説明

車体の上部構造

【課題】車体の上部の十分な剛性を確保することを目的とする。
【解決手段】リアヘッダー32の車幅方向端部とセンターピラー34の車両上側端部とを、車幅方向に見て重なるように結合し、リアウインドシールド用フレーム36を、リアヘッダー32とセンターピラー34の結合部44とアンダーボデー14の上部とに接合する。また、センターピラー34とリアウインドシールド用フレーム36とで、車幅方向及び車両前後方向に見て三角形状のトラス構造の支持部50を形成し、この支持部50によってリアヘッダー32の車幅方向両端部を支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の上部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の2ドアクーペタイプの車体では、ルーフの車両後端部の車幅方向端部とセンターピラーの車両上側端部とが、車幅方向に見て、車両前後方向にずれている(例えば、特許文献1参照)。即ち、ルーフの車両後端部において車幅方向に延在するリアヘッダーとセンターピラーとがルーフサイドレールを介してクランク状に連なっている。そのため、リアヘッダーとセンターピラーとのクランク状の結合部が、車体の上部の捩り変形の起点となってしまい、車体の上部の捩り剛性が低下する。
【特許文献1】特許第3538460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記事実を考慮し、車体の上部の十分な剛性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の車体の上部構造は、ルーフ後端に配置されるリアヘッダーの車幅方向端部と車体側部の略中央に立設されるセンターピラーの車両上側端部とを、車幅方向に見て重なるように結合し、前記リアヘッダーと前記センターピラーとの結合部とアンダーボデーとを結合するフレームを設けたことを特徴とする。
【0005】
請求項1に記載の車体の上部構造では、ルーフ後端に配置されるリアヘッダーの車幅方向端部と車体側部の略中央に立設されるセンターピラーの車両上側端部とを、車幅方向に見て重なるように結合し、また、リアヘッダーとセンターピラーとの結合部とアンダーボデーとを結合するフレームを設けている。これによって、リアヘッダーとセンターピラーとの結合部から、捩り変形の起点となる箇所を無くすことが出来る。また、リアヘッダーとセンターピラーとフレームとによって、ロールバー状の骨組みが形成され、リアヘッダーの車幅方向両端部をアンダーボデーに支持するセンターピラーとフレームとによって、車両側面視でトラス構造が形成される。従って、車体の上部の捩り剛性を向上でき、車体の上部の十分な剛性を確保することが可能となる。
【0006】
請求項2に記載の車体の上部構造は、請求項1に記載の車体の上部構造であって、前記フレームは、リアウインドシールドを支持することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の車体の上部構造では、上記フレームを、リアウインドシールドを支持するために設けられているリアウインドシールド用フレームとしている。これによって、新たに車体の上部に補強フレームを追加することなく、車体の上部の十分な剛性を確保することが可能となる。
【0008】
請求項3に記載の車体の上部構造は、請求項1又は請求項2に記載の車体の上部構造であって、前記リアヘッダーと前記センターピラーとの結合部とルーフサイドレールとを結合したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の車体の上部構造では、リアヘッダーとセンターピラーとの結合部にルーフサイドレールが結合されたことで、車体の上部が車両前後方向に繋がっており、リアヘッダーやセンターピラーやフレームに入力された荷重が、ルーフサイドレールに分散されるので、車体の上部の捩り剛性がさらに向上する。
【0010】
請求項4に記載の車体の上部構造は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の車体の上部構造であって、前記リアヘッダーと前記センターピラーと前記フレームとを一体成形したことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の車体の上部構造では、リアヘッダーとセンターピラーとフレームとを一体成形したことによって、リアヘッダーとセンターピラーとフレームとを接ぎ合わせる接合部が存在しない。従って、リアヘッダーとセンターピラーとフレームとの結合部から応力集中箇所が無くなるので、車体の上部の捩り剛性がさらに向上し、また、車体の上部のNV(ノイズバイブレーション)性能が向上する。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、車体の上部の十分な剛性を確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の車体の上部構造の一実施形態を図1、図2に従って説明する。
なお、図中矢印FRは車両前方方向を、矢印UPは車両上方方向を、矢印INは車幅内側方向を示す。
図1、図2には、2ドアクーペタイプのCFRP(炭素繊維強化樹脂)製の車体12を示している。図示するように、車体12は、アンダーボデー14と、アンダーボデー14の車両上側に組み付けられる車体の上部としてのアッパーキャビン部16とを備えている。アンダーボデー14は、キャビン(車室)18及びトランクルーム20に跨るフロアパネル22と、キャビン18の車幅方向両端部に立設された壁部24と、キャビン18とトランクルーム20とを隔てる隔壁26と、トランクルーム20の車幅方向両端部に立設された壁部28とで構成されている。壁部24には、サイドドア(図示省略)により開閉されるサイドドア開口部30が形成されている。
【0014】
アッパーキャビン部16は、サイドドア開口部30の車両後側且つキャビン18の車両上側において、車幅方向に延在するリアヘッダー32と、リアヘッダー32の車幅方向両端部から車両下方且つ車幅外方へ延在するセンターピラー34と、リアヘッダー32の車幅方向両端部から車両下方且つ車両後方へ延在してリアウインドシールドガラス(図示省略)を支持するリアウインドシールド用フレーム36と、リアヘッダー32の車幅方向両端部から車両前方へ延在するルーフサイドレール38と、ルーフサイドレール38の車両前側端部から車両前方且つ車両下方へ延在するフロントピラー40と、一方のルーフサイドレール38の車両前側端部から他方の車両前側端部へ延在するフロントヘッダー42とを備えている。
【0015】
リアヘッダー32とセンターピラー34とリアウインドシールド用フレーム36とはCFRPで一体成形されており、リアヘッダー32の車幅方向端部とセンターピラー34の車両上側端部とが結合され、また、リアヘッダー32とセンターピラー34との結合部44とリアウインドシールド用フレーム36の車両上側端部とが結合されている。
【0016】
また、センターピラー34の車両下側端部の車幅外側には、車両下方へ延びるフランジ部34Aが形成されており、このフランジ部34Aが、壁部24のサイドドア開口部30の車両後側の上部に、接着剤、ボルト等により接合されている。また、リアウインドシールド用フレーム36の車両下側端部の車両後側には、車両下方へ延びるフランジ部36Aが形成されており、このフランジ部36Aが、隔壁26の車幅方向端部の上部に、接着剤、ボルト等により接合されている。
【0017】
また、ルーフサイドレール38とフロントピラー40とフロントヘッダー42とはCFRPで一体成形されており、ルーフサイドレール38の車両前側端部とフロントピラー40の車両後側端部とが結合され、また、ルーフサイドレール38とフロントピラー40との結合部46とフロントヘッダー42の車幅方向端部とが結合されている。
【0018】
また、ルーフサイドレール38の車両後側端部の車両上側にはフランジ部38Aが形成されており、このフランジ部38Aが、リアヘッダー32とセンターピラー34との結合部44の車両上側に、接着剤やボルト52等により結合されている。さらに、壁部24のサイドドア開口部30の車両前側の上部には、フロントピラー40の車両前側端部が差し込まれる差込部24Aが形成されており、フロントピラー40の車両前側端部が、差込部24Aに差し込まれた状態で接着剤やボルト54等により接合されている。
【0019】
ここで、リアヘッダー32とセンターピラー34とが、車幅方向に見て直線状になるように配置されており、リアヘッダー32とセンターピラー34との結合部44では、リアヘッダー32の車幅方向端部とセンターピラー34の車両上側端部とが、車幅方向に見て重なっている。また、リアヘッダー32とセンターピラー34とリアウインドシールド用フレーム36とで、ロールバー状の骨組みが形成され、センターピラー34とリアウインドシールド用フレーム36と壁部24のサイドドア開口部30の車両後側の上部24Bとで、車幅方向及び車両前後方向に見て略三角形状のトラス構造の支持部50を形成しており、この支持部50によってリアヘッダー32の車幅方向両端部が、アンダーボデー14に支持されている。
【0020】
また、リアヘッダー32とセンターピラー34との結合部44では、ルーフサイドレーム38の車両後側端部とリアウインドシールド用フレーム36の車両上側端部とが、車両前後方向に見て重なるように配置されており、リアウインドシールド用フレーム36とルーフサイドレール38とフロントピラー40とが車両前後方向に繋がっている。
【0021】
次に、本実施形態による作用について説明する。
【0022】
本実施形態では、リアヘッダー32の車幅方向端部とセンターピラー34の車両上側端部とが車幅方向に見て重なるように配置されているので、リアヘッダー32とセンターピラー34との結合部44が、アッパーキャビン部16の捩り変形の起点となることが無い。また、リアヘッダー32が、トラス構造の支持部50によってアンダーボデー14に支持されており、アッパーキャビン部16の支持強度が向上する。従って、アッパーキャビン部16の捩り剛性を向上でき、アッパーキャビン部16の十分な剛性を確保することが可能となる。
【0023】
また、リアウインドシールドガラスを支持するために用いられているリアウインドシールド用フレーム36を用いて、上述の支持部50を形成したことによって、新たにアッパーキャビン部16に補強フレームを追加することなく、アッパーキャビン部16の捩り剛性を向上できる。
【0024】
また、リアヘッダー32とセンターピラー34との結合部44にルーフサイドレール38が結合されたことで、アッパーキャビン部16が車両前後方向に繋がっており、リアヘッダー32やセンターピラー34やリアウインドシールド用フレーム36に入力された荷重が、ルーフサイドレール38に分散されるので、アッパーキャビン部16の捩り剛性がさらに向上する。
【0025】
また、リアヘッダー32とセンターピラー34とリアウインドシールド用フレーム36とをCFRPで一体成形したことによって、リアヘッダー32とセンターピラー34とリアウインドシールド用フレーム36とを接ぎ合わせる接合部が存在しない。従って、リアヘッダー32とセンターピラー34とリアウインドシールド用フレーム36との結合部44から応力集中箇所を無くすことができるので、アッパーキャビン部16の捩り剛性がさらに向上し、また、アッパーキャビン部16のNV性能が向上する。また、アッパーキャビン部16を構成するフレームの数が多くなればなるほど各フレームの精度管理が困難化するが、本実施形態では、リアヘッダー32とセンターピラー34とリアウインドシールド用フレーム36とを一部品とすることによって、アッパーキャビン部16の構成部品の数を削減しているので、アッパーキャビン部16を構成する各フレームの精度管理を容易化できる。
【0026】
以上、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、本実施形態では、ボデー10全体をCFRP製としたが、アッパーキャビン部16のみをCFRP製又はGFRP製としてアンダーボデー14をアルミ製としたり、リアヘッダー32とセンターピラー34とリアウインドシールド用フレーム(隔壁ガラス用フレーム)36とをCFRP製又はGFRP製としてルーフサイドレール38とフロントピラー40とフロントヘッダー42とをアルミ製としたりすることも可能である。
【0027】
また、本実施形態では、リアヘッダー32とセンターピラー34とを同幅とし、リアヘッダー32の車幅方向端部の全幅とセンターピラー34の車両上側端部との全幅とを、車幅方向に見て重なるように結合したが、リアヘッダー32の車幅方向端部の一部とセンターピラー34の車両上側端部の一部とが、車幅方向に見て重なるように結合されている構成も、本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係るアッパーキャビン構造を備える車体の車両後側を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るアッパーキャビン構造を備える車体の車両後側を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
12 ボデー(車体)
14 アンダーボデー
16 アッパーキャビン部(車体の上部)
32 リアヘッダー
34 センターピラー
36 リアウインドシールド用フレーム(フレーム)
38 ルーフサイドレール
44 結合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフ後端に配置されるリアヘッダーの車幅方向端部と車体側部の略中央に立設されるセンターピラーの車両上側端部とを、車幅方向に見て重なるように結合し、前記リアヘッダーと前記センターピラーとの結合部とアンダーボデーとを結合するフレームを設けたことを特徴とする車体の上部構造。
【請求項2】
前記フレームは、リアウインドシールドを支持することを特徴とする請求項1に記載の車体の上部構造。
【請求項3】
前記リアヘッダーと前記センターピラーとの結合部とルーフサイドレールとを結合したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体の上部構造。
【請求項4】
前記リアヘッダーと前記センターピラーと前記フレームとを一体成形したことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の車体の上部構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−37123(P2008−37123A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209706(P2006−209706)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】