車両
【課題】 横風に強い車両を提供することを課題とする。
【解決手段】 第1発明の車両は、横風の発生を予知し、その予知された横風に基づいて、例えば、電子制御ユニットは、支持装置30を、あらかじめ作動させて横風に対処するように制御する。そのため、第1発明の車両は、横風に強い車両となる。また、第2発明の車両は、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との少なくとも一方を変化させることで、車体の左右を流れる気流の間に圧力差を発生させたり、車体の横風の風下側を流れる気流を車体に当てることで、横風に対抗する力を車体に作用させる。そのため、第2発明の車両は、横風に強い車両となる。
【解決手段】 第1発明の車両は、横風の発生を予知し、その予知された横風に基づいて、例えば、電子制御ユニットは、支持装置30を、あらかじめ作動させて横風に対処するように制御する。そのため、第1発明の車両は、横風に強い車両となる。また、第2発明の車両は、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との少なくとも一方を変化させることで、車体の左右を流れる気流の間に圧力差を発生させたり、車体の横風の風下側を流れる気流を車体に当てることで、横風に対抗する力を車体に作用させる。そのため、第2発明の車両は、横風に強い車両となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の横風に対処するための横風対処手段を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が走行中に横風を受けると、例えば、車体が風下側に傾斜したり、あるいは、車両が風下側に向かって斜行するといった事態、すなわち、車両の安定性が妨げられる事態が発生することがある。このような事態を防ぐため、下記特許文献に記載の車両は、横風によって車両に作用する力を推定し、その推定した力に基づいて、横風の風上側に車輪を転舵させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−223568号公報
【特許文献2】特開昭62−210170号公報
【特許文献3】特開平7−47968
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような事態を防ぐためには、上記特許文献に記載の車両のように車輪を転舵させるだけではなく、様々な手段を用いることができる。また、それらの手段を横風の情報に基づいて制御する場合、その情報には、横風に関する様々な情報を用いることができる。本発明は、このような実情に鑑み、横風に強い車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、第1発明の車両は、横風に対抗する力を車体に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段と、その横風対処手段を制御する制御装置とを備え、制御装置が、車体に作用する横風を予知する横風予知部を有し、その横風予知部によって予知された横風に基づいて横風対処手段を制御することを特徴としており、また、第2発明の車両は、横風に対抗する力を車体に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段と、その横風対処手段を制御する制御装置とを備え、横風対処手段が、車体の左右を流れる気流の少なくとも一方を変化させ、その変化に依拠して横風に対抗する力を車体に作用させる気流変化依拠対処手段を含んで構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
上記第1発明の車両によれば、横風の発生が予知され、その予知された横風に基づいて、例えば、制御装置は、横風対処手段を、あらかじめ作動させて横風に対処するように制御することができる。そのため、第1発明の車両は、横風に強い車両となる。また、上記第2発明の車両によれば、横風対処手段は、例えば、車体の左右を流れる気流の間に圧力差を発生させたり、車体の横風の風下側を流れる気流を車体に当てることで、横風に対抗する力を車体に作用させることができる。そのため、第2発明の車両は、横風に強い車両となる。
【発明の態様】
【0007】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」と言う場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。そして、請求可能発明の態様のうちのいくつかのものが、特許請求の範囲に記載した請求項に係る発明に相当する。
【0008】
なお、以下の各項において、(1)項と(3)項とを合わせたものが請求項1に、請求項1に(2)項の技術的特徴を加えたものが請求項2に、請求項1または請求項2に(11)項の技術的特徴を加えたものが請求項3に、(1)項と(21)項とを合わせたものが請求項4に、請求項4に(23)項の技術的特徴を加えたものが請求項5に、請求項4または請求項5に(24)項の技術的特徴を加えたものが請求項6に、請求項4ないし請求項6のいずれか1つに(25)項の技術的特徴を加えたものが請求項7に、請求項4ないし請求項7のいずれか1つに(26)項の技術的特徴を加えたものが請求項8に、それぞれ相当する。
【0009】
(1)横風に対抗する力を車体に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段と、
その横風対処手段を制御する制御装置と
備えた車両。
【0010】
車両が走行中に横風を受けると、横風の力(以下、「横風力」と言う場合がある)が車体に作用することになる。つまり、横風が車体の左右いずれかの方向から車体に向かって吹いてくることを考えれば、横風力は、横風に起因して車体を左右いずれかの方向に押すような力と考えることができる。本車両によれば、横風力が車体に作用する場合であっても、制御装置が横風対処手段を制御することで、横風に対抗する力(以下、「横風対抗力」と言う場合がある)を車体に作用させることができる。なお、横風対抗力は、車体に作用する横風力を打ち消す方向に、つまり、横風力の車体に作用する方向とは反対の方向で車体に作用する力と考えることができる。
【0011】
また、本項における「横風に対処する」とは、例えば、横風が車両に与える影響を軽減したり、排除することと考えることができる。横風が車両に与える影響とは、例えば、横風によって、車体が風下側に傾斜したり、車両が風下側に向かって斜行するといった事態、すなわち、横風が車両の安定性を妨げるような事態と考えることができる。つまり、「横風に対処する」とは、横風が車体の姿勢や車両の走行を変化させる事態に対処することと言うこともできる。そのように横風に対処することで、本車両は、横風に強い車両、つまり、横風の影響を受けにくい、言い換えれば、横風によっても安定性が失われない車両となる。そのため、横風対抗力は、例えば、横風による車体の傾斜を防いだり、車両が風下側へ斜行するのを防ぐように車体に作用する力であればよい。具体的に言えば、横風対抗力は、例えば、車体を横風の風上側に傾斜させるような力、あるいは、車体を横風の風上側に押すような力であればよい。
【0012】
本項の「制御装置」は、例えば、横風に関する情報(以下、「横風情報」と言う場合がある)に基づいて横風対処手段を制御するようなものであればよい。横風情報は、例えば、横風の方向や風速等であればよい。詳しくは、横風情報は、例えば、車体に現に作用している横風の方向や風速等であってもよいし、車体にこれから作用する横風の方向や風速等であってもよい。
【0013】
(2)前記横風対処手段が、横風による車体の過度な傾斜を防止するための手段である(1)項に記載の車両。
【0014】
本項に記載する「車体の傾斜が過度」とは、例えば、車体の傾斜によって、乗車員が著しい不快感を感じたり、車両の走行が極端に不安定になるといったことを示す。したがって、本車両によれば、横風によって車体が過度に傾斜することはないため、横風においても、乗車員が比較的不快感を感じず、車両は比較的安定した状態で走行することができる。このことは、本車両が、車幅が狭い割に車高が高いような車両の場合には、横風による車体の傾斜が過度になりやすいため、特に有効である。
【0015】
(3)前記制御装置が、車体に作用する横風を予知する横風予知部を有し、その横風予知部によって予知された横風に基づいて前記横風対処手段を制御するように構成された(1)項または(2)項に記載の車両。
【0016】
本車両では、これから車両に吹くであろう横風を予知し、その予知された横風情報に基づいて、例えば、あらかじめ横風対処手段を作動させておくことができる。そのため、例えば、制御装置からの指令を受け取ってから、その指令に従う状態に変化するまでの間にタイムラグが発生するような横風対処手段の場合には、タイムラグを見越してその横風対処手段をあらかじめ作動させておくことができる。このように横風対処手段を作動させれば、予知された横風が実際に車両に吹く時点で、横風対処手段を横風に比較的良好に対処する状態にさせておくことができる。
【0017】
本項の「横風を予知する」とは、これから車体に作用する横風を何らかの方法を用いて知ることであり、その方法は特に限定されていない。例えば、車両の前方で吹いている横風情報を取得し、その情報から、車両に吹く横風を予知してもよい。そのため、本車両は、例えば、車両の前方で吹いている横風情報を取得する前方横風情報取得手段を有していてもよい。
【0018】
(4)前記制御装置が、車両の走行経路を予測する走行経路予測部を有し、
前記横風予知部が、前記走行経路予測部によって予測された経路における横風を予知するように構成された(3)項に記載の車両。
【0019】
本車両によれば、車両の走行経路が予測されるため、前述の横風予知部は、その走行経路上での横風を予知することで、車体に作用する横風を比較的高精度に予知することができる。また、制御装置は、そのように予知された横風に対処するように横風対処手段を制御できるため、横風対処手段は、実際の横風に比較的良好に対処することができる。
【0020】
本項に記載される「走行経路」とは、言わば、それによって、車両の走行する位置や、車両の進行方向を示すことができるようなものと考えることができる。したがって、走行経路は、例えば、車両の走行する道路またはレーン等であればよい。その場合、車両の位置は、その道路またはレーン上において示され、車両は、その道路またはレーンに沿う方向に進行すると考えることができる。また、走行経路は、例えば、1本の線で示されるようなものであってもよい。その場合、車両は、その線上の位置にあり、その線に沿う方向に進行すると考えることができる。あるいは、走行経路は、レーンや線などの連続したものではなく、車両が走行する予定の位置である走行予定位置と、その走行予定位置における車両の進行する予定の方向である進行予定方向とで示されるようなものであってもよい。この場合、走行経路は、言わば、1つの点で示されるようなものとなる。また、走行経路は、複数の走行予定位置および進行予定方向から、それらを結ぶ1本の線で示されるようなものであってもよい。
【0021】
したがって、走行経路予測部は、例えば、当該車両が、車両の走行する道路地図に関する情報を有するナビゲーションシステムを備えている場合には、その道路地図に関する情報に基づいて走行経路を予測するようなものであればよい。その場合、予測される走行経路は、車両の走行する道路になる。あるいは、当該車両が、車速を検出する車速センサと、車輪の転舵量を検出する転舵量センサとを備えている場合には、それらセンサの検出値に基づいて走行経路を予測するようなものであってもよい。その場合、予測される走行経路は、1本の線で表されるものになる。
【0022】
(5)前記横風予知部が、ドップラーレーダを含んで構成された(3)項または(4)項に記載の車両。
【0023】
本車両では、横風予知部は、言わば、前述の前方横風情報取得手段として、ドップラーレーダを有していると考えることができる。そのため、横風予知部は、車両の前方における横風情報をドップラーレーダによって取得することができ、その情報に基づいて、横風を予知することができる。ドップラーレーダは、車両前方における比較的広い範囲の横風情報を一度に取得することができる。つまり、ドップラーレーダは、車両前方の横風の分布を取得することができる。そのため、制御装置が前述の走行経路予測部を有している場合には、車両前方の横風の分布から、予測された走行経路上で吹く横風を予知することができる。
【0024】
(6)前記横風予知部が、
車両の進行方向前方において走行経路の傍らに常設され、その常設された地点の横風を検出する常設横風情報検出装置が発信する横風に関する情報を受信する経路横風情報受信装置を含んで構成された(3)項または(4)項に記載の車両。
【0025】
本車両では、横風予知部は、言わば、前述の前方横風情報取得手段として、経路横風情報受信装置を有していると考えることができる。そのため、横風予知部は、車両の進行方向前方に常設された常設横風情報検出装置から、その常設横風情報検出装置のある地点の横風情報を取得することができ、その情報に基づいて、横風を予知することができる。そのため、常設横風情報検出装置は、本車両が走行することになる経路のなるべく近傍に、適度な間隔を空けて複数設置されていることが望ましい。つまり、本車両が走行する経路に沿って常設横風情報検出装置が点在していれば、それらの検出装置からの横風情報に基づいて、その経路を走行する本車両がこれから受ける横風を比較的高精度に予知することができる。
【0026】
また、本車両の横風予知部は、例えば、常設横風情報検出装置から取得した横風情報によって、横風の変化する傾向を把握し、その傾向に基づいて本車両がその常設横風情報検出装置の近傍を通過する際に車体に作用する横風を予知するようなものであればよい。あるいは、本車両の横風予知部は、例えば、常設横風情報検出装置から取得した横風情報の横風と同じ状態の横風が、本車両がその常設横風情報検出装置の近傍を通過する際にも同様に吹いているとして、車体に作用する横風を予知するようなものであればよい。
【0027】
(7)前記横風予知部が、
当該車両の進行方向前方を走行する別の車両に搭載され、その別の車両に作用する横風を検出する車載横風情報検出装置が発信する横風に関する情報を受信する前車横風情報受信装置を含んで構成された(3)項または(4)項に記載の車両。
【0028】
本車両では、横風予知部は、言わば、前述の前方横風情報取得手段として、前車横風情報受信装置を有していると考えることができる。そのため、横風予知部は、走行経路の前方を走行する車両に搭載された車載横風情報検出装置から、その別の車両に作用する横風に関する情報を取得することができる。そのため、車載横風情報検出装置は、本車両の前方において適切な距離だけ離れて走行する車両に搭載された車載横風情報検出装置からの横風情報に基づいて、本車両がこれから受ける横風を比較的高精度に予知することができる。
【0029】
なお、本車両の横風予知部は、例えば、前方を走行する車両に搭載される車載横風情報検出装置から横風情報を随時取得し、本車両が情報の検出された地点を通過する際に、その情報と同じ状態の横風が吹いているとして横風を予知することができる。
【0030】
(11)前記横風対処手段が、
車体を風上に向かって傾斜させる車体傾斜装置を含んで構成された(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の車両。
【0031】
本項に記載の車体傾斜装置は、前述したような横風対抗力、つまり、車体を横風の風上側に傾斜させるような力を、横風対抗力として発生させることができる。したがって、本項に記載の車体傾斜装置は、横風対抗力を車体に作用させて、例えば、車体が風下側に傾斜するのを防ぐことができる。そのため、本車両が、例えば、車幅が狭い割に車高が高いような前述の車両であって、旋回中の遠心力に対処するという目的のために車体を傾斜させるための装置を有している場合には、その装置を横風に対処するという目的のために利用することもできる。
【0032】
(12)車体の外底面が、
路面に最も接近する部分の位置が車体の傾斜角度の増大に伴って車体中央から傾斜側にその増大量に応じた量シフトするような形状とされた(11)項に記載の車両。
【0033】
本車両によれば、車体を横風の風上側に傾斜させた場合に、車体の外底面と路面とによって形成される流路を横風が通過するすることになる。そのため、その流路は、横風の風上側で比較的狭く、風下側で比較的広くなる。したがって、その流路を通過する横風は、流路の比較的広くなる風下側において、ディフューザ効果のために周囲に対して圧力が低下する。そのため、車体には、その圧力の低下による下向きの力、つまり、ダウンフォースが作用することになる。車体を横風の風上側に傾斜させる場合、車体に当たる横風の力は、車体を持ち上げるようにして車体に作用する。本車両は、ダウンフォースによって、そのような車体を持ち上げる力に対抗する下向きの力を車体に作用させることができるため、車体を傾斜させて走行する場合に、車両の接地力を増加させて車両をより安定して走行させることができる。
【0034】
本車体の外底面は、例えば、車体が直立する場合に、車体と路面との間隔が、車体の中央で最も小さくなり、車体側面に向かうに連れて大きくなるような曲面、つまり、車両を前方から見た場合に、下方に突出するような曲面とされていればよい。外底面がこのような曲面とされていれば、車体の下方を通過する横風を比較的スムースに通過させることができるため、横風の流れを乱さず、ディフューザ効果を比較的有効に発揮させることができる。
【0035】
(21)前記横風対処手段が、
車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との少なくとも一方を変化させ、その変化に依拠して横風に対抗する力を車体に作用させる気流変化依拠対処手段を含んで構成された(1)項ないし(12)項のいずれか1つに記載の車両。
【0036】
本項に記載の「気流変化依拠対処手段」は、その手段が横風に対処していない場合と対処している場合とで、走行気流、つまり、車両の走行によって発生する気流のうち、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との少なくとも一方を変化させるようなものであればよい。この気流変化依拠対処手段によれば、横風に対処している場合に、例えば、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との一方の圧力が他方の圧力よりも低くなるように走行気流を変化させれば、その圧力差による力を、横風対抗力として、左右いずれかの方向において車体に作用させることができる。また例えば、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との一方だけが車体に当たるように走行気流を変化させれば、その一方の気流が車体を押す力を、横風対抗力として、左右いずれかの方向において車体に作用させることができる。したがって、本項に記載の気流変化依拠対処手段によれば、例えば、上記の気流の圧力差による力や気流が車体を押す力を、横風力によって車体が風下側に傾斜したり車両が風下側に向かって斜行するのを防ぐように、横風の風上側に向かって車体に作用させることができる。
【0037】
(22)前記気流変化依拠対処手段が、車体の一部若しくは車体に付設された可動体を変位させることによって、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との少なくとも一方を変化させるように構成された(21)項に記載の車両。
【0038】
本車両によれば、車体の一部または可動体を変位させるという比較的シンプルな方法で、横風に対処している場合に、例えば、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流とを異なる状態とすることで一方の気流の圧力を他方の気流の圧力よりも低くし、その圧力差による力を左右いずれかの方向において車体に作用させることができる。あるいは、車体の左右を流れる気流の一方だけを車体の一部あるいは可動体に当て、その一方の気流が可動体を押す力を左右いずれかの方向において車体に作用させることができる。
【0039】
(23)前記気流変化依拠対処手段が、
車体に付設された翼板と、
その翼板を、それが車体上部において庇状に風下に向かって張り出す位置と張り出さない位置との間で変位させる翼板変位装置と
を含んで構成された(21)項または(22)項に記載の車両。
【0040】
本車両によれば、風下側で翼板が車体上部から庇状に張り出されると、車体の上方を通過して車体の風下側の側面に回り込もうとする横風の流れが妨げられる。そのため、このように翼板を張り出す場合、翼板を張り出していない場合と比較して、車体の風下側の側面で発生する負圧が低減、つまり、車体の風下側の側面での空気の圧力が増加する。それによって、車体の風上側の気流の圧力と風下側の気流の圧力との差、つまり、車体の両側面での気流の圧力差も低減する。そのため、その圧力差によって横風の風下側に向かって車体に作用する力が小さくなることになる。このことは、別の見方をすれば、翼板を張り出すことで、車体の風下側の気流の圧力が増加し、その圧力の増加による力が、横風対抗力として、横風の風上側に向かって車体に作用すると考えることができる。したがって、本項に記載の気流変化依拠対処手段は、横風の風下側の翼板を張り出すことで、横風の風下側を流れる気流を変化させ、横風対抗力を車体に作用させることができる。その意味においては、本車両では、翼板が、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との少なくとも一方を変化させる可動体として車体に付設されていると考えることができる。
【0041】
本項に記載の気流変化依拠対処手段は、例えば、1枚の板を翼板として有しており、その翼板を車体の天井面において左右にスライドさせることで、車体の左側面または右側面の風下側において張り出す姿勢に変位させるようなものであってもよい。あるいは、2枚の板をそれぞれ翼板として有しており、それらの翼板を車体の天井面においてそれぞれ左右にスライドさせることで、一方の翼板を車体の左側面において、他方の翼板を右側面において、風下側に張り出す姿勢に変位させるようなものであってもよい。また、気流変化依拠対処手段が、2枚の板をそれぞれ翼板として有している場合、それらの翼板が、車体の左側面および右側面に、それぞれ、跳ね上げ可能な状態で車体に保持されていてもよい。この場合、2枚の翼板は、例えば、ヒンジのようなもので、車体から垂れ下がるような状態で保持されていればよい。そのように保持された2枚の翼板のうち、横風の風下側の翼板を跳ね上げるようにして回動させれば、その翼板を風下に向かって張り出す姿勢に変位させることができる。
【0042】
(24)前記気流変化依拠対処手段が、
車体の左右の側面に沿ってそれぞれ付設された1対の整流板と、
それら1対の整流板うちの風上側のものを、それと車体側面との間に気流を導くべく車体側面から離間した位置に変位させる整流板離間装置と
を含んで構成された(21)項ないし(23)項のいずれか1つに記載の車両。
【0043】
本車両によれば、横風の風上側にある整流板が車体側面から離間した位置に変位させられると、車体前方から側面へと流れる走行気流を、整流板と車体の側面との間に押し込むようにして導き入れることができる。つまり、整流板と車体の側面との間において、気流の通過する流路が狭くなるため、気流の流速が速くなり、ベルヌーイの定理に従って、その気流の圧力が低下する。そのため、横風の風上側において整流板を離間させれば、車体の左右を流れる気流の圧力差によって、横風の風上側に向かう揚力が発生し、その揚力を、横風対抗力として車体に作用させることができる。したがって、本項に記載の気流変化依拠対処手段は、横風の風上側の整流板を離間させることで、横風の風上側を流れる気流を変化させ、横風対抗力を車体に作用させることができる。その意味においては、本車両では、整流板が、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との少なくとも一方を変化させる可動体として車体に付設されていると考えることができる。
【0044】
本車両の車体は、走行気流を整流板と車体の側面との間に効果的に押し込むため、例えば、車両を上方から見た場合に、車体前方からの気流を車体の左右にスムースに導くことができる形状、例えば、前方部が丸い形状とされた車体を備えていることが望ましい。また、整流板離間装置は、車体前方部から左右に導かれた気流の流路を狭めるように、車体の比較的前方の位置に整流板を変位させるものであることが望ましい。
【0045】
(25)車体が、後方側部分がその部分の前方側の部分に対して回動することで、上方から見た場合において車体が左右に湾曲若しくは屈曲する構造を有しており、
前記気流変化依拠対処手段が、
車体の前記後方側部分を、車体が風下に向かって湾曲若しくは屈曲するように変位させる車体後部変位装置を含んで構成された(21)項ないし(24)項のいずれか1つに記載の車両。
【0046】
本車両によれば、車体の後方側部分が前方側部分に対して左右いずれかに回動することで、車体前方から側面へと流れる走行気流を、その後方側部分の回動する方向に応じて変化させることができる。具体的には、上記の側面へと流れる気流は、車体の後方側部分を通過する際に、後方側部分に当たり、後方側部分が回動した方向、つまり、横風の風下側の方向へと曲がるようにして流れることになる。そのため、後方側部分に当たる気流が車体を押す力を、横風の風上側の方向の力、つまり、横風対抗力として車体に作用させることができる。したがって、本項に記載の気流変化依拠対処手段は、後方側部分を回動させることで、横風の風下側を流れる気流を変化させ、横風対抗力を車体に作用させることができる。その意味においては、本車両では、後方側部分が、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との少なくとも一方を変化させる車体の一部になっていると考えることができる。
【0047】
また、本項に記載の気流変化依拠対処手段は、車両を上方から見た場合に、前方側部分の丸くされた流線形に車体が形成されている車両に適している。そのような車両の場合、後方側部分が回動すると、その回動する方向と反対側の方向に、ベルヌーイの定理に従って揚力を発生させることができるため、その揚力を横風対抗力として車体に作用させることができる。つまり、流線形に形成された車体を備えた車両の場合には、揚力と先の気流の車体を押す力との両方を横風対抗力として車体に作用させることができるため、横風対抗力を比較的効果的に車体に作用させることができる。
【0048】
(26)車体が、(a)車輪を保持するシャーシ部と、(b)上方から見た場合において前記シャーシ部に対して回転可能に前記シャーシ部に支持されて、当該車両の外郭として機能するシェル部とを有しており、
前記気流変化依拠対処手段が、
前記シェル部を、それの前方側の部分が後方側の部分より風上側にシフトする方向に、前記シャーシ部に対して回転させるシェル部回転装置を含んで構成された(21)項ないし(25)項のいずれか1つに記載の車両。
【0049】
本車両では、車体がシャーシ部とシェル部とに分かれており、シャーシ部は、言わば、車体の土台となる部分であり、車両の機器や乗車員等を支える部分となっており、一方、シェル部は、それら機器や乗車員を覆う部分、言わば、車両の外観を形成する部分になっていると考えることができる。
【0050】
本車両によれば、車体のシャーシ部をシェル部に対して回転させることで、車体前方から側面へと流れる走行気流を、そのシェル部の回転する方向に応じて変化させることができる。具体的に説明すると、シェル部が回転すると、上記の側面へと流れる気流に対してシェル部が斜めとなって配置されることになるため、その気流は、シェル部を通過する際にシェル部の一側面に当たり、横風の風下側の方向へと曲がるようにして流れることになる。そのため、シェル部に当たる気流が車体を押す力を、横風の風上側の方向の力、つまり、横風対抗力として車体に作用させることができる。したがって、本項に記載の気流変化依拠対処手段は、シェル部を回転させることで、横風の風下側を流れる気流を変化させ、横風対抗力を車体に作用させることができる。その意味においては、本車両では、シェル部が、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との少なくとも一方を変化させる車体の一部になっていると考えることができる。本項に記載の気流変化依拠対処手段では、シェル部の一側面、つまり、車両を横から見た場合の外観を形成する部分の全体に気流が当たることで、気流の車体を押す力を比較的大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1実施例の車両を示す側面図および平面図である。
【図2】図1の車両が有する車体傾斜装置を示す斜視図である。
【図3】図2の車体傾斜装置の作動によって車体が直立する状態から傾斜する状態に変化する様子を示す図である。
【図4】図1の車両が横風に対処する場合に、前輪の接地荷重が変化する様子を説明するための図である。
【図5】図1の車両の車体が横風の風上側に傾斜することで、横風力によるモーメントに対抗するモーメントを発生させることを説明するための図である。
【図6】図1の車両が有するドップラーレーダによって車両前方の横風に関する情報が取得される範囲と、図1の車両が有する走行経路予測部によって予測された走行予定経路とを模式的に示す図である。
【図7】図1の車両が有する横風予知部が、横風力を算出するために用いるマップを示す図である。
【図8】図1の車両が有する横風予知部によって予知された、横風力によって車体に発生するモーメントのマップを示す図である。
【図9】図1の車両が、横風を予知するために実行するプログラムの実行間隔を説明するための図である。
【図10】図1の車両において、横風対処手段を制御するために実行されるプログラムのフローチャートである。
【図11】図1の車両において、走行経路を予測するために実行されるプログラムのフローチャートである。
【図12】図1の車両において、横風を予知するために実行されるプログラムのフローチャートである。
【図13】図1の車両の制御装置で、横風を予知して横風対処手段を作動させる各機能部を説明するための図である。
【図14】図1の車両が風上側に傾斜する場合の車体の下方を通過する横風について説明をするための図である。
【図15】第1実施例の変形例の車両を示す平面図である。
【図16】車外横風情報検出装置と横風情報受信装置との関係を示す図である。
【図17】第1実施例の変形例の車両を示す平面図である。
【図18】車載横風情報検出装置と前車横風情報受信装置との関係を示す図である。
【図19】第2実施例の車両を示す側面図と平面図である。
【図20】図19の車両が風上側に傾斜する場合の車体の上方を通過する横風について説明するための図である。
【図21】第2実施例の変形例の車両において、翼板を変位させるための方法を説明するための図である。
【図22】第3実施例の車両を示す側面図と平面図である。
【図23】図22の車両が風上側に傾斜する場合の車体の側方を通過する気流について説明するための図である。
【図24】第4実施例の車両を示す側面図と平面図である。
【図25】図24の車両の車体が屈曲する場合に、車体の側方を通過する気流について説明するための図である。
【図26】図24の車両の車体が比較的大きく屈曲する場合に、車体の側方を通過する気流について説明するための図である。
【図27】第5実施例の車両を示す側面図と平面図である。
【図28】図27の車両が風上側に傾斜する場合の車体の側方を通過する気流について説明するための図である。
【図29】第6実施例の車両を示す側面図と平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記の実施例および変形例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【実施例1】
【0053】
≪車両の構造≫
図1は、第1実施例の車両10を模式的に示す。車両10は、車両10の骨格および外郭を形成する車体12と、車体12にそれぞれ回転可能に保持された1対の前輪14および単一の後輪16とを含んで構成されている。つまり、車両10は、3輪で走行する車両となっている。詳しい説明は省略するが、車両10では、1対の前輪14が転舵輪、後輪16が駆動輪とされている。車両10は、乗員座席18が略中央に1つだけ設けられた1人乗りの車両となっており、1対の前輪14の間隔を比較的狭くすることで、車幅の比較的狭い車両となっている。また、車体12の外底面は、車両10を前方から見た場合に、下方に突出するような曲面とされている。なお、本明細書では、1対の前輪14を左右別々に示す場合には、左側の前輪を左前輪14L、右側の前輪を右前輪14Rとして表記する。
【0054】
図2は、1対の前輪14に対して設けられたサスペンションシステム20を示す。サスペンションシステム20は、1対の前輪14を回転可能にそれぞれ保持する1対のステアリングナックル22と、1対のステアリングナックル22の下端部にそれぞれ連結される1対のロアアーム24と、1対のステアリングナックル22の上端部に連結される1対のアッパアーム26と、1対のロアアーム24に自身の下端部がそれぞれ連結された1対のスプリングアブソーバAssy28と、それらスプリングアブソーバAssy28の上端部を支持する支持装置30とを有している。なお、図2では、左前輪14Lを保持するステアリングナックル22の図示が省略されている。ステアリングナックル22は、上下方向に延びる棒状に形成されている。1対のロアアーム24は、一端が1対のステアリングナックル22の下端部にそれぞれ回転可能に連結され、他端が車体12にそれぞれ回転可能に保持されている。また、1対のアッパアーム26は、ロアアーム24の上方において、一端が1対のステアリングナックル22の上方部にそれぞれ回転可能に連結され、他端が車体12にそれぞれ回転可能に保持されている。なお、これら1対のロアアーム24および1対のアッパアーム26は、それぞれ、車両10の前後方向に延びる回転軸線回りに回動可能に車体12に保持されている。また、図2では分かり難いが、1対のロアアーム24の各々は、左右のアームが独立して車体12に対して回動可能となっており、1対のアッパアーム26の各々も、左右のアームが独立して車体12に対して回動可能となっている。
【0055】
スプリングアブソーバAssy28は、詳細な説明は省略するが、伸縮可能な筒状のケーシング内に、車体12と前輪14との接近に応じた反発力を発生させるスプリングと、そのスプリングによる車体の振動を減衰させるためのショックアブソーバとを有している。支持装置30は、車体12に固定された円筒形状のハウジング32と、1対のスプリングアブソーバAssy28の上端部を支持する支持部材34と、その支持部材34を回転動作させるためのアクチュエータ36とを有している。詳しい説明は省略するが、アクチュエータ36は、モータを含んで構成されており、ハウジング32に内蔵されている。支持部材34は、車両10の前方側から見た場合に、T字形となっている。支持部材34の下方に延びる部分は、ハウジング32の外周面に設けられた開口からハウジング32の内部に延びており、その下方に延びる部分の先端部が、図では示されていないが、車両の前後方向に延びつつ上記のモータに連結された回転シャフトに固定されている。したがって、アクチュエータ36は、モータの発生する力によって、支持部材34を車体12に対して回転動作させることができる。支持部材34の上方の部分は、ハウジング32の外部に位置しており、上方の部分の左右の端部38は、1対のスプリングアブソーバAssy28の上端部をそれぞれ支持している。
【0056】
図3(a)は、それぞれ、車両10を前から見た場合に、支持部材34が中立位置にある場合、つまり、支持部材34の車体12に対する回転角度θが0°となっている場合の車体12の姿勢を示している。また、図3(b)は、アクチュエータ36が支持部材34を車体12に対して左方に角度θだけ回転動作させた場合の車体12の姿勢を示している。また、図3(a)および(b)には、1対の前輪14に対応して車体12に設けられている1対のフェンダーの最上部の位置が、それぞれ、PR,PLとして示されている。支持部材34が中立位置にある場合、図3(a)に示すように、車体は直立しているため、1対のフェンダーの最上部の位置PR,PLは、同じ高さとなっている。支持部材34が左回転すると、図3(b)に示すように、車体上下方向において、右前輪14R側のスプリングアブソーバAssy28Rの上端部は上方に変位し、左前輪14L側のスプリングアブソーバAssy28Lの上端部は下方に変位する。また、それらの変位に伴って、右前輪14Rはバウンド方向に移動し、左前輪14Lはリバウンド方向に移動する。したがって、バウンドする右前輪14R側のフェンダーの最上部の位置PRの走行面からの高さは低くなり、リバウンドする左前輪14L側のフェンダーの最上部の位置PLの走行面からの高さは高くなる。つまり、車体12は、直立する状態から右側に傾斜する状態へと変化する。また、図では示していないが、支持部材34が車体12に対して右回転すると、車体12は左側に傾斜する。このようにして、車両10は、支持部材34を中立位置から回転させることで車体12を傾斜させることができるのである。このように、車両10では、支持装置30の作動によって車体12を傾斜させることができ、スプリングアブソーバAssy28および支持装置30を含んで、車体12を傾斜させるための傾斜装置39が構成されている。なお、車両10は、車両10が旋回する際に、傾斜装置39を作動させるように構成されている。詳しく言うと、車両10が旋回する際、車体12は遠心力FCによって旋回外側に傾斜するため、車両10の走行が不安定な状態になる。そのため、車両10では、旋回中に車体12が旋回内側に傾斜するように傾斜装置39が作動させられる。
【0057】
また、車両10には、傾斜装置39の作動を制御するための電子制御ユニット(ECU)40、車両10の速度を検出する車速センサ42、運転者によって操作されるステアリング操作部材の操作量を検出する操作量センサ44等が設けられている。それらのセンサは、それぞれ、ECU40に接続されている。また、アクチュエータ36には、支持部材34が固定される回転シャフトのハウジング32に対する回転角度、つまり、支持部材34の車体12に対する回転角度を検出するための回転角センサが内蔵されており(図示省略)、ECU40に接続されている。
【0058】
さらに、車両10には、道路地図情報が記録されたナビゲーションシステム46が搭載されており、ECU40に接続されている。さらに、車両10では、車体12の前方部に、車両10の前方における横風情報、具体的には、横風の向きや風速等を検出するドップラーレーダ50が搭載されており、ECU40に接続されている。ドップラーレーダ50は、図6に点線で示すように、車両10の前方における比較的広い範囲の横風情報を検出することが可能となっている。そのため、ECU40は、車両前方の横風の分布を取得することができる。言わば、ドップラーレーダ50は、車両の前方で吹いている横風情報を取得するための前方横風情報取得手段となっている。
【0059】
≪横風による影響≫
上述のように構成された車両10が横風中を走行すると、横風によって車体12に作用する横方向の力である横風力FWによって、車体12が横風の風下側に傾斜させられ、車両10の走行は不安定な状態になる。本車両10では、このように横風によって車体12が傾斜させられる場合に、先の車両10の旋回中の場合と同様に、傾斜装置39を作動させることによって、車体12が過度に傾斜することが防止されており、それにより、乗車員が著しい不快感を感じたり、車両10の走行が極端に不安定になることが防止されている。そのため、本車両10では、横風力FWを利用して、傾斜装置39を作動させる。
【0060】
横風力FWによって車体12が傾斜している場合、車体12の重心において、図4(a)に示すように、風下側の前輪14の接地点を中心とするモーメントである横風モーメントMWが発生していると考えることができる。横風モーメントMWによって車体12が風下側に傾斜させられると、図4(a)に示すように、風下側にある前輪14の接地荷重が増加し、風上側にある前輪14の接地荷重が減少するため、左右の前輪14の接地荷重のバランスが悪くなる。しかしながら、本車両10では、上述のように傾斜装置39が作動することで、図4(b)に示すように、車体12を風上側へと傾斜させることができる。そのため、風下側にある前輪14の接地荷重を減少させ、風上側にある前輪14の接地荷重を増加させることができる。つまり、本車両10では、傾斜装置39を作動させることで、左右の前輪14の接地荷重がバランスするように車体12の傾斜を調整する。このように、車両10では、傾斜装置39は、横風力FWに対抗する横風対抗力FWOを車体12に作用させて横風の風上に向かって車体12を傾斜させる車体傾斜装置となっており、傾斜装置39を含んで、横風対抗力を車体12に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段が構成されている。
【0061】
≪傾斜装置の作動によって車体に発生するモーメント≫
図5(a)に示すように、横風が発生しておらず、車体12が直立する状態での前輪14の一方の接地点を中心とする車体12の重心で発生する重力によるモーメントMGVと、図5(b)に示すように、横風が発生しており、傾斜装置39の作動により車体12が風上側へ傾斜する状態での風下側の前輪14の接地点を中心とする車体12の重心で発生する重力によるモーメントMGLとの差が、横風モーメントMWと釣り合えば、つまり、MW=MGL−MGVの関係が成り立てば、傾斜装置39の作動に依存せずに、車体12の姿勢が風上側に傾斜する状態で維持されることになる。つまり、その姿勢において、図5(c)に模式的に示すように、重力によるモーメントMGVとMGLとの差は、横風モーメントMWと同じ大きさで反対方向に発生する横風対抗モーメントMWOとなる。したがって、横風対抗モーメントは、風上側への車体の傾斜角度が増大するにつれて大きくなる。別の言い方をすれば、横風対抗モーメントMWOは、傾斜装置39の作動量、つまり、支持部材34の車体12に対する回転角度θが大きくなるにつれて大きくなるのである。
【0062】
ところで、傾斜装置39は、前述のように、車両10が旋回する際に、車体12が旋回内側に傾斜するように作動する。この作動は、遠心力FCによる旋回外側に向かうモーメントである遠心モーメントMCに対抗して、重力による旋回内側に向かうモーメントである遠心対抗モーメントMCOを車体12に発生させるために行われる。つまり、車両10は、傾斜装置39の作動を利用して、遠心力FCに対抗する遠心対抗モーメントMCOを発生させるとともに、横風力FWに対抗する横風対抗モーメントMWOを発生させるように構成されているのである。このように、車両10では、傾斜装置39が、旋回における遠心力に対処するための手段であるとともに、横風に対処するための手段にもなっている。
【0063】
≪横風の予知≫
前述のように横風の風下側に車体12を傾斜させるため、車両10では、車体12に作用する横風が予知され、その予知した横風に基づいて車体12が横風の風上側に傾斜させられる。横風の予知を行うため、先ず、ECU40では、車速と操作量とに基づいて、現在からT秒後までの車両10の走行経路を予測するための処理(以下、「走行経路予測処理」と言う場合がある)が実行される。走行経路予測処理では、車速センサ42の検出値と操作量センサ44の検出値とから、現在からT秒後までに車両10が走行するであろう位置(以下、「走行予定位置」と言う場合がある。図6に黒点で示す。)と、各走行予定位置における車両10の進行方向(以下、「進行予定方向」と言う場合がある。図6に実線の矢印で示す。)とが、D秒間隔で予測される。したがって、これらの走行位置を結ぶことで、図6に一点鎖線で示すように、車両10が走行するであろう経路(以下、「走行予定経路」と言う場合がある。)が予測されることになる。なお、先のD秒は、そのD秒間に車両10が進行する距離等を考慮し、走行予定経路がある程度滑らかな曲線になるように設定されている。この経路がある程度滑らかな曲線となるようにこの経路は、ナビゲーションシステム46から取得された道路地図情報と比較されて補正される。具体的には、道路地図情報と走行予定経路とが比較され、走行予定経路が道路から外れているような場合には、走行予定経路が道路地図情報に適合するように補正される。なお、道路地図情報に、車両10が走行する道路の情報が含まれていない場合には、算出された走行予定経路がそのまま使用されることになる。
【0064】
次に、ECU40では、車両10の前方の横風情報に基づいて、現在からT秒後までに車両10に吹く横風を予知するための処理(以下、「横風予知処理」という場合がある)が実行される。横風予知処理では、先ず、ドップラーレーダ50によって取得された車両10の前方での横風の分布のうち、先の各走行予定位置での横風情報、つまり、風向きや風速が、各走行予定位置を車両10がD秒間隔で順次通過する際に、車体12に作用する横風の横風情報と見なされ、これにより、各走行予定位置での横風が予知される。そして、具体的な説明は省略するが、各走行予定位置において予知された風向きや風速から、時刻tにおける車両10の走行位置で吹く風の向きを算出するための風向関数WD(t)と、風速を算出するための風速関数WS(t)とが作成される。これらの関数は、前述の走行予定経路上での風向きや風速を算出するための関数と見なされる。また、風向関数WD(t)および風速関数WS(t)は、車両10が走行予定経路上を走行する際の車両10の進行予定方向や速度を考慮して、車体12に作用する横風の向きや風速を算出するための関数、つまり、横風の車体12に対する相対的な向きや風速を算出するための関数である相対風向関数WD’(t)および相対風速関数WS’(t)に作成される。したがって、それら相対風向関数WD’(t)および相対風速関数WS’(t)によって、時刻tに車体12に作用する横風情報を予知することができるのである。
【0065】
≪横風モーメントの算出≫
ECU40では、相対風向関数WD’(t)および相対風速関数WS’(t)によって算出される時刻tの横風の向きと風速とから、時刻tにおける横風力FWを算出するための横風力関数FW(t)が作成される。その横風力関数はFW(t)=KD(t)・KS(t)・FWSの数式によって算出される。具体的に説明すると、FWSは基準横風力となっており、基準横風、つまり、基準方向である車体12の左側の真横から、基準風速である横風が車体12に作用している場合に、車体12に作用する横風力を表している。KDは風向き係数となっており、相対風向関数WD’(t)の値、つまり、横風の車体12に対する相対的な向きによって図7(a)に示すように変化し、時刻tにおける風向き係数はKD(t)と表される。なお、図7(a)は、横軸が車体正面から反時計回りに風向きが変わっていく際の風向き係数KDの変化を示している。KSは風速係数となっており、相対風速関数WS’(t)の値、つまり、横風の車体12に対する相対的な風速によって図7(b)に示すように変化し、時刻tにおける風速係数はKS(t)と表される。
【0066】
横風予知処理では、さらに、横風力関数FW(t)から、車体12の重心位置などの特性を考慮して、時刻tにおける横風モーメントMWを算出するための横風モーメント関数MW(t)が作成される。その横風モーメント関数MW(t)は、横風予知処理の実施された時刻からT秒後までの間の横風モーメントMWを算出するための関数となり、その関数を用いた算出結果は、例えば、図8(a)に示すようなグラフで図示されることになる。また、ECU40では、走行経路予測処理と横風予知処理とがT秒より短いC秒ごとに実行され、図9に示すように、T秒間分の横風モーメントMWを算出するための横風モーメント関数MW(t)がC秒ごとに随時作成される。これらの横風モーメント関数MW(t)の各々は、最初のR1秒間と最後のR2秒間とを除いた範囲である利用時間においてのみ、横風モーメントMWを算出するために利用される。なお、各横風モーメント関数MW(t)の利用時間は、関数の作成される間隔であるC秒間となっている。したがって、図9に示すように、n回目に実行された横風予知処理により作成された横風モーメント関数MW・n(t)では、C秒間の利用時間の部分が、前回、つまり、n−1回目の横風予知処理の実行によって作成された横風モーメント関数MW・n-1(t)の利用時間や、次回、つまり、n+1回目の横風予知処理の実行によって作成される横風モーメント関数MW・n+1(t)の利用時間と、時刻tに対して重複したり間が空いてしまうようなことはない。したがって、横風モーメントMWは、時刻tに対して算出可能となっており、その算出結果は、例えば、図8(b)に示すように、各横風モーメント関数MW(t)の利用時間Cにおける部分が、時刻tに対して連続して並ぶように示されることになる。ECU40は、C秒間ごとに実行される横風予知処理によって作成される横風モーメント関数MW(t)を随時格納することで、時刻tの横風モーメントMWを算出可能に構成されている。
【0067】
≪横風に対処するための傾斜装置の制御≫
ECU40は、車体12を横風の風上に傾斜させるため、横風モーメント関数MW(t)によって算出される横風モーメントMWに基づいて、傾斜装置39を制御する。そのため、ECU40は横風に対抗するための横風対抗モーメントMWOを算出する。ECU40は、前述のように作成される横風モーメント関数MW(t)によって、常に、現在の時刻tよりもC秒先までの横風モーメントを算出することができる。ところで、傾斜装置39は、比較的小さなアクチュエータ36のモータの駆動によって車体12を傾斜させることになるため、アクチュエータ36に作動の指令が送信されてから、車体12がその指令に応じた角度に傾斜するまでには、ある程度の遅延が発生する。ECU40は、その遅延を考慮して、現在の経過時間tよりもL秒先(例えば、0.5秒先)、つまり、時刻t+Lにおける横風モーメントMWを算出し、その算出結果の反数を横風対抗モーメントMWOとする。なお、この遅延によるL秒間は、利用時間のC秒間よりも短い時間である。
【0068】
また、詳しい説明は省略するが、ECU40では、前述のように、旋回時における遠心力FCに対処して傾斜装置39を作動させるための遠心力推定処理も実行される。その処理では、先ず、車速センサ42の検出値と操作量センサ44の検出値とから、本車両の旋回の程度が推定され、その旋回の程度に応じて車体12に発生する遠心力FCが推定される。次いで、推定された遠心力FCから、遠心モーメントMCに対抗する遠心対抗モーメントMCOが推定される。
【0069】
したがって、ECU40では、横風対抗モーメントMWOと遠心対抗モーメントMCOとを加えた大きさのモーメントである目標対抗モーメントM*が車体12に発生するように、つまり、M*=MWO+MCOとなるように、支持部材34の車体12に対する目標回転角度θ*を決定する。具体的には、支持部材34の回転角度θが大きくなるにつれて重力により車体12に発生するモーメントが大きくなるという前述の関係に基づいて、回転角度θと重力によるモーメントとの関係を示すマップが、ECU40には格納されている。ECU40は、そのマップから、目標対抗モーメントM*を発生させるための支持部材34の目標回転角度θW*を決定する。
【0070】
したがって、ECU40は、支持部材34が車体12に対して目標回転角度θ*だけ回転するように傾斜装置39を制御し、それによって、車両10では、遠心力FCおよび横風力FWに対処して車体が傾斜する状態が実現されることになる。したがって、本車両10では、ECU40は、傾斜装置39を制御する制御装置となっており、傾斜装置39を制御することで、車体12は横風の風上側に傾斜する。これにより、本車両10では、車体12が横風によって過度に傾斜するのが防止されている。
【0071】
≪傾斜装置を作動させるためのプログラム≫
ECU40では、上述のように傾斜装置39を作動させるため、図10にフローチャートを示す支持装置制御プログラムが、比較的短周期で繰り返し実行される。なお、支持装置制御プログラムが実行される際、本プログラムの実行回であるnは1にリセットされ、本プログラムの実行開始からの時刻tは0にリセットされる。図10に示すフローチャートに従う処理では、ステップ1(以下、「S1」と略す。他のステップも同様とする)において、時刻tが、プログラムの実行回nとマップの作成間隔C秒とを乗じた値と比較される。時刻tがその乗じた値以上の場合は、S2およびS3において、後で詳しく説明するように、走行経路予測処理および横風予知処理のサブルーチンがそれぞれ実行され、作成された横風モーメント関数MW(t)は、S4において、横風モーメント関数MW・n(t)として格納される。したがって、本プログラムが繰り返し実行されると、随時作成される複数の横風モーメント関数MW・n(t)によって、時刻tの横風モーメントMWを算出することができることになる。なお、S4において、時刻tが、係数nとマップの作成間隔C秒とを乗じた値より小さい場合には、前回の横風モーメント関数MW・n(t)の作成から、作成間隔のC秒が経過していないため、走行経路予測処理および横風予知処理の各サブルーチンは実行はされない。S5においては、先に作成された関数のうち、現在の時刻tに遅延時間Lを加えた時刻t+Lにおける横風モーメントMWを算出するための横風モーメント関数MW・n(t)が読み込まれ、S6において、横風対抗モーメントMWOが算出される。S7においては、別に実行されている遠心力推定処理によって推定された遠心対抗モーメントMCOを読み取る。S8では、目標対抗モーメントM*を算出し、S9において、前述したように、マップを参照することで、目標対抗モーメントM*に応じた支持部材34の目標回転角度θW*が決定される。そして、S10においては、その目標回転角度θ*となるように、支持部材34を回転させる指令が傾斜装置39に出力される。S11では、本プログラムの実行回nが1増加され、本プログラムが終了する。
【0072】
上記支持装置制御プログラムの実行により、図11にフローチャート示す走行経路予測処理サブルーチンは、C秒間隔で周期的に繰り返し実行され、この実行によって、走行経路の予測が行われる。このフローチャートに従う処理では、S11において、車速と操作量とが検出される。次いで、S12において、それら車速と操作量とに基づいて、D秒間隔での車両10の走行予定位置および進行予定方向の予測がT秒後まで実行される。S13においては、それらの走行予定位置および進行予定方向関数から走行予定経路が予測される。S14では、その走行予定経路が、ナビゲーションシステム46からの道路地図情報と比較されて補正される。
【0073】
また、上記支持装置制御プログラムの実行により、図12にフローチャートを示す横風予知処理サブルーチンが、走行経路予測処理サブルーチンに続いて、C秒間隔で周期的に繰り返し実行され、この実行により、横風モーメント関数MW(t)が作成される。このフローチャートに従う処理では、S21において、ドップラーレーダによる車両前方の横風の分布が取得される。S22では、その取得された横風情報から、前述の各走行予定位置における風向きと風速とが予知される。S23では、それらの風向きと風速とから、時刻tに車両10に作用する横風の向きを算出するための相対風向関数WD’(t)が作成され、S24では、時刻tに車両10に作用する横風の風速を算出するための相対風速関数WS’(t)が作成される。S25では、図7に示すマップを利用して、時刻tに車体12に作用する横風力FWを算出するための横風力関数FW(t)が作成され、S26では、時刻tに車体12に発生する横風モーメントMWを算出するための横風モーメント関数MW(t)が導き出される。
【0074】
≪電子制御ユニットにおける機能部≫
上述のように支持装置制御プログラムを実行するECU40には、その実行における処理を行うためのいくつかの機能部を有していると考えることができる。具体的には、ECU40は、図13に示すように、支持装置制御プログラムを実行して傾斜装置39に指令を送る支持装置制御部60を有していると考えることができる。また、ECU40は、支持装置制御プログラムの実行に伴う走行経路予測処理サブルーチンを実行する走行経路予測部62、横風予知処理サブルーチンを実行する横風予知部64を有していると考えることができる。また、ECU40は、横風予知部64で導出された横風モーメント関数MW・n(t)を格納するデータ格納部66を有していると考えることができる。なお、データ格納部66には、ナビゲーションシステム46の道路地図情報,風向き係数KD,風速係数KS,回転角度θと横風対抗モーメントMWOとの関係を示すマップ等も格納されている。また、ECU40には、遠心力推定処理を実行する遠心力推定部68も有していると考えることができる。
【0075】
なお、これらの制御に従って、車体12の傾斜角度を小さくする場合に、車両10では、横風力を利用する場合がある。その場合、車体12は横風力によって動かされることになり、アクチュエータ36が力を発生させなくても車体12の傾斜角度が小さくなる。そのため、アクチュエータ36を作動させるための電力を必要としない。また、本車両10では、横風力によって車体12の傾斜角度を小さくする場合に、アクチュエータ36のモータで発電をさせる場合もある。その場合、アクチュエータ36のモータを発電機として利用し、横風力によってその発電機を作動させる。発電された電力は、車両10のバッテリーに蓄電され、車両10で消費される電力に利用することができるため、車両10で使用される電力を減らすことができる。
【0076】
≪車体外底面の形状による効果≫
ところで、前述したように、車体12の外底面は、車両10を前方から見た場合に、下方に向かって丸くなるような曲面とされいる。そのため、図14(a)に示すように、車体が直立している場合には、車幅方向中央において、外底面と走行面との間隔が最も小さくなる。したがって、外底面と走行面とによって区画される空間は、左右対称に区画されている。この区画された空間は、横風の通過する流路となり、車体が直立している場合には、図14(a)に示すような流線を成して横風が流路を通過する。一方、前述のように、風上側に車体12が傾斜させられた場合には、外底面と走行面との間隔が最も小さくなる箇所は、傾斜角度の増大に伴って、車体中央から傾斜側にその増大量に応じた量だけシフトする。言わば、先の流路は、入口が狭く、出口が広い形状へと変化することになる。そのため、横風は、図14(b)に示すような流線を成してその流路を通過することになる。したがって、流路の出口側では、ディフューザ効果によって、通過する横風の圧力が周囲に対して低下することになる。ところで、車体12を横風の風上側に傾斜させた場合、車体12に当たる横風の力は、車体12を持ち上げるようにして車体12に作用する。しかしながら、本車両10では、上記のディフューザ効果によって、車体12を持ち上げる力に対抗する下向きの力であるダウンフォースを車体12に作用させることができる。そのため、車両10の接地力を増加させて車両10をより安定して走行させることができる。また、外底面が上記のような曲面にされていることによって、上述の流路の最も狭くなる部分が、車体12の傾斜角度の増大に伴って、横風の風上側へとシフトすることになる。通過する横風を比較的スムースに通過させることができ、横風の流れを乱さず、ディフューザ効果を比較的有効に発揮させることができる。
【0077】
≪変形例1≫
図15は、第1実施例の変形例の車両80を示す。車両80は、横風を予知して横風対抗モーメントMWOを算出する方法を除いて、第1実施例の車両10とほとんど同様の構成とされている。以下の説明においては、説明の簡略化に配慮して、第1実施例の車両10と同様の構成や機能についての説明を省略する。
【0078】
車両80には、第1実施例の車両10に搭載されるドップラーレーダ50に代えて、横風情報を受信するための横風情報受信装置82が、車体12の前方部に搭載されており、ECU40に接続されている。また、この車両80は、図16に示すように、横風の向きと風速とを検出する常設横風情報検出装置84が傍らに複数設置された道路上を走行している。したがって、本車両80の走行経路予測処理によって予測される走行予定経路は、この道路上にあるように予測されることになる。常設横風情報検出装置84は、自身の設置された地点の横風の向きおよび風速、つまり、横風情報を検出し、無線によって随時発信している。これらの常設横風情報検出装置84は、予測された走行予定経路の比較的近い位置に設置されている。そのため、各常設横風情報検出装置84が検出する横風情報は、各常設横風情報検出装置84が近接する走行予定経路上の位置での横風情報とみなされる。横風情報受信装置82は、車両80の前方にある常設横風情報検出装置84から発信される横風情報を受信することができる。つまり、横風情報受信装置82は、車両80の走行経路の傍らに常設された常設横風情報検出装置84からの横風情報を受信する経路横風情報受信装置となっており、また、車両80の前方で吹いている横風情報を取得するための前方横風情報取得手段となっている。
【0079】
また、各常設横風情報検出装置84は、自身の設置された位置に関する情報も発信している。そのため、ECU40は、車両80の現在の位置および速度から、各常設横風情報検出装置84が近接する位置を通過するまでの時間を算出することができる。つまり、各常設横風情報検出装置84が近接する走行予定経路上の位置は、走行予定位置と考えることができ、ECU40は、それらの走行予定位置をそれぞれ通過する際の時間間隔を算出することができる。したがって、これら走行予定経路上の走行予定位置を通過する際の時間と横風情報とから、時刻tにおける車両80の走行位置で吹く風の向きを算出するための風向関数WD(t)と、風速を算出するための風速関数WS(t)とが作成される。したがって、これらの関数は、走行予定経路上での車両80の進行予定方向や速度を考慮することで、横風の車体12に対する相対的な向きや風速を算出するための関数である相対風向関数WD’(t)および相対風速関数WS’(t)にそれぞれ作成される。したがって、それら相対風向関数WD’(t)および相対風速関数WS’(t)によって、時刻tに車体12に作用する横風情報が予知され、その横風情報から横風対抗モーメントMWOが算出される。
【0080】
≪変形例2≫
図17は、第1実施例の変形例の車両90を示す。車両90は、横風を予知して横風対抗モーメントMWOを算出する方法を除いて、第1実施例の車両10とほとんど同様の構成とされており、以下の説明においては、説明の簡略化に配慮して、第1実施例の車両10と同様の構成や機能についての説明を省略する。
【0081】
車両90には、第1実施例の車両10に搭載されるドップラーレーダ50に代えて、横風情報を受信するための前車横風情報受信装置92が、車体12の前方部に搭載されており、ECU40に接続されている。また、車両90には、車体12の頭頂部に、車体12に吹いてくる横風情報、つまり、横風の向きと風速とを検出するための横風検出器94と、その横風情報を発信するための横風情報発信装置96が搭載されている。それら横風検出器94および横風情報発信装置96はECU40に接続されている。ECU40には、横風検出器94から横風情報が随時送信されている。ECU40は、ナビゲーションシステム46によって取得されている現在の車両の走行位置に関する情報とともに、その横風情報を横風情報発信装置96に送信する。横風情報発信装置96は、それら横風情報と現在の車両の走行位置に関する情報とを、無線によって周囲に随時発信する。
【0082】
このように構成された車両90の走行中に、図18に示すように、車両90の前方に、車両90と同様の構成を有する別の車両(以下、単に「前方車」と言う場合がある)が走行している場合、その前方車からも、その前方車の検出した横風情報、および、その前方車の走行位置に関する情報が随時発信されている。そのような場合に、車両90は、自身の前車横風情報受信装置92によって、その前方車から発信されている情報を受信し、その受信された情報は、ECU40に送信される。つまり、車両90の前車横風情報受信装置92は、車両90の前方で吹いている横風情報を取得するための前方横風情報取得手段となっている。また、車両90の後方に、車両90と同様の構成を有する別の車両(以下、単に「後方車」と言う場合がある)が走行している場合、その後方車は、車両90の横風情報発信装置96から随時発信される情報を受信することができる。したがって、本車両90が後方車の進行方向前方を走行する別の車両である場合、横風検出器94と横風情報発信装置96とを含んで、進行方向前方を走行する別の車両に吹く横風を検出する車載横風情報検出装置が構成されている。
【0083】
ECU40は、前方車の走行位置に関する情報と、その走行位置での横風情報とを格納し、車両90が前方車の走行した位置を走行する際に、前方車に吹いた横風と同じ横風が吹くと見なす。また、前方車は、自身の走行する道路と同じ道路を走行している場合、車両90の走行予定経路と同じ経路を走行していると見なせる。したがって、前方車に吹いた横風の風向きや風速は、車両90の走行予定経路上での風向きや風速と見なされ、走行予定経路上で車体12に作用する横風の向きや風速が予知される。このようにして予知された横風情報から、時刻tにおいて車体12に発生する横風モーメントMW(t)のマップが作成され、横風モーメントMW(t)の反数は、横風対抗モーメントMWO(t)となる。なお、車両90が受信する前方車からの情報は、車両90の前方に複数の車両がある場合には、車両90に近い位置にある車両からの情報が選択されて利用される。つまり、ECU40は、複数の車両から横風情報を受信する場合には、横風情報とともに発信される走行位置に関する情報を車両90の走行位置の情報と比較することで、車両90の前方における最も近くの車両を前方車として選択し、その車両の横風情報を横風を予知するために利用する。また、前方車は、車両90と同じ方向に進行する車両に限定されず、対向車、つまり、反対方向から来る車両であってもよい。つまり、対向車から発信される横風情報も、車両90の走行予定経路上の横風情報と見なして利用されるのである。なお、ECU40に格納された前方車からの情報のうち、車両90が通過した位置での情報は、随時消去される。
【0084】
≪変形例3≫
本変形例の車両(図示省略)は、第1実施例の車両10とほとんど同様の構成とされている。ただし、本車両では、傾斜装置39が素早く作動することが可能となっている。そのため、第1実施例の車両10と異なり、傾斜装置39によって車体12を傾斜させるまでの遅延時間がほとんど発生しない。そのため、本車両では、横風対抗モーメントMWOが、時刻tにおいて、つまり、遅延時間Lを考慮せずに決定される。
【0085】
また、詳しい説明は省略するが、本車両は、走行路の凹凸などによる外乱に対処するため、外乱によって車体12が傾斜しないように傾斜装置39を作動させるための処理も実行される。その処理では、先ず、車体12のロール量を検出するロールセンサ(図示省略)の検出値から、車体12の傾斜が、前述の横風および旋回への対処に応じたロール量となっているのかが判定される。横風および旋回への対処に応じた車体12のロール量となっていない場合には、応じた場合のロール量と実際のロール量との差が、外乱による車体12のロール量とされ、その差に基づいて、外乱により車体12に発生するモーメントである外乱モーメントMDが推定される。したがって、その外乱モーメントMDの反数が、外乱対抗モーメントMDOとされる。
【0086】
したがって、ECU40では、時刻tにおける横風対抗モーメントMWOおよび遠心対抗モーメントMCOに、さらに、外乱対抗モーメントMDOを加えた大きさのモーメントである目標対抗モーメントM*が車体12に発生するように、支持部材34の車体12に対する目標回転角度θ*が決定される。ECU40は、前述の回転角度θと重力によって車体12に発生するモーメントとの関係を示すマップから、目標対抗モーメントM*を発生させるための支持部材34の目標回転角度θW*を決定する。
【実施例2】
【0087】
図19は、第2実施例の車両110を模式的に示す。車両110は、第1実施例の車両10と同様に、3輪で走行する車両となっており、おおまかには、第1実施例の車両10と同様の構成とされている。したがって、以下の説明においては、説明の簡略化に配慮して、第1実施例の車両10と同様の構成や機能についての説明を省略する。
【0088】
車両110は、自身の骨格および外郭を形成する車体112を含んで構成されている。また、車両110は、車体112の上面部、つまり、天井となる部分に、左右方向において並ぶように配置された1対の翼板114と、車体112から吊り下げられた状態でそれら1対の翼板114をそれぞれ保持する1対の翼板保持機構116と、それら1対の翼板114を、それぞれ独立して車体112の左側面および右側面から車幅方向に張り出すように変位させる1対の翼板変位装置118とを内蔵している。1対の翼板114の各々は、同じ大きさの長方形に形成されている。翼板保持機構116の各々は、車体112の天井内にそれぞれ固定された2つのレール120と、1対の翼板114の各々の上面に取り付けられた複数のローラ122とを含んで構成されている。2つのレール120は、それぞれ、車幅方向に延びる状態で固定されており、ローラ122は、各レール120に対応して2つずつ取り付けられており、レール120に引っ掛けられている。そのため、各翼板114は、車体112に吊り下げられた状態で保持されている。また、各翼板114は、ローラ122が転がることで、車幅方向にスライドするようにして移動可能となっている。
【0089】
1対の翼板変位装置118の各々は、車幅方向にモータシャフトが延びる状態で車体112に固定されたモータ124と、そのモータ124に連結されたねじシャフト126と、1対の翼板114の各々に固定されたナット128とを有している。ねじシャフト126は、外周部に雄ねじが形成されており、ナット128は、その雄ねじに噛み合う状態で固定されている。つまり、1対の翼板変位装置118の各々では、ねじシャフト126とナット128とによってねじ機構が構成されており、モータ124が回転することで、ナット128が車幅方向に移動する。したがって、ナット128がそれぞれ固定された1対の翼板114の各々は、対応するモータ124の回転によって、車幅方向に変位することになる。また、車体112の左右の側面には、それぞれ、開口130が設けられているため、各モータ124の作動によって、対応する翼板114を、開口130を通して車体112から張り出す位置に移動させることができる。なお、各モータ124は、ECU40に接続されており、ECU40は、各翼板114が車体112から張り出す位置と張り出さない位置とに移動するように、モータ124を制御する。
【0090】
横風に対処するため、横風の風上側に車体112が傾斜させられている場合、車両110の走行による走行風の影響を無視すれば、図20(a)に示すように、車体112の上方を通過する横風によって、車体112の風下側の空気は渦状となって流れる。その渦上となった領域では周囲に対して空気の圧力が低下する。そのためと、車体112の風上側における空気の圧力と、風下側の空気の圧力との差によって、風上側から風下側へと向かう力が車体112に作用する。つまり、この力は、横風力と同じ方向の力となって車体112に作用する。一方、図20(b)に示すように、風下側の翼板114が張り出す位置に移動すると、その翼板114の下方では、車体112の上方を通過する横風の流れ込みが抑制される。そのため、車体112の風下側での空気の圧力の低下が抑制され、車体112の両側面における圧力差が低減することになる。そのため、圧力差によって車体112に作用する力を低減させることができる。別の見方をすれば、風下側の翼板114が張り出すことで、横風力に対抗する横風対抗力、すなわち、車体112を風上に向かって傾斜させたり、車体112を横風の風上側に押したりするような力が発生し、先の圧力差による力を低減させることができると考えることができる。そのため、車体112が風下側に過度に傾斜したり、車両110が風下側に斜行するのを防止することができる。したがって、本車両110では、ECU40が、横風に対処するため、傾斜装置39を制御して横風の風上側に車体112を傾斜させるのと同時に、風下側の翼板114が張り出す位置に移動するようにモータ124を制御する。
【0091】
本車両110では、これら1対の翼板114,1対の懸架装置116,1対の翼板変位装置118を含んで気流変化依拠対処手段が構成されており、その気流変化依拠対処手段によれば、1対の翼板変位装置118の一方の作動によって対応する翼板114を移動させることで、その翼板114の位置する車体112の側面において気流を変化させ、その変化に依拠して横風対抗力を車体112に作用させることができる。また、この気流変化依拠対処手段によって、本車両110では、横風対抗力を車体112に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段が構成されている。また、1対の翼板114の各々は、車体112から張り出すように移動することで、その翼板114の位置する車体112の側面において気流を変化させる可動体と考えることができる。
【0092】
なお、本実施例の車両110は、1対の翼板114に代えて、1枚の板を翼板として天井に内蔵し、その1枚の翼板を、懸架装置116と同様の構成とされた懸架装置で懸架し、翼板変位装置118と同様の構成とされた翼板変位装置で車幅方向にスライドさせるような車両であってもよい。そのような車両であれば、車両110と同様に、その1枚の翼板を、風下に向かって張り出す位置と張り出さない位置との間で変位させることができる。また、本実施例の車両110は、図21に示すように、車体112の左右の側面にそれぞれ沿うようにして設けられた1対の翼板を有し、その1対の翼板の各々を車体112から張り出す位置に移動させるような車両であってもよい。その車両では、1対の翼板の各々が、車体112の前後方向に延びる回転軸線を有するヒンジによって車体112に回動可能に保持されている。また、その車両には、具体的な説明は省略するが、1対の翼板の各々を跳ね上げるようにして回動させる装置が設けられてる。したがって、この車両によれば、車両110と同様に、1対の翼板のうち横風の風下側の翼板を跳ね上げるようにして回動させることで、その翼板を風下に向かって張り出す位置に移動させることができる。
【実施例3】
【0093】
図22は、第3実施例の車両150を模式的に示す。車両150は、車両150の骨格および外郭を形成する車体152と、車体152にそれぞれ回転可能に保持された4つの車輪154とを含んで構成されている。なお、車体152は、図22に示すように、上から見た場合に、前方部の丸くされた流線形とされている。詳しい説明は省略するが、4つの車輪154のうちの前方の2つの車輪154は、本車両150における転舵輪および駆動輪となっている。車両150は、4輪で走行することや、車体152を傾斜させるための装置を含んでいないことを除いて、おおまかには、第1実施例の車両10と同様の構成とされている。したがって、以下の説明においては、説明の簡略化に配慮して、第1実施例の車両10と同様の構成や機能についての説明を省略する。
【0094】
車体152には、車体152に沿う形状とされた互いに同じ大きさの1対の整流板156と、それら1対の整流板156を車体152に対して保持する複数の回動アーム158と、1対の整流板156の各々に対応して車体152に固定された1対のモータ160とが備えられている。各整流板156は、4つの回動アーム158によって保持されており、4つの回動アーム158の各々は、一端が車体152に回動可能に保持され、他端が整流板156に回動可能に保持されている。なお、これら4つの回動アーム158の各々は、他端が四角形とされた整流板156の四隅に近い位置で整流板156に連結するように配置されている。また、これら4つの回動アーム158のうち、車体152の前方側にある2つの回動アーム158は、モータ160のモータシャフトに固定されている。つまり、これら2つの回動アーム158は、モータシャフトとともに回転することで、車体152に対して回動する。このように車体152に保持される各整流板156は、対応するモータ160が回転すると、車体152から離間するように変位する。つまり、本車両150では、回動アーム158およびモータ160によって、整流板156を車体152の側面から離間した位置に変位させる整流板離間装置が構成されている。なお、各モータ160は、ECU40に接続されており、ECU40は、各翼板114が車体152から離間する位置と離間しない位置とに変位するように、モータ160を制御する。
【0095】
このように構成された車両150の走行中、走行気流、つまり、車両150の走行によって発生する気流は、車体152が前方部の丸くされた流線形とされているため、図23(a)に示す流線に沿って、車体152の左右にスムースに導かれる。本車両150では、横風に対処する場合に、ECU40が横風の風上側にあるモータ124を制御して、風上側の整流板156を、車体152の側面から離間した位置に移動させる。その場合、車体の左右を流れる気流のうち、横風の風上側の気流は、図23(b)または(c)のように変化する。具体的に説明すると、横風の風上側の気流は、整流板156と車体152の側面との間に押し込まれるようにして導き入れられる。つまり、整流板156と車体152の側面との間において、気流の通過する流路が狭くなるため、気流の流速が速くなり、ベルヌーイの定理に従って、その気流の圧力が低下する。そのため、車体152の左右を流れる気流の圧力差によって、横風の風上側に向かう揚力が発生し、その揚力は、横風対抗力、すなわち、車体152を風上に向かって傾斜させたり、車体152を横風の風上側に押したりする力として、車体152に作用する。したがって、風上側の整流板156を車体152から離間させることで、横風によって、車体152が風下側に過度に傾斜したり、車両150が風下側に斜行するのを防止することができる。なお、図23に示される流線は、理解を容易にするため、横風の影響を無視して描写されている。
【0096】
本車両150では、これら1対の整流板156,複数の回動アーム158,1対のモータ160を含んで気流変化依拠対処手段が構成されており、その気流変化依拠対処手段によれば、1対のモータ160の一方の作動によって対応する整流板156を移動させることで、その整流板156の位置する車体112の側面において気流を変化させ、その変化に依拠して横風対抗力を車体152に作用させることができる。また、この気流変化依拠対処手段によって、本車両150では、横風対抗力を車体152に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段が構成されている。また、1対の整流板156の各々は、車体152から離間した位置に変位することで、その整流板156の位置する車体112の側面において気流を変化させる可動体と考えることができる。
【実施例4】
【0097】
図24は、第4実施例の車両180を模式的に示す。車両180は、第3実施例の車両150と同様に、4輪で走行する車両となっており、おおまかには、第3実施例の車両150と同様の構成とされている。したがって、以下の説明においては、説明の簡略化に配慮して、第3実施例の車両150と同様の構成や機能についての説明を省略する。
【0098】
車両180は、上から見た場合に前方部の丸くされた流線形とされている車体182を含んで構成されている。また、車体182は、車体182の主要となる部分であって車輪154を保持する本体部184と、車体182の後方側の部分であって、本体部184から分離された後方部186とによって構成されている。後方部186は、自身を構成するフレーム187を有しており、そのフレーム187は、後方部186の前方側において、上下方向に延びる回転シャフト188に固定されている。回転シャフト188は、下方部において、本体部184に固定された保持器190によって回転可能に保持されている。また、本体部184には、回転シャフト188を回転駆動させるための駆動装置192が設けられている。駆動装置192は、本体部184に固定されたモータ194と、モータ194の回転を回転シャフト188に伝達するギヤ機構196とを含んで構成されている。なお、モータ194は、ECU40に接続されており、ECU40は、後方部186が本体部184に対して左右に回動した状態、つまり、車体182が屈曲した状態と、回動していない状態、つまり、車体182が屈曲していない状態とになるように、モータ194を制御する。
【0099】
このように構成された車両180の走行中、走行気流、つまり、車両180の走行によって発生する気流は、車体182が前方部の丸くされた流線形とされているため、図25(a)に示す流線に沿って、車体182の左右にスムースに導かれる。本車両180では、横風に対処する場合に、ECU40がモータ194を制御して、後方部186を、横風の風下側へと回動させる。そのように後方部186を回動させると、車体182の形状は、図25(b)または(c)に示すように、横風の風下側に屈曲するような形状へと変化する。つまり、本車両180では、回転シャフト188,保持器190,駆動装置192を含んで、車体182の後方側部分である後方部186を、車体182が風下に向かって屈曲するように変位させる車体後部変位装置が構成されている。
【0100】
後方部186を変位させると、車体の左右を流れる気流が変化することになる。具体的に説明すると、横風の風上側の側面を通過する気流が車体182の後方へと通り抜けるまでの距離は、風下側の側面を通過する気流が車体182の後方へと通り抜けるまでの距離よりも長くなる。そのため、ベルヌーイの定理に従って、横風の風上側の側面を通過する気流の流速が速くなるとともに圧力が低下するため、車体の左右を流れる気流の圧力差によって、横風の風上側に向かう揚力が発生し、その揚力は、横風対抗力、すなわち、車体182を風上に向かって傾斜させたり、車体182を横風の風上側に押したりする力として、車体182に作用する。言わば、車体182が飛行機の垂直尾翼のように機能することで、車体182に左右方向の力が作用するのである。したがって、後方部186を横風の風下側へと回動させることで、横風によって、車体182が風下側に過度に傾斜したり、車両180が風下側に斜行するのを防止することができる。なお、図25に示される流線は、理解を容易にするため、横風の影響を無視して描写されている。
【0101】
また、図26に示すように、後方部186を比較的大きく回動させた場合、つまり、車体182が比較的大きく屈曲された場合、車体182の横風の風下側を流れる気流は、後方部186に当たることになる。そのため、その気流の流れる方向は横風の風下側へと曲げられ、横風の風上側に向かって車体182を押すような力が車体182に作用することになる。つまり、この横風の風上側に向かう力を、横風対抗力として車体182に作用させることができる。このように、本車両180は、先の揚力と気流の車体を押す力との両方によって横風対抗力を車体182に作用させることができる。これら揚力および気流の車体を押す力とを比較すると、気流の車体を押す力の方が大きくなる。したがって、本車両180は、横風対抗力が比較的小さい場合には、揚力による横風対抗力を車体182に作用させ、横風対抗力が比較的大きい場合には、気流の車体を押す力による横風対抗力を車体182に作用させるように構成されている。
【0102】
したがって、本車両180では、回転シャフト188,保持器190,駆動装置192を含んで気流変化依拠対処手段が構成されており、その気流変化依拠対処手段によれば、駆動装置192の作動によって後方部186を回動させることで、車体182の左右を流れる気流を変化させ、その変化に依拠して横風対抗力を車体に作用させることができる。また、この気流変化依拠対処手段によって、本車両180では、横風対抗力を車体182に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段が構成されている。また、後方部186は、車体182が屈曲するように回動することで、車体の左右を流れる気流の両方を変化させる車体の一部と考えることができる。
【実施例5】
【0103】
図27は、第5実施例の車両210を模式的に示す。車両210は、4輪で走行する車両となっており、上から見た場合に前方から後方に細長くされた長方形とされている。また、車両210は、2人が前後に並ぶ状態で乗車することができる車両となっている。車両210は、これらの4輪で走行することや長方形とされていることを除いて、おおまかには、前述の実施例の車両と同様の構成とされている。したがって、以下の説明においては、説明の簡略化に配慮して、前述の実施例の車両と同様の構成や機能についての説明を省略する。
【0104】
車両210は、車両210の骨格および外郭を形成する車体212を有している。その車体212は、車体212の土台となる部分であって、車両210の機器や乗車員等を支え、車輪を回転可能に保持する部分であるシャーシ部214と、それら機器や乗車員を覆い、車両210の外観を形成するシェル部216とによって構成されている。そのシェル部216は、自身の前後左右におけるほぼ中心において上下方向に延びる回転シャフト218に固定されており、その回転シャフト218は、下端部において、シャーシ部214に固定された保持器220によって回転可能に保持されている。また、シャーシ部214には、回転シャフト218を回転させるための駆動装置222が設けられている。駆動装置222は、シャーシ部214に固定されたモータ224と、モータ224の回転を回転シャフト218に伝達するギヤ機構226とを含んで構成されている。なお、モータ224は、ECU40に接続されており、ECU40は、シェル部216がシャーシ部214に対して左右に回転する状態と、回転しない状態とになるように、モータ224を制御する。
【0105】
このように構成された車両210の走行中、走行気流、つまり、車両210の走行によって発生する気流は、図25(a)に示す流線に沿って、車体212の左右に導かれる。本車両210では、横風に対処する場合に、ECU40がモータ224を制御して、シェル部216を、それの前方側の部分が風上側に向かう方向に回転させる。つまり、駆動装置222は、シェル部216を、それの前方側の部分が後方側の部分より風上側にシフトする方向に、シャーシ部214に対して回転させるシェル部回転装置となっている。このようにシェル部216を回転させると、車体の左右を流れる気流が変化することになる。具体的に説明すると、シェル部216が回転すると、走行気流に対してシェル部216が斜めとなって配置されることになるため、走行気流は、シェル部216を通過する際に、シェル部216に当たり、横風の風下側の方向へと曲がるようにして流れることになる。そのため、シェル部216に当たる気流の車体を押す力は、横風対抗力、すなわち、車体212を風上に向かって傾斜させたり、車体212を横風の風上側に押したりする力として、車体212に作用する。したがって、シェル部216を回転させることで、横風によって、車体212が風下側に過度に傾斜したり、車両210が風下側に斜行するのを防止することができる。したがって、本車両210は、シェル部216全体、つまり、車両210の外観を形成する部分の全体に気流が当たることで、気流の車体212を押す力を比較的大きくすることができる。なお、図25に示される流線は、理解を容易にするため、横風の影響を無視して描写されている。
【0106】
したがって、本車両210では、回転シャフト218,保持器220,駆動装置222を含んで気流変化依拠対処手段が構成されており、その気流変化依拠対処手段によれば、駆動装置222の作動によってシェル部216を回転させることで、車体212の左右を流れる気流を変化させ、その変化に依拠して横風対抗力を車体に作用させることができる。また、この気流変化依拠対処手段によって、本車両210では、横風対抗力を車体212に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段が構成されている。また、シェル部216は、前方側の部分が後方側の部分より風上側にシフトする方向に回転することで、車体の左右を流れる気流の両方を変化させる車体の一部と考えることができる。
【実施例6】
【0107】
図29は、第6実施例の車両240を模式的に示す。車両240は、第5実施例の車両210と同様に、4輪で走行する2人乗りの車両となっている。車両240では、車両240の骨格および外郭を形成する車体242の屋根となる部分に、整流装置244が設けられている。整流装置244は、上から見た場合に前方部の丸くされた流線形とされ、車体242の屋根の一部を形成する装置ボディ246と、装置ボディ246に沿う形状とされた互いに同じ大きさの1対の整流板248と、それら1対の整流板248を装置ボディ246に対して保持する複数の回動アーム250と、1対の整流板248の各々に対応して装置ボディ246に固定された1対のモータ252とを有している。つまり、車両240では、整流装置244によって、実施例3の車両150と同様に、横風の風下側の整流板248を装置ボディ246から離間させることで、横風の風上側に向かう揚力を発生させ、その揚力を、横風対抗力として車体242に作用させることができる。
【0108】
したがって、本車両240では、これら1対の整流板248,複数の回動アーム250,1対のモータ252を含んで気流変化依拠対処手段が構成されており、その気流変化依拠対処手段によれば、1対のモータ252の一方の作動によって対応する整流板248を移動させることで、その整流板248の位置する車体242の側面において気流を変化させ、その変化に依拠して横風対抗力を車体242に作用させることができる。また、この気流変化依拠対処手段によって、本車両240では、横風対抗力を車体242に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段が構成されている。また、1対の整流板248の各々は、車体242から離間した位置に変位することで、その整流板248の位置する車体242の側面において気流を変化させる可動体と考えることができる。
【0109】
車両240では、このように車体242の屋根に整流装置244が設けられていることで、整流装置244を構成する構成部品によって、車両240の居住空間が狭められることがない。つまり、車両240の居住空間は、整流装置244が設けられていない場合の居住空間とほとんど変わらない。また、横風対抗力は、比較的高い位置で車体242に作用するため、車体242が傾斜する際の回転中心から比較的離れた位置で車体242に作用することになる。したがって、比較的小さな横風対抗力であっても、その横風対抗力は、車体242が風下側へ過度に傾斜するのを効果的に防止するように作用することになる。
【符号の説明】
【0110】
10:車両 12:車体 30:支持装置(横風対処手段,車体傾斜装置) 40:電子制御ユニット(制御装置) 50:ドップラーレーダ 60:走行経路予測部 62:横風予知部 80:車両 82:横風情報受信装置(経路横風情報受信装置) 84:常設横風情報検出装置 90:車両 92:前車横風情報受信装置 94:横風検出器(車載横風情報検出装置) 96:横風情報発信装置(車載横風情報検出装置) 110:車両 112:車体 114:翼板(横風対処手段,気流変化依拠対処手段,可動体) 118:翼板変位装置(横風対処手段,気流変化依拠対処手段) 150:車両 152:車体 156:整流板(横風対処手段,気流変化依拠対処手段,可動体) 160:モータ(整流板離間装置,横風対処手段,気流変化依拠対処手段) 180:車両 182:車体 186:後方部(可動体) 192:駆動装置(横風対処手段,気流変化依拠対処手段,車体後部変位装置) 210:車両 212:車体 214:シャーシ部 216:シェル部(可動体) 222:駆動装置(横風対処手段,気流変化依拠対処手段) 240:車両 242:車体 248:整流板(横風対処手段,気流変化依拠対処手段,可動体) 252:モータ(整流板離間装置,横風対処手段,気流変化依拠対処手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の横風に対処するための横風対処手段を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が走行中に横風を受けると、例えば、車体が風下側に傾斜したり、あるいは、車両が風下側に向かって斜行するといった事態、すなわち、車両の安定性が妨げられる事態が発生することがある。このような事態を防ぐため、下記特許文献に記載の車両は、横風によって車両に作用する力を推定し、その推定した力に基づいて、横風の風上側に車輪を転舵させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−223568号公報
【特許文献2】特開昭62−210170号公報
【特許文献3】特開平7−47968
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような事態を防ぐためには、上記特許文献に記載の車両のように車輪を転舵させるだけではなく、様々な手段を用いることができる。また、それらの手段を横風の情報に基づいて制御する場合、その情報には、横風に関する様々な情報を用いることができる。本発明は、このような実情に鑑み、横風に強い車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、第1発明の車両は、横風に対抗する力を車体に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段と、その横風対処手段を制御する制御装置とを備え、制御装置が、車体に作用する横風を予知する横風予知部を有し、その横風予知部によって予知された横風に基づいて横風対処手段を制御することを特徴としており、また、第2発明の車両は、横風に対抗する力を車体に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段と、その横風対処手段を制御する制御装置とを備え、横風対処手段が、車体の左右を流れる気流の少なくとも一方を変化させ、その変化に依拠して横風に対抗する力を車体に作用させる気流変化依拠対処手段を含んで構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
上記第1発明の車両によれば、横風の発生が予知され、その予知された横風に基づいて、例えば、制御装置は、横風対処手段を、あらかじめ作動させて横風に対処するように制御することができる。そのため、第1発明の車両は、横風に強い車両となる。また、上記第2発明の車両によれば、横風対処手段は、例えば、車体の左右を流れる気流の間に圧力差を発生させたり、車体の横風の風下側を流れる気流を車体に当てることで、横風に対抗する力を車体に作用させることができる。そのため、第2発明の車両は、横風に強い車両となる。
【発明の態様】
【0007】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」と言う場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。そして、請求可能発明の態様のうちのいくつかのものが、特許請求の範囲に記載した請求項に係る発明に相当する。
【0008】
なお、以下の各項において、(1)項と(3)項とを合わせたものが請求項1に、請求項1に(2)項の技術的特徴を加えたものが請求項2に、請求項1または請求項2に(11)項の技術的特徴を加えたものが請求項3に、(1)項と(21)項とを合わせたものが請求項4に、請求項4に(23)項の技術的特徴を加えたものが請求項5に、請求項4または請求項5に(24)項の技術的特徴を加えたものが請求項6に、請求項4ないし請求項6のいずれか1つに(25)項の技術的特徴を加えたものが請求項7に、請求項4ないし請求項7のいずれか1つに(26)項の技術的特徴を加えたものが請求項8に、それぞれ相当する。
【0009】
(1)横風に対抗する力を車体に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段と、
その横風対処手段を制御する制御装置と
備えた車両。
【0010】
車両が走行中に横風を受けると、横風の力(以下、「横風力」と言う場合がある)が車体に作用することになる。つまり、横風が車体の左右いずれかの方向から車体に向かって吹いてくることを考えれば、横風力は、横風に起因して車体を左右いずれかの方向に押すような力と考えることができる。本車両によれば、横風力が車体に作用する場合であっても、制御装置が横風対処手段を制御することで、横風に対抗する力(以下、「横風対抗力」と言う場合がある)を車体に作用させることができる。なお、横風対抗力は、車体に作用する横風力を打ち消す方向に、つまり、横風力の車体に作用する方向とは反対の方向で車体に作用する力と考えることができる。
【0011】
また、本項における「横風に対処する」とは、例えば、横風が車両に与える影響を軽減したり、排除することと考えることができる。横風が車両に与える影響とは、例えば、横風によって、車体が風下側に傾斜したり、車両が風下側に向かって斜行するといった事態、すなわち、横風が車両の安定性を妨げるような事態と考えることができる。つまり、「横風に対処する」とは、横風が車体の姿勢や車両の走行を変化させる事態に対処することと言うこともできる。そのように横風に対処することで、本車両は、横風に強い車両、つまり、横風の影響を受けにくい、言い換えれば、横風によっても安定性が失われない車両となる。そのため、横風対抗力は、例えば、横風による車体の傾斜を防いだり、車両が風下側へ斜行するのを防ぐように車体に作用する力であればよい。具体的に言えば、横風対抗力は、例えば、車体を横風の風上側に傾斜させるような力、あるいは、車体を横風の風上側に押すような力であればよい。
【0012】
本項の「制御装置」は、例えば、横風に関する情報(以下、「横風情報」と言う場合がある)に基づいて横風対処手段を制御するようなものであればよい。横風情報は、例えば、横風の方向や風速等であればよい。詳しくは、横風情報は、例えば、車体に現に作用している横風の方向や風速等であってもよいし、車体にこれから作用する横風の方向や風速等であってもよい。
【0013】
(2)前記横風対処手段が、横風による車体の過度な傾斜を防止するための手段である(1)項に記載の車両。
【0014】
本項に記載する「車体の傾斜が過度」とは、例えば、車体の傾斜によって、乗車員が著しい不快感を感じたり、車両の走行が極端に不安定になるといったことを示す。したがって、本車両によれば、横風によって車体が過度に傾斜することはないため、横風においても、乗車員が比較的不快感を感じず、車両は比較的安定した状態で走行することができる。このことは、本車両が、車幅が狭い割に車高が高いような車両の場合には、横風による車体の傾斜が過度になりやすいため、特に有効である。
【0015】
(3)前記制御装置が、車体に作用する横風を予知する横風予知部を有し、その横風予知部によって予知された横風に基づいて前記横風対処手段を制御するように構成された(1)項または(2)項に記載の車両。
【0016】
本車両では、これから車両に吹くであろう横風を予知し、その予知された横風情報に基づいて、例えば、あらかじめ横風対処手段を作動させておくことができる。そのため、例えば、制御装置からの指令を受け取ってから、その指令に従う状態に変化するまでの間にタイムラグが発生するような横風対処手段の場合には、タイムラグを見越してその横風対処手段をあらかじめ作動させておくことができる。このように横風対処手段を作動させれば、予知された横風が実際に車両に吹く時点で、横風対処手段を横風に比較的良好に対処する状態にさせておくことができる。
【0017】
本項の「横風を予知する」とは、これから車体に作用する横風を何らかの方法を用いて知ることであり、その方法は特に限定されていない。例えば、車両の前方で吹いている横風情報を取得し、その情報から、車両に吹く横風を予知してもよい。そのため、本車両は、例えば、車両の前方で吹いている横風情報を取得する前方横風情報取得手段を有していてもよい。
【0018】
(4)前記制御装置が、車両の走行経路を予測する走行経路予測部を有し、
前記横風予知部が、前記走行経路予測部によって予測された経路における横風を予知するように構成された(3)項に記載の車両。
【0019】
本車両によれば、車両の走行経路が予測されるため、前述の横風予知部は、その走行経路上での横風を予知することで、車体に作用する横風を比較的高精度に予知することができる。また、制御装置は、そのように予知された横風に対処するように横風対処手段を制御できるため、横風対処手段は、実際の横風に比較的良好に対処することができる。
【0020】
本項に記載される「走行経路」とは、言わば、それによって、車両の走行する位置や、車両の進行方向を示すことができるようなものと考えることができる。したがって、走行経路は、例えば、車両の走行する道路またはレーン等であればよい。その場合、車両の位置は、その道路またはレーン上において示され、車両は、その道路またはレーンに沿う方向に進行すると考えることができる。また、走行経路は、例えば、1本の線で示されるようなものであってもよい。その場合、車両は、その線上の位置にあり、その線に沿う方向に進行すると考えることができる。あるいは、走行経路は、レーンや線などの連続したものではなく、車両が走行する予定の位置である走行予定位置と、その走行予定位置における車両の進行する予定の方向である進行予定方向とで示されるようなものであってもよい。この場合、走行経路は、言わば、1つの点で示されるようなものとなる。また、走行経路は、複数の走行予定位置および進行予定方向から、それらを結ぶ1本の線で示されるようなものであってもよい。
【0021】
したがって、走行経路予測部は、例えば、当該車両が、車両の走行する道路地図に関する情報を有するナビゲーションシステムを備えている場合には、その道路地図に関する情報に基づいて走行経路を予測するようなものであればよい。その場合、予測される走行経路は、車両の走行する道路になる。あるいは、当該車両が、車速を検出する車速センサと、車輪の転舵量を検出する転舵量センサとを備えている場合には、それらセンサの検出値に基づいて走行経路を予測するようなものであってもよい。その場合、予測される走行経路は、1本の線で表されるものになる。
【0022】
(5)前記横風予知部が、ドップラーレーダを含んで構成された(3)項または(4)項に記載の車両。
【0023】
本車両では、横風予知部は、言わば、前述の前方横風情報取得手段として、ドップラーレーダを有していると考えることができる。そのため、横風予知部は、車両の前方における横風情報をドップラーレーダによって取得することができ、その情報に基づいて、横風を予知することができる。ドップラーレーダは、車両前方における比較的広い範囲の横風情報を一度に取得することができる。つまり、ドップラーレーダは、車両前方の横風の分布を取得することができる。そのため、制御装置が前述の走行経路予測部を有している場合には、車両前方の横風の分布から、予測された走行経路上で吹く横風を予知することができる。
【0024】
(6)前記横風予知部が、
車両の進行方向前方において走行経路の傍らに常設され、その常設された地点の横風を検出する常設横風情報検出装置が発信する横風に関する情報を受信する経路横風情報受信装置を含んで構成された(3)項または(4)項に記載の車両。
【0025】
本車両では、横風予知部は、言わば、前述の前方横風情報取得手段として、経路横風情報受信装置を有していると考えることができる。そのため、横風予知部は、車両の進行方向前方に常設された常設横風情報検出装置から、その常設横風情報検出装置のある地点の横風情報を取得することができ、その情報に基づいて、横風を予知することができる。そのため、常設横風情報検出装置は、本車両が走行することになる経路のなるべく近傍に、適度な間隔を空けて複数設置されていることが望ましい。つまり、本車両が走行する経路に沿って常設横風情報検出装置が点在していれば、それらの検出装置からの横風情報に基づいて、その経路を走行する本車両がこれから受ける横風を比較的高精度に予知することができる。
【0026】
また、本車両の横風予知部は、例えば、常設横風情報検出装置から取得した横風情報によって、横風の変化する傾向を把握し、その傾向に基づいて本車両がその常設横風情報検出装置の近傍を通過する際に車体に作用する横風を予知するようなものであればよい。あるいは、本車両の横風予知部は、例えば、常設横風情報検出装置から取得した横風情報の横風と同じ状態の横風が、本車両がその常設横風情報検出装置の近傍を通過する際にも同様に吹いているとして、車体に作用する横風を予知するようなものであればよい。
【0027】
(7)前記横風予知部が、
当該車両の進行方向前方を走行する別の車両に搭載され、その別の車両に作用する横風を検出する車載横風情報検出装置が発信する横風に関する情報を受信する前車横風情報受信装置を含んで構成された(3)項または(4)項に記載の車両。
【0028】
本車両では、横風予知部は、言わば、前述の前方横風情報取得手段として、前車横風情報受信装置を有していると考えることができる。そのため、横風予知部は、走行経路の前方を走行する車両に搭載された車載横風情報検出装置から、その別の車両に作用する横風に関する情報を取得することができる。そのため、車載横風情報検出装置は、本車両の前方において適切な距離だけ離れて走行する車両に搭載された車載横風情報検出装置からの横風情報に基づいて、本車両がこれから受ける横風を比較的高精度に予知することができる。
【0029】
なお、本車両の横風予知部は、例えば、前方を走行する車両に搭載される車載横風情報検出装置から横風情報を随時取得し、本車両が情報の検出された地点を通過する際に、その情報と同じ状態の横風が吹いているとして横風を予知することができる。
【0030】
(11)前記横風対処手段が、
車体を風上に向かって傾斜させる車体傾斜装置を含んで構成された(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の車両。
【0031】
本項に記載の車体傾斜装置は、前述したような横風対抗力、つまり、車体を横風の風上側に傾斜させるような力を、横風対抗力として発生させることができる。したがって、本項に記載の車体傾斜装置は、横風対抗力を車体に作用させて、例えば、車体が風下側に傾斜するのを防ぐことができる。そのため、本車両が、例えば、車幅が狭い割に車高が高いような前述の車両であって、旋回中の遠心力に対処するという目的のために車体を傾斜させるための装置を有している場合には、その装置を横風に対処するという目的のために利用することもできる。
【0032】
(12)車体の外底面が、
路面に最も接近する部分の位置が車体の傾斜角度の増大に伴って車体中央から傾斜側にその増大量に応じた量シフトするような形状とされた(11)項に記載の車両。
【0033】
本車両によれば、車体を横風の風上側に傾斜させた場合に、車体の外底面と路面とによって形成される流路を横風が通過するすることになる。そのため、その流路は、横風の風上側で比較的狭く、風下側で比較的広くなる。したがって、その流路を通過する横風は、流路の比較的広くなる風下側において、ディフューザ効果のために周囲に対して圧力が低下する。そのため、車体には、その圧力の低下による下向きの力、つまり、ダウンフォースが作用することになる。車体を横風の風上側に傾斜させる場合、車体に当たる横風の力は、車体を持ち上げるようにして車体に作用する。本車両は、ダウンフォースによって、そのような車体を持ち上げる力に対抗する下向きの力を車体に作用させることができるため、車体を傾斜させて走行する場合に、車両の接地力を増加させて車両をより安定して走行させることができる。
【0034】
本車体の外底面は、例えば、車体が直立する場合に、車体と路面との間隔が、車体の中央で最も小さくなり、車体側面に向かうに連れて大きくなるような曲面、つまり、車両を前方から見た場合に、下方に突出するような曲面とされていればよい。外底面がこのような曲面とされていれば、車体の下方を通過する横風を比較的スムースに通過させることができるため、横風の流れを乱さず、ディフューザ効果を比較的有効に発揮させることができる。
【0035】
(21)前記横風対処手段が、
車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との少なくとも一方を変化させ、その変化に依拠して横風に対抗する力を車体に作用させる気流変化依拠対処手段を含んで構成された(1)項ないし(12)項のいずれか1つに記載の車両。
【0036】
本項に記載の「気流変化依拠対処手段」は、その手段が横風に対処していない場合と対処している場合とで、走行気流、つまり、車両の走行によって発生する気流のうち、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との少なくとも一方を変化させるようなものであればよい。この気流変化依拠対処手段によれば、横風に対処している場合に、例えば、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との一方の圧力が他方の圧力よりも低くなるように走行気流を変化させれば、その圧力差による力を、横風対抗力として、左右いずれかの方向において車体に作用させることができる。また例えば、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との一方だけが車体に当たるように走行気流を変化させれば、その一方の気流が車体を押す力を、横風対抗力として、左右いずれかの方向において車体に作用させることができる。したがって、本項に記載の気流変化依拠対処手段によれば、例えば、上記の気流の圧力差による力や気流が車体を押す力を、横風力によって車体が風下側に傾斜したり車両が風下側に向かって斜行するのを防ぐように、横風の風上側に向かって車体に作用させることができる。
【0037】
(22)前記気流変化依拠対処手段が、車体の一部若しくは車体に付設された可動体を変位させることによって、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との少なくとも一方を変化させるように構成された(21)項に記載の車両。
【0038】
本車両によれば、車体の一部または可動体を変位させるという比較的シンプルな方法で、横風に対処している場合に、例えば、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流とを異なる状態とすることで一方の気流の圧力を他方の気流の圧力よりも低くし、その圧力差による力を左右いずれかの方向において車体に作用させることができる。あるいは、車体の左右を流れる気流の一方だけを車体の一部あるいは可動体に当て、その一方の気流が可動体を押す力を左右いずれかの方向において車体に作用させることができる。
【0039】
(23)前記気流変化依拠対処手段が、
車体に付設された翼板と、
その翼板を、それが車体上部において庇状に風下に向かって張り出す位置と張り出さない位置との間で変位させる翼板変位装置と
を含んで構成された(21)項または(22)項に記載の車両。
【0040】
本車両によれば、風下側で翼板が車体上部から庇状に張り出されると、車体の上方を通過して車体の風下側の側面に回り込もうとする横風の流れが妨げられる。そのため、このように翼板を張り出す場合、翼板を張り出していない場合と比較して、車体の風下側の側面で発生する負圧が低減、つまり、車体の風下側の側面での空気の圧力が増加する。それによって、車体の風上側の気流の圧力と風下側の気流の圧力との差、つまり、車体の両側面での気流の圧力差も低減する。そのため、その圧力差によって横風の風下側に向かって車体に作用する力が小さくなることになる。このことは、別の見方をすれば、翼板を張り出すことで、車体の風下側の気流の圧力が増加し、その圧力の増加による力が、横風対抗力として、横風の風上側に向かって車体に作用すると考えることができる。したがって、本項に記載の気流変化依拠対処手段は、横風の風下側の翼板を張り出すことで、横風の風下側を流れる気流を変化させ、横風対抗力を車体に作用させることができる。その意味においては、本車両では、翼板が、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との少なくとも一方を変化させる可動体として車体に付設されていると考えることができる。
【0041】
本項に記載の気流変化依拠対処手段は、例えば、1枚の板を翼板として有しており、その翼板を車体の天井面において左右にスライドさせることで、車体の左側面または右側面の風下側において張り出す姿勢に変位させるようなものであってもよい。あるいは、2枚の板をそれぞれ翼板として有しており、それらの翼板を車体の天井面においてそれぞれ左右にスライドさせることで、一方の翼板を車体の左側面において、他方の翼板を右側面において、風下側に張り出す姿勢に変位させるようなものであってもよい。また、気流変化依拠対処手段が、2枚の板をそれぞれ翼板として有している場合、それらの翼板が、車体の左側面および右側面に、それぞれ、跳ね上げ可能な状態で車体に保持されていてもよい。この場合、2枚の翼板は、例えば、ヒンジのようなもので、車体から垂れ下がるような状態で保持されていればよい。そのように保持された2枚の翼板のうち、横風の風下側の翼板を跳ね上げるようにして回動させれば、その翼板を風下に向かって張り出す姿勢に変位させることができる。
【0042】
(24)前記気流変化依拠対処手段が、
車体の左右の側面に沿ってそれぞれ付設された1対の整流板と、
それら1対の整流板うちの風上側のものを、それと車体側面との間に気流を導くべく車体側面から離間した位置に変位させる整流板離間装置と
を含んで構成された(21)項ないし(23)項のいずれか1つに記載の車両。
【0043】
本車両によれば、横風の風上側にある整流板が車体側面から離間した位置に変位させられると、車体前方から側面へと流れる走行気流を、整流板と車体の側面との間に押し込むようにして導き入れることができる。つまり、整流板と車体の側面との間において、気流の通過する流路が狭くなるため、気流の流速が速くなり、ベルヌーイの定理に従って、その気流の圧力が低下する。そのため、横風の風上側において整流板を離間させれば、車体の左右を流れる気流の圧力差によって、横風の風上側に向かう揚力が発生し、その揚力を、横風対抗力として車体に作用させることができる。したがって、本項に記載の気流変化依拠対処手段は、横風の風上側の整流板を離間させることで、横風の風上側を流れる気流を変化させ、横風対抗力を車体に作用させることができる。その意味においては、本車両では、整流板が、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との少なくとも一方を変化させる可動体として車体に付設されていると考えることができる。
【0044】
本車両の車体は、走行気流を整流板と車体の側面との間に効果的に押し込むため、例えば、車両を上方から見た場合に、車体前方からの気流を車体の左右にスムースに導くことができる形状、例えば、前方部が丸い形状とされた車体を備えていることが望ましい。また、整流板離間装置は、車体前方部から左右に導かれた気流の流路を狭めるように、車体の比較的前方の位置に整流板を変位させるものであることが望ましい。
【0045】
(25)車体が、後方側部分がその部分の前方側の部分に対して回動することで、上方から見た場合において車体が左右に湾曲若しくは屈曲する構造を有しており、
前記気流変化依拠対処手段が、
車体の前記後方側部分を、車体が風下に向かって湾曲若しくは屈曲するように変位させる車体後部変位装置を含んで構成された(21)項ないし(24)項のいずれか1つに記載の車両。
【0046】
本車両によれば、車体の後方側部分が前方側部分に対して左右いずれかに回動することで、車体前方から側面へと流れる走行気流を、その後方側部分の回動する方向に応じて変化させることができる。具体的には、上記の側面へと流れる気流は、車体の後方側部分を通過する際に、後方側部分に当たり、後方側部分が回動した方向、つまり、横風の風下側の方向へと曲がるようにして流れることになる。そのため、後方側部分に当たる気流が車体を押す力を、横風の風上側の方向の力、つまり、横風対抗力として車体に作用させることができる。したがって、本項に記載の気流変化依拠対処手段は、後方側部分を回動させることで、横風の風下側を流れる気流を変化させ、横風対抗力を車体に作用させることができる。その意味においては、本車両では、後方側部分が、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との少なくとも一方を変化させる車体の一部になっていると考えることができる。
【0047】
また、本項に記載の気流変化依拠対処手段は、車両を上方から見た場合に、前方側部分の丸くされた流線形に車体が形成されている車両に適している。そのような車両の場合、後方側部分が回動すると、その回動する方向と反対側の方向に、ベルヌーイの定理に従って揚力を発生させることができるため、その揚力を横風対抗力として車体に作用させることができる。つまり、流線形に形成された車体を備えた車両の場合には、揚力と先の気流の車体を押す力との両方を横風対抗力として車体に作用させることができるため、横風対抗力を比較的効果的に車体に作用させることができる。
【0048】
(26)車体が、(a)車輪を保持するシャーシ部と、(b)上方から見た場合において前記シャーシ部に対して回転可能に前記シャーシ部に支持されて、当該車両の外郭として機能するシェル部とを有しており、
前記気流変化依拠対処手段が、
前記シェル部を、それの前方側の部分が後方側の部分より風上側にシフトする方向に、前記シャーシ部に対して回転させるシェル部回転装置を含んで構成された(21)項ないし(25)項のいずれか1つに記載の車両。
【0049】
本車両では、車体がシャーシ部とシェル部とに分かれており、シャーシ部は、言わば、車体の土台となる部分であり、車両の機器や乗車員等を支える部分となっており、一方、シェル部は、それら機器や乗車員を覆う部分、言わば、車両の外観を形成する部分になっていると考えることができる。
【0050】
本車両によれば、車体のシャーシ部をシェル部に対して回転させることで、車体前方から側面へと流れる走行気流を、そのシェル部の回転する方向に応じて変化させることができる。具体的に説明すると、シェル部が回転すると、上記の側面へと流れる気流に対してシェル部が斜めとなって配置されることになるため、その気流は、シェル部を通過する際にシェル部の一側面に当たり、横風の風下側の方向へと曲がるようにして流れることになる。そのため、シェル部に当たる気流が車体を押す力を、横風の風上側の方向の力、つまり、横風対抗力として車体に作用させることができる。したがって、本項に記載の気流変化依拠対処手段は、シェル部を回転させることで、横風の風下側を流れる気流を変化させ、横風対抗力を車体に作用させることができる。その意味においては、本車両では、シェル部が、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との少なくとも一方を変化させる車体の一部になっていると考えることができる。本項に記載の気流変化依拠対処手段では、シェル部の一側面、つまり、車両を横から見た場合の外観を形成する部分の全体に気流が当たることで、気流の車体を押す力を比較的大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1実施例の車両を示す側面図および平面図である。
【図2】図1の車両が有する車体傾斜装置を示す斜視図である。
【図3】図2の車体傾斜装置の作動によって車体が直立する状態から傾斜する状態に変化する様子を示す図である。
【図4】図1の車両が横風に対処する場合に、前輪の接地荷重が変化する様子を説明するための図である。
【図5】図1の車両の車体が横風の風上側に傾斜することで、横風力によるモーメントに対抗するモーメントを発生させることを説明するための図である。
【図6】図1の車両が有するドップラーレーダによって車両前方の横風に関する情報が取得される範囲と、図1の車両が有する走行経路予測部によって予測された走行予定経路とを模式的に示す図である。
【図7】図1の車両が有する横風予知部が、横風力を算出するために用いるマップを示す図である。
【図8】図1の車両が有する横風予知部によって予知された、横風力によって車体に発生するモーメントのマップを示す図である。
【図9】図1の車両が、横風を予知するために実行するプログラムの実行間隔を説明するための図である。
【図10】図1の車両において、横風対処手段を制御するために実行されるプログラムのフローチャートである。
【図11】図1の車両において、走行経路を予測するために実行されるプログラムのフローチャートである。
【図12】図1の車両において、横風を予知するために実行されるプログラムのフローチャートである。
【図13】図1の車両の制御装置で、横風を予知して横風対処手段を作動させる各機能部を説明するための図である。
【図14】図1の車両が風上側に傾斜する場合の車体の下方を通過する横風について説明をするための図である。
【図15】第1実施例の変形例の車両を示す平面図である。
【図16】車外横風情報検出装置と横風情報受信装置との関係を示す図である。
【図17】第1実施例の変形例の車両を示す平面図である。
【図18】車載横風情報検出装置と前車横風情報受信装置との関係を示す図である。
【図19】第2実施例の車両を示す側面図と平面図である。
【図20】図19の車両が風上側に傾斜する場合の車体の上方を通過する横風について説明するための図である。
【図21】第2実施例の変形例の車両において、翼板を変位させるための方法を説明するための図である。
【図22】第3実施例の車両を示す側面図と平面図である。
【図23】図22の車両が風上側に傾斜する場合の車体の側方を通過する気流について説明するための図である。
【図24】第4実施例の車両を示す側面図と平面図である。
【図25】図24の車両の車体が屈曲する場合に、車体の側方を通過する気流について説明するための図である。
【図26】図24の車両の車体が比較的大きく屈曲する場合に、車体の側方を通過する気流について説明するための図である。
【図27】第5実施例の車両を示す側面図と平面図である。
【図28】図27の車両が風上側に傾斜する場合の車体の側方を通過する気流について説明するための図である。
【図29】第6実施例の車両を示す側面図と平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記の実施例および変形例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【実施例1】
【0053】
≪車両の構造≫
図1は、第1実施例の車両10を模式的に示す。車両10は、車両10の骨格および外郭を形成する車体12と、車体12にそれぞれ回転可能に保持された1対の前輪14および単一の後輪16とを含んで構成されている。つまり、車両10は、3輪で走行する車両となっている。詳しい説明は省略するが、車両10では、1対の前輪14が転舵輪、後輪16が駆動輪とされている。車両10は、乗員座席18が略中央に1つだけ設けられた1人乗りの車両となっており、1対の前輪14の間隔を比較的狭くすることで、車幅の比較的狭い車両となっている。また、車体12の外底面は、車両10を前方から見た場合に、下方に突出するような曲面とされている。なお、本明細書では、1対の前輪14を左右別々に示す場合には、左側の前輪を左前輪14L、右側の前輪を右前輪14Rとして表記する。
【0054】
図2は、1対の前輪14に対して設けられたサスペンションシステム20を示す。サスペンションシステム20は、1対の前輪14を回転可能にそれぞれ保持する1対のステアリングナックル22と、1対のステアリングナックル22の下端部にそれぞれ連結される1対のロアアーム24と、1対のステアリングナックル22の上端部に連結される1対のアッパアーム26と、1対のロアアーム24に自身の下端部がそれぞれ連結された1対のスプリングアブソーバAssy28と、それらスプリングアブソーバAssy28の上端部を支持する支持装置30とを有している。なお、図2では、左前輪14Lを保持するステアリングナックル22の図示が省略されている。ステアリングナックル22は、上下方向に延びる棒状に形成されている。1対のロアアーム24は、一端が1対のステアリングナックル22の下端部にそれぞれ回転可能に連結され、他端が車体12にそれぞれ回転可能に保持されている。また、1対のアッパアーム26は、ロアアーム24の上方において、一端が1対のステアリングナックル22の上方部にそれぞれ回転可能に連結され、他端が車体12にそれぞれ回転可能に保持されている。なお、これら1対のロアアーム24および1対のアッパアーム26は、それぞれ、車両10の前後方向に延びる回転軸線回りに回動可能に車体12に保持されている。また、図2では分かり難いが、1対のロアアーム24の各々は、左右のアームが独立して車体12に対して回動可能となっており、1対のアッパアーム26の各々も、左右のアームが独立して車体12に対して回動可能となっている。
【0055】
スプリングアブソーバAssy28は、詳細な説明は省略するが、伸縮可能な筒状のケーシング内に、車体12と前輪14との接近に応じた反発力を発生させるスプリングと、そのスプリングによる車体の振動を減衰させるためのショックアブソーバとを有している。支持装置30は、車体12に固定された円筒形状のハウジング32と、1対のスプリングアブソーバAssy28の上端部を支持する支持部材34と、その支持部材34を回転動作させるためのアクチュエータ36とを有している。詳しい説明は省略するが、アクチュエータ36は、モータを含んで構成されており、ハウジング32に内蔵されている。支持部材34は、車両10の前方側から見た場合に、T字形となっている。支持部材34の下方に延びる部分は、ハウジング32の外周面に設けられた開口からハウジング32の内部に延びており、その下方に延びる部分の先端部が、図では示されていないが、車両の前後方向に延びつつ上記のモータに連結された回転シャフトに固定されている。したがって、アクチュエータ36は、モータの発生する力によって、支持部材34を車体12に対して回転動作させることができる。支持部材34の上方の部分は、ハウジング32の外部に位置しており、上方の部分の左右の端部38は、1対のスプリングアブソーバAssy28の上端部をそれぞれ支持している。
【0056】
図3(a)は、それぞれ、車両10を前から見た場合に、支持部材34が中立位置にある場合、つまり、支持部材34の車体12に対する回転角度θが0°となっている場合の車体12の姿勢を示している。また、図3(b)は、アクチュエータ36が支持部材34を車体12に対して左方に角度θだけ回転動作させた場合の車体12の姿勢を示している。また、図3(a)および(b)には、1対の前輪14に対応して車体12に設けられている1対のフェンダーの最上部の位置が、それぞれ、PR,PLとして示されている。支持部材34が中立位置にある場合、図3(a)に示すように、車体は直立しているため、1対のフェンダーの最上部の位置PR,PLは、同じ高さとなっている。支持部材34が左回転すると、図3(b)に示すように、車体上下方向において、右前輪14R側のスプリングアブソーバAssy28Rの上端部は上方に変位し、左前輪14L側のスプリングアブソーバAssy28Lの上端部は下方に変位する。また、それらの変位に伴って、右前輪14Rはバウンド方向に移動し、左前輪14Lはリバウンド方向に移動する。したがって、バウンドする右前輪14R側のフェンダーの最上部の位置PRの走行面からの高さは低くなり、リバウンドする左前輪14L側のフェンダーの最上部の位置PLの走行面からの高さは高くなる。つまり、車体12は、直立する状態から右側に傾斜する状態へと変化する。また、図では示していないが、支持部材34が車体12に対して右回転すると、車体12は左側に傾斜する。このようにして、車両10は、支持部材34を中立位置から回転させることで車体12を傾斜させることができるのである。このように、車両10では、支持装置30の作動によって車体12を傾斜させることができ、スプリングアブソーバAssy28および支持装置30を含んで、車体12を傾斜させるための傾斜装置39が構成されている。なお、車両10は、車両10が旋回する際に、傾斜装置39を作動させるように構成されている。詳しく言うと、車両10が旋回する際、車体12は遠心力FCによって旋回外側に傾斜するため、車両10の走行が不安定な状態になる。そのため、車両10では、旋回中に車体12が旋回内側に傾斜するように傾斜装置39が作動させられる。
【0057】
また、車両10には、傾斜装置39の作動を制御するための電子制御ユニット(ECU)40、車両10の速度を検出する車速センサ42、運転者によって操作されるステアリング操作部材の操作量を検出する操作量センサ44等が設けられている。それらのセンサは、それぞれ、ECU40に接続されている。また、アクチュエータ36には、支持部材34が固定される回転シャフトのハウジング32に対する回転角度、つまり、支持部材34の車体12に対する回転角度を検出するための回転角センサが内蔵されており(図示省略)、ECU40に接続されている。
【0058】
さらに、車両10には、道路地図情報が記録されたナビゲーションシステム46が搭載されており、ECU40に接続されている。さらに、車両10では、車体12の前方部に、車両10の前方における横風情報、具体的には、横風の向きや風速等を検出するドップラーレーダ50が搭載されており、ECU40に接続されている。ドップラーレーダ50は、図6に点線で示すように、車両10の前方における比較的広い範囲の横風情報を検出することが可能となっている。そのため、ECU40は、車両前方の横風の分布を取得することができる。言わば、ドップラーレーダ50は、車両の前方で吹いている横風情報を取得するための前方横風情報取得手段となっている。
【0059】
≪横風による影響≫
上述のように構成された車両10が横風中を走行すると、横風によって車体12に作用する横方向の力である横風力FWによって、車体12が横風の風下側に傾斜させられ、車両10の走行は不安定な状態になる。本車両10では、このように横風によって車体12が傾斜させられる場合に、先の車両10の旋回中の場合と同様に、傾斜装置39を作動させることによって、車体12が過度に傾斜することが防止されており、それにより、乗車員が著しい不快感を感じたり、車両10の走行が極端に不安定になることが防止されている。そのため、本車両10では、横風力FWを利用して、傾斜装置39を作動させる。
【0060】
横風力FWによって車体12が傾斜している場合、車体12の重心において、図4(a)に示すように、風下側の前輪14の接地点を中心とするモーメントである横風モーメントMWが発生していると考えることができる。横風モーメントMWによって車体12が風下側に傾斜させられると、図4(a)に示すように、風下側にある前輪14の接地荷重が増加し、風上側にある前輪14の接地荷重が減少するため、左右の前輪14の接地荷重のバランスが悪くなる。しかしながら、本車両10では、上述のように傾斜装置39が作動することで、図4(b)に示すように、車体12を風上側へと傾斜させることができる。そのため、風下側にある前輪14の接地荷重を減少させ、風上側にある前輪14の接地荷重を増加させることができる。つまり、本車両10では、傾斜装置39を作動させることで、左右の前輪14の接地荷重がバランスするように車体12の傾斜を調整する。このように、車両10では、傾斜装置39は、横風力FWに対抗する横風対抗力FWOを車体12に作用させて横風の風上に向かって車体12を傾斜させる車体傾斜装置となっており、傾斜装置39を含んで、横風対抗力を車体12に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段が構成されている。
【0061】
≪傾斜装置の作動によって車体に発生するモーメント≫
図5(a)に示すように、横風が発生しておらず、車体12が直立する状態での前輪14の一方の接地点を中心とする車体12の重心で発生する重力によるモーメントMGVと、図5(b)に示すように、横風が発生しており、傾斜装置39の作動により車体12が風上側へ傾斜する状態での風下側の前輪14の接地点を中心とする車体12の重心で発生する重力によるモーメントMGLとの差が、横風モーメントMWと釣り合えば、つまり、MW=MGL−MGVの関係が成り立てば、傾斜装置39の作動に依存せずに、車体12の姿勢が風上側に傾斜する状態で維持されることになる。つまり、その姿勢において、図5(c)に模式的に示すように、重力によるモーメントMGVとMGLとの差は、横風モーメントMWと同じ大きさで反対方向に発生する横風対抗モーメントMWOとなる。したがって、横風対抗モーメントは、風上側への車体の傾斜角度が増大するにつれて大きくなる。別の言い方をすれば、横風対抗モーメントMWOは、傾斜装置39の作動量、つまり、支持部材34の車体12に対する回転角度θが大きくなるにつれて大きくなるのである。
【0062】
ところで、傾斜装置39は、前述のように、車両10が旋回する際に、車体12が旋回内側に傾斜するように作動する。この作動は、遠心力FCによる旋回外側に向かうモーメントである遠心モーメントMCに対抗して、重力による旋回内側に向かうモーメントである遠心対抗モーメントMCOを車体12に発生させるために行われる。つまり、車両10は、傾斜装置39の作動を利用して、遠心力FCに対抗する遠心対抗モーメントMCOを発生させるとともに、横風力FWに対抗する横風対抗モーメントMWOを発生させるように構成されているのである。このように、車両10では、傾斜装置39が、旋回における遠心力に対処するための手段であるとともに、横風に対処するための手段にもなっている。
【0063】
≪横風の予知≫
前述のように横風の風下側に車体12を傾斜させるため、車両10では、車体12に作用する横風が予知され、その予知した横風に基づいて車体12が横風の風上側に傾斜させられる。横風の予知を行うため、先ず、ECU40では、車速と操作量とに基づいて、現在からT秒後までの車両10の走行経路を予測するための処理(以下、「走行経路予測処理」と言う場合がある)が実行される。走行経路予測処理では、車速センサ42の検出値と操作量センサ44の検出値とから、現在からT秒後までに車両10が走行するであろう位置(以下、「走行予定位置」と言う場合がある。図6に黒点で示す。)と、各走行予定位置における車両10の進行方向(以下、「進行予定方向」と言う場合がある。図6に実線の矢印で示す。)とが、D秒間隔で予測される。したがって、これらの走行位置を結ぶことで、図6に一点鎖線で示すように、車両10が走行するであろう経路(以下、「走行予定経路」と言う場合がある。)が予測されることになる。なお、先のD秒は、そのD秒間に車両10が進行する距離等を考慮し、走行予定経路がある程度滑らかな曲線になるように設定されている。この経路がある程度滑らかな曲線となるようにこの経路は、ナビゲーションシステム46から取得された道路地図情報と比較されて補正される。具体的には、道路地図情報と走行予定経路とが比較され、走行予定経路が道路から外れているような場合には、走行予定経路が道路地図情報に適合するように補正される。なお、道路地図情報に、車両10が走行する道路の情報が含まれていない場合には、算出された走行予定経路がそのまま使用されることになる。
【0064】
次に、ECU40では、車両10の前方の横風情報に基づいて、現在からT秒後までに車両10に吹く横風を予知するための処理(以下、「横風予知処理」という場合がある)が実行される。横風予知処理では、先ず、ドップラーレーダ50によって取得された車両10の前方での横風の分布のうち、先の各走行予定位置での横風情報、つまり、風向きや風速が、各走行予定位置を車両10がD秒間隔で順次通過する際に、車体12に作用する横風の横風情報と見なされ、これにより、各走行予定位置での横風が予知される。そして、具体的な説明は省略するが、各走行予定位置において予知された風向きや風速から、時刻tにおける車両10の走行位置で吹く風の向きを算出するための風向関数WD(t)と、風速を算出するための風速関数WS(t)とが作成される。これらの関数は、前述の走行予定経路上での風向きや風速を算出するための関数と見なされる。また、風向関数WD(t)および風速関数WS(t)は、車両10が走行予定経路上を走行する際の車両10の進行予定方向や速度を考慮して、車体12に作用する横風の向きや風速を算出するための関数、つまり、横風の車体12に対する相対的な向きや風速を算出するための関数である相対風向関数WD’(t)および相対風速関数WS’(t)に作成される。したがって、それら相対風向関数WD’(t)および相対風速関数WS’(t)によって、時刻tに車体12に作用する横風情報を予知することができるのである。
【0065】
≪横風モーメントの算出≫
ECU40では、相対風向関数WD’(t)および相対風速関数WS’(t)によって算出される時刻tの横風の向きと風速とから、時刻tにおける横風力FWを算出するための横風力関数FW(t)が作成される。その横風力関数はFW(t)=KD(t)・KS(t)・FWSの数式によって算出される。具体的に説明すると、FWSは基準横風力となっており、基準横風、つまり、基準方向である車体12の左側の真横から、基準風速である横風が車体12に作用している場合に、車体12に作用する横風力を表している。KDは風向き係数となっており、相対風向関数WD’(t)の値、つまり、横風の車体12に対する相対的な向きによって図7(a)に示すように変化し、時刻tにおける風向き係数はKD(t)と表される。なお、図7(a)は、横軸が車体正面から反時計回りに風向きが変わっていく際の風向き係数KDの変化を示している。KSは風速係数となっており、相対風速関数WS’(t)の値、つまり、横風の車体12に対する相対的な風速によって図7(b)に示すように変化し、時刻tにおける風速係数はKS(t)と表される。
【0066】
横風予知処理では、さらに、横風力関数FW(t)から、車体12の重心位置などの特性を考慮して、時刻tにおける横風モーメントMWを算出するための横風モーメント関数MW(t)が作成される。その横風モーメント関数MW(t)は、横風予知処理の実施された時刻からT秒後までの間の横風モーメントMWを算出するための関数となり、その関数を用いた算出結果は、例えば、図8(a)に示すようなグラフで図示されることになる。また、ECU40では、走行経路予測処理と横風予知処理とがT秒より短いC秒ごとに実行され、図9に示すように、T秒間分の横風モーメントMWを算出するための横風モーメント関数MW(t)がC秒ごとに随時作成される。これらの横風モーメント関数MW(t)の各々は、最初のR1秒間と最後のR2秒間とを除いた範囲である利用時間においてのみ、横風モーメントMWを算出するために利用される。なお、各横風モーメント関数MW(t)の利用時間は、関数の作成される間隔であるC秒間となっている。したがって、図9に示すように、n回目に実行された横風予知処理により作成された横風モーメント関数MW・n(t)では、C秒間の利用時間の部分が、前回、つまり、n−1回目の横風予知処理の実行によって作成された横風モーメント関数MW・n-1(t)の利用時間や、次回、つまり、n+1回目の横風予知処理の実行によって作成される横風モーメント関数MW・n+1(t)の利用時間と、時刻tに対して重複したり間が空いてしまうようなことはない。したがって、横風モーメントMWは、時刻tに対して算出可能となっており、その算出結果は、例えば、図8(b)に示すように、各横風モーメント関数MW(t)の利用時間Cにおける部分が、時刻tに対して連続して並ぶように示されることになる。ECU40は、C秒間ごとに実行される横風予知処理によって作成される横風モーメント関数MW(t)を随時格納することで、時刻tの横風モーメントMWを算出可能に構成されている。
【0067】
≪横風に対処するための傾斜装置の制御≫
ECU40は、車体12を横風の風上に傾斜させるため、横風モーメント関数MW(t)によって算出される横風モーメントMWに基づいて、傾斜装置39を制御する。そのため、ECU40は横風に対抗するための横風対抗モーメントMWOを算出する。ECU40は、前述のように作成される横風モーメント関数MW(t)によって、常に、現在の時刻tよりもC秒先までの横風モーメントを算出することができる。ところで、傾斜装置39は、比較的小さなアクチュエータ36のモータの駆動によって車体12を傾斜させることになるため、アクチュエータ36に作動の指令が送信されてから、車体12がその指令に応じた角度に傾斜するまでには、ある程度の遅延が発生する。ECU40は、その遅延を考慮して、現在の経過時間tよりもL秒先(例えば、0.5秒先)、つまり、時刻t+Lにおける横風モーメントMWを算出し、その算出結果の反数を横風対抗モーメントMWOとする。なお、この遅延によるL秒間は、利用時間のC秒間よりも短い時間である。
【0068】
また、詳しい説明は省略するが、ECU40では、前述のように、旋回時における遠心力FCに対処して傾斜装置39を作動させるための遠心力推定処理も実行される。その処理では、先ず、車速センサ42の検出値と操作量センサ44の検出値とから、本車両の旋回の程度が推定され、その旋回の程度に応じて車体12に発生する遠心力FCが推定される。次いで、推定された遠心力FCから、遠心モーメントMCに対抗する遠心対抗モーメントMCOが推定される。
【0069】
したがって、ECU40では、横風対抗モーメントMWOと遠心対抗モーメントMCOとを加えた大きさのモーメントである目標対抗モーメントM*が車体12に発生するように、つまり、M*=MWO+MCOとなるように、支持部材34の車体12に対する目標回転角度θ*を決定する。具体的には、支持部材34の回転角度θが大きくなるにつれて重力により車体12に発生するモーメントが大きくなるという前述の関係に基づいて、回転角度θと重力によるモーメントとの関係を示すマップが、ECU40には格納されている。ECU40は、そのマップから、目標対抗モーメントM*を発生させるための支持部材34の目標回転角度θW*を決定する。
【0070】
したがって、ECU40は、支持部材34が車体12に対して目標回転角度θ*だけ回転するように傾斜装置39を制御し、それによって、車両10では、遠心力FCおよび横風力FWに対処して車体が傾斜する状態が実現されることになる。したがって、本車両10では、ECU40は、傾斜装置39を制御する制御装置となっており、傾斜装置39を制御することで、車体12は横風の風上側に傾斜する。これにより、本車両10では、車体12が横風によって過度に傾斜するのが防止されている。
【0071】
≪傾斜装置を作動させるためのプログラム≫
ECU40では、上述のように傾斜装置39を作動させるため、図10にフローチャートを示す支持装置制御プログラムが、比較的短周期で繰り返し実行される。なお、支持装置制御プログラムが実行される際、本プログラムの実行回であるnは1にリセットされ、本プログラムの実行開始からの時刻tは0にリセットされる。図10に示すフローチャートに従う処理では、ステップ1(以下、「S1」と略す。他のステップも同様とする)において、時刻tが、プログラムの実行回nとマップの作成間隔C秒とを乗じた値と比較される。時刻tがその乗じた値以上の場合は、S2およびS3において、後で詳しく説明するように、走行経路予測処理および横風予知処理のサブルーチンがそれぞれ実行され、作成された横風モーメント関数MW(t)は、S4において、横風モーメント関数MW・n(t)として格納される。したがって、本プログラムが繰り返し実行されると、随時作成される複数の横風モーメント関数MW・n(t)によって、時刻tの横風モーメントMWを算出することができることになる。なお、S4において、時刻tが、係数nとマップの作成間隔C秒とを乗じた値より小さい場合には、前回の横風モーメント関数MW・n(t)の作成から、作成間隔のC秒が経過していないため、走行経路予測処理および横風予知処理の各サブルーチンは実行はされない。S5においては、先に作成された関数のうち、現在の時刻tに遅延時間Lを加えた時刻t+Lにおける横風モーメントMWを算出するための横風モーメント関数MW・n(t)が読み込まれ、S6において、横風対抗モーメントMWOが算出される。S7においては、別に実行されている遠心力推定処理によって推定された遠心対抗モーメントMCOを読み取る。S8では、目標対抗モーメントM*を算出し、S9において、前述したように、マップを参照することで、目標対抗モーメントM*に応じた支持部材34の目標回転角度θW*が決定される。そして、S10においては、その目標回転角度θ*となるように、支持部材34を回転させる指令が傾斜装置39に出力される。S11では、本プログラムの実行回nが1増加され、本プログラムが終了する。
【0072】
上記支持装置制御プログラムの実行により、図11にフローチャート示す走行経路予測処理サブルーチンは、C秒間隔で周期的に繰り返し実行され、この実行によって、走行経路の予測が行われる。このフローチャートに従う処理では、S11において、車速と操作量とが検出される。次いで、S12において、それら車速と操作量とに基づいて、D秒間隔での車両10の走行予定位置および進行予定方向の予測がT秒後まで実行される。S13においては、それらの走行予定位置および進行予定方向関数から走行予定経路が予測される。S14では、その走行予定経路が、ナビゲーションシステム46からの道路地図情報と比較されて補正される。
【0073】
また、上記支持装置制御プログラムの実行により、図12にフローチャートを示す横風予知処理サブルーチンが、走行経路予測処理サブルーチンに続いて、C秒間隔で周期的に繰り返し実行され、この実行により、横風モーメント関数MW(t)が作成される。このフローチャートに従う処理では、S21において、ドップラーレーダによる車両前方の横風の分布が取得される。S22では、その取得された横風情報から、前述の各走行予定位置における風向きと風速とが予知される。S23では、それらの風向きと風速とから、時刻tに車両10に作用する横風の向きを算出するための相対風向関数WD’(t)が作成され、S24では、時刻tに車両10に作用する横風の風速を算出するための相対風速関数WS’(t)が作成される。S25では、図7に示すマップを利用して、時刻tに車体12に作用する横風力FWを算出するための横風力関数FW(t)が作成され、S26では、時刻tに車体12に発生する横風モーメントMWを算出するための横風モーメント関数MW(t)が導き出される。
【0074】
≪電子制御ユニットにおける機能部≫
上述のように支持装置制御プログラムを実行するECU40には、その実行における処理を行うためのいくつかの機能部を有していると考えることができる。具体的には、ECU40は、図13に示すように、支持装置制御プログラムを実行して傾斜装置39に指令を送る支持装置制御部60を有していると考えることができる。また、ECU40は、支持装置制御プログラムの実行に伴う走行経路予測処理サブルーチンを実行する走行経路予測部62、横風予知処理サブルーチンを実行する横風予知部64を有していると考えることができる。また、ECU40は、横風予知部64で導出された横風モーメント関数MW・n(t)を格納するデータ格納部66を有していると考えることができる。なお、データ格納部66には、ナビゲーションシステム46の道路地図情報,風向き係数KD,風速係数KS,回転角度θと横風対抗モーメントMWOとの関係を示すマップ等も格納されている。また、ECU40には、遠心力推定処理を実行する遠心力推定部68も有していると考えることができる。
【0075】
なお、これらの制御に従って、車体12の傾斜角度を小さくする場合に、車両10では、横風力を利用する場合がある。その場合、車体12は横風力によって動かされることになり、アクチュエータ36が力を発生させなくても車体12の傾斜角度が小さくなる。そのため、アクチュエータ36を作動させるための電力を必要としない。また、本車両10では、横風力によって車体12の傾斜角度を小さくする場合に、アクチュエータ36のモータで発電をさせる場合もある。その場合、アクチュエータ36のモータを発電機として利用し、横風力によってその発電機を作動させる。発電された電力は、車両10のバッテリーに蓄電され、車両10で消費される電力に利用することができるため、車両10で使用される電力を減らすことができる。
【0076】
≪車体外底面の形状による効果≫
ところで、前述したように、車体12の外底面は、車両10を前方から見た場合に、下方に向かって丸くなるような曲面とされいる。そのため、図14(a)に示すように、車体が直立している場合には、車幅方向中央において、外底面と走行面との間隔が最も小さくなる。したがって、外底面と走行面とによって区画される空間は、左右対称に区画されている。この区画された空間は、横風の通過する流路となり、車体が直立している場合には、図14(a)に示すような流線を成して横風が流路を通過する。一方、前述のように、風上側に車体12が傾斜させられた場合には、外底面と走行面との間隔が最も小さくなる箇所は、傾斜角度の増大に伴って、車体中央から傾斜側にその増大量に応じた量だけシフトする。言わば、先の流路は、入口が狭く、出口が広い形状へと変化することになる。そのため、横風は、図14(b)に示すような流線を成してその流路を通過することになる。したがって、流路の出口側では、ディフューザ効果によって、通過する横風の圧力が周囲に対して低下することになる。ところで、車体12を横風の風上側に傾斜させた場合、車体12に当たる横風の力は、車体12を持ち上げるようにして車体12に作用する。しかしながら、本車両10では、上記のディフューザ効果によって、車体12を持ち上げる力に対抗する下向きの力であるダウンフォースを車体12に作用させることができる。そのため、車両10の接地力を増加させて車両10をより安定して走行させることができる。また、外底面が上記のような曲面にされていることによって、上述の流路の最も狭くなる部分が、車体12の傾斜角度の増大に伴って、横風の風上側へとシフトすることになる。通過する横風を比較的スムースに通過させることができ、横風の流れを乱さず、ディフューザ効果を比較的有効に発揮させることができる。
【0077】
≪変形例1≫
図15は、第1実施例の変形例の車両80を示す。車両80は、横風を予知して横風対抗モーメントMWOを算出する方法を除いて、第1実施例の車両10とほとんど同様の構成とされている。以下の説明においては、説明の簡略化に配慮して、第1実施例の車両10と同様の構成や機能についての説明を省略する。
【0078】
車両80には、第1実施例の車両10に搭載されるドップラーレーダ50に代えて、横風情報を受信するための横風情報受信装置82が、車体12の前方部に搭載されており、ECU40に接続されている。また、この車両80は、図16に示すように、横風の向きと風速とを検出する常設横風情報検出装置84が傍らに複数設置された道路上を走行している。したがって、本車両80の走行経路予測処理によって予測される走行予定経路は、この道路上にあるように予測されることになる。常設横風情報検出装置84は、自身の設置された地点の横風の向きおよび風速、つまり、横風情報を検出し、無線によって随時発信している。これらの常設横風情報検出装置84は、予測された走行予定経路の比較的近い位置に設置されている。そのため、各常設横風情報検出装置84が検出する横風情報は、各常設横風情報検出装置84が近接する走行予定経路上の位置での横風情報とみなされる。横風情報受信装置82は、車両80の前方にある常設横風情報検出装置84から発信される横風情報を受信することができる。つまり、横風情報受信装置82は、車両80の走行経路の傍らに常設された常設横風情報検出装置84からの横風情報を受信する経路横風情報受信装置となっており、また、車両80の前方で吹いている横風情報を取得するための前方横風情報取得手段となっている。
【0079】
また、各常設横風情報検出装置84は、自身の設置された位置に関する情報も発信している。そのため、ECU40は、車両80の現在の位置および速度から、各常設横風情報検出装置84が近接する位置を通過するまでの時間を算出することができる。つまり、各常設横風情報検出装置84が近接する走行予定経路上の位置は、走行予定位置と考えることができ、ECU40は、それらの走行予定位置をそれぞれ通過する際の時間間隔を算出することができる。したがって、これら走行予定経路上の走行予定位置を通過する際の時間と横風情報とから、時刻tにおける車両80の走行位置で吹く風の向きを算出するための風向関数WD(t)と、風速を算出するための風速関数WS(t)とが作成される。したがって、これらの関数は、走行予定経路上での車両80の進行予定方向や速度を考慮することで、横風の車体12に対する相対的な向きや風速を算出するための関数である相対風向関数WD’(t)および相対風速関数WS’(t)にそれぞれ作成される。したがって、それら相対風向関数WD’(t)および相対風速関数WS’(t)によって、時刻tに車体12に作用する横風情報が予知され、その横風情報から横風対抗モーメントMWOが算出される。
【0080】
≪変形例2≫
図17は、第1実施例の変形例の車両90を示す。車両90は、横風を予知して横風対抗モーメントMWOを算出する方法を除いて、第1実施例の車両10とほとんど同様の構成とされており、以下の説明においては、説明の簡略化に配慮して、第1実施例の車両10と同様の構成や機能についての説明を省略する。
【0081】
車両90には、第1実施例の車両10に搭載されるドップラーレーダ50に代えて、横風情報を受信するための前車横風情報受信装置92が、車体12の前方部に搭載されており、ECU40に接続されている。また、車両90には、車体12の頭頂部に、車体12に吹いてくる横風情報、つまり、横風の向きと風速とを検出するための横風検出器94と、その横風情報を発信するための横風情報発信装置96が搭載されている。それら横風検出器94および横風情報発信装置96はECU40に接続されている。ECU40には、横風検出器94から横風情報が随時送信されている。ECU40は、ナビゲーションシステム46によって取得されている現在の車両の走行位置に関する情報とともに、その横風情報を横風情報発信装置96に送信する。横風情報発信装置96は、それら横風情報と現在の車両の走行位置に関する情報とを、無線によって周囲に随時発信する。
【0082】
このように構成された車両90の走行中に、図18に示すように、車両90の前方に、車両90と同様の構成を有する別の車両(以下、単に「前方車」と言う場合がある)が走行している場合、その前方車からも、その前方車の検出した横風情報、および、その前方車の走行位置に関する情報が随時発信されている。そのような場合に、車両90は、自身の前車横風情報受信装置92によって、その前方車から発信されている情報を受信し、その受信された情報は、ECU40に送信される。つまり、車両90の前車横風情報受信装置92は、車両90の前方で吹いている横風情報を取得するための前方横風情報取得手段となっている。また、車両90の後方に、車両90と同様の構成を有する別の車両(以下、単に「後方車」と言う場合がある)が走行している場合、その後方車は、車両90の横風情報発信装置96から随時発信される情報を受信することができる。したがって、本車両90が後方車の進行方向前方を走行する別の車両である場合、横風検出器94と横風情報発信装置96とを含んで、進行方向前方を走行する別の車両に吹く横風を検出する車載横風情報検出装置が構成されている。
【0083】
ECU40は、前方車の走行位置に関する情報と、その走行位置での横風情報とを格納し、車両90が前方車の走行した位置を走行する際に、前方車に吹いた横風と同じ横風が吹くと見なす。また、前方車は、自身の走行する道路と同じ道路を走行している場合、車両90の走行予定経路と同じ経路を走行していると見なせる。したがって、前方車に吹いた横風の風向きや風速は、車両90の走行予定経路上での風向きや風速と見なされ、走行予定経路上で車体12に作用する横風の向きや風速が予知される。このようにして予知された横風情報から、時刻tにおいて車体12に発生する横風モーメントMW(t)のマップが作成され、横風モーメントMW(t)の反数は、横風対抗モーメントMWO(t)となる。なお、車両90が受信する前方車からの情報は、車両90の前方に複数の車両がある場合には、車両90に近い位置にある車両からの情報が選択されて利用される。つまり、ECU40は、複数の車両から横風情報を受信する場合には、横風情報とともに発信される走行位置に関する情報を車両90の走行位置の情報と比較することで、車両90の前方における最も近くの車両を前方車として選択し、その車両の横風情報を横風を予知するために利用する。また、前方車は、車両90と同じ方向に進行する車両に限定されず、対向車、つまり、反対方向から来る車両であってもよい。つまり、対向車から発信される横風情報も、車両90の走行予定経路上の横風情報と見なして利用されるのである。なお、ECU40に格納された前方車からの情報のうち、車両90が通過した位置での情報は、随時消去される。
【0084】
≪変形例3≫
本変形例の車両(図示省略)は、第1実施例の車両10とほとんど同様の構成とされている。ただし、本車両では、傾斜装置39が素早く作動することが可能となっている。そのため、第1実施例の車両10と異なり、傾斜装置39によって車体12を傾斜させるまでの遅延時間がほとんど発生しない。そのため、本車両では、横風対抗モーメントMWOが、時刻tにおいて、つまり、遅延時間Lを考慮せずに決定される。
【0085】
また、詳しい説明は省略するが、本車両は、走行路の凹凸などによる外乱に対処するため、外乱によって車体12が傾斜しないように傾斜装置39を作動させるための処理も実行される。その処理では、先ず、車体12のロール量を検出するロールセンサ(図示省略)の検出値から、車体12の傾斜が、前述の横風および旋回への対処に応じたロール量となっているのかが判定される。横風および旋回への対処に応じた車体12のロール量となっていない場合には、応じた場合のロール量と実際のロール量との差が、外乱による車体12のロール量とされ、その差に基づいて、外乱により車体12に発生するモーメントである外乱モーメントMDが推定される。したがって、その外乱モーメントMDの反数が、外乱対抗モーメントMDOとされる。
【0086】
したがって、ECU40では、時刻tにおける横風対抗モーメントMWOおよび遠心対抗モーメントMCOに、さらに、外乱対抗モーメントMDOを加えた大きさのモーメントである目標対抗モーメントM*が車体12に発生するように、支持部材34の車体12に対する目標回転角度θ*が決定される。ECU40は、前述の回転角度θと重力によって車体12に発生するモーメントとの関係を示すマップから、目標対抗モーメントM*を発生させるための支持部材34の目標回転角度θW*を決定する。
【実施例2】
【0087】
図19は、第2実施例の車両110を模式的に示す。車両110は、第1実施例の車両10と同様に、3輪で走行する車両となっており、おおまかには、第1実施例の車両10と同様の構成とされている。したがって、以下の説明においては、説明の簡略化に配慮して、第1実施例の車両10と同様の構成や機能についての説明を省略する。
【0088】
車両110は、自身の骨格および外郭を形成する車体112を含んで構成されている。また、車両110は、車体112の上面部、つまり、天井となる部分に、左右方向において並ぶように配置された1対の翼板114と、車体112から吊り下げられた状態でそれら1対の翼板114をそれぞれ保持する1対の翼板保持機構116と、それら1対の翼板114を、それぞれ独立して車体112の左側面および右側面から車幅方向に張り出すように変位させる1対の翼板変位装置118とを内蔵している。1対の翼板114の各々は、同じ大きさの長方形に形成されている。翼板保持機構116の各々は、車体112の天井内にそれぞれ固定された2つのレール120と、1対の翼板114の各々の上面に取り付けられた複数のローラ122とを含んで構成されている。2つのレール120は、それぞれ、車幅方向に延びる状態で固定されており、ローラ122は、各レール120に対応して2つずつ取り付けられており、レール120に引っ掛けられている。そのため、各翼板114は、車体112に吊り下げられた状態で保持されている。また、各翼板114は、ローラ122が転がることで、車幅方向にスライドするようにして移動可能となっている。
【0089】
1対の翼板変位装置118の各々は、車幅方向にモータシャフトが延びる状態で車体112に固定されたモータ124と、そのモータ124に連結されたねじシャフト126と、1対の翼板114の各々に固定されたナット128とを有している。ねじシャフト126は、外周部に雄ねじが形成されており、ナット128は、その雄ねじに噛み合う状態で固定されている。つまり、1対の翼板変位装置118の各々では、ねじシャフト126とナット128とによってねじ機構が構成されており、モータ124が回転することで、ナット128が車幅方向に移動する。したがって、ナット128がそれぞれ固定された1対の翼板114の各々は、対応するモータ124の回転によって、車幅方向に変位することになる。また、車体112の左右の側面には、それぞれ、開口130が設けられているため、各モータ124の作動によって、対応する翼板114を、開口130を通して車体112から張り出す位置に移動させることができる。なお、各モータ124は、ECU40に接続されており、ECU40は、各翼板114が車体112から張り出す位置と張り出さない位置とに移動するように、モータ124を制御する。
【0090】
横風に対処するため、横風の風上側に車体112が傾斜させられている場合、車両110の走行による走行風の影響を無視すれば、図20(a)に示すように、車体112の上方を通過する横風によって、車体112の風下側の空気は渦状となって流れる。その渦上となった領域では周囲に対して空気の圧力が低下する。そのためと、車体112の風上側における空気の圧力と、風下側の空気の圧力との差によって、風上側から風下側へと向かう力が車体112に作用する。つまり、この力は、横風力と同じ方向の力となって車体112に作用する。一方、図20(b)に示すように、風下側の翼板114が張り出す位置に移動すると、その翼板114の下方では、車体112の上方を通過する横風の流れ込みが抑制される。そのため、車体112の風下側での空気の圧力の低下が抑制され、車体112の両側面における圧力差が低減することになる。そのため、圧力差によって車体112に作用する力を低減させることができる。別の見方をすれば、風下側の翼板114が張り出すことで、横風力に対抗する横風対抗力、すなわち、車体112を風上に向かって傾斜させたり、車体112を横風の風上側に押したりするような力が発生し、先の圧力差による力を低減させることができると考えることができる。そのため、車体112が風下側に過度に傾斜したり、車両110が風下側に斜行するのを防止することができる。したがって、本車両110では、ECU40が、横風に対処するため、傾斜装置39を制御して横風の風上側に車体112を傾斜させるのと同時に、風下側の翼板114が張り出す位置に移動するようにモータ124を制御する。
【0091】
本車両110では、これら1対の翼板114,1対の懸架装置116,1対の翼板変位装置118を含んで気流変化依拠対処手段が構成されており、その気流変化依拠対処手段によれば、1対の翼板変位装置118の一方の作動によって対応する翼板114を移動させることで、その翼板114の位置する車体112の側面において気流を変化させ、その変化に依拠して横風対抗力を車体112に作用させることができる。また、この気流変化依拠対処手段によって、本車両110では、横風対抗力を車体112に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段が構成されている。また、1対の翼板114の各々は、車体112から張り出すように移動することで、その翼板114の位置する車体112の側面において気流を変化させる可動体と考えることができる。
【0092】
なお、本実施例の車両110は、1対の翼板114に代えて、1枚の板を翼板として天井に内蔵し、その1枚の翼板を、懸架装置116と同様の構成とされた懸架装置で懸架し、翼板変位装置118と同様の構成とされた翼板変位装置で車幅方向にスライドさせるような車両であってもよい。そのような車両であれば、車両110と同様に、その1枚の翼板を、風下に向かって張り出す位置と張り出さない位置との間で変位させることができる。また、本実施例の車両110は、図21に示すように、車体112の左右の側面にそれぞれ沿うようにして設けられた1対の翼板を有し、その1対の翼板の各々を車体112から張り出す位置に移動させるような車両であってもよい。その車両では、1対の翼板の各々が、車体112の前後方向に延びる回転軸線を有するヒンジによって車体112に回動可能に保持されている。また、その車両には、具体的な説明は省略するが、1対の翼板の各々を跳ね上げるようにして回動させる装置が設けられてる。したがって、この車両によれば、車両110と同様に、1対の翼板のうち横風の風下側の翼板を跳ね上げるようにして回動させることで、その翼板を風下に向かって張り出す位置に移動させることができる。
【実施例3】
【0093】
図22は、第3実施例の車両150を模式的に示す。車両150は、車両150の骨格および外郭を形成する車体152と、車体152にそれぞれ回転可能に保持された4つの車輪154とを含んで構成されている。なお、車体152は、図22に示すように、上から見た場合に、前方部の丸くされた流線形とされている。詳しい説明は省略するが、4つの車輪154のうちの前方の2つの車輪154は、本車両150における転舵輪および駆動輪となっている。車両150は、4輪で走行することや、車体152を傾斜させるための装置を含んでいないことを除いて、おおまかには、第1実施例の車両10と同様の構成とされている。したがって、以下の説明においては、説明の簡略化に配慮して、第1実施例の車両10と同様の構成や機能についての説明を省略する。
【0094】
車体152には、車体152に沿う形状とされた互いに同じ大きさの1対の整流板156と、それら1対の整流板156を車体152に対して保持する複数の回動アーム158と、1対の整流板156の各々に対応して車体152に固定された1対のモータ160とが備えられている。各整流板156は、4つの回動アーム158によって保持されており、4つの回動アーム158の各々は、一端が車体152に回動可能に保持され、他端が整流板156に回動可能に保持されている。なお、これら4つの回動アーム158の各々は、他端が四角形とされた整流板156の四隅に近い位置で整流板156に連結するように配置されている。また、これら4つの回動アーム158のうち、車体152の前方側にある2つの回動アーム158は、モータ160のモータシャフトに固定されている。つまり、これら2つの回動アーム158は、モータシャフトとともに回転することで、車体152に対して回動する。このように車体152に保持される各整流板156は、対応するモータ160が回転すると、車体152から離間するように変位する。つまり、本車両150では、回動アーム158およびモータ160によって、整流板156を車体152の側面から離間した位置に変位させる整流板離間装置が構成されている。なお、各モータ160は、ECU40に接続されており、ECU40は、各翼板114が車体152から離間する位置と離間しない位置とに変位するように、モータ160を制御する。
【0095】
このように構成された車両150の走行中、走行気流、つまり、車両150の走行によって発生する気流は、車体152が前方部の丸くされた流線形とされているため、図23(a)に示す流線に沿って、車体152の左右にスムースに導かれる。本車両150では、横風に対処する場合に、ECU40が横風の風上側にあるモータ124を制御して、風上側の整流板156を、車体152の側面から離間した位置に移動させる。その場合、車体の左右を流れる気流のうち、横風の風上側の気流は、図23(b)または(c)のように変化する。具体的に説明すると、横風の風上側の気流は、整流板156と車体152の側面との間に押し込まれるようにして導き入れられる。つまり、整流板156と車体152の側面との間において、気流の通過する流路が狭くなるため、気流の流速が速くなり、ベルヌーイの定理に従って、その気流の圧力が低下する。そのため、車体152の左右を流れる気流の圧力差によって、横風の風上側に向かう揚力が発生し、その揚力は、横風対抗力、すなわち、車体152を風上に向かって傾斜させたり、車体152を横風の風上側に押したりする力として、車体152に作用する。したがって、風上側の整流板156を車体152から離間させることで、横風によって、車体152が風下側に過度に傾斜したり、車両150が風下側に斜行するのを防止することができる。なお、図23に示される流線は、理解を容易にするため、横風の影響を無視して描写されている。
【0096】
本車両150では、これら1対の整流板156,複数の回動アーム158,1対のモータ160を含んで気流変化依拠対処手段が構成されており、その気流変化依拠対処手段によれば、1対のモータ160の一方の作動によって対応する整流板156を移動させることで、その整流板156の位置する車体112の側面において気流を変化させ、その変化に依拠して横風対抗力を車体152に作用させることができる。また、この気流変化依拠対処手段によって、本車両150では、横風対抗力を車体152に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段が構成されている。また、1対の整流板156の各々は、車体152から離間した位置に変位することで、その整流板156の位置する車体112の側面において気流を変化させる可動体と考えることができる。
【実施例4】
【0097】
図24は、第4実施例の車両180を模式的に示す。車両180は、第3実施例の車両150と同様に、4輪で走行する車両となっており、おおまかには、第3実施例の車両150と同様の構成とされている。したがって、以下の説明においては、説明の簡略化に配慮して、第3実施例の車両150と同様の構成や機能についての説明を省略する。
【0098】
車両180は、上から見た場合に前方部の丸くされた流線形とされている車体182を含んで構成されている。また、車体182は、車体182の主要となる部分であって車輪154を保持する本体部184と、車体182の後方側の部分であって、本体部184から分離された後方部186とによって構成されている。後方部186は、自身を構成するフレーム187を有しており、そのフレーム187は、後方部186の前方側において、上下方向に延びる回転シャフト188に固定されている。回転シャフト188は、下方部において、本体部184に固定された保持器190によって回転可能に保持されている。また、本体部184には、回転シャフト188を回転駆動させるための駆動装置192が設けられている。駆動装置192は、本体部184に固定されたモータ194と、モータ194の回転を回転シャフト188に伝達するギヤ機構196とを含んで構成されている。なお、モータ194は、ECU40に接続されており、ECU40は、後方部186が本体部184に対して左右に回動した状態、つまり、車体182が屈曲した状態と、回動していない状態、つまり、車体182が屈曲していない状態とになるように、モータ194を制御する。
【0099】
このように構成された車両180の走行中、走行気流、つまり、車両180の走行によって発生する気流は、車体182が前方部の丸くされた流線形とされているため、図25(a)に示す流線に沿って、車体182の左右にスムースに導かれる。本車両180では、横風に対処する場合に、ECU40がモータ194を制御して、後方部186を、横風の風下側へと回動させる。そのように後方部186を回動させると、車体182の形状は、図25(b)または(c)に示すように、横風の風下側に屈曲するような形状へと変化する。つまり、本車両180では、回転シャフト188,保持器190,駆動装置192を含んで、車体182の後方側部分である後方部186を、車体182が風下に向かって屈曲するように変位させる車体後部変位装置が構成されている。
【0100】
後方部186を変位させると、車体の左右を流れる気流が変化することになる。具体的に説明すると、横風の風上側の側面を通過する気流が車体182の後方へと通り抜けるまでの距離は、風下側の側面を通過する気流が車体182の後方へと通り抜けるまでの距離よりも長くなる。そのため、ベルヌーイの定理に従って、横風の風上側の側面を通過する気流の流速が速くなるとともに圧力が低下するため、車体の左右を流れる気流の圧力差によって、横風の風上側に向かう揚力が発生し、その揚力は、横風対抗力、すなわち、車体182を風上に向かって傾斜させたり、車体182を横風の風上側に押したりする力として、車体182に作用する。言わば、車体182が飛行機の垂直尾翼のように機能することで、車体182に左右方向の力が作用するのである。したがって、後方部186を横風の風下側へと回動させることで、横風によって、車体182が風下側に過度に傾斜したり、車両180が風下側に斜行するのを防止することができる。なお、図25に示される流線は、理解を容易にするため、横風の影響を無視して描写されている。
【0101】
また、図26に示すように、後方部186を比較的大きく回動させた場合、つまり、車体182が比較的大きく屈曲された場合、車体182の横風の風下側を流れる気流は、後方部186に当たることになる。そのため、その気流の流れる方向は横風の風下側へと曲げられ、横風の風上側に向かって車体182を押すような力が車体182に作用することになる。つまり、この横風の風上側に向かう力を、横風対抗力として車体182に作用させることができる。このように、本車両180は、先の揚力と気流の車体を押す力との両方によって横風対抗力を車体182に作用させることができる。これら揚力および気流の車体を押す力とを比較すると、気流の車体を押す力の方が大きくなる。したがって、本車両180は、横風対抗力が比較的小さい場合には、揚力による横風対抗力を車体182に作用させ、横風対抗力が比較的大きい場合には、気流の車体を押す力による横風対抗力を車体182に作用させるように構成されている。
【0102】
したがって、本車両180では、回転シャフト188,保持器190,駆動装置192を含んで気流変化依拠対処手段が構成されており、その気流変化依拠対処手段によれば、駆動装置192の作動によって後方部186を回動させることで、車体182の左右を流れる気流を変化させ、その変化に依拠して横風対抗力を車体に作用させることができる。また、この気流変化依拠対処手段によって、本車両180では、横風対抗力を車体182に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段が構成されている。また、後方部186は、車体182が屈曲するように回動することで、車体の左右を流れる気流の両方を変化させる車体の一部と考えることができる。
【実施例5】
【0103】
図27は、第5実施例の車両210を模式的に示す。車両210は、4輪で走行する車両となっており、上から見た場合に前方から後方に細長くされた長方形とされている。また、車両210は、2人が前後に並ぶ状態で乗車することができる車両となっている。車両210は、これらの4輪で走行することや長方形とされていることを除いて、おおまかには、前述の実施例の車両と同様の構成とされている。したがって、以下の説明においては、説明の簡略化に配慮して、前述の実施例の車両と同様の構成や機能についての説明を省略する。
【0104】
車両210は、車両210の骨格および外郭を形成する車体212を有している。その車体212は、車体212の土台となる部分であって、車両210の機器や乗車員等を支え、車輪を回転可能に保持する部分であるシャーシ部214と、それら機器や乗車員を覆い、車両210の外観を形成するシェル部216とによって構成されている。そのシェル部216は、自身の前後左右におけるほぼ中心において上下方向に延びる回転シャフト218に固定されており、その回転シャフト218は、下端部において、シャーシ部214に固定された保持器220によって回転可能に保持されている。また、シャーシ部214には、回転シャフト218を回転させるための駆動装置222が設けられている。駆動装置222は、シャーシ部214に固定されたモータ224と、モータ224の回転を回転シャフト218に伝達するギヤ機構226とを含んで構成されている。なお、モータ224は、ECU40に接続されており、ECU40は、シェル部216がシャーシ部214に対して左右に回転する状態と、回転しない状態とになるように、モータ224を制御する。
【0105】
このように構成された車両210の走行中、走行気流、つまり、車両210の走行によって発生する気流は、図25(a)に示す流線に沿って、車体212の左右に導かれる。本車両210では、横風に対処する場合に、ECU40がモータ224を制御して、シェル部216を、それの前方側の部分が風上側に向かう方向に回転させる。つまり、駆動装置222は、シェル部216を、それの前方側の部分が後方側の部分より風上側にシフトする方向に、シャーシ部214に対して回転させるシェル部回転装置となっている。このようにシェル部216を回転させると、車体の左右を流れる気流が変化することになる。具体的に説明すると、シェル部216が回転すると、走行気流に対してシェル部216が斜めとなって配置されることになるため、走行気流は、シェル部216を通過する際に、シェル部216に当たり、横風の風下側の方向へと曲がるようにして流れることになる。そのため、シェル部216に当たる気流の車体を押す力は、横風対抗力、すなわち、車体212を風上に向かって傾斜させたり、車体212を横風の風上側に押したりする力として、車体212に作用する。したがって、シェル部216を回転させることで、横風によって、車体212が風下側に過度に傾斜したり、車両210が風下側に斜行するのを防止することができる。したがって、本車両210は、シェル部216全体、つまり、車両210の外観を形成する部分の全体に気流が当たることで、気流の車体212を押す力を比較的大きくすることができる。なお、図25に示される流線は、理解を容易にするため、横風の影響を無視して描写されている。
【0106】
したがって、本車両210では、回転シャフト218,保持器220,駆動装置222を含んで気流変化依拠対処手段が構成されており、その気流変化依拠対処手段によれば、駆動装置222の作動によってシェル部216を回転させることで、車体212の左右を流れる気流を変化させ、その変化に依拠して横風対抗力を車体に作用させることができる。また、この気流変化依拠対処手段によって、本車両210では、横風対抗力を車体212に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段が構成されている。また、シェル部216は、前方側の部分が後方側の部分より風上側にシフトする方向に回転することで、車体の左右を流れる気流の両方を変化させる車体の一部と考えることができる。
【実施例6】
【0107】
図29は、第6実施例の車両240を模式的に示す。車両240は、第5実施例の車両210と同様に、4輪で走行する2人乗りの車両となっている。車両240では、車両240の骨格および外郭を形成する車体242の屋根となる部分に、整流装置244が設けられている。整流装置244は、上から見た場合に前方部の丸くされた流線形とされ、車体242の屋根の一部を形成する装置ボディ246と、装置ボディ246に沿う形状とされた互いに同じ大きさの1対の整流板248と、それら1対の整流板248を装置ボディ246に対して保持する複数の回動アーム250と、1対の整流板248の各々に対応して装置ボディ246に固定された1対のモータ252とを有している。つまり、車両240では、整流装置244によって、実施例3の車両150と同様に、横風の風下側の整流板248を装置ボディ246から離間させることで、横風の風上側に向かう揚力を発生させ、その揚力を、横風対抗力として車体242に作用させることができる。
【0108】
したがって、本車両240では、これら1対の整流板248,複数の回動アーム250,1対のモータ252を含んで気流変化依拠対処手段が構成されており、その気流変化依拠対処手段によれば、1対のモータ252の一方の作動によって対応する整流板248を移動させることで、その整流板248の位置する車体242の側面において気流を変化させ、その変化に依拠して横風対抗力を車体242に作用させることができる。また、この気流変化依拠対処手段によって、本車両240では、横風対抗力を車体242に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段が構成されている。また、1対の整流板248の各々は、車体242から離間した位置に変位することで、その整流板248の位置する車体242の側面において気流を変化させる可動体と考えることができる。
【0109】
車両240では、このように車体242の屋根に整流装置244が設けられていることで、整流装置244を構成する構成部品によって、車両240の居住空間が狭められることがない。つまり、車両240の居住空間は、整流装置244が設けられていない場合の居住空間とほとんど変わらない。また、横風対抗力は、比較的高い位置で車体242に作用するため、車体242が傾斜する際の回転中心から比較的離れた位置で車体242に作用することになる。したがって、比較的小さな横風対抗力であっても、その横風対抗力は、車体242が風下側へ過度に傾斜するのを効果的に防止するように作用することになる。
【符号の説明】
【0110】
10:車両 12:車体 30:支持装置(横風対処手段,車体傾斜装置) 40:電子制御ユニット(制御装置) 50:ドップラーレーダ 60:走行経路予測部 62:横風予知部 80:車両 82:横風情報受信装置(経路横風情報受信装置) 84:常設横風情報検出装置 90:車両 92:前車横風情報受信装置 94:横風検出器(車載横風情報検出装置) 96:横風情報発信装置(車載横風情報検出装置) 110:車両 112:車体 114:翼板(横風対処手段,気流変化依拠対処手段,可動体) 118:翼板変位装置(横風対処手段,気流変化依拠対処手段) 150:車両 152:車体 156:整流板(横風対処手段,気流変化依拠対処手段,可動体) 160:モータ(整流板離間装置,横風対処手段,気流変化依拠対処手段) 180:車両 182:車体 186:後方部(可動体) 192:駆動装置(横風対処手段,気流変化依拠対処手段,車体後部変位装置) 210:車両 212:車体 214:シャーシ部 216:シェル部(可動体) 222:駆動装置(横風対処手段,気流変化依拠対処手段) 240:車両 242:車体 248:整流板(横風対処手段,気流変化依拠対処手段,可動体) 252:モータ(整流板離間装置,横風対処手段,気流変化依拠対処手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横風に対抗する力を車体に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段と、
その横風対処手段を制御する制御装置と
備えた車両であって、
前記制御装置が、車体に作用する横風を予知する横風予知部を有し、その横風予知部によって予知された横風に基づいて前記横風対処手段を制御するように構成された車両。
【請求項2】
前記横風対処手段が、横風による車体の過度な傾斜を防止するための手段である請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記横風対処手段が、
車体を風上に向かって傾斜させる車体傾斜装置を含んで構成された請求項1または請求項2に記載の車両。
【請求項4】
横風に対抗する力を車体に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段と、
その横風対処手段を制御する制御装置と
備えた車両であって、
前記横風対処手段が、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との少なくとも一方を変化させ、その変化に依拠して横風に対抗する力を車体に作用させる気流変化依拠対処手段を含んで構成された車両。
【請求項5】
前記気流変化依拠対処手段が、
車体に付設された翼板と、
その翼板を、それが車体上部において庇状に風下に向かって張り出す位置と張り出さない位置との間で変位させる翼板変位装置と
を含んで構成された請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記気流変化依拠対処手段が、
車体の左右の側面に沿ってそれぞれ付設された1対の整流板と、
それら1対の整流板うちの風上側のものを、それと車体側面との間に気流を導くべく車体側面から離間した位置に変位させる整流板離間装置と
を含んで構成された請求項4または請求項5に記載の車両。
【請求項7】
車体が、後方側部分がその部分の前方側の部分に対して回動することで、上方から見た場合において車体が左右に湾曲若しくは屈曲する構造を有しており、
前記気流変化依拠対処手段が、
車体の前記後方側部分を、車体が風下に向かって湾曲若しくは屈曲するように変位させる車体後部変位装置を含んで構成された請求項4ないし請求項6のいずれか1つに記載の車両。
【請求項8】
車体が、(a)車輪を保持するシャーシ部と、(b)上方から見た場合において前記シャーシ部に対して回転可能に前記シャーシ部に支持されて、当該車両の外郭として機能するシェル部とを有しており、
前記気流変化依拠対処手段が、
前記シェル部を、それの前方側の部分が後方側の部分より風上側にシフトする方向に、前記シャーシ部に対して回転させるシェル部回転装置を含んで構成された請求項4ないし請求項7のいずれか1つに記載の車両。
【請求項1】
横風に対抗する力を車体に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段と、
その横風対処手段を制御する制御装置と
備えた車両であって、
前記制御装置が、車体に作用する横風を予知する横風予知部を有し、その横風予知部によって予知された横風に基づいて前記横風対処手段を制御するように構成された車両。
【請求項2】
前記横風対処手段が、横風による車体の過度な傾斜を防止するための手段である請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記横風対処手段が、
車体を風上に向かって傾斜させる車体傾斜装置を含んで構成された請求項1または請求項2に記載の車両。
【請求項4】
横風に対抗する力を車体に作用させることで走行中の横風に対処する横風対処手段と、
その横風対処手段を制御する制御装置と
備えた車両であって、
前記横風対処手段が、車体の左側を流れる気流と車体の右側を流れる気流との少なくとも一方を変化させ、その変化に依拠して横風に対抗する力を車体に作用させる気流変化依拠対処手段を含んで構成された車両。
【請求項5】
前記気流変化依拠対処手段が、
車体に付設された翼板と、
その翼板を、それが車体上部において庇状に風下に向かって張り出す位置と張り出さない位置との間で変位させる翼板変位装置と
を含んで構成された請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記気流変化依拠対処手段が、
車体の左右の側面に沿ってそれぞれ付設された1対の整流板と、
それら1対の整流板うちの風上側のものを、それと車体側面との間に気流を導くべく車体側面から離間した位置に変位させる整流板離間装置と
を含んで構成された請求項4または請求項5に記載の車両。
【請求項7】
車体が、後方側部分がその部分の前方側の部分に対して回動することで、上方から見た場合において車体が左右に湾曲若しくは屈曲する構造を有しており、
前記気流変化依拠対処手段が、
車体の前記後方側部分を、車体が風下に向かって湾曲若しくは屈曲するように変位させる車体後部変位装置を含んで構成された請求項4ないし請求項6のいずれか1つに記載の車両。
【請求項8】
車体が、(a)車輪を保持するシャーシ部と、(b)上方から見た場合において前記シャーシ部に対して回転可能に前記シャーシ部に支持されて、当該車両の外郭として機能するシェル部とを有しており、
前記気流変化依拠対処手段が、
前記シェル部を、それの前方側の部分が後方側の部分より風上側にシフトする方向に、前記シャーシ部に対して回転させるシェル部回転装置を含んで構成された請求項4ないし請求項7のいずれか1つに記載の車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2013−60084(P2013−60084A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199256(P2011−199256)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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