説明

車両用電池システム及び方法

【課題】
【解決手段】本発明は、チタン酸リチウム電池を含んでいてもよい電池推進電源を備えた多人数乗車又は大型車両を提供する。この車両は、電池専用又はハイブリッドタイプでもよく、また複合体を有していてもよい。車両の電池システムは、車両の床の内部に収容してもよく、異なった分類及び配置が可能である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
連邦政府後援の研究に関する声明
本発明は、連邦交通局(FTA)による契約番号____の国内燃料電池バスプログラムの下で米国政府の支援を受けて達成された。
【0002】
近年、電池を備えたハイブリッド及び電気自動車が提案されており、その一部は実用化され、エネルギー、特に環境手段としての再生エネルギーの効率的な使用に役立っている。通常、これまでに実用化され車両に搭載された二次電池は、例えば、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、又は高性能リチウムイオン電池を含む。
【0003】
そのような電池を使用することで、熱劣化又は容量が小さいことに起因する大きい容積又は空間が必要になるなどの課題が発生する。このような電池は時に重く、その結果、車両の性能が低下することがある。さらに、電極の活物質は、イオン吸蔵及び放出率が低く、したがって高速充電中に効率的な充電が達成できず、再生充電の固定充電器を形成することもできない。再生充電の速度は、短い時間枠内で定期的に再充電することがあるバスなどの大型車両に極めて適切である。
【0004】
したがって、高速充電が可能な電池システムを備えた大型車両が必要である。さらに、その電池システムを効率的に利用することができる大型車両が必要である。
【発明の概要】
【0005】
[0005]
本発明は、高速充電が可能な電源を備えたバスなどの大型車両に関する。本発明の一態様では、電源はチタン酸リチウム電池電源を含んでいてもよい。いくつかの例では、追加の電源を設けてもよい。電源は、1つ又は複数の電池パックを備えていてもよい。電源は、大型車両の床の内部に収容することができる。いくつかの例では、複数の電池パックを車両の床の内部の空洞に個別に搭載してもよい。
【0006】
本発明の別の態様によれば、車両は複合体を有していてもよい。車体は、強化ガラス繊維又は炭素繊維などの少なくとも1つの複合材料から実質的に構成されていてもよい。いくつかの例では、車体の応力が大きい領域を複合材料で形成してもよい。あるいは、車体は軽量金属又は合金から形成されていてもよい。
【0007】
本発明のある実施形態では、推進電源として1つ又は複数の電池列を設けることができる。各々の列は、1つ又は複数の電池パックを含んでいてもよい。電池パックは、その各々がチタン酸リチウム電池セルなどの1つ又は複数の電池セルを含んでいてもよい1つ又は複数のモジュールを含むことができる。推進電源の任意の高さに電池管理システムを集積して、センサのフィードバック又はアラーム又は警報を提供してもよい。推進電源のハウジングは、構成要素を熱又は電気から隔離する安全機能を含んでいてもよい。
【0008】
本発明の他の目的及び利点は、以下の説明と添付の図面を参照することでさらに評価し理解することができる。以下の説明は本発明の実施形態の具体的な詳細を含んでいるが、これは本発明の範囲を限定するものではなく、好ましい実施形態の例として解釈すべきである。本発明の各々の態様に関して、本明細書に記載する当業者には周知の多数の変形形態が可能である。本発明の精神を逸脱することなく、本発明の範囲内で本発明をさまざまに変更及び修正することができる。
【0009】
参照による組み込み
本明細書に記載するすべての出版物、特許、及び特許出願は、各々の出版物、特許、又は特許出願を個別に具体的に参照により組み込むものとすると表示されるのと同程度に参照により本明細書に組み込むものとする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
[0010]
本発明の新規の特徴は、特に添付の特許請求の範囲に記載されている。本発明の原理を活用した例示的実施形態を詳細に記載する以下の説明と添付の図面とを参照することにより本発明の特徴と利点とをよりよく理解できよう。
【図1】本発明の一実施形態によるさまざまな特徴を備えたバスの概略図である。
【図2A】車両の床の内部に収容された電池を備えたバスなどの大型車両の外形図である。
【図2B】大型車両の床の内部に電池を搭載可能な場所の一例を示す図である。
【図2C】電池配置の一例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による推進電源として使用可能な電池配置の上面外形図である。
【図4】大型車両を推進するために使用することができる電池集合体の概略図である。
【図5】列の電池パックの一例を示す図である。
【図6】電池モジュールの上面外形図である。
【図7】本発明の一実施形態によるモジュールの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0020]
本発明は、車両用電池のシステム及び方法を提供する。バス、バン、及びクラス5〜8トラックを含む大型車両又は多人数乗車車両用の車両用電池システムはチタン酸リチウム電池を備えていてもよく、またさまざまな配置及び構成を有していてもよい。本明細書に記載する本発明のさまざまな態様は下記の特定の応用例のいずれにも、又は他のいかなるタイプの車両又は電源にも適用することができる。本発明は独立したシステム又は方法として、あるいは統合車両システムの一部として適用可能である。本発明のさまざまな態様は、個別に、集合的に、又は互いに組み合わせて理解することができる。
【0012】
また、記載する本発明のさまざまな態様を組み合わせて、電池推進電源が総車両出力の12.5%以上を出力できる大型ハイブリッド電気自動車を提供することができる。さまざまな実施形態で、電池推進電源は総車両出力の15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、又は実質的に100%を出力できる。一例では、軽量複合体、効率的な駆動系、及び軽量電池などの特徴を組み合わせて電池推進電源が車両の出力要件の大きな割合を送出することができる。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態によるさまざまな特徴を備えたバスの概略図を示す。バスの特徴は他の大型車両又は多人数乗車車両に適用可能で、ここで「大型車両」は、輸送バス、スクールバス、配送車、シャトルバス、トラクタトレーラ、クラス5トラック(重量16,001〜19,500ポンド(7,258〜8,845kg)、2軸、6タイヤ単一ユニット)、クラス6トラック(重量19,501〜26,000ポンド(8,846〜11,794kg)、3軸単一ユニット)、クラス7トラック(重量26,001〜33,000ポンド(11,794〜14,969kg)、4軸以上の単一ユニット)、クラス8トラック(重量33,000ポンド(14,969kg)超、4軸以下の単一トレーラ)、GVWR装備の車両で14,000ポンド(6,350kg)超、貨物対ドライバ質量が15:1以上の車両、6個以上のタイヤを装備した車両、3軸以上の車両、又はその他の任意のタイプの多人数乗車又は大型車両を含んでいてもよい。
【0014】
大型車両は、電池を含む推進電源を有していてもよい。本発明のいくつかの実施形態では、大型車両は、燃焼機関又は燃料電池などの1つ又は複数の追加の電源を有していてもよい。大型車両は、電池式車両又はハイブリッド車両であってもよく、車両が全電池式車両であるかハイブリッド車両であるかにかかわらず同じ基本電池構成、駆動モータ、及びコントローラを使用することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、大型車両は所定のルートを移動し、所定の再充電ポイントで停止することができる。例えば、参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする米国特許第3,955,657号を参照されたい。
【0016】
推進電源
[0025]
本発明の一実施形態では、大型車両の推進電源は、チタン酸リチウム電池を含んでいてもよい。いくつかの実施態様では、推進電源は、他のタイプの電池を必要とせずにチタン酸リチウム電池のみの電池を含んでいてもよい。チタン酸リチウム電池は、当業で周知の任意のフォーマット又は組成を含んでいてもよい。参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする米国特許公開第2007/0284159号、米国特許公開第2005/0132562号、米国特許公開第2005/0214466号、米国特許第6,890,510号、米国特許第6,974,566号、及び米国特許第6,881,393号を参照されたい。
【0017】
チタン酸リチウム電池の使用によって、車両の迅速な再充電と長い電池寿命が可能になる。本発明のいくつかの実施形態では、電池推進電源は数分以内に極めて高い充電状態までの充電が可能である。例えば、好ましい実施形態では、電源は、10分間以内に95%を超える充電状態までの充電が可能である。本発明の別の実施形態では、電池推進電源は、10分以内、又は9分、7分、5分、3分又は1分以内に、65%を超える充電状態、70%を超える充電状態、75%を超える充電状態、80%を超える充電状態、85%を超える充電状態、90%を超える充電状態、又は95%を超える充電状態までの充電が可能である。
【0018】
いくつかの実施態様では、電池推進電源は、周期的オフボード充電接続を用いて充電可能である。オフボード充電システムは、車両の外部にある電池充電システムであってもよい。別の実施態様では、電池推進電源は、オンボード電力生成デバイスを用いて充電可能である。オンボード電力生成デバイスは、電池を充電するさまざまな手段を組み込むことのできる車両に搭載されるか又は車両に組み込まれた任意の電力生成デバイスであってもよい。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、推進電源は、当業で周知の又は後に開発された任意の電池ケミストリーを備えた電池を含んでいてもよい。このような電気自動車又はハイブリッド電気自動車用電池は、鉛酸(「フラッド型」及びVRLA)電池、ニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、空気亜鉛電池又は溶融塩電池を含んでいてもよいが、これらに限定されない。いくつかの実施態様では、蓄電容量は18〜100kWhの容量範囲であってもよい。
【0020】
いくつかの別の実施形態では、推進電源は、チタン酸リチウム電池と別のタイプの電池又はウルトラコンデンサとの組合せを含んでいてもよい。
【0021】
[0030]
充電/放電制御回路は、温度センサなどの電池のセンサ、電圧計及び電流計から測定信号を受信することができる。入力信号に基づいて、制御回路は現在の充電容量を計算し、特定の充電状態(SOC)を設定し、それによって電源の電池の充電/放電を制御することができる。電池は外部又は内部電源から電力を供給される。
【0022】
大型車両の電池電源は、正電極と、負電極と、正電極と負電極との間のセパレータとから形成される螺旋構造を備えた電極群を含んでいてもよい。電極群は、正電極と負電極とをセパレータで巻き、その結果として得られる構造を熱加圧して形成することができる。あるいは、正電極、負電極及びセパレータは粘着ポリマーを用いて形成することができる。正端子は、正電極に電気的に接続することができる。同様に、帯状の負端子は負電極に接続することができる。電極群は、正及び負端子の端部が容器から突出して電池セルを形成するように容器内に収容することができる。
【0023】
電池は、負のコレクタと、コレクタの片側又は両側に提供され、負電極活物質、導電剤及び結合剤を含む負電極層とを備える負電極を含んでいてもよい。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、負電極は、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物又は合金を含む活物質を含んでいてもよい。本発明のいくつかの実施態様では、負電極は、当業で周知の任意の電池ケミストリーの活物質を含んでいてもよい。
【0025】
本発明の好ましい実施形態は、リチウムチタン複合酸化物を含む負電極材料を含んでいてもよい。(1)スピネル型Li4+xTi12(x:−1≦x≦3、好ましくは、0<x<1)又は(2)Li2+xTiO7(x:−1≦x≦3)などのラムズデライト型チタン酸リチウムなどのリチウムチタン酸化物を使用することができる。リチウムチタン複合酸化物は、リチウムチタン酸化物に加えて、リチウムを含まないチタンベースの酸化物を含んでいてもよい。
【0026】
[0035]
リチウムチタン酸化物は、例えば、TiO、Ti、P、V、Sn、Cu、Ni及びFeのグループから選択した少なくとも1つの元素を含む金属複合酸化物を含んでいてもよい。TiOは、アナターゼ型であってもよく、摂氏300〜500度の熱処理温度で得られる低結晶特性を有していてもよい。Ti、P、V、Sn、Cu、Ni及びFeのグループから選択した少なくとも1つの元素を含む金属複合酸化物として、TiO−P、TiO−V2O、TiO−P−SnO、及びTiO−P−MeO(Meは、Cu、Ni及びFeからなるグループから選択した少なくとも1つの金属)などを例示できる。いくつかの例では、金属複合酸化物は低結晶特性を有していてもよく、結晶相とアモルファス相が混合した、又はアモルファス相だけが存在するマイクロ構造を有していてもよい。このマイクロ構造のおかげで、サイクル性能は大幅に向上する。特に、リチウムチタン酸化物とTi、P、V、Sn、Cu、Ni及びFeのグループから選択した少なくとも1つの元素とを含む金属複合酸化物が好ましい。
【0027】
いくつかの実施態様では、負電極材料の一次粒子の平均粒径は1μm以下である。より好ましくは、負電極材料の平均粒径は0.3μm以下である。
【0028】
車体
大型車両は、当業で周知の任意の車体組成及び構造を含んでいてもよい。いくつかの例では、多人数乗車又は大型車両は、例えば輸送バス、スクールバス、配送車、シャトルバス、トラクタトレーラ、又はクラス5〜8トラックに分類される車体構造を有していてもよい。
【0029】
例えば、大型車両は、アルミニウム又は鋼などの金属、あるいはマグネシウム合金などの合金からなる車体を有していてもよい。本発明の好ましい実施形態では、車両は軽量で強靭な車体を有していてもよい。
【0030】
また大型車両は、少なくとも1つの複合材料を含む車体を有していてもよい。本発明のいくつかの実施形態では、大型車両の車体は、実質的に少なくとも1つの複合材料から形成されていてもよい。複合材料は、好ましくは軽量の非金属材料である。例えば、車体の応力が大きい領域は、炭素繊維、バルサ、及び/又は構造用発泡コアなどの複合材料から形成されていてもよい。
【0031】
[0040]
本発明のいくつかの代替実施形態は、第1の外皮、第2の外皮、及び外皮間のコアを備える車体を含んでいてもよい。例えば、コアはハニカム構造を含んでいてもよく、又はバルサ材又は発泡材から構成されていてもよく、又は第1もしくは第2の外皮材料と同じか又は同じでない複合材料を含んでいてもよい。車体のさまざまな部分を形成するその他の材料は、アルミニウム、ステンレス鋼、ガラス繊維、アラミド、超高分子量ポリエチレン、炭素繊維、又はその他の周知の構造用繊維、繊維強化プラスチック又はそれらの組合せを含んでいてもよい。
【0032】
複合材料は、短い繊維を用いた低品位の非構造材料又は安価な樹脂を含む無方向性繊維から高性能樹脂システムにおける織布を利用する高強度及び剛性特性まで広範囲の強度をカバーできる材料を含んでいてもよい。車体パネルは高強度の構造要素であってもよく、好ましい実施形態はこのタイプの構造を利用することができる。商業用途での構造用複合物の一般的な材料は、ガラス繊維、アラミド、及びビニルエステル又はエポキシ樹脂母材の炭素繊維布及びテープを含んでいてもよい。これらの材料は、引っ張り強度及び剛性、圧縮強度及び剛性、耐衝撃性などのさまざまな機械的特性を有していてもよい。また、複合材料は、構造が適切であれば耐腐食性及び耐湿性を有することができる。
【0033】
上記の個別の特性を有する上記の材料の選択された組合せを利用して、車体は、パネル平面内又は直角方向の極めて高い強度、高い剛性、及び優れた衝撃強度及び耐久性に所望の性能特性を達成できる。いくつかの実施形態では、材料は、非複合材料、複合材料、又はそれらの組合せを含んでいてもよい。これらの構造用複合パネルを適切に設計して構築することで、都市部での集中的な運行の場合であっても、車両のシャーシの唯一の自己支持構造として役に立つすべての必要な強度及び剛性を提供することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、車両構造は、複数の車体パネルが装着された軽量の骨組枠を含んでいてもよい。別の実施形態では、車体はいくつかの部片又は1つの部片から成形することができる。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、車両の床構造は、実質的に少なくとも1つの複合材料から形成することができる。例えば、車両の床構造は、実質的に炭素繊維又はガラス繊維から形成することができる。あるいは、床構造は、アルミニウム又は鋼を含む金属などの非複合材料で形成してもよい。床構造は、電気アーク又は比較的高熱に曝された時に燃焼しない任意の材料で形成してもよい。
【0036】
電池の場所
[0045]
図2Aは、車両の床の内部に収容された電池を備えたバスなどの大型車両の外形図を示す。本発明のいくつかの実施形態によれば、車両の床の空洞内にチタン酸リチウム電池を搭載してもよい。電池は、バスの床構造の下面又は側面から床の空洞内に個別に搭載できるいくつかのグループに配置することができる。本発明のいくつかの実施形態では、互いに分離され、1つ又は複数の電池のグループを含んでいてもよい複数の空洞が大型車両の下にあってもよい。あるいは、電池の複数のグループを含む1つの空洞が車両の下にあってもよい。
【0037】
図2Bは、電池をバスなどの大型車両の床の上に搭載可能な場所の一例を示す。例えば、電池パックの各々がバスの床の指定領域に収容されている。電池システムの高さは6.75インチ(17.15cm)以下で設計され、これによって電池システムを低床輸送バスの床下に収容することができる。内部の座席レイアウトに余裕がない完全な低床シャーシにも対応できる。バスは、エネルギー貯蔵装置を床下に装備しバスの車軸の間の領域全体にわたって同水準の床を有するような「完全低床」構成を有していてもよい。例えば、バスが2つの車軸を有する場合、2つの車軸間の床は、2つの車軸の間で同水準で平坦である。これは、2つ以上の車軸を備えた大型車両にもあてはまる。任意の車軸間の床は同水準で平坦である。これは、バスの床が床下の電池を収容する突起部を有していなくてもよいということを示す。電池は、バスの床下に平坦に配置される。これは、座席レイアウトを含め、客席の下にエネルギー貯蔵システムのための箱を配置する従来のバスと対照的である。電池システムは、高さが8インチ(20.32cm)以下、7.25インチ(18.42cm)以下、7インチ(17.78cm)以下、6.875インチ(17.46cm)以下、6.75インチ(17.15cm)以下、6.625インチ(16.83cm)以下、6.5インチ(16.51cm)以下、6.375インチ(16.19cm)以下、6.25インチ(15.88cm)以下、6インチ(15.24cm)以下、5インチ(12.70cm)以下、4インチ(10.16cm)以下、又は3インチ(7.62cm)以下であってもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、各々の電池パックは、バスの床の内部に専用の電池コンパートメントを有していてもよい。いくつかの例では、各々の電池パックは、他の電池パックから物理的に分離していてもよい。電池パックの一部を列状に互いに電気的に接続することができ、他の電池パックは互いに電気的に分離していてもよい。
【0039】
本発明の代替実施形態では、電池は、大型車両の他の部分に組み込んであってもよい。例えば、電池を車両の前部、後部、上部又は側面に搭載してもよい。いくつかの実施態様では、電池を車両のさまざまな場所に分散してもよい。例えば、電池の一部を車両の床の内部に格納し、また一部の電池を車両の頂部に格納してもよい。任意の組合せの電池格納場所を使用することができる。
【0040】
大型車両用の推進電源は、1つ又は複数の電池集合体を含んでいてもよい。電池集合体は、コンバータを用いて車両内の牽引モータ、高電力装備品、及び低電圧装備品に高電圧電源を提供することができる。本発明の一実施態様では、並列に配置した直列の電池内で1つの大容量(例えば、50Ah)セルを使用する方が、直列のセルを並列に配置するよりも障害時の動作が安全である。リチウム電池は通常フェールショート機能があるため、電池を他の多くの電池と並列に繋ぐと損傷した電池に使える量のエネルギーが他の電池から放電することがある。いくつかの例では、各電池の電圧を測定できるため、電池を最初に並列に並べて電池管理システムのコストを低減することがある。しかしながら、容量が大きい電池を用いる他のいくつかの実施形態では、電池を並列に配置してから直列に繋ぐ必要はない。容量が大きい電池を使用すれば電池管理システムのコストを増やすことなく集合体全体の安全性が増加する。したがって、電池を直列又は並列に、あるいはそれらを組み合わせて配置することができる。このような電池接続の融通性によって電池配置の融通性が得られる。このような電池配置の融通性は、電池が車両上で分散される場合には必ず有益である。
【0041】
[0050]
さらに、車両用の複合材料又は非焼成非複合材料の使用によって電池パックの配置の融通性が得られる。低床設計の大型車両の場合、電池の高さに制約がある。例えば、低床輸送バス又はスクールバスなどのいくつかの実施形態では、電池の高さを6.75インチ(17.15cm)未満に維持する必要がある。電池パックを車両の床の内部に組み込むことで車両の重心を低く保つことができ、重量配分の均衡がとれるため、操縦性と安全性が向上する。
【0042】
電池配置
図2Cは、電池配置の一例を示す図である。電池パック内にモジュールを収容でき、電池パックは電池集合体内に収容でき、電池集合体は直列に接続された電池パックの列を含むことができる。
【0043】
図3は、本発明の一実施形態による推進電源として使用可能な電池配置の上面外形図を示す。車両内の電池集合体は、任意の数の主電池列を有するように設計することができる。例えば、ある実施形態では、電池集合体は、3つの主電池列を含んでいてもよい。各々の列は、いくつかの電池パックから構成されていてもよい。例えば、1列あたり2つのパックがあってもよい。各列は、同じ数のパックを有していてもよく、又はそうでなくてもよい。例えば、各列は2つのパックを有していてもよい。別の例では、1つの列が2つのパックを有し、別の列が1つのパックを有し、さらに別の列が5つのパックを有していてもよい。各列は、並列に接続されるように配置できる。あるいは、列はパックを直列に接続してもよい。
【0044】
電池管理システム(BMS)をパック及び/又はモジュール内に組み込んで列内部の電力が落ちた電池の潜在的な問題を早期に警告することができる。電池パックの正常動作を確保するためにBMSは、モジュール内の電池の電圧と温度についての正確なフィードバックを行うことができる。特定の列に何か問題があれば、それらのモジュールは自動的に稼働状態から外され、車両は必要に応じてその日の最後まで低減した容量で動作することができる。BMSは、障害を検出すると電池列を切り離すことができる。電池列全体が接続されている場合でも車両を動作させることが可能である。
【0045】
図4は、本発明の一実施形態によるバスなどの大型車両を推進するために使用できる電池集合体の概略図を示す。いくつかの例では、パックを千鳥構成に電気的に配置してケーブル抵抗を一致させて各列の同様な動作を確保することができる。千鳥構成の一例は、2つの列に配置された4つのパック(近い側からパック1、パック2、パック3、パック4)のグループである。第1の列は、パック1とパック4とを相互接続する。第2の列は、パック2とパック3とを相互接続する。各々のパックは、各々が接続部から異なる距離にあっても2つの電池を接続する配線量が同じであってもよい。各々のパックを車両の下側から床に設けた1つ、2つ、又はそれ以上の空洞内に個別に搭載することができる。
【0046】
[0055]
パックは、パックの中身を囲む箱又は容器を含んでいてもよい。容器は、電池パックの中身を保持することができる任意の形状又は構成を有していてもよい。容器は防水型であってもよく、電気アークに曝された時に酸化も燃焼もしない材料から形成されていてもよい。例えば、容器の材料は、道路の塩分による腐食から保護し、電気アークとの接触時の酸化を阻止し、材料の疲労を和らげる3CR12ステンレス鋼であってもよい。同様の特徴を有する複合材料などのその他の材料も使用できる。
【0047】
電池パックの設計
図5は、列の電池パックの一例を示す。電池パックは、1つ又は複数のモジュールを含むことができる。例えば、電池パックは、各々8つのモジュールを含むことができる。電池集合体内の各々の電池パックは、同じ数のモジュールを含んでいてもよく、又はそうでなくてもよい。例えば、ある電池パックが6つのモジュールを含み、別の電池パックが8つのモジュールを含み、さらに別の電池パックも8つのモジュールを含んでいてもよい。
【0048】
パックの設計は、安全性とサイズとを考慮することができる。パックの設計で、検出、格納、分離、及び抑止を含むいくつかの要素を考慮してもよい。これらの領域の各々は、発生する可能性がある一群の潜在的な問題に対処し、すべての適用可能な連邦自動車安全基準に適合するのに役立つ。
【0049】
BMSは、特定の電池、モジュール、パック、又は列の問題の基本的な検出方法である。BMSは障害発生時点を検出し、障害が発生した場合に、電池集合体の他の部分が制約されることを防止して車両の継続運転を可能にするために個別の電池列などの電池集合体の部分を切り離すように電池集合体に指示することができる。BMSは各パックと通信し、また各パック内で通信して所望のレベルの検出及び管理を達成できる。
【0050】
パックは防水型で格納を提供することができる。パックは、パックの中身を損傷する可能性がある外部要素からパックを保護することができる容器又は箱の内部に格納できる。パック容器は、長期にわたってパックを保護するように設計することができる。パックの中身を外部の脅威から保護することに加え、パックの容器は発生する可能性がある障害をパック内部に閉じ込めて車両の他のパック又は部分への損傷を防止することができる。
【0051】
[0060]
モジュール間の仕切りは、障害の可能性がある他のモジュールからモジュールを保護して分離を提供することができる。モジュールが障害になった場合、仕切りは障害モジュールから他のモジュールを保護することができる。仕切りはパック容器構造に組み込んでもよく、又はそうでなくてもよく、電気アーク又は高温に曝された時に酸化しない材料から構成することができる。図2Cは、モジュール仕切りを備えたパック容器の一例を示す。
【0052】
抑止は、筺体内の空隙が極めて限られているために不要なことがある。いくつかの例では、抑止材料用の排気路を提供する必要がある抑止構成を追加してもよい。排気路は、使用しない時に排気開口を封止するスプリングリターンシールドとガスケット材料とを備えたパック断面にドリルで開けた開口からなっていてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、電池パックは、内蔵型ヒートシンク、冷却板などの冷却機能、モジュール固締装置、モジュールを組み付けるバスバー、及びBMSボード、リレー、及びヒューズを収容する1つ又は複数の小型コンパートメントを備えたモジュールを含んでいてもよい。コンパートメントは、実質的に熱に関して、及び/又は物理的にモジュールから分離されていてもよいし、分離されていなくてもよい。リレーへの電力を切断できる小型エンドボックス内の防水型コネクタまで相互接続配線を布設して、メインケーブル切断時にコネクタの各端子を安全に保持することができる。パックは、モジュールの冷却機能に加えて内蔵型冷却機能を含んでいてもよい。いくつかの実施態様では、内蔵型冷却板は、主車両電気冷却システムからの冷却を提供することができる。いくつかの実施形態では、冷却板は、電池動作用に43℃未満に保持されることが好ましい。さまざまなヒートシンク装置又は対流冷却の使用などの当業で周知のその他の冷却機能を電池パックで使用することができる。ファン、空気、液体又はその他の流体の通過を使う場合もある流体冷却などの能動冷却技術も使用することができる。
【0054】
パックの最低点上のスプレーオンセラミックコーティングからなる熱シールドを車両の下側又は放射熱が問題であるどこか別の場所に曝されたパックに塗布することができる。
【0055】
このような電池パック設計は以下の利点を有する:低コストの組込み、安全性設計、組立ての容易さ、メンテナンスフリー、簡単な搭載。
【0056】
電池モジュール設計
[0065]
図6は、電池モジュールの上面外形図を示す。電池モジュールは、1つ又は複数の電池セルを含んでいてもよい。好ましい実施形態では、電池セルはチタン酸リチウム電池セルであってもよい。別の実施形態では、電池セルは当業で周知の他の電池ケミストリーを有していてもよい。例えば、各モジュールは、10個の電池セルを含んでいてもよい。各モジュールは、同じ数の電池セルを含んでいてもよく、又はそうでなくてもよい。例えば、あるモジュールは8つの電池セルを含み、別のモジュールは12個の電池セルを含み、また別のモジュールは13個の電池セルを含み、さらに別のモジュールは13個の電池セルを含んでいてもよい。
【0057】
セルは、モジュール内で任意の配置又は接続を有することができる。例えば、セルはすべて直列に接続されていてもよい。あるいは、セルは並列に接続されていてもよい。又はいくつかの例では、セルは、モジュール内で直列又は並列の組合せで接続されていてもよい。
【0058】
電池セルは、さまざまな電圧などのさまざまな仕様を有していてもよい。例えば、チタン酸リチウム電池の各セルは、2.3Vnominalで、50Ahが115Whの公称エネルギーに該当していてもよい。リチウムイオン電池又はその他のタイプの電池などの各電池はその仕様が違っていてもよく、又はそうでなくてもよい。いくつかの実施形態では、電池は角柱セルであってもよい。各角柱セルは、専用のマイラー/フォイルパウチに収容され幾分壊れやすくてもよい。モジュールハウジングは、電池を外からの損傷から保護するように設計され、電池を扱いやすくして冷却に対応することができてもよい。
【0059】
モジュールは冷却機能を含んでいてもよい。例えば、モジュールは、各電池の間に配置された内蔵型アルミニウム製冷却フィンを有していてもよい。別の例では、冷却板は、すべて陽極酸化されたアルミニウム製バックプレーンにリンクされ、バックプレーンを冷却してモジュールを介した均一な冷却を支持してもよい。さまざまなヒートシンク装置、強制対流冷却などの当業で周知のその他の冷却機能も使用することができる。
【0060】
図7は、本発明の一実施形態によるモジュールの一例を示す。モジュールのケースは、加工が容易で極めて迅速に生産できるABS材料製であってもよい。別の実施態様では、モジュールのケースは、複合材料、ガラス繊維、又は炭素繊維などの他の材料でできていてもよい。いくつかの例では、ケースは、電気アークに曝された時に燃焼しない材料などのあるレベルの分離を提供する材料から形成されていてもよい。前方溶接板を導入して端子を正確に突き止め、ケースに保持してセルタブ内の疲労応力クラックを低減することができる。いくつかの例では、セルタブは、アルミニウムなどの金属製であってもよい。BMSコネクタをモジュール前面に組み込んでオフボードBMSを迅速に接続することができる。端子をオフセットしてタップを付け、取り付けボルトを垂直搭載し組立てを容易にする。
【0061】
[0070]
モジュールは、互いに分離して潜在的なショートから保護しなければならない。これは、ヒートシンクの材料の選択と後処理を慎重に行うことで達成できる。ショートがBMSによって検出される場合、システムは列内の各パックを切り離すことができ、それによって障害を切り離すことができる。隔離システムの大きいクラッシュ又は障害発生時にこのレベルの安全性を導入することができる。
【0062】
以上の説明から、具体的な実施態様を図示し説明してきたが、それらのさまざまな変形形態が可能で、本明細書に含まれることを理解されたい。また、明細書に記載した特定の例によって本発明が限定されることも意図されていない。上記具体例に関連して本発明について説明してきたが、本明細書の好ましい実施形態の説明及び図は限定的と解釈してはならない。さらに、本発明のすべての態様はさまざまな条件及び変数に依存する本明細書に記載する具体的な説明、構成又は相対的割合に限定されないことを理解されたい。本発明の各実施形態の形態及び内容のさまざまな変更は当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、そのような修正、変形形態及び等価物も含むものと考える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型車両であって、
複数の電池パックを含み、個別の電池パックが床構造内部の空洞内に個別に搭載されるように前記大型車両の床構造内部に収容されたチタン酸リチウム電池電源を備える大型車両。
【請求項2】
前記大型車両の床構造が、実質的に少なくとも1つの複合材料から形成される、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記チタン酸リチウム電池電源が複数の電池列を有する少なくとも1つの電池集合体を含み、電池列が複数の電池パックを含み、電池パックが複数の電池モジュールを含み、電池モジュールが複数のチタン酸リチウム電池を含む、請求項1に記載の車両。
【請求項4】
電池パックが、ステンレス鋼又は電気アークに曝された時に酸化しない複合材料から構成される防水型の箱を含む、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
電池パックが、複数の電池モジュールを分離する仕切りを含む、請求項3に記載の車両。
【請求項6】
電池パック及び電池モジュールが、一体型の冷却機能を有する、請求項3に記載の車両。
【請求項7】
障害が検出された場合に電池列を切り離すことができる電池管理システムをさらに備える、請求項3に記載の車両。
【請求項8】
前記大型車両が、電池列が切り離された場合でも動作可能である、請求項3に記載の車両。
【請求項9】
大型車両が、輸送バス、スクールバス、配送車、シャトルバス、クラス5〜8トラック又はトラクタトレーラのうちの1つである、請求項1に記載の車両。
【請求項10】
前記大型車両の床が、車両の車軸の間の同水準の床である、請求項1に記載の車両。
【請求項11】
前記チタン酸リチウム電池電源が、6.75インチ(17.15cm)以下の高さを有する、請求項1に記載の車両。
【請求項12】
大型車両であって、
チタン酸リチウム電池推進電源と、
前記チタン酸リチウム電池推進電源を収容する実質的に少なくとも1つの複合材料から形成された車体と、
を備える大型車両。
【請求項13】
前記車体の応力が、大きい領域が炭素繊維から形成される、請求項12に記載の大型車両。
【請求項14】
前記大型車両が、少なくとも1つの追加の推進電源をさらに備える、請求項12に記載の大型車両。
【請求項15】
電池推進電源を備える大型車両であって、前記電池推進電源が複数の電池列を有する少なくとも1つの電池集合体を含み、電池列が複数の電池パックを含み、電池パックが複数の電池モジュールを含み、電池モジュールが複数の電池セルを含む大型車両。
【請求項16】
前記電池推進電源が、総車両出力の12.5%以上を出力できる、請求項15に記載の大型ハイブリッド電気自動車。
【請求項17】
前記電池推進電源が、周期的オフボード充電接続を用いて可能10分以内に総電池容量の90%以上を充電できる、請求項15に記載の大型ハイブリッド電気自動車。
【請求項18】
前記電池推進電源が、オンボード電力生成デバイスを用いて10分以内に総電池容量の90%以上を充電できる、請求項15に記載の大型ハイブリッド電気自動車。
【請求項19】
チタン酸リチウム電池だけである電池を備える電池推進電源を備える大型車両。

【図2B】
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【図4】
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【図1】
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【図2A】
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【図2C】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−526228(P2011−526228A)
【公表日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516737(P2011−516737)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/048952
【国際公開番号】WO2009/158674
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(510340931)プロテラ インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】