説明

車両用香り提供装置、車両用香り提供方法

【課題】香りがより効果的に作用するタイミングで香りを提供する車両用香り提供装置及び車両用香り提供方法を提供すること。
【解決手段】乗員の嗅覚を刺激するよう人工的に調整された香り成分を吐出する車両用香り提供装置100において、香り成分を吐出する香り提供手段20と、信号機の現標示情報又は次の標示に遷移するまでの残遷移時間の少なくとも一方を含む信号情報を取得する信号情報取得手段13と、信号情報に基づき、信号機の現標示が遷移したことを検出し、又は、所定時間内に現標示が遷移することを予測する標示変更検出手段15と、信号機の現標示が遷移したこと、又は、所定時間内に現標示が遷移することが予測されたことをトリガーに、香り提供手段20から香り成分を吐出する香り提供制御手段18と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員に香りを提供する車両用香り提供装置及び車両用香り提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アロマテラピー等で知られているように、香りによる嗅覚刺激により心理的・生理的効果が得られることが知られている。例えば、ラベンダーやレモンの香りには鎮静作用が、ペパーミントやローズの香りには覚醒作用があることが知られている。従来からこのような香りの作用を運転時に適切な心理状態・生理状態に導くために利用した技術が考案されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【0003】
特許文献1には、交差点における運転者の焦り・不注視を検出すると香りを発生させる車両用焦り検出装置が開示されている。特許文献2には、渋滞・信号待ちなどの交通状況、高速走行や市街地走行運転状況に応じて、乗員の感情や心理に適応した芳香成分を放出する車両用空気室成分供給装置が開示されている。また、特許文献3には、運転環境(道路種別、交通量、速度、加減速度、運転時間)から求めた外部環境パラメータと車両状況パラメータとから運転者の緊張度を推定し、緊張度が低下するとレモンの香りを放出する運転疲労低減装置が開示されている。また、特許文献4には、渋滞時に疲労回復・気分転換を促す香りを放出する運転環境制御装置が開示されている。また、特許文献5には、ナビシステムの目的地までのルート情報や、現在及び予測されている道路情報から運転者に生じる眠気やいらいらの程度を予測し、眠気やいらいらが生じる状態に陥る前に芳香を放出する車両用方向制御装置が開示されている。
【特許文献1】特開2004−106716号公報
【特許文献2】特開2006−282084号公報
【特許文献3】特開2003−211933号公報
【特許文献4】特開2002−178744号公報
【特許文献5】特開平11−278048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように特許文献1〜4では、例えば焦り・不注視を検出したこと(特許文献1)、所定の運転状況を検出したこと(特許文献2)、緊張度が閾値を超えたこと(特許文献3)、渋滞が検出されたこと(特許文献4)のように、適当でない心理的・生理的状態の運転者を元の状態に復帰させるために香りを提供するものになっている。
【0005】
しかしながら、このような心理的・生理的状態の運転者はすでにかなりのストレスを受けた状態であり、呼吸が浅くなっている。このため、適当でない心理的・生理的状態を検出した時点で香りを提供しても香りによる効果を十分に得ることができず、また、効果を得るまでに時間がかかるおそれがある。すなわち、特許文献1〜4では、香りを提供するタイミングについて考慮されていないという問題がある。
【0006】
また、特許文献5では、眠気やいらいらが生じる前に香りを放出するとしているが、そのタイミングは眠気やいらいらが生じると予測される時点の一定時間手前に限定されている。しかし、香りの放出時が右左折の最中、旋回走行中、加減速中、車線変更中等の走行中の場合、運転者の呼吸は浅くなっているおそれがある。したがって、特許文献5においても香りを提供するタイミングについて考慮されていないという同様の問題が生じる。
【0007】
また、例えば、特許文献2記載の車両用空気室成分供給装置では、乗員の感情や心理に適応した芳香成分を放出すること、すなわち、複数の香りを使い分けるが、あくまで単一の香りの作用を利用したものである。しかしながら、このような単一の香りの作用を利用するだけでは、その効果も限定的になってしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、香りがより効果的に作用するタイミングで香りを提供する車両用香り提供装置及び車両用香り提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に鑑み、本発明は、乗員の嗅覚を刺激するよう人工的に調整された香り成分を吐出する車両用香り提供装置において、香り成分を吐出する香り提供手段と、信号機の現標示情報又は次の標示に遷移するまでの残遷移時間の少なくとも一方を含む信号情報を取得する信号情報取得手段と、信号情報に基づき、信号機の現標示が遷移したことを検出し、又は、所定時間内に現標示が遷移することを予測する標示変更検出手段と、信号機の現標示が遷移したこと、又は、所定時間内に現標示が遷移することが予測されたことをトリガーに、前記香り提供手段から香り成分を吐出する香り提供制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
香りがより効果的に作用するタイミングで香りを提供する車両用香り提供装置及び車両用香り提供方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【0012】
始めに、香りの作用について説明する。図1(a)は各種の香りが低減する肉体的疲労の程度を比較した結果を、図1(b)は各種の香りが低減する精神的疲労の程度を比較した結果を、それぞれ示す。いずれの図も実車又はドライブシミュレータを所定時間運転した前後の肉体的疲労と精神的疲労の変化を、被験者のアンケートに基づき算出した得点で示している。縦軸の得点が正であれば運転により疲労が増大したことを、負であれば疲労が減少したことを示す。
【0013】
横軸の「ブランク」は何も香りを提供しないこと、「αビネン」と「ボルネオール」は香り成分の名称を、「ブレンド」は「αビネン」と「ボルネオール」を混合した香り成分を、それぞれ示す。したがって、運転終了後に何も香りを提供しない「ブランク」よりも得点が小さければ、香りによる肉体的疲労又は肉体的疲労の低減作用が認められたことになる。肉体的疲労の得点によれば、「αビネン」「ボルネオール」「ブレンド」のいずれも疲労軽減作用が認められる。精神的疲労の得点によれば、「αビネン」「ボルネオール」のいずれも疲労軽減作用が認められ、「ブレンド」にもわずかながら疲労軽減作用が認められる。
【0014】
図1から、「ボルネオール」は肉体的疲労及び精神的疲労のいずれにおいても、運転前よりも疲労が軽減されるという運転の疲労回復に優れた作用を備えていることがわかる。また、「ボルネオール」は、リフレッシュ作用があることが知られているので、例えば、発進直前の運転者に提供することで注意力や集中力(以下、「ボルネオール」の効果を単に覚醒作用という)を向上させることが期待できる。
【0015】
一方、「αビネン」は、リラックス作用があることが知られているので、渋滞時に提供することで緊張やストレス(いらいら感)を低減して鎮静させる(以下、「αビネン」の効果を単に鎮静作用という)ことが期待できる。
【0016】
本実施形態の車両用香り提供装置100は、例えば「ボルネオール」を運転者が深呼吸しやすいタイミングで提供することで、香りの疲労低減作用を効果的に作用させる。また、「αビネン」と「ボルネオール」をそれぞれ適切なタイミングで提供して香りを変化させることで、状況の変化を報知すると共に、香りに慣れることによる作用の低下を抑制する。
【0017】
なお、ボルネオールは覚醒作用のある香りの一例であるので、柑橘系の香りで代用してもよく、具体的にはペパーミント、ジャスミン、ローズ、ブラックペッパー等を用いてよい。また、「αビネン」は鎮静作用の香りの一例であるので、その他の花の香りで代用してもよく、具体的にはラベンダー、レモン、オレンジ等を用いてもよい。
【実施例1】
【0018】
図2は、車両用香り提供装置100による香り提供のタイミングを模式的に説明する図の一例である。車両用香り提供装置100を搭載した車両が、赤信号により停止している。そして、車両用香り提供装置100は、信号が「赤から青に遷移した(する)こと」を検出すると、覚醒作用のある香りを香り提供部20から提供する。
【0019】
すなわち、香りにより信号の変化を報知することができる。また、発進の直前に香りを提供することで発進に集中した運転者の集中力を更に高め、香りが嗅覚を刺激するにつれより多くの香りを吸引しようと深呼吸を促しやすくなる。したがって、タイミングを考慮せずに香りを提供するよりも、効果的に香りを作用させることができる。なお、図2では運転席に香り提供部20を設けたが各席に設けてもよく、この場合、各席の香り及び提供タイミングはそれぞれ個別に制御できる。
【0020】
図3は、車両用香り提供装置100の機能ブロック図の一例を示す。図の各機能ブロックは主に車載された電子制御ユニット、すなわちコンピュータにより実現される。車載された電子制御ユニットは、例えばナビゲーション用のもの、信号機の現標示情報や遷移までの残遷移時間を取得する通信用のもの、又は、撮影した画像を処理する画像処理用のもの等があるが、どの電子制御ユニットで実現してもよい。
【0021】
電子制御ユニットは、ROMに記憶されたプログラムを、RAMを作業メモリにして実行するCPU、所定のロジック回路を実装したASIC(Application Specific Integrated Circuit)、不揮発メモリ、CAN通信部、センサやアクチュエータと接続された入出力インターフェイス、クロック等を備える。CPUがプログラムを実行するか又はASIC等のハードウェアにより、香り提供のタイミングや香りの種類・強さ等を制御する香り提供制御部18、香り提供の条件を設定する香り提供条件設定部19、車速などの車両の状態を検出する車両情報取得部11、運転者の疲労度を推定する疲労度推定部14、信号機の状態を検出する信号情報取得部13、現在地周辺の地図情報を取得する地図情報取得部12、信号機の現標示が遷移したことを検出し又は所定時間内に現標示が遷移することを予測する標示変更検出部15、信号機の標示により停止したことを検出する信号停止検出部16、停止時間が所定時間以上であるか否かを判定する継続停止判定部17と、を有する。以下、これらについて詳細に説明する。
【0022】
〔香り提供部20〕
まず香り提供部20について説明する。香り提供部20は、例えば、天井の内装内、エアコン吹き出し口、ダッシュボード内等に、次述する開口部35を運転者側に向けて配置される。このような配置により運転者に香りを到達させやすくなる。
【0023】
香り提供部20は、例えば空気砲の原理を利用したものでありその一例を図4(a)に示す。空気砲とは、例えば6面体の一部に衝撃を加えると一面に設けられた開口から衝撃波により内部の空気が吐出されるものである。図示するように6面体の筐体34には一面に開口部35が設けられており、筐体34の内部は外部と連通している。筐体34は、プラスチック、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等で形成され、弾性変形が容易である。
【0024】
図4(a)の空気砲には、筐体34の上面に3つのタンク31a〜31c(以下、区別しない場合、タンク31という)が設けられている。タンク31にはそれぞれ異なる又は同一の香り成分が封入されている。香り成分は使い切りのタイプでも、少量になると外部から補充できるものでもよい。また、香り成分は液体又は気体のいずれの形態でもよく、液体の場合は液滴を吐出する吐出機構により筐体内に滴下され、気体の場合は例えば大気圧よりも高圧で封入しておくことで、吐出口の開放時に生じる圧力差により筐体内に移動する。
【0025】
それぞれのタンク31は、吐出機構を備えたヘッドヘッド32a〜32c(以下、区別しない場合、ヘッド32という)を介して筐体34に固定されている。ヘッド32は、圧電アクチュエータ、発熱抵抗体、形状記憶合金アクチュエータ、静電力等を動力源にタンク内の香り成分を吐出する。また、香り成分が気体の場合は、ヘッド32は開閉を制御する開閉弁であり、開閉弁の開放により香り成分を吐出できる。
【0026】
ヘッド32は、香り提供制御部18により指示された香りの強さに応じて液滴の大きさや開放時間を調整して、強さに対応した吐出量(例えば、液量、気体の体積)だけ香り成分を吐出する。また、2以上のタンク31に同じ香り成分を封入して同時に吐出すれば、短時間に強い香りを提供できる。したがって、香りの強さを調整することができる。
【0027】
また、ヘッド32はそれぞれ個別に駆動されるので、後述する香り提供条件設定部19に設定された香り提供条件21に応じて個別に香りを提供できる。本実施例ではタンク31にはボルネオールとαビネンが別々に封入されている。また、図4(a)では3つのタンク31を示したが、2以下又は4以上のタンク31を備えていてもよい。
【0028】
筐体34の側面にはプランジャ33が接続されている。プランジャ33は、電機モータ又はソレノイドなどのアクチュエータを動力源に所定の範囲で往復運動して、筐体34の側面に衝撃(圧力)を加える。これにより、筐体34は弾性変形する。プランジャ33の往復運動も香り提供制御部18により制御される。
【0029】
したがって、ヘッド32の少なくとも1つを駆動して香り成分を筐体内に吐出し、プランジャ33を駆動して開口部35から空気を放出すると、筐体内の空気が香り成分と共に直線状に吐出され、運転者及びその他の乗員に香りを提供することができる。プランジャ33の駆動力を調整して、香りの到達範囲を調節してもよい。
【0030】
また、香り提供部20は図4(b)に示すスピーカ型であってもよい。図4(b)において図4(a)と同一部分には同一の符号を付しその説明は省略する。図4(b)の香り提供部20は、開口部35に対向する面34aに、コイル37及びマグネット36を同心円状に備える。マグネット36は筐体34に固定されており、コイル37に交流電流を流すと電磁誘導によりコイル37が長手方向に振動する。コイル37が接した筐体34の面34aは、コーン紙、プラスチック又はゴム状の弾性部材により形成され、コーン紙やプラスチックで形成することでスピーカと同じ原理で筐体内の空気を振動させることができ、弾性部材で形成することで大変形を生じさせ空気砲と同様に筐体内の空気に衝撃波を生じさせることができる。なお、図4(b)の筐体34において、開口部35に対向した面34a以外は変形可能でなくてもよく、円柱状の筐体34は角柱等の形状でもよい。
【0031】
したがって、コイル37に交流電流を流すことで、開口部35から香り成分を吐出することができる。図4(b)の形態では、香り成分の吐出量だけでなく、交流電流の振幅や交流電流を流す時間により吐出される香り成分の量を調整できる。また、図4(b)のようなスピーカ型の香り提供部20は図4(a)の空気砲に比べて筐体34を小型化しやすいという利点がある。
【0032】
図4(a)(b)いずれの場合も異なる香りが筐体内で混ざるおそれがあるので、例えば、無臭の洗浄用の香り成分をいずれかのタンク31に封入しておいて、直前の香りと異なる香りを提供する際は、洗浄用の香り成分で洗浄してもよい。
【0033】
なお、香り提供部20の態様はこれらに限定されるものでなく、例えばエアコンのダクトにタンク31を設け、タンク31からの香り成分の開放を例えば開閉弁等で制御してもよい。
【0034】
〔車両情報取得部11〕
図3に戻り、車両情報取得部11は車両状態を示す情報を取得する。車両情報は、例えばブレーキペダルの操作、アクセルペダルの操作、車速、エンジン始動からの走行距離・走行時間、ウィンカの作動状態、ワイパの作動状態、前照灯の作動状態等である。これら車両情報は、例えば運転者の疲労度を推定したり、信号待ちで停止したなどの車両の状態、右左折等の車両の状態、降雨時の走行、夜間の走行等を検出するために用いられる。
【0035】
車両情報は、CAN(Controller Area Network)やFlexRayなどの車載LANを介して配信されるので、車両情報取得部11がそれを選択的に受信することで必要な車両情報を取得できる。ブレーキペダル操作は例えばストップランプスイッチのオンやマスタシリンダ圧から、アクセルペダルの操作は例えばアクセル開度センサから、車速は車輪速センサから、エンジン始動からの走行距離・走行時間はエンジン始動時の走行距離・時刻を記憶しておくことでそれぞれ検出でき、ウィンカ、ワイパ又は前照灯の作動状態はそれぞれスイッチ操作から検出できる。
【0036】
また、車両情報取得部11は、交通情報を取得することが好ましい。交通情報は、例えばVICS(Vehicle Information and Communication System)センタがFM多重放送や光・電波ビーコンで配信する渋滞や事故などの情報、プローブカーシステムが配信する渋滞や事故などの情報から取得できる。交通情報を受信することで、例えば渋滞により停止しているため、信号が「青」に遷移しても発進できない等を判定でき、香りの吐出量や吐出の有無を調整できる。
【0037】
〔地図情報取得部12〕
地図情報取得部12は、自車両の位置情報や目的地までの経路、自車両周辺の地図情報等を取得する。したがって、地図情報取得部12は、車両に搭載されたナビゲーションシステムと兼用できる。地図情報取得部12は、例えばGPS(Global Positioning System)衛星の電波を受信して現在地を検出し、これを車輪速センサやジャイロセンサの検出信号により補正して、車両の位置情報(緯度・経路・標高を有する座標)を取得する。この位置情報に基づき、ナビゲーションシステムが有する地図DB(Data Base)を参照することで、地図情報取得部12は、現在地周辺の道路状況、例えば、道路種別(自動車専用道、一般道)、信号機から所定距離内か否か、走行レーン等を検出する。
【0038】
なお、地図DBは、道路を所定間隔に区切るノードが位置情報(座標)に対応づけて登録されており、ノード間を対応づけられたリンクで接続することで道路網を表現する。信号機があるノード又はリンクにはその情報が記憶されており、幅員や複数レーンのあるリンクにはレーン数や右折レーンの有無が記憶されている。地図DBは予めナビゲーションシステムと共に記憶されていてもよいし、サーバからダウンロードしたものでもよい。
【0039】
また、目的地が設定された場合、地図情報取得部12は、経路をコストに置き換えて総コストが最も小さくなる経路を選択する例えばダイクストラ法を利用して目的地までの経路を決定する。経路が設定されれば、右折レーンに停止したか否か、目的地までに存在する信号の数や次の信号までどのくらいの距離か、等を検出できる。
【0040】
〔信号情報取得部13〕
信号情報取得部13は、信号情報を取得する。信号情報とは、信号機の状態を示す情報で、例えば、現標示情報(現在の信号機が赤、青、黄のいずれか)、「赤」から「青」、「青」から「黄」、「黄」から「赤」に遷移するまでの残りの残遷移時間、その信号機の備えるサイクル時間(赤の保持時間、青の保持時間、黄の保持時間)等を言う。
【0041】
信号情報は、例えば路車間通信により取得することが好ましい。路車間通信にはETCやDSRC(Dedicated Short Range Communication)が知られており、路側装置から所定距離内のみの車両との通信(狭域通信)が可能になっている。信号情報取得部13は、例えば5.8GHzの電波をアンテナで受信し、それをフィルタリングして中間波の生成・増幅等を施し、ASK又はQPSK等の所定の復調方式で復調することで信号情報を受信する。なお、VICSの光・電波ビーコンも路車間通信の一態様であるので、VICSの路側装置から信号情報を受信してもよい。なお、車車間通信を介して信号情報を受信してもよい。
【0042】
路側装置は例えば信号機の手前の所定範囲で受信可能な電波を送信しており、通過した車両はその信号機の信号情報を取得できるようになっている。前方に複数の信号機がある場合には、電波にその信号情報はどのくらい先の信号機のものかを含めたり、信号機を特定する情報を含めることで、信号機と信号情報の関係を対応づけることができる。
【0043】
また、信号情報を無線で通信するのでなく、画像処理から取得してもよい。車両には前方の所定範囲を撮影するカメラが搭載されており、信号機を含む画像データをサイクル時間毎に撮影している。車両の姿勢(傾斜角、方位)により画像データにおいて信号機が撮影された範囲はある程度狭めることができ、この範囲に例えばテンプレートマッチングを施して信号機を検出する。信号機がある画像データでは、その信号機において円形状に輝度が高い画素が現在の信号機の現標示である。例えば日本の場合、左から「青」「黄」「赤」であるので、輝度の高い画像データ上の画素位置を検出すれば、現標示を得られる。なお、カラー画像の場合は画素値から現標示を容易に検出できる。
【0044】
また、信号情報は、間接的に先行車両との相対距離及び自車両の車速から検出できる。例えば、先行車両との車間距離が所定以下になり自車両の車速がゼロに接近した場合は、先行車両と共に自車両が停止すること、すなわち、前方の信号機が「赤」であるため停止した可能性が高いと予測できる。また、その後、先行車両との車間距離が徐々に大きくなった場合、先行車両が発進し、自車両も発進すること、すなわち、前方の信号機が「青」に遷移したので発進する可能性が高いと予測できる。なお、先行車両との車間距離は、送信波が先行車両に反射して受信されるまでの時間を検出する例えばレーダ装置により検出できる。また、レーダ装置でなく、画像データの先行車両の像が変化したこと、ステレオカメラにより検出した先行車両までの距離が変化したこと、から先行車両との車間距離の変化を検出してもよい。
【0045】
〔疲労度推定部14〕
疲労度推定部14は運転者の疲労度を推定する。香りには精神的・肉体的の疲労のいずれにも効果があるので両者を区別しなくてもよいが、両者を区別することで精神的疲労と肉体的疲労のそれぞれに適切な香りを提供できる。疲労度は、それまでの走行時間に応じて累積するものと考えられ、走行時間が長いほど高くなると考えられる。また、渋滞時の不連続な加減速操作、信号による停止・発車の動作、右折等の操作は、直進走行する場合と走行時間は同じでも疲労度がより高くなると考えられる。同様に、夜間走行時、雨天走行時は、昼間の直進走行よりも疲労度が高くなりやすい。したがって、これらをパラメータにして運転者の疲労度を推定することができる。
【0046】
例えば、走行時間Tの際の疲労度は、
疲労度=走行時間T+a×渋滞走行時間+b×信号による停止・発車回数+c×右折回数+d×左折回数+e×夜間走行時間+f×雨天走行時間
により計算できる。a〜fは係数であり、予め定められている。
【0047】
また、運転者の覚醒度から疲労度を推定してもよい。覚醒度は例えば運転者の顔画像を撮影し、顔画像から運転者の眼の開閉を検知することで得られる単位時間当たりの閉眼時間等から検出できる。閉眼時間が長いことは覚醒度が低いことを意味するので、これを疲労度が高いとみなすことで運転者の疲労度を推定できる。また、同じく画像データから顔向きや視線方向を検出して、それらの変化が少ないことから漫然運転を検知してもよい。漫然運転することは疲労度が高いとみなすことで運転者の疲労度を推定できる。
【0048】
〔香り提供条件設定部19〕
香り提供条件設定部19は、例えば運転者やメーカが入力した条件、香り、強さに従い香り提供条件21を設定する。香り提供条件21は、香りを提供する条件を定める情報であり、電子制御ユニットの不揮発メモリに記憶されている。図5(a)は香り提供条件21の一例を示す。本実施例の香り提供条件21は、a)信号により停止していること、b)信号機が「赤」から「青」に遷移したこと又は遷移することが予測されること、が両方成立することである。
【0049】
香り提供条件21には、各条件毎に「香りの種類」「強さ」が規定されている。「香りの種類」はボルネオールやαビネン等を意味するが、具体的に図4のタンク31を指定してもよい。また「強さ」は香り成分の吐出量である。例えば、香りが強いほど大きな数字で香りの強さを指定し、この数字は香り提供部20のヘッドが吐出する香り成分の吐出量と対応する。
【0050】
また、例えば、香り提供条件21には、信号機が「青」から「赤」又は「黄」に遷移すること又は遷移したことが検出されたことを条件に、「香りの種類」として覚醒作用のある香り成分(例えばボルネオール)を吐出することを、信号機が「赤」から「青」に遷移すること又は遷移したことが検出されたことを条件に、「香りの種類」として沈静作用のある香り成分(例えばαビネン)を吐出することを、規定しておくことができる。このような香りの提供により、「青」から「赤」又は「黄」に信号が遷移する際には注意を喚起することができ、「赤」から「青」に信号が遷移する際には深呼吸を促すことができる。
【0051】
また、香り提供条件設定部19は、過去に提供した香り提供記録を更新しながら記録している。図5(b)は香り提供記録の一例を示す。香り提供記録には、提供した時刻に「香りの種類」「強さ」が対応づけて記録されている。香り提供記録を参照することで、過去に提供した香り、提供頻度が分かり、次に提供することで効果的になる「香りの種類」「強さ」を決定することができる。なお、香り提供部20が、運転席と後席、又は、各席毎のように複数配置されている場合、香り提供記録は席毎に記録される。
【0052】
このように、香りの強さを予め規定しておいてもよいが、より好ましくは走行中に強弱を付けることで、香りの作用を向上させることが期待できる。香りの作用の大きさは、運転者の吸入量と相関すると考えられるので、提供頻度が少ない場合は、1回の香り成分の吐出量を多くすることが好ましいと考えられる。したがって、香り提供条件設定部19は、例えば、香り提供記録から過去の所定時間内(例えば、1時間)の提供回数が少ない(例えば、5回以下)場合に、香りの「強さ」を大きくする。また、例えば、提供頻度に応じて「強さ」を調整してもよく、単位時間の吐出量を5回とした場合、「(5−単位時間の提供回数)×初期の「強さ」」とすることで、単位時間当たりの吐出量を同程度に保つことができる。
【0053】
また、過去でなく、今後の提供頻度が少ないと予想される場合に、1回の香り成分の吐出量を予め多くしてもよい。次の信号機までの距離を見積もるため目的地までの経路が設定されているとすると、経路上にしばらく信号機がない場合は香りを提供するタイミングがないことになる。したがって、例えば、地図情報によると、経路上の所定距離(例えば、数Km)先まで信号機がない場合、香り提供条件設定部19は1回の香り成分の吐出量を多くする。また、渋滞度等に基づき、所定時間内に通過する信号機のうち停止する信号機を予測して、その数に応じて1回の吐出量を調整してもよい(例えば、1時間当たりの総吐出量をN〔cc〕とし、1時間内に停止する信号機の数が5個と予想された場合、N/5を1回の吐出量にする)。
【0054】
過去の提供履歴及び将来の提供予想を利用することで、香りの吐出量を調整でき、香りを効果的に作用させることができる。
【0055】
〔信号停止検出部16、標示変更検出部15、継続停止判定部17〕
図3に戻り、信号停止検出部16は、信号機の標示により停止したことを検出する。信号停止検出部16は、まず車両情報(車速)から車両が停止したことを検出する。停止した場合にはそれが信号機の赤標示によるものか否かを判定する。路車間通信により信号情報が受信できた場合は、信号情報から現標示情報が取得できるので赤標示によるものか否かも明らかである。画像データから信号情報を取得する場合も、現標示情報(例えば、「赤」「黄」)は明らかである。
【0056】
また、路車間通信や画像データにより信号情報を取得できない場合は、位置情報と地図情報から判定する。地図情報によると、現在地の車両の前方(例えば、30m以内)に信号機が存在する場合、信号による停止であると推定できる。
【0057】
標示変更検出部15は、信号機の標示が遷移したこと、又は、遷移することが予測されることを検出する。実際に遷移した場合は、信号停止検出部16と同様に現標示から検出できる。
【0058】
信号機の標示が遷移すること(例えば赤から青)の予測は、路車間通信により受信した信号情報に含まれる残遷移時間やサイクル時間を利用する。
【0059】
路車間通信による信号情報を受信できない場合は、信号機が撮影された前方の画像データの現標示から青信号への遷移を検出し、それと信号機までの距離から発進することを予測できる。したがって、先頭車両でなければ信号情報と同等の情報が得られる。また、画像データから現標示の取得が困難な場合、レーダ装置等により検出される先行車両との車間距離が増大することから、発進直前であることを予測できる。
【0060】
なお、継続停止判定部17は停止時間が所定時間以上であるか否かを判定するものであり、詳細は実施例2で説明する。
【0061】
〔香り提供制御部18〕
香り提供制御部18は、信号停止検出部16及び標示変更検出部15の検出結果に基づき香り提供条件21を参照し、条件を満たす場合は香り提供部20から香りを提供する。すなわち、信号停止検出部16が、自車両が信号機の標示により停止していることを検出すれば、上記の条件a)を満たしたと判定できる。また、標示変更検出部15が、現標示の遷移又は遷移の予測を検出すれば、上記の条件b)を満たしと判定できる。香り提供制御部18は、香り提供条件21を満たしたことを検出すると、香り提供条件21に規定された態様で香りを提供する。
【0062】
〔香り提供時の動作手順〕
図6(a)は、車両用香り提供装置100による香り提供の手順を示すフローチャート図の一例である。図6(a)のフローチャート図の手順は例えばイグニッションがオンになるとサイクル時間毎に繰り返し実行される。
【0063】
信号停止検出部16は車両が停止すると、それが信号機の赤標示又は黄標示によるものか否かを判定する(S10)。
【0064】
信号機の赤標示又は黄標示による停止でない場合(S10のNo)、例えば、駐車場や路側帯に駐車した場合、渋滞により停止した場合は、香りを提供することなく処理を終了する。
【0065】
信号機の赤標示又は黄標示により停止した場合(S10のYes)、標示変更検出部15は信号機の標示が「赤」から「青」に遷移したこと又は遷移することが予測されるか否かを判定する(S20)。この判定は、満たされるまで繰り返される。
【0066】
そして、信号機の標示が「赤」から「青」に遷移したこと又は遷移することが予測された場合(S20のYes)、香り提供制御部18は香り提供条件21が満たされたと判定し、運転者に香りを提供する(S30)。この香りは、例えばボルネオールであり覚醒作用のあるものである。
【0067】
例えば、「赤」から「青」に遷移する数秒前に香りを提供することで、香りを深呼吸する時間が十分に取れる。したがって、好ましくは、「赤」から「青」に遷移する数秒前となったことを信号情報から検出する。遷移したことを検出した場合でも、先頭車両でなければ発進までは時間があるので、香りを深呼吸する時間を十分とることができる。
【0068】
以上のように、本実施例の車両用香り提供装置100は、信号が「赤」から「青」に遷移する際香りを提供することで、運転者に信号が遷移したこと又は遷移することを報知し注意を促すことができ、また、発車の直前に香りを提供することで、認知・判断・操作を繰り返す緊張の前に香りを提供することとなり、深呼吸しやすくできる。したがって、香りが最大限作用することが期待できる。
【0069】
〔香り提供手順の変形例〕
図6(a)の手順では信号機の標示が「赤」から「青」に遷移したこと又はその予測をトリガーに香りを提供したが、「青」に遷移しても車両がすぐには発進しない場合は香りの提供を発車直前まで遅らせることが好ましい。例えば車両が発進後、右折する場合、対向車線の車両が直進するまで自車両は発車できないが、信号の遷移により香りが提供され、これにつられて発進することは好ましくない。このため、車両が右折する際は、右折の直前に香りを提供することが好ましい。
【0070】
図6(b)に示すフローチャート図は右折直前に香りを提供する手順である。ステップS20までは図6(a)と同様なので省略する。
【0071】
ステップS20で信号機の標示が「赤」から「青」に遷移したこと又は遷移することが予測された場合(S20のYes)、香り提供制御部18は自車両が右折するか否かを判定する(S25)。右折するか否かは、位置情報と地図情報、目的地までの経路における右折地点か否か、及び、右ウィンカが操作されこと、の1以上を組み合わせて判定される。
【0072】
そして、自車両が右折する場合(S25のYes)、香り提供制御部18は右折の直前に香りを提供する(S31)。右折の直前であることは、例えば、先行車両との車間距離が増大したこと、信号情報から右折専用の信号が「青」になったこと、また、先頭で停止している場合(先行車両がない)は車速が増大したことや現標示が「青」から「黄」に遷移したこと、から検出される。したがって、右折する際に香り提供を遅らせることで、右折特有のタイミングで香りを提供できる。
【0073】
なお、本実施例では、「赤」から「青」に遷移するタイミングで香りを提供したが、「青」から「赤」に遷移するタイミングで香りを提供してもよい。この香りは例えば鎮静作用のあるαビネンであり、これにより停止により生じるストレスを緩和しやすくなる。
【0074】
また、この逆に、「青」から「赤」又は「黄」に遷移するタイミングで覚醒作用のある香り成分(例えばボルネオール)を、「赤」から「青」に遷移するタイミングで沈静作用のある香り成分(例えばαビネン)を提供してもよい。覚醒作用のある香りにより「青」から「赤」又は「黄」に信号が遷移する際には注意を喚起することができ、沈静作用のある香りにより「赤」から「青」に信号が遷移する際には深呼吸を促すことができる。
【0075】
また、本実施例では、信号機の標示が遷移するタイミング以外で香りを提供するか否かを説明していないが、例えば、同じ香りは同じ条件(例えば「赤」から「青」に遷移するタイミング)でのみ提供することで、香りと行動の条件付けが容易になり香りの作用を向上させると考えられる。
【実施例2】
【0076】
本実施例では、実施例1の提供タイミングに加え、さらに香りを提供するタイミングを追加した車両用香り提供装置100について説明する。
図7は、車両用香り提供装置100による香り提供のタイミングを模式的に説明する図の一例である。車両用香り提供装置100を搭載した車両が、赤信号により停止する。この際、車両用香り提供装置100は、信号停止が所定時間以上である場合に、鎮静作用のある香りを香り提供部20から提供する。したがって、少なくとも信号停止による緊張やストレスを低減できる。
【0077】
信号停止が所定時間以上であることは、車両の停止前と後のどちらでも検出可能であるので、香りは車両の停止前にも提供できる。好ましくは、香り提供のタイミングを例えば停止する直前、直後、又は、停止後所定時間(例えば、1〜2秒)に統一することで乗員は、同じタイミングで信号停止が長いか否かを把握できるので、情報としての伝達性が向上する。
【0078】
そして、実施例1と同様に、車両用香り提供装置100は、信号が「赤から青に遷移した(する)こと」を検出すると、鎮静作用のある香りとは異なる香りを香り提供部20から提供する。すなわち、香りにより信号の変化を報知することができる。
【0079】
また、信号停止中と発車直前とで異なる香りを提供することで、香りに対する慣れを防止し、停止中は香りA、発進直前は香りBという、香りと行動の対応付けを可能にし、香りをより効果的に作用させることができる。なお、停止中に香りを提供するので深呼吸を促しやすく、発進直前に深呼吸を促しやすいという点は実施例1と同様である。
【0080】
本実施例の香り提供条件21について説明する。図8は、本実施例の香り提供条件21の一例である。異なる香りを異なる条件で提供するので、2つの条件が規定されている。a1)b)については実施例1の図5(a)のa)b)と同様である。香り提供条件21にそれぞれ異なる香りを対応づけることで、所望のタイミングでそれぞれ香りを提供でき、2つの香りの作用を互いに際だたせることができる。
【0081】
〔香り提供手順〕
図9は、車両用香り提供装置100による香り提供の手順を示すフローチャート図の一例である。なお、車両用香り提供装置100の機能ブロック図は図3と同様なので省略する。図9のフローチャート図の手順は例えばイグニッションがオンになるとサイクル時間毎に繰り返し実行される。
【0082】
まず、信号停止検出部16は車両が停止すると、それが信号機の赤標示又は黄標示によるものか否かを判定する(S10)。判定方法は、実施例1と同様である。
【0083】
信号機の赤標示又は黄標示により停止した場合(S10のYes)、継続停止判定部17は信号停止が所定時間以上と予測されるか否かを判定する(S120)。信号停止時間は、路車間通信により受信した信号情報に含まれる残遷移時間と等しい。したがって、信号情報に残遷移時間やサイクル時間が含まれる場合はこれを用いて信号停止が所定時間以上と予測されるか否かを判定できる。
【0084】
一方、残遷移時間やサイクル時間が取得できない場合、継続停止判定部17は以下の条件の1以上を組み合わせて信号停止が所定時間以上と予測されるか否かを判定する。
・停止位置が信号機から距離L未満(信号付近での停止)
停止位置が信号機に近い場合、信号が「赤」に遷移してからの経過時間が短い場合があるため、この条件から信号停止が長めになると予測できる。信号機から距離L未満か否かは、自車両の位置情報及び地図情報から判定できる。
・右折レーンでの停車
右折レーンからの発進は対向レーンの直進の後になるので、信号停止が長めになると予測できる。右折レーンに停止しているか否かは、自車両の位置情報及び地図情報、並びに、右ウィンカの操作状態の少なくとも一方から判定できる。
・自車両の道路が優先道路と交差している交差点での停車
優先道路は優先的に車両を走行させる道路なので、優先道路と交差して道路の自車両は信号が赤標示を維持する時間も長い。このため、信号停止が長めになると予測できる。本実施例の優先道路は、法令上の優先道路と必ずしも一致しておらず、相手側道路の幅員が自車両の道路よりも広い場合だけでなく、例えば、交差している道路が2車線以上の道路、交差する道路が上下に分離した道路(自車両の道路が立体交差の下側を通過する場合)、等を含む。したがって、ステップS120の「信号停止が所定時間以上と予測される」には、「ある程度長いと予測される場合」を含む。
【0085】
継続停止判定部17は、例えばこのような3つの条件を1つでも満たすと、信号停止が長めになると予測する。そして、判定結果を受けて香り提供制御部18は香りAを提供する(S130)。香りAは鎮静作用をもたらす香り、例えばαビネンである。
【0086】
香りAを提供した後、標示変更検出部15は、実施例1と同様に、信号機の標示が「赤」から「青」に遷移したこと又は遷移することが予測されるか否かを判定し(S20)、「赤」から「青」に遷移したこと又は遷移することが予測されると、香り提供制御部は香りAとは異なる香りBを提供する(S30)。この香りは、例えばボルネオールであり覚醒作用のあるものである。なお、実施例1と同様に右折時には香りBの提供タイミングを遅らせてもよい。香りAと香りBは異なっていればよく、どちらも沈静作用又は覚醒作用の香りであってもよい。また、香りBは香りAよりも強くしてもよい。こうすることで、信号の遷移の把握又は遷移することの予測を運転者がしやすくなる。
【0087】
より好ましくは、香りAを吐出後、所定時間内に香りBを吐出することで、嗅覚による香りの識別が容易になり、香りBの作用を香りBを単一で吐出するよりも高まることが期待できる。
【0088】
以上のように、本実施例の車両用香り提供装置100は、異なる香りを組み合わせて提供することで、香りへの慣れを抑制しより香りの作用を高めることができる。また、香りAを鎮静作用のあるもの、香りBを覚醒作用のあるものとすることで、信号停止中の緊張やストレスを低減でき、発進時の集中力を向上させることができる。また、信号の変化を香りの提供で報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】各種の香りが低減する肉体的疲労・精神的疲労の程度の一例を示す図である。
【図2】車両用香り提供装置による香り提供のタイミングを模式的に説明する図の一例である。
【図3】車両用香り提供装置の機能ブロック図の一例である。
【図4】香り提供部の一例を模式的に示す図ある。
【図5】香り提供条件、香り提供記録の一例を示す図である。
【図6】車両用香り提供装置による香り提供の手順を示すフローチャート図の一例である。
【図7】車両用香り提供装置による香り提供のタイミングを模式的に説明する図の一例である(実施例2)。
【図8】香り提供条件の一例を示す図である(実施例2)。
【図9】車両用香り提供装置による香り提供の手順を示すフローチャート図の一例である(実施例2)。
【符号の説明】
【0090】
13 信号情報取得部
15 標示変更検出部
16 信号停止検出部
17 継続停止判定部
18 香り提供制御部
19 香り提供条件設定部
20 香り提供部
21 香り提供条件
100 車両用香り提供装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の嗅覚を刺激するよう人工的に調整された香り成分を吐出する車両用香り提供装置において、
香り成分を吐出する香り提供手段と、
信号機の現標示情報又は次の標示に遷移するまでの残遷移時間の少なくとも一方を含む信号情報を取得する信号情報取得手段と、
前記信号情報に基づき、信号機の現標示が遷移したことを検出し、又は、所定時間内に現標示が遷移することを予測する標示変更検出手段と、
信号機の現標示が遷移したこと、又は、所定時間内に現標示が遷移することが予測されたことをトリガーに、前記香り提供手段から香り成分を吐出する香り提供制御手段と、
を有することを特徴とする車両用香り提供装置。
【請求項2】
自車両が信号機の標示により停止すること又は停止したことを検出する信号停止検出手段と、
停止時間が所定時間以上であるか否かを判定する継続停止判定手段と、を有し、
前記香り提供制御手段は、停止時間が所定時間以上である場合、前記香り提供手段から香り成分Aを吐出し、
自車両が停止後、信号機の現標示が遷移したこと、又は、所定時間内に現標示が遷移することが予測されたことをトリガーに、香り成分Aとは異なる香り成分Bを吐出する、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用香り提供装置。
【請求項3】
自車両が右折することを検出した場合、前記香り提供制御手段は、信号機の現標示が遷移したことが検出されるか又は所定時間内に現標示が遷移することが予測されても、右折の直前まで香り成分の吐出を遅らせる、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用香り提供装置。
【請求項4】
前記信号情報取得手段により、信号機の現標示が青から赤に遷移すること又は遷移したことが検出された場合、前記香り提供制御手段は、覚醒作用のある香り成分を香り提供手段から吐出し、
信号機の現標示が赤から青に遷移すること又は遷移したことが検出された場合、鎮静作用のある香り成分を香り提供手段から吐出する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用香り提供装置。
【請求項5】
前記香り提供制御手段は、香り成分の過去の提供頻度を記録した香り提供記録を有し、前記提供頻度に基づき、所定時間における香り成分の吐出量が同程度になるように、次回の香り成分の吐出量を調整する、
ことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の車両用香り提供装置。
【請求項6】
前記標示変更検出手段は、信号機の現標示が進行禁止から進行可能に遷移したことを検出し、又は、所定時間内に進行禁止から進行可能に遷移することを予測する、
ことを特徴とする請求項1記載の車両用香り提供装置。
【請求項7】
香り成分Aは鎮静作用のある香り成分であり、香り成分Bは覚醒作用のある香り成分である、
ことを特徴とする請求項2記載の車両用香り提供装置。
【請求項8】
乗員の嗅覚を刺激するよう人工的に調整された香り成分を吐出する車両用香り提供方法において、
人工的に調整された香り成分を吐出する車両用香り提供方法において、
信号機の現標示情報又は次の標示に遷移するまでの残遷移時間の少なくとも一方を含む信号情報を取得するステップと、
前記信号情報に基づき、信号機の現標示が遷移したことを検出し、又は、所定時間内に現標示が遷移することを予測するステップと、
信号機の現標示が遷移したこと、又は、所定時間内に現標示が遷移することが予測されたことをトリガーに、香り成分を吐出する香り提供手段から香り成分を吐出するステップと、
を有することを特徴とする車両用香り提供方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−111315(P2010−111315A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286766(P2008−286766)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】