説明

車両用駆動装置の制御装置

【課題】エンジンと走行用電動機と触媒装置とを備えた車両用駆動装置において、触媒装置の暖機終了時におけるエンジン出力変動を抑えエミッション悪化を軽減することができる車両用駆動装置の制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン14が触媒装置76を暖機するための予め定められた暖機用駆動状態となるようにエンジン出力制限を行いつつエンジン14で触媒装置76を暖機する触媒暖機制御は、触媒温度TEMPCATが前記触媒温度判定値TEMP1CATよりも高くなり、且つ、ユーザ要求パワーP0*が予め定められた前記ユーザ要求パワー判定値P01*よりも小さい場合に終了する。従って、触媒暖機制御の終了時においてユーザ要求パワーP0*が抑えられており、それに応じたエンジン出力Peが低くなるので、触媒暖機制御の終了時におけるエンジン出力Peの一時的変動が抑えられることとなり、エミッション悪化を軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エンジンの排気を浄化する触媒を暖機するための制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気を浄化するするため、エンジンの排気経路に三元触媒などの触媒装置が設けられている。そのような車両用の触媒装置に良好な排気浄化機能を発揮させるためには、その触媒装置をある程度以上の高温にする必要があることが従来から知られている。そこで、エンジンと電動機と触媒装置とを備えた車両用駆動装置において、前記エンジンの冷間始動時には前記触媒装置を暖機するためにエンジン出力を調節する車両用駆動装置の制御装置が、よく知られている。例えば、特許文献1に開示されたハイブリッド車用の制御装置がそれである。その特許文献1の制御装置は、前記触媒装置が所定の暖機状態に達するまでエンジン出力を所定の暖機用出力に維持する。そして、前記触媒装置が所定の暖機状態に達した後は、エンジン出力の上昇速度に所定の制限を課した上で運転者の要求に応じてエンジン出力を増大させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−130030号公報
【特許文献2】特開2005−320911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の制御装置は、前記触媒装置が所定の暖機状態に達した後においてエンジン出力の上昇速度に所定の制限を課することで、触媒装置の暖機終了時のエンジンの作動状態が大きく乱れることを防止するものであるが、未だ十分とは言えず、運転者の要求に基づくエンジンの出力変動によって、エミッションが悪化する可能性が考えられた。なお、このような課題は未公知である。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、エンジンと走行用電動機と触媒装置とを備えた車両用駆動装置において、触媒装置の暖機終了時におけるエンジン出力変動を抑えエミッション悪化を軽減することができる車両用駆動装置の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a)走行用の動力を出力するエンジンと、走行用の動力を出力する走行用電動機と、前記エンジンの排気系に設けられそのエンジンの排気を浄化する触媒装置とを備えた車両用駆動装置において、運転者が車両走行で要求するユーザ要求パワーが得られるように前記エンジンと前記走行用電動機とを駆動する車両用駆動装置の制御装置であって、(b)前記触媒装置の温度が予め定められた触媒温度判定値以下である場合には、前記エンジンが前記触媒装置を暖機するための予め定められた暖機用駆動状態となるようにエンジン出力制限を行いつつそのエンジンでその触媒装置を暖機する触媒暖機制御を実行し、(c)前記ユーザ要求パワーが予め定められたユーザ要求パワー判定値よりも小さい場合もしくはそのユーザ要求パワーが得られるように前記エンジンに対し要求されるエンジン要求パワーが予め定められたエンジン要求パワー判定値よりも小さい場合であって、且つ、前記触媒装置の温度が前記触媒温度判定値よりも高くなった場合に、前記触媒暖機制御を終了することにある。
【発明の効果】
【0007】
このようにすれば、前記触媒装置の温度だけに基づいて前記触媒暖機制御でのエンジン出力制限が解除されるとすればその解除時の前記ユーザ要求パワーもしくは前記エンジン要求パワーに応じて瞬間的(一時的)にエンジン出力が大きくなることがあり得るところ、前記エンジン出力制限は、前記ユーザ要求パワーもしくは前記エンジン要求パワーがある程度小さい場合に解除されるので、そのエンジン出力制限の解除時(触媒暖機制御の終了時)に瞬間的にエンジン出力が大きくなるとしてもそのエンジン出力の変動幅がある程度抑えられることになる。そのため、エンジン出力制限の解除時すなわち触媒暖機制御の終了時におけるエンジン出力の一時的変動が抑えられることとなり、エミッション悪化を軽減することができる。なお、エミッションとは車両の排出ガスのことであり、エミッションの悪化とは、その排出ガスに含まれる一酸化炭素(CO),炭化水素(HC),窒素酸化物(NOX)等の有害物質の割合が高くなることである。また、上記排出ガスに含まれる有害物質の割合が低くなることをエミッションの改善という。また、前記ユーザ要求パワーは運転者が車両走行で要求する出力であるが、その運転者が車両走行で要求する出力に加えエアコン等の補機類による負荷が加味された車両システム全体での要求出力であっても差し支えない。
【0008】
ここで、好適には、(a)前記暖機用駆動状態とは前記触媒装置を暖機するための予め定められた一定値である暖機用エンジン出力を目標として前記エンジンが駆動される状態であり、(b)前記触媒暖機制御では、エンジン出力が前記暖機用エンジン出力に維持されるように前記エンジンを駆動することで前記エンジン出力制限を行う。このようにすれば、前記触媒装置の暖機完了前においてエンジンの排気を浄化する能力が十分に高まっていなくても、エンジン出力が略一定に保たれているのでエンジンから触媒装置に供給される排気中の前記有害物質の割合が低くなり、前記触媒暖機制御の実行中におけるエンジンの排気を十分に浄化して排出することが可能である。なお、前記暖機用エンジン出力は一定値であるが、この一定とは厳密に同一値が継続することを意味するのではなく、上記暖機用エンジン出力に一定とみなせる程度の僅かな変動があっても、それは上記暖機用エンジン出力が一定値であることに含まれる。また、上記暖機用エンジン出力は上記触媒暖機制御の実行中において終始一定値であるという必要はない。
【0009】
また、好適には、前記触媒暖機制御では、エンジン回転速度が前記暖機用エンジン出力に基づく一定の目標エンジン回転速度になるように、且つ、エンジントルクが前記暖機用エンジン出力に基づく一定の目標エンジントルクになるように、前記エンジンを駆動する。このようにすれば、エンジン出力を一定になるようにしつつもエンジン回転速度またはエンジントルクが変動する場合と比較して、エンジンから触媒装置に供給される排気中の前記有害物質の割合が一層低くなり、前記触媒暖機制御の実行中におけるエンジンの排気を更に十分に浄化して排出することが可能である。なお、前記暖機用エンジン出力に基づく目標エンジン回転速度は一定であるとされているが、この一定とは厳密に同一値が継続することを意味するのではなく、その目標エンジン回転速度に一定とみなせる程度の僅かな変動があっても、それはその目標エンジン回転速度が一定であることに含まれる。上記暖機用エンジン出力に基づく目標エンジントルクに関しても同様である。また、上記目標エンジン回転速度および上記目標エンジントルクはそれぞれ前記触媒暖機制御の実行中において終始一定であるという必要はない。
【0010】
また、好適には、前記触媒暖機制御では、前記触媒装置の一部が活性化していると判断するための所定条件が成立するまでは、その所定条件が成立していないときの前記触媒装置の浄化能力の範囲内の第1所定エンジン動作点を目標のエンジン動作点として前記エンジンを継続して運転し、前記所定条件が成立した以降は、その所定条件が成立しているときの前記触媒装置の浄化能力の範囲内かつ前記第1所定エンジン動作点に比してエンジン出力が大きくなる範囲内の第2所定エンジン動作点を目標のエンジン動作点として前記エンジンを継続して運転する。このようにすれば、前記触媒装置の温度が前記触媒温度判定値以下である触媒装置の暖機完了前において前記エンジンの動作点(運転点)が頻繁に変更されることによるエミッション悪化の原因(例えば、エンジンの燃焼の安定性が悪化する等)を発生させにくくしつつ前記触媒装置を暖機することができる。更に、前記所定条件が成立すればエンジン出力が上記触媒装置の浄化能力の範囲内で引き上げられるので、前記触媒暖機制御の実行中に前記エンジンが終始、前記第1所定エンジン動作点を目標のエンジン動作点として運転される場合と比較して、早期に前記触媒装置の暖機を完了することが可能である。なお、前記エンジン動作点とはエンジン回転速度及びエンジントルクなどで示されるそのエンジンの動作状態を示す動作点である。
【0011】
また、好適には、前記所定条件は、前記触媒装置の温度がその触媒装置の一部が活性化していると想定される予め定められた活性化判定温度以上になった場合に成立する。なお、その活性化判定温度は前記触媒温度判定値よりも低い。
【0012】
また、好適には、前記車両用駆動装置は、前記エンジンと駆動輪との間の動力伝達を遮断可能な動力伝達遮断装置を備えている。このようにすれば、車両走行中または停車中に拘らず、エンジンを駆動して前記触媒暖機制御を実行することが可能である。
【0013】
また、好適には、前記動力伝達遮断装置は、前記エンジンと前記駆動輪との間の動力伝達経路の一部を構成し差動用電動機が制御されることにより差動状態が制御される差動機構である。このようにすれば、上記差動用電動機の制御により上記エンジンと上記駆動輪との間の動力伝達を遮断することができる。また、上記差動用電動機の制御によりエンジンの回転速度を任意に設定しつつ、前記触媒暖機制御の実行中におけるエンジン出力の一部又は全部を駆動輪に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明が適用される車両用駆動装置を説明するための骨子図である。
【図2】図1の車両用駆動装置を制御するための電子制御装置に入力される信号及びその電子制御装置から出力される信号を例示した図である。
【図3】図1の車両用駆動装置が有するエンジンの構成を説明するための概略構成図である。
【図4】図2の電子制御装置に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図5】図1の車両用駆動装置において、ユーザ要求パワーを算出するために用いられる要求トルクマップを例示した図である。
【図6】図1の車両用駆動装置においてエンジン制御に用いられる最適燃費率曲線と、触媒暖機制御において設定される第1所定エンジン動作点及び第2所定エンジン動作点とを説明するための図である。
【図7】図2の電子制御装置の制御作動の要部、すなわち、触媒暖機制御の実行開始から終了までの制御作動を説明するためのフローチャートである。
【図8】図7のフローチャートで実行される触媒暖機制御を説明するためのタイムチャートである。
【図9】図7のSA4におけるユーザ要求パワーに関する判断がエンジン要求パワーに関する判断に置き換えられた場合の制御作動を説明するための図であって、そのSA4に替わるステップを抜粋した図である。
【図10】図1に示す車両用駆動装置とは構成が異なる本発明が適用されたパラレルハイブリッド車両の概略構成を説明するための図である。
【図11】図1に示す車両用駆動装置とは構成が異なる本発明が適用されたパラレルハイブリッド車両の概略構成を説明するための、図10とは別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明が適用される車両用駆動装置8を説明するための骨子図である。図1に示すように、車両用駆動装置8は、走行用の動力を出力するエンジン14と、そのエンジン14と駆動輪40(図4参照)との間に介装された車両用動力伝達装置10(以下、「動力伝達装置10」という)とを備えている。動力伝達装置10はエンジン14からの駆動力を駆動輪40に伝達するトランスアクスルである。そして、動力伝達装置10は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスアクスル(T/A)ケース12(以下、「ケース12」という)内において、エンジン14側から順番に、そのエンジン14の出力軸15(例えばクランク軸)に作動的に連結されてエンジン14からのトルク変動等による脈動を吸収するダンパー16、そのダンパー16を介してエンジン14によって回転駆動させられる入力軸18、第1電動機M1、動力分配機構として機能する第1遊星歯車装置20、減速装置として機能する第2遊星歯車装置22、および、駆動輪40に動力伝達可能に連結された走行用の動力を出力する第2電動機M2を備えている。
【0017】
この動力伝達装置10は、例えば前輪駆動すなわちFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型の車両6の前方に横置きされ、駆動輪40を駆動するために好適に用いられるものである。動力伝達装置10では、エンジン14の動力がカウンタギヤ対32の一方を構成する動力伝達装置10の出力回転部材としての出力歯車24からカウンタギヤ対32、ファイナルギヤ対34、差動歯車装置(終減速機)36および一対の車軸38等を順次介して一対の駆動輪40へ伝達される(図4参照)。このように、本実施例では、入力軸18とエンジン14とはダンパー16を介して作動的に連結されており、エンジン14の出力軸15がエンジン14の出力回転部材であることはもちろんであるが、この入力軸18もエンジン14の出力回転部材に相当する。
【0018】
入力軸18は、両端がボールベアリング26および28によって回転可能に支持されており、一端がダンパー16を介してエンジン14に連結されることでエンジン14により回転駆動させられる。また、他端には潤滑油供給装置としてのオイルポンプ30が連結されており入力軸18が回転駆動されることによりオイルポンプ30が回転駆動させられて、動力伝達装置10の各部例えば第1遊星歯車装置20、第2遊星歯車装置22、ボールベアリング26、および28等に潤滑油が供給される。
【0019】
第1遊星歯車装置20は、エンジン14と駆動輪40との間の動力伝達経路の一部を構成する差動機構である。具体的に、第1遊星歯車装置20は、シングルピニオン型の遊星歯車装置であり、第1サンギヤS1、第1ピニオンギヤP1、その第1ピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、および、第1ピニオンギヤP1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素(要素)として備えている。第1遊星歯車装置20のギヤ比ρ0は、第1サンギヤS1の歯数をZS1とし第1リングギヤR1の歯数をZR1とすれば、「ρ0=ZS1/ZR1」で算出される。
【0020】
そして、第1遊星歯車装置20は、入力軸18に伝達されたエンジン14の出力を機械的に分配する機械的な動力分配機構であって、エンジン14の出力を第1電動機M1および出力歯車24に分配する。つまり、この第1遊星歯車装置20においては、第1回転要素としての第1キャリヤCA1は入力軸18すなわちエンジン14に連結され、第2回転要素としての第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第3回転要素としての第1リングギヤR1は出力歯車24すなわちその出力歯車24に作動的に連結された駆動輪40に連結されている。これより、第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1は、それぞれ相互に相対回転可能となることから、エンジン14の出力が第1電動機M1および出力歯車24に分配されると共に、第1電動機M1に分配されたエンジン14の出力で第1電動機M1が発電され、その発電された電気エネルギが蓄電されたりその電気エネルギで第2電動機M2が回転駆動されるので、動力伝達装置10は、例えば無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、第1遊星歯車装置20の差動状態が第1電動機M1により制御されることにより、エンジン14の所定回転に拘わらず出力歯車24の回転が連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。また、第1遊星歯車装置20では、第1電動機M1が無負荷状態とされて空転させられることで第1キャリヤCA1と第1リングギヤR1との間の動力伝達が遮断されるので、第1遊星歯車装置20は、エンジン14と駆動輪40との間の動力伝達を遮断可能な動力伝達遮断装置としても機能する。
【0021】
第2遊星歯車装置22は、シングルピニオン型の遊星歯車装置である。第2遊星歯車装置22は、第2サンギヤS2、第2ピニオンギヤP2、その第2ピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、および、第2ピニオンギヤP2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を回転要素として備えている。なお、第1遊星歯車装置20のリングギヤR1および第2遊星歯車装置22のリングギヤR2は一体化された複合歯車となっており、その外周部に出力歯車24が設けられている。
【0022】
この第2遊星歯車装置22においては、第2キャリヤCA2は非回転部材であるケース12に連結されることで回転が阻止され、第2サンギヤS2は第2電動機M2に連結され、第2リングギヤR2は出力歯車24に連結されている。すなわち、第2電動機M2は出力歯車24と第1遊星歯車装置20のリングギヤR1とに第2遊星歯車装置22を介して連結されている。これにより、例えば発進時などは第2電動機M2が回転駆動することにより、第2サンギヤS2が回転させられ、第2遊星歯車装置22によって減速させられて出力歯車24に回転が伝達される。
【0023】
本実施例の第1電動機M1及び第2電動機M2は何れも、発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、差動用電動機として機能する第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、走行用電動機として機能する第2電動機M2は車両6の駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。更に、第1電動機M1と第2電動機M2とは相互に電力授受可能に構成されている。
【0024】
図2は、本実施例の車両用駆動装置8を制御するための制御装置として機能する電子制御装置80に入力される信号及びその電子制御装置80から出力される信号を例示している。この電子制御装置80は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン14、第1電動機M1、第2電動機M2に関するハイブリッド駆動制御等の車両制御を実行するものである。
【0025】
電子制御装置80には、図2に示すような各センサやスイッチなどから、エンジン14のシリンダブロックに設けられたエンジン水温センサ51からのエンジン水温TEMPWを表す信号、エンジン14の回転速度であるエンジン回転速度Neを表すエンジン回転速度センサ50からの信号、出力歯車24の回転速度NOUT(以下、「出力回転速度NOUT」という)に対応する車速Vを表す車速センサ52からの信号、フットブレーキ操作を表す信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダル41(図3参照)の操作量であるアクセル開度Accを表すアクセル開度センサ42からの信号、電子スロットル弁72(図3参照)のスロットル弁開度θTHを表すスロットル弁開度センサ43からの信号、車両6の前後加速度Gを表す信号、各車輪(すなわち駆動輪40に従動輪を加えた各車輪)の車輪速を表す信号、第1電動機M1の回転速度NM1(以下、「第1電動機回転速度NM1」という)を表す信号、第2電動機M2の回転速度NM2(以下、「第2電動機回転速度NM2」という)を表す信号、蓄電装置56(図4参照)の温度である蓄電装置温度THBATを表す蓄電装置温度センサからの信号、蓄電装置56の充電または放電電流ICDを表す信号、蓄電装置56の電圧VBATを表す信号、蓄電装置56の充電残量(充電状態)SOCを表す信号、シフトレバーの操作位置(操作ポジション)POPEを検出する為の位置センサであるレバー操作位置センサ48からの操作ポジションPOPEに応じたシフトレバー位置信号、エンジン14の排気管66(図3参照)に設けられ排気中の空燃比の状態を検出する空燃比センサ44からの上記排気中の空燃比を表す信号、触媒装置76の所定部位(例えば、略中央部など)の温度を検出できるように設けられた触媒温度センサ45により検出される触媒装置76の温度TEMPCAT(以下、触媒温度TEMPCATという)を表す信号等が、それぞれ供給される。
【0026】
また、電子制御装置80からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御のための制御信号例えばエンジン14の吸気管64に備えられた電子スロットル弁72のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ74への駆動信号や燃料噴射装置68による吸気管64或いはエンジン14の筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置70によるエンジン14の点火時期を指令する点火信号、各電動機M1,M2の作動を指令する指令信号等が、それぞれ出力される。
【0027】
図3は、車両用駆動装置8が有するエンジン14の構成を説明するための概略構成図である。エンジン14は、例えば自動車用のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であればよいが、本実施例では、自動車用ガソリンエンジンである。図3に示すように、エンジン14は、シリンダヘッドとピストン60との間に設けられた燃焼室62と、燃焼室62の吸気ポートに接続された吸気管64と、燃焼室62の排気ポートに接続された排気管66と、シリンダヘッドに設けられ燃焼室62に吸入される吸気に燃料を噴射供給する燃料噴射装置68と、燃料噴射装置68により噴射供給された燃料と吸入された空気とから構成される燃焼室62内の混合気に点火する点火装置70とを備えている。
【0028】
吸気管64内には、その上流部分に電子スロットル弁72が設けられており、その電子スロットル弁72はスロットルアクチュエータ74により開閉作動させられる。その電子スロットル弁72の開度θTH(スロットル弁開度θTH)は、基本的には、アクセル開度Accが増加するほど増加するように制御され、スロットル弁開度θTHの増加に伴いエンジン14に吸入される吸入空気量Qも増加する。上記吸入空気量Q(単位は例えば「g/sec」または「g/rev」)は、エンジン14が単位時間当たりに吸入する空気の重量、または、エンジン14が1回転当たりに吸入する空気の重量である。
【0029】
このエンジン14では、吸気管64から燃焼室62に吸入される吸入空気に燃料噴射装置68から燃料が噴射供給されて混合気が形成され、燃焼室62内でその混合気が点火装置70により点火されて燃焼する。これにより、エンジン14は駆動され、燃焼後の上記混合気は排気として排気管66内へと送り出される。
【0030】
エンジン14の排気系、具体的にはそのエンジン14の排気管66内に、エンジン14の排気を浄化する触媒装置76が設けられている。例えば、その触媒装置76は排気マニホールドの直ぐ下流に配設されている。触媒装置76は、例えばよく知られた三元触媒等から構成された触媒コンバータであり、エンジン14の排気に含まれる一酸化炭素(CO),炭化水素(HC),窒素酸化物(NOX)などの有害物質をその排気から除去又は削減して浄化する。すなわち、燃焼室62から排気管66内へと送り出された燃焼後の排気は、触媒装置76を経ることにより浄化され、マフラー等を経て大気中に放出される。また、触媒装置76はその特性から定まる所定温度(例えば400℃程度)以上において良好な排気浄化機能を発揮するものである。そこで、冷間時における触媒装置76は、前記燃焼後の排気が高温であるので、エンジン14が駆動されその排気が通過させられることにより暖機され、上記良好な排気浄化機能を発揮する温度にまで高められる。
【0031】
図4は、電子制御装置80に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図4に示すように、電子制御装置80は、ハイブリッド制御部としてのハイブリッド制御手段82と、触媒暖機制御実施条件判断部としての触媒暖機制御実施条件判断手段90と、触媒温度判断部としての触媒温度判断手段92と、要求パワー判断部としての要求パワー判断手段94とを備えている。そして、ハイブリッド制御手段82は、触媒暖機制御部としての触媒暖機制御手段98を備えている。
【0032】
図4において、ハイブリッド制御手段82は、エンジン14を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン14と第2電動機M2との駆動力の配分や第1電動機M1の発電による反力を最適になるように変化させて、電気的な無段変速機として機能する第1遊星歯車装置20の変速比γ0(=入力軸18の回転速度/出力歯車24の回転速度)を制御する。例えば、ハイブリッド制御手段82は、エンジン駆動制御手段として機能して、車速V及びアクセル開度Accを逐次検出しており、上記変速比γ0を制御する際そのときの走行車速Vにおいて、車両6の目標(要求)出力P0*すなわち運転者が車両走行で要求するユーザ要求パワーP0*(単位は例えばkW)をアクセル開度Accおよび車速Vに基づいて逐次算出する。そのユーザ要求パワーP0*は、更に蓄電装置56に対して充放電を行う充電制御における充電要求値、及びエアコン等の補機による負荷等を加味した上で決定されるのが好ましい。そして、ハイブリッド制御手段82は、その算出した目標出力(ユーザ要求パワー)P0*が得られるように、エンジン出力Peの目標値である目標エンジン出力Pe*(単位は例えばkW)言い換えればエンジン14に対し要求されるエンジン要求出力(エンジン要求パワー)Pe*と第2電動機M2に対し要求される第2電動機要求パワーとを逐次決定する。例えば、ハイブリッド制御手段82は、燃費性能と走行性能とを両立できるように予め実験的に定められた関係から、車速V及びアクセル開度Acc等で示される車両状態とユーザ要求パワーP0*とに基づいて上記エンジン要求パワーPe*と上記第2電動機要求パワーとをそれぞれ決定する。すなわち、第2電動機M2のアシストトルク等を加味した上でエンジン要求パワーPe*を決定する。上記ユーザ要求パワーP0*は、例えば、出力歯車24の回転軸心まわりの要求トルクTr*を、図5に示すような予め実験的に定められた要求トルクマップからアクセル開度Accおよび車速Vに基づいて導出し、その要求トルクTr*に出力回転速度NOUTを乗じたものに損失等を加えることで算出できる。そして、ハイブリッド制御手段82は、予め定められた関係(マップ等)、例えば燃費性能と走行性能とを両立するように予め実験的に定められたエンジン動作曲線の一種である最適燃費率曲線LEF(図6参照)を用いて、上記エンジン要求パワーPe*が得られる目標エンジン回転速度Ne*及びエンジン14の目標出力トルクTe*(目標エンジントルクTe*)を決定し、エンジン回転速度Ne及びエンジン14の出力トルクTe(エンジントルクTe)がそれぞれ上記目標エンジン回転速度Ne*及び目標エンジントルクTe*に一致するように、エンジン14を制御するとともに第1電動機M1の発電量を制御する。そして、そのエンジン要求パワーPe*に基づくエンジン回転速度Neの制御及び第1電動機M1の発電量の制御に伴い、第1遊星歯車装置20の変速比γ0をその変速可能な変化範囲内で無段階に制御する。このようにして、ハイブリッド制御手段82は、第1電動機M1を制御することにより第1遊星歯車装置20の変速比γ0を調節しつつ、前記ユーザ要求パワーP0*が得られるようにエンジン14と第2電動機M2とを駆動する。なお、エンジン14の冷間時には後述の触媒暖機制御が実行されることがあり、その触媒暖機制御ではエンジン出力Peが制限されるが、この場合にも、ハイブリッド制御手段82は、ユーザ要求パワーP0*が得られるようにエンジン14と第2電動機M2とを駆動する。すなわち、ハイブリッド制御手段82は、その触媒暖機制御におけるエンジン出力制限を実現させつつ、エンジン出力Peのユーザ要求パワーP0*に対する不足を補い或いは余剰を吸収するように第2電動機M2を駆動することでユーザ要求パワーP0*が得られるようにする。
【0033】
ハイブリッド制御手段82は、前記第1電動機M1の発電量を制御する際、第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ54を通して蓄電装置56や第2電動機M2へ供給するので、エンジン14の動力の主要部は機械的に出力歯車24へ伝達されるが、エンジン14の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ54を通してその電気エネルギが第2電動機M2へ供給され、その第2電動機M2が駆動されて第2電動機M2から出力歯車24へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン14の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。前記蓄電装置56は、例えば、鉛蓄電池などのバッテリ(二次電池)又はキャパシタなどであって、第1電動機M1及び第2電動機M2に電力を供給し且つそれらの各電動機M1,M2から電力の供給を受けることが可能な電気エネルギ源、すなわち、第1電動機M1と第2電動機M2とのそれぞれに対し電力授受可能な電気エネルギ源ある。
【0034】
また、ハイブリッド制御手段82は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、動力伝達装置10の電気的CVT機能によって、例えば、第1電動機回転速度NM1を制御してエンジン回転速度Neを略一定に維持したり任意の回転速度に回転制御する。つまり、ハイブリッド制御手段82は、第1遊星歯車装置20を介して入力軸18(すなわちエンジン14の出力軸15)に作動的に連結される第1電動機M1をその入力軸18に動力伝達可能な駆動装置として機能させることで、第1電動機M1にエンジン14を回転駆動させる。例えば、ハイブリッド制御手段82は車両走行中にエンジン回転速度Neを引き上げる場合には、車速V(駆動輪40)に拘束される出力回転速度NOUTを略一定に維持しつつ第1電動機回転速度NM1の引き上げを実行する。
【0035】
また、ハイブリッド制御手段82は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ74によって電子スロットル弁72を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置68による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置70による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせて、必要なエンジン出力を発生するようにエンジン14の出力制御を実行する。例えば、ハイブリッド制御手段82は、通常のエンジン走行中においては、アクセル開度Accに基づいてスロットルアクチュエータ74を駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行する。このスロットル制御ではアクセル開度Accとスロットル弁開度θTHとは一対一の関係で対応する。
【0036】
また、ハイブリッド制御手段82は、エンジン14の運転を停止した状態で蓄電装置56からの電力により第2電動機M2を駆動してその第2電動機M2のみを車両6の駆動力源とするモータ走行(EV走行)を実行することができる。例えば、このハイブリッド制御手段82によるEV走行は、一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT域すなわち低エンジントルクTe域、或いは車速Vの比較的低車速域すなわち低負荷域で実行される。
【0037】
ハイブリッド制御手段82は、このEV走行時には、運転を停止しているエンジン14の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、例えば第1電動機M1を無負荷状態とすることにより空転させて、動力伝達装置10の電気的CVT機能(差動作用)により必要に応じてエンジン回転速度Neを零乃至略零に維持する。つまり、ハイブリッド制御手段82は、EV走行時には、エンジン14の運転を単に停止させるのではなく、エンジン14の回転も停止させる。ここで、本実施例で燃費とは、例えば、単位燃料消費量当たりの走行距離等であり、燃費の向上とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が長くなることであり、或いは、車両6全体としての燃料消費率(=燃料消費量/駆動輪出力)が小さくなることである。逆に、燃費の低下とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が短くなることであり、或いは、車両6全体としての燃料消費率が大きくなることである。
【0038】
また、ハイブリッド制御手段82は、車両停止中やEV走行中にエンジン14の始動を行うエンジン始動制御手段を機能的に備えている。例えば、ハイブリッド制御手段82は、第1電動機M1に通電して第1電動機回転速度NM1を引き上げることで、すなわち、第1電動機M1をスタータとして機能させることで、エンジン回転速度Neを完爆可能な所定回転速度Ne’以上に引き上げると共に、所定回転速度Ne’以上にて例えばアイドル回転速度以上の自律回転可能なエンジン回転速度Neにて燃料噴射装置68により燃料を供給(噴射)し点火装置70により点火してエンジン14を始動する。
【0039】
また、ハイブリッド制御手段82は、エンジン14を駆動力源とするエンジン走行中には、上述した電気パスによる第1電動機M1からの電気エネルギおよび/または蓄電装置56からの電気エネルギを第2電動機M2へ供給し、その第2電動機M2を駆動して駆動輪40にトルクを付与することにより、エンジン14の動力を補助するための所謂トルクアシストが可能である。
【0040】
また、ハイブリッド制御手段82は、第1電動機M1を無負荷状態として自由回転すなわち空転させることにより、動力伝達装置10がトルクの伝達を不能な状態すなわち動力伝達装置10内の動力伝達経路が遮断された状態と同等の状態であって、且つ第2電動機M2を無負荷状態として動力伝達装置10からの出力が発生されない状態とすることが可能である。すなわち、ハイブリッド制御手段82は、電動機M1、M2を無負荷状態とすることにより動力伝達装置10をニュートラル状態とすることが可能である。
【0041】
また、ハイブリッド制御手段82は、アクセルオフの車両減速走行時や制動時には車両の運動エネルギ、すなわち、駆動輪40から第2電動機M2の側へ伝達される逆駆動力により、第2電動機M2を回転駆動させて発電機として作動させ、その第2電動機M2の発電による電気エネルギをインバータ54を介して蓄電装置56へ充電する所謂回生制動を実行する回生ブレーキ制御手段として機能する。
【0042】
ところで、エンジン14の冷間時など触媒装置76が低温である場合には、エンジン14が、触媒温度TEMPCATを高めるために、すなわち触媒装置76を暖機するために駆動される。そのとき、エンジン14からの排気の量および前記有害物質の割合等が冷間時の触媒装置76の排気浄化能力を超えないように、言い換えればその排気浄化能力の範囲内となるようにエンジン出力Peが制限される。そして、触媒装置76の暖機完了後には上記エンジン出力Peの制限が解除されることになる。例えば、そのエンジン出力Peの制限解除時にユーザ要求パワーP0*が非常に大きければ、その制限解除と同時にエンジン出力Peが上記解除時のユーザ要求パワーP0*に見合った大きさに急激に高められるので、エンジン14の挙動が一時的に不安定になりエミッションが悪化する可能性が想定される。そこで、本実施例では、触媒装置76の暖機を完了するか否か、すなわちその暖機のためのエンジン出力Peの制限を解除するか否かは、触媒温度TEMPCATのみならずユーザ要求パワーP0*も加味した上で判断される。その制御機能の要部を以下にて説明する。
【0043】
触媒暖機制御実施条件判断手段90は、予め設定された触媒暖機制御実施条件が成立したか否かを判断する。その触媒暖機制御実施条件は、後述の触媒暖機制御を開始するか否かを判断するための条件であり、例えば触媒暖機制御実施条件は、(i)運転者が車両6を走行可能な状態にするために操作するイグニッションスイッチがオンであり、(ii)蓄電装置56の充電残量SOCが所定の暖機時充電残量判定値TEMP1SOC以上であり、且つ、(iii)触媒温度TEMPCATが所定の触媒温度判定値TEMP1CAT以下である場合に成立する。その触媒温度判定値TEMP1CATは、触媒装置76の排気浄化能力を高めるために暖機が必要であるか否かを判断できるように予め実験的に定められており、例えば触媒装置76全体での浄化能力(エミッション浄化能力)が立ち上がる温度(例えば400℃程度)に対して余裕(マージン)を加えた温度に設定されている。上記(ii)の条件が設けられているのは、上記触媒暖機制御の実行中にはエンジン出力制限が行われており、ユーザ要求パワーP0*を得る上で充電残量SOCの不足に起因して第2電動機M2が出力不足にならないようにするためである。従って、前記暖機時充電残量判定値TEMP1SOCは、上記触媒暖機制御の実行中において充電残量SOCの不足に起因して第2電動機M2の出力不足が生じないように予め実験的に定められている。
【0044】
なお、上記(i)〜(iii)の条件の中で、触媒温度TEMPCATに関する(iii)の条件以外の(i)および(ii)の条件はそれぞれ他の条件に置き換えられてもよいし、前記触媒暖機制御実施条件に含まれていなくても差し支えない。また、上記触媒暖機制御実施条件に上記(i)〜(iii)以外の別の条件が追加されていても差し支えない。
【0045】
触媒温度判断手段92は、触媒温度センサ45からの信号により触媒温度TEMPCATを逐次検出しており、触媒温度TEMPCATが触媒温度判定値TEMP1CATよりも高いか否かを判断する。
【0046】
要求パワー判断手段94は、ユーザ要求パワーP0*が予め定められたユーザ要求パワー判定値P01*よりも小さいか否かを判断する。ユーザ要求パワーP0*は、例えば図5に示すような前記要求トルクマップが用いられて、ハイブリッド制御手段82によりアクセル開度Accと車速Vとに基づいて逐次算出される。図5から判るように、ユーザ要求パワーP0*はアクセル開度Accが大きいほど大きく設定される。要求パワー判断手段94は、ハイブリッド制御手段82が算出するユーザ要求パワーP0*をハイブリッド制御手段82から逐次取得する。前記ユーザ要求パワー判定値P01*とは、触媒装置76の暖機完了によるエンジン出力Peの制限解除時にエンジン14の挙動が一時的に不安定にならないようにその制限解除時のユーザ要求パワーP0*を抑えるために実験的に設定された判定値であり、例えば9kW程度に設定されている。
【0047】
ここで、要求パワー判断手段94は、上記のようにユーザ要求パワーP0*に関しての判断を行うが、ユーザ要求パワーP0*に関しての判断に替えて、そのユーザ要求パワーP0*に関連して定まる関連値に関しての判断、例えば前記エンジン要求パワーPe*に関しての判断を行っても差し支えない。そのエンジン要求パワーPe*とは、ユーザ要求パワーP0*が得られるようにエンジン14に対し要求される出力(パワー)である。具体的に要求パワー判断手段94は、そのエンジン要求パワーPe*に関しての判断を行うとすれば、エンジン要求パワーPe*が予め定められたエンジン要求パワー判定値Pe1*よりも小さいか否かを判断する。そのエンジン要求パワー判定値Pe1*は前記ユーザ要求パワー判定値P01*と同様にして定められるものであり、触媒装置76の暖機完了によるエンジン出力Peの制限解除時にエンジン14の挙動が一時的に不安定にならないようにその制限解除時のエンジン要求パワーPe*を抑えるために実験的に設定される。
【0048】
触媒暖機制御手段98は、前記触媒暖機制御実施条件が成立したと触媒暖機制御実施条件判断手段90により判断された場合には、触媒装置76を暖機するためにエンジン14を駆動する触媒暖機制御を実行する。その触媒暖機制御とは、詳細に言えば、エンジン14が触媒装置76を暖機するための予め定められた暖機用駆動状態となるようにエンジン出力制限を行いつつエンジン14で触媒装置76を暖機する制御である。上記暖機用駆動状態とは、上記触媒暖機制御実行中のエンジン14の排気の量または成分(有害物質の割合など)が暖機完了前の触媒装置76の排気浄化能力を超えないように予め実験的に設定されたエンジン14の駆動状態である。具体的には、触媒装置76の暖機完了前においてエンジン出力Peの変動はあっても良いがエミッション改善のためにはそのエンジン出力Peの変動は抑えられている方が良く、その暖機用駆動状態とは触媒装置76を暖機するための予め定められた一定値である暖機用エンジン出力Pec*を目標としてエンジン14が駆動される状態であり、触媒暖機制御手段98は、前記触媒暖機制御では、エンジン出力Peがその暖機用エンジン出力Pec*に維持されるようにエンジン14を駆動することで前記エンジン出力制限を行う。本実施例では具体的に、触媒暖機制御手段98は、エンジン出力Peが暖機用エンジン出力Pec*に維持されるようにするために、最適燃費率曲線LEFから暖機用エンジン出力Pec*が得られる一定の目標エンジン回転速度Ne*および一定の目標エンジントルクTe*を決定し、エンジン回転速度Neが上記決定した目標エンジン回転速度Ne*に一致するように且つエンジントルクTeが上記決定した目標エンジントルクTe*に一致するようにエンジン14を駆動する。そして、それと共に前記出力回転速度NOUTを加味して第1電動機M1の発電量を制御する。この触媒暖機制御は、第1遊星歯車装置20の差動作用を利用することにより車両停止中でも車両走行中でも実行される。なお、上述したように暖機用エンジン出力Pec*は一定値であるが、この一定とは厳密に同一値が継続することを意味するのではなく、暖機用エンジン出力Pec*に一定とみなせる程度の僅かな変動があっても、それは暖機用エンジン出力Pec*が一定値であることに含まれる。また、暖機用エンジン出力Pec*に基づいて決定される目標エンジン回転速度Ne*は一定であるとされているが、この一定とは厳密に同一値が継続することを意味するのではなく、その目標エンジン回転速度Ne*に一定とみなせる程度の僅かな変動があっても、それはその目標エンジン回転速度Ne*が一定であることに含まれる。暖機用エンジン出力Pec*に基づいて決定される目標エンジントルクTe*に関しても同様である。
【0049】
ここで、上記の触媒暖機制御において、暖機用エンジン出力Pec*、及びその暖機用エンジン出力Pec*に基づく目標エンジン回転速度Ne*と目標エンジントルクTe*とは何れも一定値であると説明したが、その触媒暖機制御の実行開始時から終了時まで終始変化しないという必要はない。好ましくは、暖機用エンジン出力Pec*は触媒温度TEMPCATが高くなるほど段階的に引き上げられる。本実施例では、暖機用エンジン出力Pec*は上記触媒暖機制御の実行中において2段階で変更される。その暖機用エンジン出力Pec*が2段階で変更される制御について次に説明する。
【0050】
触媒暖機制御手段98は、前記触媒暖機制御では、触媒装置76の一部が活性化していると判断するための所定条件が成立したか否かを逐次判断する。その所定条件は、触媒温度TEMPCATが触媒装置76の一部が活性化していると想定される予め定められた活性化判定温度TEMP1CATREF以上になった場合に成立する。上記所定条件には触媒温度TEMPCAT以外の他のパラメータ(例えば、触媒暖機制御の実行開始時からの経過時間など)を用いた条件が含まれていても差し支えない。その活性化判定温度TEMP1CATREFは触媒装置76の一部が活性化しているか否かを判断するために用いられる閾値であり、例えば、前記触媒温度判定値TEMP1CATよりも低い180℃〜220℃程度の温度に設定されている。一般に、触媒装置76は、エンジン14の燃焼室62に近い上流側の方が下流側に比して温度上昇し易く活性化し易いので、触媒装置76の活性化している上記一部とは、具体的に言えば触媒装置76の上流側の一部位である。
【0051】
そして、触媒暖機制御手段98は、前記触媒暖機制御では、前記所定条件が成立するまでは、予め定められた第1所定エンジン動作点PT01を目標のエンジン動作点としてエンジン14を継続して運転し、前記所定条件が成立した以降は、予め定められた第2所定エンジン動作点PT02を目標のエンジン動作点としてエンジン14を継続して運転する。ここで、第1所定エンジン動作点PT01を目標のエンジン動作点としてエンジン14を運転するということは、詳細に言えば、その第1所定エンジン動作点PT01が示す回転速度Ne1を目標エンジン回転速度Ne*とし且つ第1所定エンジン動作点PT01が示すトルクTe1を目標エンジントルクTe*とした上で、エンジン回転速度Neをその目標エンジン回転速度Ne*(=Ne1)に一致するように且つエンジントルクTeをその目標エンジントルクTe*(=Te1)に一致するようにエンジン14を駆動することである。同様に、第2所定エンジン動作点PT02を目標のエンジン動作点としてエンジン14を運転するということは、詳細に言えば、その第2所定エンジン動作点PT02が示す回転速度Ne2を目標エンジン回転速度Ne*とし且つ第2所定エンジン動作点PT02が示すトルクTe2を目標エンジントルクTe*とした上で、エンジン回転速度Neをその目標エンジン回転速度Ne*(=Ne2)に一致するように且つエンジントルクTeをその目標エンジントルクTe*(=Te2)に一致するようにエンジン14を駆動することである。上記第1所定エンジン動作点PT01は、前記所定条件が成立していないときの触媒装置76の浄化能力の範囲内のエンジン動作点であって、具体的に言えば、図6に示すように、暖機用エンジン出力Pec*を零もしくは零よりも若干大きな値としてその暖機用エンジン出力Pec*が得られる最適燃費率曲線LEF上のエンジン動作点である。上記第2所定エンジン動作点PT02は、上記所定条件が成立しているときの触媒装置76の浄化能力の範囲内かつ第1所定エンジン動作点PT01に比してエンジン出力Peが大きくなる範囲内のエンジン動作点であって、具体的に言えば、図6に示すように、暖機用エンジン出力Pec*が第1所定エンジン動作点PT01が示すものよりも大きくなる最適燃費率曲線LEF上のエンジン動作点である。なお、前記触媒暖機制御の実行中において例えばエンジン出力Peがユーザ要求パワーP0*を上回る場合には第1電動機M1及び第2電動機M2は回生作動させられ蓄電装置56に充電されるので、第2所定エンジン動作点PT02は、前記所定条件が成立した時の蓄電装置56に対する充電が大きく制限されているほど暖機用エンジン出力Pec*が小さくなるように設定されるのが好ましい。
【0052】
以上のようにして、触媒暖機制御手段98は、前記触媒暖機制御の実行期間内において、暖機用エンジン出力Pec*を、第1所定エンジン動作点PT01が示すものから第2所定エンジン動作点PT02が示すものに段階的に引き上げる。
【0053】
次に前記触媒暖機制御の終了に関して説明する。触媒暖機制御手段98は、触媒温度判断手段92によって触媒温度TEMPCATが触媒温度判定値TEMP1CATよりも高いと判断され、且つ、要求パワー判断手段94によってユーザ要求パワーP0*がユーザ要求パワー判定値P01*よりも小さいと判断された場合には、それまで継続していた前記触媒暖機制御を終了する。すなわち、その触媒暖機制御での前記エンジン出力制限を解除する。なお、要求パワー判断手段94がユーザ要求パワーP0*に替えてエンジン要求パワーPe*に関して判断しているのであれば、触媒暖機制御手段98は、触媒温度判断手段92によって触媒温度TEMPCATが触媒温度判定値TEMP1CATよりも高いと判断され、且つ、要求パワー判断手段94によってエンジン要求パワーPe*がエンジン要求パワー判定値Pe1*よりも小さいと判断された場合には、それまで継続していた前記触媒暖機制御を終了する。また、上述したように前記触媒暖機制御の実行中に暖機用エンジン出力Pec*が段階的に変更されることがあるので、例えば、上記ユーザ要求パワー判定値P01*と上記エンジン要求パワー判定値Pe1*とのそれぞれは、暖機用エンジン出力Pec*が大きくなるほど大きく設定されるものであっても差し支えない。
【0054】
図7は、電子制御装置80の制御作動の要部、すなわち、前記触媒暖機制御の実行開始から終了までの制御作動を説明するためのフローチャートである。この図7に示す制御作動は、単独で或いは他の制御作動と並列的に実行される。
【0055】
先ず、触媒暖機制御実施条件判断手段90に対応するステップ(以下、「ステップ」を省略する)SA1においては、予め設定された前記触媒暖機制御実施条件が成立したか否かが判断される。このSA1の判断が肯定された場合、すなわち、上記触媒暖機制御実施条件が成立した場合には、SA2に移る。一方、このSA1の判断が否定された場合には、本フローチャートは終了する。
【0056】
触媒暖機制御手段98に対応するSA2においては、前記触媒暖機制御が実行される。その触媒暖機制御が既に実行中であればそれが継続される。具体的にその触媒暖機制御では、エンジン出力Peを一定値である暖機用エンジン出力Pec*に維持するようにエンジン14及び第1電動機M1が制御される。より詳細に説明すれば、その触媒暖機制御では、前記所定条件が成立したか否かが逐次判断されており、その所定条件が成立するまでは、予め定められた一定の第1所定エンジン動作点PT01を目標のエンジン動作点としてエンジン14が継続して運転され、上記所定条件が成立した以降は、予め定められた一定の第2所定エンジン動作点PT02を目標のエンジン動作点としてエンジン14が継続して運転される。SA2の次はSA3に移る。
【0057】
触媒温度判断手段92に対応するSA3においては、触媒温度TEMPCATが触媒温度判定値TEMP1CATよりも高くなったか否かが判断される。このSA3の判断が肯定された場合、すなわち、触媒温度TEMPCATが触媒温度判定値TEMP1CATよりも高くなった場合には、SA4に移る。一方、このSA3の判断が否定された場合には、SA2に移る。
【0058】
要求パワー判断手段94に対応するSA4においては、ユーザ要求パワーP0*が前記ユーザ要求パワー判定値P01*よりも小さいか否かが判断される。このSA4の判断が肯定された場合、すなわち、ユーザ要求パワーP0*が前記ユーザ要求パワー判定値P01*よりも小さい場合には、SA5に移る。一方、このSA4の判断が否定された場合には、SA2に移る。
【0059】
触媒暖機制御手段98に対応するSA5においては、前記SA2で実行開始された前記触媒暖機制御が終了させられる。すなわち、その触媒暖機制御での前記エンジン出力制限が解除される。
【0060】
図8は、前記触媒暖機制御を説明するためのタイムチャートである。図8では、図7のSA4にてユーザ要求パワーP0*がユーザ要求パワー判定値P01*よりも小さいか否かが判断されることの効果を説明するために、そのSA4が無くSA3の判断が肯定されればSA5が実行されるとした場合のタイムチャートを破線LT01,LT02,LT03として併記している。
【0061】
図8において、t1時点は、図7のSA1の判断が肯定されて前記触媒暖機制御が開始された時点を示している。t2時点は、その触媒暖機制御における前記所定条件が成立した時点、すなわち触媒温度TEMPCATが活性化判定温度TEMP1CATREF以上になった時点を示している。t3時点は、図7にてSA4が無いとした場合における前記触媒暖機制御の終了時点、すなわち、触媒温度TEMPCATが触媒温度判定値TEMP1CATよりも高くなった時点を示している。t4時点は、図7にてSA4の判断が肯定されて前記触媒暖機制御が終了させられた時点、すなわち、触媒温度TEMPCATが触媒温度判定値TEMP1CATよりも高くなった後においてユーザ要求パワーP0*がユーザ要求パワー判定値P01*よりも小さくなった時点を示している。なお、エンジン出力Peはそれの指令値であるエンジン出力指令値Petに一致するように制御されるので、図8におけるエンジン出力Peはエンジン出力指令値Petと同一または略同一である。また、上記エンジン出力指令値Petは、前記エンジン出力制限が解除されれば、ユーザ要求パワーP0*に基づくエンジン要求パワーPe*に一致するので、例えば図8のt4時点以降ではエンジン出力指令値Petはエンジン要求パワーPe*に一致する。
【0062】
図8に示すように、前記触媒暖機制御の実行中はエンジン回転速度Neが一定または略一定に維持され、エンジン出力指令値Petは殆ど変動しないように維持されている。これにより、冷間時のエミッション悪化が抑制されると共にエンジン14の排気により触媒装置76の暖機が促進される。図8のエンジン出力指令値Petのタイムチャートにおいてエンジン出力指令値Petが前記触媒暖機制御の実行中にt2時点から滑らかに一段階引き上げられているが、これは、t2時点まではエンジン14が第1所定エンジン動作点PT01を目標のエンジン動作点として運転されており、t2時点以降のエンジン出力指令値Petが一定になった時点からt4時点まではエンジン14が第2所定エンジン動作点PT02を目標のエンジン動作点として運転されていることを示している。t2時点直後において目標のエンジン動作点を第1所定エンジン動作点PT01から第2所定エンジン動作点PT02に変更する際には、図8に示すように、時間経過と共に滑らかにエンジン出力指令値Pet(=暖機用エンジン出力Pec*)を変化させるのが好ましい。このようにt2時点以降でエンジン出力指令値Petを引き上げるのは、暖機中の時間経過に従って触媒装置76の排気浄化能力が向上しエンジン出力Peを引き上げる余地が生じるためであり、触媒装置76の暖機を早期に完了させるためには好ましいが、エンジン出力指令値Petは前記触媒暖機制御の開始時から終了時まで一定値とされていても差し支えない。
【0063】
また、前記触媒暖機制御の終了後であるt4時点以降でエンジン出力指令値Petのタイムチャートとユーザ要求パワーP0*のタイムチャートとを相互に比較すれば判るように、上記触媒暖機制御における前記エンジン出力制限が解除されたエンジン走行中すなわち通常のエンジン走行中では、エンジン出力指令値Petは負の値にはならないものの、基本的にユーザ要求パワーP0*に対応して略同じように変化する。
【0064】
ここで、例えば図8のt3時点で仮に前記触媒暖機制御が終了し、その触媒暖機制御での前記エンジン出力制限が解除されるとすれば、図8ではそのt3時点でのユーザ要求パワーP0*が大きいため、二点鎖線AT02で囲んで示すように、エンジン出力指令値Petは前記エンジン出力制限が外れて上記t3時点のユーザ要求パワーP0*に応じた大きさにまで急激に大きくなる。それと共に、二点鎖線AT01で囲んで示すように、エンジン回転速度Neもそのエンジン出力指令値Petのエンジン出力が得られるように一時的に上昇する。そのため、エミッションが一時的に悪化するおそれがある。一方で、本実施例では、図7に示すようにSA4の判断が肯定されることを条件に前記触媒暖機制御が終了させられるので、その触媒暖機制御の終了時点はt3時点ではなく、ユーザ要求パワーP0*がユーザ要求パワー判定値P01*よりも小さくなったt4時点にまで遅延する。そのため、触媒暖機制御の終了時において、本実施例でのエンジン出力指令値Pet(実線)の変動は破線LT02と比較して小さいので実際のエンジン出力Peもあまり変動せず、また、エンジン回転速度Ne(実線)の変動も破線LT01と比較して小さくなる。すなわち、本実施例では図7のフローチャートにSA4の判断が含まれていることで、前記触媒暖機制御の終了時においてエミッションが一時的に悪化することが抑制されていると言える。
【0065】
図9は、図7のSA4におけるユーザ要求パワーP0*に関する判断がエンジン要求パワーPe*に関する判断に置き換えられた場合の制御作動を説明するための図であって、そのSA4に替わるステップを抜粋した図である。
【0066】
この図9が示す制御作動では、図7のSA3の判断が肯定された場合にSA4ではなく図9のSB4に移る。要求パワー判断手段94に対応するSB4においては、エンジン要求パワーPe*が前記エンジン要求パワー判定値Pe1*よりも小さいか否かが判断される。このSB4の判断が肯定された場合、すなわち、エンジン要求パワーPe*が前記エンジン要求パワー判定値Pe1*よりも小さい場合には、図7のSA5に移る。一方、このSA4の判断が否定された場合には、図7のSA2に移る。
【0067】
本実施例によれば、エンジン14が触媒装置76を暖機するための予め定められた暖機用駆動状態となるようにエンジン出力制限を行いつつエンジン14で触媒装置76を暖機する前記触媒暖機制御が、触媒温度TEMPCATが予め定められた前記触媒温度判定値TEMP1CAT以下である場合に実行される。そして、その触媒暖機制御は、ユーザ要求パワーP0*が予め定められた前記ユーザ要求パワー判定値P01*よりも小さい場合もしくはエンジン要求パワーPe*が予め定められた前記エンジン要求パワー判定値Pe1*よりも小さい場合であって、且つ、触媒温度TEMPCATが前記触媒温度判定値TEMP1CATよりも高くなった場合に終了する。従って、触媒温度TEMPCATだけに基づいて前記触媒暖機制御でのエンジン出力制限が解除されるとすればその解除時のユーザ要求パワーP0*もしくはエンジン要求パワーPe*に応じて瞬間的(一時的)にエンジン出力Peが大きくなることがあり得るところ、前記エンジン出力制限は、ユーザ要求パワーP0*もしくはエンジン要求パワーPe*がある程度小さい場合に解除されるので、そのエンジン出力制限の解除時(触媒暖機制御の終了時)に瞬間的にエンジン出力Peが大きくなるとしてもそのエンジン出力Peの変動幅がある程度抑えられることになる。そのため、上記エンジン出力制限の解除時すなわち上記触媒暖機制御の終了時におけるエンジン出力Peの一時的変動が抑えられることとなり、エミッション悪化を軽減することができる。
【0068】
また、前記触媒暖機制御の終了時におけるエンジン出力Peの一時的な急変動が抑えられるので、その時の空燃比の荒れや負荷変動に伴うエンジン14からの排気中に含まれる有害物質の増大が抑えられる。そのため、ユーザ要求パワーP0*またはエンジン要求パワーPe*に関する判断を前記触媒暖機制御終了の条件としない場合と比較して、例えば触媒温度判定値TEMP1CATを低く設定でき、そうなれば結果的に上記触媒暖機制御を早期に終了させることが可能となり、燃費向上が可能となる。
【0069】
また、本実施例によれば、ユーザ要求パワーP0*またはエンジン要求パワーPe*に関する判断が前記触媒暖機制御を終了させる条件とされているので、図8の二点鎖線AT02で囲んで示したような上記触媒暖機制御の終了時におけるエンジン出力Peの一時的な急変動が生じ得ることを加味して触媒装置76を選定する必要がない。従って、ユーザ要求パワーP0*またはエンジン要求パワーPe*に関する判断を前記触媒暖機制御終了の条件としない場合と比較して、より安価な触媒装置76(例えば排気浄化能力が低いなど)を選定することが可能である。
【0070】
また、本実施例によれば、前記触媒暖機制御におけるエンジン14の前記暖機用駆動状態とは、触媒装置76を暖機するための予め定められた一定値である暖機用エンジン出力Pec*を目標としてエンジン14が駆動される状態である。そして、前記触媒暖機制御では、エンジン出力Peがその暖機用エンジン出力Pec*に維持されるようにエンジン14が駆動されることで前記エンジン出力制限が行われる。従って、触媒装置76の暖機完了前においてエンジン14の排気を浄化する排気浄化能力が十分に高まっていなくても、エンジン出力Peが略一定に保たれているのでエンジン14から触媒装置76に供給される排気中の前記有害物質の割合が低くなり、前記触媒暖機制御の実行中におけるエンジン14の排気を十分に浄化して排出することが可能である。
【0071】
また、本実施例によれば、触媒暖機制御手段98は、前記触媒暖機制御では、エンジン回転速度Neが暖機用エンジン出力Pec*に基づく一定の目標エンジン回転速度Ne*に一致するように、且つ、エンジントルクTeが暖機用エンジン出力Pec*に基づく一定の目標エンジントルクTe*に一致するように、エンジン14を駆動する。従って、エンジン出力Peを一定になるようにしつつもエンジン回転速度NeまたはエンジントルクTeが変動する場合と比較して、エンジン14から触媒装置76に供給される排気中の前記有害物質の割合が一層低くなり、前記触媒暖機制御の実行中におけるエンジン14の排気を更に十分に浄化して排出することが可能である。
【0072】
また、本実施例によれば、触媒暖機制御手段98は、前記触媒暖機制御では、前記所定条件が成立するまでは、その所定条件が成立していないときの触媒装置76の浄化能力の範囲内の第1所定エンジン動作点PT01を目標のエンジン動作点としてエンジン14を継続して運転し、前記所定条件が成立した以降は、その所定条件が成立しているときの触媒装置76の浄化能力の範囲内かつ第1所定エンジン動作点PT01に比してエンジン出力Peが大きくなる範囲内の第2所定エンジン動作点PT02を目標のエンジン動作点としてエンジン14を継続して運転する。従って、触媒温度TEMPCATが触媒温度判定値TEMP1CAT以下である触媒装置76の暖機完了前においてエンジン14の動作点(運転点)が頻繁に変更されることによるエミッション悪化の原因(例えば、エンジン14の燃焼の安定性が悪化する等)を発生させにくくしつつ触媒装置76を暖機することができる。更に、前記所定条件が成立すればエンジン出力Peが触媒装置76の浄化能力の範囲内で引き上げられるので、前記触媒暖機制御の実行中にエンジン14が終始、第1所定エンジン動作点PT01を目標のエンジン動作点として運転される場合と比較して、早期に触媒装置76の暖機を完了することが可能である。前記所定条件が成立した以降では、その所定条件の成立前と比較して、エンジン出力Peをより大幅に車両走行に活用することが可能である。
【0073】
また、本実施例によれば、第1遊星歯車装置20は、第1電動機M1が無負荷状態とされて空転させられることで前記動力伝達遮断装置としても機能するので、車両走行中または停車中に拘らず、エンジン14を駆動して前記触媒暖機制御を実行することが可能である。
【0074】
また、本実施例によれば、第1遊星歯車装置20は、エンジン14と駆動輪40との間の動力伝達経路の一部を構成し第1電動機M1が制御されることにより差動状態が制御される差動機構である。従って、その第1電動機M1の制御によりエンジン14と駆動輪40との間の動力伝達を遮断することができる。また、第1電動機M1の制御によりエンジン回転速度Neを任意に設定しつつ、前記触媒暖機制御の実行中におけるエンジン出力Peの一部又は全部を駆動輪40に伝達することができる。
【0075】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【0076】
例えば、前述の実施例において、車両用駆動装置8は、第1遊星歯車装置20と第2遊星歯車装置22と第1電動機M1とを備えているが、例えば図10に示すように、それら第1遊星歯車装置20と第2遊星歯車装置22と第1電動機M1とを備えてはおらず、エンジン14,クラッチ110,第2電動機M2,有段または無段の自動変速機112,駆動輪40が直列に連結された所謂パラレルハイブリッド車両であってもよい。図10においては、クラッチ110がエンジン14と駆動輪40との間の動力伝達を遮断可能な動力伝達遮断装置として機能する。
【0077】
また、前述の実施例において、車両用駆動装置8では、エンジン14と走行用電動機である第2電動機M2とは互いに共通の駆動輪40に連結されているが、両者が別個の駆動輪に連結されていても差し支えない。例えば図11に示すように、エンジン14,自動変速機112,駆動輪40が直列に連結され、且つ、第2電動機M2がその駆動輪40とは異なる駆動輪114に連結された車両用駆動装置116も考え得る。
【0078】
また、前述の実施例の前記触媒暖機制御において、第1所定エンジン動作点PT01および第2所定エンジン動作点PT02は最適燃費率曲線LEF上に設定されるが、そのように最適燃費率曲線LEF上に設定されなくても差し支えない。
【0079】
また、前述の実施例において、前記触媒暖機制御の実行中にエンジン動作点は、触媒装置76の浄化能力の向上に応じて第1所定エンジン動作点PT01から第2所定エンジン動作点PT02へと1回変更されるが、2回以上変更されてもよいし、終始変更されなくてもよい。
【0080】
また、前述の実施例の前記触媒暖機制御において、前記暖機用駆動状態とは触媒装置76を暖機するための予め定められた一定値である暖機用エンジン出力Pec*を目標としてエンジン14が駆動される状態であるとされているが、それに限らず例えば、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとのそれぞれに対して所定の変動許容範囲が設定され、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとがそれぞれその変動許容範囲内に収まるようにエンジン14が駆動される状態であっても差し支えない。
【0081】
また、前述の実施例の第1遊星歯車装置20において、第1キャリヤCA1はエンジン14に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は出力歯車24に連結されているが、それらの連結関係は、必ずしもそれに限定されるものではなく、エンジン14、第1電動機M1、出力歯車24は、それぞれ第1遊星歯車装置20の3つの回転要素CA1、S1、R1のうちのいずれと連結されていても差し支えない。
【0082】
また、前述の実施例において、第2遊星歯車装置22のリングギヤR2は第1遊星歯車装置20のリングギヤR1に対し一体的に連結されているが、上記リングギヤR2の連結先は、上記リングギヤR1に限定されるものではなく、例えば第1遊星歯車装置20の第1キャリヤCA1に連結されていても差し支えない。また、上記リングギヤR2は、上記リングギヤR1ではなく第1遊星歯車装置20と駆動輪40との間の動力伝達経路のどこかに連結されていても差し支えない。
【0083】
また、前述の実施例において、車両用動力伝達装置10は第2電動機M2と駆動輪40との間の動力伝達経路の一部に第2遊星歯車装置22を備えているが、第2遊星歯車装置22が無く第2電動機M2が出力歯車24に直接連結されていても差し支えない。
【0084】
また、前述の実施例において、出力歯車24と駆動輪40との間の動力伝達経路に変速機は設けられていないが、その動力伝達経路に、手動変速機もしくは自動変速機が設けられていても差し支えない。
【0085】
また、前述の実施例において、入力軸18はダンパー16を介してエンジン14に連結されているが、そのダンパー16が無く、入力軸18が直接に或いは伝動ベルトや歯車等を介してエンジン14に連結されていても差し支えない。
【0086】
また、前述の実施例の動力伝達装置10において、エンジン14と第1遊星歯車装置20との間にクラッチ等の動力断続装置は設けられていないが、そのような動力断続装置がエンジン14と第1遊星歯車装置20との間に介装されていても差し支えない。また、第1電動機M1及び第2電動機M2に関しても同様であり、上記動力断続装置が、第1電動機M1と第1遊星歯車装置20との間または第2電動機M2と第2遊星歯車装置22との間に介装されていても差し支えない。
【0087】
また前述の実施例においては、第1電動機M1の運転状態が制御されることにより、第1遊星歯車装置20はその変速比が連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能するものであるが、例えば第1遊星歯車装置20の変速比を連続的ではなく差動作用を利用して敢えて段階的に変化させるものであってもよい。
【0088】
また、前述の実施例において、第1遊星歯車装置20および第2遊星歯車装置22は何れもシングルプラネタリであるが、それらの一方または両方がダブルプラネタリであっても差し支えない。
【0089】
また前述の実施例においては、第1遊星歯車装置20を構成する第1キャリヤCA1にはエンジン14が動力伝達可能に連結され、第1サンギヤS1には第1電動機M1が動力伝達可能に連結され、第1リングギヤR1には駆動輪40への動力伝達経路が連結されているが、例えば、第1遊星歯車装置20が2つの遊星歯車装置に置き換えられて、その2つの遊星歯車装置がそれを構成する一部の回転要素で相互に連結された構成において、その遊星歯車装置の回転要素にそれぞれエンジン、電動機、駆動輪が動力伝達可能に連結されており、その遊星歯車装置の回転要素に連結されたクラッチ又はブレーキの制御により有段変速と無段変速とに切換可能な構成であってもよい。
【0090】
また、前述の実施例の第2電動機M2はエンジン14から駆動輪40までの動力伝達経路の一部を構成する出力歯車24に第2遊星歯車装置22を介して連結されているが、第2電動機M2がその出力歯車24に連結されていることに加え、クラッチ等の係合要素を介して第1遊星歯車装置20にも連結可能とされており、第1電動機M1の代わりに第2電動機M2によって第1遊星歯車装置20の差動状態を制御可能とする動力伝達装置10の構成であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
6:車両
8,116:車両用駆動装置
14:エンジン
40:駆動輪
76:触媒装置
80:電子制御装置(制御装置)
M2:第2電動機(走行用電動機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力を出力するエンジンと、走行用の動力を出力する走行用電動機と、前記エンジンの排気系に設けられ該エンジンの排気を浄化する触媒装置とを備えた車両用駆動装置において、運転者が車両走行で要求するユーザ要求パワーが得られるように前記エンジンと前記走行用電動機とを駆動する車両用駆動装置の制御装置であって、
前記触媒装置の温度が予め定められた触媒温度判定値以下である場合には、前記エンジンが前記触媒装置を暖機するための予め定められた暖機用駆動状態となるようにエンジン出力制限を行いつつ該エンジンで該触媒装置を暖機する触媒暖機制御を実行し、
前記ユーザ要求パワーが予め定められたユーザ要求パワー判定値よりも小さい場合もしくは該ユーザ要求パワーが得られるように前記エンジンに対し要求されるエンジン要求パワーが予め定められたエンジン要求パワー判定値よりも小さい場合であって、且つ、前記触媒装置の温度が前記触媒温度判定値よりも高くなった場合に、前記触媒暖機制御を終了する
ことを特徴とする車両用駆動装置の制御装置。
【請求項2】
前記暖機用駆動状態とは前記触媒装置を暖機するための予め定められた一定値である暖機用エンジン出力を目標として前記エンジンが駆動される状態であり、
前記触媒暖機制御では、エンジン出力が前記暖機用エンジン出力に維持されるように前記エンジンを駆動することで前記エンジン出力制限を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項3】
前記触媒暖機制御では、エンジン回転速度が前記暖機用エンジン出力に基づく一定の目標エンジン回転速度になるように、且つ、エンジントルクが前記暖機用エンジン出力に基づく一定の目標エンジントルクになるように、前記エンジンを駆動する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動装置の制御装置。
【請求項4】
前記触媒暖機制御では、前記触媒装置の一部が活性化していると判断するための所定条件が成立するまでは、該所定条件が成立していないときの前記触媒装置の浄化能力の範囲内の第1所定エンジン動作点を目標のエンジン動作点として前記エンジンを継続して運転し、前記所定条件が成立した以降は、該所定条件が成立しているときの前記触媒装置の浄化能力の範囲内かつ前記第1所定エンジン動作点に比してエンジン出力が大きくなる範囲内の第2所定エンジン動作点を目標のエンジン動作点として前記エンジンを継続して運転する
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の車両用駆動装置の制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−81886(P2012−81886A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230272(P2010−230272)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】