説明

車両走行制御装置

【課題】先行車両の状況に応じた適正な追従制御を実行することができる車両走行制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも自車両21の走行方向の前方を走行する先行車両22と当該先行車両22の走行方向の前方を走行する先々行車両23とを含む先行車両群25の平均の速度Vavと、自車両21と先行車両22との車間距離Drとに基づいて、自車両21を先行車両22に追従させる追従制御を実行することを特徴とする。したがって、先行車両22の状況に応じた適正な追従制御を実行することができる車両走行制御装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行制御装置に関し、特に自車両を先行車両に追従させる追従制御を実行する車両走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に適用され車両の走行安全性の向上や運転者による運転操作の負担を軽減するために車両の走行を制御する車両走行制御装置が知られている。このような従来の車両走行制御装置として、例えば、特許文献1には、車群の走行状態と車群の進行方向の走行環境とに基づいて車群速度の推移を予測し、予測した車群速度の推移に基づいて自車速度を制御する車両用運転支援装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−269357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような特許文献1に記載されている車両用運転支援装置では、例えば、交差点やインターの有無などの走行環境から車群速度を予測し、この予測に応じて自車速度を制御することで自車両を先行車両に追従させることができる。これにより、この車両用運転支援装置は、車群後方を走行する車両の無駄な加速減速を防止することが可能であるが、例えば、さらなる無駄な加減速の抑制を図るなど、先行車両の状況に応じたさらなる適正な追従制御が望まれていた。
【0005】
そこで本発明は、先行車両の状況に応じた適正な追従制御を実行することができる車両走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による車両走行制御装置は、少なくとも自車両の走行方向の前方を走行する先行車両と当該先行車両の走行方向の前方を走行する先々行車両とを含む先行車両群の平均の速度と、前記自車両と前記先行車両との車間距離とに基づいて、前記自車両を前記先行車両に追従させる追従制御を実行することを特徴とする。
【0007】
また、上記車両走行制御装置は、前記自車両に対する加減速要求操作にかかわらず前記自車両の加減速を調節することで前記追従制御を実行してもよい。
【0008】
また、上記車両走行制御装置は、前記自車両に対する加減速要求操作の操作量と実際に前記自車両に作用させる加減速度との関係を変更し前記自車両の加減速を調節することで前記追従制御を実行してもよい。
【0009】
また、上記車両走行制御装置は、前記自車両の加減速度の変化周期と前記自車両の速度とに基づいて先読み距離を設定し、前記自車両の現在地点から走行方向の前方へ前記先読み距離先の地点までの範囲の車両を含む前記先行車両群の平均の速度を算出し当該先行車両群の平均の速度と前記車間距離とに基づいて前記追従制御を実行してもよい。
【0010】
また、上記車両走行制御装置は、前記車間距離が増加しかつ前記自車両の速度が前記先行車両群の平均の速度より小さい場合に前記自車両を加速する前記追従制御を実行し、前記車間距離が増加しかつ前記自車両の速度が前記先行車両群の平均の速度より大きい場合に少なくとも前記車間距離が増加しかつ前記自車両の速度が前記先行車両群の平均の速度より小さい場合と比較して前記自車両の加速を抑制する前記追従制御を実行し、前記車間距離が減少しかつ前記自車両の速度が前記先行車両群の平均の速度より大きい場合に前記自車両を減速する前記追従制御を実行し、前記車間距離が減少しかつ前記自車両の速度が前記先行車両群の平均の速度より小さい場合に少なくとも前記車間距離が減少しかつ前記自車両の速度が前記先行車両群の平均の速度より大きい場合と比較して前記自車両の減速を抑制する前記追従制御を実行してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る車両走行制御装置によれば、先行車両の状況に応じた適正な追従制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施形態1に係る車両走行制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る車両走行制御装置における先行車両群の平均速度と先行車両との車間距離を説明する模式図である。
【図3】図3は、実施形態1に係る車両走行制御装置における追従制御の一例を説明するフローチャートである。
【図4】図4は、実施形態2に係る車両走行制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、実施形態2に係る車両走行制御装置における追従制御の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る車両走行制御装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0014】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る車両走行制御装置の概略構成を示すブロック図、図2は、実施形態1に係る車両走行制御装置における先行車両群の平均速度と先行車両との車間距離を説明する模式図、図3は、実施形態1に係る車両走行制御装置における追従制御の一例を説明するフローチャートである。
【0015】
本実施形態に係る車両走行制御装置1は、図1、図2に示すように、車両2に適用され車両2の走行安全性の向上や運転者による運転操作の負担の軽減のために車両2の走行を制御するものである。この車両走行制御装置1は、自車両21と先行車両22との車間距離Drに基づいて自車両21を先行車両22に追従させる追従制御を実行する。
【0016】
そして、本実施形態の車両走行制御装置1は、上記車間距離Drを監視すると共に、さらに自車両21の前方の先行車両群25の平均の速度である平均速度Vavをも監視しながら自車両21の加減速を調節することで、自車両21を先行車両22に追従させ自車両21と先行車両22との間の車間距離Drを所定の距離に維持する追従制御を実行する。これにより、車両走行制御装置1は、例えば、自車両21の加減速の判断の精度を向上して無駄な加減速を抑制し、先行車両22の状況に応じた適正な追従制御を実行している。
【0017】
例えば、車両走行制御装置1は、自車両21と先行車両22との車間距離Drが大きくなった場合であっても先行車両群25の平均速度Vavなどに基づいて先行車両22がその後に減速すると予測される場合には車間距離Drを縮めるための加速を抑制する判断をして、これに応じて追従制御を実行することで自車両21の無駄な加速を抑制する。また例えば、車両走行制御装置1は、自車両21と先行車両22との車間距離Drが小さくなった場合であっても先行車両群25の平均速度Vavなどに基づいて先行車両22がその後に加速すると予測される場合には、車間距離Drを拡げるための減速を行わない判断をし、これに応じて追従制御を実行することで自車両21の無駄な減速を抑制する。
【0018】
ここで、図2に示すように、自車両21は、車両走行制御装置1が適用される車両2であり、車両走行制御装置1による追従制御の制御対象となる車両である。先行車両22は、自車両21の走行方向のすぐ前方を走行する車両である。先行車両群25は、少なくとも先行車両22とこの先行車両22の走行方向の前方を走行する先々行車両23とを含む車両の群れである。典型的には、先行車両群25は、自車両21の現在地点から走行方向の前方へ後述する先読み距離L先の地点までの範囲の車両を含む車両の群れ(図2の例では自車両21の走行方向の前方の先行車両22から車両24までの車両の群れ)である。
【0019】
本実施形態の車両走行制御装置1は、具体的には、図1に示すように、制御装置本体3と、車間距離検出装置4と、自車位置検出装置5と、速度取得装置6と、走行状態検出装置7と、加減速度調節アクチュエータ8とを備える。
【0020】
制御装置本体3は、自車両21としての車両2に搭載される。制御装置本体3は、マイクロコンピュータを中心として構成され、処理部3a、記憶部3b及び入出力部3cを有し、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。入出力部3cには車両走行制御装置1の車間距離検出装置4、自車位置検出装置5、速度取得装置6、走行状態検出装置7、加減速度調節アクチュエータ8などが接続されており、この入出力部3cは、これらの車間距離検出装置4、自車位置検出装置5、速度取得装置6、走行状態検出装置7、加減速度調節アクチュエータ8等との間で信号の入出力を行なう。また、記憶部3bには、各部を制御するコンピュータプログラムが格納されている。この記憶部3bは、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、またはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。処理部3aは、不図示のメモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されている。制御装置本体3による各種制御は、種々の検出結果などに基づいて、処理部3aが前記コンピュータプログラムを当該処理部3aに組み込まれたメモリに読み込んで演算し、演算の結果に応じて制御信号を送ることにより実行される。その際に、処理部3aは、適宜記憶部3bへ演算途中の数値を格納し、また格納した数値を取り出して演算を実行する。なお、この車両走行制御装置1の各部を制御する場合には、前記コンピュータプログラムの代わりに、制御装置本体3とは異なる専用のハードウェアによって制御してもよい。
【0021】
本実施形態の制御装置本体3は、機能概念的に処理部3aに、取得・判定・予測部31と、変化周期設定部32と、先読み距離算出部33と、平均速度算出部34と、加減速度制御部35とが設けられる。
【0022】
車間距離検出装置4は、自車両21と先行車両22との車間距離Drを検出するものである。車間距離検出装置4は、自車両21と先行車両22との間の実際の相対距離である車間距離Drを検出し、検出した車間距離Drを制御装置本体3に出力する。制御装置本体3が取得したこの車間距離Drは、例えば、取得・判定・予測部31において自車両21の加減速の判定に用いられる。
【0023】
車間距離検出装置4は、種々の公知の手法により車間距離Drを検出するものであればよく、例えば、ミリ波を用いた検出手法により自車両21と先行車両22との相対関係を示す相対物理量である車間距離Drを検出するミリ波レーダを用いることができる。車間距離検出装置4として適用されるミリ波レーダは、ミリ波を自車両21の前面から進行方向の所定の範囲で出射し、自車両21の走行方向前方に存在する先行車両22にて反射したミリ波を受信し、この出射から受信までの時間を計測することによって車間距離Drを検出し、制御装置本体3に出力する。なお、車間距離検出装置4は、例えばレーザや赤外線などを用いたレーダ、CCDカメラなどの撮像装置により自車両21の走行方向前方を撮像した画像データを解析することで車間距離Drを算出する画像認識装置などであってもよい。また、車車間通信で得られた各車両の速度、位置情報等から車間距離Drを算出してもよい。
【0024】
自車位置検出装置5は、自車両21としての車両2の現在位置を検出するものである。自車位置検出装置5は、検出した自車両21の現在位置(自車位置)を制御装置本体3に出力する。制御装置本体3が取得したこの自車両21の現在位置は、例えば、変化周期設定部32において変化周期Aの設定に用いられる。また、路上に設けられた検出器からの先行車両の速度情報等を路車間通信で入手してもよい。
【0025】
自車位置検出装置5は、種々の公知の手法により自車両21の現在位置を検出するものであればよく、例えば、GPS(GPS:Global Positioning System、全地球測位システム)などを用いることができる。自車位置検出装置5として適用されるGPSは、例えば、GPSアンテナを介してGPS衛星が出力するGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて自車位置を測位・演算する。自車位置検出装置5として適用されるGPSは、測位・演算した自車位置を制御装置本体3に出力する。
【0026】
速度取得装置6は、他の車両、ここでは自車両21の走行方向の前方を走行する車両(図2の例では自車両21の走行方向の前方の先行車両22から車両24までの車両)の速度を取得するものである。速度取得装置6は、取得した速度を制御装置本体3に出力する。制御装置本体3が取得したこの自車両21の走行方向の前方を走行する車両の速度は、例えば、平均速度算出部34において、先行車両群25の平均速度Vavの算出に用いられる。
【0027】
速度取得装置6は、種々の公知の手法により自車両21の走行方向前方を走行する車両の速度を取得するものであればよく、例えば、車車間通信機などを用いることができる。速度取得装置6として適用される車車間通信機は、自車両21と他車両との間の車車間通信を制御するものである。速度取得装置6として適用される車車間通信機は、例えば、光ビーコンやDSRC(DSRC:Dedicated Short Range Communication)や無線LAN(LAN:Local Area Network)などを利用したものを用いることができ、これらを利用して自車両21の走行方向前方を走行する車両の速度を取得する。
【0028】
走行状態検出装置7は、自車両21としての車両2の走行状態を検出するためのものである。走行状態検出装置7は、検出した自車両21の種々の走行状態に関する情報を制御装置本体3に出力する。制御装置本体3が取得したこの自車両21の走行状態は、例えば、変化周期設定部32において変化周期Aの設定に用いられ、例えば、先読み距離算出部33において先読み距離Lの算出に用いられ、例えば、取得・判定・予測部31において車両2の加減速の判定に用いられる。走行状態検出装置7は、例えば、自車両21の速度Vnを検出する速度センサ、自車両21のアクセル開度(操作部材としてのアクセルペダルの踏み込み量に相当)を検出するアクセル開度センサ、変化周期Aを設定するための操作スイッチ等を含んで構成される。つまり、走行状態検出装置7が検出する自車両21の種々の走行状態としては、速度Vn、アクセル開度、運転者の任意の変化周期Aを設定するための操作スイッチの選択信号などが含まれる。
【0029】
加減速度調節アクチュエータ8は、自車両21としての車両2に搭載されており、制御装置本体3からの命令にしたがって実際に自車両21に作用する制駆動力(制駆動トルク)を調節し、自車両21の加減速度を調節するものである。本実施形態の加減速度調節アクチュエータ8は、自車両21の走行用動力源としてガソリンエンジンを含む場合を例として、例えば、ブレーキアクチュエータ81と、スロットルアクチュエータ82とを含んで構成される。
【0030】
ブレーキアクチュエータ81は、自車両21としての車両2が搭載するブレーキ装置に設けられるホイールシリンダへの制御油圧調整するものである。ブレーキアクチュエータ81は、制御装置本体3に電気的に接続されており、制御装置本体3は、ブレーキ制御信号に応じてブレーキアクチュエータ81を作動し、ホイールシリンダのブレーキ油圧を調整する。言い換えれば、ブレーキアクチュエータ81は、ブレーキによる制動力を自動制御するための装置であり、例えば、制御装置本体3が出力するブレーキ制御信号を受信してソレノイドやモータなどを駆動させることでブレーキ油圧を制御し所望とする制動力を発生させ、これにより、自車両21に作用する減速度を調節することができる。
【0031】
スロットルアクチュエータ82は、自車両21としての車両2が搭載するガソリンエンジンの電子スロットル装置におけるスロットル弁を開閉すると共に、このスロットル開度を調整するものである。スロットルアクチュエータ82は、制御装置本体3に電気的に接続されており、制御装置本体3は、エンジン制御信号に応じてスロットルアクチュエータ82を作動し、スロットル弁の開度を調整する。言い換えれば、スロットルアクチュエータ82は、スロットル開度を自動制御するための装置であり、例えば、制御装置本体3が出力するエンジン制御信号を受信してソレノイドやモータを駆動させることでスロットル開度を制御し所望とするエンジン駆動力を発生させ、これにより、自車両21に作用する加速度を調節することができる。
【0032】
なお、加減速度調節アクチュエータ8は、ブレーキアクチュエータ81、スロットルアクチュエータ82を含んで構成されるものとして説明するが、制御装置本体3からの命令にしたがって実際に自車両21としての車両2の加減速度を調節するものであればこれに限らない。例えば、加減速度調節アクチュエータ8は、自車両21が走行用動力源としてエンジンを搭載している場合にはエンジンブレーキの作用を調節する手段によって自車両21の加減速度(ここでは減速度)を調節する構成を実現してもよいし、自車両21が走行用動力源として力行機能と回生機能とを兼ね備えた回転電機を搭載している場合にはこの回転電機によって自車両21の加減速度を調節する構成を実現してもよく、また、必要に応じてこれらの幾つかを組み合わせて実現してもよい。エンジンブレーキの作用を調節する手段は、例えば、自車両21が搭載する自動変速機(または、無段変速機)の変速操作を実行する変速機アクチュエータ、エンジンの吸気弁、排気弁の開弁時期、エンジン吸気弁・排気弁アクチュエータ、あるいは、エンジンの排気圧を調節する排気圧調節アクチュエータなどにより構成することができる。回転電機は、電力の供給により駆動し電気エネルギを機械エネルギに変換して出力する電動機としての機能(力行機能)と機械エネルギを電気エネルギに変換する発電機としての機能(回生機能)とを兼ね備えたものである。
【0033】
そして、制御装置本体3は、上述したように、先行車両群25の平均速度Vavと、自車両21と先行車両22との車間距離Drとに基づいて、自車両21を先行車両22に追従させる追従制御を実行する。
【0034】
具体的には、取得・判定・予測部31は、追従制御で用いられる種々の情報を取得したり、種々の判定を行ったり、加減速の予測を行ったりするものである。取得・判定・予測部31は、車間距離検出装置4、自車位置検出装置5、速度取得装置6、走行状態検出装置7などが検出した車間距離Dr、車両2の現在位置、自車両21の走行方向の前方を走行する車両の速度、自車両21の速度Vn、自車両21のアクセル開度、自車両21の操作スイッチの選択信号などを取得する。そして、取得・判定・予測部31は、これら取得した情報に基づいて種々の判定、種々の予測などを行う。
【0035】
変化周期設定部32は、変化周期Aを設定するものである。ここで、変化周期Aは、自車両21の運転者に不快感を与えない程度の加減速度の変化の周期として設定される。変化周期Aは、予め実験等に基づいて固定値として設定しておいてもよいが、ここでは、変化周期設定部32によって状況に応じて可変設定される。
【0036】
変化周期設定部32は、例えば、運転者の任意の変化周期Aを設定するための操作スイッチ(走行状態検出装置7)の選択信号、いわゆるクルーズコントロールなどにおいて運転者の任意に設定される追従車間距離の設定値、自車両21の現在位置(自車位置)、あるいはこれらの組み合わせなどに基づいて、変化周期Aを設定する。変化周期設定部32は、取得・判定・予測部31が取得したこれらの情報に基づいて変化周期Aを設定する。
【0037】
変化周期設定部32は、例えば、走行状態検出装置7をなす操作スイッチに対して運転者により変化周期Aを相対的に長い周期に設定する操作がなされた場合には変化周期Aを相対的に長い周期に設定し、変化周期Aを相対的に短い周期に設定する操作がなされた場合には変化周期Aを相対的に短い周期に設定する。変化周期設定部32は、例えば、クルーズコントロールなどにおいて運転者の任意に設定される追従車間距離の設定値が相対的に長い距離に設定された場合には変化周期Aを相対的に長い周期に設定し、追従車間距離の設定値が相対的に短い距離に設定された場合には変化周期Aを相対的に短い周期に設定する。
【0038】
また、変化周期設定部32は、例えば、自車両21の現在位置(自車位置)に基づいて自車両21が現在走行している道路の種別が高速道路であると判定される場合には変化周期Aを相対的に長い周期に設定し、自車両21が現在走行している道路の種別が一般道路であると判定される場合には変化周期Aを相対的に短い周期に設定する。この場合、例えば、取得・判定・予測部31は、取得した自車両21の現在位置(自車位置)を記憶部3bに格納されている情報(地図、直線路、カーブ、登降坂、高速道路、道路状況等)に照会することで自車両21が現在走行している道路の種別を判定し、変化周期設定部32は、取得・判定・予測部31が判定した道路の種別に応じて変化周期Aを設定すればよい。
【0039】
先読み距離算出部33は、先読み距離Lを算出するものである。ここで、先読み距離Lは、自車両21の前方を走行する先行車両群25の平均速度Vavを算出するにあたり、速度を取得する先行車両群25の範囲(区間)を定めるものである。先読み距離Lは、ここでは変化周期Aと同様に、先読み距離算出部33により変化周期Aに応じて可変設定されるものとして説明するが予め実験等に基づいて固定値として設定しておいてもよい。
【0040】
先読み距離算出部33は、自車両21の加減速度の変化周期Aと、自車両21の速度Vnとに基づいて先読み距離Lを算出する。先読み距離算出部33は、変化周期設定部32が設定した変化周期Aと、取得・判定・予測部31が取得した自車両21の速度Vnとに基づいて先読み距離Lを算出する。先読み距離算出部33は、自車両21が現在の速度Vnで変化周期Aに相当する期間走行した際に自車両21が進む距離として先読み距離Lを算出する。
【0041】
平均速度算出部34は、先行車両群25の平均速度Vavを算出するものである。平均速度算出部34は、自車両21の現在地点から走行方向の前方へ先読み距離L先の地点までの範囲の車両を含む先行車両群25の平均速度Vavを算出する。先読み距離算出部33は、取得・判定・予測部31が取得した自車両21の現在地点から走行方向の前方へ先読み距離L先の地点までの範囲の各車両の速度に基づいて先行車両群25の平均速度Vavを算出する。つまり、平均速度算出部34は、自車両21が現在の速度Vnで変化周期Aに相当する期間走行した際に自車両21が進む距離の範囲(区間)内の先行車両群25の平均速度Vavを算出することとなる。
【0042】
そして、取得・判定・予測部31は、先行車両群25の平均速度Vavと、自車両21と先行車両22との車間距離Drとに基づいて、先行車両22の挙動の予測、さらに言えば先行車両22の加減速の予測、ひいては自車両21の加減速の有無の判定を行う。取得・判定・予測部31は、平均速度算出部34が算出した先行車両群25の平均速度Vavと、車間距離検出装置4から取得した車間距離Drとに基づいて加減速の予測を行う。
【0043】
加減速度制御部35は、加減速度調節アクチュエータ8の駆動を制御するものである。さらに具体的に言えば、加減速度調節アクチュエータ8をなすブレーキアクチュエータ81、スロットルアクチュエータ82に制御信号を送信しこれらの駆動を制御し、自車両21の走行速度を自動制御する。加減速度制御部35は、取得・判定・予測部31による加減速の予測に応じてブレーキアクチュエータ81、スロットルアクチュエータ82の駆動を制御し、自車両21を先行車両22に追従させる追従制御を実行する。
【0044】
本実施形態の加減速度制御部35は、自車両21に対する加減速要求操作、例えば、アクセルペダルの踏み込み操作(さらに言い換えればアクセル開度)にかかわらず自車両21に作用する制駆動力(制駆動トルク)を制御し自車両21の加減速を調節することで追従制御を実行する。つまり、加減速度制御部35は、この追従制御においては、スロットルアクチュエータ82を制御して、一般的な制御ではアクセル開度に応じて定まるスロットル開度を運転者によるアクセルペダルの操作とは独立して増減することで自車両21の加速度を調節する。また、加減速度制御部35は、この追従制御においては、ブレーキアクチュエータ81を制御して、一般的な制御ではブレーキペダルの操作量に応じて定まるブレーキ油圧を運転者によるブレーキペダルの操作とは独立して増減することで自車両21の減速度を調節する。これにより、本実施形態の車両走行制御装置1は、自車両21に対する運転者の加減速要求操作にかかわらず、自動的に自車両21と先行車両22との間の車間距離Drを所定の距離に維持する追従制御を実行することができる。
【0045】
本実施形態の取得・判定・予測部31は、実際には、加減速の予測に相当する判定として、車間距離Drの増減判定と、自車両21の速度Vnと先行車両群25の平均速度Vavと大小関係の判定を行うことで、結果として加減速の予測を行うようにしている。そして、加減速度制御部35は、加減速の予測に相当する判定として、取得・判定・予測部31による車間距離Drの増減判定と自車両21の速度Vnと先行車両群25の平均速度Vavと大小関係の判定の判定結果に応じて、ブレーキアクチュエータ81、スロットルアクチュエータ82の駆動を制御し、自車両21の加減速を調節することで、自車両21を先行車両22に追従させ自車両21と先行車両22との間の車間距離Drを所定の距離に維持する追従制御を実行する。
【0046】
具体的には、取得・判定・予測部31は、車間距離Drが増加しかつ自車両21の速度Vnが先行車両群25の平均速度Vavより小さいと判定した場合、先行車両22が加速すると予測できることから、自車両21の加速が必要であると判定する。そして、加減速度制御部35は、加減速度調節アクチュエータ8を制御し、車間距離Drを小さくするために自車両21を加速する追従制御、すなわち、追従加速制御を実行する。これにより、車両走行制御装置1は、車間距離Drを適正な距離で維持することができる。
【0047】
取得・判定・予測部31は、車間距離Drが増加しかつ自車両21の速度Vnが先行車両群25の平均速度Vavより大きいと判定した場合、先行車両22が再減速すると予測できることから、自車両21の大きな加速は必要ないと判定する。そして、加減速度制御部35は、加減速度調節アクチュエータ8を制御し、車間距離Drが小さくならないように、自車両21の加速を抑制する追従制御、すなわち、追従加速抑制制御を実行する。加減速度制御部35は、この追従加速抑制制御においては、少なくとも車間距離Drが増加しかつ自車両21の速度Vnが先行車両群25の平均速度Vavより小さい場合の追従加速制御と比較して自車両21の加速を抑制する。ここでは、加減速度制御部35は、加減速度をほぼ0とし、自車両21の速度を現状で維持し車間距離Drを現状で維持する。これにより、車両走行制御装置1は、車間距離Drが大きくなった場合であっても先行車両22がその後に減速すると予測される場合に自車両21の無駄な加速を抑制することができる。
【0048】
取得・判定・予測部31は、車間距離Drが減少しかつ自車両21の速度Vnが先行車両群25の平均速度Vavより大きいと判定した場合、先行車両22が減速すると予測できることから、自車両21の減速が必要であると判定する。そして、加減速度制御部35は、加減速度調節アクチュエータ8を制御し、車間距離Drを大きくするために自車両21を減速する追従制御、すなわち、追従減速制御を実行する。これにより、車両走行制御装置1は、車間距離Drを適正な距離で維持することができる。
【0049】
取得・判定・予測部31は、車間距離Drが減少しかつ自車両21の速度Vnが先行車両群25の平均速度Vavより小さいと判定した場合、先行車両22が再加速すると予測できることから、自車両21の大きな減速は必要ないと判定する。そして、加減速度制御部35は、加減速度調節アクチュエータ8を制御し、車間距離Drが大きくならないように、自車両21の減速を抑制する追従制御、すなわち、追従減速抑制制御を実行する。加減速度制御部35は、この追従減速抑制制御においては、少なくとも車間距離Drが減少しかつ自車両21の速度Vnが先行車両群25の平均速度Vavより大きい場合の追従減速制御と比較して自車両21の減速を抑制する。ここでは、加減速度制御部35は、加減速度をほぼ0とし、自車両21の速度を現状で維持し車間距離Drを現状で維持する。これにより、車両走行制御装置1は、車間距離Drが小さくなった場合であっても先行車両22がその後に加速すると予測される場合に自車両21の無駄な減速を抑制することができる。
【0050】
次に、図3のフローチャートを参照して、本実施形態に係る車両走行制御装置1の追従制御の一例を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
【0051】
まず、取得・判定・予測部31は、走行状態検出装置7が検出した自車両21の速度Vnを取得する(S100)。
【0052】
次に、取得・判定・予測部31は、走行状態検出装置7から変化周期Aを設定するための操作スイッチの選択信号、クルーズコントロールなどにおいて運転者の任意に設定される追従車間距離の設定値、自車位置検出装置5から自車両21の現在位置(自車位置)などを取得し、変化周期設定部32は、これらに応じて変化周期Aを設定する(S102)。
【0053】
次に、先読み距離算出部33は、S100にて取得・判定・予測部31が取得した自車両21の速度Vnと、S102にて変化周期設定部32が設定した変化周期Aとに基づいて先読み距離Lを算出する(S104)。
【0054】
次に、取得・判定・予測部31は、S104にて算出された先読み距離Lに基づいて、速度情報を取得する前方の車両を決定し(S106)、自車両21の現在地点から走行方向の前方へ先読み距離L先の地点までの範囲の各車両の速度情報を速度取得装置6から取得する(S108)。
【0055】
次に、平均速度算出部34は、S108にて取得・判定・予測部31が取得した自車両21の現在地点から走行方向の前方へ先読み距離L先の地点までの範囲の各車両の速度情報に基づいて先行車両群25の平均速度Vavを算出する(S110)。
【0056】
次に、取得・判定・予測部31は、車間距離検出装置4が検出した自車両21と先行車両22との車間距離Drを取得する(S112)。
【0057】
次に、取得・判定・予測部31は、S112で取得した車間距離Drが前回の制御周期で取得した車間距離Drより増加したか否かを判定する(S114)。
【0058】
取得・判定・予測部31は、車間距離Drが前回の制御周期で取得した車間距離Drより増加していないと判定した場合(S114:No)、S112で取得した車間距離Drが前回の制御周期で取得した車間距離Drより減少したか否かを判定する(S116)。
【0059】
取得・判定・予測部31は、車間距離Drが前回の制御周期で取得した車間距離Drより減少していないと判定した場合(S116:No)、現在の制御周期を終了し次の制御周期に移行する。
【0060】
取得・判定・予測部31は、S116にて車間距離Drが前回の制御周期で取得した車間距離Drより減少していると判定した場合(S116:Yes)、S100で取得した自車両21の速度VnがS110で算出された平均速度Vav以下であるか否かを判定する(S118)。
【0061】
取得・判定・予測部31は、自車両21の速度Vnが平均速度Vavより大きいと判定した場合(S118:No)、自車両21の減速が必要であると判定する。そして、加減速度制御部35は、加減速度調節アクチュエータ8を制御し、車間距離Drを大きくするために自車両21を減速する追従減速制御を実行して(S120)、現在の制御周期を終了し次の制御周期に移行する。
【0062】
取得・判定・予測部31は、S118にて自車両21の速度Vnが平均速度Vav以下であると判定した場合(S118:Yes)、自車両21の大きな減速は必要ないと判定する。そして、加減速度制御部35は、加減速度調節アクチュエータ8を制御し、自車両21の減速を抑制する追従減速抑制制御、ここでは、何もせずに現在の自車両21の運転状態をそのまま維持する制御を実行して、現在の制御周期を終了し次の制御周期に移行する。
【0063】
取得・判定・予測部31は、S114にて車間距離Drが前回の制御周期で取得した車間距離Drより増加したと判定した場合(S114:Yes)、S100で取得した自車両21の速度VnがS110で算出された平均速度Vav以上であるか否かを判定する(S122)。
【0064】
取得・判定・予測部31は、自車両21の速度Vnが平均速度Vavより小さいと判定した場合(S122:No)、自車両21の加速が必要であると判定する。そして、加減速度制御部35は、加減速度調節アクチュエータ8を制御し、車間距離Drを小さくするために自車両21を加速する追従加速制御を実行して(S124)、現在の制御周期を終了し次の制御周期に移行する。
【0065】
取得・判定・予測部31は、S122にて自車両21の速度Vnが平均速度Vav以上であると判定した場合(S122:Yes)、自車両21の大きな加速は必要ないと判定する。そして、加減速度制御部35は、加減速度調節アクチュエータ8を制御し、自車両21の加速を抑制する追従加速抑制制御、ここでは、何もせずに現在の自車両21の運転状態をそのまま維持する制御を実行して、現在の制御周期を終了し次の制御周期に移行する。
【0066】
上記のように構成される車両走行制御装置1は、先行車両22が急な加減速を行って車間距離Drが変動した場合であっても、その後の先行車両22の加減速を予測することができ、これに応じて自車両21の加減速の有無を判断することができるので、自車両21の無駄な加減速を抑制し自車両21の燃費を向上させることができる。
【0067】
このとき、本実施形態の車両走行制御装置1は、自車両21の加減速度の変化周期Aと自車両21の速度Vnとに基づいて先読み距離Lを設定し、自車両21の現在地点から走行方向の前方へ先読み距離L先の地点までの範囲の車両を含む先行車両群25の平均速度Vavを算出しこの先行車両群25の平均速度Vavと車間距離Drとに基づいて追従制御を実行する。このため、車両走行制御装置1は、先行車両群25の平均速度Vavを算出するための速度情報を先読み距離Lに応じた範囲(区間)内の先行車両群25の各車両の速度情報に絞ることができることから、必要な速度情報、ひいては演算量が多くなりすぎることを防止することができると共に、自車両21の現在地点から離れすぎた地点の車両の速度情報の影響を受けることを抑制することができ、自車両21の加減速の頻度が抑制されすぎることを防止することができ、より精度の高い追従制御を実現することができる。
【0068】
ここで例えば、自車両21と先行車両22との間の車間距離及び自車両21と先行車両22のさらに前を走行している先々行車両23との間の車間距離に基づいて自車両21の加減速度を調節し、自車両21と先行車両22との車間距離を設定距離範囲に維持する追従制御を実行する車両走行制御装置(以下、特に断りのない限り「比較例に係る車両走行制御装置」という。)を仮定する。この比較例に係る車両走行制御装置は、例えば、自車両21と先行車両22との車間距離が大きくなった場合でも、先行車両22と先々行車両23との車間距離が小さく先行車両22が減速すると予測される場合は、自車両21を加速せず安定した速度で走行させる。また、この比較例に係る車両走行制御装置は、例えば、自車両21と先行車両22との車間距離が小さくなった場合でも、先行車両22と先々行車両23との車間距離が大きく先行車両22が加速すると予測される場合は、自車両21を減速せず安定した速度で走行させる。
【0069】
そして、自車両21の後方を走行する後方車両もこの比較例に係る車両走行制御装置が適用され同様の追従制御を実行していたと仮定すると、例えば、自車両21と先行車両22との車間距離が拡大、自車両21と後方車両との車間距離が縮小しても、後方車両は減速を開始しないおそれがある。そして例えば、自車両21が先々行車両23の車間距離情報の影響で加速しないでいると、自車両21と後方車両とが接近し、後方車両は大きな減速が必要になり、この結果、乗員が加減速により不快感を受けるおそれがある共に燃費も悪化するおそれがある。
【0070】
これは自車両21に適用された比較例に係る車両走行制御装置は、自車両21と先行車両22との車間距離情報及び先行車両22と先々行車両23との車間距離情報をもとに加減速の判断をしているのに対して、後方車両に適用された比較例に係る車両走行制御装置は、結果的には自車両21が加減速するかの予測を先行車両22と自車両21との車間距離情報だけで行うこととなることから、自車両21が現在の状態から加減速するか否かの判断に食い違いが生じるおそれがあるためである。これにより、後方車両に適用された比較例に係る車両走行制御装置において、誤った加減速判断を行ってしまうおそれがある。そして、通常、このような比較例に係る車両走行制御装置では、車間距離が予め設定された余裕距離より小さくなれば、減速制御を行うようにしているが、判断を誤り車間距離が小さくなった分だけ、大きな減速度が必要になり走行速度が安定しなくなるおそれがある。後方車両に適用された比較例に係る車両走行制御装置が上記の手法により正確な判断を行うためには、実際には後方車両の先々々行車両と先々行車両との車間距離情報が必要となり、さらに後方の車両は、順に必要な車間距離情報が増加してしまう。つまり、比較例に係る車両走行制御装置では、車間距離情報の増加に伴って加減速判断のロジックが複雑になり、演算負荷増加による演算遅れや演算性能向上のための製造コストの増加を招くおそれがある。
【0071】
しかしながら、本実施形態の車両走行制御装置1は、車間距離情報だけでなく、先行車両群25の平均速度Vavと車間距離Drとに基づいて自車両21の加減速の有無の判断をしていることから、自車両21の後方車両が同様の追従制御を行っていた場合であっても、後方車両における加減速の有無の誤った判断を抑制することができ、後方車両の無駄な加減速も抑制することができ、さらに、加減速を判断するロジックを複雑化することなく後方車両の無駄な加減速も抑制することができることから、演算負荷増加による演算遅れや製造コストの増加も防止することができる。
【0072】
以上で説明した本発明の実施形態に係る車両走行制御装置1によれば、少なくとも自車両21の走行方向の前方を走行する先行車両22とこの先行車両22の走行方向の前方を走行する先々行車両23とを含む先行車両群25の平均速度Vavと、自車両21と先行車両22との車間距離Drとに基づいて、自車両21を先行車両22に追従させる追従制御を実行する。
【0073】
したがって、車両走行制御装置1は、先行車両群25の平均速度Vavと車間距離Drとに基づいて、例えば、先行車両群25の影響による先行車両22の挙動を予測し、自車両21の加減速の判断の精度を向上することができ、無駄な加減速を抑制して、先行車両22の状況に応じた適正な追従制御を実行することができる。また、これにより、車両走行制御装置1は、自車両21の燃費やドライバビリティを向上できる。
【0074】
[実施形態2]
図4は、実施形態2に係る車両走行制御装置の概略構成を示すブロック図、図5は、実施形態2に係る車両走行制御装置における追従制御の一例を説明するフローチャートである。実施形態2に係る車両走行制御装置は、追従制御の実行態様が実施形態1に係る車両走行制御装置とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
【0075】
図4に示す本実施形態に係る車両走行制御装置201は、自車両21に対する加減速要求操作の操作量と実際に自車両21に作用させる加減速度との関係を変更し自車両21の加減速を調節することで追従制御を実行する。
【0076】
本実施形態の車両走行制御装置201の制御装置本体3は、機能概念的に処理部3aに、さらにマップ切替部236が設けられる。また、本実施形態の車両走行制御装置201の加減速度調節アクチュエータ208は、ブレーキアクチュエータ81、スロットルアクチュエータ82にかえて、自車両21が走行用動力源として搭載する回転電機283を含んで構成される。
【0077】
回転電機283は、上述したように電力の供給により駆動し電気エネルギを機械エネルギに変換して出力する電動機としての機能(力行機能)と機械エネルギを電気エネルギに変換する発電機としての機能(回生機能)とを兼ね備えたものである。加減速度調節アクチュエータ208をなす回転電機283は、制御装置本体3の加減速度制御部35によって力行駆動させられた際に自車両21を加速させる装置(言い換えれば駆動力発生装置)として作動する一方、制御装置本体3によって回生駆動させられた際に自車両21を減速させる装置(言い換えれば制動力発生装置)として作動する。回転電機283は、基本的には、自車両21に対する加減速要求操作の操作量に相当するアクセル開度に応じてその出力の大きさが設定される。つまり、基本的には、加減速度制御部35は、自車両21に対する運転者からの加減速要求操作の操作量に相当するアクセル開度に応じて回転電機283が発生させる出力制駆動トルクを調節する。
【0078】
そして、マップ切替部236は、自車両21に対する加減速要求操作の操作量と実際に自車両21に作用させる加減速度との関係を変更するものである。マップ切替部236は、例えば、自車両21に対する加減速要求操作の操作量に相当するアクセル開度と回転電機283が発生させる出力制駆動トルクとの関係を記述した加減速マップを取得・判定・予測部31による判定に応じて切り替えることで、自車両21に対する加減速要求操作の操作量と実際に自車両21に作用させる加減速度との関係を変更し自車両21の加減速を調節し先行車両群25の平均速度Vavと車間距離Drとに基づいた追従制御を実行する。アクセル開度と回転電機283が発生させる出力制駆動トルクとの関係を記述した加減速マップは、例えば、上述した追従加速制御、追従加速抑制制御、追従減速制御、追従減速抑制制御ごとに記憶部3bに格納されており、加減速度制御部35が参照する加減速マップは、マップ切替部236により状況に応じて適宜切り替えられる。
【0079】
次に、図5のフローチャートを参照して、本実施形態に係る車両走行制御装置201の追従制御の一例を説明する。なお、ここでも実施形態1の車両走行制御装置1と同様なステップについてはその説明をできるだけ省略する。
【0080】
取得・判定・予測部31は、S118にて、自車両21の速度Vnが平均速度Vavより大きいと判定した場合(S118:No)、自車両21の減速が必要であると判定する。そして、マップ切替部236は、アクセル開度と回転電機283が発生させる出力制駆動トルクとの関係を記述した加減速マップをアクセルペダルのOFF時(アクセル開度が0の状態)の制動トルクが通常よりも大きく設定された追従減速制御用の加減速マップに設定する。加減速度制御部35は、この追従減速制御用の加減速マップに基づいて加減速度調節アクチュエータ208をなす回転電機283を制御し、車間距離Drを大きくしやすくするためにアクセルペダルのOFF時の回生ブレーキ量を相対的に増加させることで、自車両21を減速する追従減速制御を実行して(S220)、現在の制御周期を終了し次の制御周期に移行する。
【0081】
取得・判定・予測部31は、S118にて自車両21の速度Vnが平均速度Vav以下であると判定した場合(S118:Yes)、自車両21の大きな減速は必要ないと判定する。そして、マップ切替部236は、アクセル開度と回転電機283が発生させる出力制駆動トルクとの関係を記述した加減速マップをアクセルペダルのOFF時(アクセル開度が0の状態)の制動トルクが通常の大きさに設定された追従減速抑制制御用の加減速マップ、ここでは通常の加減速マップに設定する。加減速度制御部35は、この追従減速抑制制御用の加減速マップに基づいて加減速度調節アクチュエータ208をなす回転電機283を制御し、自車両21を過度に減速させず車間距離Drを大きくしにくくするためにアクセルペダルのOFF時の回生ブレーキ量を相対的に減少させ、ここでは通常の回生ブレーキ量を発生させることで、自車両21の減速を抑制する追従減速抑制制御を実行して、現在の制御周期を終了し次の制御周期に移行する。
【0082】
取得・判定・予測部31は、S122にて自車両21の速度Vnが平均速度Vav以上であると判定した場合(S122:Yes)、自車両21の大きな加速は必要ないと判定する。そして、マップ切替部236は、アクセル開度と回転電機283が発生させる出力制駆動トルクとの関係を記述した加減速マップをアクセル開度に対する出力駆動トルクが通常よりも小さく設定された追従加速抑制制御用の加減速マップに設定する。加減速度制御部35は、この追従加速抑制制御用の加減速マップに基づいて加減速度調節アクチュエータ208をなす回転電機283を制御し、過度に加速させず車間距離Drを小さくしにくくするためにアクセル開度に対する出力駆動トルクを相対的に減少させることで、自車両21の加速を抑制する追従加速抑制制御を実行して(S224)、現在の制御周期を終了し次の制御周期に移行する。
【0083】
取得・判定・予測部31は、S122にて、自車両21の速度Vnが平均速度Vavより小さいと判定した場合(S122:No)、自車両21の加速が必要であると判定する。マップ切替部236は、アクセル開度と回転電機283が発生させる出力制駆動トルクとの関係を記述した加減速マップをアクセル開度に対する出力駆動トルクが通常の大きさに設定された追従加速制御用の加減速マップ、ここでは追従減速抑制制御用の加減速マップと同じ通常の加減速マップに設定する。加減速度制御部35は、この追従加速制御用の加減速マップに基づいて加減速度調節アクチュエータ208をなす回転電機283を制御し、車間距離Drを小さくしやすくするためにアクセル開度に対する出力駆動トルクを相対的に増加させ、ここでは通常の出力駆動トルクを発生させることで、自車両21を加速する追従加速制御を実行して、現在の制御周期を終了し次の制御周期に移行する。
【0084】
以上で説明した本発明の実施形態に係る車両走行制御装置201によれば、自車両21に対する加減速要求操作の操作量としてのアクセル開度と実際に自車両21に作用させる加減速度との関係を変更し自車両21の加減速を調節することで追従制御を実行する。したがって、車両走行制御装置201は、自車両21に対する運転者の加減速要求操作に対して、これと連動して自車両21の加減速度を修正して自車両21と先行車両22との間の車間距離Drを所定の距離に維持する追従制御を実行することができる。
【0085】
つまり、車両走行制御装置201では、運転者の自車両21に対する加減速要求操作(アクセルペダルの踏み込み操作等)に応じて自車両21が加減速するが、この加減速要求操作の操作量と出力制駆動トルクとの関係が先行車両22の挙動(加減速予測)などに応じて適正な関係に調節される。これにより、車両走行制御装置201は、運転者の自車両21に対する加減速要求に従いつつも、無駄な加減速を抑制して、先行車両22の状況に応じた適正な追従制御を実行することができ、自車両21の燃費やドライバビリティを向上できる。また、上記の車両走行制御装置201では、回生ブレーキも有効活用できる。
【0086】
なお、上述した本発明の実施形態に係る車両走行制御装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本発明の実施形態に係る車両走行制御装置は、以上で説明した実施形態を複数組み合わせることで構成してもよい。
【0087】
以上の説明では、制御装置本体3は、自車両21(車両2)に搭載された形態で処理を行う場合を例示して説明したが、これに限らず、例えば、制御装置本体3を自車両21の外部に設けられる装置として構成し、自車両21からのネットワーク経由の要求に応じて処理を行い、その処理結果を当該自車両21に返却するように構成してもよい。 また、装置の分散・統合の具体的形態は図示するものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷等に応じた任意の単位で、機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上のように、本発明に係る車両走行制御装置は、先行車両の状況に応じた適正な追従制御を実行することができるものであり、自車両を先行車両に追従させる追従制御を実行する種々の車両走行制御装置に用いて好適である。
【符号の説明】
【0089】
1、201 車両走行制御装置
2 車両
3 制御装置本体
4 車間距離検出装置
5 自車位置検出装置
6 速度取得装置
7 走行状態検出装置
8、208 加減速度調節アクチュエータ
21 自車両
22 先行車両
23 先々行車両
25 先行車両群
31 取得・判定・予測部
32 変化周期設定部
33 先読み距離算出部
34 平均速度算出部
35 加減速度制御部
236 マップ切替部
A 変化周期
Dr 車間距離
L 先読み距離
Vav 平均速度
Vn 速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも自車両の走行方向の前方を走行する先行車両と当該先行車両の走行方向の前方を走行する先々行車両とを含む先行車両群の平均の速度と、前記自車両と前記先行車両との車間距離とに基づいて、前記自車両を前記先行車両に追従させる追従制御を実行することを特徴とする、
車両走行制御装置。
【請求項2】
前記自車両に対する加減速要求操作にかかわらず前記自車両の加減速を調節することで前記追従制御を実行する、
請求項1に記載の車両走行制御装置。
【請求項3】
前記自車両に対する加減速要求操作の操作量と実際に前記自車両に作用させる加減速度との関係を変更し前記自車両の加減速を調節することで前記追従制御を実行する、
請求項1に記載の車両走行制御装置。
【請求項4】
前記自車両の加減速度の変化周期と前記自車両の速度とに基づいて先読み距離を設定し、前記自車両の現在地点から走行方向の前方へ前記先読み距離先の地点までの範囲の車両を含む前記先行車両群の平均の速度を算出し当該先行車両群の平均の速度と前記車間距離とに基づいて前記追従制御を実行する、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両走行制御装置。
【請求項5】
前記車間距離が増加しかつ前記自車両の速度が前記先行車両群の平均の速度より小さい場合に前記自車両を加速する前記追従制御を実行し、
前記車間距離が増加しかつ前記自車両の速度が前記先行車両群の平均の速度より大きい場合に少なくとも前記車間距離が増加しかつ前記自車両の速度が前記先行車両群の平均の速度より小さい場合と比較して前記自車両の加速を抑制する前記追従制御を実行し、
前記車間距離が減少しかつ前記自車両の速度が前記先行車両群の平均の速度より大きい場合に前記自車両を減速する前記追従制御を実行し、
前記車間距離が減少しかつ前記自車両の速度が前記先行車両群の平均の速度より小さい場合に少なくとも前記車間距離が減少しかつ前記自車両の速度が前記先行車両群の平均の速度より大きい場合と比較して前記自車両の減速を抑制する前記追従制御を実行する、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の車両走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−98604(P2011−98604A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253363(P2009−253363)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】