説明

車両運転装置

【課題】アクセル操作部材及びブレーキ操作部材の少なくとも一方が一対設けられた車両運転装置において、乗員が一方のアクセル操作部材から他方のアクセル操作部材に、又は一方のブレーキ操作部材から他方のブレーキ操作部材に手を持ち替える際の車両の加減速を抑制することを目的とする。
【解決手段】一対のアクセルレバー44、一対のブレーキレバー46が操舵部32に設けられた車両運転装置10に、一対のアクセルレバー44の動作を同期させるアクセルレバー連動機構48と、一対のブレーキレバー44の動作を同期させるブレーキレバー連動機構50とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転操作に用いられる車両運転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一対のアクセルレバー(アクセル操作部材)と一対のブレーキレバー(ブレーキ操作部材)とがステアリングホイールに設けられ、ステアリングホイールを把持したまま、指先でアクセル操作とブレーキ操作との双方を行うことができる車両の加減速操作装置が考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この加減速操作装置では、アクセルレバーとブレーキレバーとがそれぞれ一対ずつ設けられているので、左右何れかの手でアクセル操作、ブレーキ操作を行えばよい。しかし、一方のアクセルレバーと他方のアクセルレバーとの動作が独立し、一方のブレーキレバーと他方のブレーキレバーとの動作が独立しているので、乗員が一方のアクセルレバーから他方のアクセルレバーに手を持ち替えようとした際、また、一方のブレーキレバーから他方のブレーキレバーに手を持ち替えようとした際に、一方のアクセルレバーと他方のアクセルレバーとの操作量に差ができ、また、一方のブレーキレバーと他方のブレーキレバーとの操作量に差ができて急に車両が加減速する可能性がある。
【特許文献1】特開平5−270410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮し、アクセル操作部材及びブレーキ操作部材の少なくとも一方が一対設けられた車両運転装置において、車両の急な加減速の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の車両運転装置は、車両のアクセル操作時に乗員により操作される一対のアクセル操作部材と、一対の前記アクセル操作部材の動作を連動させるアクセル連動手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の車両運転装置では、一対のアクセル操作部材の動作が、アクセル連動手段によって連動されるので、一方のアクセル操作部材と他方のアクセル操作部材との操作量の差を抑制できる。これによって、車両のアクセル操作時に乗員が一方のアクセル操作部材から他方のアクセル操作部材に手を持ち替える際の、車両の急な加減速の発生を抑制できる。
【0007】
請求項2に記載の車両運転装置は、請求項1に記載の車両運転装置であって、車両のブレーキ操作時に乗員により操作される一対のブレーキ操作部材と、一対の前記ブレーキ操作部材の動作を連動させるブレーキ連動手段と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の車両運転装置では、一対のブレーキ操作部材の動作が、ブレーキ連動手段によって連動されるので、一方のブレーキ操作部材と他方のブレーキ操作部材との操作量の差を抑制できる。これによって、車両のブレーキ操作時に乗員が一方のブレーキ操作部材から他方のブレーキ操作部材に手を持ち替える際の、車両の急な加減速の発生を抑制できる。
【0009】
請求項3に記載の車両運転装置は、請求項1又は請求項2に記載の車両運転装置であって、前記アクセル連動手段は、一対の前記アクセル操作部材の動作を同期させることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の車両運転装置では、一対のアクセル操作部材の動作が、アクセル連動手段によって同期されるので、一対のアクセル操作部材の操作状態が常時等しくなる。これによって、車両のアクセル操作時に乗員が一方のアクセル操作部材から他方のアクセル操作部材に手を持ち替える際の、車両の急な加減速の発生を防止できる。
【0011】
請求項4に記載の車両運転装置は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の車両運転装置であって、前記アクセル操作部材は回転可能に設けられており、前記アクセル連動手段は、一対の前記アクセル操作部材の回転軸の間で回転を伝達するギア列であることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の車両運転装置では、アクセル操作部材が回転可能に設けられており、車両のアクセル操作により一方のアクセル操作部材が回転すると、一対のアクセル操作部材の回転軸の間でギア列による回転の伝達が行われ、他方のアクセル操作部材が回転される。これによって、一対のアクセル操作部材が連動する。
【0013】
ここで、一対のアクセル操作部材の回転軸の間での駆動の伝達を、ギア列により行っているが、ギア列の場合、ワイヤによる駆動伝達機構におけるワイヤのテンション調整等の調整が不要である。従って、一対のアクセル操作部材の回転軸の間での駆動の伝達を、ギア列により行うことで、メンテナンス性や組立性の低下を抑制できる。
【0014】
請求項5に記載の車両運転装置は、車両のブレーキ操作時に乗員により操作される一対のブレーキ操作部材と、一対の前記ブレーキ操作部材の動作を連動させるブレーキ連動手段と、を有することを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の車両運転装置では、一対のブレーキ操作部材の動作が、ブレーキ連動手段によって連動されるので、一方のブレーキ操作部材と他方のブレーキ操作部材との操作量の差を抑制できる。これによって、車両のブレーキ操作時に乗員が一方のブレーキ操作部材から他方のブレーキ操作部材に手を持ち替える際の、車両の急な加減速の発生を抑制できる。
【0016】
請求項6に記載の車両運転装置は、請求項2又は請求項5に記載の車両運転装置であって、前記ブレーキ連動手段は、一対の前記ブレーキ操作部材の動作を同期させることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の車両運転装置では、一対のブレーキ操作部材の動作が、ブレーキ連動手段によって同期されるので、一対のブレーキ操作部材の操作状態が常時等しくなる。これによって、車両のブレーキ操作時に乗員が一方のブレーキ操作部材から他方のブレーキ操作部材に手を持ち替える際の、車両の急な加減速の発生を防止できる。
【0018】
請求項7に記載の車両運転装置は、請求項2、請求項5、及び請求項6の何れか1項に記載の車両運転装置であって、前記ブレーキ操作部材は回転可能に設けられており、前記ブレーキ操作部は、一対の前記ブレーキ操作部材の回転軸の間で回転を伝達するギア列であることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の車両運転装置では、ブレーキ操作部材が回転可能に設けられており、車両のブレーキ操作により一方のブレーキ操作部材が回転すると、一対のブレーキ操作部材の回転軸の間でギア列による回転の伝達が行われ、他方のアクセル操作部材が回転される。これによって、一対のブレーキ操作部材が連動する。
【0020】
ここで、一対のブレーキ操作部材の回転軸の間での駆動の伝達を、ギア列により行っており、ワイヤによる駆動伝達機構におけるワイヤのテンション調整等の調整が不要なので、メンテナンス性や組立性の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上記構成にしたので、アクセル操作部材及びブレーキ操作部材の少なくとも一方が一対設けられた車両運転装置において、車両の急な加減速の発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0023】
図1、図2に示すように、車両運転装置10は、運転操作部12と、操舵軸14と、操舵軸支持部16と、を備えている。操舵軸支持部16は、一対のプレート16A、16Bと、軸方向一端部及び他端部をそれぞれプレート16Aとプレート16Bとに固定され、一対のプレート16A、16Bを互いに対向した状態で結合する複数本の棒材16Cとで構成されている。
【0024】
また、操舵軸14は、円柱状の軸体であり、軸方向一端部を軸受(図示省略)を介してプレート16Bに回転可能に支持され、軸方向中央部を軸受(図示省略)を介してプレート16Aに回転可能に支持されており、プレート16Bからプレート16Aの反プレート16B側(乗員側)へ、プレート16A、16Bの法線方向(車両前後方向)に沿って延在している。
【0025】
また、運転操作部12は、操舵部22と、一対のアクセル・ブレーキ操作部24と、アクセル・ブレーキ操作検出部26と、アクセル・ブレーキ連動機構28と、を備えている。操舵部22は、操舵軸14の軸方向他端部に回転不能に取付けられた連結部材30と、連結部材30に結合された操舵部32と、を備えており、操舵部32が、連結部材30を介して操舵軸14に相対回転不能に取付けられている。
【0026】
この操舵部32は、断面矩形状の長尺の部材であり、長手方向中央部に連結部材30が結合され、操舵軸14の径方向へ延在している。即ち、操舵部32は、操舵軸14を中心として操舵軸14と直交する面内で回転可能となっている。なお、操舵部32は、車両直進時(非操舵時)に、長手方向一端部と他端部とが略水平になる。
【0027】
ここで、操舵部32の回転操作による操舵軸14の回転位置が、ポテンショメータ34(図3参照)によって検出され、車両全体の制御を司るECU36(図3参照)へ検出信号が送信される。また、車両のタイヤ37を操舵する操舵機構38(図3参照)は、モータ40(図3参照)によって駆動される。
【0028】
このモータ40はECU36によって制御されるが、ECU36は、操舵部32の回転位置に応じてタイヤ37が操舵されるように、回転位置検出装置34から送信された検出信号に基づいてモータ40の駆動を制御する。
【0029】
また、各アクセル・ブレーキ操作部24は、操舵部32の長手方向一端部及び他端部にそれぞれ設けられている。ここで、一対のアクセル・ブレーキ操作部24は、操舵軸14に対して対称な位置に配設されると共に、操舵軸14に対して対称な構成となっている。
【0030】
各アクセル・ブレーキ操作部24は、グリップ部42と、アクセル操作部材としてのアクセルレバー44と、ブレーキ操作部材としてのブレーキレバー46と、を備えている。グリップ部42は、操舵部32の長手方向一端部及び他端部に結合された基部42Aと、基部42Aの外側に取付けられる円柱形状のカバー体(図示省略)とで構成されており、全体として円柱形状になっている。このグリップ部42は、軸方向が操舵部32の回転軌跡の接線方向と略平行になるように配設されている。
【0031】
また、基部42Aの乗員側の面には、軸受部42Cが形成されている。この軸受部42Cは、支持する軸の軸方向がグリップ部42の軸方向と略平行であり、グリップ部42の軸方向に長尺である。また、基部42Aの軸受部42Cの反乗員側且つ基部42Aの非操舵時における車両上側の端部には、軸受部42Dが形成されている。この軸受部42Dは、支持する軸の軸方向がグリップ部42の軸方向と略直角であり、且つ、操舵部32の回転軌跡の径方向と略平行である。
【0032】
また、軸受部42Cの反操舵軸14側には、一対の軸受部42Eがグリップ部42の軸方向に並べて形成され、一対の軸受部42Eの反乗員側には、一対の軸受部42Fがグリップ部42の軸方向に並べて形成されている。この軸受部42E、42Fの支持する軸の軸方向は、グリップ部42の軸方向と略平行になっている。
【0033】
また、アクセルレバー44は、半円形状に湾曲した軸部材であるレバー部44Aと、上記軸受部42Cに回転可能に支持された回転軸44Bとで構成されている。レバー部44Aは、軸方向両端部を回転軸44Bに固定されている。即ち、アクセルレバー44は、グリップ部42の軸方向、及び操舵部32の回転軌跡の接線と略平行である回転軸44B回りに回転可能に、基部42Aの乗員側の面に支持されている。
【0034】
また、ブレーキレバー46は、略コ字状に湾曲した軸部材であるレバー部46Aと、上記軸受部42Dに回転可能に支持された回転軸46Bとで構成されている。レバー部46Aは、軸方向一端部を回転軸46Bに固定されている。即ち、ブレーキレバー46は、グリップ部42の軸方向と直交し、且つ操舵部32の回転軌跡の径方向と略平行である回転軸46B回りに回動可能に、基部42Aのアクセルレバー44の反乗員側に支持されている。
【0035】
また、ブレーキレバー46は、支持端部から反乗員側へ延出してグリップ部42の軸方向一端側(非操舵時の車両下側)へ屈曲され、そして、グリップ部42の軸方向一端側へ延出して乗員側へ屈曲されており、ブレーキレバー46の回動端部は、乗員側と反乗員側とに変位可能となっている。
【0036】
また、アクセル・ブレーキ連動機構28は、アクセル連動手段としてのアクセル連動機構48と、ブレーキ連動手段としてのブレーキ連動機構50とを備えている。アクセル連動機構48は、一対のアクセルレバー44の回転軸44Bの間で回転を伝達するギア列であり、各回転軸44Bの回転が入力され、各回転軸44Bへ回転を出力する一対の回転入出力部52と、一対の回転入出力部52の間で回転を伝達する回転伝達部54とを備えている。なお、アクセル・ブレーキ連動機構28は、操舵軸14に対して対称な構成となっている。
【0037】
図4、図5に示すように、回転入出力部52は、アクセルレバー44の回転軸44Bの軸方向一端部(非操舵時の車両下側端部)に取付けられたギア56と、軸方向中央部を軸受部42Eに回転可能に支持された回転軸58と、回転軸58の軸方向中央部に取付けられ、ギア56と噛合うギア60と、回転軸58の軸方向一端部(非操舵時の車両下側端部)に取付けられた、かさ歯車であるギア62と、回転軸58の軸方向他端部(非操舵時の車両上側端部)に挿通された捻りコイルバネ64と、を備えている。
【0038】
なお、ギア56、62側から見て時計回り方向である方向を時計回り方向、反時計回り方向である方向を反時計回り方向と呼ぶ。
【0039】
ギア56、60は、回転軸44Bと回転軸58との間で回転を伝達する。また、捻りコイルバネ64は、一端部を回転軸58に係止され、他端部を基部42Aに形成された被係止部42Gに係止されており、回転軸58が時計回り方向へ回転すると、弾性変形して回転軸58を反時計回り方向へ付勢する。
【0040】
ここで、アクセルレバー44を反時計回り方向へ回動させる操作、即ち、アクセルレバー44を反乗員側へ変位させる操作では、回転軸44Bが反時計回り方向へ、回転軸58が時計回り方向へ回転されるので、この操作は、捻りコイルバネ64の付勢力に抗して行われることになる。このため、アクセルレバー44を反乗員側へ変位させた後、アクセルレバー44から手を離すと、アクセルレバー44は、捻りコイルバネ64の付勢力によって乗員側へ変位される。
【0041】
また、ここで、捻りコイルバネ64が弾性復帰した状態で、アクセルレバー44が停止するが、アクセルレバー44の停止姿勢が、グリップ部42から操舵部32の中央部側へ倒れ、且つ、グリップ部42から乗員側へ起きた状態になるように、捻りコイルバネ64の取付け位置が設定されている。
【0042】
また、図1、図5、及び図6に示すように、回転伝達部54は、操舵部32の反操舵軸14側に回転可能に設けられた回転シャフト66と、回転シャフト66の軸方向両端部に設けられた一対のギア68とを備えている。回転シャフト66は、軸方向中央部を、連結部材30の反操舵軸14側に結合されたシャフト支持部材70に回転可能に支持され、軸方向両端部を、各基部42Aの軸方向一端部(非操舵時の車両下側端部)にそれぞれ形成された一対の軸受部42Hに回転可能に支持されている。
【0043】
また、回転シャフト66は、シャフト支持部材70に支持された第1シャフト部66Aと、各軸受部42Hにそれぞれ支持された一対の第2シャフト部66Bと、第1シャフト部66Aと各第2シャフト部66Bとの間にそれぞれ配設された一対の第3シャフト部66Cと、第1シャフト部66Aと第3シャフト部66Cとの間、第3シャフト部66Cと第2シャフト部66Bとの間にそれぞれ配設された計4個の継ぎ手部66Dとで構成されている。回転シャフト66は、第1シャフト部66Aと第3シャフト部66Cとの接続部、第3シャフト部66Cと第2シャフト部66Bとの接続部において屈曲し、且つ、軸方向中央部と軸方向両端部を支持されているので、該接続部が固定状態であれば回転不能となる。しかし、継ぎ手部66Dが、自在継ぎ手(所謂、ユニバーサルジョイント)であり、軸の回転を角度を付けて伝えることができることから、回転シャフト66は回転可能となっている。
【0044】
また、ギア68が、第2シャフト部66Bの軸方向の反継ぎ手部66D側の端部に設けられている。このギア68はかさ歯車であり、同じくかさ歯車であるギア62と噛合っている。これによって、第2シャフト部66Bに対して傾斜した回転軸58と、第2シャフト部66Bとの間で回転の伝達が可能となる。
【0045】
また、ブレーキ連動機構50は、一対のブレーキレバー46の回転軸46Bの間で回転を伝達するギア列であり、各回転軸46Bの回転が入力され、各回転軸46Bへ回転を出力する一対の回転入出力部72と、一対の回転入出力部72の間で回転を伝達する回転伝達部74とを備えている。
【0046】
図4、図5に示すように、回転入出力部72は、ブレーキレバー46の回転軸46Bに取付けられたギア76と、軸方向両端部を軸受部42Fに回転可能に支持された回転軸78と、回転軸78の軸方向一端部(非操舵時の車両下側端部)に取付けられたギア80と、回転軸78の軸方向他端部(非操舵時の車両上側端部)に取付けられ、ギア76と噛合うギア82と、回転軸78の軸方向一端側に挿通された捻りコイルバネ84と、を備えている。
【0047】
なお、ギア76、80側から見て時計回り方向である方向を時計回り方向、反時計回り方向である方向を反時計回り方向と呼ぶ。
【0048】
ブレーキレバーの回転軸46Bに取付けられたギア76、回転軸78に取付けられたギア82は、共にはすば歯車であり、互いに直交した回転軸46Bと回転軸78との間で回転を伝達する。また、捻りコイルバネ84は、一端部を回転軸78に係止され、他端部を基部42A側に係止されており、回転軸78が時計回り方向へ回転すると、弾性変形して回転軸78を反時計回り方向へ付勢する。
【0049】
ここで、ブレーキレバー46を時計回り方向へ回動させる操作、即ち、ブレーキレバー46を乗員側へ変位させる操作では、回転軸46Bが時計回り方向へ、回転軸58が時計回り方向へ回転されるので、この操作は、捻りコイルバネ84の付勢力に抗して行われることになる。このため、ブレーキレバー46を乗員側へ変位させた後、ブレーキレバー46から手を離すと、ブレーキレバー46は、捻りコイルバネ84の付勢力によって反乗員側へ変位する。
【0050】
また、ここで、捻りコイルバネ84が弾性復帰した状態で、ブレーキレバー46が停止するが、ブレーキレバー46は、グリップ部42から反乗員側へ傾いた(倒れた)状態で停止するように、捻りコイルバネ84の取付け位置が設定されている。なお、ブレーキレバー46の停止位置は、親指をアクセルレバー42に掛けた状態で、人差し指、中指、薬指、小指をブレーキレバー46に掛けることができるような位置に設定されている。
【0051】
また、回転伝達部74は、操舵部32の反操舵軸14側且つ回転シャフト66の反乗員側に回転可能に設けられた回転シャフト86と、回転シャフト86の軸方向両端部に設けられた一対のギア88とを備えている。回転シャフト86は、回転シャフト66と同様の構成であり、第1シャフト部86A、一対の第2シャフト部86B、一対の第3シャフト部86C、4個の継ぎ手部86Dで構成され、回転シャフト66と略平行に延在している。
【0052】
また、ギア88は、ギア80と噛合っている。ギア88、80は、共にかさ歯車であり、第2シャフト部86Bに対して傾斜した回転軸78と、第2シャフト部86Bとの間での回転の伝達が可能となっている。
【0053】
また、図7、図8に示すように、アクセル・ブレーキ操作検出部26は、アクセル操作検出部90と、ブレーキ操作検出部92とを備えている。アクセル操作検出部90は、第1シャフト部66Aの軸方向中央部に取付けられたギア94と、ポテンショメータ96とを備えている。
【0054】
ポテンショメータ96には第1シャフト部66Aと略平行に延在する回転軸96Aが設けられ、この回転軸96Aにはギア96Bが取付けられている。また、このギア96Bとギア94とは噛合っており、ギア94、96Bによって、第1シャフト部66Aと回転軸96Aとの間での回転の伝達が行われる。
【0055】
図3に示すように、ポテンショメータ96は、回転軸96Aの回転位置を検出して検出信号をECU36へ送信する。ECU36は、回転軸96Aの回転位置に基づいてガソリンエンジン98の吸気系に装備されている電動スロットル99を制御する。
【0056】
また、図7、図8に示すように、ブレーキ操作検出部92は、第1シャフト部86Aの軸方向中央部に取付けられたギア102と、ポテンショメータ104と、ギア106とを備えている。ポテンショメータ104には第1シャフト部86Aと略平行に延在する回転軸104Aが設けられ、この回転軸104Aにはギア104Bが取付けられている。また、ギア106は、ギア104Bと噛合う大径の歯部と、ギア102に形成された歯部と噛合う小径の歯部とが形成された2段ギアであり、ギア102、104B、106によって、第1シャフト部86Aと回転軸104Aとの間での回転の伝達が行われる。
【0057】
図3に示すように、ポテンショメータ104は、回転軸104Aの回転位置を検出して検出信号をECU36へ送信する。ECU36は、回転軸104Aの回転位置に基づいて制動機構108を制御する。
【0058】
また、図7、図8に示すように、ギア102の反ギア106側にはロータリダンパ110に設けられたギア110Aが噛合っており、第1シャフト部86Aの回転力がロータリダンパ110によって減衰されている。
【0059】
次に、本車両運転装置10の作用並びに効果について説明する。
【0060】
図9に示すように、乗員側から見て右手側のアクセルレバー44に指(例えば、図示するように右手親指)が掛けられて該アクセルレバー44が反乗員側へ変位されると、右手側のアクセル・ブレーキ操作部24、アクセル・ブレーキ連動機構28の右手側において、回転軸44Bが捻りコイルバネ64の付勢力に抗して反時計回り方向へ回転し、回転軸44Bの回転がギア56、60によって回転軸58に伝達されて、回転軸58が捻りコイルバネ64の付勢力に抗して時計回り方向に回転する。
【0061】
そして、該回転軸58の回転が右手側のギア62、68によって右手側の第2シャフト部66Bに伝達され、該第2シャフト部66Bから右手側の第3シャフト部66Cへ、該第3シャフト部66Cから第1シャフト部66Aへ、第1シャフト部66Aから左手側の第3シャフト部66Cへ、該第3シャフト部66Cから左手側の第2シャフト部66Bへ、自在継ぎ手である継ぎ手部66Dによって回転が伝達されていく。これによって、回転シャフト66全体が右手側のギア68側から見て反時計回り方向に回転すると共に、第1シャフト部66Aの回転が、ギア94、96Bによってポテンショメータ96の回転軸96Aに伝達されて該回転軸96Aが回転し、ポテンショメータ96によって回転軸96Aの回転位置が検出される。ECU36は、ポテンショメータ96によって検出された回転軸96Aの回転位置に基づいて、電動スロットル99の開度を調整する。これによって、電動スロットル99が、アクセルレバー44の操作量に応じて駆動され、ガソリンエンジン98の回転量が上昇されて車両が加速していく。
【0062】
その後、左手側の第2シャフト部66Bの回転が左手側のギア68、ギア62によって左手側の回転軸58に伝達され、該回転軸58が捻りコイルバネ64の付勢力に抗して反時計回り方向に回転する。
【0063】
そして、左手側のアクセル・ブレーキ操作部24、アクセル・ブレーキ連動機構28の左手側において、回転軸58の回転が、ギア60、56によって回転軸44Bに伝達されて、該回転軸44Bが捻りコイルバネ64の付勢力に抗して時計回り方向に回転する。これによって、左手側のアクセルレバー44が反乗員側へ、右手側のアクセルレバー44と同時に、右手側のアクセルレバー44の操作量と同量だけ変位する。
【0064】
また、左手側のアクセルレバー44が操作された場合には、一対のアクセル・ブレーキ操作部24、アクセル・ブレーキ連動機構28が、右手側のアクセルレバー44が操作された場合と同じ動作をし、右手側のアクセルレバー44が左手側のアクセルレバー44と同時に、左手側のアクセルレバー44の操作量と同量だけ変位する。
【0065】
即ち、一対のアクセルレバー44の動作が、アクセル連動機構48によって同期されるので、一対のアクセルレバー44の操作量が常時等しくなる。これによって、車両のアクセル操作時に乗員が一方のアクセルレバー44から他方のアクセルレバー44に手を持ち替える際の、車両の急な加減速の発生を防止できる。
【0066】
また、一対のアクセルレバー44の操作量が常時等しくなることによって、一対のアクセルレバー44を左右の手で同時に操作することも可能である。これによって、アクセル操作の荷重を左右の手に分散させて手指への負担を軽減することが可能となる。
【0067】
また、一対のアクセルレバー44の回転軸44Bの間での駆動の伝達を、ギア列により行ったことによって、ワイヤによる駆動伝達機構におけるワイヤのテンション調整等の調整が不要なので、メンテナンス性や組立性の低下を抑制できる。
【0068】
一方、図10に示すように、右手側のブレーキレバー46に指(例えば、図示するように右手中指、薬指、小指)が掛けられて該ブレーキレバー46が乗員側へ変位されると、右手側のアクセル・ブレーキ操作部24、アクセル・ブレーキ連動機構28の右手側において、回転軸46Bが捻りコイルバネ84の付勢力に抗して時計回り方向へ回転し、回転軸46Bの回転がギア76、82によって回転軸78に伝達されて、回転軸78が捻りコイルバネ84の付勢力に抗して時計回り方向に回転する。
【0069】
そして、該回転軸78の回転が右手側のギア80、88によって右手側の第2シャフト部86Bに伝達され、該第2シャフト部86Bから右手側の第3シャフト部86Cへ、該第3シャフト部86Cから第1シャフト部86Aへ、第1シャフト部86Aから左手側の第3シャフト部86Cへ、該第3シャフト部86Cから左手側の第2シャフト部86Bへ、自在継ぎ手である継ぎ手部86Dによって回転が伝達されていく。これによって、回転シャフト86全体が右手側のギア88側から見て反時計回り方向に回転すると共に、第1シャフト部86Aの回転が、ギア102、104B、106によって、ポテンショメータ104の回転軸104Aに伝達されて回転軸104Aが回転し、ポテンショメータ104によって回転軸104Aの回転位置が検出される。ECU36は、ポテンショメータ104によって検出された回転軸104Aの回転位置に基づいて、制動機構108を調整する。これによって、制動機構108が、ブレーキレバー46の操作量に応じて駆動され、車両が減速していく。
【0070】
その後、左手側の第2シャフト部86Bの回転が左手側のギア88、ギア80によって左手側の回転軸78に伝達され、該回転軸78が捻りコイルバネ84の付勢力に抗して反時計回り方向に回転する。
【0071】
そして、左手側のアクセル・ブレーキ操作部24、アクセル・ブレーキ連動機構28の左手側において、回転軸78の回転が、ギア82、76によって回転軸46Bに伝達されて、該回転軸46Bが捻りコイルバネ84の付勢力に抗して時計回り方向に回転する。これによって、左側のブレーキレバー46が乗員側へ、右手側のブレーキレバー46と同時に、右手側のブレーキレバー46の操作量と同量だけ変位する。
【0072】
また、左手側のブレーキレバー46が操作された場合には、一対のアクセル・ブレーキ操作部24、アクセル・ブレーキ連動機構28が、右手側のブレーキレバー46が操作された場合と同じ動作をし、右手側のブレーキレバー46が左手側のブレーキレバー46と同時に、左手側のブレーキレバー46の操作量と同量だけ変位する。
【0073】
即ち、一対のブレーキレバー46の動作が、ブレーキ連動機構50によって同期されるので、一対のブレーキレバー46の操作量が常時等しくなる。これによって、車両のブレーキ操作時に乗員が一方のブレーキレバー46から他方のブレーキレバー46に手を持ち替える際の、車両の急な加減速の発生を防止できる。
【0074】
また、一対のブレーキレバー46の操作量が常時等しくなることによって、一対のブレーキレバー46を左右の手で同時に操作することも可能である。これによって、ブレーキ操作の荷重を左右の手に分散させて手指への負担を軽減することが可能となる。
【0075】
また、一対のブレーキレバー46の回転軸47Bの間での駆動の伝達を、ギア列により行ったことによって、ワイヤによる駆動伝達機構におけるワイヤのテンション調整等の調整が不要なので、メンテナンス性や組立性の低下を抑制できる。
【0076】
なお、本実施形態では、一対のアクセルレバー44の動作を同期させたが、一対のアクセルレバー44が、連動して同様の動作を行えばよく、一対のアクセルレバー44の動作に多少の時間差があっても良い。また、ブレーキレバー46も同様で、一対のブレーキレバー46が、連動して同様の動作を行えば良く、一対のブレーキレバー46の動作に多少の時間差があっても良い。
【0077】
また、本実施形態では、アクセル連動機構48、ブレーキ連動機構50として、ギア列を用いたので、上述したように、メンテナンス性や組立性に優れているが、アクセル連動機構48、ブレーキ連動機構50としては、ワイヤや、リンク等のその他の駆動伝達機構も適用可能である。
【0078】
また、本実施形態では、一対のアクセルレバー44の動作を連動(同期)させ、且つ、一対のブレーキレバー46の動作を連動(同期)させているが、一対のアクセルレバー44の動作のみ、あるいは、一対のブレーキレバー46の動作のみを連動させるようにしても良い。
【0079】
また、本実施形態では、アクセルレバー44とブレーキレバー46とを一対ずつ設けたが、必須ではなく、一対設けるのは、アクセルレバー44とブレーキレバー46との少なくとも一方で良い。
【0080】
また、本実施形態では、アクセルレバー44、ブレーキレバー46を操舵部32に設けているが、アクセルレバー44のみ、あるいは、ブレーキレバー46のみを操舵部32に設けても良く、さらには、アクセルレバー44、ブレーキレバー46を、例えばアームレスト等の操舵部以外の場所に設けても良い。
【0081】
さらに、本実施形態では、アクセル操作部材をアクセルレバー44、ブレーキ操作部材をブレーキレバー46としたが、アクセル操作部材とブレーキ操作部材としては、ジョイスティック型やボール型等の操作部材も適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施形態に係る車両運転装置を車両の斜め後方から見た斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両運転装置を斜め上方から見た斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両運転装置を採用した車両運転システムの概略を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車両運転装置のグリップ部の周囲を車両側方から見た側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る車両運転装置のグリップ部の周囲を車両前方から見た正面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る車両運転装置のアクセル・ブレーキ連動機構を車両の斜め後方から見た斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係る車両運転装置のアクセル・ブレーキ操作検出部を車両の斜め後方から見た斜視図である。
【図8】本発明の実施形態に係る車両運転装置のアクセル・ブレーキ操作検出部を車両の斜め前方から見た斜視図である。
【図9】本発明の実施形態に係る車両運転装置の作動状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施形態に係る車両運転装置の作動状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0083】
10 車両運転装置
44 アクセルレバー(アクセル操作部材)
46 ブレーキレバー(ブレーキ操作部材)
48 アクセル連動機構(アクセル連動手段)
50 ブレーキ連動機構(ブレーキ連動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のアクセル操作時に乗員により操作される一対のアクセル操作部材と、
一対の前記アクセル操作部材の動作を連動させるアクセル連動手段と、
を有することを特徴とする車両運転装置。
【請求項2】
車両のブレーキ操作時に乗員により操作される一対のブレーキ操作部材と、
一対の前記ブレーキ操作部材の動作を連動させるブレーキ連動手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の車両運転装置。
【請求項3】
前記アクセル連動手段は、一対の前記アクセル操作部材の動作を同期させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両運転装置。
【請求項4】
前記アクセル操作部材は回転可能に設けられており、
前記アクセル連動手段は、一対の前記アクセル操作部材の回転軸の間で回転を伝達するギア列であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の車両運転装置。
【請求項5】
車両のブレーキ操作時に乗員により操作される一対のブレーキ操作部材と、
一対の前記ブレーキ操作部材の動作を連動させるブレーキ連動手段と、
を有することを特徴とする車両運転装置。
【請求項6】
前記ブレーキ連動手段は、一対の前記ブレーキ操作部材の動作を同期させることを特徴とする請求項2又は請求項5に記載の車両運転装置。
【請求項7】
前記ブレーキ操作部材は回転可能に設けられており、
前記ブレーキ操作部は、一対の前記ブレーキ操作部材の回転軸の間で回転を伝達するギア列であることを特徴とする請求項2、請求項5、及び請求項6の何れか1項に記載の車両運転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−14204(P2008−14204A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185371(P2006−185371)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】