説明

車両用電池搭載構造

【課題】バッテリフレームの車両前後方向後側に配置された部材が、車両後面衝突時にバッテリに干渉することを抑制する抑制効果を向上できる車両用電池搭載構造を提供することを目的とする。
【解決手段】バックボード20は、第1後壁部としての第1ボード部材30と、第2後壁部としての第2ボード部材40を備えている。第1ボード部材30には、車両前後方向後側から第2ボード部材40が重ねられて溶接等で適宜接合されている。第1ボード部材30には車両上下方向へ延びる縦ビード36,38が設けられ、第2ボード部材40には車両幅方向へ延びる横ビード48が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電池搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両後部において、モータ(駆動源)の車両前後方向前側に搭載されるバッテリユニットが知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載された技術では、バッテリを収納するバッテリケースの車両前後方向後側の端部に、車両後面衝突(後突)時に車両前後方向前側へ移動したモータがバッテリケースに干渉することを抑制するバッテリプロテクタが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−87774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、車両前後方向前側へ移動したモータ等の部材がバッテリプロテクタに衝突したときに、バッテリプロテクタが折れ変形(座屈)等する可能性があり、バッテリケースに対するモータの干渉を抑制するためには、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、バッテリの車両前後方向後側に配置された部材が、車両後面衝突時にバッテリに干渉することを抑制する抑制効果を向上できる車両用電池搭載構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の車両用電池搭載構造は、車両の床下に取り付けられ、バッテリを支持するバッテリフレームと、前記バッテリフレームに設けられ、前記バッテリの車両前後方向後側に長手方向を車両幅方向にして配置されると共に、第1ビードが設けられた第1後壁部と、長手方向を車両幅方向にして配置され、前記第1後壁部に車両前後方向後側から重ねられて接合されると共に、第2ビードが設けられた第2後壁部と、を備え、前記前記第1ビードと前記第2ビードが異なる方向へ延びている。
【0007】
請求項1に係る発明によれば、バッテリフレームには、長手方向を車両幅方向にして配置された第1後壁部が設けられている。この第1後壁部には、長手方向を車両幅方向にして配置された第2後壁部が車両前後方向後側から重ねられて接合されている。これらの第1後壁部及び第2後壁部をバッテリの車両前後方向後側に配置することにより、後突時に、バッテリフレームの車両前後方向後側に配置された部材(以下、「移動部材」という場合がある)がバッテリに干渉することが抑制されている。
【0008】
ここで、第1後壁部には第1ビードが設けられ、第2後壁部には第1ビードと異なる方向へ延びる第2ビードが設けられている。これらの第1ビード及び第2ビードによって、例えば、移動部材の形状や、バッテリに対する移動部材の侵入角度等に応じて、第1壁部及び第2壁部の各々に異なる方向の剛性を付与することにより、移動部材の車両前後方向前側への移動を規制することができる。従って、バッテリに対する移動部材の干渉を抑制する抑制効果を向上することができる。
【0009】
請求項2に記載の車両用電池搭載構造は、請求項1に記載の車両用電池搭載構造において、前記第1ビードが車両上下方向へ延びる縦ビードであり、前記第2ビードが車両幅方向へ延びる横ビードである。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、第1後壁部に縦ビードを設けることにより、第1後壁部の曲げ剛性(車両幅方向の軸周り)が高くなる。また、第2後壁部に横ビードを設けることにより、第2後壁部の曲げ剛性(車両上下方向の軸周り)が高くなると共に、車両幅方向の引張り力に対して、車両幅方向に伸張しながら抵抗可能になる。従って、例えば、後突に伴って車両前後方向前側へ移動した移動部材が第2後壁部に衝突したときに、第2後壁部に作用する車両幅方向の引張り力に対して、横ビードが車両幅方向に伸張しながら抵抗する。これにより、衝撃エネルギーが吸収される。その後、移動部材が車両前後方向前側へ更に移動すると、縦ビードによって曲げ剛性が高くなった第1後壁部によって、移動部材の車両前後方向前側への移動が規制される。
【0011】
このように、横ビードが設けられた第2後壁部で移動部材の衝撃エネルギーを吸収し、その後、縦ビードによって曲げ剛性が高くなった第1後壁部で移動部材を受けることにより、移動部材の車両前後方向前側への移動を規制することができる。従って、バッテリに対する移動部材の干渉を抑制する抑制効果を向上することができる。
【0012】
また、例えば、第2後壁部に縦ビードを設けた構成では、縦ビードが線で移動部材の衝突荷重を受けるため、第2後壁部に局部折れが発生し易くなる。これに対して本発明のように、第1後壁部に縦ビードを設けた構成では、第1後壁部が全体として、第2後壁部に作用した衝突荷重を受けることが可能であるため、第1後壁部の局部折れが発生し難くなり、第1後壁部の剛性をより高めることができる。従って、移動部材の車両前後方向前側への移動に対する規制効果を向上することができる。
【0013】
請求項3に記載の車両用電池搭載構造は、請求項2に記載の車両用電池搭載構造において、重ねられた前記第1壁部及び前記第2壁部の車両幅方向の中間部に、車両前後方向後側へ凸状に膨出する膨出部がそれぞれ設けられ、前記縦ビードが、前記第1壁部における前記膨出部の車両幅方向両側の角部にそれぞれ設けられている。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、第1後壁部及び第2後壁部に膨出部を設けることにより、移動部材が第2後壁部の膨出部の角部に衝突し易くなる。この場合、第1後壁部及び第2後壁部の膨出部の角部によって移動部材の車両前後方向の移動が規制される。従って、第1後壁部の膨出部の角部を縦ビードで補強(補剛)することにより、移動部材の車両前後方向前側への移動に対する規制効果が向上する。また、縦ビードで第1後壁部を局所的に補強することにより、第1後壁部の加工コストを削減することができる。
【0015】
請求項4に記載の車両用電池搭載構造は、請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用電池搭載構造において、前記第1後壁部及び前記第2後壁部の少なくとも一方に、車体に取り付けられる車体取付部が設けられている。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、第1後壁部及び第2後壁部の少なくとも一方に設けられた車体取付部が車体に取り付けられる。これにより、第1後壁部及び第2後壁部に作用する衝突荷重が車体に伝達されるため、第1後壁部及び第2後壁部の負担荷重が低減される。従って、第1後壁部及び第2後壁部の板厚等を小さく抑えることができる。
【0017】
請求項5に記載の車両用電池搭載構造は、請求項1〜4の何れか1項に記載の車両用電池搭載構造において、前記バッテリフレームが、車両幅方向へ延びると共に左右一対のリヤサスペンションを連結する連結ビームの車両前後方向前側に配置され、前記第1後壁部及び前記第2後壁部が、前記バッテリと前記連結ビームの間に配置される。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、第1後壁部及び第2後壁部がバッテリと連結ビームとの間に配置される。従って、後突時に、連結ビームがバッテリに干渉することを抑制する抑制効果を向上することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係る車両用電池搭載構造によれば、バッテリの車両前後方向後側に配置された部材が、車両後面衝突時にバッテリに干渉することを抑制する抑制効果を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用電池搭載構造が適用された車両を車両幅方向外側から見た側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るバッテリフレームの車両前後方向後部を車両上下方向上側から見た平断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る第1ボード部材及び第2ボード部材を車両上下方向上側後方から見た斜視図である。
【図4】図2の4−4線断面図である。
【図5】図2の5−5線断面図である。
【図6】(A)は本発明の第1実施形態に係る第1ボード部材の車両幅方向に沿った断面図であり、(B)は本発明の第1実施形態に係る第2ボード部材の車両上下方向に沿った断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る第1ボード部材及び第2ボード部材を示す、図4に相当する断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る第1ボード部材及び第2ボード部材を車両上下方向上側後方から見た斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る第1ボード部材及び第2ボード部材の変形例を示す、図8に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る車両用電池搭載構造について説明する。なお、各図において適宜示される矢印FRは車両前後方向前側を示し、矢印UPは車両上下方向上側を示し、矢印RHは車両幅方向外側(右側)を示している。
【0022】
先ず、第1実施形態に係る車両用電池搭載構造について説明する。
【0023】
図1には、本実施形態に係る車両用電池搭載構造10が適用された車両12が側面図により示されており、図2には、バッテリとしてのバッテリパック14を支持するバッテリフレーム16の車両前後方向後部が断面図により示されている。
【0024】
図1に示されるように、車両12は、車両前部に搭載された電動機(モータ、図示省略)を駆動源として走行する電気自動車であり、その床下に電動機へ供給する電力が蓄電されたバッテリパック14が搭載されている。このように車両12の床下、換言すると、後述するフロアパネル52(図4参照)の車両上下方向下側にバッテリパック14が搭載される車両12に、本実施形態に係る車両用電池搭載構造10が適用されている。
【0025】
図2に示されるように、車両用電池搭載構造10は、バッテリパック14を車両上下方向下側から支持するバッテリフレーム16を備えている。バッテリパック14は、ケース内に放充電可能な図示しない複数の蓄電池が収納されたものであり、図2ではバッテリパック14の外形が二点鎖線で示されている。このバッテリパック14は、バッテリフレーム16の上に載置されており、図示しないボルト等によってバッテリフレーム16に固定されている。
【0026】
バッテリフレーム16は、車両前後方向に延びる左右一対のバッテリサイドメンバ18と、車両幅方向に延びて左右一対のバッテリサイドメンバ18の車両前後方向の前端部及び中間部を連結するバッテリクロスメンバ(図示省略)と、車両幅方向に延びて左右一対のバッテリサイドメンバ18の車両前後方向後側の端部を連結するバックボード20と、車両前後方向に延びてバックボード20と上記バッテリクロスメンバを連結するバッテリアンダーメンバ22を有して構成されている。
【0027】
バッテリフレーム16の車両前後方向後側には、図示しない左右一対のリヤサスペンションのサスペンションアームを連結する中間ビーム(連結ビーム)24が配置されている。換言すると、移動部材としての中間ビーム24の車両前後方向前側に、バッテリフレーム16が配置されている。中間ビーム24は、車両上下方向下側が開口された断面逆V字形状の開断面構造を有している。
なお、図2には、一例として、中間ビーム24が、後突等に伴ってバックボード20に対して所定角度(侵入角度)θを持って車両前後方向前方へ移動した状態が二点鎖線で示されている。
【0028】
バックボード20は、バッテリフレーム16の車両前後方向後側の端部に設けられ、車両幅方向に沿って配置されている。バックボード20は、バッテリパック14と前述した中間ビーム24との間に配置されており、このバックボード20によってバッテリパック14に対する中間ビーム24の干渉が抑制されている。
【0029】
図3に示されるように、バックボード20は、第1後壁部としての第1ボード部材30と、第2後壁部としての第2ボード部材40を備えている。第1ボード部材30には、車両前後方向後側から第2ボード部材40が重ねられ、溶接等で適宜接合されている。図4に示されるように、第1ボード部材30及び第2ボード部材40は車両幅方向から見た断面形状が左右を反転したL字形状の金属板で、バッテリパック14を車両前後方向後側から覆う立壁部32,42と、立壁部32,42の車両上下方向下側の端部から車両前後方向前側へ延出する下壁部34,44をそれぞれ備えている。
【0030】
図3に示されるように、第1ボード部材30及び第2ボード部材40の立壁部32,42における車両幅方向の中間部には、壁本体部32A,42Aに対して車両前後方向後側へ凸状に膨出部する膨出部32B,42Bがそれぞれ設けられている。また、第2ボード部材40の立壁部42における車両幅方向外側の部位には、壁本体部42Aから車両前後方向前側へ凹む左右一対のブラケット取付部46が設けられている。ブラケット取付部46には、図5に示されるように、車体取付部としての車体取付ブラケット50の一端部が溶接等で接合されている。この車体取付ブラケット50の他端部は、車体のフロアパネル52の下面に設けられた車体側ブラケット54に車体締結用ボルト56及びナット58によって締結されている。これにより、バックボード20の車両幅方向外側の部位がフロアパネル52に連結されている。
なお、車体取付ブラケット50は、第1ボード部材30の立壁部32に設けても良い。
【0031】
また、車体側ブラケット54には、バッテリパック14の車両前後方向後側の端部に設けられた取付ブラケット60、及びスペーサとしてのカラー62が車体締結用ボルト56で共締めされている。更に、第1ボード部材30及び第2ボード部材40の下壁部34,44は、車両前後方向前側の端部で結合されて閉断面を構成している。
【0032】
ここで、図3に示されるように、第1ボード部材30の立壁部32には、当該立壁部32の車両前後方向の下端から上端に渡って車両上下方向へ延びる複数(本実施形態では、4つ)の縦ビード(第1ビード)36,38が設けられている。縦ビード36は、図6(A)に示されるように、膨出部32Bの車両幅方向両側の角部32B1に設けられ、車両上下方向から見た断面形状が車両前後方向後側へ凸となる三角形状とされている。縦ビード38は、膨出部32Bの車両幅方向両側にある本体部32Aに設けられ、車両幅方向から見た断面形状が車両前後方向後側へ凸となる台形形状とされている。これらの縦ビード36,38によって第1ボード部材30の立壁部32に曲げ剛性(車両幅方向の軸周り)が付与されている。
【0033】
第1ボード部材30における縦ビード36,38の配置は、図2の二点鎖線で示されるように、中間ビーム24がバックボード20に対して所定角度θをもって車両前後方向前側(矢印FR方向)へ移動したときに、中間ビーム24が衝突する第2ボード部材40の部位を支持可能な位置に設定されている。
【0034】
一方、図3に示されるように、第2ボード部材40の立壁部42には、壁本体部42A及び膨出部42Bに跨って車両幅方向へ延びる複数(本実施形態では、2つ)の横ビード(第2ビード)48が設けられている。即ち、第2ボード部材40の立壁部42には、第1ボード部材30の立壁部32に設けられた縦ビード36,38と異なる方向へ延びる横ビード48が設けられている。各横ビード48は、車両前後方向から見て第1ボード部材30の縦ビード36,38と交差するように、少なくも左右一対のブラケット取付部46間に渡って設けられている。また、各横ビード48は、図6(B)に示されるように、車両上下方向に間隔を空けて設けられており、車両幅方向から見た断面形状が車両前後方向後側へ凸となる台形形状とされている。これらの横ビード48によって、第2ボード部材40の立壁部42に曲げ剛性(車両上下方向の軸周り)が付与されると共に、長手方向(車両幅方向)の引張り力に対する靭性(変形性能)が付与されている。
【0035】
次に、第1実施形態に係る車両用電池搭載構造の作用について説明する。
【0036】
図2に示されるように、バッテリパック14と中間ビーム24との間には、バックボード20が配置されている。このバックボード20は、第1ボード部材30と、当該第1ボード部材30に車両前後方向後側から重ねられる第2ボード部材40とから構成されている。これらの第1ボード部材30及び第2ボード部材40の立壁部32,42における車両幅方向の中間部には、各壁本体部32A,42Aに対して車両前後方向後側へ膨出する膨出部32B,42Bが設けられている。
【0037】
従って、例えば、中間ビーム24が、後突等に伴ってバックボード20に対して所定角度θをもって車両前後方向前側(矢印FR方向)へ移動すると、第2ボード部材40における膨出部42Bの角部42B1に衝突する。この結果、図4の矢印Sで示されるように、膨出部42Bが車両上下方向下側の端部を支点として車両前後方向前側に傾倒し、立壁部42が全体として捻れるように変形(捻れ変形)する。これにより、立壁部42に車両幅方向の引張り力が作用する。
【0038】
ここで、第2ボード部材40の立壁部42には、車両幅方向へ延びる複数の横ビード48が設けられている。従って、立壁部42に車両幅方向の引張り力が作用すると、各横ビード48が車両幅方向に伸張しながら引張り力に効率的に抵抗する。これにより、衝撃エネルギーが吸収される。
【0039】
そして、中間ビーム24が車両前後方向前側へ更に移動すると、第2ボード部材40における膨出部42Bの角部42B1によって第1ボード部材30の膨出部32Bの角部32B1が車両前後方向後側へ押圧される。ここで、第1ボード部材30の膨出部32Bの角部32B1には、縦ビード36が設けられており、他の部位と比較して曲げ剛性(車両幅方向の軸周り)が高くなっている。この膨出部32Bの角部32B1で中間ビーム24を受けることにより、中間ビーム24の車両前後方向前側への移動が規制される。
【0040】
更に、膨出部32Bの車両幅方向両側の壁本体部32Aには、縦ビード38が設けられている。従って、中間ビーム24が回転を伴いながら車両前後方向前側へ更に移動すると、縦ビード36及び縦ビード38の2点で、中間ビーム24の車両前後方向前側の移動が規制される。
【0041】
このように本実施形態では、横ビード48が設けられた第2ボード部材40によって中間ビーム24の衝撃エネルギーを吸収し、その後、縦ビード36によって曲げ剛性が高くなった第1ボード部材30で中間ビーム24を受けることにより、中間ビーム24の車両前後方向前側への移動を規制することができる。従って、バッテリフレーム16内への中間ビーム24の侵入を回避し、バッテリパック14に対する中間ビーム24の干渉を抑制する抑制効果を向上することができる。
【0042】
また、例えば、第2ボード部材40の立壁部42に縦ビードを設けた構成では、縦ビードが線で中間ビーム24の衝突荷重を受けるため、立壁部42に局部折れが発生し易くなる。これに対して本実施形態のように、第1ボード部材30の立壁部32に縦ビード36,38を設けた構成では、第1ボード部材30の立壁部32が全体として、第2ボード部材40の立壁部42に作用した衝突荷重を受けるため、第1ボード部材30の立壁部32の局部折れが発生し難くなり、第1ボード部材30の立壁部32の剛性をより高めることができる。
【0043】
また、第1ボード部材30及び第2ボード部材40の立壁部32,42に、壁本体部32A,42Aに対して車両前後方向後側へ膨出する膨出部32B,42Bを設け、第1ボード部材30における膨出部32Bの角部32B1及び壁本体部32Aに縦ビード36,38をそれぞれ設けたことにより、縦ビード36,38の2点で中間ビーム24を受けることができる。従って、中間ビーム24の車両前後方向前側への移動に対する規制効果が向上する。
【0044】
更に、膨出部32B,42Bによって、中間ビーム24が衝突する部位を限定し、縦ビード36,38で立壁部32を局所的に補強することにより、第1ボード部材30の加工コストを削減することができる。
【0045】
更にまた、第2ボード部材40に立壁部42に設けられた車体取付ブラケット50をフロアパネル52の車体側ブラケット54に取り付けることにより、第1ボード部材30及び第2ボード部材40に作用する衝突荷重が、車体側ブラケット54を介してフロアパネル52に伝達されるため、第1ボード部材30及び第2ボード部材40の負担荷重が低減される。従って、第1ボード部材30及び第2ボード部材40の板厚等を小さく抑えることができるため、コスト削減、軽量化を図ることができる。
【0046】
次に、第2実施形態に係る車両用電池搭載構造について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同符号を付して説明を適宜省略する。
【0047】
図7には、第2実施形態に係るバックボード70が示されている。バックボード70は、車両幅方向に沿って配置され、バッテリフレーム72の車両前後方向後側の端部に取り付けられている。バックボード70は、バッテリパック14と中間ビーム24との間に配置されており、このバックボード70によってバッテリパック14に対する中間ビーム24の干渉が抑制されている。
【0048】
図8に示されるように、バックボード70は、第1後壁部としての第1ボード部材80と、第2後壁部としての第2ボード部材90を備えている。第1ボード部材80には、車両前後方向後側から第2ボード部材90が重ねられ、溶接等で適宜接合されている。第1ボード部材80及び第2ボード部材90は平板状の金属板で構成されている。この第1ボード部材80には、当該第1ボード部材80の車両上下方向の下端から上端に渡って車両上下方向へ延びる複数(本実施形態では、2つ)の縦ビード(第1ビード)82が、車両幅方向に間隔を空けて設けられている。各縦ビード82は、車両上下方向から見た形状が、車両前後方向前側へ凸となる台形形状とされている。これらの縦ビード82によって、第1ボード部材80に曲げ剛性(車両幅方向の軸周り)が付与されている。
【0049】
第2ボード部材90には、車両幅方向に延びる複数(本実施形態では、2つ)の横ビード(第2ビード)92が、車両上下方向に間隔を空けて設けられている。即ち、第2ボード部材90には、第1ボード部材80に設けられた縦ビード82と異なる方向へ延びる横ビード92が設けられている。各横ビード92は、車両幅方向の全長に渡って設けられており、車両幅方向から見た断面形状が、車両前後方向前側へ凸となる台形形状とされている。これらの横ビード92によって、第2ボード部材90に曲げ剛性(車両上下方向の軸周り)が付与されると共に、長手方向(車両幅方向)の引張り力に対する靭性(変形性能)が付与されている。
【0050】
また、第1ボード部材80及び第2ボード部材90の車両上下方向下側の端部には、車両上下方向下側へ突出する複数のフレーム取付部84,94が設けられている。これらのフレーム取付部84,94は車両幅方向に間隔を空けて設けられ、バッテリリヤクロスメンバ74(図7参照)に車両前後方向後側から重ねられている。このバッテリリヤクロスメンバ74は、車両幅方向に延在してバッテリフレーム72の車両前後方向後部を構成している。また、バッテリリヤクロスメンバ74及びフレーム取付部84,94にはボルト取付孔がそれぞれ形成されており、これらのボルト取付孔に貫通されるフレーム締結用ボルト76及びウェルドナット78によって、バッテリリヤクロスメンバ74に各フレーム取付部84,94が締結されている。
【0051】
一方、第1ボード部材80及び第2ボード部材90の車両上下方向上側の端部には、車両上下方向上側へ突出する複数の車体取付部86,96が設けられている。これらの車体取付部86,96は車両幅方向に間隔を空けて設けられ、フロアパネル52に設けられた車体側ブラケット55に車両前後方向後側から重ねられている。車体取付部86,96及び車体側ブラケット55にはボルト取付孔がそれぞれ形成されており、これらのボルト取付孔に貫通される車体締結用ボルト64及びウェルドナット66によって、各車体取付部86,96が車体側ブラケット54に締結されている。
【0052】
なお、車体取付部86,96は、第1ボード部材80及び第2ボード部材90の少なくとも一方に設けられていれば良い。
【0053】
次に、第2実施形態に係る車両用電池搭載構造の作用について説明する。
【0054】
図6に示されるように、バッテリパック14と中間ビーム24との間には、バックボード70が配置されている。このバックボード70は、第1ボード部材80と、当該第1ボード部材80に車両前後方向後側から重ねられる第2ボード部材40とから構成されている。第1ボード部材80には縦ビード82が設けられ、第2ボード部材90には横ビード92が設けられている。
【0055】
このように第2ボード部材90に横ビード92を設けることにより、車両幅方向の引張り力に対して第2ボード部材90が伸張しながら抵抗する。また、第1ボード部材80に縦ビード82を設けることにより、第1ボード部材80の曲げ剛性(車両幅方向の軸周り)が高くなる。従って、後突等に伴って車両前後方向前側へ移動した中間ビーム24がバックボード70に衝突したときに、第2ボード部材90によって衝撃エネルギーが吸収され、その後、曲げ剛性が高くなった第1ボード部材80によって中間ビーム24の車両前後方向前側への移動が規制される。従って、バッテリフレーム16内への中間ビーム24の侵入を回避し、バッテリパック14に対する中間ビーム24の干渉を抑制する抑制効果を向上することができる。
【0056】
また、本実施形態では、バックボード70と、バッテリフレーム72の車両幅方向の剛性を確保するバッテリリヤクロスメンバ74とを別体で構成することにより、バックボード70の構造を単純化することができる。従って、バックボード70の加工コストを削減することができる。これに対して前述した第1実施形態では、図4に示されるように、第1ボード部材30及び第2ボード部材40の下壁部34,44が、各々の車両前後方向前側の端部で結合されて閉断面を構成することにより、バッテリフレーム16の車両幅方向の剛性を確保している。この構成では、バックボード70の構造が複雑化する一方で、部品点数が低減されるため、組み付けコストを削減することができる。
【0057】
なお、本実施形態では、第1ボード部材80及び第2ボード部材90の車両上下方向下側の端部にフレーム取付部84,94(図8参照)を設けたが、例えば、図9に示されるように、第1ボード部材80及び第2ボード部材90を、第1実施形態と同様に、左右を反転した断面L字形状に構成し、バッテリリヤクロスメンバ74(図7参照)を省略することも可能である。この場合、図示を省略するが、必要に応じて第1ボード部材80及び第2ボード部材90の下壁部80A,90Aで閉断面を構成し、車両幅方向の剛性を確保しても良い。なお、図9に示される構成では、第2ボード部材90に3つの横ビード92が設けられている。
【0058】
なお、上記第1,第2実施形態では、第1後壁部としての第1ボード部材に縦ビードを設け、第2後壁部としての第2ボード部材に横ビードを設けたが、これに限らない。第1ボード部材及び第2ボード部材には、異なる方向へ延びるビードが設けられていれば良く、例えば、第1ボード部材に縦ビードを設け、第2ボード部材に車両幅方向に対して傾斜する傾斜ビードを設けても良いし、第1ボード部材及び第2ボード部材に、互いに交差するように車両幅方向に対して傾斜する傾斜ビードをそれぞれ設けても良い。このように第1壁部及び第2壁部に異なる方向へ延びるビードを設けることにより、中間ビーム24の形状や、バックボード20,70に対する中間ビーム24の侵入角度に応じて、第1壁部及び第2壁部の各々に異なる方向の剛性を付与することができる。これにより、中間ビーム24の車両前後方向前側への移動を規制することができる。また、第1ボード部材及び第2ボード部材の少なくとも一部に、異なる方向へ延びるビードが設けられていれば良く、例えば、第1ボード部材及び第2ボード部材の各々に、縦ビード及び横ビードの両方を設けても良い。更に、ビードの形状、数、配置は適宜変更可能である。
【0059】
また、第1ボード部材及び第2ボード部材の2枚のボード部材を重ねてバックボードを構成したが、3枚以上のボード部材を重ねてバックボードを構成しても良い。また、例えば、3枚のボード部材を重ねてバックボードを構成した場合、各ボード部材には車両前後方向前側から順に、縦ボード、横ビード、横ビードを設けても良いし、車両前後方向前側から順に、横ビード、縦ボード、横ビードを形成しても良い。更に、バッテリフレームには、車両幅方向に複数のバックボードを並べて設けても良い。
【0060】
また、バッテリフレームの形状は上記したものに限らない。バッテリフレームは、車両12の床下に取り付けられ、バッテリパック14を支持可能なものであれば良く、例えば、複数の長手材を格子状に連結して構成しても良い。
【0061】
更に、上記第1,第2実施形態は、例えば、モータ(駆動源)や当該モータを支持するフレーム等の部材の車両前後方向前側にバッテリが搭載される電気自動車やハイブリット車にも適用可能である。特に、上記第1,第2実施形態は、中間ビーム24のように第2ボード部材40に湾曲変形や捻れ変形を生じさせ、当該第2ボード部材40に車両幅方向の引張り力を生じさせる部材に対して有効である。
【0062】
以上、本発明の第1,第2実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、第1,第2実施形態を組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
10 車両用電池搭載構造
14 バッテリパック(バッテリ)
16 バッテリフレーム
24 中間ビーム(連結ビーム)
30 第1ボード部材(第1後壁部)
32B 膨出部
32B1 角部
36 縦ビード(第1ビード)
38 縦ビード(第1ビード)
40 第2ボード部材(第2後壁部)
42B 膨出部
48 横ビード(第2ビード)
50 車体取付ブラケット(車体取付部)
52 フロアパネル(車体)
72 バッテリフレーム
80 第1ボード部材(第1後壁部)
82 縦ビード(第1ビード)
86 車体取付部
90 第2ボード部材(第2後壁部)
96 車体取付部
92 横ビード(第2ビード)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の床下に取り付けられ、バッテリを支持するバッテリフレームと、
前記バッテリフレームに設けられ、前記バッテリの車両前後方向後側に長手方向を車両幅方向にして配置されると共に、第1ビードが設けられた第1後壁部と、
長手方向を車両幅方向にして配置され、前記第1後壁部に車両前後方向後側から重ねられて接合されると共に、第2ビードが設けられた第2後壁部と、
を備え、
前記前記第1ビードと前記第2ビードが異なる方向へ延びている車両用電池搭載構造。
【請求項2】
前記第1ビードが車両上下方向へ延びる縦ビードであり、
前記第2ビードが車両幅方向へ延びる横ビードである請求項1に記載の車両用電池搭載構造。
【請求項3】
重ねられた前記第1壁部及び前記第2壁部の車両幅方向の中間部に、車両前後方向後側へ凸状に膨出する膨出部がそれぞれ設けられ、
前記縦ビードが、前記第1壁部における前記膨出部の車両幅方向両側の角部にそれぞれ設けられている請求項2に記載の車両用電池搭載構造。
【請求項4】
前記第1後壁部及び前記第2後壁部の少なくとも一方に、車体に取り付けられる車体取付部が設けられている請求項1〜3の何れか1項に記載の車両用電池搭載構造。
【請求項5】
前記バッテリフレームが、車両幅方向へ延びると共に左右一対のリヤサスペンションを連結する連結ビームの車両前後方向前側に配置され、
前記第1後壁部及び前記第2後壁部は、前記バッテリと前記連結ビームの間に配置されている請求項1〜4の何れか1項に記載の車両用電池搭載構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−71763(P2012−71763A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219403(P2010−219403)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】