説明

車体のフロアパネル

【課題】製造効率を低下させずにシフトレバー支持ベースの固定部の剛性を高めることができるように構成された車体のフロアパネルを提供する。
【解決手段】車幅方向中央部にて車体の前後方向に延在するフロアトンネル2と、該フロアトンネルと交差して車幅方向に延在する膨出部3とで略十文字をなす凸部が形成されると共に、フロアトンネル上にシフトレバー支持ベース13が固設される車体のフロアパネル1において、膨出部におけるフロアトンネルで分断された左右の各前壁3fwに沿う左側部分7l及び右側部分7rと、これら左側部分及び右側部分をフロアトンネルと重なる位置で連結する中間部分7cとを有する補強部材7を車幅方向に延設し、中間部分とシフトレバー支持ベースとの少なくとも一部同士をフロアトンネルに結合するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体のフロアパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車幅方向中央部にて前後方向に延在するフロアトンネルを設けると共に、前部座席の下方にてフロアトンネルと交差して車幅方向に延在する膨出部を設け、フロアトンネルと膨出部とで十文字をなす凸部を形成した車体フロアパネルを本出願人は既に提案している(特許文献1を参照されたい)。
【0003】
このフロアパネルの構成は、一枚の鋼板に十文字の凸部をプレス成形することによってフロアパネルの剛性を確保しようというものであるが、フロアトンネル上にシフトレバーを設ける場合、フロアトンネル自体の肉厚だけではシフトレバー操作の剛性感を十分に高めることができないので、フロアトンネルのシフトレバー支持ベースの固定部を補強する必要があった。
【特許文献1】特開2002−302071号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フロアトンネルに対するシフトレバー支持ベースの取り付け剛性を高めるには、シフトレバー支持ベースの固定部に適宜な板厚の補強板をスポット溶接するだけで十分ではあるが、単にフロアトンネルにおけるシフトレバー支持ベースの固定部を高剛性化するだけのために製造工数を増大させることは、極めて不経済である。
【0005】
本発明は、このような不都合に鑑み案出されたものであり、その主な目的は、製造効率を低下させずにシフトレバー支持ベースの固定部の剛性を高めることができるように構成された車体のフロアパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を果たすために本発明の請求項1は、車幅方向中央部にて車体の前後方向に延在するフロアトンネル2と、該フロアトンネルと交差して車幅方向に延在する膨出部3とで略十文字をなす凸部が形成されると共に、前記フロアトンネル上にシフトレバー支持ベース13が固設される車体のフロアパネル1において、前記膨出部における前記フロアトンネルで分断された左右の各前壁3fwに沿う左側部分7l及び右側部分7rと、これら左側部分及び右側部分を前記フロアトンネルと重なる位置で連結する中間部分7cとを有する補強部材7を車幅方向に延設し、前記中間部分と前記シフトレバー支持ベースとの少なくとも一部同士を前記フロアトンネルに結合してなることを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0007】
このような本発明の請求項1の構成によれば、補強部材における中間部分は、シフトレバー支持ベースと共にフロアトンネルに結合されるので、フロアパネルに補強部材をスポット溶接する際の溶接打点を増大することなく、シフトレバー支持ベースの結合剛性を高めるための中間部分のフロアトンネルに対する接合強度を高めることができる。また、補強部材の左右端をサイドシルに接続すれば、膨出部の前壁との間に閉断面部が形成されてクロスメンバとしての機能を発揮し、フロア剛性の増強を高効率に達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に添付の図面を参照して本発明について詳細に説明する。
【0009】
図1及び図2は、本発明に基づき構成されたフロアパネルを示している。このフロアパネル1は、図1における左手前側の端縁1Fにフロントダッシュボード(図示せず)が結合され、図1における右奥側の端縁1Rに荷室の床と一体をなすミッドクロスメンバ(図示せず)が結合され、右手前側および左奥側の側端縁1Sr・1Slにサイドシル(図示せず)が結合され、車室の前後方向中間部の床を塞ぐものである。
【0010】
フロアパネル1は、比較的薄い鋼板をプレス成形してなり、ビードや凹凸を形成することにより、鋼板を薄肉化したことによる平面部の剛性低下を補っている。
【0011】
フロアパネル1における車幅方向の中央部には、前後方向についての曲げ剛性を高めるために、断面形状が略台形をなし、室内側に突出したフロアトンネル2が前後方向に延設されている。そしてフロアトンネル2の前寄りの位置には、左右方向についての曲げ剛性を高めるために、フロアトンネル2と直交して車幅方向に延在する膨出部3が、室内側に突出して形成されている。なお、膨出部3には、その下方に配設される燃料タンクのメインテナンスのために、通常はボルト締めされたリッドLで塞がれるアクセス孔Hが開設されている。
【0012】
膨出部3は、図3に併せて示すように、フロントシート4側の床面の一部をなす前部水平部1fhから前壁3fwが立ち上げられ、前壁3fwの上端から後方へ延出された後に傾斜面3icでリアシート5側の床面をなす後部水平部1rhに接続されている。
【0013】
傾斜面3icの下面における後端側には、断面形状が溝形をなす後部補強部材6が、その前後縁のフランジをスポット溶接にて結合されている。これにより、車幅方向に延在する閉断面部が、傾斜面3icの後端側の下面に形成されている。
【0014】
フロアトンネル2で分断された膨出部3の左右各前壁3fwの前面(室内側の面)には、断面形状が階段状をなす左側部分7l及び右側部分7rと、これら左側部分7l及び右側部分7rをフロアトンネル2の上面(室内側の面)と重なる位置で連結する中間部分7cとからなる第1補強部材7が、フロアパネル1、膨出部3の左右各前壁3fw及び頂壁3tに重ねて要所をスポット溶接された上で、車幅方向に延設されている。この第1補強部材7は、その左右各端をフロアパネル1の側端縁1Sr・1Sl(サイドシルの結合部)に接続させており、これにより、膨出部3の左右各前壁3fwの前面と左側部分7l及び右側部分7rとの間に車幅方向に延在する閉断面部が形成されると同時に、中間部分7cを始めとした板の重なり合う部分によって厚肉化されている。このようにして、特に膨出部3の前壁3fwの剛性が高められることにより、膨出部3の頂壁3tに燃料タンクのメインテナンス用アクセス孔Hを開けたことによる膨出部3の剛性低下が好適に補強される。
【0015】
フロアトンネル2で分断された左右の各前壁3fw同士間は、フロアトンネル2の内側を車幅方向に沿って仕切る第2補強部材8によって連結されている。この第2補強部材8には、フロアパネル1における第1補強部材7の接合部の下面に重なる左右への延伸部8l・8rが設けられており、第2補強部材8、フロアパネル1、及び第1補強部材7の互いに重なり合う部分がスポット溶接で結合されている(図5中の×印がスポット溶接の打点を示す)。この第2補強部材8を結合することにより、フロアトンネル2が開くことが抑えられ、特に、左右への延伸部8l・8rが重なり合う部分によって厚肉化され、左右のサイドシル間が強固に連結されてフロアパネル1の剛性が高効率に増強される。
【0016】
膨出部5によってフロアパネル1の下面に画成された下向きに凹となる空間は、燃料タンク10の設置場所として利用される。そしてフロアパネル1の下面における燃料タンク10の左右両側部には、前後方向に沿って側部補強部材11l・11rが延設されており、フロアパネル1の下面における燃料タンク10の後方に車幅方向に延設された後部補強部材6と、フロアトンネル2内に車幅方向に延設された第2補強部材8と、フロアパネル1の上面におけるフロントシート4の下方に車幅方向に延設された第1補強部材7とが、燃料タンク10の周囲を取り囲むように配置されている。
【0017】
これらにより、燃料タンク10の搭載部は勿論のこと、フロントシート4の搭載部の剛性を、燃料タンク10の設置空間に影響を及ぼさないことはもとより、前席および後席に着座した乗員の足下を狭くすることなく十分に高めることができるので、前面衝突時におけるフロントシート4の位置の変化が抑制され、シートベルト及びエアバッグの効果を乗員が最大に受けられるようになる。即ち、本発明によれば、フロア剛性の増強を高効率に達成し、乗員損害値の低減を企図することができる。
【0018】
フロアトンネル2における左右のフロントシート4で挟まれる位置には、図5・6に示すように、例えばアルミニウム合金のダイキャスト成形から成るシフトレバー支持ベース13が結合される。シフトレバー支持ベース13の前端部は、第1補強部材7の中間部分7cと共通のボルトB1を用いてフロアトンネル2に共締めで結合され、また後端部は、フロアトンネル2の剛性をより一層高めるために一段高くされた突出部2hの頂面にボルトB2を用いて結合される。
【0019】
このようにして、第1補強部材7における中間部分7cは、シフトレバー支持ベース13と共締めでフロアトンネル2に結合されるので、フロアパネル1に第1補強部材7をスポット溶接する際の溶接打点を増大することなく、シフトレバー支持ベース13の結合剛性を高めるための中間部分7cのフロアトンネル1に対する接合強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるフロアパネルの上面の全体斜視図である。
【図2】本発明によるフロアパネルの下面の全体斜視図である。
【図3】フロアパネルを左座席の搭載部で車体前後方向に沿って切断した概略側断面図である。
【図4】フロアパネルを車体前後方向中心線に沿って切断した概略側断面図である。
【図5】フロアトンネルのシフトレバー支持ベースの結合部を示す要部斜視図である。
【図6】シフトレバー支持ベースの結合部を車体前後方向中心線に沿って切断した概略側断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 フロアパネル
2 フロアトンネル
3 膨出部
7 第1補強部材
7l 左側部分
7r 右側部分
7c 中間部分
13 シフトレバー支持ベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向中央部にて車体の前後方向に延在するフロアトンネルと、該フロアトンネルと交差して車幅方向に延在する膨出部とで略十文字をなす凸部が形成されると共に、前記フロアトンネル上にシフトレバー支持ベースが固設される車体のフロアパネルであって、
前記膨出部における前記フロアトンネルで分断された左右の各前壁に沿う左側部分及び右側部分と、これら左側部分及び右側部分を前記フロアトンネルと重なる位置で連結する中間部分とを有する補強部材を車幅方向に延設し、
前記中間部分と前記シフトレバー支持ベースとの少なくとも一部同士を前記フロアトンネルに結合してなることを特徴とする車体のフロアパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−240415(P2006−240415A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57080(P2005−57080)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】