逸脱するリスクポテンシャルを算出する逸脱リスクポテンシャル算出手段と、リスクポテンシャル算出手段によって算出されるリスクポテンシャルに基づいて自車両の自車線からの逸脱を回避するための目標ヨーモーメントを算出するヨーモーメント算出手段と、ヨーモーメント算出手段によって算出された目標ヨーモーメントを自車両に発生させるヨーモーメント発生手段と、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダル操作量検出手段と、アクセルペダル操作量検出手段によって検出されるアクセルペダル操作量に基づいて目標ヨーモーメントの発生を抑制するヨーモーメント抑制手段と、ヨーモーメント抑制手段による目標ヨーモーメントの抑制量に応じて運転者がアクセルペダルを操作する際に発生するアクセルペダル反力を制御するアクセルペダル反力制御手段とを備える。
本発明による車両用運転操作補助方法は、自車両の走行状況を検出し、走行状況に基づいて自車両が自車線から逸脱するリスクポテンシャルを算出し、リスクポテンシャルに基づいて自車両の自車線からの逸脱を回避するための目標ヨーモーメントを算出し、目標ヨーモーメントを自車両に発生させ、アクセルペダル操作量に基づいて目標ヨーモーメントの発生を抑制し、目標ヨーモーメントの抑制量に応じて運転者がアクセルペダルを操作する際に発生するアクセルペダル反力を制御する。
本発明による車両は、自車両の走行状況を検出する走行状況検出手段と、走行状況検出手段の検出結果に基づいて自車両が自車線から逸脱するリスクポテンシャルを算出する逸脱リスクポテンシャル算出手段と、リスクポテンシャル算出手段によって算出されるリスクポテンシャルに基づいて自車両の自車線からの逸脱を回避するための目標ヨーモーメントを算出するヨーモーメント算出手段と、ヨーモーメント算出手段によって算出された目標ヨーモーメントを自車両に発生させるヨーモーメント発生手段と、アクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダル操作量検出手段と、アクセルペダル操作量検出手段によって検出されるアクセルペダル操作量に基づいて目標ヨーモーメントの発生を抑制するヨーモーメント抑制手段と、ヨーモーメント抑制手段による目標ヨーモーメントの抑制量に応じて運転者がアクセルペダルを操作する際に発生するアクセルペダル反力を制御するアクセルペダル反力制御手段とを有する車両用運転操作補助装置を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、自車線からの逸脱リスクポテンシャルに基づいて逸脱を回避する方向に目標ヨーモーメントを発生する際に、アクセルペダル操作量に基づいて目標ヨーモーメントを抑制するとともに、目標ヨーモーメントの抑制量に応じてアクセルペダル反力を制御するので、自車線からの逸脱を回避するように車両挙動を制御しながら、運転者がアクセルペダル操作を行う場合は運転者に違和感を与えることのない制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
《第1の実施の形態》
本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の構成を示すシステム図である。
【0008】
まず、車両用運転操作補助装置1の構成を説明する。車両用運転操作補助装置1は、前方カメラ10,画像処理装置15、車速センサ20,コントローラ50,駆動力制御装置60,アクセルペダル61、アクセルペダルストロークセンサ62、制動力制御装置70、ブレーキペダル71、およびアクセルペダル反力発生装置80等を備えている。
【0009】
前方カメラ10は、フロントウィンドウ上部に取り付けられた小型のCCDカメラ、またはCMOSカメラ等であり、前方道路の状況を画像として検出する。前方カメラ10による検知領域は車両の前後方向中心線に対して水平方向に±30deg程度であり、この領域に含まれる前方道路風景が画像として取り込まれる。画像処理装置15は、前方カメラ10で撮像した車両前方領域の撮像画像から、例えば白線等のレーンマーカを検出して自車両の走行車線を検出する。
【0010】
車速センサ20は、車輪の回転数や変速機の出力側の回転数を計測することにより自車両の車速を検出し、検出した自車速をコントローラ50に出力する。アクセルペダルストロークセンサ62は、アクセルペダル61の踏み込み量(操作量)を検出し、検出したアクセルペダル操作量をコントローラ50に出力する。
【0011】
コントローラ50は、CPUと、ROMおよびRAM等のCPU周辺部品とから構成され、車両用運転操作補助装置1全体の制御を行う。コントローラ50は、車速センサ20で検出される自車速、および前方カメラ10の撮像画像に基づいて画像処理装置15で検出されるレーンマーカの情報を読み込み、自車両の走行状態を認識する。コントローラ50は、認識した走行状態に基づいて自車両が自車線から逸脱するリスクを算出し、逸脱するリスクがある場合には、逸脱を回避するように自車両の挙動を制御する。また、コントローラ50は、車線変更等を行うために運転者が意図的に車線逸脱方向へ進んでいる場合は、運転者に違和感を与えないように自車両の挙動を調整する。コントローラ50における各種処理については後述する。
【0012】
駆動力制御装置60は、アクセルペダル61の操作状態に応じた駆動力を発生するようにエンジン(不図示)を制御するとともに、外部からの指令に応じて、発生させる駆動力を変化させる。駆動力制御装置60は、アクセルペダル操作量に応じた運転者の要求駆動力と、コントローラ50によって演算される自車両の制御内容に応じて、エンジンへの制御指令値を算出するエンジンコントローラ(不図示)を備えている。
【0013】
制動力制御装置70は、ブレーキペダル71の操作状態に応じた制動力を発生するようにブレーキ液圧を制御するとともに、外部からの指令に応じて、発生させるブレーキ液圧を変化させる。制動力制御装置70は、前後左右輪70FR,70FL,70RR,70RLに設けられたホイールシリンダ(不図示)の液圧を制御して制動力を発生させる。制動力制御装置70は、ブレーキペダル71の踏み込み量に応じた運転者の要求制動力と、コントローラ50によって演算される自車両の制御内容に応じて、ブレーキ液圧指令値を算出するブレーキ液圧コントローラ(不図示)を備えている。
【0014】
アクセルペダル反力発生装置80は、アクセルペダル61のリンク機構に組み込まれたサーボモータ(不図示)を備えている。アクセルペダル反力発生装置80は、コントローラ50からの指令に応じてサーボモータで発生させるトルクを制御し、運転者がアクセルペダル61を操作する際に発生する操作反力を任意に制御することができる。なお、反力制御を行わない場合の通常の反力特性は、アクセルペダル反力がアクセルペダル操作量の増加に対してリニアに増加するように設定されている。
【0015】
以下に、本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の動作を説明する。
コントローラ50は、自車両の走行状態に基づいて、自車両が自車線から逸脱するリスクを表す逸脱リスクポテンシャルRPを算出する。そして、逸脱リスクポテンシャルRPが所定値よりも高く逸脱のリスクがある場合に、左右の車輪に制動力差を与えることにより、逸脱を回避する方向にヨーモーメントを発生させる。さらに、ヨーモーメントの発生による効果的な逸脱防止効果を得るために、アクセルペダル61の操作量に応じた要求駆動力に対して自車両に発生する駆動力を減少させる。
【0016】
ただし、運転者が車線変更等を行うために意図的に逸脱リスクポテンシャルRPが増加する方向に移動している場合は、運転者に違和感を与えないようにヨーモーメントの発生を抑制するとともに、アクセルペダル操作量に応じた駆動力を発生させるようにする。
【0017】
このように、コントローラ50は自車線からの逸脱のリスクを算出し、運転者の車線変更意図を考慮しながら逸脱を回避するように自車両の挙動を制御する。車線変更時にヨーモーメントを抑制することによって運転者は違和感なく車線変更のための運転操作を行うことができる。ただし、運転者にとっては、車線変更意図の検出によりヨーモーメントが抑制されているのか、車線逸脱防止制御が終了してヨーモーメントが減少しているのかを直感的に理解することは困難である。そこで、運転者が意図を持って自車線から逸脱しようとしている場合に、逸脱リスクポテンシャルRPに応じて発生すべきヨーモーメントをどれだけ抑制しているかを、アクセルペダル61から発生する反力として運転者に知覚させる。
【0018】
以下に、第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の動作を、図2を用いて詳細に説明する。図2は、第1の実施の形態のコントローラ50における運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。
【0019】
まず、ステップS110で、車速センサ20によって検出される自車速Vhと、アクセルペダルストロークセンサ62によって検出されるアクセルペダル操作量SAを読み込む。ステップS120では、前方カメラ10の撮像画像から画像処理装置15で検出されるレーンマーカの情報に基づいて、走行車線に対する自車両の向きを表すヨー角Φ、および車線中央からの自車両の車線内横変位Xを算出する。
【0020】
図3に、自車両のヨー角Φと横変位Xを模式的に示す。ヨー角Φは、自車両が車線に対して右側を向いている場合に正の値、図3に示すように左側を向いている場合は負の値で表す。また、横変位Xは、自車両中心Oが車線中央よりも右側領域にある場合に正の値、図3に示すように左側領域にある場合に負の値で表す。なお、横変位Xは、車線幅をLとすると、レーン右端でX=L/2,レーン左端でX=−L/2となる。
【0021】
ステップS130では、自車線からの逸脱リスクポテンシャルRPを算出する。逸脱リスクポテンシャルRPは、自車両の現在位置から所定距離D前方の将来位置における自車線からの推定逸脱量として算出する。距離D前方の将来位置において現在の走行車線中央からの自車両の推定横変位は、現在の横変位Xと現在のヨー角Φとを用いて、(X+DΦ)と表される。
【0022】
(X+DΦ)>0で将来位置において自車両が現在の車線中央よりも右側にいると推定される場合は、以下の(式1)から逸脱リスクポテンシャルRPを算出する。
・(X+DΦ)>L/2のとき
RP=(X+DΦ)−L/2
・(X+DΦ)≦L/2
RP=0 ・・・(式1)
【0023】
(X+DΦ)<0で将来位置において自車両が現在の車線中央よりも左側にいると推定される場合は、以下の(式2)から逸脱リスクポテンシャルRPを算出する。
・(X+DΦ)<−L/2のとき
RP=(X+DΦ)+L/2
・(X+DΦ)≧−L/2
RP=0 ・・・(式2)
【0024】
(式1)(式2)に示すように、将来位置において自車両が自車線から逸脱してしまっている場合に、現在の自車線のレーン端からの横方向の推定変位量、すなわち推定逸脱量を、逸脱リスクポテンシャルRPとして算出する。将来位置において自車両が自車線内にいる場合(−L/2≦X+DΦ≦L/2)は、逸脱リスクポテンシャルRP=0とする。逸脱リスクポテンシャルRPは、自車線から右側へ逸脱している場合に正の値、左側へ逸脱している場合に負の値で表す。
【0025】
なお、逸脱リスクポテンシャルRPを算出するための将来位置を、自車両が所定時間後に到達する位置として設定し、将来位置までの距離Dを、所定時間と自車速Vhとから設定することもできる。これにより、自車両の現在の走行状況を考慮して将来の逸脱リスクポテンシャルRPを算出することができる。
【0026】
続くステップS140では、ステップS130で算出した逸脱リスクポテンシャルRPに基づいて、自車両が自車線から逸脱するのを抑制するためのヨーモーメントを、制御ヨーモーメントMcとして算出する。図4に、逸脱リスクポテンシャルRPと制御ヨーモーメントMcとの関係を示す。制御ヨーモーメントMcは、自車両を右方向に曲げるモーメントの場合に正の値で表す。
【0027】
図4に示すように、右側方向への逸脱リスクポテンシャルRPが所定値R1を超えて大きくなるほど、自車両を左方向に曲げる制御ヨーモーメントMcが徐々に大きくなる。逸脱リスクポテンシャルRPが所定値R2(>R1)を超えると、制御ヨーモーメントMc=−Mc1に固定する。また、左側方向への逸脱リスクポテンシャルRPが所定値−R1を超えて大きくなるほど、自車両を右方向に曲げる制御ヨーモーメントMcが徐々に大きくなる。逸脱リスクポテンシャルRPが所定値−R2(<−R1)を超えると、制御ヨーモーメントMc=Mc1に固定する。これにより、将来位置での逸脱のリスクが大きくなるほど、逸脱を回避する方向へのヨーモーメントが大きくなる。
【0028】
ステップS150では、システム側で行う逸脱防止制御に対して、運転者が現在どれほど介入しているかを算出する。具体的には、ステップS110で読み込んだアクセルペダル操作量SAが大きいほど運転者の介入の程度が高い状態であると判断する。
【0029】
ステップS160では、ステップS150で算出した運転者の介入状態に基づいてステップS140で算出した制御ヨーモーメントMcを補正し、目標ヨーモーメントMtを算出する。まず、運転者の介入状態を表すアクセルペダル操作量SAに基づいて、制御ヨーモーメントMcを低下補正するための補正係数K1を算出する。
【0030】
図5に、アクセルペダル操作量SAと、補正係数K1との関係を示す。アクセルペダル操作量SAが所定値S1以下の場合は、補正係数K1=1とする。アクセルペダル61が踏み込まれて操作量SAが所定値S1を超えると、補正係数K1が徐々に小さくなり、操作量SAが所定値S2(>S1)を超えると、補正係数K1=0とする。
【0031】
つぎに、アクセルペダル操作量SAに基づいて算出した補正係数K1を用いて、以下の(式3)から目標ヨーモーメントMtを算出する。
Mt=K1・Mc ・・・(式3)
(式3)に示すように、アクセルペダル操作量SAが大きくなり補正係数K1が小さくなるほど、目標ヨーモーメントMtが小さくなる。
【0032】
一般的に、運転者に車線変更の意図がある場合は、車線変更を行う際に加速を行う。自車両が車線逸脱方向に進んでおり、アクセルペダル操作量SAが大きい、すなわちアクセルペダル61の踏み込み量が大きい場合には、運転者に車線変更を行う意図があると推定できる。そこで、逸脱リスクポテンシャルRPが大きく、制御ヨーモーメントMcが大きい場合であっても、アクセルペダル操作量SAが大きく車線変更意図があると推定されると、自車両に発生するヨーモーメントが小さくなるように目標ヨーモーメントMtを算出する。
【0033】
つづくステップS170では、逸脱防止制御の制御状態を運転者に知らせるために、アクセルペダル61に発生させる操作反力の増加量ΔFを算出する。図6に、アクセルペダル操作量SAとペダル反力増加量ΔFとの関係を示す。ペダル反力増加量ΔFは、アクセルペダル操作量SAに応じた通常の反力特性に付加する増加分の反力である。
【0034】
図6に示すように、アクセルペダル操作量SAが所定値S1以下の場合は、反力増加量ΔF=0とする。操作量SAが所定値S1を超えて大きくなると、反力増加量ΔFが徐々に大きくなり、操作量SAが所定値S2を超えると、反力増加量ΔF=ΔFmaxに固定する。ここで、アクセルペダル操作量SAの所定値S1,S2は、図5に示した所定値S1,S2と同一であり、補正係数K1が小さくなるほど反力増加量ΔFが大きくなる。したがって、車線変更意図の推定によりヨーモーメントが抑制される場合は、その抑制量に対応する反力増加量ΔFがアクセルペダル61に付与される。
【0035】
ステップS180では、逸脱リスクポテンシャルRPに基づいて目標駆動力を算出する。具体的には、目標駆動力に相当するアクセルペダル操作量である擬似アクセルペダル操作量SAsを算出する。逸脱を回避するために自車両にヨーモーメントを発生させる場合は、逸脱リスクポテンシャルRPの絶対値が所定値R1よりも大きくなった時点でのアクセルペダル操作量SAを初期値として、初期値から徐々に0まで減少する値を擬似アクセルペダル操作量SAsとして設定する。
【0036】
車線変更意図の推定によりヨーモーメントを抑制する場合は、アクセルペダル操作量SAが所定値S1よりも大きくなった時点での擬似アクセルペダル操作量SAsから、アクセルペダルストロークセンサ62で検出されるアクセルペダル操作量SAと一致するまで徐々に増加する値を擬似アクセルペダル操作量SAsとして設定する。擬似アクセルペダル操作量SAsが逐次読み込まれるアクセルペダル操作量SAと一致すると、アクセルペダル操作量SAを擬似アクセルペダル操作量SAとして設定する。
【0037】
なお、逸脱リスクポテンシャルRPの絶対値が所定値R1以下の場合、すなわち逸脱回避のためのヨーモーメントを発生させない場合は、逸脱リスクポテンシャルRPの絶対値が所定値R1以下となった時点での擬似アクセルペダル操作量SAsから、逐次読み込まれるアクセルペダル操作量SAと一致するまで徐々に増加する値を、擬似アクセルペダル操作量SAsとして設定する。
【0038】
ステップS190では、ステップS160で算出した目標ヨーモーメントMtを制動力制御装置70に出力する。制動力制御装置70のブレーキ液圧コントローラは、コントローラ50から入力される目標ヨーモーメントMtに基づいて、左右輪に制動力差を発生させるようにブレーキ液圧指令値Psを算出する。
【0039】
第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1を搭載した車両が自動変速機およびコンベンショナルディファレンシャルギヤを搭載した後輪駆動車両であるとすると、目標ヨーモーメントMtの絶対値が所定値Mt0未満の場合は後左右輪70RR,70RLの制動力にだけ差を発生させる。目標ヨーモーメントMtの絶対値が所定値Mt0以上の場合は、前後左右輪70FR,70FL,70RR,70RLの制動力に差を発生させる。
【0040】
したがって、|Mt|<Mt0の場合は、以下の(式4)から前左右輪70FR,70FLのブレーキ液圧差ΔPsfと、後左右輪70RR,70RLのブレーキ液圧差ΔPsrを算出する
ΔPsf=0
ΔPsr=2・Kbr・|Mt|/T ・・・(式4)
(式4)において、Tはトレッド(前後輪で同じとする)、Kbrは制動力をブレーキ液圧に換算するための換算係数である。係数Kbrは、ブレーキ諸元によって決定される。
【0041】
|Mt|≧Mt0の場合は、以下の(式5)から前左右輪ブレーキ液圧差ΔPsfと、後左右輪ブレーキ液圧差ΔPsrを算出する
ΔPsf=2・Kbf・(|Mt|−Mt0)/T
ΔPsr=2・Kbr・Mt0/T ・・・(式5)
(式5)において、Kbfは制動力をブレーキ液圧に換算するために、ブレーキ諸元によって決定される換算係数である。
【0042】
目標ヨーモーメントMt>0で自車両が自車線の左方向へ逸脱しようとしている場合は、以下の(式6)から各輪のホイールシリンダへのブレーキ液圧指令値Psを算出する。ここでは、前右輪70FR,前左輪70FL,後右輪70RR,後左輪70RLのそれぞれのホイールシリンダの液圧指令値Psfr,Psfl,Psrr,Psrlをそれぞれ算出する。
Psfr=Pm+ΔPsf
Psfl=Pm
Psrr=Pmr+ΔPsr
Psrl=Pmr ・・・(式6)
(式6)において、Pmは、各ホイールシリンダへ液圧を供給するマスタシリンダのマスタシリンダ圧であり、不図示のマスタシリンダ圧センサによって検出される。Pmrは、前後制動力配分に基づく後輪用マスタシリンダ圧である。
【0043】
目標ヨーモーメントMt<0で自車両が自車線の右方向へ逸脱しようとしている場合は、以下の(式7)から各輪のホイールシリンダへのブレーキ液圧指令値Psを算出する。
Psfr=Pm
Psfl=Pm+ΔPsf
Psrr=Pmr
Psrl=Pmr+ΔPsr ・・・(式7)
【0044】
制動力制御装置70は、上述したように算出したブレーキ液圧指令値Psに従って各ホイールシリンダの液圧を制御し、前後左右輪に制動力差を発生させることによって自車両に目標ヨーモーメントMtを発生させる。
【0045】
ステップS200では、ステップS170で算出した反力増加量ΔFをアクセルペダル反力発生装置80に出力する。アクセルペダル反力発生装置80は、コントローラ50から入力される指令値に応じてアクセルペダル反力を制御する。
【0046】
ステップS210では、ステップS180で算出した擬似アクセルペダル操作量SAsに対応した駆動力を発生するよう、駆動力制御装置60に制御信号を出力する。すなわち、逸脱リスクポテンシャルRPの絶対値が所定値R1以下で自車両が車線逸脱傾向にない場合は、アクセルペダルストロークセンサ62で検出されるアクセルペダル操作量SAに応じた駆動力を発生させる。一方、逸脱リスクポテンシャルRPの絶対値が所定値R1を超えて車線逸脱傾向にある場合は、駆動力を減少させる。このとき、アクセルペダル操作量SAが所定値S1を超えて運転者に車線変更意図があると推定される場合は、アクセルペダル操作量SAに応じた駆動力まで徐々に増加し、運転者の加速意図に応じた駆動力を発生させるようにする。これにより、今回の処理を終了する。
【0047】
このように、以上説明した第1の実施の形態においては、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用運転操作補助装置1は、自車両の走行状況に基づいて自車両が自車線から逸脱するリスクポテンシャルRPを算出し、逸脱リスクポテンシャルRPに基づいて自車線からの逸脱を回避するための目標ヨーモーメントMtを算出する。コントローラ50は、アクセルペダル操作量SAに基づいて目標ヨーモーメントMtの発生を抑制し、この抑制量に応じて運転者がアクセルペダル61を操作する際に発生するアクセルペダル反力を制御する。このように、逸脱リスクポテンシャルRPが高くなると逸脱を回避する方向にヨーモーメントが発生し、自車両の逸脱を防止するように自車両の挙動が制御される。逸脱防止制御を行っている際にアクセルペダル操作量SAに応じてヨーモーメントの発生を抑制することにより、車線変更等を行おうとして意図的に逸脱方向に進んでいる場合に運転者の運転操作を妨げないようにすることができる。このとき、ヨーモーメントの抑制量に応じてアクセルペダル反力を制御することにより、運転者の車線変更意図に応じてヨーモーメントの発生を抑制していることを、運転者に認識させることができる。
(2)コントローラ50は、ヨーモーメントの抑制量が大きくなるほどアクセルペダル反力を増大させる。具体的には、図5及び図6に示すように、目標ヨーモーメントMtを算出するための補正係数K1が小さくなるほどアクセルペダル反力増加量ΔFを大きくする。これにより、運転者の車線変更意図に応じてどれほどヨーモーメントの発生が抑制されているかを、アクセルペダル反力を介して運転者にわかりやすく伝えることができる。
(3)コントローラ50は、図5に示すようにアクセルペダル操作量SAが大きくなるほど補正係数K1を大きくし、目標ヨーモーメントMtの抑制量を大きくする。これにより、アクセルペダル61の操作量SAが大きく、車線変更に伴って加速操作を行おうとしている場合に、逸脱リスクポテンシャルRPに応じて発生するヨーモーメントを抑制して運転者の意図に沿った制御を行うことができる。
(4)逸脱リスクポテンシャルRPの増加に伴って自車両に発生する駆動力を低下するとともに、目標ヨーモーメントMtを抑制する場合は駆動力を徐々に増加することにより、車線逸脱防止制御を一層効果的に行うことができるとともに、運転者が加速操作を行う場合は速やかな加速を実現することができる。
【0048】
《第2の実施の形態》
以下に、本発明の第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置の構成は、図1に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0049】
第2の実施の形態では、逸脱リスクポテンシャルRPに応じて逸脱防止制御を開始した時点からのアクセルペダル61の踏み込み量に応じて、制御ヨーモーメントMcを低下補正するための補正係数K1、および反力増加量ΔFを算出する。すなわち、図4に示すように、逸脱リスクポテンシャルRPの絶対値が所定値R1を超えて制御ヨーモーメントMcが0から変化し始めた時点でのアクセルペダル操作量SAを基準値S0とする。
【0050】
図7に、アクセルペダル操作量SAと補正係数K1との関係を示し、図8に、アクセルペダル操作量SAと反力増加量ΔFとの関係を示す。図7に示すように、逸脱防止制御が開始した時点でのアクセルペダル操作量S0から所定量S1踏み込むまでは、補正係数K1=1とする。所定量S1を超えて踏み込むと補正係数K1が徐々に低下し、アクセルペダル操作量SAが所定値(S0+S2)を超えると、補正係数K1=0とする。
【0051】
図8に示すように、逸脱防止制御が開始した時点でのアクセルペダル操作量S0から所定量S1踏み込むまでは、反力増加量ΔF=0とする。所定値S1を超えて踏み込むと反力増加量ΔFが徐々に増加し、アクセルペダル操作量SAが所定値(S0+S2)を超えると、反力増加量ΔF=ΔFmaxとする。なお、アクセルペダル操作量SAが基準値S0よりも小さくなると、補正係数K1=1,反力増加量ΔF=0とする。
【0052】
なお、目標駆動力は、図7に示すように補正係数K1が低下して自車両に発生するヨーモーメントが低下するにつれて徐々に増加するように、擬似アクセルペダル操作量SAsをアクセルペダルストロークセンサ62で検出されるアクセルペダル操作量SAまで徐々に増加させる。
【0053】
このように、以上説明した第2の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
逸脱防止制御が開始された時点、すなわち逸脱リスクポテンシャルRPに応じた目標ヨーモーメントMtを発生開始した時点からのアクセルペダル61の踏み込み量に応じて、目標ヨーモーメントMtを抑制する。具体的には、逸脱防止制御開始時点からアクセルペダル61が所定量S1以上踏増しされると、補正係数K1を低下して自車両に発生するヨーモーメントを抑制する。これにより、車線変更に伴う加速操作をより確実に検出し、運転者の意図に沿って逸脱リスクポテンシャルRPに応じて発生するヨーモーメントを低下させることができる。
【0054】
《第3の実施の形態》
以下に、本発明の第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。図9に、第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置2の構成のシステム図を示す。図9において、図1に示した第1の実施の形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付している。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0055】
第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置2は、運転者が車線変更を行うことを検出する車線変更検出装置90をさらに備えている。車線変更検出装置90は、例えばウィンカ操作検出スイッチであり、ウィンカーのオン操作が検出されると、ウィンカーが操作された方向に車線変更を行うと判定する。また、車線変更検出装置90を、操舵角センサから構成することも可能である。この場合、運転者によるステアリング操舵角が所定量以上となると、操舵方向への車線変更を行うと判定する。
【0056】
車両用運転操作補助装置2は、上述した第1の実施の形態と同様に逸脱リスクポテンシャルRPが高くなると、逸脱を回避する方向にヨーモーメントを発生させる。また、アクセルペダル操作量SAが大きくなると、逸脱防止制御によって自車両に発生するヨーモーメントを抑制するとともに、抑制量に対応してアクセルペダル反力を増加させる。第2の実施の形態では、車線変更検出装置90によって運転者が車線変更を行うことが検出されると、ヨーモーメントとアクセルペダル反力の発生を終了する。
【0057】
コントローラ50Aは、車線変更検出総理90によって車線変更を行うことが検出されると、自車両に発生するヨーモーメントを速やかに低下させるとともに、アクセルペダル反力増加量ΔFはヨーモーメントの低下に対して遅れて低下するように設定する。図10に、逸脱防止制御による目標ヨーモーメントMtの時間変化を示し、図11に、反力増加量ΔFの時間変化を示す。図10および図11は、逸脱リスクポテンシャルRPおよびアクセルペダル操作量SAに応じて、すでに目標ヨーモーメントMtとアクセルペダル反力増加量ΔFが発生している場合を示している。
【0058】
図10に示すように、時間taで運転者が車線変更を行うと判定されると、目標ヨーモーメントMtを徐々に低下する。この場合、アクセルペダル操作量SAには関わらず、車線変更と判定されてから所定時間後の時間tbには目標ヨーモーメントMtが0まで低下する。目標ヨーモーメントMtが0まで低下すると、図11に示すように反力増加量ΔFが徐々に低下する。
【0059】
なお、目標駆動力は、目標ヨーモーメントMtが低下するにつれて徐々に増加するように、擬似アクセルペダル操作量SAsをアクセルペダルストロークセンサ62で検出されるアクセルペダル操作量SAまで徐々に増加させる。
【0060】
このように、以上説明した第3の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
(1)コントローラ50Aは、車線変更検出装置90によって自車両の車線変更が検出されると、逸脱リスクポテンシャルRPに応じた目標ヨーモーメントMtの発生を中止するとともに、アクセルペダル反力を徐々に低下させる。具体的には、図10及び図11に示すように、逸脱リスクポテンシャルRPおよび運転者の加速意図を表すアクセルペダル操作量SAに応じて目標ヨーモーメントMtとアクセルペダル反力を発生させている状態で、車線変更が検出されると、目標ヨーモーメントMtを低下するとともに、アクセルペダル反力増加量ΔFを低下する。目標ヨーモーメントMtとアクセルペダル反力を低下させるので、実際に車線変更を行う際に運転者の運転操作を妨げることがない。
(2)コントローラ50Aは、自車両の車線変更が検出されると、目標ヨーモーメントの発生中止に対して所定時間遅れてアクセルペダル反力を徐々に低下させる。具体的には、車線変更が検出された時点taから目標ヨーモーメントMtを徐々に低下し、目標ヨーモーメントMtが0まで低下した時点tbからアクセルペダル反力を徐々に低下させる。これにより、目標ヨーモーメントMtを速やかに低下して自車両の挙動の自由度を高める一方、アクセルペダル反力を維持することによって、アクセルペダル61を不所望に踏み込んでしまって自車両の挙動がふらつくことを防止する。
【0061】
《第4の実施の形態》
以下に、本発明の第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置について説明する。図12に、第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置3の構成のシステム図を示す。図12において、図1に示した第1の実施の形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付している。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0062】
第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置3は、運転者がステアリングホイール(不図示)を操作する際に発生する操舵反力を制御する操舵反力発生装置100をさらに備えている。操舵反力発生装置100は、自車両の操舵系に組み込まれ、コントローラ50Bからの指令に応じてサーボモータ(不図示)で発生させるトルクを制御する。サーボモータで発生するトルクにより、ステアリングホイールに発生する操舵反力が制御される。
【0063】
車両用運転操作補助装置3は、上述した第1の実施の形態と同様に逸脱リスクポテンシャルRPが高くなると、逸脱を回避する方向にヨーモーメントを発生させる。また、アクセルペダル操作量SAが大きくなると、逸脱防止制御によって自車両に発生するヨーモーメントを抑制するとともに、抑制量に対応してアクセルペダル反力を増加させる。第4の実施の形態では、逸脱リスクポテンシャルRPおよびアクセルペダル操作量SAに応じて、ステアリングホイールに発生する操舵反力も制御する。
【0064】
以下に、第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置3の動作を、図13を用いて詳細に説明する。図13は、第4の実施の形態のコントローラ50Bにおける運転操作補助制御処理の処理手順のフローチャートである。本処理内容は、一定間隔、例えば50msec毎に連続的に行われる。ステップS310からS380での処理は、図2に示したステップS110からS180での処理と同様であるので説明を省略する。
【0065】
ステップS390では、ステップS330で算出した逸脱リスクポテンシャルRPおよびステップS350で算出したドライバ介入状態を表すアクセルペダル操作量SAに基づいて、ステアリングホイールに発生させる操舵反力FSを算出する。図14に、逸脱リスクポテンシャルRPと操舵反力指令値FSとの関係を示す。操舵反力指令値FSは、右方向へのトルクを正の値で表す。
【0066】
図14に示すように、右側方向への逸脱リスクポテンシャルRPが所定値R3を超えて大きくなるほど、左方向へのトルクを発生するよう操舵反力FSが徐々に大きくなる。逸脱リスクポテンシャルRPが所定値R4(>R3)を超えると、操舵反力FSc=−FS1に固定する。また、左側方向への逸脱リスクポテンシャルRPが所定値−R3を超えて大きくなるほど、右方向へのトルクを発生するよう操舵反力FSが徐々に大きくなる。逸脱リスクポテンシャルRPが所定値−R4(<−R3)を超えると、操舵反力FS=FS1に固定する。これにより、将来位置での逸脱のリスクが大きくなるほど、ステアリング操作を行った際に、逸脱を回避する方向へ大きな操舵トルクが発生する。
【0067】
さらに、ステップS360でアクセルペダル操作量SAに応じて算出した補正係数K1を用いて、操舵反力FSを低下補正する。そこで、以下の(式8)から目標操舵反力FStを算出する。
FSt=K1・FS ・・・(式8)
(式8)に示すように、アクセルペダル操作量SAが大きくなり補正係数K1が小さくなるほど、目標ヨーモーメントMtと同様に目標操舵反力FStが小さくなる。
【0068】
ステップS400では、ステップS360で算出した目標ヨーモーメントMtを制動力制御装置70に出力する。ステップS410では、ステップS370で算出した反力増加量ΔFをアクセルペダル反力発生装置80に出力し、ステップS420ではステップS380で算出した擬似アクセルペダル操作量SAsに応じた駆動力を発生するように、駆動力制御装置60に制御信号を出力する。最後に、ステップS430で、ステップS390で算出した目標操舵反力FStを操舵反力発生装置100に出力する。操舵反力発生装置100は、コントローラ50Bからの指令に応じて操舵反力を制御する。これにより、今回の処理を終了する。
【0069】
このように、以上説明した第4の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
逸脱リスクポテンシャルRPに応じて車両操作機器であるステアリングホイールに発生する操作反力を制御することにより、より確実な自車両の逸脱防止制御を行うことができる。さらに、アクセルペダル操作量SAに基づいてステアリングホイールの操作反力の発生を抑制することにより、車線変更を行おうとしている場合に運転者の操舵操作を妨げることがない。
【0070】
上述した第3の実施の形態においては、図10及び図11に示すように目標ヨーモーメントMtが0まで低下した時点tbから反力増加量ΔFを徐々に低下させた。ただしこれには限定されず、目標ヨーモーメントMtを低下させ始めると同時に反力増加量ΔFを低下させることもできる。ただし、車線変更時の車両操作性や車両挙動を考慮して、目標ヨーモーメントMtが低下し始めた後、反力増加量ΔFを低下させる、または目標ヨーモーメントMtの低下率よりも小さい低下率で反力増加量ΔFを低下させることが好ましい。
【0071】
以上説明した第1〜第4の実施の形態では、自車両が自車線から逸脱することを防止するために、自車両にヨーモーメントを発生させるとともに、駆動力を低下させた。ただし、これには限定されず、ヨーモーメントの発生のみによって車線逸脱防止制御を行うように構成することも可能である。
【0072】
以上説明した第1から第4の実施の形態においては、前方カメラ10、画像処理装置15、および車速センサ20が走行状況検出手段として機能し、コントローラ50,50A,50Bが逸脱リスクポテンシャル算出手段、ヨーモーメント算出手段、ヨーモーメント抑制手段、およびヨーモーメント発生中止手段として機能することができる。また、制動力制御装置70がヨーモーメント発生手段として機能し、アクセルペダルストロークセンサ62がアクセルペダル操作量検出手段として機能し、コントローラ50,50A,50Bおよびアクセルペダル反力発生装置80がアクセルペダル反力制御手段として機能し、コントローラ50Bおよび操舵反力発生装置100が操作反力制御手段として機能し、コントローラ50Bが操作反力抑制手段として機能し、車線変更検出装置90が車線変更検出手段として機能することができる。コントローラ50,50A,50Bおよび駆動力制御装置60が駆動力低下手段および駆動力増加手段として機能することができる。ただし、これには限定されず、例えば路車間通信等を用いて自車両の走行状況を検出することも可能である。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対抗関係に何等限定も拘束もされない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。
【図2】第1の実施の形態における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図3】自車両の車線内横変位とヨー角を示す図。
【図4】逸脱リスクポテンシャルと制御ヨーモーメントとの関係を示す図。
【図5】アクセルペダル操作量とヨーモーメントの補正係数との関係を示す図。
【図6】アクセルペダル操作量とアクセルペダル反力増加量との関係を示す図。
【図7】第2の実施の形態によるアクセルペダル操作量とヨーモーメントの補正係数との関係を示す図。
【図8】アクセルペダル操作量とアクセルペダル反力増加量との関係を示す図。
【図9】第3の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。
【図10】アクセルペダル操作量とヨーモーメントの補正係数との関係を示す図。
【図11】アクセルペダル操作量とアクセルペダル反力増加量との関係を示す図。
【図12】第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。
【図13】第4の実施の形態における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図14】逸脱リスクポテンシャルと操舵反力指令値との関係を示す図。
【符号の説明】
【0074】
10:レーダ装置
15:画像処理装置
20:車速センサ
50、50A、50B:コントローラ
60:駆動力制御装置
61:アクセルペダル
70:制動力制御装置
71:ブレーキペダル
80:アクセルペダル反力発生装置
90:車線変更検出装置
100:操舵反力発生装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行状況を検出する走行状況検出手段と、
前記走行状況検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両が自車線から逸脱するリスクポテンシャルを算出する逸脱リスクポテンシャル算出手段と、
前記リスクポテンシャル算出手段によって算出される前記リスクポテンシャルに基づいて、前記自車両の前記自車線からの逸脱を回避するための目標ヨーモーメントを算出するヨーモーメント算出手段と、
前記ヨーモーメント算出手段によって算出された前記目標ヨーモーメントを前記自車両に発生させるヨーモーメント発生手段と、
アクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダル操作量検出手段と、
前記アクセルペダル操作量検出手段によって検出されるアクセルペダル操作量に基づいて、前記目標ヨーモーメントの発生を抑制するヨーモーメント抑制手段と、
前記ヨーモーメント抑制手段による前記目標ヨーモーメントの抑制量に応じて、運転者が前記アクセルペダルを操作する際に発生するアクセルペダル反力を制御するアクセルペダル反力制御手段とを備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記リスクポテンシャルに基づいて、車両操作機器に発生する操作反力を制御する操作反力制御手段と、
前記アクセルペダル操作量に基づいて、前記操作反力の発生を抑制する操作反力抑制手段とをさらに備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記アクセルペダル反力制御手段は、前記目標ヨーモーメントの抑制量が大きくなるほど前記アクセルペダル反力を増大させることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置において、
前記ヨーモーメント抑制手段は、前記アクセルペダル操作量が大きくなるほど前記目標ヨーモーメントの抑制量を大きくすることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置において、
前記ヨーモーメント抑制手段は、前記リスクポテンシャルに応じた前記目標ヨーモーメントを発生開始した時点からの前記アクセルペダルの踏み込み量に応じて、前記目標ヨーモーメントを抑制することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置において、
前記自車両の車線変更を検出する車線変更検出手段と、
前記車線変更検出手段によって前記自車両の前記車線変更が検出されると、前記ヨーモーメント発生手段による前記目標ヨーモーメントの発生を中止するヨーモーメント発生中止手段とをさらに備え、
前記アクセルペダル反力制御手段は、前記目標ヨーモーメントの発生が中止されると、前記アクセルペダル反力を徐々に低下させることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記アクセルペダル反力制御手段は、前記目標ヨーモーメントの発生中止に対して所定時間遅れて前記アクセルペダル反力を徐々に低下させることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記車線変更検出手段は、ウィンカ操作状態に基づいて前記自車両の前記車線変更を検出することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項9】
請求項6または請求項7に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記車線変更検出手段は、ステアリング操作量に基づいて前記自車両の前記車線変更を検出することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置において、
前記リスクポテンシャルの増加に伴って前記自車両に発生する駆動力を低下する駆動力低下手段と、
前記アクセルペダル操作量に応じて前記目標ヨーモーメントの発生を抑制する場合に、前記駆動力を徐々に増加する駆動力増加手段とをさらに備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項11】
自車両の走行状況を検出し、
前記走行状況に基づいて前記自車両が自車線から逸脱するリスクポテンシャルを算出し、
前記リスクポテンシャルに基づいて前記自車両の前記自車線からの逸脱を回避するための目標ヨーモーメントを算出し、
前記目標ヨーモーメントを前記自車両に発生させ、
アクセルペダル操作量に基づいて目標ヨーモーメントの発生を抑制し、
前記目標ヨーモーメントの抑制量に応じて運転者が前記アクセルペダルを操作する際に発生するアクセルペダル反力を制御することを特徴とする車両用運転操作補助方法。
【請求項12】
自車両の走行状況を検出する走行状況検出手段と、
前記走行状況検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両が自車線から逸脱するリスクポテンシャルを算出する逸脱リスクポテンシャル算出手段と、
前記リスクポテンシャル算出手段によって算出される前記リスクポテンシャルに基づいて、前記自車両の前記自車線からの逸脱を回避するための目標ヨーモーメントを算出するヨーモーメント算出手段と、
前記ヨーモーメント算出手段によって算出された前記目標ヨーモーメントを前記自車両に発生させるヨーモーメント発生手段と、
アクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダル操作量検出手段と、
前記アクセルペダル操作量検出手段によって検出されるアクセルペダル操作量に基づいて、前記目標ヨーモーメントの発生を抑制するヨーモーメント抑制手段と、
前記ヨーモーメント抑制手段による前記目標ヨーモーメントの抑制量に応じて、運転者が前記アクセルペダルを操作する際に発生するアクセルペダル反力を制御するアクセルペダル反力制御手段とを有する車両用運転操作補助装置を備えることを特徴とする車両。
【請求項1】
自車両の走行状況を検出する走行状況検出手段と、
前記走行状況検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両が自車線から逸脱するリスクポテンシャルを算出する逸脱リスクポテンシャル算出手段と、
前記リスクポテンシャル算出手段によって算出される前記リスクポテンシャルに基づいて、前記自車両の前記自車線からの逸脱を回避するための目標ヨーモーメントを算出するヨーモーメント算出手段と、
前記ヨーモーメント算出手段によって算出された前記目標ヨーモーメントを前記自車両に発生させるヨーモーメント発生手段と、
アクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダル操作量検出手段と、
前記アクセルペダル操作量検出手段によって検出されるアクセルペダル操作量に基づいて、前記目標ヨーモーメントの発生を抑制するヨーモーメント抑制手段と、
前記ヨーモーメント抑制手段による前記目標ヨーモーメントの抑制量に応じて、運転者が前記アクセルペダルを操作する際に発生するアクセルペダル反力を制御するアクセルペダル反力制御手段とを備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記リスクポテンシャルに基づいて、車両操作機器に発生する操作反力を制御する操作反力制御手段と、
前記アクセルペダル操作量に基づいて、前記操作反力の発生を抑制する操作反力抑制手段とをさらに備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記アクセルペダル反力制御手段は、前記目標ヨーモーメントの抑制量が大きくなるほど前記アクセルペダル反力を増大させることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置において、
前記ヨーモーメント抑制手段は、前記アクセルペダル操作量が大きくなるほど前記目標ヨーモーメントの抑制量を大きくすることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置において、
前記ヨーモーメント抑制手段は、前記リスクポテンシャルに応じた前記目標ヨーモーメントを発生開始した時点からの前記アクセルペダルの踏み込み量に応じて、前記目標ヨーモーメントを抑制することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置において、
前記自車両の車線変更を検出する車線変更検出手段と、
前記車線変更検出手段によって前記自車両の前記車線変更が検出されると、前記ヨーモーメント発生手段による前記目標ヨーモーメントの発生を中止するヨーモーメント発生中止手段とをさらに備え、
前記アクセルペダル反力制御手段は、前記目標ヨーモーメントの発生が中止されると、前記アクセルペダル反力を徐々に低下させることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記アクセルペダル反力制御手段は、前記目標ヨーモーメントの発生中止に対して所定時間遅れて前記アクセルペダル反力を徐々に低下させることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記車線変更検出手段は、ウィンカ操作状態に基づいて前記自車両の前記車線変更を検出することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項9】
請求項6または請求項7に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記車線変更検出手段は、ステアリング操作量に基づいて前記自車両の前記車線変更を検出することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載の車両用運転操作補助装置において、
前記リスクポテンシャルの増加に伴って前記自車両に発生する駆動力を低下する駆動力低下手段と、
前記アクセルペダル操作量に応じて前記目標ヨーモーメントの発生を抑制する場合に、前記駆動力を徐々に増加する駆動力増加手段とをさらに備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項11】
自車両の走行状況を検出し、
前記走行状況に基づいて前記自車両が自車線から逸脱するリスクポテンシャルを算出し、
前記リスクポテンシャルに基づいて前記自車両の前記自車線からの逸脱を回避するための目標ヨーモーメントを算出し、
前記目標ヨーモーメントを前記自車両に発生させ、
アクセルペダル操作量に基づいて目標ヨーモーメントの発生を抑制し、
前記目標ヨーモーメントの抑制量に応じて運転者が前記アクセルペダルを操作する際に発生するアクセルペダル反力を制御することを特徴とする車両用運転操作補助方法。
【請求項12】
自車両の走行状況を検出する走行状況検出手段と、
前記走行状況検出手段の検出結果に基づいて、前記自車両が自車線から逸脱するリスクポテンシャルを算出する逸脱リスクポテンシャル算出手段と、
前記リスクポテンシャル算出手段によって算出される前記リスクポテンシャルに基づいて、前記自車両の前記自車線からの逸脱を回避するための目標ヨーモーメントを算出するヨーモーメント算出手段と、
前記ヨーモーメント算出手段によって算出された前記目標ヨーモーメントを前記自車両に発生させるヨーモーメント発生手段と、
アクセルペダルの操作量を検出するアクセルペダル操作量検出手段と、
前記アクセルペダル操作量検出手段によって検出されるアクセルペダル操作量に基づいて、前記目標ヨーモーメントの発生を抑制するヨーモーメント抑制手段と、
前記ヨーモーメント抑制手段による前記目標ヨーモーメントの抑制量に応じて、運転者が前記アクセルペダルを操作する際に発生するアクセルペダル反力を制御するアクセルペダル反力制御手段とを有する車両用運転操作補助装置を備えることを特徴とする車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−168684(P2006−168684A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367927(P2004−367927)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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